本発明のプリンタは、記録媒体にカラー画像を記録可能な画像記録部と、巻回された状態の長尺の記録媒体を貯留した供給部と、記録媒体を前記画像記録部に対向させつつ前記供給部から前記画像記録部に向かう第1の方向、及び前記第1の方向と反対方向である第2の方向に搬送可能な搬送機構と、記録媒体において前記画像記録部に対して前記供給部と反対側にある領域の少なくとも一部を格納することが可能な格納部と、記録媒体が前記第1の方向に搬送されて前記格納部に格納された後に前記第2の方向に搬送されるように、前記搬送機構を制御する搬送制御手段と、前記搬送機構によって前記第2の方向に搬送されている記録媒体に前記画像記録部によって複数のカラー画像が記録されるように、前記画像記録部を制御する画像記録制御手段とを備えており、前記搬送機構が、前記画像記録部に対して前記供給部とは反対側において、記録媒体の搬送経路に沿った位置に配置された第1のローラと、前記第1のローラに対して前記供給部とは反対側において、記録媒体の搬送経路に沿った位置に配置された第2のローラと、前記第1及び第2のローラの巻き掛けられ、記録媒体を搬送可能な第1のエンドレスベルトとを備えている。
この構成によると、供給部で巻回された状態の長尺の記録媒体を、供給部から画像記録部に向かう第1の方向に記録媒体を搬送した後で第2の方向に搬送される記録媒体に複数のカラー画像を記録することができる。そのため、記録媒体の先端近傍(第1の方向に搬送された後で第2の方向に逆送される記録媒体部分の先端からの領域)にカラー画像を記録可能であると共に、記録媒体の搬送中の負荷変動に起因して画像が悪化するのを抑制することができる。また、複数のカラー画像を記録媒体に記録する場合でも、記録媒体を1往復させるだけでよく、搬送機構における記録媒体の搬送方向を1回切り換えるだけでよいので、搬送方向の切り換えに基づく時間的な搬送ロスを低減できる。その結果、複数のカラー画像を記録媒体に記録する場合において、記録媒体の無駄及び記録媒体の搬送中の負荷変動に起因する画像悪化を防止しつつ、プリンタの処理能力を向上させることができる。また、格納部を備えているので、記録媒体のカラー画像が記録される面が傷付きにくくなる。格納部が備えられていない場合には、記録媒体のカラー画像が記録される面がプリンタ筐体の底面等に接触することによって、埃が付着したり傷付いたりするからである。従って、カラー画像の品質低下を軽減できる。さらに、第1及び第2のローラに巻き掛けられた第1のエンドレスベルトによって記録媒体を搬送することができるので、記録媒体のカラー画像が記録される面がより一層傷付きにくくなる。
本発明のプリンタにおいて、前記格納部がさらに円形断面部材を有していてもよい。かかる場合には、前記第1のエンドレスベルトが、前記円形断面部材との間で記録媒体を挟持しつつ搬送することが好ましい。
この構成によると、格納部に記録媒体を格納しやすくなる。即ち、第1のエンドレスベルトと円形断面部材との間で記録媒体を挟持しつつ搬送するので、容易に円形断面部材に巻回させることが可能となる。
本発明のプリンタにおいて、前記搬送機構は、前記供給部と前記画像記録部との間において記録媒体に搬送力を付与することによって、記録媒体を前記第2の方向に搬送可能であってもよい。
本発明のプリンタにおいて、前記搬送機構が、前記画像記録部と前記格納部との間において前記第1の方向への搬送力を記録媒体に付与する送り込み駆動ローラをさらに備えていてもよい。このとき、前記送り込み駆動ローラの回転が、直接的又は間接的に、前記第1のローラ又は前記第2のローラに伝達されることが好ましい。
この構成によると、前記第1のローラ又は前記第2のローラを回転させるための駆動手段を設けることなく、これらのローラを回転させることが可能となるので、簡易な構成且つ安価なプリンタを提供することが可能となる。
この構成によると、送り込み駆動ローラから記録媒体の送出方向に直進した記録媒体の先端を、前記円形断面部材と第1のエンドレスベルトとの間にスムーズに誘導しやすくなる。
本発明のプリンタにおいて、前記搬送機構が、前記送り込み駆動ローラと対になった送り込み従動ローラと、前記送り込み駆動ローラ及び前記送り込み従動ローラのいずれか一方と前記第1のローラとに巻き掛けられた環状伝達部材とをさらに備えていることが好ましい。
本発明のプリンタにおいて、前記送り込み駆動ローラによる記録媒体の搬送速度が、前記第1のエンドレスベルトによる記録媒体の搬送速度と同じであることが好ましい。
この構成によると、送り込み駆動ローラから送り出された用紙が第1のエンドレスベルトによって搬送される際に引っ張られたり撓んだりすることがない。その結果、記録媒体においてカラー画像が記録される面に作用する第1のエンドレスベルトからの負荷が軽減されるので、カラー画像の品質に悪影響を及ぼすことなく、スムーズに円形断面部材に記録媒体を巻回させることが可能となる。
本発明のプリンタにおいて、前記搬送機構が、前記円形断面部材を取り囲むようにそれぞれ配置された第3〜第n(n:3以上の自然数)のローラと、前記第2のローラから前記第nのローラまでにおいて隣接する2つのローラにそれぞれ巻き掛けられて、前記円形断面部材との間で記録媒体を挟持しつつ搬送する第2〜第n−1のエンドレスベルトとを備えていることが好ましい。
この構成によると、円形断面部材の外周面を取り囲むように配置されたエンドレスベルトを第1の方向に回転させることによって、円形断面部材と前記第1のエンドレスベルトとで挟持された記録媒体を円滑に円形断面部材に巻回させることが可能となる。従って、画像が記録される面に傷が付く可能性もより一層低くなる。さらに、円形断面部材の外周面を取り囲むように配置されたエンドレスベルトを第2の方向に回転させることによって、用紙の画像が記録される面に付く傷を軽減させつつ、円形断面部材に巻回された記録媒体を容易に巻き解くことが可能となる。
本発明のプリンタは、前記第1〜第n−1のエンドレスベルトによる記録媒体の搬送方向と同じ方向に記録媒体が搬送されるように前記円形断面部材を回転駆動するための駆動機構をさらに備えていることが好ましい。
この構成によると、画像記録部に対して供給部と反対側の方向(第1の方向)に搬送された記録用紙の先端を、円形断面部材と第1のエンドレスベルトとの間に進入させやすくなる。また、用紙の画像が記録されない面と円形断面部材との間の摩擦を小さくすることができるので、用紙の画像が記録されない面に傷が付きにくくなる。
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るプリンタの外観斜視図である。図2は、図1のプリンタのプリント部の概略構成を示す図である。図3は、図1のプリンタの搬送ローラ対及び送り込みローラ対の動きを表す図である。図4は、図1のプリンタの主要部及びこれらが接続された制御装置についてのブロック図である。
図1に示す熱昇華方式のサーマルプリンタ1(以下、「プリンタ1」と称する)は、操作部10と、制御装置20と、プリント部30とを有している。操作部10は、オペレータがプリンタ1に対する操作を行うものであって、プリンタ1に関する様々な情報を表示してオペレータに告知するディスプレイ11を有している。ここで、本実施の形態では、操作部10にはタッチパネル方式が採用されており、ディスプレイ10には様々なボタンを含む操作画面12が表示される。従って、オペレータは、操作画面12に触れることによってプリンタ1に対する操作を実行することができる。
制御装置20は、操作部10からの入力を受信すると共に、プリンタ1における各種の動作を制御するためのものである。また、制御装置20は、カードスロットやディスクドライブなどの種々の記憶媒体からプリントデータを取得するための複数のデータ入力部20aを有している。なお、記憶媒体としては、例えばCD−ROM、メモリーカードなど、プリントデータを記憶可能なものであればどのようなものであってもよい。
ここで、操作部10及び制御装置20は、プリント部30を収容する筐体30Aの上面に固定配置されている。ここで、操作部10のディスプレイ11の表示面及び制御装置20のデータ入力部20aの記憶媒体挿入面は、プリンタ1(筐体30A)の正面(図1では左手前側の面)とほぼ一致している。従って、プリンタ1の正面に向かうオペレータにとって、ディスプレイ11及びデータ入力部20aに対する操作が行い易くなっている。
また、筐体30Aは、略直方体形状を有しており、その横幅(正面の幅)D1は奥行きD2よりも小さくなっている。従って、プリンタ1は、横幅の比較的狭い空間においても設置することが可能である。さらに、筐体30Aの正面には、筐体30A内に収納された後述するプリントボックス96を筐体30A外に引き出すための開口95が形成されている。
プリント部30は、図2に示すように、筐体30A内に、ロール状に巻回された用紙を保持する用紙供給部40と、用紙供給部40から巻き解かれた用紙を巻き取る用紙巻取部80と、用紙供給部40と用紙巻取部80との間で、一方向に湾曲した搬送経路に沿って用紙を搬送可能な搬送機構38とを有している。また、用紙供給部40と用紙巻取部80との間には、搬送経路の上流側から下流側に向かって、切断部50、オーバーコート部60及び印字部70が配置されている。また、用紙供給部40と切断部50との間の搬送経路近傍には、プリントボックス96が設けられている。
なお、本実施の形態では、「用紙の搬送方向(搬送方向)」とは、用紙供給部40から用紙巻取部80に向かう方向を意味するものとする。また、「用紙の先端部」及び「画像の先端部」とは、用紙または画像の搬送方向下流側の端部を意味するものとし、「用紙の後端部」及び「画像の後端部」とは、用紙または画像の搬送方向上流側の端部を意味するものとする。
用紙供給部40は、搬送経路の最上流に設けられたマガジンケース41を有しており、その中には、長尺の用紙がその印字面が外側になるように回転軸43の周りに巻回された巻回部45が装填されている。ここで、回転軸43は、モータ43a(図4参照)によって、用紙供給部40から用紙が巻き解かれて搬送方向下流側に向かって搬送される場合には図2において反時計回りに回転駆動され、一旦巻き解かれた用紙が用紙供給部40に巻き取られる場合には図2において時計回りに回転駆動される。なお、回転軸43は、後述するワンウェイクラッチ34c、35cと同様の機能を有するワンウェイクラッチ43cを介して、モータ43aにより回転駆動されるシャフト(図示せず)と連結されている。
搬送機構38は、搬送方向上流側から順に配置されている、用紙供給部40の巻回部45から巻き解かれた用紙を上方に向かって搬送可能な給紙ローラ対31と、切断部50よりも搬送方向上流側に配置されており上方に向かって搬送される用紙の搬送方向を変更するターンローラ対32と、切断部50とオーバーコート部60との間において用紙を挟持可能な圧着ローラ対33及び用紙を搬送可能な搬送ローラ対34と、印字部70よりも搬送方向下流側に配置されており印字部70よりも搬送方向下流側に向かって搬送される用紙を用紙巻取部80に送り込むための送り込みローラ対35と、用紙巻取部80との間で用紙を挟持しつつ搬送するエンドレスベルト39a〜39gが巻き掛けられたベルト搬送ローラ37a〜37hとを有している。なお、本実施の形態では、給紙ローラ対31、ターンローラ対32、圧着ローラ対33、送り込みローラ対35、ベルト搬送ローラ37a〜37hは樹脂製のローラから構成されており、搬送ローラ対34は金属製のローラから構成されている。
ここで、給紙ローラ対31、ターンローラ対32、圧着ローラ対33、搬送ローラ対34及び送り込みローラ対35は、所定半径を有する円周(図2では二点鎖線で描かれている)に沿うように配置されている。なお、図2から分かるように、オーバーコート部60及び印字部70のヘッド部61、71〜73も上記円周に沿うように配置されていると共に、用紙供給部40及び用紙巻取部80は上記円周の内部に配置されている。また、用紙の搬送経路は、ターンローラ32及び送り込みローラ対35を境として屈曲している。
給紙ローラ対31、搬送ローラ対34及び送り込みローラ対35は、搬送制御部27a(図4参照)によって制御されるモータ31a、34a、35a(図4参照)にそれぞれ接続されており、回転駆動可能である。
ここで、図3を用いて、搬送ローラ対34及び送り込みローラ対35の動きについて詳細に説明する。図3(a)は、用紙が搬送方向下流側に搬送される際の、搬送ローラ対34及び送り込みローラ対35の動きを表しており、図3(b)は、用紙が搬送方向上流側に逆送される際の、搬送ローラ対34及び送り込みローラ対35の動きを表している。図3に示すように、搬送ローラ対34は、駆動ローラ34dと従動ローラ34eとから構成されている。そして、駆動ローラ34dは、ワンウェイクラッチ34cを介して、モータ34aにより回転駆動されるシャフト34bと連結されている。同様に、送り込みローラ対35は、駆動ローラ35dと従動ローラ35eとから構成されており、駆動ローラ35dは、ワンウェイクラッチ35cを介して、モータ35aにより回転駆動されるシャフト35bと連結されている。
ワンウェイクラッチ34c、35cは、いずれも同様の機能を有しているので、ここではワンウェイクラッチ34cの機能について説明する。ワンウェイクラッチ34cは、駆動ローラ34dに固定されており、駆動ローラ34dと一体となって回転する。そして、駆動ローラ34dが、シャフト34bの回転速度よりも速く回転する場合には、シャフト34bの回転力は駆動ローラ34dに伝達されず、駆動ローラ35dはシャフト34bに対して空回りする。また、それ以外の場合には、シャフト34bの回転力がワンウェイクラッチ34cを介して駆動ローラ34dに伝達され、シャフト34bと駆動ローラ34dとが一体となって回転する。
したがって、搬送ローラ対34が用紙を挟持している際に、用紙の搬送速度が、モータ34aによって駆動される搬送ローラ対34の回転力に基づく用紙の搬送速度よりも遅い場合には、モータ34aの駆動力が搬送ローラ対34に伝達される。そして、用紙は、搬送ローラ対34により与えられる搬送力で搬送される。一方、用紙の搬送速度が、モータ34aによって駆動される搬送ローラ対34の回転力に基づく用紙の搬送速度よりも速い場合には、モータ34aの駆動力は搬送ローラ対34に伝達されず、搬送ローラ対34は空回りする。つまり、搬送ローラ対34は、用紙の搬送速度に応じた回転数で従動回転する。
ここで、モータ34aによって駆動される搬送ローラ対34の回転力に基づく用紙の搬送速度をV1、モータ35aによって駆動される送り込みローラ対34の回転力に基づく用紙の搬送速度をV2とし、図3(a)を参照しつつ、用紙を搬送方向下流側に搬送する場合について考える。このとき、後述するように、用紙の先端部が送り込みローラ対35に到達して挟持されてからは、搬送ローラ対34の駆動が停止されるので、搬送速度V1は0となる。一方、送り込みローラ対35は、モータ35aの駆動力がシャフト35b及びワンウェイクラッチ35cを介して伝達されて回転駆動される。そして、搬送ローラ対34が挟持している用紙は、搬送速度V2で搬送されるようになるので、ワンウェイクラッチ34cの機能により、搬送ローラ対34は空回りする。
次に、図3(b)を参照しつつ、用紙を搬送方向上流側に逆送する場合について考える。このとき、後述するように、送り込みローラ対35の駆動が停止されるので、搬送速度V2は0となる。一方、搬送ローラ対34は、モータ34aの駆動力がシャフト34b及びワンウェイクラッチ34cを介して伝達されて回転駆動される。そして、送り込みローラ対35が挟持している用紙は、搬送速度V1で逆送されるようになるので、ワンウェイクラッチ35cの機能により、送り込みローラ対35は空回りする。
また、給紙ローラ対31についても、上述のワンウェイクラッチ34c、35cと同様の機能を有するワンウェイクラッチ31cを介して、モータ31aにより回転駆動されるシャフト(図示せず)と連結されている。従って、給紙ローラ対31、搬送ローラ対34及び送り込みローラ対35は、搬送制御部27aによってモータ31c、34a、35aが個別に制御されることによって、用紙供給部40から巻き解かれた用紙を搬送方向下流側に向かって搬送して用紙巻取部80に巻き取り可能であると共に、用紙巻取部80内に一旦巻き取られた用紙を再度巻き解きつつ、用紙巻取部80から巻き解かれた用紙を搬送方向上流側に向かって逆送させることができる。
また、プリント部30は、搬送ローラ対34の回転数を検出可能なエンコーダ36を有している。ここで、後述するように、搬送ローラ対34は、用紙を搬送するためにモータ34aにより駆動されて回転する状態と、送り込みローラ対35により搬送される用紙に伴って従動回転する状態とを取り得る。エンコーダ36は、搬送ローラ34が上記のいずれの状態である場合でも、搬送ローラ対34の回転数を検出することができる。
次に、図2に戻って、エンドレスベルト39a〜39gが巻き掛けられたベルト搬送ローラ37a〜37hの構成について説明する。ベルト搬送ローラ37a〜37hは、印字部70に対して用紙供給部40とは反対側において用紙の搬送経路に沿って配置された第1の搬送ローラ37aと、第1の搬送ローラ37aに対して用紙供給部40とは反対側に配置された第2の搬送ローラ37bと、用紙巻取部80を取り囲むようにそれぞれ配置された第3〜第8の搬送ローラ37c〜37hとを有している。そして、第1の搬送ローラ37aから第8の搬送ローラ37hまでにおいて隣接する2本のローラに、それぞれエンドレスベルト39a〜39gが巻き掛けられている。なお、エンドレスベルト39a〜39gのベルト幅が搬送ローラのローラ幅の2分の1以下であるとともに、2本のエンドレスベルトが互いに重ならないように各搬送ローラ37c〜37hに巻き掛けられている。
ここで、第1の搬送ローラ37aと第2の搬送ローラ37bに巻き掛けられた第1のエンドレスベルト39aが延在する方向は、用紙巻取部80と送り込み駆動ローラ35cとの共通接線と平行となっている。従って、送り込みローラ対35から搬出された用紙が、第1の搬送ローラ37aと第2の搬送ローラ37bに巻き掛けられたエンドレスベルト39aによって用紙巻取部80に巻回されるように案内されることとなる。また、用紙巻取部80を取り囲むようにそれぞれ配置された第3〜第8の搬送ローラ37c〜37hに巻き掛けられたエンドレスベルト39b〜39gは、用紙巻取部80との間で用紙を挟持しつつ用紙巻取部80に巻回される方向に用紙を搬送している。
また、第1の搬送ローラ37aは、送り込みローラ対35の従動ローラ35eにチェーン42で連結されている。従って、第1の搬送ローラ37aには、従動ローラ35eを介して駆動ローラ35dの回転が間接的に伝達される。さらに、第1の搬送ローラ37a及びそれに隣接する第2の搬送ローラ37bとの間には第1のエンドレスベルト39aが巻き掛けられているので、第2の搬送ローラ37bには、従動ローラ35cの回転が間接的に伝達されることとなる。同様にして、第n−1(nは、エンドレスベルト搬送ローラの本数を上限とした3以上の自然数。従って、本実施形態では、nは3〜8のうちいずれかの自然数となる)の搬送ローラ及びそれに隣接する第nの搬送ローラとの間には第n−1のエンドレスベルトが巻き掛けられることとなり、第nの搬送ローラには、従動ローラ35cの回転が間接的に伝達されることとなる。従って、送り込みローラ対35から搬出される用紙の搬送速度は、エンドレスベルト39a〜39gによる用紙の搬送速度とほぼ同じ速度となる。従って、用紙とエンドレスベルト39a〜39gとの間の摩擦力が軽減されるので、用紙に傷が付くのが抑制される。なお、本実施形態では用紙巻取部80は非回転部材であるが、用紙巻取部80を回転可能に構成することで、さらに、用紙に傷が付くのが抑制できる。
切断部50は、ターンローラ対32と圧着ローラ対33との間に配置されている。切断部50は、搬送経路よりも上方に配置されたローリングカッタ51と、搬送経路よりも下方に配置された固定刃52と、切りくずボックス53とを有している。
ローリングカッタ51は、円板形状を有しており、その円周部には全周にわたって刃が形成されている。そして、ローリングカッタ51は、その中心部がシャフト51aで保持されている。ローリングカッタ51は、シャフト51aを介して、切断制御部27cによって制御される駆動機構55(図4参照)に接続されている。駆動機構55は、シャフト51aを介して、ローリングカッタ51を回転駆動する共に、用紙の搬送経路を直交する方向に沿って(図2では紙面に直交する方向に沿って)往動または復動させる。一方、固定刃52は、用紙の搬送経路に直交するように配置されており、用紙の搬送経路の全幅よりも長い矩形刃である。
従って、切断部50による切断位置に用紙が配置された状態において、切断制御部27cが駆動機構55を制御して、ローリングカッタ51を回転させつつ用紙の幅方向に沿って移動させると、ローリングカッタ51と固定刃52との相互作用によって用紙が切断される。なお、本実施の形態のプリンタ1では、後述するように切断部50は各画像の先端部及び後端部において用紙を切断する。
また、切りくずボックス53は、ローリングカッタ51及び固定刃52の下方に配置されている。従って、各画像の先端部または後端部において用紙が切断されて各画像間の余白部が切断されると、その余白部は切りくずボックス53内に収納される。
オーバーコート部60は、搬送ローラ対34の搬送方向下流側に配置されている。オーバーコート部60は、1つのヘッド部61を有している。ヘッド部61は、画像が印字された用紙の表面に対して無色透明なオーバーコート(OC)を行うためのものである。このように、用紙の表面に対してオーバーコートを行うことによって、用紙上に印字された画像の耐光性が向上すると共に、用紙表面を保護することができる。
また、印字部70は、オーバーコート部60と送り込みローラ対35との間に配置されている。印字部70は、3つのヘッド部71〜73を有している。ヘッド部71〜73は、それぞれシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)に対応する印字を行うためのものである。ここで、プリンタ1では、搬送方向上流側から搬送方向下流側に向かって、シアンに対応するヘッド部71、マゼンタに対応するヘッド部72、イエローに対応するヘッド部73の順に設けられている。なお、プリンタ1では、オーバーコート部60及び印字部70の搬送方向上流側に搬送ローラ対34が配置されており、それらの搬送方向下流側に送り込みローラ対35が配置されていることになる。
そして、本実施の形態のプリンタ1では、用紙供給部40から巻き解かれた用紙が搬送方向下流側に向かって搬送されるときはオーバーコート部60でのオーバーコート及び印字部70でのカラー画像の印字は行われないで、印字部70よりも搬送方向下流側に配置された用紙巻取部80に一旦巻き取られた用紙が搬送方向上流側に向かって逆送されるときに印字部70での画像の印字及びオーバーコート部60でのオーバーコートが行われる。従って、プリンタ1では、用紙表面に対して、イエロー、マゼンタ、シアンの順にカラー画像の印字が可能であると共に、さらに、カラー画像が印字された用紙表面に対してオーバーコートを行うことができる。
次に、ヘッド部61、71〜73の概略構成について説明する。なお、ヘッド部61、71〜73の構成はいずれも同様であるので、ここではヘッド部73についてのみ詳細に説明する。
ヘッド部73は、用紙の搬送経路の全幅にわたって配置された多数の発熱素子(図示しない)を有するサーマルヘッド73aと、サーマルヘッド73aの先端部(用紙の搬送経路近傍であって発熱素子が配置された端部)に対向するプラテンローラ73bと、イエローに対応するインクが付着したインク領域を有するテープ状のリボン73cと、印字前のリボン73cが巻回されたリボン供給ローラ73dと、印字後のリボン73cを巻き取るリボン巻取ローラ73eとを有している。
ここで、サーマルヘッド73aは、昇降機構73f(図4参照)によって、用紙の搬送経路に対して進退可能になっている。従って、サーマルヘッド73aは、その先端部近傍とプラテンローラ73bとの間で、リボン73c及び用紙を圧接するプリント位置と圧接しない待避位置とを選択的に取り得る。
そして、ヘッド部73では、サーマルヘッド73aがプリント位置に配置されている状態で、サーマルヘッド73aとプラテンローラ73bとの間を用紙が搬送されると、サーマルヘッド73aにより加熱されたリボン73cのインクによって用紙上にイエローに対応するカラー画像を印字することができる。なお、このとき、サーマルヘッド73aとプラテンローラ73bとの間を用紙が搬送される際には、用紙が搬送されるのに伴ってリボン73cもリボン供給ローラ73dからリボン巻取ローラ73eに向かって送られる。
なお、ヘッド部61及びヘッド部71、72は、ヘッド部73と同様に、サーマルヘッド61a、71a、72aと、プラテンローラ61b、71b、72bと、リボン61c、71c、72cと、リボン供給ローラ61d、71d、72dと、リボン巻取ローラ61e、71e、72eと、昇降機構61f、71f、72fとをそれぞれ備えている。また、用紙の搬送経路は、プラテンローラ61b、71b、72b、73bを境として屈曲している。
このように用紙の搬送経路は、ターンローラ32、プラテンローラ61b、71b、72b、73b、及び送り込みローラ対35の6個所で屈曲している。そして、その屈曲方向はいずれも同じ方向となっている。例えば、ターンローラ32を第1の屈曲点、プラテンローラ61b・71b・72b・73bをそれぞれ第2・第3・第4・第5の屈曲点、及び送り込みローラ35を第6の屈曲点とした場合について考える。この場合、第1の屈曲点と第2の屈曲点とを結ぶ方向に対する第2の屈曲点と第3の屈曲点とを結ぶ屈曲方向、第2の屈曲点と第3の屈曲点とを結ぶ方向に対する第3の屈曲点と第4の屈曲点とを結ぶ屈曲方向、第3の屈曲点と第4の屈曲点とを結ぶ方向に対する第4の屈曲点と第5の屈曲点とを結ぶ屈曲方向、及び第4の屈曲点と第5の屈曲点とを結ぶ方向に対する第5の屈曲点と第6の屈曲点とを結ぶ屈曲方向が、いずれも同じ方向に傾いている。また、これらの屈曲個所は、給紙ローラ対31、ターンローラ対32、圧着ローラ対33、搬送ローラ対34及び送り込みローラ対35によって形成される所定半径を有する円周(図2における二点鎖線)に沿うように配置されており、プリンタの小型化を測ることが可能となる。なお、屈曲個所は、これだけに限らず、他の個所、例えば給紙ローラ対31や圧着ローラ対33等を屈曲点としてもよい。
なお、ヘッド部61及びヘッド部71、72では、ヘッド部73のイエローに対応するインクが付着したインク領域を有するテープ状のリボン73cの代わりに、無色透明、シアン、マゼンタにそれぞれ対応するインクが付着したインク領域を有するテープ状のリボン61c、71c、72cが用いられている。
また、オーバーコート部60のヘッド部61及び印字部70の各ヘッド部71〜73間には、一対のガイド75a〜75cがそれぞれ配置されている。一対のガイド75a〜75cは、いずれも2枚の板状部材を含んでおり、ヘッド部61、71〜73間をそれぞれ搬送される用紙(主に用紙の先端部)を案内するためのものである。従って、一対のガイド75a〜75cは、用紙の搬送経路を挟んで所定間隔を隔てて対向するように配置されている。
用紙巻取部80は、搬送経路の最下流に設けられた巻取ローラ81を有しており、印字部70に対して用紙供給部40とは反対側にある用紙の一部を格納することが可能となっている。巻取ローラ81は、巻取制御部28によって制御されるモータ83に接続されており、回転可能となっている。巻取ローラ81は断面が円形の部材であるが、中実の円形であっても中空の円形であってもよい。そして、巻取ローラ81の外周には、エンドレスベルト搬送ローラ37b〜37h及びこれらに巻き掛けられたエンドレスベルト39b〜39gが配置されており、巻取ローラ81の外周の一部が用紙の挿入口82として開口している。本実施の形態では、図2に示すように、第1のエンドレスベルト39aの用紙供給部40側の端部が挿入口82の一方の縁部82aを形成している。また、挿入口82の他方の縁部82bは巻取ローラ81の上部近傍にある。
ここで、送り込みローラ対35は、挿入口82の一方の縁部82aの上方近傍に配置されており、送り込みローラ対35によって下方に排出された用紙は挿入口82の端部82a近傍から巻取ローラ81に案内される。より具体的にいえば、巻取ローラ81と送り込み駆動ローラ35dとの共通接線が、第1のエンドレスベルト39aの延在方向と実質的に平行となっている。さらに、一方の縁部82aを形成する第1のエンドレスベルト39aのベルト搬送面が、送り込みローラ対35から排出される用紙の排出方向と実質的に平行となっている。
次に、送り込みローラ対35から送出された記録用紙が巻取ローラ81に格納される場合の作用について説明する。送り込みローラ対35から送出された記録用紙は、一方の縁部82a近傍における第1のエンドレスベルト39aのベルト搬送面に誘導されて巻取ローラ39aに向かって案内される。そして、記録用紙の先端が、第1のエンドレスベルト39aの用紙供給部40側とは反対側の端部と巻取ローラ81との間に入り込み、第1のエンドレスベルト39aと用紙巻取部81とで挟持される。第1のエンドレスベルト39aと用紙巻取部81とで挟持された用紙は、第2〜第7のエンドレスベルト39b〜39gが回転することで、記録用紙が用紙巻取部80の外周面に巻回及び格納される。なお、ここで、用紙巻取部80と送り込み駆動ローラ35cとの共通接線が、第1のエンドレスベルト39aの延在方向と平行となっているので、送り込みローラ対35から送出された記録用紙の先端を、巻取ローラ81と第1のエンドレスベルト39aとの間に誘導しやすくなる。さらに、巻取ローラ81が回転することで、送り込みローラ35から送出された用紙の先端を、巻取ローラ81と第1のエンドレスベルト39aとの間に挿入させやすくなる。また、巻取ローラ81では、用紙が有する巻き癖にしたがって、その印字面が外側面になるように用紙の先端部から順に巻き取られる。即ち、用紙供給部40で外側面であった面が外側面となるように巻回される。
プリントボックス96は、印字部70における画像の印字及びオーバーコート部60におけるオーバーコートが行われた後、さらに切断部50によって切断された各カラー画像が印字された用紙(プリント)を収納するためのものである。また、プリントボックス96は、上端部が開口された箱状の部材であって、その下端部において支持軸97によって回動可能に支持されている。従って、プリントボックス96は、筐体30A内に収納された状態(図2で実線で示す状態)と、筐体30Aの正面(図2では右面)に設けられた開口95を介してその上端部近傍が筐体30A外に引き出された状態(図2で破線で示す状態)とを取り得る。よって、オペレータは、プリントボックス96の上端部をプリンタ1(筐体30A)の正面から外部に引き出すことによって、各カラー画像が印字された用紙を容易に取り出すことができる。
なお、プリントボックス96の上方には、ターンローラ対32よりも搬送方向上流側の搬送経路に近接するように振り分け機構(図示しない)が設けられている。この振り分け機構は、用紙が用紙供給部40に巻き取られる場合と、各カラー画像が印字された用紙がプリントボックス96に排出される場合とで、用紙が搬送方向上流側に向かって逆送される際の用紙の搬送経路を切り換えることができる。従って、振り分け機構を制御することによって、各カラー画像が印字された用紙だけをプリントボックス96内に収納することができる。
また、切断部50よりも搬送方向上流側には、搬送経路に沿って搬送される用紙上に印字された画像の端部(主に画像の後端部)を検出可能な画像検出センサ90が設けられている。一方、オーバーコート部60よりも搬送方向上流側には、用紙の端部を検出可能な用紙検出センサ91が設けられている。なお、本実施の形態では、オーバーコート部60の搬送方向上流側の端部と用紙検出センサ91による検出位置とはほぼ一致している。
制御装置20には、図4に示すように、用紙供給部40の回転軸43を駆動するモータ43aと、給紙ローラ対31、搬送ローラ対34及び送り込みローラ対35をそれぞれ駆動するモータ31a、34a、35aと、搬送ローラ対34の回転数を検出するエンコーダ36と、切断部50のローリングカッタ51の駆動機構55と、オーバーコート部60及び印字部70のサーマルヘッド61a、71a〜73aの昇降機構61f、71f〜73f及びドライバ61g、71g〜73gと、画像検出センサ90と、用紙検出センサ91と、操作部10とがそれぞれ接続されている。
また、制御装置20は、適切なソフトウェアにより制御されるCPUやROM、RAMなどのハードウェアを備えており、最大巻取量記憶部21と、プリント情報記憶部22と、必要巻取量算出部23と、比較部24と、巻取量決定部25と、搬送量検知部26と、搬送制御部27aと、印字制御部27bと、切断制御部27cとを有している。
最大巻取量記憶部21は、用紙供給部40から用紙巻取部80に向かって用紙が搬送される場合に、印字部70よりも搬送方向下流側に搬送可能な用紙の最大長さを最大巻取量として記憶する。この最大巻取量は、印字部70の搬送方向について最も下流側に配置されたヘッド部73による印字位置、及び用紙巻取部80と第2のエンドレスベルト39bとの間に形成される挿入口82との間の搬送経路の長さと、用紙巻取部80に巻き取り可能な用紙の長さとを足し合わせることによって算出される値である。なお、最大巻取量は、オペレータによって最大巻取量記憶部21に対して入力される。
プリント情報記憶部22は、カラー画像が印字される際の種々の設定値を記憶する。ここで、設定値としては、プリント種類毎の1コマのプリント長さ(搬送方向長さ)、プリント枚数(コマ数)、隣り合う画像間に形成される余白部の長さ、ヘッド放熱用の追加長さなどが含まれる。プリント種類毎の1コマのプリント長さは、例えば標準サイズ、パノラマサイズなどの複数のプリントの種類毎に複数の値が記憶されている。プリント枚数は、プリント開始前に、オペレータによってオーダー毎に入力される値が記憶される。また、画像間の余白部の長さ及びヘッド放熱用の追加長さは、プリント開始前に、オペレータによって入力される値が記憶される。なお、追加長さは、画像を印字するために発熱したサーマルヘッド71a、72a、73a及び、オーバーコートを行うために発熱したサーマルヘッド61aの温度が、通電終了後にその周囲温度と実質的に同じになるまで用紙が各サーマルヘッド61a、71a〜73aと対向しているような長さに設定されている。本実施の形態では、発熱した各サーマルヘッド61a、71a〜73aが、いずれもその周囲温度と実質的に同じになるまでに必要な時間と、搬送方向上流側に向かって逆送される用紙の搬送速度との積によって追加長さが算出される。
ここで、「1オーダー」とは、プリンタ1において複数のカラー画像が記録される場合に1つのまとまりとして取り扱われる範囲を示すものである。例えば、プリンタ1において、一人の顧客からの注文に対応する複数のカラー画像が1つのまとまりとして取り扱われるときには、この一人の顧客からの注文が1オーダーとなる。一方、複数人の顧客からの注文に対応する複数のカラー画像が1つのまとまりとして取り扱われるときには、これらの複数人の顧客からの注文があわせて1オーダーとなる。なお、上述のように顧客ごとの注文の1または複数が1オーダーとなる場合の他、オペレータがプリンタ1に対して複数のカラー画像を記録する旨のプリント命令を供給する場合には、そのプリント命令が1オーダーとなる。従って、「1オーダーに含まれる複数のカラー画像」とは、上述のように顧客ごとの注文の1または複数が1オーダーとなる場合は、その1または複数の注文に含まれる複数のカラー画像を意味し、オペレータがプリンタ1に対して複数のカラー画像を記録する旨のプリント命令を供給する場合は、そのプリント命令に基づいて記録される複数のカラー画像を意味する。
必要巻取量算出部23は、1オーダーに含まれる複数のカラー画像の全てを印字するために必要な用紙の長さを必要巻取量として算出する。つまり、1オーダーに含まれる複数のカラー画像の全てを印字するためには、印字部70でのカラー画像の印字を開始する前に、これらのカラー画像を印字可能な長さの用紙を印字部70よりも搬送方向下流側に搬送しておく必要がある。従って、用紙供給部40から用紙巻取部80に向かって用紙が搬送される場合に、1オーダーに含まれる複数のカラー画像の全てを印字するために、印字部70のヘッド部73による印字位置を超えて搬送されるべき用紙の長さが必要巻取量として算出される。
ここで、必要巻取量について、図5を参照して説明する。図5は、1オーダーに含まれる複数のカラー画像が用紙の先端部近傍に印字されるときの様子を示す図である。なお、図5では、1オーダーには同じプリント種類の画像が6個含まれる場合について図示している。図5に示すように、用紙の先端(図5では左端部)近傍にヘッド放熱用の追加長さzに対応する領域が設けられ、そこから上流側(図5では右方)に向かって、プリント長さxに対応する領域と余白部長さyに対応する領域がプリント枚数nだけ交互に設けられる。
従って、必要巻取量算出部23では、プリント開始前に、オペレータによって、1オーダーに含まれるカラー画像のプリント種類及びプリント枚数が入力されると、プリント情報記憶部22に記憶された各値に基づいて、1オーダーに対応する必要巻取量Lが下記の式によって算出される。
L=z+x×n+y×(n−1)
比較部24は、必要巻取量算出部23で算出された必要巻取量と最大巻取量記憶部21に記憶された最大巻取量とを比較する。そして、比較部24は、必要巻取量と最大巻取量との間の大小関係についての比較結果を得る。
巻取量決定部25は、用紙の搬送方向が搬送方向下流側に向かう方向から搬送方向上流側に向かう方向に変更される前に、実際に印字部70よりも搬送方向下流側に搬送される用紙の長さ(実際の巻取量)、すなわち、実際に印字部70のヘッド部73に対向する位置を超えて搬送される用紙の長さを決定する。ここで、巻取量決定部25は、比較部24による比較結果に基づいて巻取量を決定する。つまり、巻取量決定部25は、比較部24において必要巻取量が最大巻取量以下であるという比較結果が得られた場合は、実際の巻取量を必要巻取量に決定し、一方、比較部24において必要巻取量が最大巻取量より長いという比較結果が得られた場合は、実際の巻取量を最大巻取量に決定する。
搬送量検知部26は、用紙検出センサ91によって用紙の先端が検出された後にエンコーダ36により検出される搬送ローラ対34の回転数に基づいて、用紙の搬送量を検知する。つまり、搬送量検知部26は、用紙検出センサ91による検出位置よりも搬送方向下流側に搬送された用紙の長さを検知する。その結果、搬送量検知部26は、用紙の搬送方向が搬送方向下流側に向かう方向から搬送方向上流側に向かう方向に変更される前に、印字部70よりも搬送方向下流側に搬送された用紙の長さを検知することができる。なお、後述するように、用紙の先端部が送り込みローラ対35に到達した後は、搬送ローラ対34から与えられる搬送力ではなく送り込みローラ対35から与えられる搬送力によって用紙が搬送されるようになるが、この場合でも、搬送量検知部26では、常に搬送ローラ対34の回転数に基づいて用紙の搬送量が検知される。
搬送量検知部26は、用紙が搬送方向下流側に向かって搬送される場合だけでなく、用紙が搬送方向上流側に向かって搬送される場合にも、用紙の搬送量を検知することができる。従って、用紙の搬送方向が搬送方向下流に向かう方向から搬送方向上流に向かう方向に変更された場合には、搬送方向が変更される前の搬送方向下流側への搬送量から、搬送方向が変更された後の搬送方向上流側への搬送量を差し引くことによって、用紙の先端位置を検知することができる。
搬送制御部27aは、回転軸43、給紙ローラ対31、搬送ローラ対34及び送り込みローラ対35を駆動するモータ43a、31a、34a、35aを制御することによって、用紙を用紙供給部40から用紙巻取部80に向かって搬送すると共に、用紙を用紙巻取部80から用紙供給部40に向かって逆送させる。
ここで、搬送制御部27aの機能をより詳細に説明する。まず、用紙を搬送方向下流側に向かって搬送する際に、用紙の先端部が搬送ローラ対34を通過して用紙検出センサ91に到達するまでは、モータ34aの駆動を停止させると共に、回転軸43の回転力に基づく用紙の送り出し速度に比べて、給紙ローラ対31の回転力に基づく用紙の搬送速度が速くなるようにモータ43a、31aを制御する。このとき、ワンウェイクラッチ43c、31c、34cの機能により、回転軸43及び搬送ローラ対34は空回りし、給紙ローラ対31はモータ31aによって駆動される。したがって、用紙は、給紙ローラ対31から与えられる搬送力によって搬送される。
その後、用紙の先端部が送り込みローラ対35に挟持されるまでは、モータ43a、31aの駆動を停止し、モータ34aのみを駆動する。このとき、ワンウェイクラッチ43c、31c、34cの機能により、回転軸43及び給紙ローラ対31は空回りし、搬送ローラ対34はモータ34aによって駆動される。したがって、用紙は、搬送ローラ対34から与えられる搬送力のみによって搬送される。
そして、用紙の先端部が送り込みローラ対35に挟持されると、モータ43a、31a、34aの駆動を停止し、モータ35aのみを駆動する。このとき、ワンウェイクラッチ43c、31c、34c、35cの機能により、回転軸43、給紙ローラ対31及び搬送ローラ対34は空回りし、送り込みローラ対35はモータ35aによって駆動される。したがって、用紙は、搬送ローラ対35から与えられる搬送力のみによって搬送される。
また、用紙を搬送方向上流側に向かって逆送する際に、用紙の最も搬送方向上流側に印字されるカラー画像の後端部が切断されるまでは、モータ35aの駆動を停止すると共に、回転軸43の回転力に基づく用紙の巻き戻し速度、給紙ローラ対31の回転力に基づく用紙の搬送速度、及び搬送ローラ対34の回転力に基づく用紙の搬送速度が等しくなるようにモータ43a、31a、34aを制御する。このとき、ワンウェイクラッチ43c、31c、34c、35cの機能により、回転軸43、給紙ローラ対31及び搬送ローラ対34はそれぞれモータ43a、31a、34aによって駆動され、送り込みローラ対35は空回りする。したがって、用紙は、給紙ローラ対31及び搬送ローラ対34から与えられる搬送力で逆送される。
そして、用紙の最も搬送方向上流側に印字されるカラー画像の後端部が切断された後、回転軸43の回転力に基づく用紙の巻き戻し速度、給紙ローラ対31の回転力に基づく用紙の搬送速度が等しくなるようにモータ43a、31aを制御することで、ワンウェイクラッチ43c、31cの機能により、回転軸43及び給紙ローラ対31がモータ43a、31aによって駆動されるようにし、搬送方向について切断位置よりも上流側の用紙を用紙供給部40に巻き戻す。また、モータ34aを駆動し、モータ35aの駆動を停止することで、ワンウェイクラッチ34c、35cの機能により、搬送ローラ対34をモータ34aによって駆動させ、送り込みローラ対35を空回りさせる。したがって、搬送方向について切断位置よりも下流側の用紙は、搬送ローラ対34から与えられる搬送力だけで逆送される。
印字制御部27bは、オーバーコート部60のサーマルヘッド61a及び印字部70のサーマルヘッド71a〜73aの昇降タイミング及び印字タイミングを制御する。詳細には、印字制御部27bは、用紙が搬送方向下流側に搬送される際には、サーマルヘッド61a、71a〜73aを退避位置とし、用紙が搬送方向上流側に逆送される前に、サーマルヘッド61a、71a〜73aをプリント位置とするように昇降タイミングを制御する。また、印字制御部27bは、搬送方向上流側に逆送されている用紙に対して、1オーダーに含まれる複数のカラー画像が余白部の長さ分だけ隔ててそれぞれ印字され、且つ、最後に印字されたカラー画像よりも用紙の先端部側の追加長さに対応する領域には画像が印字されないように印字タイミングを制御する。さらに、印字制御部27bは、用紙のカラー画像が印字された領域のみにオーバーコートを行うようにオーバーコート部60を制御する。
切断制御部27cは、切断部50での切断タイミングを制御する。詳細には、切断制御部27cは、搬送量検知部26によって検知される、用紙の搬送方向が搬送方向下流に向かう方向から搬送方向上流に向かう方向に変更された後の搬送方向上流側への用紙の搬送量に基づいて、最も搬送方向上流側に印字されたカラー画像の後端部が、切断部50による切断位置に到達したことを検知し、そのカラー画像の後端部が切断されるように切断部50を制御する。また、切断制御部27cは、搬送量検知部26によって検知される、画像検出センサ90において画像の後端部が検出された後の搬送方向上流側への用紙の搬送量に基づいて、カラー画像の先端部が、切断部50による切断位置に到達したことを検知し、そのカラー画像の先端部が切断されるように切断部50を制御する。さらに、切断制御部27cは、搬送量検知部26によって検知される、カラー画像の先端部での用紙の切断が行われた後の搬送方向上流側への用紙の搬送量に基づいて、搬送方向下流側において隣接するカラー画像の後端部が、切断部50による切断位置に到達したことを検知し、そのカラー画像の後端部が切断されるように切断部50を制御する。
巻取制御部28は、巻取ローラ81の回転駆動を制御する。具体的には、搬送制御部27aが用紙供給部40から巻取ローラ81に向かって用紙を搬送制御しているときは、用紙を巻取ローラ81に巻回する方向に巻取ローラ81を回転駆動させる。そして、用紙巻取部80から用紙供給部40に向かって用紙を逆送させるときは、それに応じて、用紙を用紙巻取部80から巻き解く方向に巻取ローラ81を回転駆動させる。
次に、プリンタ1において、画像の印字が行われる際の動作について、図6を参照して説明する。図6は、プリンタ1での動作手順を示すフローチャートである。
まず、用紙供給部40に装填された用紙の巻回部45から回転軸43が回転駆動されることによって巻き解かれた用紙の先端部が、給紙ローラ対31から与えられる搬送力だけによって搬送される(ステップS101)。そして、用紙の先端部が搬送ローラ対34を通過して用紙検出センサ91に到達するまで給紙ローラ対31による搬送が継続される(ステップS102)。ここで、用紙検出センサ91により用紙の先端部が検出されると、用紙検出センサ91から制御装置20に対して用紙の先端部を検出した旨の検出信号が送信される。
このようにして、用紙の先端部が用紙検出センサ91に到達した時点で、用紙の搬送が停止されて待機状態になる(ステップS103)。このとき、サーマルヘッド61a、71a〜73aがプリント位置に配置されている場合は、サーマルヘッド61a、71a〜73aが待避位置に移動させられる(ステップS104)。
その後、オペレータからの注文(オーダー)の受付があって、1オーダーに含まれるカラー画像のプリント種類及びプリント枚数が入力されると(ステップS105)、用紙の搬送を開始する準備として、プリント情報記憶部22に記憶された情報に基づいて、その1オーダーに対応する必要巻取量が必要巻取量算出部23によって算出される(ステップS106)。すると、比較部24によって、この必要巻取量と最大巻取量記憶部21に記憶された最大巻取量とが比較される(ステップS107)。その比較結果に基づいて、巻取量決定部25によって、実際の巻取量が決定される(ステップS108)。このようにして、用紙の搬送準備が終了した後で、搬送ローラ対34から与えられる搬送力だけによって用紙が搬送される(ステップS109)。なお、このとき、用紙供給部40の回転軸43及び給紙ローラ対31はいずれも回転自在になっている。
その後、サーマルヘッド61a、71a〜73aが待避位置に配置された状態において、用紙の先端部が、オーバーコート部60及び印字部70をオーバーコート及び画像の印字が行われないまま通過して送り込みローラ対35に到達するまで、搬送ローラ対34から与えられる搬送力だけによって搬送が継続される(ステップS110)。そして、用紙の先端部が送り込みローラ対35に到達して挟持されるようになると、それ以後は送り込みローラ対35から与えられる搬送力だけによって用紙が搬送されて、用紙の先端部から用紙巻取部80によって順次巻回される(ステップS111)。このとき、用紙が用紙巻取部80内に送り込まれるにつれて、用紙の先端部が用紙巻取部80内において、用紙がその巻き癖にしたがって巻き取られる。なお、用紙の先端部が送り込みローラ対35に到達した時点で、搬送ローラ対34は、ワンウェイクラッチ34cの機能により、用紙に搬送力を与える状態から送り込みローラ対35により搬送される用紙に伴って従動回転する状態に切り換えられる。
その後、巻取量決定部25で決定された巻取量の長さの用紙が、ヘッド部73による印字位置よりも搬送方向下流側に搬送された時点で、用紙の巻き取りが終了して、用紙供給部40から用紙巻取部80に向かって用紙が搬送されるのが停止される(ステップS112)。つまり、搬送量検知部26において、用紙検出センサ91によって用紙の先端部が検出された後にエンコーダ36により検出される搬送ローラ対34の回転数に基づいて検知される用紙の搬送量が、巻取量決定部25で決定された巻取量と、オーバーコート部60及び印字部70における搬送経路の長さとを足し合わせた長さに一致した時点で、搬送制御部27aは用紙の巻き取りを終了し、用紙の搬送方向下流側への搬送を停止する。なお、このとき、ヘッド部73による印字位置には、巻取量の長さの用紙の最も搬送方向上流側に印字される画像の後端部が配置されている。
そして、オーバーコート部60のサーマルヘッド61a及び印字部70のサーマルヘッド71a〜73aが待避位置からプリント位置に同時に移動させられる(ステップS113)。その後、給紙ローラ対31及び搬送ローラ対34から与えられる搬送力によって用紙が搬送方向上流側に向かって逆送される(ステップS114)。従って、このとき、従動回転する状態であった給紙ローラ対31及び搬送ローラ対34は、用紙を搬送方向上流側に向かって搬送する方向に回転駆動されると共に、送り込みローラ対35は、ワンウェイクラッチ35cの機能により、従動回転するようになる。また、用紙供給部40の回転軸43はマガジンケース41内に用紙を巻き戻す方向に回転駆動される。
そして、用紙が搬送方向上流側に向かって逆送されながら、1オーダーに含まれる各カラー画像について、ヘッド部73によってイエローに対応する印字、ヘッド部72によってマゼンタに対応する印字、ヘッド部71によってシアンに対応する印字が順次行われる。このようにして、各カラー画像について、イエロー、マゼンタ、シアンの順に印字が行われることによってカラー画像が完成する(ステップS115)。その後、引き続き、ヘッド部61によって、カラー画像が印字された用紙の表面に対してオーバーコートが行われる(ステップS116)。
なお、本実施の形態では、必要巻取量が最大巻取量よりも短い場合には、用紙の搬送方向上流側への逆送が開始されると同時に、カラー画像の印字が開始され、1オーダーに含まれるカラー画像の全てが各画像間に所定幅の余白部が形成されるように断続的に印字される。一方、必要巻取量が最大巻取量よりも長い場合には、用紙の搬送方向上流側への逆送が開始されると同時に、カラー画像の印字が開始され、1オーダーに含まれるカラー画像の一部が各画像間に所定幅の余白部が形成されるように断続的に印字される。つまり、上述したように、用紙には、画像領域と余白部とが交互に配置されるようにカラー画像が印字される。ただし、用紙先端近傍のヘッド放熱用の追加長さに対応する領域には画像は印字されない。そして、印字部70では、3つのヘッド部71〜73のうちの少なくとも2つに対向する位置に同じタイミングで画像領域がある場合には、それらのヘッド部によって同時に印字が行われる。また、オーバーコート部60でのオーバーコートは、印字部70でのカラー画像の印字と並行して行われる。このようにして、印字部70及びオーバーコート部60では、巻取量決定部25により決定された巻取量の長さの用紙または最大巻取量の長さの用紙に対して印字可能な複数のカラー画像についての印字及びオーバーコートが行われる。
その後、カラー画像の印字及びオーバーコートが行われた用紙が逆送されて、最も搬送方向上流側に印字されたカラー画像の後端部(巻取量決定部25で決定された巻取量の長さの用紙の後端部と一致している)が、切断部50による切断位置に到達すると、用紙の逆送が停止され、そのカラー画像の後端部で用紙が切断される(ステップS117)。なお、カラー画像の後端部が切断部50による切断位置に到達するタイミングは、搬送量検知部26によって検知される搬送量に基づいて検知される。そして、このように用紙が切断された後、最も搬送方向上流側のカラー画像よりも上流側の画像が形成されなかった用紙(巻取量決定部25で決定された巻取量の長さの用紙の後端部よりも搬送方向上流側の用紙)は、用紙供給部40に巻き戻される。
引き続き、搬送ローラ対34から与えられる搬送力のみで用紙が逆送されて、最も搬送方向上流側の画像の後端部が画像検出センサ90による検出位置に到達すると、画像検出センサ90から制御装置20に対して画像の後端部を検出した旨の検出信号が送信される(ステップS118)。すると、搬送量検知部26は、画像検出センサ90によって画像の後端部が検出された後に、エンコーダ36により検出される搬送ローラ対34の回転数に基づいて、搬送方向上流側への用紙の搬送量を検知する。そして、その搬送量に基づいて、切断制御部27cにより、カラー画像の先端部が切断部50による切断位置に到達したことが検知される。このとき、用紙の逆送が停止され、カラー画像の先端部で用紙が切断される(ステップS119)。このように、カラー画像の先端部及び後端部を切断された用紙は、プリントボックス96に収納される。
このように、カラー画像の先端部での用紙の切断が行われる度に、切断された用紙に印字されたカラー画像が用紙の先端部に最も近接して印字された最終画像であるか否かが判断される(ステップS120)。ここで、最終画像でないと判断されると、再び用紙が逆送される。すると、搬送量検知部26は、カラー画像の先端部での用紙の切断が行われた後、エンコーダ36により検出される搬送ローラ対34の回転数に基づいて、搬送方向上流側への用紙の搬送量を検知する。そして、切断制御部27cによって、その搬送量に基づいて、切断制御部27cにより、ステップ119で先端部が切断されたカラー画像と搬送方向下流側において隣接するカラー画像の後端部が、切断部50による切断位置に到達したことが検知される。このとき、用紙の逆送が停止され、そのカラー画像の後端部で用紙が切断される(ステップ121)。その後、ステップS118に戻って、上述と同様の処理が繰り返される。
一方、最終画像であると判断されると、1オーダーに含まれるカラー画像の全ての印字が終了したか否かが判断される(ステップS122)。ここで、1オーダーに含まれるカラー画像の全ての印字が終了していないと判断されると、ステップS106に戻って、上述と同様の処理が繰り返される。一方、1オーダーに含まれるカラー画像の全ての印字が終了したと判断されると、処理が終了する。
なお、ステップS122で、1オーダーに含まれるカラー画像の全ての印字が終了していないと判断される場合とは、例えば比較部24において必要巻取量が最大巻取量より長いと判断されて、巻取量決定部25が最大巻取量を最終的な巻取量として決定した場合である。つまり、この場合には、1オーダーに含まれるカラー画像のなかで最大巻取量の長さの用紙に印字することができなかった残りのカラー画像の印字が引き続き行われる。このようにして、1オーダーに含まれるカラー画像の全ての印字が終了するまで、上述と同様の処理が繰り返される。
以上のように、本実施の形態のプリンタ1では、用紙供給部40から用紙巻取部80に向かう方向に用紙を搬送した後で、オーバーコート部60及び印字部70よりも搬送方向上流側に配置された搬送ローラ対34から与えられる搬送力で搬送方向上流側に向かって逆送される用紙に複数のカラー画像を印字することができる。そのため、用紙の先端近傍にカラー画像を印字可能であると共に、用紙の搬送中の負荷変動に起因して画像が悪化するのを抑制できる。また、複数のカラー画像を用紙に印字する場合でも、用紙を1往復させるだけでよく、搬送機構38における用紙の搬送方向を1回切り換えるだけでよいので、搬送方向の切り換えに基づく時間的な搬送ロスを低減できる。その結果、複数のカラー画像を用紙に印字する場合において、用紙の無駄及び用紙の搬送中の負荷変動に起因する画像悪化を防止しつつ、プリンタ1の処理能力を向上させることができる。また、巻取ローラ81を備えているので、用紙のカラー画像が記録される面が傷付きにくくなる。巻取ローラ81が備えられていない場合には、用紙のカラー画像が記録される面がプリンタ筐体30Aの底面等に接触することによって、埃が付着したり傷付いたりするからである。従って、カラー画像の品質低下を軽減できる。さらに、第1及び第2のエンドレスベルト搬送ローラ37a、37bに巻回された第1のエンドレスベルト39aと巻取ローラ81との間で用紙を挟持しつつ搬送することができるので、用紙を巻取ローラ81の外周面に円滑に巻回させることができる。従って、用紙がさらに傷付きにくくなる。
また、搬送方向上流側に逆送されつつ各カラー画像が印字された用紙が、そのまま搬送方向上流側に逆送され、切断部50で各カラー画像毎に切断された後、用紙供給部40と切断部50との間の搬送経路近傍に設けられたプリントボックス96に収納される。そして、オペレータは、プリントボックス96をプリンタ1の正面に設けられた開口95を介して筐体30A外に引き出すことによって、印字済みの用紙を取り出すことができる。したがって、筐体30Aの側面(用紙表面と交わる面)に設けられた開口から用紙を取り出す場合と比べて、プリンタの横幅を縮小することができる。よって、横幅の比較的狭い空間においてプリンタを設置することが可能となる。
さらに、開口95が切断部50に対して印字部70とは反対側に設けられているので、印字済みの用紙を円滑に排出することができる。
また、オペレータは、操作部10のディスプレイ11の表示面及び制御部20のデータ入力部20aの記憶媒体挿入面が設けられているプリンタ1の正面から、各カラー画像が印字された用紙を取り出すことができる。したがって、オペレータは、プリンタ1の正面でプリンタ1の操作を行いつつ、プリントボックス96内の印字済みの用紙を容易に取り出すことができる。
加えて、プリントボックス96は、筐体30A内に収納された状態と、開口95を介して筐体30Aの正面から引き出された状態とを選択的に取り得る。したがって、プリントボックス96を筐体30Aの正面から引き出すことによって、印字済みの用紙を容易に取り出すことができる。
また、印字部70と巻取ローラ81との間に備えられた送り込み駆動ローラの回転が、チェーン42を介して間接的に、第1の搬送ローラ37a及び第2の搬送ローラ37bに伝達されるので、第1の搬送ローラ37a及び第2の搬送ローラ37bを回転させるための駆動部を設ける必要がない。従って、簡易な構成且つ安価なプリンタを提供することが可能となる。
また、巻取ローラ81と送り込み駆動ローラ35dとの共通接線が、第1のエンドレスベルト39aの延在方向と平行なので、送り込み駆動ローラ35dから用紙の送出方向に直進した用紙の先端を、巻取ローラ81と第1のエンドレスベルト39aとの間にスムーズに誘導しやすくなる。
また、第1のエンドレスベルト搬送ローラ37aは、送り込み駆動ローラ35dと対になった送り込み従動ローラ35eとチェーン42によって巻き掛けられているので、第1のエンドレスベルト搬送ローラ37eを回転させるためのモータを設ける必要がない。従って、簡易な構成で、第1のエンドレスベルト搬送ローラ37aを介して第1のエンドレスベルト39aを回転させることができる。
また、送り込み駆動ローラ35dによる用紙の搬送速度が、第1のエンドレスベルト39aによる用紙の搬送速度と同じなので、送り込み駆動ローラ35dから送り出された用紙が第1のエンドレスベルト39aによって搬送される際に引っ張られたり撓んだりすることがない。従って、用紙のカラー画像が印字される面に作用する第1のエンドレスベルト39aからの負荷が軽減されるので、カラー画像の品質に悪影響を及ぼすことなく、スムーズに巻取ローラ81に用紙を巻回させることが可能となる。
また、巻取ローラ81を取り囲むように、第3〜第8のエンドレスベルト搬送ローラ37c〜37hと、第2〜第7のエンドレスベルト39b〜39gとを備えている。そして、第2〜第7のエンドレスベルト39b〜39gは、第2のエンドレスベルト搬送ローラ37bから第8のエンドレスベルト搬送ローラ37hまでにおいて隣接する2つのローラにそれぞれ巻き掛けられている。従って、第2〜第8のエンドレスベルト搬送ローラ37b〜37hを回転させると、それに伴って第2〜第7のエンドレスベルト39b〜39gが回転するので、巻取ローラ81と第1のエンドレスベルト39aで挟持された用紙を容易に巻取ローラ81に巻回させることが可能となる。また、用紙のカラー画像が記録される面に傷が付く可能性も低い。さらに、第2〜第8のエンドレスベルト搬送ローラ37b〜37hを逆回転させると、それに伴って第2〜第7のエンドレスベルト39b〜39gも逆回転するので、用紙の画像が記録される面に付く傷を軽減させつつ、巻取ローラ81に巻回された用紙を容易に巻き解くことが可能となる。
また、巻取ローラ81を回転するためのモータ83備えているので、印字部70に対して用紙供給部40と反対側の方向に搬送された用紙の先端を、巻取ローラ81と第1のエンドレスベルト39aとの間に進入させやすくなる。また、用紙の画像が記録されない面と巻取ローラ81との間の摩擦を小さくすることができるので、用紙の画像が記録されない面に傷が付きにくくなる。
以上、本発明の好適な一実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて、様々な設計変更を行うことが可能なものである。例えば、上述の実施の形態では、操作部10のディスプレイ11の表示面と、制御部20のデータ入力部20aの記憶媒体挿入面と、筐体30Aのプリントボックス96が引き出される面とがプリンタ1の正面と一致している場合について説明したが、これには限られない。例えば、ディスプレイ11の表示面及び記憶媒体挿入面がプリンタ1の正面と一致していると共に、筐体30Aのプリントボックス96が引き出される面がプリンタ1の背面と一致していてもよい。
加えて、上述の実施の形態では、プリントボックス96が、上端部が開口された箱状部材であり、その下端部において支持軸97によって回転可動に支持されており、筐体30A内に収納された状態と、筐体30Aの正面から上端近傍が引き出された状態とを取り得る場合について説明したが、これには限られない。例えば、プリントボックス96の底部にローラを設け、筐体30Aから引き出す機構にしてもよいし、プリントボックス96が筐体30Aから引き出されないようにしてもよい。また、プリントボックス96を設けず、筐体30Aの正面から印字済みの用紙が直接排出されるようにしてもよい。
また、上述の実施の形態では、用紙巻取部80が巻取ローラ81を有しているが、巻取ローラ81は省略してもよい。ただし、用紙を格納しやすくなるという観点においては、巻取ローラ81を有することが好ましい。
また、上述の実施の形態では、用紙の先端部近傍にヘッド放熱用の追加長さに対応する領域が設けられ且つ各画像間に余白部が形成されつつ複数のカラー画像が印字されているが、ヘッド放熱用の追加長さに対応する領域は設けられなくてもよいし、各画像間に余白部が形成されなくてもよい。
また、上述の実施の形態では、搬送ローラ37aと従動ローラ35eとをチェーンで連結しているが、これに限られず、環状のベルトで連結してもよい。
また、上述の実施の形態では、搬送ローラの数が8本、エンドレスベルトの数が7本であるが、数はこれに限られない。即ち、第1の搬送ローラ37a、第2の搬送ローラ37b、及び用紙巻取部80を取り囲むようにそれぞれ配置された第3〜第n(nは3以上の自然数)の搬送ローラを有し、第1の搬送ローラ37aと第2の搬送ローラ37bとに巻き掛けられた第1のエンドレスベルト39a、第2の搬送ローラ37bと第3の搬送ローラ37cとに巻き掛けられた第2のエンドレスベルト39b、及び第n−1の搬送ローラと第nの搬送ローラとに巻き掛けられた第n−1のエンドレスベルトを有していてもよい。
また、上述の実施の形態では、送り込みローラ35の前後で用紙搬送方向が屈曲しているが、必ずしもここで屈曲させなくてもよい。屈曲させない場合であっても、第1のエンドレスベルト39aが延在する方向と、巻取ローラ81及び送り込み駆動ローラ35dの共通接線とを実質的に平行とすることで、送り込みローラ対35から送出された用紙の先端を、巻取ローラ81と第1のエンドレスベルトとの間にスムーズに誘導しやすくなる。
また、上述の実施の形態では、巻取ローラ81をモータ83によって回転可能に構成しているが、巻取ローラ81に接するのは用紙の裏面(印字されない面)であるため、必ずしも回転可能にする必要はない。さらに、巻取ローラ81の表面における摩擦係数を小さくすれば用紙に傷が付きにくくなる。このように、巻取ローラ81を非回転部材とすることで、モータ83を設ける必要がないので、簡易な構成にすることができる。
また、上述の実施の形態では、駆動ローラ35dの回転を第1の搬送ローラ37a〜第8の搬送ローラ37hに間接的に伝達させることによって、送り込みローラ対35から送出された用紙の搬送速度とエンドレスベルト39a〜39gの搬送速度とを同期させているが、必ずしも同期させなくてもよい。即ち、送り込みローラ対35から送出された用紙の搬送速度とエンドレスベルト39a〜39gによる用紙の搬送速度とが必ずしも同じ速度でなくても、用紙が用紙巻取部80に巻回される方向に搬送ベルト39b〜39gを搬送させることで、用紙に付く傷を軽減させることが可能である。
さらに、上述の実施の形態では、熱昇華方式のプリンタ1において、記録媒体である用紙と接触する3つのヘッド部71〜73によってカラー画像が印字されているが、カラー画像を記録可能なプリンタであれば、その画像記録部の構成はこれに限られない。従って、記録媒体と接触するヘッドを有するサーマルプリンタ(熱転写方式及び感熱記録方式を含む)であってもよいし、例えばインクジェットヘッド、FOCRT(Fiber Optic Cathode-Ray-Tube)、レーザ光源などを有しており、記録媒体と接触しないでカラー画像を記録可能なプリンタであってもよい。また、画像記録部は、必ずしも複数の画像記録ヘッドを有している必要はなく、カラー画像を記録可能な1つの画像記録ヘッドだけを有していてもよい。従って、例えばイエロー、マゼンタ、シアンのインクを吐出可能なノズルをそれぞれ有する3つのインクジェットヘッドを有しており、それらのヘッドが記録媒体の搬送方向に交差する方向に往復動しつつカラー画像を記録するプリンタであってもよいし、イエロー、マゼンタ、シアンのインクを吐出可能なノズルを有する1つのインクジェットヘッドを有しており、そのヘッドが記録媒体の搬送方向に交差する方向に往復動しつつカラー画像を記録するプリンタであってもよい。