JP4358711B2 - 微量成分分析装置及び微量成分分析方法 - Google Patents
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Description
このような粒子状物質は、イオン化する際に、表面の成分しかイオン化されず、肝心の内部の成分がイオン化されにくいので、内部の成分を効率よく分析することができなかった。
すなわち、本発明にかかる微量成分分析装置は、粒子状物質中の成分をイオン化させたのちに分析を行う微量成分分析装置であって、前記粒子状物質が送り込まれてその成分のイオン化が行われるイオン化部と、該イオン化部への前記粒子状物質の供給方向上流側に設けられて、前記粒子状物質へのレーザー光の照射が行われる成分抽出部とを有し、前記イオン化部がチャンバー内に設けられており、前記成分抽出部が、前記チャンバー外に設けられ、前記チャンバー内への前記粒子状物質の供給路が直線部を有していて、該直線部内が前記成分抽出部とされており、該成分抽出部には、前記供給路に沿った方向にレーザー光が照射されることを特徴とする。
このような現象が生じる理由は不明だが、おそらく、レーザーが照射されることによって粒子状物質に熱や衝撃が加わり、これによって内部にあった成分が表面に引き出されているものと思われる。本願発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
本願発明にかかる微量成分分析装置では、上記の構成を採用したことにより、イオン化部の上流に設けられた成分抽出部にて、イオン化部に送り込まれる前の粒子状物質に、レーザー光が照射される。すなわち、粒子状物質は、内部にあった成分が表面に引き出されたのちに、イオン化部に送り込まれる。
これにより、粒子状物質内部にあって従来イオン化されにくかった成分を容易にイオン化させて分析にかけることができる。
ここで、この構成は、例えば質量分析装置等に適用されるものである。
例えば、微量成分分析装置が質量分析装置である場合、イオン化部が設けられるチャンバー内では粒子状物質の速度が非常に速い。このため、成分抽出部をチャンバー内に設けた場合には、成分抽出部でレーザー光を照射しても、成分抽出部を通過する全ての粒子状物質に十分にレーザー光を照射することができない可能性がある。しかし、このように成分抽出部をチャンバー外に設けることで、粒子状物質の速度が遅い状態で粒子状物質にレーザー光を照射することができ、全ての粒子状物質に十分にレーザー光を照射することができる。
また、供給路の内壁面に付着した粒子状物質にレーザー光が照射されることとなるので、この粒子状物質が内壁面からはがされて、イオン化部に送り込まれる。
すなわち、この微量成分分析装置では、イオン化部で、粒子状物質においてイオン化されにくかった成分を速やかにイオン化することができるので、この成分に、レーザー光照射による損傷が生じにくい。
例えば、イオン化部によるレーザー光の照射が、成分抽出部でレーザー光を照射された粒子状物質がイオン化部に進入した時点で行われるよう、タイミング調整装置によってレーザー光の照射タイミングを設定することで、イオン化部でイオン化される粒子状物質の大部分を、内部の成分が表面に引き出された状態とすることが可能である。
これにより、例えば、微量成分分析装置が質量分析装置であって、チャンバー内での粒子状物質の速度が非常に速い場合にも、内部の成分が表面に引き出された粒子状物質を効果的にイオン化することが可能である。
すなわち、成分抽出部で用いられるレーザー光は長波長または低強度であるため、成分抽出部でのレーザー光の照射によって粒子状物質の成分が分解されたり、変質するなどしにくいので、イオン化部に良好な状態の粒子状物質を供給することが可能である。
ここで、変換装置としては、レーザー光の波長を短くする装置、波長を長くする装置、レーザー光の強度を高める装置、及び強度を弱める装置とのうちのいずれを用いてもよい。
これにより、粒子状物質内部にあって従来イオン化されにくかった成分を容易にイオン化させて分析にかけることができる。
また、供給路の内壁面に付着した粒子状物質にレーザー光が照射されることとなるので、この粒子状物質が内壁面からはがされて、イオン化部に送り込まれる。
すなわち、この微量成分分析方法では、粒子状物質においてイオン化されにくかった成分を速やかにイオン化することができるので、この成分に、レーザー光照射による損傷が生じにくい。
これにより、例えば、微量成分分析装置が質量分析装置であって、チャンバー内での粒子状物質の速度が非常に速い場合にも、内部の成分が表面に引き出された粒子状物質を効果的にイオン化することが可能である。
すなわち、粒子状物質内の成分の引き出し処理に用いられるレーザー光は長波長または低強度であるため、この処理で行うレーザー光の照射によって粒子状物質の成分が分解されたり、変質するなどしにくいので、イオン化部に良好な状態の粒子状物質を供給することが可能である。
[参考例]
以下、本発明の参考例について、図1を用いて説明する。
本参考例にかかる微量成分分析装置1は、チャンバー2内で粒子状物質中の成分をイオン化させたのちに分析を行う微量成分分析装置である。
具体的には、微量成分分析装置1は、チャンバー2内に、粒子状物質のイオン化が行われるイオン化部3が設けられて、このイオン化部3で測定試料である粒子状物質にレーザー光を照射してイオン化させるレーザーイオン化TOFMSである。
微量成分分析装置1は、筒状のチャンバー2と、チャンバー2内でチャンバー2の一端側に設けられるイオン化部3と、イオン化部3でイオン化された成分をチャンバー2の他端側に向けて加速するイオン加速器4と、チャンバー2内の他端に設けられて、イオン化された成分を検出する検出器5とを有している。
前室12の内部は、粒子状物質へのレーザー光の照射が行われる成分抽出部13とされている。
ここで、チャンバー2には、イオン化部3に対向する領域に、窓Wが設けられており、この窓Wを通じて、チャンバー2外にあるイオン化用レーザー発振装置16のレーザー光がイオン化部3内に取り入れられるようになっている。同様に、前室12には、成分抽出部13に対向する領域に、窓Wが設けられており、この窓Wを通じて、前室12外にある成分引き出し用レーザー発振装置17のレーザー光が成分抽出部13内に取り入れられるようになっている。
一方、成分抽出部13では、イオン化部3で照射されるレーザー光より長波長または低強度のレーザー光が照射されるようになっている。成分抽出部13で照射されるレーザー光は、測定対象となる粒子状物質の成分が分解したり変質したりすることのないよう、波長が500nm以上、好ましくは1000〜3000nmの範囲内とされる。
また、同様の理由から、成分抽出部13で照射されるレーザー光の強度は、1013W/m2以下、好ましくは1012W/m2程度とされる。
同様に、成分抽出部13で照射されるレーザー光のパルス幅は、1μs以下とすることが好ましい。
まず、粒子状物質供給源から、測定試料である粒子状物質を供給路11内に供給する。供給路11内に供給された粒子状物質は、供給路11上に設けられた前室12内(すなわち成分抽出部13)を通過して、チャンバー2内に送り込まれる。
このように粒子状物質の表面にレーザー光を照射することで、粒子状物質の内部にあった成分が、粒子状物質の表面に引き出される。また、成分抽出部で照射されるレーザー光はパルス状のレーザー光であるので、粒子状物質に長時間連続してレーザー光が当たることがなく、粒子状物質の成分は、ほとんど破壊されない。
この際、粒子状物質は、内部にあった成分が表面に引き出されているので、内部にあった成分が効果的にイオン化される。
チャンバー2の他端では、検出器5によってイオン化された成分が受けられて、その到着が検出される。
そして、検出器5に受けられた成分が、イオン化部3を出発して検出器5に到着するまでに要した時間が求められて、この時間から、成分の質量が算出される。
これにより、この微量成分分析装置1では、粒子状物質内部にあって従来イオン化されにくかった成分を容易にイオン化させて分析にかけることができ、良好な分析を行うことが可能である。
すなわち、イオン化部3では、粒子状物質においてイオン化されにくかった内部の成分が速やかにイオン化されるので、この成分に、レーザー光照射による損傷が生じにくい。
すなわち、成分抽出部13で用いられるレーザー光は長波長または低強度であるため、成分抽出部13でのレーザー光の照射によって粒子状物質の成分が分解されたり、変質するなどしにくいので、イオン化部3に良好な状態の粒子状物質を供給することが可能である。
これにより、粒子状物質の成分の良好な分析を行うことができる。
すなわち、イオン化部3が設けられるチャンバー2内では粒子状物質の速度が非常に速く、成分抽出部13をチャンバー内にそのまま設けただけでは、成分抽出部13でレーザー光を照射しても、成分抽出部13を通過する全ての粒子状物質に十分にレーザー光を照射することができない可能性がある。しかし、このように成分抽出部13をチャンバー2外に設けることで、粒子状物質の速度が遅い状態で粒子状物質にレーザー光を照射することができ、全ての粒子状物質に十分にレーザー光を照射することができる。
次に、本発明の第一実施形態について、図2を用いて説明する。
本実施の形態にかかる微量成分分析装置21は、参考例で示した微量成分分析装置1において、成分抽出部の設置形態を変更したことを主たる特徴とするものである。
以下、参考例で示した微量成分分析装置1と同様または同一の部材については同じ符号を用いて示し、詳細な説明を省略する。
直線部22aは、供給路22のさらに上流側の部分に対して大きな角度をもって接続されている。本実施形態では、この角度を90°としている。
また、直線部22aの上流側の端部には、窓Wが設けられており、この窓Wを通じて、成分引き出し用レーザー発振器17から、直線部22aに平行にして、レーザー光が照射されるようになっている。
すなわち、この微量成分分析装置21では、直線部22a内が、成分抽出部23とされている。
また、この構成では、供給路22の内壁面に付着した粒子状物質にレーザー光が照射されることとなるので、この粒子状物質が内壁面からはがされて、イオン化部に送り込まれる。すなわち、供給路22内に供給した粒子状物質の、供給路22内でのロスを最小限にすることができるので、測定試料の使用量を低減することができる。
次に、本発明の第二実施形態について、図3を用いて説明する。
本実施の形態にかかる微量成分分析装置26は、参考例で示した微量成分分析装置1において、成分抽出部の設置形態を変更したことを主たる特徴とするものである。
以下、参考例で示した微量成分分析装置1と同様または同一の部材については同じ符号を用いて示し、詳細な説明を省略する。
本実施形態に係る分析装置26では、チャンバー2への粒子状物質の供給路11に濃縮装置27を設けるとともに、前室12を、供給路11において濃縮装置27よりも上流側に設けている。
すなわち、成分抽出部13は、濃縮装置27の上流側に設けられている。
次に、本発明の第三実施形態について、図4を用いて説明する。
本実施の形態にかかる微量成分分析装置31は、参考例で示した微量成分分析装置1において、成分抽出部の設置形態を変更したことを主たる特徴とするものである。
以下、参考例で示した微量成分分析装置1と同様または同一の部材については同じ符号を用いて示し、詳細な説明を省略する。
ここで、チャンバー2には、成分抽出部33に対向する領域に、窓Wが設けられており、この窓Wを通じて、チャンバー2外にある成分引き出し用レーザー発振装置17のレーザー光が成分抽出部33内に取り入れられるようになっている。
さらに、微量成分分析装置31には、イオン化用レーザー発信装置16及び成分引き出し用レーザー発振装置17に、これらのレーザー光照射タイミング(パルスの同期調整)を行うタイミング制御装置34が設けられている。
具体的には、イオン化部3によるレーザー光の照射が、成分抽出部33でレーザー光を照射された粒子状物質がイオン化部3に進入した時点で行われるよう、タイミング調整装置34によってイオン化用レーザー発信装置16及び成分引き出し用レーザー発振装置17の照射タイミングを設定する。
これにより、イオン化部3でイオン化される粒子状物質の大部分を、内部の成分が表面に引き出された状態とすることが可能となるので、粒子状物質の内部の成分を効果的にイオン化させて、良好な分析を行うことができる。
次に、本発明の第四実施形態について、図5を用いて説明する。
本実施の形態にかかる微量成分分析装置36は、第三実施形態で示した微量成分分析装置31において、イオン化用レーザー発振装置及び成分引き出し用レーザー発振装置の形態を変更したことを主たる特徴とするものである。
以下、第三実施形態で示した微量成分分析装置31と同様または同一の部材については同じ符号を用いて示し、詳細な説明を省略する。
この変換装置39としては、例えば非線形光学結晶KDP(KH2PO4)等の波長変換素子を用いた光パラメトリック増幅器等が用いられる。
このタイミング制御装置40は、レーザー発振装置37から同時刻に発射されて分配器38によって二系統に分配されたレーザー光のうち、イオン化部3に分配されるレーザー光を遅らせて、イオン化部3へのレーザー光の到着を、成分抽出部33へのレーザー光の到着よりも所定時間遅らせるものである。ここでいう所定時間とは、成分抽出部33に供給された微粒子状物質がイオン化部3に到着するまでに要する時間である。
この結果から、参考例装置は、比較例装置に比べて全体的に感度が優れていて、しかも、従来は測定が困難であった質量数が大きい成分や難揮発性の成分に対する感度は、比較例装置に比べて著しく向上していることがわかる。
2 チャンバー
3 イオン化部
11、22、32 供給路
13、23,33 成分抽出部
22a 直線部
27 濃縮装置
34,40 タイミング制御装置
37 レーザー発振装置
38 分配器
39 変換装置
Claims (14)
- 粒子状物質中の成分をイオン化させたのちに分析を行う微量成分分析装置であって、
前記粒子状物質が送り込まれてその成分のイオン化が行われるイオン化部と、
該イオン化部への前記粒子状物質の供給方向上流側に設けられて、前記粒子状物質へのレーザー光の照射が行われる成分抽出部とを有し、
前記イオン化部がチャンバー内に設けられており、前記成分抽出部が、前記チャンバー外に設けられ、
前記チャンバー内への前記粒子状物質の供給路が直線部を有していて、該直線部内が前記成分抽出部とされており、
該成分抽出部には、前記供給路に沿った方向にレーザー光が照射されることを特徴とする微量成分分析装置。 - 前記イオン化部で測定試料にレーザー光を照射してイオン化させるレーザーイオン化TOFMSであることを特徴とする請求項1記載の微量成分分析装置。
- 前記チャンバーへの前記粒子状物質の供給路上に、該供給路内の前記粒子状物質を一旦濃縮する濃縮装置が設けられており、
前記成分抽出部が、前記供給路上の、前記濃縮装置の上流側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の微量成分分析装置。 - 前記成分抽出部が、前記チャンバー内に設けられており、
該成分抽出部でのレーザー光の照射タイミングと、前記イオン化部でのレーザー光の照射タイミングとを制御するタイミング制御装置が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の微量成分分析装置。 - 前記成分抽出部で用いられるレーザー光が、前記イオン化部で用いられるレーザー光よりも、長波長または低強度とされていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の微量成分分析装置。
- 一台のレーザー発振装置と、
該レーザー発振装置の出力するレーザー光を二系統に分配する分配器とを有し、
前記成分抽出部及び前記イオン化部では、それぞれ前記分配器によって分配されたレーザー光のうちの一方が照射される構成とされていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の微量成分分析装置。 - 前記レーザー発振装置の出力するレーザー光のうち、前記成分抽出部で照射されるレーザー光を、前記イオン化部に供給されるレーザー光よりも長波長または低強度に変換する変換装置が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の微量成分分析装置。
- 粒子状物質中の成分をイオン化させたのちに分析を行う微量成分分析方法であって、
チャンバー内に設けられ、前記粒子状物質が送り込まれて該粒子状物質のイオン化が行われるイオン化部の、前記イオンの供給方向上流側で、
前記チャンバー外に前記イオン化部への前記粒子状物質の供給路の一部に直線部を設けて、該直線部内で、供給路に沿った方向に前記粒子状物質へのレーザー光照射を行うことを特徴とする微量成分分析方法。 - 前記イオン化部で前記粒子状物質にレーザー光を照射してイオン化させるレーザーイオン化TOFMSによる微量成分分析に適用されることを特徴とする請求項8記載の微量成分分析方法。
- 前記イオン化部への前記粒子状物質の供給路上に、該供給路内の前記粒子状物質を一旦濃縮する濃縮装置が設けられている分析装置を用いた微量成分分析に適用される請求項8または9に記載の微量成分分析方法であって、
前記供給路上の、前記濃縮装置の上流側で前記粒子状物質へのレーザー光の照射を行うことを特徴とする微量成分分析方法。 - 前記イオン化部がチャンバー内に設けられている分析装置を用いた微量成分分析に適用される請求項9に記載の微量成分分析方法であって、
前記イオン化部でのレーザー光の照射を、該イオン化部の上流側でレーザー光を照射された粒子状物質が前記イオン化部に進入した時点で行うことを特徴とする微量成分分析方法。 - 前記イオン化部の上流側では、前記イオン化部で照射するレーザー光よりも、長波長または低強度のレーザー光を照射することを特徴とする請求項8から11のいずれかに記載の微量成分分析方法。
- 一台のレーザー発振装置の出力するレーザー光を二系統に分配して、一方の系統を前記イオン化部でのレーザー光の照射に用い、他方の系統を前記イオン化部の上流側でのレーザー光の照射に用いることを特徴とする請求項11または12に記載の微量成分分析方法。
- レーザー光の波長または強度を変換する変換装置を用いて、前記レーザー発振装置の出力するレーザー光のうち、前記イオン化部の上流側で照射されるレーザー光を、前記イオン化部で照射されるレーザー光よりも長波長または低強度に変換することを特徴とする請求項13に記載の微量成分分析方法。
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