JP4363640B2 - 車両用照明装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両の曲路走行時に適正な前方照明を行うための技術に関する。
自車走行路に対応した車両用前照灯の配光制御が可能な走行支援システムに関して、例えば、地図情報と地図上の自車位置情報に基いて、自車両前方の道路について折れ曲がり点までの距離や折れ曲がり方向を判断しながら照射範囲等を制御するシステムが知られている(特許文献1参照)。
このようなシステムでは、照射制御を的確に行うために下記に示す事項が重要である。
・車両前方の曲路や屈曲路等についての道路線形及び交差点等の位置情報を詳細に得ること
・曲路、屈曲路、交差点等において、その開始点や終止点(あるいは脱出点)等の位置情報を得ること。
尚、ナビゲーションシステムや路車間通信システムを利用した構成において、自車両の進行路上に存在するノード(道路地図データベース上での道路表記点)の位置データから3点円弧補間等の処理によって道路線形の推定が可能である。
特開平2−296550号公報
ところで、現状のシステムでは、現在位置座標の測位精度、道路地図データベース自体の精度やマップマッチング精度等に起因して、例えば、ヘアピンカーブが連続する山道での曲路形状や、屈曲路における車両現在位置、長い直線区間後の交差点位置等を正確に求めることが困難である。そのため、照射方向等の制御タイミングについて充分な精度を確保することができないことが問題となる。つまり、精度不足等により実情に合わない照射制御が行われてしまい、制御ズレによって運転者に違和感や不快感を与えてしまう虞がある。また、運転に支障を来すだけでなく、道路利用者等への影響が問題となる。
例えば、道路線形の形状推定結果に応じてヘッドランプ配光を制御する場合には、下記の方法が挙げられる。
(1)自車の所定時間後における車両到達位置を予測し、該位置を注視点として照射ビームの方向を制御する方法
(2)曲路のクリッピングポイントを注視点として照射ビームの方向を制御する方法。
図9は屈曲路での走行、図10は曲路での走行、図11は交差点での走行についてそれぞれ例示しており、図中のN1〜N4がノード点を示している。尚、図中の実線で示すホームベース状の記号が実際の車両現在位置「P」を表しており(先鋭部の向きが車両進行方向を示す。)、破線で示すホームベース状の記号がナビゲーションシステム上で認識される車両現在位置「Q」を表している(先鋭部の向きが車両進行方向を示す。)。各図において位置PとQとが一致しない状況を示している。
図9では、ノードN2が屈曲点であり、位置QがノードN1付近のやや前方とされ、破線矢印aが車両進行方向を示し、破線矢印bが前照灯の照射方向を示している。そして、位置PがノードN2付近のやや前方とされ、実線矢印Aが車両進行方向を示し、実線矢印Bが前照灯の照射方向を示している。尚、実線矢印Cは、位置Pにおける理想的な照射方向を示している。
実際の車両位置と地図上の車両位置(架空の現在位置)との間のずれは、照射方向のずれとなって現出し、本例では、位置Qにおいて計算される照射方向が破線矢印bであり、実際の位置Pでは実線矢印Bの方向となる。位置PとQとが一致していれば、位置Pにおける照射方向が実線矢印Cで示す方向となるべきであるが、両位置にずれが生じたために、位置Pにて理想的な実線矢印Cの方向からずれた方向、即ち、実線矢印Bの方向に照射方向が制御されてしまうという不具合が起こる。
尚、本例では、車両進行方向において位置Pの後方に位置Qが来ている場合を想定したが、位置Pの前方に位置Qが来る場合にも、理想的な照射方向からのずれが発生する。
また、図10では、ノードN2が曲路開始点であり、位置Qが曲路進入前のノードN2付近のやや後方とされ、破線矢印aとbの向きが一致した状態とされる。そして、位置PがノードN3付近のやや後方であり、実線矢印AとBの向きとが一致しており、理想的な向きを示す実線矢印Cと比較した場合にかなりのずれが生じている(つまり、曲路の旋回半径が小さい程、実線矢印Cからのずれが大きくなる。)。
図11では、位置Qが交差点進入前の地点であって、破線矢印aとbの向きが一致した状態とされる。そして、位置Pが交差点進入後の地点であり、実線矢印AとBの向きが一致しており、理想的な向きを示す実線矢印C(左折方向)と比較した場合にかなりのずれが生じている。
上記のような照射方向制御のずれは、マップマッチング精度等を向上させることで対処できる。つまり、走路形状を詳細に解析して形状特性等の定義を正確に行い、方位センサ情報や走行距離等の情報を取得して走行済み区間と道路地図上の走路形状とを逐一照合していけば良い。しかし、その場合に、装置の計算処理能力を大幅に高めることが必要であるか、あるいは処理時間がかかり過ぎて実用に耐えない等の問題が生じる。
そこで、本発明は、曲路や屈曲路等の走行において、限られた精度範囲内で、運転者にとって違和感のない前方照明を実現することを課題とする。
本発明は、上記した課題を解決するために、車両の現在位置データ及び道路地図データを用いて自車現在位置の前後に位置する複数のノードの位置データを読み取り、該複数のノードを補間処理で繋いで走路形状を推定し、自車進行方向の走路上に曲路又は屈曲路又は交差点が存在する場合に、曲路等への自車両の進入地点から脱出地点までの走路区間を複数の区間に分割して各区間に応じて車両用前照灯の照射制御を行う車両用照明装置において、下記に示す構成要素を具備する。
・衛星通信又は路車間通信を利用して走路上の車両現在位置を検出する自車現在位置検出手段
・自車両の操舵角又は進行方向を検出する車両操舵状態検出手段
・自車両前方における道路線形の形状変化から曲路又は屈曲路又は交差点の存在を検知する走路形状変化検知手段
・曲路又は屈曲路又は交差点への自車両の進入地点から脱出地点までの走路区間を、複数の区間に分割する走路区間分割設定手段
・分割された上記複数の区間を自車両が走行する際に、該区間の特性及び車両操舵状態検出手段の検出情報に応じた照射制御出力に基づいて車両用前照灯の照射方向又は照射範囲又は照射光量を変更する照射制御手段。
従って、本発明では、曲路等を走行する時の走路区間の特性に応じて照射制御内容を変更することができ、走路形状のみに依存した構成形態においてマップマッチングの精度不足や誤認等に起因する照射制御への影響を緩和することができる。
本発明によれば、曲路上の走行位置及び操舵状態に応じた照射制御を実現するとともに、限られた制御精度の範囲内で、運転者にとって違和感や不快感のない制御が可能である。
本発明は、さらに、上記走路区間分割設定手段によって分割される区間が、曲路等への進入区間、一定方向への操舵状態が維持される操舵維持区間、曲路等からの脱出区間に区分される。従って、本発明では、走路区間を類型化して判別した結果に応じて制御内容を変更することができる。
本発明は、さらに、走路予測に加えて車両操舵状態の検出情報を反映した照射制御において、曲路等への進入区間では、曲路への進入点に到達した時点において、曲路等の存在する方向に一定方向角を照射方向又は照射範囲の制御量として設定し、該照射方向又は照射範囲の制御量と、操舵状態の検出情報に基いて算出される照射方向又は照射範囲の制御量と比較する。そして、両者のうちの大きい方の制御量に従って車両用前照灯の照射方向又は照射範囲を制御する。従って、本発明では、実情に即した前方照明が得られる。なお、上記操舵維持区間では、操舵状態の検出情報に基いて算出される照射方向又は照射範囲の制御量に従って車両用前照灯の照射方向又は照射範囲を制御する構成形態が好ましい。
図1は、本発明について基本構成例を示すものである。
車両用照明装置1は、車両の現在位置データを取得し、道路地図データを用いて自車現在位置周辺の道路形状を推定しながら車両用前照灯の照射制御を行うものであり、下記の構成要素を備えている(括弧内の数字は符号を示す。)。
・自車現在位置検出手段(2)
・走路形状変化検知手段(3)
・走路区間分割設定手段(4)
・車両操舵状態検出手段(5)
・車両走行状態検出手段(6)
・照射制御手段(7)
・駆動手段(8)
・車両用前照灯(9)。
自車現在位置検出手段2は、自車両の現在位置情報を得るために設けられている。例えば、人工衛星通信によるGPS(Global Positioning System)や路車間通信を利用したナビゲーション装置が用いられる(CD−ROMやDVD−ROM等の記録媒体から提供される道路地図データベースや、人工衛星通信又は路車間通信を利用して得られる位置データ、自車の方位データ、車速データを用いて走路上の車両現在位置を検出することができる。)。この現在位置情報は走路形状変化検知手段3及び照射制御手段7に送出される。
走路形状変化検知手段3は、自車両前方における曲路や屈曲路、交差点等の存在を検知するものである。車両の現在位置データ及び道路地図データベースを用いて自車現在位置の前後に位置する複数のノードの位置データを読み取り、該複数のノードを補間処理で繋いで走路形状を推定することができる。尚、図示しない道路情報提供手段からの道路地図データベースを用いて走行路の情報が得られるので、自車現在位置検出手段2からの車両の現在位置データを用いて、自車現在位置の前後に位置する複数のノード位置データを得て、自車走行路に関する複数のノードを補間処理(3点円弧補間法や2等分接円法、ニュートン4点前進補間法等)で繋ぐことによりモデル化された道路形状(線形)データを生成することができる。
自車進行方向の走路上に曲路等が存在することが走路形状変化検知手段3によって検知された場合(具体的な方法については、後で詳述する。)には、その通知が後段の走路区間分割設定手段4に送られる。走路区間分割設定手段4は、予測される曲路等への自車両の進入地点から脱出地点までの走路区間を特定するとともに、該走路区間を複数の区間に分ける。つまり、曲路等への自車両の進入地点から脱出地点までの走路区間について、複数の区間に分割設定し、自車両位置がどの走路区間を走行しているのかを含む通知を照射制御手段7に対して行う。
車両操舵状態検出手段5は、自車両の操舵状態又は進行方向(方位)を検出する。例えば、ステアリングセンサや角速度センサ等を用いて、車両の旋回方向を含む車両の操舵状態を検出し、その検出情報を照射制御手段7に送出する。あるいは、ジャイロセンサ等の方位センサを用いて検出される方位角変化量を、照射制御手段7に送出する。
車両走行状態検出手段6は、自車両の車速や加速度等を検出して、検出結果を照射制御手段7に送出する。例えば、曲路や屈曲路、交差点等への到達に要する走行時間を算出するには、現在の車速データが必要である。
照射制御手段7は、分割された走路区間のうちのどの区間に車両現在位置が属するかについての判定結果に基づいて、該区間毎に前照灯装置の照射制御内容を変更する。つまり、分割された上記複数の区間を自車両が走行する際に、該区間に応じた照射制御出力を駆動手段8に送出し、車両用前照灯9の照射方向又は照射範囲又は照射光量(例えば、交差点等での減光、消灯又は調光等)を変更する。
駆動手段8には車両用前照灯9を構成する反射鏡、レンズ等の光学素子、遮光部材や光源について、その姿勢や位置を変更するための駆動機構やアクチュエータ、あるいは光源の出力調整や点消灯を行う制御回路等が含まれる。また、車両用前照灯9にはヘッドランプやフォグランプ等が挙げられるが、単独で配光制御が可能なランプを用いる構成形態又は複数のランプを組み合せた構成形態が挙げられる。
本発明の適用においては、例えば、下記のようにECU(電子制御ユニット)を車内LAN(Local Area Network)で繋いだ構成形態が採られる。
・自車現在位置情報と道路情報がナビゲーションECUに送られて該ECU内で走路形状変化検知や走路区間の分割設定処理等が行われ、また、車両操舵状態の検出情報や車両走行状態の検出情報が照射制御用ECUに送られて処理されるように構成し、ナビゲーションECUの処理結果をLAN経由で受けとった照射制御用ECUが前照灯の照射制御を行う形態
・上記ナビゲーションECUが上記照射制御用ECUによる処理の一部又は大部分を引き受けるようにした形態(照射制御用ECUが不要とされるか、または、照射制御用ECUでは照射制御に必要な最低限の処理が行われる。)
・ナビゲーションECUでは単に地図データや現在位置データ等を出力し、照射制御用ECUにおいて、走路形状変化検知や走路区間の分割設定処理を含めた全ての処理を行う形態。
曲路検知について説明する前に、自車走行路に係る道路線形の把握に必要なノード及びリンクの定義について、図2を用いて説明する。
図中に示す「Ni」(i=0、1〜6)はi番目のノードを表し、「Li」(i=0、1〜5)がi番目のリンクを示している。尚、本例では、隣り合う2つのノードNiとNi+1の各ノードを線分で繋いてできるリンクをLiと定義している(Liの長さ、つまり、リンク長は一定と限らない。)。
図中に示すホームベース状の記号は車両現在位置を表しており(先鋭部の向きが車両進行方向を示す。)、その直ぐ後方に存在する近傍のノードN1を「現在ノード」と定義し、その前方に位置するノードN2を「前方ノード」と定義する。また、リンクについては、車両が存在するリンク、即ちN1とN2の各ノードを繋ぐリンクL1を「現在位置リンク」と定義し、その先のリンクL2を「前方リンク」と定義する。
自車現在位置の前後に位置する複数のノードに関する情報を基にして、リンクについて区間特性を判別し、例えば、曲路区間、変曲区間(変曲点を含む)、直線区間のいずれかを把握することができる。
ナビゲーション装置等に用いられる道路地図データベースにおいては、ノードの打点特性と道路線形特性との間に、例えば、下記のような特徴的な性質がある。
・直線路ではノード打点間隔が粗く(よって、リンク長が大きい)、また、曲路ではノード打点間隔が密であること
・曲路区間におけるノード打点間隔については、道路クラスが低い(設計車速値が小さい)道路ほど短くなっていること
道路種別と特定区間のノード間隔(リンク長)について例示した結果を下表に示す。
Figure 0004363640
尚、上表中のノード間隔については、道路設計速度を秒速に換算した値の倍数として示している。また、上表中の変曲区間には屈曲路も含まれる。
道路設計速度やクラスに応じて区間判別を行う場合には、ノード間隔を利用して直線路や曲路あるいは両者の中間的な道路(変曲区間や屈曲路等)を識別することが可能である。
区間判別の形態には、例えば、下記に示す方法が挙げられ、それらを独立に又は組み合せることが可能である。
(I)リンク長を、その走行路の法定走行速度から決まる基準距離と比較して区間判別を行う構成形態
(II)リンク長とリンクベクトルの外積を用いてリンクの区間特性を判別する構成形態
(III)隣り合う3点のノードを用いて円弧補間により算出される曲率半径Rの符号変化とR値(絶対値)に基づいてリンクの区間特性を判別する構成形態。
先ず、(I)では、例えば、隣り合うノード間のリンク長を、法定走行速度に係る秒速に基づいて予め決められた基準距離値と比較する。この基準距離値については、上表1を例にして、秒速換算値の定数倍として定義することができる。例えば、上記対象道路C(時速80km/hr)の場合に、秒速値の10倍に相当する基準距離値を規定したとき、リンク長が該基準距離値以上であれば、当該リンクに係る走路区間が直線区間と判別される。また、上記リンク長が秒速値の10倍未満である場合には、判定対象とされるリンクについての走路区間が変曲区間(5倍以上〜10倍未満)又は曲路区間(5倍以下)と判別される。本構成では、リンク長を基準距離と比較するだけで済むので簡単ではあるが、精度面では(II)や(III)と組み合せることが好ましい。
上記(II)では、隣り合うノード間のリンク長及び該ノードの位置ベクトルの差として得られるリンクベクトル同士の外積(ベクトル積)の符号変化を求めることにより、対象リンクに係る走路区間の種別を判別することができる。つまり、リンク「Li-1」に相当するリンクベクトルと、リンク「Li」に相当するリンクベクトルとの外積を「Li-1×Li」と記し、リンク「Li」に相当するリンクベクトルと、リンク「Li+1」に相当するリンクベクトルとの外積を「Li×Li+1」と記すとき、それらの符号がどのように変化するかを把握することで、3リンク(4ノード)に亘る区間判定が可能である。例えば、直線区間では各外積値がともにゼロであり、また、変曲区間では外積の符号が正から負へ(又は負から正へ)と変化する。
上記(III)では 隣接する2リンクを構成する3点のノードについて円弧補間を施すことで曲率半径Ri-1、Ri、Ri+1、…を知ることができるので、該曲率半径の符号変化と絶対値を求めることにより、対象リンクに係る走路区間の種別を判別することができる。例えば、曲率半径が予め決められた基準値(1000m等)以上である場合に直線区間と判定され、また、曲率半径が予め決められた基準値未満であって、曲率半径の符号が正から負へ(又は負から正へ)と変化する場合に、変曲区間等の判定がなされる。
(II)や(III)では、外積や曲率半径を用いて走路区間の種別を精度良く判別することが可能である。
走路形状変化検知手段3によって検知される曲路には、2つの直線区間をある角度で繋いだ屈曲路や、交差点が含まれるが、単一の操舵方向とされる曲路、あるいは変曲区間を含まない曲路(隣接するリンクベクトル同士の外積の符号が変化しない範囲)である。
図3及び図4は、本発明の適用が可能な走路区間を例示したものである。
図3に示すヘアピン区間では、N1〜N4に示すように、車両進行方向において右方へのハンドル操作が行われる。つまり、単一の操舵方向とされるため、少なくともノードN1〜N5の範囲では曲路区間とされる。
また、図4に示すスラローム区間では、L2が変曲区間である。つまり、変曲点を含むL2が存在する場合には、L2を含めた曲路の定義を避け、L2の前後において曲路を分割して定義することが好ましい(本例では、N1、N2、N3を含む曲路と、N2、N3、N4を含む曲路とに分ければ良い。)。
図5は、屈曲路を例にして道路線形と走路区間等を示したものであり、図中のノードN1、N2、N3のうちN2が屈曲点のノードを示し、「CP」がクリッピングポイントを示す。尚、クリッピングポイントは、走路線形の形状ラインから路肩線や中心線を求めて、該路肩線又は中心線に対して自車位置から接線を引いた場合の接点(該路肩線又は中心線と接線との交点)として定義され、また、クリッピングポイントの角度は、車両の進行方向に延びる軸に対して、自車位置から路肩線又は中心線に引いた接線との間になす角度を意味し、道路形状データ(線形データ)を用いて既知の方法(接円法)で求めることができる。
対象となる曲路については、走路区間分割設定手段4によって、下記に示す3つの区間に分割される。
・曲路進入区間(「K1」参照)
・操舵維持区間(「K2」参照)
・曲路脱出区間(「K3」参照)。
各区間については、下記に示すような運転操作判断上の特質点(運転操作行動や運転操作結果の検出により決められる点)を用いて定義される。
・曲路進入点(「P1」参照)=運転者が曲路の存在を意識し始め、運転操作を準備し始める地点
・操舵維持開始点(「P3」参照)=車両操舵状態検出手段5の情報を用いて決定される操舵維持区間の開始地点
・操舵維持終了点(「P4」参照)=車両操舵状態検出手段5の情報を用いて決定される操舵維持区間の終止地点
・曲路脱出点(「P6」参照)=運転者が曲路走行の運転操作を終了する地点。
尚、図中の「P2」は曲路開始点を示し、「P5」は曲路終止点を示しており、これらは、自車前方に予測される道路線形のデータに基づいて決定される。
上記P1はP2の数秒前又は操舵開始時点の数秒前の地点に相当する。また、P3はP2近傍で車両操舵状態検出手段5の出力値が検出誤差範囲あるいは予め設定された不感帯域を最初に越えた地点とされる。P4はP5の手前側で、車両操舵状態検出手段5の出力値が検出誤差範囲あるいは予め設定された不感帯域に最初に回帰した地点とされる。そして、P6については、P5又はその後方の地点とされる。
曲路進入区間K1はP1からP3までの区間(曲路に進入する区間)であり、操舵維持区間K2はP3からP4までの区間(一定方向への操舵状態が維持される区間)であり、曲路脱出区間K3はP4からP6までの区間(曲路から脱出する区間)である。
尚、本例では、運転操作判断上の特質点(4点)を用いて3つの区間K1〜K3に区分されて区間別に異なる照射制御が行われる。
また、曲路開始点P2や曲路終止点P5については、上記のように道路線形に基づいて決定されるが、例えば、屈曲路の場合には、図6に示すようなスムージング処理の使用が好ましい。
L1、L2に示すように、リンク長の長い区間が折れ線状に繋がった区間(屈曲区間)では、ノードN2に示す屈曲点付近において所定半径Rの円弧をもって滑らかにリンクを接続する処理を施す。
図中の「α」はリンクL1とL2との間になす角度を示している。このαを用いて屈曲区間の角度を表す場合に、半径R値についてはα値にも依るが、道路線形の設計上の半径(線形半径)よりもやや大きめの値に設定することが望ましい(例えば、時速40km/hrの道路の場合、R=30m程度とし、屈曲点と円弧(R)との隙間距離が1車線幅以上にならないように設定する。)。
道路設計速度と道路設計上の線形半径(曲率半径)との関係を下表に例示する。
Figure 0004363640
スムージング処理が施された区間には、図の点Na、Nbに示すように、新たなノードを発生させ、走路形状を詳細に定義することが好ましい。即ち、Na、Nbは円弧Rと、直線路L1、L2との接点として定義され、Naが曲路開始点P2に相当し、Nbが曲路終止点P5に相当する。
尚、新しいノードと屈曲点近傍での円弧(R)の頂点間の円弧距離を「d」と記すとき、「d=R・(α/2)」で表される。
上記特質点と曲路開始点、曲路終止点との関係を上記のように定義した場合に、車両進行方向においてP3がP2の前方となり、P4がP5の後方となる。
P1については、P2の1秒乃至3秒程度に相当する走行距離だけ自車両側に寄った位置が最適であり、また、P6についてはP5の近傍に設定すれば良い。
次に、照射制御手段7によって行われる前照灯の照射制御の内容について説明する。
照射制御手段7によって制御される前照灯の照射方向に係る角度又は照射範囲の角度を「ψ」と記すとき、上記した各区間K1、K2、K3に応じて、例えば、以下に示す処理を行う。
(A1)曲路進入区間K1
自車が区間K1の地点P1に到達した時点において、曲路の存在する方向に一定方向角(以下、これを「θ」と記す。)を設定する。例えば、所定時間(1.5秒乃至3.5秒程度)又は所定距離(40m等)だけ前方の特定位置(1車線横の位置等)を設定して、このθと上記ψとが一致するように制御する。その後は、ヨーレートセンサやGPSナビゲーション装置に内蔵された方位センサによる検出情報を用いて推測した操舵情報又はステアリングセンサにより検出した操舵角情報に基いて算出される照射制御角を「ω」と記すとき、このωとθとを比較して角度の大きい方をとる。即ち、ωとθのうち大きい方を上記ψの制御目標値として両者が一致するように照射制御を行う。
(A2)操舵維持区間K2
自車が区間K2内に存在する場合には、走路の道路線形に係るデータから求めたクリッピングポイント(CP)の位置、又は所定時間(例えば、2.5秒)の走行後に予測される車両到達位置等を注視点位置に設定して、該位置への制御角を算出してこれを目標として上記ψを制御する。あるいは、上記ωを用いて上記ψを制御すれば良い。
尚、クリッピングポイントの算出には、ノードとリンクに関するデータ、道路情報(道路幅データを含む。)、自車現在位置情報が必要とされ、下記(1)乃至(3)に示す手順に従って処理が行われる。
(1)走路形状の算定
(2)路肩ラインの算定
(3)自車線側及び対向車線側での各クリッピングポイントの算定。
先ず、上記(1)では、複数のノードを繋いで形成されるリンクを決定し、例えば、3点のノード位置に円弧補間等を適用して自車両前方の走路形状を求める。尚、この場合の走路は幅をもたない一本のラインであり、道路のセンターラインに相当する。
そして、(2)では、道路幅のデータを用いて走路の左右に位置する路肩ラインを求める。つまり、道路交通法規上で左側通行が定められている場合には、道路幅を考慮して(1)のラインを車両進行方向の左側に移動させたものが自車線側の路肩線とされ、(1)のラインを車両進行方向の右側に移動させたものが対向車線側の路肩線とされる。尚、自車位置については、道路幅を考慮して(1)のラインから左側に寄った位置(例えば、自車線の中央)で自車線上を走行しているものと推定する。
(3)では、下記のようにクリッピングポイントを求める。
(3−1)自車線側のクリッピングポイント(道路左側)
自車位置を基準として、自車線側の路肩線(進路左側の路肩線)に対する接線を求め、接点(左側路肩線と接線との交点)をクリッピングポイントとする。
(3−2)対向車線側のクリッピングポイント(道路右側のセンターライン上)
自車位置を基準として、上記(1)で算定されたセンターラインに対する接線を求め、接点(該センターラインと接線との交点)をクリッピングポイントとする。
(A3)曲路脱出区間K3
自車が区間K3内に存在する場合には、P5付近やP6での照射方向を正射方向に戻し、あるいは照射範囲を元の状態に戻す必要がある。例えば、照射方向制御の場合、自車位置がP5やP6に近づくにつれて上記ψを最終値(ψ=0)へと漸近させていく。
図7は、ノード位置データから予測される道路線形の形状データを用いて照射制御を行う場合の手順を例示したフローチャート図である。
先ず、ステップS1では、下記に示す必要情報を装置に読み込む。
・ナビゲーションシステムに用いる道路地図データ
・GPSデータ
・車速データ
・方位データ(レートジャイロの検出情報等)。
次ステップS2では、所定の手続に従ってマップマッチングを行い、自車両が現在走行中の道路を決定するとともに、走行路上での自車両の現在位置を算出する。尚、単一路の場合、GPS座標に基づいて隣り合う2ノードを求め、GPS座標から2ノード間のリンク上で最短地点となる場所を、マッチング後の車両現在位置とする。また、単一路でない場合(例えば、ヘアピンカーブや市街地等で車両近辺に複数の道路が存在する場合)には、GPS座標と方位データに基づいて最も信頼率の高いリンク上において車両現在位置を仮決定する。尚、GPSデータや車速、方位データから求まる走行軌跡と、道路地図上での道路形状とを常時又は定期的に比較する方法を用いれば、現在位置の推定精度をさらに高めることが可能である。
ステップS3では、自車現在位置から所定距離又は所定の走行時間内の範囲において、曲路、変曲路又は交差点等の存在が予測されるか否かをチェックする。そして、曲路、変曲路又は交差点等が存在すると推定される場合には次ステップS4に進むが、それらが存在しないと推定される場合には、ステップS7に進む。
ステップS4では、走路区間の道路形状を決定する。つまり、単一曲路についての道路線形を決定するとともに、曲路開始点P2及び曲路終止点P5を求める。例えば、屈曲路や交差点の場合には、上記したスムージング処理によって屈曲点ノード付近に接円Rを当てはめて走路形状を決定する。
次ステップS5では、運転操作判断上の特質点(P1、P3、P4、P6)を求めて、走路区間を各区間(K1〜K3)に区分する。
そして、ステップS6に進んで、自車現在位置がどの区間に存在するかを把握して、区間に応じた照射制御を行う。
図8は、照射方向制御の一例を示すフローチャート図である。
先ず、ステップS11において、自車位置判定を行う。そして、次ステップS12で自車現在位置が曲路進入区間、操舵維持区間、曲路脱出区間の何れに存在するかをチェックする。そして、自車現在位置が曲路進入区間に存在する場合にはステップS13に進み、自車現在位置が操舵維持区間に存在する場合にはステップS14に進み、自車現在位置が曲路脱出区間に存在する場合にはステップS15に進む。
ステップS13では、車両が曲路進入点P1に来たときに、上記方向角θを、例えば、「θ=arctan(0.5・(W/D))」に設定し(「arctan()」は逆正接関数を表す。また、「W」は車線幅を示し、「D」は自車の現在車速又は走行道路の法定車速に対して予め決められた時間(例えば、1.5乃至3.5秒程度)での走行距離を示す。)、照射角ψ=θとする。そして、曲路進入区間K1内では、θ値と、操舵状態に応じた上記ω値とを比較して、大きい方をψとして採用する(「ψ=max(θ,ω)」)。
ステップS14の操舵維持区間K2では、クリッピングポイント(CP)の位置を照射目標位置とするか又はψ=ωとなるように制御を行う。
ステップS15の曲路脱出区間K3では、最終的な照射角ψが正射(ψ=0)となるように照射角を自車進行方向に沿う方向に戻す制御を行う。
次に、図7のステップS7では、運転操作データ等を読み込む。また、必要に応じてGPSデータ、車速データ、方位データ等を読み込む。
そして、次ステップS8において、現時点までの経過時間がマップマッチング周期外の場合にはステップS1に戻り、該周期内であればステップS6に戻る。
尚、以上に説明した処理については、例えば、コンピュータを内蔵したECU(電子制御ユニット)の内部処理として、CPU(中央処理装置)やメモリ、入出力ポート等のハードウェア及びCPUによって実行されるプログラムを用いて行われる。
しかして、上記構成では、車両の現在位置データ及び道路地図データベースを用いて自車現在位置の前後に位置する複数のノードの位置データを読み取り、該複数のノードを補間処理で繋いで走路形状を推定する。そして、自車進行方向の走路上に曲路等が存在する場合には、曲路等への自車両の進入地点から脱出地点までの走路区間を、曲路進入区間、操舵維持区間、曲路脱出区間に分割して各区間に応じた照射制御を行う。例えば、曲路進入区間では、曲路進入点での上記照射角θを設定し、ステアリングセンサによる操舵角の検出量又は方位センサによる車両の方位変化量に基づいて照射角ωを算出する。そして、ωとθとの比較し、大きい方の角度に従って照射方向を制御する。また、操舵維持区間では、クリッピングポイント位置又は予め決められた時間の経過後の車両位置を目標照射位置とするか又は上記ωに従って照射方向を制御する。そして、曲路脱出区間では、最終的な照射角を正射(基準)方向に戻すように照射方向を制御すれば良い。
このような制御により、マップマッチング精度等に起因する制御への影響を緩和し、不具合の発生を防止できる。
例えば、図10に示すような曲路走行において、実際の車両位置Pが曲路進入区間や操舵維持区間である場合には、ステアリングセンサ又は方位センサによる検出情報が照射制御に反映される(例えば、地図上の位置Qにおける照射角又はθは、実際の操舵角により決まるωより小さいので無視される。)。
上記に説明した構成によれば、ナビゲーション装置等による自車現在位置及び走路形状の推定結果に対して、実際の操舵状態を加味した照射制御を曲路や屈曲路等の走路区間上で行うことができる。その結果、マップマッチング精度等が十分でない場合であっても、運転者にとって違和感や不快感のない照射制御を実現することができる。
本発明の基本構成例を示す図である。 ノード及びリンクの定義についての説明図である。 図4とともに、本発明の適用が可能な走路区間を例示したものであり、本図はヘアピン区間の説明図である。 スラローム区間の説明図である。 屈曲路を例示した説明図である。 スムージング処理の説明図である。 照射制御例を示すフローチャート図である。 区間判定に基づく照射制御の一例を示すフローチャート図である。 図10及び図11とともに問題点を説明するための図であり、本図は屈曲路での走行を示す。 曲路での走行を示す図である。 交差点での走行を示す図である。
符号の説明
1…車両用照明装置、2…自車現在位置検出手段、3…走路形状変化検知手段、4…走路区間分割設定手段、5…車両操舵状態検出手段、7…照射制御手段

Claims (2)

  1. 車両の現在位置データ及び道路地図データを用いて自車現在位置の前後に位置する複数のノードの位置データを読み取り、該複数のノードを補間処理で繋いで走路形状を推定し、自車進行方向の走路上に曲路や屈曲路、交差点が存在する場合に、該曲路又は屈曲路又は交差点への自車両の進入地点から脱出地点までの走路区間を複数の区間に分割して各区間に応じて車両用前照灯の照射制御を行う車両用照明装置であって、
    衛星通信又は路車間通信を利用して走路上の車両現在位置を検出する自車現在位置検出手段と、
    自車両の操舵角又は進行方向を検出する車両操舵状態検出手段と、
    自車両前方における道路線形の形状変化から曲路又は屈曲路又は交差点の存在を検知する走路形状変化検知手段と、
    曲路又は屈曲路又は交差点への自車両の進入地点から脱出地点までの走路区間を、複数の区間に分割する走路区間分割設定手段と、
    分割された上記複数の区間を自車両が走行する際に、該区間の特性及び上記車両操舵状態検出手段の検出情報に応じた照射制御出力に基づいて上記車両用前照灯の照射方向又は照射範囲又は照射光量を変更する照射制御手段を備え
    上記走路区間分割設定手段によって分割される区間が、曲路又は屈曲路又は交差点への進入区間、一定方向への操舵状態が維持される操舵維持区間、曲路又は屈曲路又は交差点からの脱出区間に区分され、
    上記進入区間では、曲路又は屈曲路又は交差点への進入点に到達した時点において、曲路又は屈曲路又は交差点の存在する方向に一定方向角を照射方向又は照射範囲の制御量として設定し、該照射方向又は照射範囲の制御量と、上記車両操舵状態検出手段による操舵状態の検出情報に基いて算出される照射方向又は照射範囲の制御量と比較して、両者のうちの大きい方の制御量に従って上記車両用前照灯の照射方向又は照射範囲を制御する
    ことを特徴とする車両用照明装置。
  2. 請求項1に記載した車両用照明装置において、
    上記操舵維持区間では、上記車両操舵状態検出手段による操舵状態の検出情報に基いて算出される照射方向又は照射範囲の制御量に従って上記車両用前照灯の照射方向又は照射範囲を制御する
    ことを特徴とする車両用照明装置。
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