上記、非特許文献1の後半の技術によれば、リールは少なくとも所定の回転数で回転しON/OFF信号により増速減速されるので、頻繁に繰り返される起動・停止を少なくし、起動・停止時の衝撃によりリール上の線材束がばらけたり、線材相互が絡むことなどを緩和することができる。しかしながら、線材加工機側の加工速度が高速になっったり、線材加工機側から必要とされる線材供給速度が大きく変化する場合や、リール上の線材束の内外径の差が大きい場合や、数種類の内外径の線材束を取り替えながら使用する場合には、リールからの繰り出し量が線材加工機側の要求量に対して不足したり過剰になったりして段取り換え無しでは対応できないなどの問題があった。すなわち、線材加工機側の加工速度を落とすか、アンコイラを線材加工機側の要求量に合わせて交換するか、加工速度や線材束の半径に合わせてリールの速度設定をその都度設定し直すなどの面倒な手順が必要であった。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、線材加工機側の加工速度を高速化したり、線材加工機側から必要とされる線材供給速度が大きく変化する場合や、リール上の線材束の内外径の差が大きい場合や、数種類の内外径の大きく異なる線材束を交換して使用する場合において、アンコイラを線材加工機側要求量に合わせて交換したり、また、加工速度や線材束の半径に合わせてリールの速度設定をその都度設定し直したりする必要のない線材加工機の線材送り装置を提供しようとするものである。すなわち、頻繁に繰り返される起動・停止時の衝撃により、リール上の線材束がばらけたり線材相互が絡む問題、リールからの線材過剰供給により線材相互が絡んだり、線材の送り出し量不足のより異常張力により線材束に線材が食い込む問題などを解決し、線材加工機側の加工速度を高速化した場合でもトラブルのない線材加工機の線材送り装置を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために請求項1に記載の発明は、線材加工を行う加工部へ線材を供給するフィードローラの回転速度と、貯蔵している線材を前記フィードローラへ供給するアンコイラ側リールの回転速度とを、加工プログラムの線材送りデータを基に同期制御して、アンコイラから線材加工機へ線材を供給する線材加工機の線材送り装置であって、前記加工プログラムの前記線材送りデータに基づき走査周期ごとに制御され前記フィードローラを回転駆動するフィードローラ用サーボモータと、前記フィードローラと前記リールとの間に移動子を介して線材ループを形成する線材ループ形成手段と、前記移動子の位置を検出する移動子位置検出手段と、前記加工プログラムのデータに基づき設定走査周期数ごとの平均供給速度V1を演算する平均速度演算手段と、前記移動子位置検出手段で検出した前記移動子の位置データから測定周期Tごとのループ長さ変化量ΔLを演算するループ長さ演算手段と、前記平均供給速度V1と前記ループ長さの変化量ΔLと測定周期Tごとの前回のリール回転速度と前記測定周期Tとからリール上に置かれた線材束の推定繰出し半径rを演算する推定繰出し半径演算手段と、前記平均供給速度V1と前記推定繰出し半径rとで今回のリール回転速度ωを演算するリール回転速度演算手段と、前記今回のリール回転速度ωに基づき制御され前記リールを回転駆動するリール用サーボモータと、前記平均速度演算手段と前記ループ長さ演算手段と前記推定繰出し半径演算手段と前記リール回転速度演算手段とを含み前記フィードローラ用サーボモータと前記リール用サーボモータを制御する数値制御手段とを設け、前記フィードローラ用サーボモータと前記リール用サーボモータとの回転速度を同一の前記線材送りデータに基づき制御し、前記フィードローラによる供給速度と前記リールによる供給速度とを同期させるように構成したものである。
上記課題を解決するために請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の線材加工機の線材送り装置において、前記移動子位置検出手段で検出の前記移動子の位置が設定した上限と下限の範囲内にあるかどうかを判定し、前記移動子の位置が前記範囲外にある場合は前記移動子が前記範囲内に入る方向へ移動可能に減速指令又は加速指令を出力する移動子位置判定手段と、前記リール回転速度演算手段で演算して求めた今回のリール回転速度ωに対して、前記移動子位置判定手段から出力された減速指令又は加速指令に基づき設定減速回転速度又は設定加速回転速度を加算する回転速度補正手段とを設けるようにしたものである。
上記課題を解決するために請求項3に記載の発明は、請求項1、2に記載の線材加工機の線材送り装置において、前記線材ループ形成手段は、前記線材が前記リールの線材束から離れる出口近傍に取り付けられ線材を案内可能な固定ガイドと、該固定ガイドとは前記リールを挟んで略反対側に位置して、基台に回転可能に軸支された回転軸を中心として揺動可能に取り付けられかつ前記固定ガイド側方向とは逆方向に付勢されたテンションレバーに設けられ、前記線材を案内可能な前記移動子とで構成し、前記線材が前記リールの線材束から離れ前記固定ガイドと前記移動子に案内されながら前記ループを形成し前記フィードローラへと移動する際に、前記フィードローラと前記リールのそれぞれの回転による線材供給量に差が生じたときに、この差に応じて前記移動子が前記回転軸を中心として揺動するようにしたものである。
上記課題を解決するために請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3に記載の線材加工機の線材送り装置において、前記移動子位置検出手段は、前記回転軸の回転位置を検出するようにしたものである。
上記課題を解決するために請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4に記載の線材加工機の線材送り装置において、前記ループ長さ演算手段は、実測データから求めた前記回転角度位置と前記ループ長さとの関係式をもとにループ長さの変化量ΔLを算出するループ長さ演算式が設けられたものである。
上記課題を解決するために請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5に記載の線材加工機の線材送り装置において、前記平均速度演算手段は、前記加工プログラムの走査周期ごとの各線材供給速度値から、今回を基準に設定数の連続値の平均として移動平均供給速度V1を求めるようにしたものである。
上記課題を解決するために請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6に記載の線材加工機の線材送り装置において、前記平均速度演算手段は、前記加工プログラムの走査周期ごとの各線材供給速度値から、今回より未来に向かっての設定数の連続値の平均として移動平均供給速度V1fを求めリール回転速度演算手段へ、今回より過去に向かっての設定数の連続値の平均として移動平均供給速度V1p求め推定繰出し半径演算手段へ出力するようにしたものである。
請求項1の発明によれば、推定繰出し半径演算手段において、平均供給速度V1、ループ長さの変化量ΔL、測定周期Tごとの前回のリール回転速度および設定の測定周期Tからリール上に置かれた線材束の推定繰出し半径rを演算し、さらに、リール回転速度演算手段において、線材束の繰出し半径をこの推定繰出し半径rと推定して平均供給速度V1に対応する今回のリール回転速度ωを演算するようにしたので、フィードローラにより供給される線材の供給速度に同期したリール側供給速度で線材をリールから連続的に送り出すことができる。すなわち、移動子の位置から推定繰出し半径rを求め、それに応じて平均供給速度V1になるリール回転速度でリールを制御することができるので、リール上の線材束の径が変化しても、それに対応して測定周期Tごとに今回のリール回転速度が演算され、リールからの線材供給速度は、絶えず平均供給速度V1になるよう制御される。
そして、請求項2の発明によれば、移動子位置検出手段において、今回検出の移動子の位置が前記範囲外にある場合は前記移動子が前記範囲内に入る方向へ移動するように減速指令又は加速指令を出力する構成にしたので、移動子位置が、絶えず設定の上下限位置内になるよう自動的に調整することができる。すなわち、リール上の線材束の径が変化してもそれに応じてリール回転速度が変化し同期するのと同時に、移動子の位置が設定範囲から外れた場合は、自動的に設定範囲内に入るようにすることができる。
また、請求項3の発明によれば、線材は、リールの線材束から離れ固定ガイドと移動子に案内されながらフィードローラへと移動しループを形成することができ、フィードローラとリールのそれぞれの回転による線材供給量に差が生じ、この差に応じてループの長さが変わるときに、移動子が回転軸を中心として揺動可能としたので、フィードローラにより供給される線材の供給速度とリールによる線材のリール側供給速度との差を、移動子の移動により吸収することができ、かつ、ループ長さの変化量ΔLを回転軸の回転角度を検出することで求めることが可能となる。
また、請求項4の発明によれば、移動子位置検出手段において、移動子位置を回転軸の回転角度位置を検出することにより求めることができる。
また、請求項5の発明によれば、ループ長さ演算手段において、回転軸の回転角度位置とループ長さとの実測データから、回転角度位置変化によるループ長さの変化量ΔLを算出するループ長さ演算式を設けるようにしたので、この演算式を用い回転角度位置変化によるループ長さの変化量ΔLを求めることができる。
また、請求項6の発明によれば、平均速度演算手段において、加工プログラムの走査周期ごとの各線材供給速度値から、今回を基準に設定数の連続値の平均として移動平均供給速度V1を求めるようにしたので、短時間で増減速を繰り返す変化の激しい供給の場合でも、滑らかに変化するリール回転速度でリールを制御することができる。
また、請求項7の発明によれば、前記平均速度演算手段は、前記加工プログラムの走査周期ごとの各線材供給速度値から、今回より未来に向かっての設定数の連続値の平均として移動平均供給速度V1fを求めリール回転速度演算手段へ、同時に今回より過去に向かっての設定数の連続値の平均として移動平均供給速度V1pを求め推定繰出し半径演算手段へ出力することができる。
本発明の線材加工機の線材送り装置は、上述したように構成したので以下に記載するような効果を奏する。
請求項1の発明によれば、移動子の位置から推定繰出し半径rを求め、それに応じた平均供給速度V1になるリール回転速度でリール回転を制御するので、リールからの線材供給速度は測定周期Tごとに常に平均供給速度V1になるよう制御される。そのため、フィードローラにより供給される線材の供給速度とリール側供給速度がほぼ同じくなるので、リール上の線材束の径が変化しても移動子の移動は小さい。その結果、高速での線材送りにも対応できるとともに、線材をなめらかに繰出すことができるので線材の変形を防止できる。その結果、生産性の向上と品質の向上を図ることができるという利点がある。また、ループ変化量が小さくなる結果、テンションレバーの動作範囲が小さくなりアンコイラ設置に要する所要面積を小さくできるという利点がある。
請求項2の発明によれば、移動子位置を設定の上下限位置内になるよう自動的に調整することができる。すなわち、フィードローラにより供給される線材の供給速度とリール側供給速度との差が生じたときに移動子が移動するが、移動子の位置が設定範囲から外れた場合は、自動的に設定範囲内に入るようにすることができる。そのため、ループ形状の変化が一定の範囲内に収まり、アンコイラ設置に要する所要面積を小さくできるという利点がある。
請求項3の発明によれば、フィードローラにより供給される線材の供給速度とリールにより供給される線材の供給速度との差を、付勢されたテンションレバーに設けられた移動子の移動により吸収することができ、滑らかな線材の流れとなり線材の変形が発生しないので、精度の良い製品を加工することができるという利点がある。
請求項4、5の発明によれば、ループの長さ変化量を回転軸の回転角度で検出し、この回転角度位置変化によるループ長さの変化量ΔLをループ長さ演算式で求め、フィードローラにより供給される線材の供給速度とリールにより供給される供給速度とを一致するようにしたので、安定した線材送りができ、線材束に線材が食い込むことなどを防止して、生産性の向上と品質の向上を図ることができるという利点がある。
請求項6の発明によれば、今回を基準に設定数の連続値の平均として移動平均供給速度V1でリールの回転数を制御するので、滑らかな制御ができ、線材束への線材の食い込み、線材の変形などを防止して、生産性の向上と品質の向上を図ることができるという利点がある。
請求項7の発明によれば、平均速度演算手段は、前記加工プログラムの走査周期ごとの各線材供給速度値から、今回より未来に向かっての設定数の連続値の平均として移動平均供給速度V1fを求めリール回転速度演算手段へ、今回より過去に向かっての設定数の連続値の平均として移動平均供給速度V1pを求め推定繰出し半径演算手段へ出力するようにしたので、フィードローラとリールへの速度制御を、平均値として一致した速度で制御すると同時に、フィードローラとリールによる線材供給量の差ΔLからリールの繰出し半径rを推定し、それを基に移動平均供給速度V1fに対するリール回転速度ωを演算することができるので、リールの繰出し半径rが変化しても絶えず移動平均供給速度V1fになるよう、リールの回転速度を制御することができるという利点がある。
本発明の線材加工機の線材送り装置に係る実施の形態について、図1〜図5を参照して以下のとおり説明する。図1は本例に係る線材加工機の線材送り装置を示す斜視図、図2は線材送り装置の線材ループ形成部の動作を示す斜視図、図3はテンションレバー角度位置が変化したときの線材ループを示す模式図、図4は制御ブロック図、図5はフローチャートである。
線材加工機の線材送り装置は図1に示すように、線材Sに曲げ加工やコイリング加工などをする線材加工機1と、この線材加工機1に線材Sを供給するアンコイラ2と、アンコイラ2に設けられ移動子63Aを介してループを形成する線材ループ形成部(請求項の線材ループ形成手段)3と、移動子63Aの位置を検出する移動子位置検出部(請求項の移動子位置検出手段)6と、線材加工機1とアンコイラ2とを関連的に制御する数値制御部4とから構成されている。線材加工機1には、線材Sに各種の加工をする加工機構11とフィードローラ用サーボモータ13により回転駆動される一対のフィードローラ12,12とが近接して機枠上部に設けらており、この一対のフィードローラ12,12に挟持されて線材Sがその回転量に応じた速度で加工機構11に供給される。
線材加工機1への線材Sの流れで、上流側すなわち図示右側の位置にアンコイラ2が設置されている。アンコイラ2は、リール台21上に立設された支柱22の軸心を中心に回転可能に支持された回転軸27と、この回転軸27上部にこの回転軸27と一体で回転可能な円板状のリール23が設けられている。リール23上面は、線材束Cを図示しないガイドポストで位置決めして載置可能となっている。また、回転軸27の中間位置には、ウオームホイール24が一体的に止着され、このウオームホイール24には、リール台21上に取り付けられたリール用サーボモータ26により回転駆動されるウオーム25が噛み合っていて、リール23はリール用サーボモータ26により回転駆動される。
線材ループ形成部3は、先端に線材Sを案内するガイド穴P1を持ち線材束Cの出口近傍リール台21の図示左側に取り付けられている固定スタンド66と、固定スタンド66とはリール23を挟んで反対側に、回転軸62を中心として揺動可能に取り付けられ、図示しない付勢体により常時図示右側に付勢された、先端に線材Sを案内するガイド穴Pを持つ移動子63Aが設けられたテンションレバー63と、線材加工機1への線材送りライン途中に設けられ、先端に線材Sのガイド穴P2を持つ固定スタンド67とで構成されている。線材Sは、線材束Cの出口近傍のガイド穴P1を通り、反対側のテンションレバー63の先端の移動子63Aのガイド穴Pを通り、更に線材加工機1への線材送りライン途中のガイド穴P2を通り、固定位置P1,P2と変動位置Pでなるループを形成しながら線材加工機1へと移動する。
移動子位置検出部6は、リール台21の図示右側に取り付けの支持台61上に回転可能に水平に取り付けられた回転軸62と、回転軸62の一方端に取り付けられ回転軸62の回転角度位置を検出するエンコーダ64とで構成されている。そして、移動子63Aの位置は、テンションレバー63の揺動角度位置すなわち回転軸62の角度位置をエンコーダ64で検出することにより求めることができる。すなわち、既知の固定位置P1,P2に加え変動位置Pの3点を知ることができる。
更に数値制御部4は、図4に示すように移動平均供給速度演算部(請求項の平均速度演算手段)51、ループ長さ演算部(請求項のループ長さ演算手段)56、推定繰出し半径演算部(請求項の推定繰出し半径演算手段)52、リール回転速度演算部(請求項のリール回転速度演算手段)53、移動子位置判定部(請求項の移動子位置判定手段)57、回転速度補正部(請求項の回転速度補正手段)54、各種記憶部を含むCPU40と、フィードローラ用サーボモータ13用ドライバ41Aを含む線材加工機の各サーボモータ用のドライバ41と、リール用サーボモータ26用のドライバ42とから構成されている。
数値制御部4の移動子位置判定部57には、図2に示すテンションレバー63の角度位置、すなわち上限角度位置θH1、下限角度位置θL1、上極限角度位置θH2及び下極限角度位置θL2に対応する各位置が設定されていて、テンションレバー63がその位置にくるとそれぞれの信号を出力するようになっている。このテンションレバー63の角度位置θ、θH1、θL1、θH2、θL2に対応して移動子63Aの位置は図2に示すP、PH1、PL1、PH2、PL2となる。
以上本発明の構成について説明したが、図4に基づき以下動作について説明する。
まず、加工プログラムの処理が開始されると、加工プログラムの線材送りデータを基に、走査周期ごとに、フィードローラ用サーボモータ13用のドライバ41Aへ制御信号が出力され、フィードローラ用サーボモータ13は回転制御される。フィードローラ用サーボモータ13の回転により一対のフィードローラ12,12が回転し、線材Sは走査周期ごとに加工プログラムに従ったフィードローラ側供給速度V0で加工機構11へと供給される。
それと同時に、一方において、移動平均供給速度演算部51においては、加工プログラムのデータに基づき設定走査周期数ごとに指示される供給速度の移動平均を連続して演算し、その結果を測定周期Tごとにリール回転速度演算部53、及び推定繰出し半径演算部52へ出力する。この移動平均供給速度演算部51では、今回より未来に向かってのデータを先読みし、未来に向かっての設定走査周期数ごとに平均して求めた移動平均供給速度V1fと、今回より過去に向かっての設定走査周期数ごとに平均して求めた移動平均供給速度V1pとが演算され、リール回転速度演算部53へは移動平均供給速度V1fを、推定繰出し半径演算部52へは移動平均供給速度V1pを出力する。この場合、簡易的に、移動平均供給速度V1pで移動平均供給速度V1fをかねてもよいが、正確な制御を行うためには両方出力した方が良い。この実施例では前者で説明する。
この移動平均供給速度演算部51においては、走査周期例えば1msごとに出力される加工プログラムにもとづく走査周期ごとの線材Sのフィードローラ側供給速度V0から、リール23の制御に適した長い周期(計算周期)例えば1sでの移動平均供給速度V1が求められる。つまり、計算周期ごとの今回の供給速度値から未来又は過去に向かって設定数例えば1000個の連続値を平均して、これを測定周期1sごとに求め、移動平均供給速度V1f又はV1pを求める。本実施例の場合、計算周期と測定周期Tはともに1sに設定してある。これにより、成形されるコイルの成形部署により線材送り量が絶えず変わり、加工プログラムにもとづいて走査周期1msごとに出力される線材Sのフィードローラ側供給速度V0が脈動していても、滑らかな安定した回転でリール23を制御することができる。
また同時に、加工プログラムの処理が開始されると、移動子位置検出部6において、エンコーダ64により常時検出しているテンションレバー63と一体で回動する回転軸62の回転角度位置(以下テンションレバー角度位置という)θを、ループ長さ演算部56が設定された測定周期Tごとに読み取る。ここで記憶部55に記憶した前回のテンションレバー角度位置θ0と今回のテンションレバー角度位置θ1のそれぞれから、後述のループ長さ演算式(式1)を用いて、それぞれのループ長さL0、L1を求め、更に後述のループ長さの変化量計算式(式2)を用いて、測定周期T間のループ長さの変化量ΔLを演算し、推定繰出し半径演算部52へ出力する。
そして、推定繰出し半径演算部52において、後述の推定繰出し半径演算式(式3)を用いて、移動平均供給速度演算部51から出力の移動平均供給速度V1p、ループ長さ演算部56から出力のループ長さの変化量ΔL、測定周期Tごとの前回のリール回転速度ω0(前回のサイクルで演算の今回のリール回転速度ω)、測定周期Tとで、推定繰出し半径rを求め、リール回転速度演算部53へ出力する。
そして、リール回転速度演算部53において、移動平均供給速度演算部51から出力の移動平均供給速度V1fと、推定繰出し半径演算部52から入力された推定繰出し半径rとで、次式を用いてリール回転速度ωを演算し、回転速度補正部54へ出力する。
ω=V1f/r…(式4)
他方において、加工プログラムの処理が開始されると、移動子位置検出部6においてエンコーダ64により常時検出しているテンションレバー角度位置θは同時に、移動子位置判定部57で読み取られる。そして移動子位置判定部57において、この読み取られた今回のテンションレバー角度位置θ1が、記憶されているθL2、θL1、θH1、θH2のどの範囲にあるか判定し、その位置に対応した信号を回転速度補正部54に出力する。すなわち、θ1<θL2のとき設定値の減速回転速度Δω2を出力するために減速フラグDECを1に設定し、θ>θL1になると減速回転速度Δω2の出力を止めるために減速フラグDECを0に設定する。また、θ>θH2になると設定値の加速回転速度Δω1を出力するために加速フラグACCを1に設定し、θ<θH1になると加速回転速度Δω1の出力を止めるために加速フラグACCを0に設定する。
回転速度補正部54においては、リール回転速度演算部53からリール回転速度ωが入力されるとともに、移動子位置判定部57からテンションレバー角度位置θ1の位置に対応して、減速フラグDECの1又は0、若しくは加速フラグACCの1又は0が入力される。減速フラグDEC又は加速フラグACCの1が入力された場合には、それをリール回転速度演算部53から入力のリール回転速度ωにΔω2又はΔω1を加算しその結果を、また、減速フラグDECおよび加速フラグACCの0が入力された場合には、何も加算されずにリール回転速度演算部53から入力のリール回転速度ωの値をそのまま、リール回転速度ωとして、リール用サーボモータ26を制御するドライバ42に出力する。そしてドライバ42がリール用サーボモータ26を制御し、リール用サーボモータ26によりリール23は回転速度ωで回転駆動され、線材Sはリール23から移動平均供給速度V1fにほぼ同期したリール側供給速度V2で供給される。
このように、フィードローラ用サーボモータ13の回転により一対のフィードローラ12,12が回転し、線材Sは走査周期ごとに加工プログラムに従ったフィードローラ側供給速度V0で加工機構11へと供給される。同時に、リール用サーボモータ26によりリール23は回転速度ωで回転駆動され、線材Sはリール23から移動平均供給速度V1fにほぼ同期したリール側供給速度V2で供給される。そのため、一対のフィードローラ12,12の回転に応じて加工機構11に供給される線材Sのフィードローラ側供給速度V0と、リール23の回転に応じて繰り出される線材Sのリール側供給速度V2との速度は、測定周期1sごとの平均供給速度においてはほぼ一致する。この場合、走査周期1msごとにおいては、一対のフィードローラ12,12によるフィードローラ側供給速度V0とリール側供給速度V2とは速度差が生じるが、これはテンションレバー63の揺動によって吸収される。そして、テンションレバー63のこの揺動は、通常θL1、θH1の範囲内に収まるように、θL1、θH1が設定されている。
もし、測定周期T内では変化している実際の繰出し半径rと、測定周期Tごとに(式3)により求めた繰出し半径rとの誤差、及び、実測値から求めたループ長さ演算式(式1)が近似式であることによる誤差等により、テンションレバー63がθL2、θH2の範囲からはみ出した場合は、それに応じて減速フラグDECの1又は加速フラグACCの1の信号が出され、リール23の回転速度ωが加減速されてテンションレバー63がθL1、θH1の範囲内に収まるように制御される。
このように、移動平均供給速度演算部51から出力の移動平均供給速度V1fと、推定繰出し半径演算部52から入力された推定繰出し半径rとで、(式4)を用いてリール回転速度ωを演算し、回転速度補正部54へ出力する。そして、リール用サーボモータ26により、リール23は回転速度ωで回転駆動され、リール23からのリール側供給速度V2は、移動平均供給速度V1fに同期した速度となる。しかしながら、加工プログラムに従って加工機構11へと供給されるフィードローラ側供給速度V0と、未来に向かっての設定走査周期数ごとの移動平均供給速度V1fとは、上記したように、測定周期T内で変化している実際の繰出し半径rと、測定周期Tごとに(式3)により求めた繰出し半径rとの誤差、及び、実測値から求めたループ長さ演算式(式1)が近似式であることによる誤差等により、完全に一致しない。
このとき、一対のフィードローラ12,12の回転量に応じて加工機構11に供給される線材Sのフィードローラ側供給速度V0と、リール23の回転量に応じて繰り出される線材Sのガイド穴P2でのリール側供給速度V2との速度差によって、テンションレバー63は、V0>V2のとき図示左方向に傾き、V0<V2のとき図示右方向に傾く。このときのテンションレバー角度位置θは、揺動中心である回転軸62に取り付けられたエンコーダ64により検出される。このようにフィードローラ12、12により供給される線材Sのフィードローラ側供給速度V0とリール23から繰出される線材Sのリール側供給速度V2との速度差によるループ長さの変化量ΔLに追従して、テンションレバー63は左右に揺動し、そのときのテンションレバー角度位置θがエンコーダ64により検出され、その信号が数値制御部4へ送られる。
テンションレバー角度位置θが、下極限角度位置θL2より小さいときリール用サーボモータ26は減速され、上極限角度位置θH2より大きいときリール用サーボモータ26は加速される。そして、テンションレバー角度位置θがθL1<θ<θH1のとき、加速減速ともストップし、θL1<θ<θH1に収まるように制御される。また上危険角度位置θH3に達すると異常信号が出力され機械停止するようにしたり、また、運転途中に下危険角度位置θL3以下になった場合には、減速度を大きくするかリール用サーボモータ26を停止するようにしてもよい。
次に、前述のループ長さ計算式(式1)及びループ長さの変化量計算式(式2)について、説明する。
線材Sは、図2,3に示すように、線材束Cの出口近傍に設けられた固定のガイド穴P1、移動子63Aの変動のガイド穴P、更にループ終点位置に設けられた固定のガイド穴P2を通ってループを形成しながら、線材加工機1へと移動する。このP1,P、P2間のループの長さ演算式は、線材束Cの種類ごとに実測することにより求めることができる。例えば、線材束Cをリール23上面にガイドポストで位置決めして載置し、線材束Cから繰り出した線材Sを各ガイド穴P1,P、P2を通しP2に固定する。すると、テンションレバー63が図示しない付勢体により常時図示右側に付勢されているので、ガイド穴Pは、線材Sを図示右側に引っ張り、位置P1,P、P2を含む楕円形状のループができる。このとき、リール上の線材束Cの繰出される部分の繰出し半径rと、P1,P2間のループの初期長さAを実測する。そして、リール用サーボモータ26によりリール23を一定角度αずつ回転し、線材Sを所定量Δs(=r・α)ずつ繰出し、そのときのテンションレバー角度位置θをエンコーダ64で検出し読み取る。そうすると、繰出し半径rとリール23の回転量αとループの初期長さAとテンションレバー角度位置θから、ループの長さA、A+Δs、A+2Δs、A+3Δs…に対するそれぞれのテンションレバー角度位置θが求まり、ループ長さLとテンションレバー角度位置θとの関係データ群を求めることができる。更にこれらの関係データ群をもとに、近似曲線の方程式を、例えば多項式近似の手法により求めることができる。この方程式の一般式は(式1)で表すことができる。この式により、テンションレバー角度位置θからループ長さLを近似的に演算することができる。
L=b+c1θ+c2θ2+c3θ3+…+c6θ6…(式1)
この式のbとc1…c6は定数である。
更に、この式1から求めた測定周期Tごとの今回のループ長さL1と前回のループ長さL0との差から、ループ長さの変化量ΔLを求めることができる。
ΔL=L1−L0…(式2)
次に、前述の推定繰出し半径演算式(式3)について説明する。
測定周期Tごとのループ長さの変化量ΔLは、リール側供給速度V2とフィードローラ側供給速度V0との測定周期T間の供給量の差に等しい。前者は、線材束Cの繰出し半径rと測定周期Tごとの前回のリール回転速度ω0との積で求まるリール側供給速度V2と測定周期Tとの積で求まり、後者は、フィードローラ側供給速度V0の過去に向かっての移動平均供給速度V1pと測定周期Tとの積で求まる。従って、測定周期Tごとのループ長さの変化量ΔLは次式で求めることができる。
ΔL=r・ω0・T−V1p・T
この式より、推定繰出し半径rは次式より求めることができる。
r=(V1p+ΔL/T)・(1/ω0)…(式3)
すなわち、測定周期Tごとのループ長さの変化量ΔL、フィードローラ側供給速度V0の移動平均供給速度V1p、測定周期Tごとの前回のリール回転速度ω0、及び測定周期Tにより、この(式3)を用い線材束Cの推定繰出し半径rを求めることができる。
このように構成された本例の装置は、加工プログラムにもとづきCPU40で処理された制御信号により、複数の加工機制御ドライバ41の各指令で線材加工機1の各加工工具や線材供給などが作動制御される。そのうち、加工機構11で必要な線材Sの供給速度は、加工プログラムにもとづき走査周期1msごとに、フィードローラ制御ドライバ41Aにより制御される線材加工機側のフィードローラ用サーボモータ13により回転速度を制御される一対のフィードローラ12,12の回転により与えられる。
同時に、加工プログラムにもとづき走査周期1msごとに制御される線材供給速度値をもとに、周期1sごとの平均化された移動平均供給速度V1が移動平均供給速度演算部51で算出される。詳細には、今回より未来に向かってのデータを先読みし、未来に向かっての設定走査周期数ごとに平均して求めた移動平均供給速度V1fと、今回より過去に向かっての設定走査周期数ごとに平均して求めた移動平均供給速度V1pとが演算され、この移動平均供給速度V1pとループ長さ演算部56で算出されたループ長さの変化量ΔLと測定周期Tごとの前回のリール回転速度ω0と測定周期Tとから、推定繰出し半径演算部52で線材束Cの推定繰出し半径rを求め、さらにこの推定繰出し半径rと先程の移動平均供給速度V1fとから、リール側供給速度V2が移動平均供給速度V1fになるように、今回のリール回転速度ωが求められる。このとき、今回のテンションレバー角度位置θ1が異常位置にある場合には、回転速度補正部54で、この今回のリール回転速度ωは加速回転速度Δω1又は減速回転速度Δω2を加算した値ω+Δω1、又はω+Δω2に置換される。
このようにして求められた今回のリール回転速度ωをもとに、リール制御ドライバ42からリール用サーボモータ26に回転速度指令が与えられ、リール23の回転速度がωになるよう制御される。したがって、リール23から供給される線材Sの供給速度は移動平均供給速度V1fと同じ供給速度で供給されることになる。また、加速回転速度Δω1又は減速回転速度Δω2が加算されていたときには、リール23から供給される線材Sのリール側供給速度V2の速度がその分変わり、テンションレバー角度位置θが正常位置θL1<θ<θH1に修正される。
このように、フィードローラ側供給速度V0やリール23の繰出し半径rが変化しても、測定周期Tごとの速度差によるループ長さの変化量ΔLと移動平均供給速度V1pとからリールの繰出し半径rを推定し、その繰出し半径rと移動平均供給速度V1fに応じた今回のリール回転速度ωを求めるようにしたので、リール側供給速度V2は移動平均供給速度V1fに自動的に追従することが可能となる。したがって、リール23から繰り出される線材Sは、線材束径の全範囲に亘って線材加工機側の線材Sの供給速度に自動的に追従した速度で繰出される。
また、線材加工機側の加工プログラムによる線材Sのフィードローラ側供給速度V0とリール側供給速度V2とに速度差が生じると、テンションレバー63が揺動し、移動子位置検出部6により測定周期Tでのテンションレバー角度位置θ1を検出する。そして、前回のテンションレバー角度位置θ0と今回のテンションレバー角度位置θ1とからループ長さの変化量ΔLが求められ、更に前回のリール回転速度ω0などから線材束Cの推定繰出し半径rが求められ、次に移動平均供給速度V1fから今回のリール回転速度ωが再度求められる。移動平均供給速度V1fに追従可能なリール23の回転速度ωを求めて、リール制御ドライバ42の指令でリール用サーボモータ26の回転速度を制御するものである。このように線材加工機側の線材Sのフィードローラ側供給速度V0とリール側供給速度V2とに速度差が生じても、そのときのテンションレバー角度位置θの変化を検出しリールの回転速度V2が自動的に変更されるので、リール側から繰り出される線材Sは自動的に線材加工機側の移動平均供給速度V1fに追従した速度で繰出される。
次に、作動手順について、図5に基づき説明する。ここで、以下の説明に用いる符号の各単位は、テンションレバー角度位置θ(rad)、ループ長さの変化量ΔL(mm)、線材束Cの推定繰出し半径r(mm)、測定周期T(s)、供給速度V(mm/s)、リール回転速度ω(rad/s)である。
加工プログラムの処理が開始されると、ステップS1において、推定繰出し半径演算部52に記憶されている測定周期Tごとの前回のリール回転速度ω0の値は、前回のサイクルにおいて今回のリール回転速度であったωの値に更新され記憶される。また、同様に記憶部55に記憶されている前回のテンションレバー角度位置θ0の値は、前回のサイクルにおいて今回のテンションレバー角度位置であったθ1の値に更新され記憶される。つぎに、ステップS2では、移動子位置検出部6により今回のテンションレバー角度位置θ1を検出し、ループ長さ演算部56及び移動子位置判定部57に入力しておく。
次のステップS3において、加工プログラムから指示される走査周期ごとの線材供給速度値をもとに移動平均供給速度演算部51において、移動平均供給速度V1fを算出しリール回転速度演算部53に出力すると同時に、加工プログラムから指示される走査周期ごとの線材供給速度値をもとに移動平均供給速度V1pを算出し推定繰出し半径演算部52に出力する。
次のステップS4では、ループ長さ演算部56においてループ長さの変化量ΔLを(式2)に示す数式により算出し推定繰出し半径演算部52に出力する。次のステップS5では、推定繰出し半径演算部52において、(式3)に示す数式により線材束Cの推定繰出し半径rを算出し、リール回転速度演算部53へ出力する。次のステップS6では、リール回転速度演算部53において、(式4)に示す数式により、移動平均供給速度V1fから線材束Cの推定繰出し半径rに対応する今回のリール回転速度ωを算出し回転速度補正部54へ出力する。
次のステップS7では、移動子位置判定部57において、今回のテンションレバー角度位置θ1がθ1<θL2であるか否かが判定され、yesである場合は次のステップS8に進み、減速フラグDECを信号有りの1に設定する。また、ステップS7でnoの場合は、次のステップS8をジャンプしてステップS9に進む。次のステップS9では、移動子位置判定部57において、今回のテンションレバー角度位置θ1がθ1>θL1であるか否かが判定され、yesである場合は次のステップS10に進み、減速フラグDECを信号無しの0に設定する。また、ステップS9でnoの場合は、次のステップS10をジャンプしてステップS11に進む。
次のステップS11では、移動子位置判定部57において、今回のテンションレバー角度位置θ1が、θ1>θH2であるか否かが判定され、yesである場合は次のステップS12に進み、加速フラグACCを信号有りの1に設定する。また、ステップS11でnoの場合は次のステップS12をジャンプしてステップS13に進む。次のステップS13では、移動子位置判定部57において、今回のテンションレバー角度位置θ1が、θ1<θH1であるか否かが判定され、yesである場合は次のステップS14に進み、加速フラグACCを信号なしの0にクリアする。また、ステップS13でnoの場合は、次のステップS14をジャンプしてステップS15に進む。
次のステップS15では、移動子位置判定部57に減速フラグDECが信号有りの1に設定されているか否かが判定され、yesの場合は次のステップS16に進み、回転速度補正部54において今回のリール回転速度ωは設定の減速回転速度Δω2を加算した値ω+Δω2に置換され、今回のリール回転速度ωとして図1に示すリール制御ドライバ42へ伝送される。また、この今回のリール回転速度ωは、ステップS5において、(式3)に示す数式により線材束Cの推定繰出し半径rを算出する際に、前回のリール回転速度ω0として、代入される。
また、ステップS15でnoの場合はステップS17において、移動子位置判定部57に加速フラグACCが信号有りの1に設定されているか否かが判定され、yesの場合は次のステップS18に進み、回転速度補正部54において今回のリール回転速度ωは、設定の加速回転速度Δω1を加算した値に置換され、今回のリール回転速度ωとして図1に示すリール制御ドライバ42へ伝送される。また、この今回のリール回転速度ωは、ステップS5において、(式3)に示す数式により線材束Cの推定繰出し半径rを算出する際に、前回のリール回転速度ω0として、代入される。なお、ステップS17でnoの場合は、移動子位置判定部57に加速フラグACC、減速フラグDECのいずれも信号なしの0にクリアされているから、一定な設定値の加速回転速度Δω1、減速回転速度Δω2のいずれも加算されず、今回のリール回転速度ωはそのまま保持され今回のリール回転速度ωとして、図1に示すリール制御ドライバ42へ伝送する。
次のステップS19において、上記のようにして求められた今回のリール回転速度ωにもとづきリール制御ドライバ42の指令で、リール23を駆動するリール用サーボモータ26の回転速度を制御し、リール23のリール回転速度がωになるよう回転制御される。その結果、リール側供給速度V2は、線材束Cの推定繰出し半径rと今回のリール回転速度ωの積で求められる速度でリール側から繰り出され、平均化された未来に向かっての移動平均供給速度V1fになるように制御される。このように、リールの回転速度は、線材Sのリール側供給速度V2が平均化された未来に向かっての設定走査周期数ごとの移動平均供給速度V1fになるように制御されるとともに、図2に示すテンションレバー角度位置θが設定の上限角度位置θH1と下限角度位置θL1との間を維持するように制御されて、制御の1サイクルを終え、このサイクルが繰り返される。
なお、本発明に係る線材加工機の線材送り装置は、上述した実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲においてさまざまな形態に構成することができる。例えば、本実施例ではテンションレバー63によりループ形成手段を設けたが、他の実施例として、ダンサロールを移動子としてループ形成手段を設けループを形成する(線材ループ形成手段)とともに、ダンサロールの位置を検出する移動子位置検出手段を設け、ダンサロールの位置を検出してループの長さの変化量ΔLを求め、その他実施例1と同様な同期制御を行うようにしてもよい。更に他の実施例として、一方に付勢され直線的に往復動可能なスライドを設け、このスライドを移動子としてループを形成する線材ループ形成手段を設けループを形成するとともに、スライドの位置を検出する移動子位置検出手段を設けスライドの位置を検出してループの長さの変化量ΔLを求め、その他実施例1と同様な同期制御を行うようにしてもよ
本発明は、上述したように構成したので、以下に記載するような作用効果を奏する。
この発明によれば、フィードローラ12により供給される線材Sの供給速度V0とリール23から繰出される線材Sのリール側供給速度V2との速度差によるループ長さの変化量ΔLと測定周期Tごとの前回のリール回転速度ω0から求めた線材束Cの推定繰出し半径rと、加工プログラムのデータに基づき求められた未来に向かっての設定走査周期数ごとの移動平均供給速度V1fとから、リール回転速度演算部53において移動平均供給速度V1fに対応する今回のリール回転速度ωを演算し、リール23から供給される線材Sの供給速度を過不足なく自動的に制御するようにしたので、移動平均供給速度V1fが変わったり、線材束Cの内外径の差が大きい場合や、数種類の内外径の大きく異なる線材束Cを交換して使用する場合にも、アンコイラ2を交換したり、アンコイラ2の速度調整を都度調整し直す必要がなくなり、生産コストが下がり、作業性がよくなる。また、リール23を頻繁に起動・停止する必要がなくなり、リール23上の線材束Cがばらけたり、線材S相互が絡むことなどを防止して、生産性の向上と品質の向上を図ることができる。
さらに、リール23からの線材Sの供給速度は、加工プログラムから指示された走査周期ごとの各線材供給速度値の所定数の連続値の平均として求めたので、滑らで安定した線材の供給が可能となり、トラブルを防止でき生産性の向上と品質の向上を図ることができる。
また、今回のテンションレバー角度位置θ1が、設定の上極限角度位置θH2よりも大きいときには設定の加速回転速度Δω1を加算するように、θH1より小さくなると加算を止めるように、又は、設定の下極限角度位置θL2よりも小さいときには設定の減速回転速度Δω2を加算するように、θL1より大きくなると加算を止めるように、移動子位置判定部57から指令するようにしたので、今回のテンションレバー角度位置θ1が万一、異常なテンションレバー角度位置に達しても設定の上下限位置内に戻すべく調整し、リール23からの線材供給量が過剰に送り出されて線材相互が絡んだり、線材Sの送り出し量が不足して異常張力により線材束Cに線材が食い込むことなどを防止して、生産性の向上と品質の向上を図ることができる。