JP4361574B2 - インジェクタ引き抜き工具 - Google Patents

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Description

この発明は、シリンダヘッドから燃料噴射弁(インジェクタ)を引き抜くための工具に関する。
ディーゼルエンジンその他の筒内直噴エンジンでは、インジェクタは燃料の噴出口が気筒内に位置し、気筒内の燃焼サイクルで生じる高圧に耐えるよう、シリンダヘッドに押さえつけるようにして密着状態に差し込み固定されている。
したがって、燃料に微量含まれる水分の影響で、インジェクタ先端と接触しているシリンダヘッド部分にさびあるいは腐食が生じると、保守点検のためインジェクタを引き抜く際、インジェクタ先端がシリンダヘッドに固着した状態になり、容易に抜けない状態が生じることがある。このような場合、たとえば特許文献1に示されるようなスライディングハンマなどの工具を使うことが行われているが、近年の自動車設計等のように、エンジンルームがコンパクトに作られる場合には、十分なスライディングハンマ使用スペースが得られないことが多いので、引き抜き作業に困難を生じる。
実開昭64-4576号公報
したがって、この発明は、車両のエンジンルームなどの狭い空間内であっても、インジェクタ部分への装着が容易でかつ大きな引き抜き力を得ることができる、インジェクタをシリンダヘッドから引き抜くための工具を提供する。
この発明の工具は、複数のインジェクタが直列配置された多気筒エンジンのシリンダヘッドからインジェクタを引き抜くための工具であって、インジェクタ上端部に取付け可能な装着部を有し、外周にネジ部を有する第1のシャフト部材と、インジェクタ又はインジェクタダミーの上端部に固定可能な装着部を有する第2のシャフト部材と、第1のシャフト部材および第2のシャフト部材を支承可能な支持台と、第1のシャフト部材のネジ部に螺着可能なナット部材と、を備える。さらに、この工具は、第1のシャフト部材を引き抜き対象であるインジェクタに取り付けし、第2のシャフト部材を前記インジェクタ又はインジェクタダミーに取り付けて支持台に固定した状態で、支持台を遊嵌貫通する第1のシャフト部材のネジ部に前記ナット部材を螺着させ、このナット部材を支持台に押し付けるような向きに回動して第1のシャフト部材をインジェクタの引き抜き方向へ移動させるように構成したものである。
使用にあたっては、各インジェクタを利用してシリンダヘッド部分に支持台を複数箇所で固定した状態で、ナット部材を支持台に押し付けるような向きに回動操作して第1のシャフト部材を引き抜き方向に移動させることにより、第1のシャフト部材に固定したインジェクタをシリンダヘッドから引き抜く。この場合、第1のシャフト部材の外周にネジが形成された状態であり、この外周のネジ部にナット部材が、支持台上方から取り付けられる。ナット部材を支持台に押し付けるような向きに回動させると、ナット部材は、支持台で規制されて下方へ移動できないので、相対的に第1のシャフト部材が上方向に動かされ、第1のシャフトに固定された引き抜き対象のインジェクタが引き抜かれる。ナット部材は、スパナ、レンチなどを用いて回転させる。なお、ナット部材はそれ自体に回動操作用のつまみ部等を一体形成してもよい。インジェクタダミーは、シリンダヘッドからインジェクタが引き抜かれた後、このインジェクタの位置に差し込まれる部材であり、上部にインジェクタと同様の結合部を有する。このように、引き抜き方向に大きなスペースを必要としないので、狭いエンジンルーム内等でも容易にインジェクタ引き抜き作業を行うことができる。したがって、エンジンヘッド部分に圧入固定されているインジェクタに対して、他のインジェクタ取付け部を支点として、側方からの回転操作で大きな引抜力を作用させることが可能になり、車両のエンジンルームなどの狭い空間内でのインジェクタ取り外しに際して、インジェクタがエンジンヘッド部分に固着状態となっていても、引抜作業を容易に行うことができる。
図1は、直列4気筒のディーゼルエンジンのシリンダヘッド10について、電磁制御ユニットおよび燃料供給管をはずした状態のインジェクタ21に、この発明に係る引き抜き工具の支持台13、引き抜きシャフト・アセンブリ23および固定シャフト・アセンブリ33を取り付けた状態を示す。図2は、支持台13を長さ方向の断面図で表し、引き抜きシャフト・アセンブリ23、固定シャフト・アセンブリ33とインジェクタ21a、21b、21cとの結合状態を表している。支持台13は、引き抜きシャフト・アセンブリ23および固定シャフト・アセンブリ33を支承可能であり、下部支持板13a、上部支持板13b、およびこれらを連結する2つの側壁13cで構成されている。
図2では、使用状態のインジェクタ・アセンブリから電磁制御ユニットおよび燃料供給管を取り外した状態での3つのインジェクタ21a、21b、21cの上部部分を表している。3つのインジェクタのうちの中央のインジェクタ21bが引き抜きシャフト・アセンブリ23を用いてシリンダヘッド10から引き抜く対象であり、両側のインジェクタ21a、21cが固定シャフト・アセンブリ33を用いて支持台13に固定される対象である。各インジェクタ21a、21b、21cの上面側には、円柱状にくり抜かれた凹部20が設けられており、その凹部20の下方にはその凹部20より穴径の小さいネジ穴24が設けられている。ネジ穴24には雌ネジが形成されている。各インジェクタ21a、21b、21cは、図3に示すように、引き抜きシャフト・アセンブリ23または固定シャフト・アセンブリ33と結合するためのネジ穴24および凹部20を有する結合部22aとインジェクタ軸部22bと噴射ノズル22cとを備えている。インジェクタ21aおよび21cは、実際にエンジンに取り付けられたインジェクタであってよいが、インジェクタを引き抜いたあとに挿入されたダミーのインジェクタであってもよい。また、このダミーのインジェクタは、噴射ノズル22cをもたない形だけのインジェクタである。
支持板13の下部支持板13aは、3つのインジェクタ21a、21b、21cに位置合わせされた3つの開口32a、32b、32cを有する。上部支持板13bは、開口32bと同じ位置に開口35を有し、開口32b、35を引き抜きシャフト・アセンブリ23の引き抜きシャフト25が貫通することができるようになっている。下部支持板13aの中央の開口32bは、インジェクタ21bが通ることができる大きさの直径を有している。
図3は、インジェクタ21と引き抜きシャフト・アセンブリ23との結合状態を示している。インジェクタ21は、先端に噴射ノズル22cを備えており、この噴射ノズル22cがシリンダヘッド10の内部の孔(図示せず)に密着して挿入されている。筒内直噴エンジンでは、ノズル22cは、気筒内の高温および高圧にさらされる。このため、長年の使用によってノズル22cがシリンダヘッド10の孔に固着した状態になり、簡単には抜けなくなることがある。また、インジェクタ軸部22bも錆付いている場合が多く、この場合は錆の摩擦のために手で引き抜けないことがある。引き抜きシャフト・アセンブリ23は、このノズル部分の固着などにより抜けにくくなったインジェクタに取り付けて引き抜くために使用する。
引き抜きシャフト・アセンブリ23は、図3に示すように、第1のシャフト部材としての引き抜きシャフト25(軸部材)およびキャップ27(引抜部材)と、ベアリング29と、ナット31(ナット部材)とを備えている。引き抜きシャフト25は、外周にネジが設けられた棒状の軸部25aの一端に、締め付け部25bとネジ部25cを形成してなる。インジェクタを装着するための装着部としてのネジ部25cには、インジェクタ21bのネジ穴24に設けられている雌ネジに対応する雄ネジに形成されている。また、締め付け部25bは、4つの締め付け用平面が形成されており、断面四角形状である。この締め付け部25bは、ネジ部25cをインジェクタ21bのネジ穴24にねじ結合させるときに、レンチやスパナなどが使用できるように構成されている。
キャップ27は、内周および外周にネジが形成された円筒部27aと、その一端に設けられたナット部27b(装着部)とから構成されている。円筒部27aの内周に形成されるネジは、引き抜きシャフト25の軸部25aに形成されたネジと係合し、外周に形成されるネジよりも細かいピッチに形成されている。ナット部27bには、その内周に円筒部27aの内周に形成されたネジから連続するネジが形成され、外周にはレンチやスパナなどを掛けることができるように6角柱状に形成されている。
ナット31は、その内周にキャップ27の円筒部27aに形成されたネジに対応してねじ結合可能なネジが形成され、その外周はレンチやスパナなどを掛けることができる6角柱状に形成されている。
ベアリング29は、この場合、スラストベアリングであり、支持台13の上部支持板13bとナット31との間に配置され、ナット31の回動による支持台13の連れ周り力を低下させるために配置している。
第2のシャフト部材としての固定シャフト・アセンブリ33は、図4に示すように、引き抜きシャフト25の軸部25aより長さが短い軸部34aを有する固定シャフト34と、この固定シャフト34を下部支持板13aに固定するナット36およびワッシャー(座金)35を備えている。固定シャフト34は、引き抜きシャフト・アセンブリ23の引き抜きシャフト25と同様、軸部34a、締め付け部34b、ネジ部34cとを備えており、これらの機能は、その軸部34aが引き抜きシャフト25の軸部25aよりも長さが短い以外は引き抜きシャフト25とほぼ同様の構成であるので、その説明を省略する。ナット36は、その内周には、固定シャフト34の軸部34aの外周に形成されたネジに対応してねじ結合可能なネジが形成されており、その外周は、レンチやスパナなどを掛けることができる6角柱状に形成されている。ワッシャー35は、下部支持板13aを固定シャフト34とナット36で締め付ける際に、ナット36と下部支持板13aとの間に挟み込む穴の開いた部材である。
次に、上記構成の引き抜き工具の組み立ておよび使用方法について説明する。
まず、引き抜き対象のインジェクタ21bに引き抜きシャフト25を取り付け、その両隣の2つのインジェクタまたはダミーインジェクタ21a、21cに固定シャフト34を取り付ける。引き抜きシャフト25の取り付けは、インジェクタ21bの凹部20に引き抜きシャフト25のネジ部25cを差し込み、差し込んだネジ部25cをインジェクタ21bのネジ穴24bと結合させるように締め付け部25bにスパナ等を掛けて締め付けることにより行う。固定シャフト34の取り付けも同様の方法で行う。引き抜きシャフト25の軸部25aの外周には、予めキャップ27をネジ込んでおいた方が後の作業が簡単である。
このようにして、各インジェクタ21a、21b、21cに引き抜きシャフト25、固定シャフト34を取り付けた後、引き抜きシャフト25およびキャップ27が開口32b、35を貫通し、固定シャフト34がそれぞれ開口32a、32cを貫通するように位置あわせをして支持台13をシリンダヘッド10に被せる。このとき、下部支持板13aの開口32aおよび32cは、インジェクタ21a、21cの直径より小さく、固定用シャフト34aの軸部34aは通すが締め付け部34bは通さないようになっているので、下部支持板13aは固定用シャフト34aの締め付け部34bの上部に支えられて止まる。下部支持板13aを貫通した固定シャフト34を、ナット36およびワッシャー35を用いて下部支持板13aに仮締めする。
次いで、ベアリング29に引き抜きシャフト25およびキャップ27を貫通させるようにして、支持台13の上部支持板13bの開口35部分にベアリング29を載せて、さらにベアリング29の上に突出したキャップ27に対しナット31をネジ締めして引き抜きシャフト25およびキャップ27を仮締めする。上部支持板13bの開口35の大きさは、引き抜きシャフト25およびキャップ27が遊嵌貫通すると共に、ベアリング29およびナット31の外径よりも小さく、ナット31を上部支持板13bに押し付ける方向へ回動させた場合に、ナット31がベアリング29に当接した後は、ナット31の上部支持板13bへ向かう方向への移動が阻止されるような大きさとされている。
この後、引き抜きシャフト25に対するキャップ27の位置決めをする。このキャップ27の位置決めでは、ベアリング29上にナット31をセットした状態で、キャップ27のナット部27bにスパナやメガネレンチなどの工具がセットできるようなナット部27bの露出量を確保する。
この位置決めがなされた後、ナット36をさらに締めて、固定シャフト・アセンブリ33を下部支持板13aに本締めする。このようにして引き抜き工具の組み立てが完了する。
組み立てが完成した引き抜き工具の引き抜きシャフト25に係合したキャップ27のナット部27bにスパナやメガネレンチなどの工具をセットし、この工具によってキャップ27および引き抜きシャフト25の回動を阻止する。工具によって引き抜きシャフト25およびキャップ27の供回りを防止しながら、ナット31を支持台13に押し付けるような向きに回動させると、ナット31は支持台13およびベアリング29で規制されて下方へ移動できないので、工具によって回動を阻止されたキャップ27と引き抜きシャフト25は、上方向に徐々に移動し、これにより引き抜きシャフト25に取り付けられた引き抜き対象のインジェクタ21bが徐々に持ち上がり、引き抜き対象のインジェクタ21bの固着が解除される。
なお、前述したように、キャップ27と引き抜きシャフト25の軸部25aとの間は、キャップ27とナット31との間のネジよりも細かいピッチのネジで結合されている。これは、インジェクタの先端部の噴射ノズル22cは、ねじりに対してはタフネスがなく、インジェクタ21b自体にねじりトルクが作用すると噴射ノズル22c部分を破壊してしまう可能性があるから、工具によってキャップ27および引き抜きシャフト25の回動を阻止する作業者の操作に、多少のぶれが生じても、インジェクタ21b自体に、ナット31の回動によるねじりトルクが作用しにくいようにするために設けている。すなわち、作業者による工具操作によってキャップ27の回動を阻止することで引き抜きシャフト25の回動も阻止するに際して、作業者による回動固定操作にはブレが発生する可能性があるが、ナット31を回動させることにより発生するキャップ27の回転ブレを、ネジ部の滑りによって回転トルクを直接インジェクタへ伝達させない様にして、噴射ノズル22c部分に大きなねじり力が作用することを防止している。これにより、回転トルクを、キャップ27のみにかかり、引き抜きシャフト25自体にはかからないようにできる。さらにこの実施例では、キャップ27と引き抜きシャフト25の軸部25aとの間をキャップ27とナット31との間のネジよりも細かいピッチのネジで結合することで、回動固定操作のブレによりキャップ27が回転した場合でも、キャップ27と引き抜きシャフト25との相対位置のずれをより少なく抑えるようにしている。
したがって、インジェクタに回転方向のトルクが直接作用してよい構成である場合は、キャップ27を用いず、引き抜きシャフト25の軸部25aに直接ナット31をネジ結合するようにしてもよい。
またさらに、引き抜きシャフト25の軸部25aの一部分を、軸部25aよりも一段と細く形成したりワイヤなどで形成したりすることによって、ねじりを吸収できる構造とし、キャップ27の回転ブレを引き抜きシャフト25のねじりによって吸収して噴射ノズル22c部分の破断を防止する効果が得られるようにしてもよい。
このようにこの実施例では、インジェクタ21bの引き抜き作業に伴う引き抜き方向に対する反力(押し付け力)およびナット31の回動に伴う反力(回転方向の連れ周り力)を、エンジンのシリンダヘッド10部分に取り付けられている他のインジェクタ21a、21cを利用して強固に支持することができる。狭いスペースでは、反力を支える支持部を確保することが難しいが、上記のように他のインジェクタを利用することでシリンダヘッド部分上部の狭い空間内で直接反力を支持可能となるので、インジェクタがシリンダヘッド10部分に固着状態となっていても、引き抜き作業を容易に行うことができる。
ナット31は、インジェクタ21bを抜くのに十分な力が出るように大きな直径のものを使用することが好ましい。また、ナット31はそれ自体に回動作用のつまみ部等を一体形成して構成してもよい。
インジェクタ21bの先端部の噴射ノズル22cやインジェクタ軸部22bがシリンダヘッド10の孔における固着から解放されると、引き抜き工具を上記の組み立て手順と逆の手順で分解し、インジェクタ21bをシリンダヘッド10から引き抜く。こうしてインジェクタ21bの引き抜き作業が完了する。
このように、本発明の工具は、各パーツがばらばらな組み合わせ工具であるので、狭い空間の中へ各パーツを順次さしいれて、空間内で組み付けて最後にナット31をスパナ等で締めこんで引き抜くという作業ができる。
以上説明した本発明の工具は、エンジンに取り付けられている複数のインジェクタのうち、簡単には抜けなくなってしまったものについて、特に適用することができる。
次に図5および図6を参照して、この発明のもう一つの実施例を説明する。この実施例は図5に示すように、支持台15の構成が先の実施例と異なるものである。先の実施例では、直列配置された3つのインジェクタ21a、21b、21cのうちの中央のインジェクタ21bを引き抜き対象としたが、この実施例の支持台15は、3つのインジェクタ21a、21b、21cのうちの端部に位置するインジェクタ21cを引き抜き対象としている。
具体的には、図6に示す断面図からわかるように、上部支持板15bは、下部支持板15aから横方向にずらされている。また、支持台15の下部支持板15aは、固定シャフト・アセンブリ33を固定するための開口40a、40bを有しており、上部支持板15bは、引き抜きシャフト・アセンブリ23を固定するための開口41を有している。下部支持板15aには、引き抜きシャフト・アセンブリ23の引き抜きシャフト25を貫通させるための開口は形成されていない。すなわち、この支持台15では、下部支持板15aを上部支持板15bに対して横方向にずらしたときの上部支持板15bの下方空間を利用して、開口を介することなく引き抜きシャフト・アセンブリ23を引き抜き対象のインジェクタ21cに取り付けており、下部支持板15aの板面積を小さくすることができる。開口40a、40bはインジェクタ21a、21bに位置あわせされており、開口41は引き抜き対象インジェクタ21cに位置あわせされている。
なお、この実施例で用いる引き抜きシャフト・アセンブリ23は、図3に示したものと同じであり、固定用シャフト・アセンブリ33についても図4に示したものと同じである。
次に、この実施例の引き抜き工具の組み立ておよび使用方法について簡単に説明する。先の実施例では、直列配置された3つインジェクタ21a、21b、21cのうち、中央に位置するインジェクタ21bに引き抜きシャフト25を取り付け、その両隣のインジェクタ21a、21cに固定シャフト34を取り付けていたが、この実施例の引き抜き工具では、端に位置するインジェクタ21cに引き抜きシャフト25を取り付けて、他のインジェクタ21a、21bに固定シャフト33を取り付けて用いる以外は、先に説明した引き抜き工具と同様に用いることが出来るのでその説明を省略する。
この支持台15を用いれば、先の実施例の効果に加えて、端側でインジェクタ取り外しを行う構造であるため、取り外し対象のインジェクタの位置に拘わらず使用できるという利点がある。
ところで、以上説明したように、キャップ27は必須の構成ではないが、治具をセットする天地高の制限が発生した場合に対応するためにも用いることが好ましい。以上の実施例では、引き抜き工具が完成した状態(初期状態)でキャップ27を貫通する長さの引き抜きシャフト25を用い、貫通した状態から引き抜き作業を開始していたが、天地高の制限が出た場合には、長さの短い引き抜きシャフト25を用いて、引き抜きシャフト25をキャップ27の内周のネジに1/3程度かけた状態、すなわち引き抜きシャフト25がキャップ27の1/3程度に位置までのめり込んだような状態にしてから作業を始めることができる。そのときの作業は、ナット31を回して、キャップ27および引き抜きシャフト25を上に持ち上げ、キャップ27および引き抜きシャフト25がある程度上がったら、ナット31を少し緩め、キャップ27を引き抜きシャフト25にねじ込んで引き抜きシャフト25をキャップ27にさらにのめり込ませて、引き抜きシャフト25およびキャップ27部分の全体の高さを下げ、再び、引き抜きシャフト25の持ち上げ作業をすることになる。すなわち、引き抜きシャフト25およびキャップ27部分の全体的な長さを段階的に縮めていくことによって、引き抜き作業によってインジェクタが上がった分を段階的に下げながら作業する。このように、キャップ27を用いることによって、天地高に制限があるときでも、インジェクタを引き上げたときに天井に干渉することなく作業をすることができる。このような利用法に対応するために、引抜シャフト25の軸部25aの長さは初期状態でキャップ27に1/3程度のめり込む長さ以上であれば短いほうが好ましい。
また、ベアリング29は必須の構成ではないが、ベアリング29があることによって、ナット31を回動させたときに上部支持板13b、15bとの間で摩擦抵抗がほとんど発生せず、ナット31と上部支持板13b、15bとの連れ周り力を低下させて回転トルクを有効に引き抜き力として利用することができる。すなわち、ナット31と支持板13、15が直接触れた状態で回転させると回転エネルギーのかなりの部分がナット31と支持板13、15との摩擦で損失してしまうが、ベアリング29を介在させることによりこれを防ぐことができる。
以上の2つの実施例において説明した支持台13、15は、それぞれ、先の実施例の支持台13を3気筒の時のみ使用し、4気筒の時は後の実施例の支持台15をずらしながら使用することとして使い分けてもよい。
以上にこの発明を具体的な実施例について説明したが、この発明はこのような実施例に限定されるものではない。
シリンダヘッドにこの発明に係るインジェクタ引き抜き工具アセンブリを取り付けた状態を示す図。 支持台を断面で表したインジェクタ引き抜き工具アセンブリの取り付け状態を示す図。 インジェクタと結合した引き抜きシャフト・アセンブリの分解図。 固定シャフト・アセンブリの分解図。 この発明のもう一つの実施例を示す図。 支持台を断面で表した第2の実施例の工具アセンブリの取り付け状態を示す図。
符号の説明
10 ・・・・ シリンダヘッド
13 ・・・・ 支持台
13a ・・・・ 下部支持板
13b ・・・・ 上部支持板
20 ・・・・ 凹部
21 ・・・・ インジェクタ
22a ・・・・ 結合部
22b ・・・・ インジェクタ軸部
22c ・・・・ 噴射ノズル
23 ・・・・ 引き抜きシャフト・アセンブリ
24 ・・・・ ネジ穴
25 ・・・・ 引き抜きシャフト
25a ・・・・ 軸部
25b ・・・・ 締め付け部
25c ・・・・ ネジ部
27 ・・・・ キャップ
27a ・・・・ 円筒部
27b ・・・・ ナット部
29 ・・・・ ベアリング
31 ・・・・ ナット
33 ・・・・ 固定シャフト・アセンブリ
34 ・・・・ 固定シャフト
34a ・・・・ 軸部
34b ・・・・ 締め付け部
34c ・・・・ ネジ部
35 ・・・・ ワッシャー(座金)
36 ・・・・ ナット

Claims (8)

  1. 複数のインジェクタが直列配置された多気筒エンジンのシリンダヘッドからインジェクタを引き抜くための工具であって、
    前記インジェクタ上端部に取付け可能な装着部を有し、外周にネジ部を有する第1のシャフト部材と、
    前記インジェクタ又はインジェクタダミーの上端部に固定可能な装着部を有する第2のシャフト部材と、
    前記第1のシャフト部材および前記第2のシャフト部材を支承可能な支持台と、
    前記第1のシャフト部材のネジ部に螺着可能なナット部材と、を備え、
    前記第1のシャフト部材を引き抜き対象であるインジェクタに取り付けし、前記第2のシャフト部材を前記インジェクタ又はインジェクタダミーに取り付けて前記支持台に固定した状態で、前記支持台を遊嵌貫通する前記第1のシャフト部材のネジ部に前記ナット部材を螺着させ、このナット部材を前記支持台に押し付けるような向きに回動して前記第1のシャフト部材を前記インジェクタの引き抜き方向へ移動させるように構成した、インジェクタの引き抜き工具。
  2. 前記支持台は、
    前記第2のシャフト部材を用いて固定される前記インジェクタまたはインジェクタダミーに対応した位置に開口を有する第1の支持板と、
    該第1の支持板と間隔を開けて設けられ、前記引き抜き対象のインジェクタに対応した位置に、前記第1のシャフト部材が貫通すると共に前記ナット部材が押し付け方向へ移動するのを阻止する大きさの開口を備えた第2の支持板と、
    前記第1の支持板に対し前記第2の支持板を固定する側壁と、を有する、請求項1に記載の工具。
  3. 前記第1のシャフト部材は、
    インジェクタ上端部に取付け可能な装着部を有し、外周にネジ部を有する軸部材と、
    内周に前記軸部材の外周に設けられたネジ部と螺合するネジ部が形成され、外周に前記ナット部材と螺合するネジ部が形成された引抜部材と
    を備える、請求項1または2記載の工具。
  4. 前記引き抜き部材の一端には、引き抜き部材の回転を阻止するための工具を装着する装着部が形成されている、請求項3記載の工具。
  5. 前記引き抜き部材の内周に形成されたネジ部のピッチは、引き抜き部材の外周に形成されたネジ部のピッチより細かい、請求項3または4記載の工具。
  6. 前記支持台と前記ナット部材の間に配置されるベアリングをさらに備える、請求項2から5のいずれかに記載の工具。
  7. 前記インジェクタダミーは、シリンダヘッドからインジェクタが引き抜かれた後、このインジェクタの位置に差し込まれる、インジェクタと同様の上端部を有する部材である、請求項1から6のいずれかに記載の工具。
  8. 前記第1の支持板は、引き抜き対象のインジェクタに隣接するインジェクタまたはインジェクタダミーに固定される請求項2から7のいずれかに記載の工具。
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