JP4366791B2 - ドーパミンおよびアスコルビン酸を含む被検試料に含まれるドーパミンの濃度を測定するために用いられる修飾電極 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ドーパミンおよびアスコルビン酸を含む被検試料、特に、ヒトに代表される生物の血液、尿、汗、唾液、涙液、分泌液等の体液中に含まれるドーパミンおよびアスコルビン酸を含む被検試料に含まれるドーパミンの濃度を測定するために用いられる修飾電極に関する。
【0002】
【従来の技術】
ドーパミンは生体内にあって神経伝達物質として知られており、生体中の循環器系、神経系、泌尿器系などあらゆる器官で生体反応を制御する物質として注目されている。ドーパミンの、生きたまま(in vivo)での生体局所におけるその場(in situ)検出、ならびに生体外・試験管内(in vitro)での検出は極めて重要である。
【0003】
このような目的のために、少なくとも作用電極と対極からなる電極系を用いてドーパミンを電気化学的に検出する試みが提案されている。例えば、特開平9−127056号公報には、炭素電極を作用電極とし、対極と参照電極から構成される電極系を用いたドーパミンの検出方法が開示されており、擬似体液であるリンゲル液中における、ドーパミンの電解による定量的な検出が例示されている。
【0004】
しかしながら、ドーパミンをin vivoで検出しようとすると、体液中には、ほとんどの場合、ドーパミン濃度の1000倍以上のアスコルビン酸が含まれており、アスコルビン酸の酸化還元反応も同時に起こるため、ドーパミンとアスコルビン酸を分離して検出することは極めて困難であるという問題がある(J. Neurochem.誌第41巻(1983年)第1769頁またはElectroanalysis誌第2巻(1990年)第175頁参照)。これは、ドーパミンとアスコルビン酸の酸化還元電位が接近していることが原因である。表面が化学修飾されていない炭素電極あるいは金電極でのドーパミンの酸化は、Ag/AgCl参照電極に対し0.1Vから0.4Vにかけて起こり、アスコルビン酸の酸化は、0.2Vから0.6Vにかけて起こる。
【0005】
このような課題を取り除くために、アダムス(Adams)らは、アニオン性ポリマー膜で被覆した金電極を用いることを提案している(Brain Res.誌第34巻(1985年)第151頁参照)。この場合、(化3)で示される、電解質中でプラスに荷電したドーパミンがアニオン性ポリマー膜を被覆した電極に静電的に引き付けられるので、ドーパミンの酸化還元電位をアスコルビン酸に比べて十分マイナスにすることができる。そのためアニオン性ポリマー膜修飾電極の電位を、ドーパミンが酸化され、かつアスコルビン酸が酸化されない電位に固定すると、ドーパミンを選択的に酸化することができ、アスコルビン酸の存在下でのドーパミンの選択的な検出が可能である。その他、特開平8−21819号公報も先行技術文献として挙げることができる。
【0006】
【化3】
【0007】
【発明が解決しょうとする課題】
しかし、この方法では、アニオン性ポリマー膜中でのドーパミンの拡散速度が遅いので、応答が遅いという問題がある。この応答速度の遅さについては、アニオン性ポリマー膜修飾電極の電位をプラス側に上げることにより改善が可能であるが、それによりドーパミンとともにアスコルビン酸の酸化も起こるようになる。ドーパミンの酸化生成物はアスコルビン酸の酸化触媒であるので、アスコルビン酸の酸化反応速度はドーパミンの酸化生成物の触媒作用の影響を受け、アスコルビン酸に由来する酸化電流は、ドーパミンの酸化生成物が存在しない場合に比べて増加する。この場合、ドーパミンを定量するには、合計の酸化電流からアスコルビン酸の酸化に由来する分を差し引くことが必要となるが、触媒作用による酸化電流の増加分は、アスコルビン酸濃度だけでなくドーパミン濃度にも依存するので見積もることは困難であるため、合計の酸化電流の測定からドーパミンを定量することは困難である。
【0008】
本発明は、前記従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、体液のようにアスコルビン酸を含む被検試料であっても、被検試料中のドーパミンを速い応答速度で容易に定量することのできる修飾電極を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成する本発明は、ドーパミンおよびアスコルビン酸を含む被検試料に含まれるドーパミンの濃度を測定するために用いられる修飾電極であって、前記修飾電極は、導電性の基板を有し、前記基板の表面が、(化3)で示されるジチオビスアルキルアミン
【化3】
によって修飾されている、修飾電極である。
前記ジチオビスアルキルアミンが、(化4)で示される2,2’−ジチオビスエタンアミンであることが好ましい。
【化4】
前記基板が金または銅からなることが好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明は、導電性の基板を有し、前記基板表面をカチオン性化合物で化学修飾した修飾電極を、ドーパミンおよびアスコルビン酸検出用の修飾電極として用いる。
【0020】
本発明の修飾電極によると、被検試料中でプラスに荷電したドーパミンとカチオン性化合物との間で静電的な反発エネルギーが生じるので、ドーパミンの酸化還元電位が、アスコルビン酸よりもプラス側にシフトする。したがって、修飾電極の電位を0V付近からプラス方向に掃引すると、まずアスコルビン酸が酸化され、次にドーパミンが酸化される。したがって、ドーパミンとアスコルビン酸の酸化を分離して行うことができ、また、アスコルビン酸の酸化は、ドーパミンの酸化生成物による触媒作用を受けることがないので、アスコルビン酸の酸化に由来する酸化電流をアスコルビン酸の濃度に比例した値とすることができるため、アスコルビン酸に由来する酸化電流の見積が容易である。よって、修飾電極の電位をアスコルビン酸、ドーパミンともに酸化される電位に設定して酸化電流を測定し、得られた酸化電流からアスコルビン酸の酸化に由来する分を差し引くことにより、ドーパミンの酸化に由来する分を分離することができるため、ドーパミンの定量が可能となる。また、修飾電極の電位をドーパミンの酸化還元電位よりも十分にプラスにすることにより、応答速度を向上させることができる。さらに、アスコルビン酸に由来する酸化電流から、アスコルビン酸も定量することができる。
【0021】
ここで、基板の材料としては、例えば、金、銅、銀、ニッケル、亜鉛、錫などの金属材料、黒鉛などのカーボン材料、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子、インジウム錫複合酸化物、アンチモン錫複合酸化物などの導電性セラミックス等を用いることができる。この中で、カチオン性化合物との密着性の点から金属材料を用いることが好ましく、さらに金または銅を用いることが好ましい。
【0022】
基板の形状は、特に限定されないが、例えば、板、箔、薄膜、線、粉末、粉末成形体、粉末焼結体等を用いることができる。
【0023】
カチオン性化合物としては被検試料中でプラスに荷電することによりカチオン性を示すものであれば良く、ポリビニルピリジンあるいはポリ−4−ビニル−アルキルピリジニウムなどのピリジン基あるいはピリジニウム基を有する化合物、アニリン、ポリアニリン、ポリエチレンイミン、アミノアルキルピリジン、アルキルアミン、チオアルキルアミンなどのイミノ基、アミノ基、あるいはアンモニウム基を有する化合物を用いることができる。特に、金属材料からなる基板を用いる場合は、基板との密着性に優れるチオール基を有する、チオアルキルアミンが好ましい。チオアルキルアミンの例としては、チオエタンアミン、チオプロパンアミン、チオブタンアミン、チオヘキサンアミン、チオラウリルアミン、ジチオビスエタンアミン、ジチオビスプロパンアミン、ジチオビスブタンアミン、ジチオビスヘキサンアミン、ジチオビスラウリルアミンなどがあげられる。
【0024】
また、前記チオアルキルアミンがジチオビスアルキルアミンであることが好ましい。ジチオビスアルキルアミンを用いると、チオール基が基板の表面側に、アミノ基が外側に向いた状態の自己集積性単分子膜を基板上に形成することができる。このようにすると、アミノ基が外側に向いているので被検試料中でさらに良好なカチオン性を示すとともに、チオール基が基板の表面側に向いているので、金属材料からなる基板を用いた場合に、カチオン性化合物と基板との密着性がさらに向上する。
【0025】
また、前記ジチオビスアルキルアミンのアルキル基はエチル基以上で、かつヘキシル基以下の長鎖アルキルであることが好ましい。エチル基以上にすると、均一な自己集積性単分子膜を容易に得ることができ、かつヘキシル基以下にすると、アルキル鎖が短いので電極反応にともなう電子移動速度が速くなり、検出の応答速度を速くすることができる。
【0026】
さらに、前記ジチオビスアルキルアミンが、2,2’−ジチオビスエタンアミンであることが好ましい。2,2’−ジチオビスエタンアミンを用いると、基板上に均一な自己集積性単分子膜を集積することができるとともに、アルキル鎖が短いため、電極反応にともなう電子移動速度を速くし、検出の応答速度をさらに速くすることができる。
【0027】
カチオン性化合物を導電性の基板表面へ化学修飾する方法としては、カチオン性化合物を溶解した溶液を導電性の基板に直接塗布する方法、この溶液を他の基板表面に塗布して膜を形成し、次にこの膜を導電性の基板に転写する方法、この溶液を他の溶液表面に展開してカチオン性化合物の単分子膜もしくは累積膜を形成し、この単分子膜もしくは累積膜を導電性の基板表面に転写する方法、または真空蒸着法により導電性の基板上にカチオン性化合物の薄膜を直接形成する方法等があげられ、カチオン性化合物の溶解性、熱安定性に応じて選択することができる。
【0028】
【実施例】
次に、本発明の具体例を説明する。
【0029】
(実施例1)
[修飾電極の作製]
図1は、本発明の修飾電極の一実施例の断面図である。
【0030】
導電性の基板となる直径1.6mmの金線11を用い、それを絶縁体である直径5mmのポリイミド樹脂棒12の中心に、金線11の両端がポリイミド樹脂棒12より露出するように埋め込んだ後、金線11の一端の断面とポリイミド樹脂棒12の一端の面が同一面となるように金線11の一端を切断した。露出した金線11の断面を、直径が1.0μmのアルミナ粉、直径が0.06μmのアルミナ微紛で研磨した後、0.05Mの硫酸水溶液中で、水素発生電位および酸素発生電位間で電解処理を行い、比較用の電極(A)を作製した。次に、同様に電極(A)を作製した後、2,2’−ジチオビスエタンアミン(以下、CYSTと略称する。)5mMを溶解したエタノール溶液に浸漬した後、40℃の温風で乾燥して、カチオン性化合物13であるCYSTで化学修飾した修飾電極(B)を作製した。さらに、同様に電極(A)を作製した後、(化6)で示される6,6’−ジチオビスヘキサンアミン(以下、DTHと略称する。)5mMを溶解したエタノール溶液に浸漬した後、40℃の温風で乾燥して、カチオン性化合物13であるDTHで化学修飾した修飾電極(C)を作製した。
【0031】
【化6】
【0032】
[被検試料の調整]
リン酸2水素ナトリウム(NaH2PO4)0.1M、リン酸水素2ナトリウム(Na2HPO4)0.1Mを脱イオン水に溶解したpH7.2の緩衝溶液に、アスコルビン酸を0.15mM、ドーパミンを0.15mM溶解し、被検試料(1)を調整した。
【0033】
[センサの作製]
容積が20ccの電解室を両側に2個有する、ガラス製のH形セルを用いて、片方の電解室に、作用電極となる電極(A)、修飾電極(B)または(C)と、Ag/AgCl参照電極とを配置し、もう一方の電解室に対極となる白金巻線を配置して、センサとなる電解セルを構成した。電解室間は、多孔質のガラス焼結板で仕切った。
【0034】
電解セルに被検試料(1)を入れた後、窒素ガスを通じて溶存酸素を除去したのち、セルを密閉状態に保ち電解を行った。
【0035】
[電解検出方法]
作用電極の電位を参照電極に対し、マイナス0.2Vからプラス0.4Vまで掃引して電解を行い、この際流れる電解電流を測定した。作用電極の電位の掃引方法は、矩形波ポーラログラフ法(Heith B.OldhamおよびJanC.Myland著Fundamentals of Electrochemical Science、Academic Press Inc.(1994年)第416頁参照)により行った。電位の掃引条件は、矩形波高=25mV、ステップ電圧=4mV、周波数=15Hzとした。
【0036】
矩形波ポーラログラフ法を用いたのは、電気二重層容量の充放電電流の影響を除去して検出感度を上げるためである。アスコルビン酸、ドーパミンの濃度が高くなり、電気二重層容量の充放電電流値に較べ十分に大きな酸化電流値が得られる場合は、作用電極の電位を直線的に増加させる単掃引法を用いてもよい。
【0037】
[検出結果]
電極(A)、CYSTで化学修飾した修飾電極(B)、DTHで化学修飾した修飾電極(C)をそれぞれ用いて、矩形波ポーラログラフ法で得られた電流−電圧曲線を図2に示す。
【0038】
修飾電極(B)および(C)では、アスコルビン酸に由来する酸化電流ピークが+0.05V付近に得られ、+0.2V付近にドーパミンの酸化に由来する電流ピークが得られた。しかし、カチオン性化合物の化学修飾がない電極(A)では単一の電流ピークしか得られず、アスコルビン酸とドーパミンとを分離して検出することができなかった。
【0039】
CYSTで化学修飾した修飾電極(B)の方が、DTHで化学修飾した修飾電極(C)よりも大きな酸化電流ピークが得られたのは、CYST分子のアルキル鎖が炭素数2のエチル基であるのに対し、DTH分子のアルキル鎖が炭素数6のヘキシル基であり、電解酸化によりCYST分子あるいはDTH分子を介してアスコルビン酸あるいドーパミン分子から基板の金へ電子が移動する際、より短いアルキル鎖を有するCYSTで化学修飾した修飾電極(B)の方が電子移動が速くなるためである。
【0040】
よって、導電性の基板として金を用い、カチオン性化合物としてCYSTまたはDTHを基板表面に化学修飾することにより、ドーパミンとアスコルビン酸の共存する被検試料中で、ドーパミンとアスコルビン酸を分離して検出することができた。
【0041】
(実施例2)
[修飾電極の作製]
導電性の基板として金線を用い、エタノール溶液中の、カチオン性化合物であるCYSTの濃度を10mMとした以外は、実施例1と同様にして、CYSTで化学修飾した修飾電極を作製した。
【0042】
[被検試料の調整]
リン酸2水素ナトリウム(NaH2PO4)0.1M、リン酸水素2ナトリウム(Na2HPO4)0.1Mを脱イオン水に溶解したpH7.2の緩衝溶液に、アスコルビン酸を0.1mM、ドーパミンをそれぞれ0、6、45、109、129μM溶解して、被検試料(2a)、(2b)、(2c)、(2d)、(2e)を調整した。また上記緩衝溶液に、アスコルビン酸/ドーパミンを15/15、23/31、55/64、90/100、149μM/133μM溶解して、被検試料(3a)、(3b)、(3c)、(3d)、(3e)を調整した。
【0043】
[センサの作製]
作製したCYST化学修飾電極を作用電極として、実施例1と同様のセルを用いてセンサを作製した。
【0044】
[電解検出方法]
実施例1と同様に、矩形波ポーラログラフ法を用いて、電解電流を測定した。
【0045】
[検出結果]
被検試料(2a)、(2b)、(2c)、(2d)、(2e)について得られた電流−電圧曲線を図3に、被検試料(3a)、(3b)、(3c)、(3d)、(3e)について得られた電流−電圧曲線を図4に示す。
【0046】
図3に示すように、被検試料(2a)、(2b)、(2c)、(2d)、(2e)の場合、+0.05V付近にアスコルビン酸の酸化に由来する電流ピークが得られ、+0.2V付近にドーパミンの酸化に由来する電流ピークが得られた。アスコルビン酸の酸化電流はドーパミンの酸化生成物の触媒作用の影響を受けることなく、アスコルビン酸の濃度が被検試料(2a)〜(2e)のいずれについても同じであることに対応して、アスコルビン酸の酸化に由来する電流ピークの高さは同じであった。一方、ドーパミンの濃度が被検試料(2a)〜(2e)の順に高くなるように調製されていることに対応して、ドーパミンの酸化に由来する電流ピークは被検試料(2a)〜(2e)の順に増加した。よって、既知のドーパミン濃度の試料について測定を行い、あらかじめ検量線を作成しておくことにより、ドーパミンの酸化に由来する電流ピークの高さから、アスコルビン酸の存在下であっても被検試料中のドーパミン濃度を容易に定量することができる。
【0047】
また、図4に示すように、被検試料(3a)、(3b)、(3c)、(3d)、(3e)の場合、アスコルビン酸の濃度もドーパミンと同様に、被検試料(3a)〜(3e)の順に高くなるように調整されていることに対応して、電流ピークは被検試料(3a)〜(3e)の順に増加した。よって、アスコルビン酸についても、ドーパミンと同様に、アスコルビン酸の酸化に由来する電流ピークの高さから濃度を定量することができる。
【0048】
(実施例3)
[修飾電極の作製]
導電性の基板として、直径1.6mmの無酸素銅線を用い、それ以外は実施例2と同様にして、CYSTで化学修飾した修飾電極を作製した。
【0049】
[被検試料の調整]
リン酸2水素ナトリウム(NaH2PO4)0.1M、リン酸水素2ナトリウム(Na2HPO4)0.1Mを脱イオン水に溶解して、pH7.2の緩衝溶液を用意した。この緩衝溶液にアスコルビン酸のみを0.013M溶解した溶液(AA)、および緩衝溶液にドーパミンのみを0.0083M溶解した溶液(DA)を調製した。緩衝溶液、溶液(AA)、溶液(DA)ともに、N2ガスを通じることで溶存酸素を予め除去した。
【0050】
[センサの作製]
液の注入口が上部にあり、容積50ccの電解室を1つ有するガラスセルを用い、その電解室に、作用電極として、作製した修飾電極を、液密に可動となるように配置し、さらに白金巻線対極、Ag/AgCl参照電極を配置した。上部の注入口より、被検試料として緩衝溶液を25ml注入した。
【0051】
[電解検出方法]
作用電極を300rpmの回転数で回転しながら、+0.3Vの一定電位を印加した。+0.3Vは、アスコルビン酸、ドーパミンともに電解酸化が起こる電位である。被検試料に対して、溶液(AA)20μlの添加(図4中のa)、溶液(DA)30μlの添加(図4中のb)を40秒毎に交互に行い、この際流れる電解電流を測定した。
【0052】
[測定結果]
得られた電流−時間曲線を図5に示す。
【0053】
溶液(AA)および溶液(DA)の添加により電流が急峻に増加した後、すぐに定常電流が得られた。定常電流の増加量は、溶液(AA)または溶液(DA)の一回あたりの添加量に対して一定であった。すなわち、アスコルビン酸の酸化電流が、ドーパミンの酸化生成物による触媒作用の影響を受けることなく、アスコルビン酸、ドーパミンともに、それぞれの濃度変化に対応した酸化電流応答を、速い応答速度で得ることができた。
【0054】
ここで得られた定常電流(I1)は、被検試料中のアスコルビン酸濃度(CAA)およびドーパミン濃度(CDA)に比例し、それぞれの比例定数をa1およびb1とすると、
【0055】
【数1】
【0056】
と表すことができる。a1およびb1は、あらかじめ既知の濃度のドーパミンまたはアスコルビン酸のみを含む試料について定常電流の測定を行い、検量線を作成することにより、検量線の傾きから求めることができる。次に、比例定数すなわち検量線の傾きが変化するような条件、例えば温度を変化させて、同じ被検試料について同様の測定を行う。得られた定常電流をI2とすると、このときの比例定数をa2およびb2として、
【0057】
【数2】
【0058】
と表される。(数1)および(数2)を解くと、CAAおよびCDAは、
【0059】
【数3】
【0060】
【数4】
【0061】
と表され、CAAおよびCDAを算出することができる。よって、検量線の傾きが変化するように条件を変化させて、少なくとも2条件以上で定常電流を測定することにより、被検試料中のドーパミン濃度およびアスコルビン酸濃度を容易に定量することができる。
【0062】
【発明の効果】
本発明を用いることにより、体液のようにアスコルビン酸を含む被検試料であっても、被検試料中のドーパミンを速い応答速度で容易に定量することができ、また、被検試料中のアスコルビン酸についても定量することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の修飾電極の一実施例の断面図
【図2】本発明の実施例1における、比較用の電極、CYSTで化学修飾した修飾電極およびDTHで化学修飾した修飾電極の電流−電位応答を示す図
【図3】本発明の実施例2における、アスコルビン酸濃度が一定で、ドーパミン濃度を変化させた複数の被検試料中での、修飾電極の電流−電位応答を示す図
【図4】本発明の実施例2における、アスコルビン酸濃度およびドーパミン濃度を変化させた複数の被検試料中での、修飾電極の電流−電位応答を示す図
【図5】本発明の実施例3における、修飾電極により測定した酸化電流の時間変化を示す図
【符号の説明】
11 金線(導電性の基板)
12 ポリイミド樹脂棒
13 カチオン性化合物
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JP7346680B2 (ja) | 2021-11-26 | 2023-09-19 | 株式会社ポケモン | ゲームプログラム、方法、情報処理装置 |
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JP2001141695A (ja) | 2001-05-25 |
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