本発明のプリンタは、記録媒体に画像を記録可能な画像記録部と、長尺の記録媒体を貯留した供給部と、記録媒体を前記画像記録部に対向させつつ前記供給部から前記画像記録部に向かう第1の方向と、前記第1の方向と反対方向である第2の方向とに搬送可能な搬送機構と、前記第1の方向に搬送される記録媒体を切断可能な切断機構と、複数の画像が記録可能な長さの記録媒体が前記画像記録部に対して前記供給部と反対側に配置されるように記録媒体が前記第1の方向に搬送された後に、前記第2の方向に搬送されることによって、前記供給部から巻き解かれた記録媒体が前記供給部に巻き戻され、その後、再度、記録媒体が前記供給部から前記第1の方向に搬送されるように、前記搬送機構を制御する搬送制御手段と、前記搬送機構によって前記第2の方向に搬送されている記録媒体に前記画像記録部によって複数の画像が記録されるように、前記画像記録部を制御する画像記録制御手段と、前記搬送機構によって前記供給部に巻き戻された後で、前記搬送機構によって前記第1の方向に搬送される記録媒体が切断されるように、前記切断機構を制御する切断制御手段とを備えていることを特徴としている。
この構成によると、供給部から画像記録部に向かう第1の方向に記録媒体を搬送した後で第2の方向に搬送される記録媒体に複数の画像を記録することができる。そのため、記録媒体の先端近傍(第1の方向に搬送された後で第2の方向に逆送される記録媒体部分の先端からの領域)に画像を記録可能であると共に、記録媒体の搬送中の負荷変動に起因して画像が悪化するのを抑制することができる。また、複数の画像を記録媒体に記録する場合でも、記録媒体を1往復させるだけでよく、搬送機構における記録媒体の搬送方向を1回切り換えるだけでよいので、搬送方向の切り換えに基づく時間的な搬送ロスを低減できる。その結果、複数の画像を記録媒体に記録する場合において、記録媒体の無駄及び記録媒体の搬送中の負荷変動に起因する画像悪化を防止しつつ、プリンタの処理能力を向上させることができる。
また、第2の方向に逆送されつつ画像記録部によって画像が記録された記録媒体は、一旦、供給部に巻き戻される。その後、画像が記録された記録媒体は、再度、第1の方向に搬送されながら切断される。そのため、画像記録部による画像の記録と、切断機構による記録媒体の切断とが同時に行われることがない。従って、カット時の振動に起因して画像が悪化するのを防止することができる。また、カット時の振動を吸収するループを形成する必要がないので、ループ形成機構が不要となり製造コストを低減できると共に、ループ形成に必要な空間の分だけプリンタが大型化してしまうのを防止することができる。
本発明のプリンタにおいて、前記搬送機構は、前記供給部と前記画像記録部との間において記録媒体に搬送力を付与することによって、記録媒体を前記第2の方向に搬送可能であってもよい。
この構成によると、第2の方向に搬送される記録媒体に複数の画像が記録される際に、記録媒体の搬送中の負荷変動に起因して画像が悪化するのを効果的に抑制することができる。
本発明のプリンタは、記録媒体に画像を記録可能な画像記録部と、長尺の記録媒体を貯留した供給部と、記録媒体を前記画像記録部に対向させつつ前記供給部から前記画像記録部に向かう第1の方向と、前記第1の方向と反対方向である第2の方向とに搬送可能な第1の搬送機構と、記録媒体を前記供給部から第3の方向に搬送可能な第2の搬送機構と、前記第3の方向に搬送される記録媒体を切断可能な切断機構と、複数の画像が記録可能な長さの記録媒体が前記画像記録部に対して前記供給部と反対側に配置されるように記録媒体が前記第1の方向に搬送された後に、前記第2の方向に搬送されることによって、前記供給部から巻き解かれた記録媒体が前記供給部に巻き戻されるように、前記第1の搬送機構を制御する第1の搬送制御手段と、前記第1の搬送機構によって前記供給部に巻き戻された記録媒体が、前記供給部から前記第3の方向に搬送されるように、前記第2の搬送機構を制御する第2の搬送制御手段と、前記第1の搬送機構によって前記第2の方向に搬送されている記録媒体に前記画像記録部によって複数の画像が記録されるように、前記画像記録部を制御する画像記録制御手段と、前記第1の搬送機構によって前記供給部に巻き戻された後で、前記第2の搬送機構によって前記第3の方向に搬送される記録媒体が切断されるように、前記切断機構を制御する切断制御手段とを備えていることを特徴としている。
この構成によると、供給部から画像記録部に向かう第1の方向に記録媒体を搬送した後で第2の方向に搬送される記録媒体に複数の画像を記録することができる。そのため、記録媒体の先端近傍(第1の方向に搬送された後で第2の方向に逆送される記録媒体部分の先端からの領域)に画像を記録可能であると共に、記録媒体の搬送中の負荷変動に起因して画像が悪化するのを抑制することができる。また、複数の画像を記録媒体に記録する場合でも、記録媒体を1往復させるだけでよく、搬送機構における記録媒体の搬送方向を1回切り換えるだけでよいので、搬送方向の切り換えに基づく時間的な搬送ロスを低減できる。その結果、複数の画像を記録媒体に記録する場合において、記録媒体の無駄及び記録媒体の搬送中の負荷変動に起因する画像悪化を防止しつつ、プリンタの処理能力を向上させることができる。
また、第2の方向に逆送されつつ画像記録部によって画像が記録された記録媒体は、一旦、供給部に巻き戻される。その後、画像が記録された記録媒体は、第3の方向に搬送されながら切断される。そのため、画像記録部による画像の記録と、切断機構による記録媒体の切断とが同時に行われることがない。従って、カット時の振動に起因して画像が悪化するのを防止することができる。また、カット時の振動を吸収するループを形成する必要がないので、ループ形成機構が不要となり製造コストを低減できると共に、ループ形成に必要な空間の分だけプリンタが大型化してしまうのを防止することができる。
本発明のプリンタにおいて、前記第1の搬送機構は、前記供給部と前記画像記録部との間において記録媒体に搬送力を付与することによって、記録媒体を前記第2の方向に搬送可能であってもよい。
この構成によると、第2の方向に搬送される記録媒体に複数の画像が記録される際に、記録媒体の搬送中の負荷変動に起因して画像が悪化するのを効果的に抑制することができる。
本発明のプリンタにおいて、前記切断機構によって切断された記録媒体を収容するプリントボックスをさらに備えており、前記第3の方向は、前記第2の搬送機構によって搬送される記録媒体が前記切断機構によって切断された場合に、前記切断機構によって切断された記録媒体の画像形成面が前記プリントボックスの底面に当接しないような方向であってもよい。
この構成によると、プリントボックス内には、画像形成面が上面となった記録媒体が排出されるので、記録媒体の画像記録面に傷が付くのが抑制されると共に、記録媒体に記録された画像が確認し易くなる。
本発明のプリンタにおいて、前記第2の搬送機構は、記録媒体を挟持しつつ搬送可能なローラ対と、前記ローラ対を保持すると共に、回転軸を支点として回転可能に支持された支持部材と、前記ローラ対が前記供給部に巻き戻される記録媒体を挟持可能な状態である第1位置及び前記ローラ対が記録媒体を前記供給部から第3の方向に搬送可能な状態である第2位置のいずれかの位置に配置されるように、前記支持部材を前記回転軸を支点として回転させる駆動機構とを備えていてもよい。
本発明のプリンタにおいて、前記支持部材が前記第2位置に配置された状態において、前記ローラ対と前記切断機構との間に配置されており、記録媒体の端部を検出可能な検出センサをさらに備えていてもよい。
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係るプリンタの外観斜視図である。図2は、図1のプリンタのプリント部の概略構成を示す図である。図3は、図1のプリンタの搬送ローラ対及び送り込みローラ対の動きを表す図である。図4は、ガイドの概略構成を示す図である。図5は、図1のプリンタの主要部及びこれらが接続された制御装置についてのブロック図である。
図1に示す熱昇華方式のサーマルプリンタ1(以下、「プリンタ1」と称する)は、操作部10と、制御装置20と、プリント部30とを有している。操作部10は、オペレータがプリンタ1に対する操作を行うものであって、プリンタ1に関する様々な情報を表示してオペレータに告知するディスプレイ11を有している。ここで、本実施の形態では、操作部10にはタッチパネル方式が採用されており、ディスプレイ10には様々なボタンを含む操作画面12が表示される。従って、オペレータは、操作画面12に触れることによってプリンタ1に対する操作を実行することができる。
制御装置20は、操作部10からの入力を受信すると共に、プリンタ1における各種の動作を制御するためのものである。また、制御装置20は、カードスロットやディスクドライブなどの種々の記憶媒体からプリントデータを取得するための複数のデータ入力部20aを有している。なお、記憶媒体としては、例えばCD−ROM、メモリーカードなど、プリントデータを記憶可能なものであればどのようなものであってもよい。
ここで、操作部10及び制御装置20は、プリント部30を収容する筐体30aの上面に固定配置されている。ここで、操作部10のディスプレイ11の表示面及び制御装置20のデータ入力部20aの記憶媒体挿入面は、プリンタ1(筐体30a)の正面(図1では左手前側の面)とほぼ一致している。従って、プリンタ1の正面に向かうオペレータにとって、ディスプレイ11及びデータ入力部21に対する操作が行い易くなっている。
また、筐体30aは、略直方体形状を有しており、その横幅(正面の幅)D1は奥行きD2よりも小さくなっている。従って、プリンタ1は、横幅の比較的狭い空間においても設置することが可能である。さらに、筐体30aの正面には、筐体30a内に収納された後述するプリントボックス96を筐体30a外に引き出すための開口95が形成されている。
プリント部30は、図2に示すように、筐体30a内に、ロール状に巻回された用紙を保持する用紙供給部40と、用紙供給部40から巻き解かれた用紙を巻き取る用紙巻取部80と、用紙供給部40と用紙巻取部80との間で、一方向に湾曲した搬送経路に沿って用紙を搬送可能な搬送機構38とを有している。また、用紙供給部40と用紙巻取部80との間には、搬送経路の上流側から下流側に向かって、オーバーコート部60及び印字部70が配置されている。また、用紙供給部40の近傍には、切断部50と、プリントボックス96とが配置されている。
なお、本実施の形態では、「用紙の搬送方向(搬送方向)」とは、用紙供給部40から用紙巻取部80に向かう方向を意味するものとする。また、「用紙の先端部」及び「画像の先端部」とは、用紙または画像の搬送方向下流側の端部を意味するものとし、「用紙の後端部」及び「画像の後端部」とは、用紙または画像の搬送方向上流側の端部を意味するものとする。
用紙供給部40は、搬送経路の最上流に設けられており、その中には、長尺の用紙がその印字面が外側になるように回転軸43の周りに巻回された巻回部45が装填されている。ここで、回転軸43は、モータ43a(図5参照)によって、用紙供給部40から用紙が巻き解かれて搬送方向下流側に向かって搬送される場合には図2において反時計回りに回転駆動され、一旦巻き解かれた用紙が用紙供給部40に巻き戻される場合には図2において時計回りに回転駆動される。なお、回転軸43は、後述するワンウェイクラッチ34c、35cと同様の機能を有するワンウェイクラッチ43cを介して、モータ43aにより回転駆動されるシャフト(図示せず)と連結されている。
また、用紙供給部40は、回転軸43を支点として回転可能な支持部材46を有している。支持部材46は、巻回部45から巻き解かれた用紙を挟持可能な給紙ローラ対31と、用紙の端部を検出可能な用紙検出センサ90とを保持している。従って、支持部材46を回転させることによって、給紙ローラ対31及び用紙検出センサ90の位置を、通常位置(図2で破線で示す位置)と、排出位置(図2で実線で示す位置)とのいずれかに変更することができる。なお、支持部材46は、搬送制御部27aで制御される駆動機構48(図5参照)に連結されている。
従って、支持部材46が通常位置に配置されている場合には、給紙ローラ対31は、用紙供給部40から用紙巻取部80に向かう搬送方向下流側に搬送される用紙を挟持すると共に、搬送方向上流側に逆送される用紙を挟持することができる。一方、支持部材46が排出位置に配置されている場合には、給紙ローラ対31は、用紙供給部40から切断部50に向かう排出方向に搬送される用紙を挟持することができる。なお、後述するように、通常位置にある支持部材46の位置が排出位置に変更されるタイミングは、用紙供給部40から巻き解かれた用紙が逆送されることによって、その用紙のほぼ全てが用紙供給部40に巻き戻され、用紙の先端近傍が給紙ローラ対31に挟持されるようになるタイミングである。
搬送機構38は、搬送方向上流側から順に配置されている、用紙供給部40の巻回部45から巻き解かれた用紙を搬送可能な給紙ローラ対31(支持部材46が通常位置に配置されている場合)と、給紙ローラ対31よりも搬送方向下流側に配置されており用紙が上方に向かって搬送されるように用紙の搬送方向を変更するターンローラ対32と、オーバーコート部60の搬送方向上流側において用紙を搬送可能な搬送ローラ対34と、印字部70よりも搬送方向下流側に配置されており用紙を用紙巻取部80の内部に送り込むための送り込みローラ対35とを有している。なお、本実施の形態では、給紙ローラ対31、ターンローラ対32、送り込みローラ対35は樹脂製のローラから構成されており、搬送ローラ対34は金属製のローラから構成されている。
なお、本実施の形態では、給紙ローラ対31、搬送ローラ対34及び送り込みローラ対35を含む機構が、「第1の搬送機構」に相当しており、給紙ローラ対31、支持部材46及び駆動機構48を含む機構が、「第2の搬送機構」に相当している。従って、ここでは、給紙ローラ対31は、支持部材46の位置によって、第1の搬送機構及び第2の搬送機構のいずれかに含まれることになる。
給紙ローラ対31、搬送ローラ対34及び送り込みローラ対35は、搬送制御部27a(図5参照)によって制御されるモータ31a、34a、35a(図5参照)にそれぞれ接続されており、回転駆動可能である。
ここで、搬送ローラ対34及び送り込みローラ対35の動作について、図3を参照して説明する。図3(a)は、用紙が搬送方向下流側に搬送される際の搬送ローラ対34及び送り込みローラ対35の動作を表しており、図3(b)は、用紙が搬送方向上流側に逆送される際の搬送ローラ対34及び送り込みローラ対35の動作を表している。図3に示すように、搬送ローラ対34は、駆動ローラ34dと従動ローラ34eとから構成されている。そして、駆動ローラ34dは、ワンウェイクラッチ34cを介して、モータ34aにより回転駆動されるシャフト34bと連結されている。同様に、送り込みローラ対35は、駆動ローラ35dと従動ローラ35e、35fとから構成されており、駆動ローラ35dは、ワンウェイクラッチ35cを介して、モータ35aにより回転駆動されるシャフト35bと連結されている。
ワンウェイクラッチ34c、35cは、いずれも同様の機能を有しているので、ここではワンウェイクラッチ34cの機能について説明する。ワンウェイクラッチ34cは、駆動ローラ34dに固定されており、駆動ローラ34dと一体となって回転する。そして、駆動ローラ34dが、シャフト34bの回転速度よりも速く回転する場合には、シャフト34bの回転力は駆動ローラ34dに伝達されず、駆動ローラ35dはシャフト34bに対して空回りする。また、それ以外の場合には、シャフト34bの回転力がワンウェイクラッチ34cを介して駆動ローラ34dに伝達され、シャフト34bと駆動ローラ34dとが一体となって回転する。
したがって、搬送ローラ対34が用紙を挟持している場合に、用紙の搬送速度が、モータ34aによって駆動される搬送ローラ対34の回転力に基づく用紙の搬送速度よりも遅い場合には、モータ34aの駆動力が搬送ローラ対34に伝達される。そして、用紙は、搬送ローラ対34により与えられる搬送力で搬送される。一方、用紙の搬送速度が、モータ34aによって駆動される搬送ローラ対34の回転力に基づく用紙の搬送速度よりも速い場合には、モータ34aの駆動力は搬送ローラ対34に伝達されず、搬送ローラ対34は空回りする。つまり、搬送ローラ対34は、用紙の搬送速度に応じた回転数で従動回転する。
ここで、モータ34aによって駆動される搬送ローラ対34の回転力に基づく用紙の搬送速度をV1、モータ35aによって駆動される送り込みローラ対34の回転力に基づく用紙の搬送速度をV2とし、図3(a)を参照しつつ、用紙を搬送方向下流側に搬送する場合について考える。このとき、後述するように、用紙の先端部が送り込みローラ対35に到達して挟持されてからは、搬送ローラ対34の駆動が停止されるので、搬送速度V1は0となる。一方、送り込みローラ対35は、モータ35aの駆動力がシャフト35b及びワンウェイクラッチ35cを介して伝達されて回転駆動される。そして、搬送ローラ対34が挟持している用紙は、搬送速度V2で搬送されるようになるので、ワンウェイクラッチ34cの機能により、搬送ローラ対34は空回りする。
次に、図3(b)を参照しつつ、用紙を搬送方向上流側に逆送する場合について考える。このとき、後述するように、送り込みローラ対35の駆動が停止されるので、搬送速度V2は0となる。一方、搬送ローラ対34は、モータ34aの駆動力がシャフト34b及びワンウェイクラッチ34cを介して伝達されて回転駆動される。そして、送り込みローラ対35が挟持している用紙は、搬送速度V1で逆送されるようになるので、ワンウェイクラッチ35cの機能により、送り込みローラ対35は空回りする。
また、給紙ローラ対31についても、上述のワンウェイクラッチ34c、35cと同様の機能を有するワンウェイクラッチ31cを介して、モータ31aにより回転駆動されるシャフト(図示せず)と連結されている。従って、給紙ローラ対31、搬送ローラ対34及び送り込みローラ対35は、搬送制御部27aによってモータ31a、34a、35aが個別に制御されることによって、用紙供給部40から巻き解かれた用紙を搬送方向下流側に向かって搬送して用紙巻取部80に巻き取り可能であると共に、用紙巻取部80内に一旦巻き取られた用紙を再度巻き解きつつ、用紙巻取部80から巻き解かれた用紙を搬送方向上流側に向かって逆送させることができる。
また、プリント部30は、搬送ローラ対34の回転数を検出可能なエンコーダ36を有している。ここで、上述したように、搬送ローラ対34は、用紙を搬送するためにモータ34aにより駆動されて回転する状態と、送り込みローラ対35により搬送される用紙に伴って従動回転する状態とを取り得る。エンコーダ36は、搬送ローラ34が上記のいずれの状態である場合でも、搬送ローラ対34の回転数を検出することができる。
オーバーコート部60は、搬送ローラ対34の搬送方向下流側に配置されている。オーバーコート部60は、1つのヘッド部61を有している。ヘッド部61は、画像が印字された用紙の表面に対して無色透明なオーバーコート(OC)を行うためのものである。このように、用紙の表面に対してオーバーコートを行うことによって、用紙上に印字された画像の耐光性が向上すると共に、用紙表面を保護することができる。また、オーバーコートの材質を選ぶことで、プリントの光沢性が向上し、高品質のプリントを提供することができる。
また、印字部70は、オーバーコート部60と送り込みローラ対35との間に配置されている。印字部70は、3つのヘッド部71〜73を有している。ヘッド部71〜73は、それぞれシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)に対応する印字を行うためのものである。ここで、プリンタ1では、搬送方向上流側から搬送方向下流側に向かって、シアンに対応するヘッド部71、マゼンタに対応するヘッド部72、イエローに対応するヘッド部73の順に設けられている。なお、プリンタ1では、オーバーコート部60及び印字部70の搬送方向上流側に搬送ローラ対34が配置されており、それらの搬送方向下流側に送り込みローラ対35が配置されていることになる。
そして、本実施の形態のプリンタ1では、用紙供給部40から巻き解かれた用紙が搬送方向下流側に向かって搬送されるときはオーバーコート部60でのオーバーコート及び印字部70でのカラー画像の印字は行われないで、印字部70よりも搬送方向下流側に配置された用紙巻取部80に一旦巻き取られた用紙が搬送方向上流側に向かって逆送されるときに印字部70での画像の印字及びオーバーコート部60でのオーバーコートが行われる。従って、プリンタ1では、用紙表面に対して、イエロー、マゼンタ、シアンの順にカラー画像の印字が可能であると共に、さらに、カラー画像が印字された用紙表面に対してオーバーコートを行うことができる。
次に、ヘッド部61、71〜73の概略構成について説明する。なお、ヘッド部61、71〜73の構成はいずれも同様であるので、ここではヘッド部73についてのみ詳細に説明する。
ヘッド部73は、用紙の搬送経路の全幅にわたって配置された多数の発熱素子(図示しない)を有するサーマルヘッド73aと、サーマルヘッド73aの先端部(用紙の搬送経路近傍であって発熱素子が配置された端部)に対向するプラテンローラ73bと、イエローに対応するインクが付着したインク領域を有するテープ状のリボン73cと、印字前のリボン73cが巻回されたリボン供給ローラ73dと、印字後のリボン73cを巻き取るリボン巻取ローラ73eとを有している。
ここで、サーマルヘッド73aは、昇降機構73f(図5参照)によって、用紙の搬送経路に対して進退可能になっている。従って、サーマルヘッド73aは、その先端部近傍とプラテンローラ73bとの間で、リボン73c及び用紙を圧接するプリント位置と圧接しない待避位置とを選択的に取り得る。
そして、ヘッド部73では、サーマルヘッド73aがプリント位置に配置されている状態で、サーマルヘッド73aとプラテンローラ73bとの間を用紙が搬送されると、サーマルヘッド73aにより加熱されたリボン73cのインクによって用紙上にイエローに対応するカラー画像を印字することができる。なお、このとき、サーマルヘッド73aとプラテンローラ73bとの間を用紙が搬送される際には、用紙が搬送されるのに伴ってリボン73cもリボン供給ローラ73dからリボン巻取ローラ73eに向かって送られる。
なお、ヘッド部61及びヘッド部71、72は、ヘッド部73と同様に、サーマルヘッド61a、71a、72aと、プラテンローラ61b、71b、72bと、リボン61c、71c、72cと、リボン供給ローラ61d、71d、72dと、リボン巻取ローラ61e、71e、72eと、昇降機構61f、71f、72fとをそれぞれ備えている。
ここで、ヘッド部61及びヘッド部71、72では、ヘッド部73のイエローに対応するインクが付着したインク領域を有するテープ状のリボン73cの代わりに、無色透明、シアン、マゼンタにそれぞれ対応するインクが付着したインク領域を有するテープ状のリボン61c、71c、72cが用いられている。
また、オーバーコート部60のヘッド部61及び印字部70の各ヘッド部71〜73近傍には、搬送経路に沿って搬送される用紙の搬送方向を規制するガイド75(図4(a)参照)が配置されている。ガイド75は、板状部材76、78と、3つの回転ローラ79とを有している。板状部材76は、用紙の搬送経路よりも上方に配置されており、板状部材78は搬送経路よりも下方において搬送経路を挟んで板状部材76と所定間隔を隔てて対向するように配置されている。3つの回転ローラ79は、用紙の搬送経路よりも上方において、各サーマルヘッド61a、71a〜73a間にそれぞれ回転自在に支持されている。
ここで、板状部材76には、図4(b)に示すように、サーマルヘッド61a、71a〜73aが挿入される矩形状の4つの開口76aと、回転ローラ79が挿入される矩形状の3つの開口76bが形成されている。また、板状部材78には、図4(c)に示すように、プラテンローラ61b、71b〜73bが挿入される矩形状の4つの開口78aが形成されている。
用紙巻取部80は、搬送経路の最下流に設けられており、印字部70よりも搬送方向下流側に搬送された用紙を巻き取りながら収納するためのものである。用紙巻取部80には、巻き取りベルト81が設けられている。巻き取りベルト81は、送り込みローラ対35よりも搬送方向下流側に配置された第1の搬送ローラ81aと、第1の搬送ローラ81aよりも搬送方向下流側に配置された第2〜第8の搬送ローラ81b〜81hとを有している。第1〜第8の搬送ローラ81a〜81hのなかで隣接する2つの搬送ローラには、エンドレスベルト82a〜82gがそれぞれ巻き掛けられている。
巻き取りベルト81は、用紙が収納される略円柱形状の空間を取り囲むように配置されている。そして、第1の搬送ローラ81aと第8の搬送ローラ81hとの間が用紙の挿入口83として開口している。本実施の形態では、図2に示すように、挿入口83となる部分の中心角は約90度である。
また、送り込みローラ対35の従動ローラ35fと第1の搬送ローラ37aとの間には、それらの回転軸を連結する連結ベルト85が巻き掛けられている。従って、送り込みローラ対35の駆動ローラ35dと従動ローラ35fとの間に用紙が挟持された状態で、駆動ローラ35dが回転駆動されている場合には、それに伴って従動回転する従動ローラ35eの回転が連結ベルト85を介して第1の搬送ローラ81aに伝達される。そして、第1の搬送ローラ81aに伝達された回転が、エンドレスベルト82a〜82gを介して、第2〜第8の搬送ローラ81b〜81hに伝達される。そのため、エンドレスベルト82a〜82gは、送り込みローラ対35によって搬送される用紙の搬送速度とほぼ同じ速度で回転するようになる。なお、エンドレスベルト82a〜82gのベルト幅は各搬送ローラのローラ幅の2分の1以下であるとともに、2本のエンドレスベルトが互いに重ならないように各搬送ローラ81a〜81hに巻き掛けられている。
ここで、第1の搬送ローラ81aと第2の搬送ローラ81bに巻き掛けられたエンドレスベルト82aの内側面は、用紙巻取部80に送り込まれる用紙の搬送経路とほぼ一致している。従って、送り込みローラ対35によって搬送方向下流側に搬送された用紙は、エンドレスベルト82によって案内されつつ、その先端部から順に挿入口83から用紙巻取部80内に挿入される。そして、用紙巻取部80に挿入された用紙は、エンドレスベルト82b〜82fの内側面に当接することによって案内される。その結果、用紙巻取部80内では、用紙が有する巻き癖にしたがって、その印字面が外側面になるように用紙の先端部から順に巻き取られる。このとき、エンドレスベルト82a〜82fが、用紙の搬送速度と同じ速度で回転しているので、用紙が用紙巻取部80の内周面に当接する際の摩擦力が軽減され、用紙に傷が付くのが抑制される。
切断部50は、用紙供給部40の近傍であって、支持部材46が排出位置に配置された場合に、給紙ローラ対31による用紙の搬送方向下流側に設けられている。また、このとき、給紙ローラ対31と切断部50との間に用紙検出センサ90が配置される。切断部50は、搬送経路よりも上方に配置されたローリングカッタ51と、搬送経路よりも下方に配置された固定刃52と、切りくずボックス53とを有している。
ローリングカッタ51は、円板形状を有しており、その円周部には全周にわたって刃が形成されている。そして、ローリングカッタ51は、その中心部がシャフト51aで保持されている。ローリングカッタ51は、シャフト51aを介して、切断制御部27cによって制御される駆動機構55(図5参照)に接続されている。駆動機構55は、シャフト51aを介して、ローリングカッタ51を回転駆動すると共に、用紙の搬送経路を直交する方向に沿って(図2では紙面に直交する方向に沿って)往動または復動させる。一方、固定刃52は、用紙の搬送経路に直交するように配置されており、用紙の搬送経路の全幅よりも長い矩形刃である。
従って、切断部50による切断位置に用紙が配置された状態において、切断制御部27cが駆動機構55を制御して、ローリングカッタ51を回転させつつ用紙の幅方向に沿って移動させると、ローリングカッタ51と固定刃52との相互作用によって用紙が切断される。なお、本実施の形態のプリンタ1では、後述するように切断部50は各画像の先端部及び後端部において用紙を切断する。
また、切りくずボックス53は、ローリングカッタ51及び固定刃52の下方に配置されている。従って、各画像の先端部または後端部において用紙が切断されて余白部が切断されると、その余白部は切りくずボックス53内に収納される。
プリントボックス96は、切断部50よりも搬送方向下流側に配置されており、印字部70における画像の印字及びオーバーコート部60におけるオーバーコートが行われた後、さらに切断部50によって切断された各カラー画像が印字された用紙(プリント)を排出するためのものである。また、プリントボックス96は、上端部が開口された箱状の部材であって、筐体30aから引き出し可能に構成されている。従って、プリントボックス96は、筐体30a内に収納された状態(図2で実線で示す状態)と、筐体30aの正面(図2では左面)に設けられた開口95から筐体30a外に引き出された状態(図2で破線で示す状態)とを取り得る。よって、オペレータは、プリントボックス96をプリンタ1(筐体30a)の正面から外部に引き出すことによって、各カラー画像が印字された用紙を容易に取り出すことができる。
制御装置20には、図5に示すように、用紙供給部40の回転軸43を駆動するモータ43aと、給紙ローラ対31、搬送ローラ対34及び送り込みローラ対35をそれぞれ駆動するモータ31a、34a、35aと、搬送ローラ対34の回転数を検出するエンコーダ36と、切断部50のローリングカッタ51の駆動機構55と、オーバーコート部60及び印字部70のサーマルヘッド61a、71a〜73aの昇降機構61f、71f〜73f及びドライバ61g、71g〜73gと、支持部材46の駆動機構48と、画像検出センサ90と、用紙検出センサ91と、操作部10とがそれぞれ接続されている。
また、制御装置20は、適切なソフトウェアにより制御されるCPUやROM、RAMなどのハードウェアを備えており、最大巻取量記憶部21と、プリント情報記憶部22と、必要巻取量算出部23と、比較部24と、巻取量決定部25と、搬送量検知部26と、搬送制御部27aと、印字制御部27bと、切断制御部27cとを有している。
最大巻取量記憶部21は、用紙供給部40から用紙巻取部80に向かって用紙が搬送される場合に、印字部70よりも搬送方向下流側に搬送可能な用紙の最大長さを最大巻取量として記憶する。この最大巻取量は、印字部70の搬送方向について最も下流側に配置されたヘッド部73による印字位置と用紙巻取部80の挿入口82との間の搬送経路の長さと、用紙巻取部80内に巻き取り可能な用紙の長さとを足し合わせることによって算出される値である。なお、最大巻取量は、オペレータによって最大巻取量記憶部21に対して入力される。
ここで、最大巻取量は、主として用紙巻取部80の内部空間の大きさによって大きく変化する。なお、用紙巻取部80内に巻き取り可能な用紙の長さは、実際に用紙巻取部80の内部空間に収容可能な用紙の最大長さであってもよいし、その内部空間に収容可能な用紙の最大長さより短くてもよく、任意に設定可能である。そこで、本実施の形態では、最大巻取量が算出される際に用いられる用紙巻取部80内に巻き取り可能な用紙の長さは、その内部空間において用紙が破損したり傷が付いたりしない範囲の長さであって、内部空間に収容可能な用紙の最大長さよりは短い長さが設定されている。
プリント情報記憶部22は、カラー画像が印字される際の種々の設定値を記憶する。ここで、設定値としては、プリント種類毎の1コマのプリント長さ(搬送方向長さ)、プリント枚数(コマ数)、隣り合う画像間に形成される余白部の長さ、ヘッド放熱用の余白部の長さ(追加長さ)などが含まれる。プリント種類毎の1コマのプリント長さは、例えば標準サイズ、パノラマサイズなどの複数のプリントの種類毎に複数の値が記憶されている。プリント枚数は、プリント開始前に、オペレータによってオーダー毎に入力される値が記憶される。また、画像間の余白部の長さ及びヘッド放熱用の追加長さは、プリント開始前に、オペレータによって入力される値が記憶される。なお、追加長さは、画像を印字するために発熱したサーマルヘッド71a、72a、73a及びオーバーコートを行うために発熱したサーマルヘッド61aの温度が、通電終了後にその周囲温度と実質的に同じになるまで用紙が各サーマルヘッド61a、71a〜73aと対向しているような長さに設定されている。本実施の形態では、発熱した各サーマルヘッド61a、71a〜73aが、いずれもその周囲温度と実質的に同じになるまでに必要な時間と、搬送方向上流側に向かって逆送される用紙の搬送速度との積によって追加長さが算出される。なお、本実施の形態では、隣り合う画像間に形成される余白部及びヘッド放熱用の余白部は、画像との境界で切断されて廃棄される領域である。
必要巻取量算出部23は、1オーダーに含まれる複数のカラー画像の全てを印字するために必要な用紙の長さを必要巻取量として算出する。つまり、1オーダーに含まれる複数のカラー画像の全てを印字するためには、印字部70でのカラー画像の印字を開始する前に、これらのカラー画像を印字可能な長さの用紙を印字部70よりも搬送方向下流側に搬送しておく必要がある。従って、用紙供給部40から用紙巻取部80に向かって用紙が搬送される場合に、1オーダーに含まれる複数のカラー画像の全てを印字するために、印字部70のヘッド部73による印字位置を超えて搬送されるべき用紙の長さが必要巻取量として算出される。
ここで、必要巻取量について、図6を参照して説明する。図6は、1オーダーに含まれる複数のカラー画像が用紙の先端部近傍に印字されるときの様子を示す図である。なお、図6では、1オーダーには同じプリント種類の画像が6個含まれる場合について図示している。図6に示すように、用紙の先端(図6では左端部)近傍にヘッド放熱用の追加長さzに対応する領域が設けられ、そこから上流側(図6では右方)に向かって、プリント長さxに対応する領域と余白部長さyに対応する領域がプリント枚数nだけ交互に設けられる。
従って、必要巻取量算出部23では、プリント開始前に、オペレータによって、1オーダーに含まれるカラー画像のプリント種類及びプリント枚数が入力されると、プリント情報記憶部22に記憶された各値に基づいて、1オーダーに対応する必要巻取量Lが下記の式によって算出される。
L=z+x×n+y×(n−1)
比較部24は、必要巻取量算出部23で算出された必要巻取量と最大巻取量記憶部21に記憶された最大巻取量とを比較する。そして、比較部24は、必要巻取量と最大巻取量との間の大小関係についての比較結果を得る。
巻取量決定部25は、用紙の搬送方向が搬送方向下流側に向かう方向から搬送方向上流側に向かう方向に変更される前に、実際に印字部70よりも搬送方向下流側に搬送される用紙の長さ(実際の巻取量)、すなわち、実際に印字部70のヘッド部73に対向する位置を超えて搬送される用紙の長さを決定する。ここで、巻取量決定部25は、比較部24による比較結果に基づいて巻取量を決定する。つまり、巻取量決定部25は、比較部24において必要巻取量が最大巻取量以下であるという比較結果が得られた場合は、実際の巻取量を必要巻取量に決定し、一方、比較部24において必要巻取量が最大巻取量より長いという比較結果が得られた場合は、実際の巻取量を最大巻取量に決定する。
搬送量検知部26は、用紙検出センサ91によって用紙の先端が検出された後にエンコーダ36により検出される搬送ローラ対34の回転数に基づいて、用紙の搬送量を検知する。つまり、搬送量検知部26は、用紙検出センサ91による検出位置よりも搬送方向下流側に搬送された用紙の長さを検知する。その結果、搬送量検知部26は、用紙の搬送方向が搬送方向下流側に向かう方向から搬送方向上流側に向かう方向に変更される前に、印字部70よりも搬送方向下流側に搬送された用紙の長さを検知することができる。なお、後述するように、用紙の先端部が送り込みローラ対35に到達した後は、搬送ローラ対34から与えられる搬送力ではなく送り込みローラ対35から与えられる搬送力によって用紙が搬送されるようになるが、この場合でも、搬送量検知部26では、常に搬送ローラ対34の回転数に基づいて用紙の搬送量が検知される。
搬送量検知部26は、用紙が搬送方向下流側に向かって搬送される場合だけでなく、用紙が搬送方向上流側に向かって搬送される場合にも、用紙の搬送量を検知することができる。従って、用紙の搬送方向が搬送方向下流に向かう方向から搬送方向上流に向かう方向に変更された場合には、搬送方向が変更される前の搬送方向下流側への搬送量から、搬送方向が変更された後の搬送方向上流側への搬送量を差し引くことによって、用紙の先端位置を検知することができる。
搬送制御部27aは、回転軸43、給紙ローラ対31、搬送ローラ対34及び送り込みローラ対35を駆動するモータ43a、31a、34a、35aを制御することによって、用紙を用紙供給部40から用紙巻取部80に向かって搬送すると共に、用紙を用紙巻取部80から用紙供給部40に向かって逆送させる。
また、搬送制御部27aは、支持部材46に連結された駆動機構48を制御することによって、用紙供給部40に巻き戻された用紙を切断部50及びプリントボックス96に向かう排出方向に搬送可能にすると共に、給紙ローラ対31を駆動するモータ31aを制御することによって、用紙を切断部50及びプリントボックス96に向かう方向に搬送する。
印字制御部27bは、オーバーコート部60のサーマルヘッド61a及び印字部70のサーマルヘッド71a〜73aの昇降タイミング及び印字タイミングを制御する。詳細には、印字制御部27bは、用紙が搬送方向下流側に搬送される際には、サーマルヘッド61a、71a〜73aを退避位置とし、用紙が搬送方向上流側に逆送される前に、サーマルヘッド61a、71a〜73aをプリント位置とするように昇降タイミングを制御する。また、印字制御部27bは、搬送方向上流側に逆送されている用紙に対して、1オーダーに含まれる複数のカラー画像が余白部の長さ分だけ隔ててそれぞれ印字され、且つ、最後に印字されたカラー画像よりも用紙の先端部側の追加長さに対応する領域には画像が印字されないように印字タイミングを制御する。さらに、印字制御部27bは、用紙のカラー画像が印字された領域のみにオーバーコートを行うようにオーバーコート部60を制御する。
切断制御部27cは、切断部50での切断タイミングを制御する。詳細には、切断制御部27cは、用紙検出センサ90で用紙の先端が検出されたタイミングと、給紙ローラ対31による用紙の搬送量に基づいて、各カラー画像の後端部が、切断部50による切断位置に到達したことを検知し、そのカラー画像の後端部が切断されるように切断部50を制御する。
次に、プリンタ1において、画像の印字が行われる際の動作について、図7を参照して説明する。図7は、プリンタ1での動作手順を示すフローチャートである。
まず、用紙供給部40に装填された用紙の巻回部45から回転軸43が回転駆動されることによって巻き解かれた用紙の先端部が、給紙ローラ対31から与えられる搬送力だけによって搬送される(ステップS101)。そして、用紙の先端部が搬送ローラ対34を通過して用紙検出センサ91に到達するまで給紙ローラ対31による搬送が継続される(ステップS102)。ここで、用紙検出センサ91により用紙の先端部が検出されると、用紙検出センサ91から制御装置20に対して用紙の先端部を検出した旨の検出信号が送信される。
このようにして、用紙の先端部が用紙検出センサ91に到達した時点で、用紙の搬送が停止されて待機状態になる(ステップS103)。このとき、サーマルヘッド61a、71a〜73aがプリント位置に配置されている場合は、サーマルヘッド61a、71a〜73aが待避位置に移動させられる(ステップS104)。
その後、オペレータからの注文(オーダー)の受付があって、1オーダーに含まれるカラー画像のプリント種類及びプリント枚数が入力されると(ステップS105)、用紙の搬送を開始する準備として、プリント情報記憶部22に記憶された情報に基づいて、その1オーダーに対応する必要巻取量が必要巻取量算出部23によって算出される(ステップS106)。すると、比較部24によって、この必要巻取量と最大巻取量記憶部21に記憶された最大巻取量とが比較される(ステップS107)。その比較結果に基づいて、巻取量決定部25によって、実際の巻取量が決定される(ステップS108)。このようにして、用紙の搬送準備が終了した後で、搬送ローラ対34から与えられる搬送力だけによって用紙が搬送される(ステップS109)。なお、このとき、用紙供給部40の回転軸43及び給紙ローラ対31はいずれも回転自在になっている。
その後、サーマルヘッド61a、71a〜73aが待避位置に配置された状態において、用紙の先端部が、オーバーコート部60及び印字部70をオーバーコート及び画像の印字が行われないまま通過して送り込みローラ対35に到達するまで、搬送ローラ対34から与えられる搬送力だけによって搬送が継続される(ステップS110)。そして、用紙の先端部が送り込みローラ対35に到達して挟持されるようになると、それ以後は送り込みローラ対35から与えられる搬送力だけによって用紙が搬送されて、用紙の先端部から用紙巻取部80内に順次送り込まれる(ステップS111)。このとき、用紙が用紙巻取部80内に送り込まれるにつれて、用紙の先端部が巻き取りベルト81に案内されて、用紙がその巻き癖にしたがって巻き取られる。なお、用紙の先端部が送り込みローラ対35に到達した時点で、搬送ローラ対34は、ワンウェイクラッチ34cの機能により、用紙に搬送力を与える状態から送り込みローラ対35により搬送される用紙に伴って従動回転する状態に切り換えられる。
その後、巻取量決定部25で決定された巻取量の長さの用紙が、ヘッド部73による印字位置よりも搬送方向下流側に搬送された時点で、用紙の巻き取りが終了して、用紙供給部40から用紙巻取部80に向かって用紙が搬送されるのが停止される(ステップS112)。つまり、搬送量検知部26において、用紙検出センサ91によって用紙の先端部が検出された後にエンコーダ36により検出される搬送ローラ対34の回転数に基づいて検知される用紙の搬送量が、巻取量決定部25で決定された巻取量と、オーバーコート部60及び印字部70における搬送経路の長さとを足し合わせた長さに一致した時点で、搬送制御部27aは用紙の巻き取りを終了し、用紙の搬送方向下流側への搬送を停止する。なお、このとき、ヘッド部73による印字位置には、巻取量の長さの用紙の最も搬送方向上流側に印字される画像の後端部が配置されている。
そして、オーバーコート部60のサーマルヘッド61a及び印字部70のサーマルヘッド71a〜73aが待避位置からプリント位置に同時に移動させられる(ステップS113)。その後、給紙ローラ対31及び搬送ローラ対34から与えられる搬送力によって用紙が搬送方向上流側に向かって逆送される(ステップS114)。従って、このとき、従動回転する状態であった給紙ローラ対31及び搬送ローラ対34は、用紙を搬送方向上流側に向かって搬送する方向に回転駆動されると共に、送り込みローラ対35は、ワンウェイクラッチ35cの機能により、従動回転するようになる。また、用紙供給部40の回転軸43は用紙を巻き戻す方向に回転駆動される。
そして、用紙が搬送方向上流側に向かって逆送されながら、1オーダーに含まれる各カラー画像について、ヘッド部73によってイエローに対応する印字、ヘッド部72によってマゼンタに対応する印字、ヘッド部71によってシアンに対応する印字が順次行われる。このようにして、各カラー画像について、イエロー、マゼンタ、シアンの順に印字が行われることによってカラー画像が完成する(ステップS115)。その後、引き続き、ヘッド部61によって、カラー画像が印字された用紙の表面に対してオーバーコートが行われる(ステップS116)。そして、用紙が搬送方向上流側へ逆送されながら、複数のカラー画像についての印字及びオーバーコートが終了すると、オーバーコート部60のサーマルヘッド61a及び印字部70のサーマルヘッド71a〜73aがプリント位置から待避位置に同時に移動させられる(ステップS117)。
なお、本実施の形態では、必要巻取量が最大巻取量よりも短い場合には、用紙の搬送方向上流側への逆送が開始されると同時に、カラー画像の印字が開始され、1オーダーに含まれるカラー画像の全てが各画像間に所定幅の余白部が形成されるように断続的に印字される。一方、必要巻取量が最大巻取量よりも長い場合には、用紙の搬送方向上流側への逆送が開始されると同時に、カラー画像の印字が開始され、1オーダーに含まれるカラー画像の一部が各画像間に所定幅の余白部が形成されるように断続的に印字される。つまり、上述したように、用紙には、画像領域と余白部とが交互に配置されるようにカラー画像が印字される。ただし、用紙先端近傍のヘッド放熱用の追加長さに対応する領域には画像は印字されない。そして、印字部70では、3つのヘッド部71〜73のうちの少なくとも2つに対向する位置に同じタイミングで画像領域がある場合には、それらのヘッド部によって同時に印字が行われる。また、オーバーコート部60でのオーバーコートは、印字部70でのカラー画像の印字と並行して行われる。このようにして、印字部70及びオーバーコート部60では、巻取量決定部25により決定された巻取量の長さの用紙または最大巻取量の長さの用紙に対して印字可能な複数のカラー画像についての印字及びオーバーコートが行われる。
引き続き、用紙が搬送方向上流側に向かって逆送されることによって、用紙供給部40から巻き解かれた用紙のほぼ全てが用紙供給部40に巻き戻される(ステップS118)。そして、用紙の先端が用紙検出センサ90による検出位置に到達して、用紙の先端近傍が給紙ローラ対31に挟持されたタイミングで、支持部材46の位置が通常位置から排出位置に移動される(ステップS119)。その後、給紙ローラ対31によって、用紙供給部40から切断部50に向かう排出方向に用紙が搬送される(ステップS120)。
そして、給紙ローラ対31から与えられる搬送力のみで用紙が搬送されて、用紙の先端が用紙検出センサ90による検出位置に到達すると、用紙検出センサ90から制御装置20に対して用紙の先端を検出した旨の検出信号が送信される(ステップS121)。すると、この後の給紙ローラ対31による用紙の搬送量に基づいて、切断制御部27cにより、カラー画像の先端部が切断部50による切断位置に到達したことが検知される。このとき、用紙の搬送が停止され、カラー画像の先端部で用紙が切断される(ステップS122)。この後、給紙ローラ対31による用紙の搬送が再開され、切断制御部27cにより、カラー画像の後端部が切断部50による切断位置に到達したことが検知される。このとき、用紙の搬送が停止され、カラー画像の後端部で用紙が切断される(ステップS123)。このようにして、カラー画像の先端部及び後端部を切断された用紙は、その印字面が上面となった状態で、プリントボックス96に収納される。
カラー画像の後端部での用紙の切断が行われる度に、切断された用紙に印字されたカラー画像が、その直前に、用紙が逆送される際に印字された画像のなかの最終画像であるか否かが判断される(ステップS124)。ここで、最終画像でないと判断されると、再び用紙が搬送され、ステップS122に戻って、上述と同様の処理が繰り返される。
一方、最終画像であると判断されると、1オーダーに含まれるカラー画像の全ての印字が終了したか否かが判断される(ステップS125)。ここで、1オーダーに含まれるカラー画像の全ての印字が終了していないと判断されると、ステップS106に戻って、上述と同様の処理が繰り返される。一方、1オーダーに含まれるカラー画像の全ての印字が終了したと判断されると、処理が終了する。
なお、ステップS125で、1オーダーに含まれるカラー画像の全ての印字が終了していないと判断される場合とは、例えば比較部24において必要巻取量が最大巻取量より長いと判断されて、巻取量決定部25が最大巻取量を最終的な巻取量として決定した場合である。つまり、この場合には、1オーダーに含まれるカラー画像のなかで最大巻取量の長さの用紙に印字することができなかった残りのカラー画像の印字が引き続き行われる。このようにして、1オーダーに含まれるカラー画像の全ての印字が終了するまで、上述と同様の処理が繰り返される。
以上のように、本実施の形態のプリンタ1では、用紙供給部40から用紙巻取部80に向かう方向に用紙を搬送した後で、オーバーコート部60及び印字部70よりも搬送方向上流側に配置された搬送ローラ対34による搬送力によって搬送方向上流側に向かって逆送される用紙に複数のカラー画像を印字することができる。そのため、搬送後逆送される用紙部分の先端からの領域にカラー画像を印字可能であると共に、用紙の搬送中の負荷変動に起因して画像が悪化するのを抑制できる。また、複数のカラー画像を用紙に印字する場合でも、用紙を1往復させるだけでよく、搬送機構38における用紙の搬送方向を1回切り換えるだけでよいので、搬送方向の切り換えに基づく時間的な搬送ロスを低減できる。その結果、複数のカラー画像を用紙に印字する場合において、用紙の無駄及び用紙の搬送中の負荷変動に起因する画像悪化を防止しつつ、プリンタ1の処理能力を向上させることができる。
また、搬送方向上流側に向かって逆送されつつ印字部70によってカラー画像が印字された用紙は、一旦、用紙供給部40に巻き戻される。その後、カラー画像が印字された用紙は、支持部材46が排出位置に移動された後で、用紙供給部40から切断部50に向かう排出方向に搬送されながら切断される。そのため、印字部70によるカラー画像の印字と、切断部50による用紙の切断とが同時に行われることがない。従って、カット時の振動に起因してカラー画像が悪化するのを防止することができる。また、カット時の振動を吸収するループを形成する必要がないので、ループ形成機構が不要となり製造コストを低減できると共に、ループ形成に必要な空間の分だけプリンタが大型化してしまうのを防止することができる。
また、支持部材46が通常位置にある状態では、給紙ローラ対31がその印字面が下面となった状態の用紙を挟持しているが、支持部材46が排出位置にある状態では、給紙ローラ対31がその印字面が上面となった状態の用紙を挟持するようになる。そして、印字面が上面となった状態の用紙が切断部50によって切断されて、プリントボックス96内に排出される。従って、プリントボックス96内には、印字面が上面となった用紙が排出されるので、用紙の印字面に傷が付くのが抑制されると共に、用紙に印字されたカラー画像が確認し易くなる。
また、支持部材46が排出位置にある状態において、給紙ローラ対31と切断部50との間には用紙検出センサ90が配置されており、用紙検出センサ90によって用紙の先端が検出されたタイミングの後の給紙ローラ対31による搬送量に基づいて、用紙がカラー画像の先端部及び後端部で切断される。従って、給紙ローラ対31によって用紙を排出方向に搬送しつつ用紙を適正な位置で切断することができる。
次に、本発明の第2の実施の形態に係るプリンタについて、図8を参照して説明する。図8は、本発明の第2の実施の形態に係るプリンタのプリント部の概略構成を示す図である。
図8に示す第2の実施の形態に係るプリンタのプリント部130が、第1の実施の形態に係るプリンタ1のプリント部30と主に異なる点は、プリント部30では、用紙が用紙供給部40に巻き戻された後で支持部材46が回転され、その後、給紙ローラ対31によって排出方向に搬送されつつ用紙が切断されているが、プリント部130では、用紙が用紙供給部40に巻き戻された後で、再度、給紙ローラ対31によって先の搬送経路と同じ搬送経路に沿って搬送されつつ用紙が切断される点である。なお、プリンタ部130のその他の構成は、プリンタ部30の構成と同じであるので、同じ符号を付けて詳細な説明は省略する。
なお、本実施の形態では、給紙ローラ対31及び用紙検出センサ90は、第1の実施の形態において、支持部材46が通常位置にある状態の位置に配置されている。また、切断部150は、給紙ローラ対31とターンローラ対132との間に配置されている。なお、切断部150の構成は、切断部50の構成と同様であるので説明は省略する。
プリント部130において、給紙ローラ対31の搬送方向下流側に配置されたターンローラ対132は、搬送経路の内側に配置された大径の主ローラ132aと、小径の補助ローラ132b、132cとを有している。ここで、補助ローラ132bは、水平方向に搬送される用紙を主ローラ132aとの間で挟持し、補助ローラ132cは、主ローラ132aの外周面に沿って搬送方向が変更されることによって上方に向かって搬送される用紙を主ローラ132aとの間で挟持する。また、補助ローラ132cは、主ローラ132aから離隔する位置(図8で破線で示す位置)に移動可能になっている。
また、ターンローラ対132の下方には、プリントボックス196が配置されている。プリントボックス196は、上端部が開口された箱状の部材であって、筐体130aの開口195から引き出し可能に構成されている。
従って、用紙が用紙供給部40に巻き戻された後で、再度、搬送方向下流側へ搬送されて所定長さに切断された用紙が、主ローラ132aと補助ローラ132bとの間を通過し、主ローラ132aと補助ローラ132cだけで挟持されることによって搬送経路上に配置される所定長さの用紙は、補助ローラ132cが主ローラ132aから離隔する位置に移動されることによって、主ローラ132aと補助ローラ132cとによって挟持されなくなる。すると、主ローラ132aと補助ローラ132cとによって挟持されなくなった所定長さの用紙は、プリントボックス196に収納される。
以上説明したように、本実施の形態のプリンタでは、第1の実施の形態と同様に、用紙の無駄及び用紙の搬送中の負荷変動に起因する画像悪化を防止しつつ、プリンタの処理能力を向上させることができる。
また、搬送方向上流側に向かって逆送されつつ印字部70によってカラー画像が印字された用紙は、一旦、用紙供給部40に巻き戻される。その後、カラー画像が印字された用紙は、再度、搬送方向下流側に向かって搬送されながら切断される。そのため、印字部70によるカラー画像の印字と、切断部50による用紙の切断とが同時に行われることがない。従って、カット時の振動に起因してカラー画像が悪化するのを防止することができる。また、カット時の振動を吸収するループを形成する必要がないので、ループ形成機構が不要となり製造コストを低減できると共に、ループ形成に必要な空間の分だけプリンタが大型化してしまうのを防止することができる。
以上、本発明の好適な一実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。例えば、上述の第1及び第2の実施の形態では、オーバーコート部60及び印字部70よりも搬送方向上流側に配置された搬送ローラ対34による搬送力によって搬送方向上流側に向かって逆送される用紙にカラー画像が印字されているが、これには限られない。従って、オーバーコート部60及び印字部70よりも搬送方向下流側に配置された搬送ローラ対による搬送力によって搬送方向上流側に向かって逆送される用紙にカラー画像が印字されてもよい。
また、上述の第2の実施の形態では、所定長さに切断された用紙が、ターンローラ対132の主ローラ132aと補助ローラ132cだけで挟持された状態で、補助ローラ132cが主ローラ132aから離隔する位置に移動されることによって、用紙がその印字面が上面となった状態でプリントボックス196に収納されているが、用紙がその印字面が上面となった状態でプリントボックス196に収納されるように、用紙を反転させる構成は変更することができる。
また、上述の第1及び第2の実施の形態では、印字部70が複数のヘッド部71〜73を有しており、用紙に対してカラー画像が印字されているが、印字部が1つのヘッド部だけを有しており、用紙に対して一色の画像が印字されてもよい。
また、上述の実施の形態では、熱昇華方式のプリンタ1において、記録媒体である用紙と接触する3つのヘッド部71〜73によってカラー画像が印字されているが、カラー画像を記録可能なプリンタであれば、その画像記録部の構成はこれに限られない。従って、記録媒体と接触するヘッドを有するサーマルプリンタ(熱転写方式及び感熱記録方式を含む)であってもよいし、例えばインクジェットヘッド、FOCRT(Fiber Optic Cathode-Ray-Tube)、レーザ光源などを有しており、記録媒体と接触しないでカラー画像を記録可能なプリンタであってもよい。また、画像記録部は、必ずしも複数の画像記録ヘッドを有している必要はなく、カラー画像を記録可能な1つの画像記録ヘッドだけを有していてもよい。従って、例えばイエロー、マゼンタ、シアンのインクを吐出可能なノズルをそれぞれ有する3つのインクジェットヘッドを有しており、それらのヘッドが記録媒体の搬送方向に交差する方向に往復動しつつカラー画像を記録するプリンタであってもよいし、イエロー、マゼンタ、シアンのインクを吐出可能なノズルを有する1つのインクジェットヘッドを有しており、そのヘッドが記録媒体の搬送方向に交差する方向に往復動しつつカラー画像を記録するプリンタであってもよい。