JP2004212215A - レーザーアブレーション高分子分析装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】安定な分析結果を与えるレーザーアブレーション高分子分析装置を提供する。
【解決手段】分析の対象である高分子にレーザー光を照射して該高分子をアブレーションすることにより、高分子を構成元素に原子化し、原子化した構成元素をイオン化し、イオン化した構成元素を分析器に導入して分析するレーザーアブレーションを用いた高分子の分析装置であって、分析の対象である高分子に照射して該高分子をアブレーションする超短パルスレーザー光の光軸上に配設された前記分析対象となる高分子を装着するターゲットと同一密閉容器内に配設され、前記超短パルスレーザー光を受光する受光手段と、該受光手段からの信号を入力し、前記超短パルスレーザー光のパワーを一定に制御するレーザーパワー制御手段を有する。
【選択図】 図1
【解決手段】分析の対象である高分子にレーザー光を照射して該高分子をアブレーションすることにより、高分子を構成元素に原子化し、原子化した構成元素をイオン化し、イオン化した構成元素を分析器に導入して分析するレーザーアブレーションを用いた高分子の分析装置であって、分析の対象である高分子に照射して該高分子をアブレーションする超短パルスレーザー光の光軸上に配設された前記分析対象となる高分子を装着するターゲットと同一密閉容器内に配設され、前記超短パルスレーザー光を受光する受光手段と、該受光手段からの信号を入力し、前記超短パルスレーザー光のパワーを一定に制御するレーザーパワー制御手段を有する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザーアブレーションを用いた高分子分析用の装置に関する。更に詳細には、本発明は、従来の装置と比較して分析の効率を著しく向上させることを可能にしたレーザーアブレーション高分子分析装置に関する。例えば、DNA,タンパク質、RNA、PNA、脂質、糖などの各種の高分子の質量分析に本発明の高分子分析装置を適用することにより、好適なレーザーアブレーションを用いた高分子分析が可能となる。
【0002】
また、本発明はレーザーアブレーションを用いた高分子の分析方法に用いる前記高分子分析装置において、レーザーアブレーションされる被検試料に照射されるべき前記超短パルスレーザー光の光エネルギーが一定になるように、レーザー光強度を設定可能とするレーザーパワー制御装置に関する。
【0003】
【従来の技術】
近年、質量分析法の応用範囲は、該分析法の原子、分子、クラスター等の粒子を分離検出するという特徴を活かして、物理や化学の分野から、医学や生化学などのライフサイエンスの分野へと急速に広がっている。特に、タンパク質の分子量の決定解析やアミノ酸配列の決定解析などへの質量分析法応用の発展には、目を見張るものがある。
【0004】
この分析法に使用すべき質量分析計の原理は、試料を種々の方法でイオン化することにより得られたイオンを質量/電荷に従って分離し、このように分離した各イオンの強度を測定するというものである。
【0005】
従来より、高分子の質量分析においては、高分子そのものに電子を付加してイオン化し、その質量を解析する、あるいは高分子量の分子を低分子量の分子イオンに細分化して質量分析を行い、構成分子を比較していた。このような従来の高分子の質量分析におけるイオン生成方法としては、例えば、高分子に高エネルギー原子イオンを衝突させてイオン化する2次イオン質量分析(SIMS)法や、電子衝撃によって低分子量の分子イオンに細分化して質量分析を行う電子イオン化(ED)法、マトリックス支援レーザーイオン化(MALDI)法などが知られている。
【0006】
しかしながら、上記した何れの方法においても、高分子イオンを質量分析するため、高分解能の質量分析装置が必要であるという問題点や、親イオンの中途半端な分解により生成したフラグメントイオンの存在が、質量スペクトルの解析を困難にするという問題などがあった。
【0007】
一方、従来より、化学分析に際して同位元素で標識した高分子試料の質量分析方法としては、例えば、ナノ秒レーザーにより原子化およびイオン化を行うレーザー原子化共鳴イオン化(LARIMP)法が知られている。
【0008】
しかしながら、このLARIMP法によれば、レーザーとして、標識希元素を原子化するための原子化レーザーと、原子化された標識元素の原子をイオン化するための共鳴イオン化レーザーとの2台のレーザーが必要となるため、システム構成が複雑になるという問題点があった。
【0009】
更に、LARIMP法においては、上記したように標識原子を共鳴イオン化する必要がある。このため、各標識原子に対して固有の波長のレーザー光を照射する必要があり、多種類の標識同位体が混入した状況では効率の良い分析を行うことが極めて困難であるという問題点があった。
【0010】
このような状況下で、上記した従来の技術の有する種々の問題点に鑑みてなされた高分子試料の質量分析方法、および質量分析装置として、高分子を構成する構成原子の原子イオンを生成する工程を1台のレーザーを用いて成し、生成した原子イオンを質量分析器を用いて分析するようにしたレーザーアブレーションを用いた高分子の分析方法が開発された。この新しい分析方法によれば、システム構成の大幅な簡素が計られ、多種類の標識同位体が混入した状況においても、効率の良い分析を行うことを可能とする、レーザーアブレーションを用いた高分子の質量分析方法および分析装置が提供される。より詳細には、例えば、質量分析を行う場合には、質量スペクトルの解析が困難になるおそれを排除するとともに、質量分析装置に高分解能を要しないようにしたレーザーアブレーションを用いた高分子の質量分析方法および質量分析装置が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0011】
該レーザーアブレーションを用いた高分子の質量分析方法および質量分析装置を用いることにより、システムが簡素化され、効率の良い高分子の分析が可能となったものの、分析対象となる高分子をアブレーションさせるレーザーのパワー制御については、音響光学素子等の光変調素子を用いてレーザーパワ一を制御するなどの一般的なレーザーパワー制御方法(例えば特許文献2参照)の使用が考えられている。この該レーザーパワ一制御はシステムに対して最適化するように特に工夫されていなかったため、上記した技術においては、レーザー光源そのもののパワーを管理しても、実際に資料に照射されるレーザーパワーは必ずしも設定値通りにはならないという欠点があった。
【0012】
【特許文献1】
特開2002−328114号公報
【特許文献2】
特開平9−212863号公報
【非特許文献1】
ブルース・ヤコブソン(K.Bruce Jacobson)外12名、An approach to the use of stable isotopes for DNA Sequencing、GENOMICS、1991年、第9巻、p.51−59
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来例においては、レーザーアブレーションを用いて、高分子を構成する構成原子の原子イオンを生成するシステム構成を簡素化した分析装置が提供されてきたが、レーザー光により質量分析装置内に装着された被検試料に含まれる原子をイオン化する過程で、レーザー光のエネルギーにより被検試料表面から飛散した試料分子および原子の一部は、被検試料を装着した真空容器内壁に付着する傾向がある。レーザー光を前記試料面に照射する光路中に設置された光学部材のうち、前記真空容器内に設置された光学部材、あるいは前記レーザー光を真空容器内に導入するレーザー光導入窓の真空容器内壁側面には、照射されたレーザー光のエネルギーにより前記被検試料表面から飛散した試料の粒子が付着し、計測を繰り返すことにより該付着粒子の厚みが増し、レーザー光を前記試料面に照射する光路中に設置された光学部材の透過率、あるいは反射率が経時変化することとなる。
【0014】
従って、従来の装置においてレーザー光源の出力を一定に保つように制御すると、光路中に設置された光学部材の光透過率あるいは反射率の減少により、前記被検試料に照射されるレーザーパワーが減少することになり、被検試料を構成する分子および原子のイオン化が安定に行われなくなり、質量分析値に影響するという問題があった。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者は鋭意研究の結果、分析すべき被検試料の近傍で(すなわち、「その場」で)、該被検試料に実際に照射されるべきレーザーパワーを測定することが、被検試料に照射するレーザー光のエネルギーが一定になるようにレーザー光源の光出射出力を制御することを可能として、被検試料を構成する分子および原子のイオン化を安定なものとし、且つ質量分析の定量化精度を向上させることにより、上記課題を解決するために極めて効果的であることを見出した。
【0016】
本発明のレーザーアブレーション高分子分析装置は上記知見に基づくものであり、より詳しくは、分析の対象である高分子にレーザー光を照射して該高分子をアブレーションすることにより、高分子を構成元素に原子化し、原子化した構成元素をイオン化し、イオン化した構成元素を分析器に導入して分析する高分子用分析装置であって;
前記超短パルスレーザー光を出射可能なレーザー出力装置と、前記レーザー光の光軸上に配設され、前記分析対象となる高分子を装着するターゲットと、前記超短パルスレーザー光を受光する受光手段と、前記超短パルスレーザー光によりアブレーションされた原子の種類および/又は量を分析する分析器とを有し;
前記ターゲット、受光手段および分析器は密閉容器内に配設され、更に前記受光手段からの信号入力に基づいて、前記超短パルスレーザー光のパワーを制御するレーザーパワー制御装置を有するものである。
【0017】
ここで、上記分析手段としては、前記超短パルスレーザー光によりアブレーションされた原子の種類および/又は量を分析可能である限り、特に制限されない。このような分析手段としては、例えば、質量分析を挙げることができる。質量分析以外の分析としては、具体的には、例えば、化学的分析(通常のいわゆる化学分析)や光学的分析(蛍光法など)を挙げることができる。
【0018】
また、上記したイオン化は、超短パルスレーザー光の高い尖頭値強度によって非共鳴課程によって行われるイオン化(非共鳴イオン化)であるため、他種類の標識同位体が混入した状況においても各標識原子をそれぞれイオン化することができ、多標識系への応用が容易であり、高精度かつ高効率な高分子の分析を行うことができるようになる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図1ないし図2を用いて説明する。
【0020】
本発明における高分子分析装置の一態様の構成を図1の模式断面図に示し、レーザーパワー制御手段の一態様の詳細構成を図2の模式断面図に示す。なお本発明はこの例に限定されるものではない。
(好適な一態様)
図1に示す高分子分析装置の態様において、超短パルスレーザー(レーザー光源)1から出射されたレーザー光はフォーカスレンズ2により集束され、レーザー導入窓3より真空容器4内に入射され、真空容器4内のターゲット5に固定された被検試料6上に焦点を結ぶ。
【0021】
該超短パルスレーザー光が前記被検試料6に照射されることにより、被検試料6に固定された分析対象となる高分子はアブレーションされ、構成元素に原子化すると同時にイオン化し、前記真空容器4中に飛散する。被検試料面から飛散した前記高分子の構成元素は、電磁界(図示しない電磁界発生手段により与えられる)により四重極質量分析器11に導入され、質量分析される。
【0022】
レーザーアブレーションされた構成元素が安定に原子化、原子イオン化され、質量分析されるために、真空容器4内の圧力(真空度)は、1.33×10−8〜1.33×10−6hPa(10−8〜10−6 Torr)であることが望ましい。
(超短パルスレーザー光)
本発明において、超短パルスレーザー光により高分子をアブレーションする際には、通常は、高分子に超短パルスレーザー光を1ショット(1パルス)照射すれば充分である場合が多いが、高分子に超短パルス光を複数ショット(複数パルス)照射してもよい。本発明においては、高分子への照射する超短パルスレーザー光のショット数(パルス数)は、適宜に選択することができる。
【0023】
超短パルスレーザーは、パルス時間幅が10ピコ秒以下であることが好ましく、特に、1フェムト秒以上1ピコ秒以下の(通常はフェムト秒レーザーと称される)レーザーを用いることが適当である。その尖頭値出力としては、前記被検試料6(図1)に固定された、分析対象となる高分子の構成元素が効率よく原子化、原子イオン化される範囲として、10メガワット以上が好ましく、特に、1ギガワット以上10ギガワット以下が好ましい。
【0024】
ここで用いた超短パルスレーザー1は、例えば、チタンサファイアレーザーにより構成することができる。図1の超短パルスレーザー1は、以下に示すようなパラメーターを備えている。
【0025】
ピーク幅(パルス時間幅):〜110fs(フェムト秒)
出力 :50〜480μJ(マイクロジュール)
(尖頭値出力:0.5〜4GW(ギガワット))
波長 :〜800nm(ナノメートル)
繰り返し :1kHz(キロヘルツ)
である。
【0026】
ここで、前記超短パルスレーザー光のレーザーアブレーションにより真空容器4中に飛散した前記構成元素の一部の飛散粒子は、四重極質量分析器11には導入されず、真空容器4中を飛行し、該真空容器4の内壁、光学部材である前記レーザー光導入窓3の内面、および真空容器4内のその他部材表面に付着する可能性がある。このように飛散粒子が真空容器4中を飛行する際に、該飛散粒子が前記レーザー光導入窓内面に付着すると、レーザー光導入窓の光透過率が低下し、前記被検試料6に到達するレーザー光のエネルギーが低下する。これによって、分析対象となる高分子の原子化、原子イオン化の度合いが変化し、精度の高い分析が困難となる。
【0027】
このような問題点を解決する方法として、本発明のこの態様においては、レーザー光源1から見て、真空容器内4に設置された前記ターゲットの背面方向に前記超短パルスレーザー光の受光手段8および減衰フィルター9を設置し、被検試料面のレーザーアブレーションを行う前に、レーザー光が受光手段8に到達するように前記ターゲット5および付着防止板7を移動させ、前記レーザー光を前記減衰フィルター9を通して受光手段8に照射する。
(光検出器と)
受光手段8に使用可能な代表的な光検出器としては、Siフォトダイオードがあげられる。一般的なSiフォトダイオードは、シリコン基板上にP/N接合を作り、P型層側に酸化シリコン膜を形成し、酸化シリコン膜側を受光面として光を照射し、P型層、N型層に接合した電極から該光照射量に応じた電流を取り出す構造になっている。しかしながら、本発明の超短パルスレーザーのように、光出力のピークレベルが非常に大きいレーザー光を受光手段8に照射すると、前記光検出器の酸化シリコン膜、P/N接合半導体部は強力な光エネルギーにより破壊される可能性がある。
【0028】
減衰フィルター9は、前述したように受光手段8に強力な光エネルギーが照射されて光検出器が破壊されるのを防ぐ目的で、光が該減衰フィルターを透過する際に一定の比率で光強度を減衰させる為に配置される。
【0029】
図1の態様においては、該受光手段8からの出力をレーザーパワー制御手段10に入力し、受光手段8の出力レベルを測定することにより、真空容器内に導入されたレーザー光のパワーをモニターする。このモニター値が常に一定になるように、前記レーザーパワー制御手段10により、レーザー光源である超短パルスレーザーの出力を決定する。
【0030】
超短パルスレーザーの出力決定後、ターゲット5を元の分析位置に戻し、決定したレーザー出力で前記被検試料6にレーザー光を照射し、被検試料6をレーザーアブレーションさせ、前述したように分析対象高分子を分析する。
【0031】
ここで、付着防止板7は、レーザーアブレーションによって真空容器4内に飛散した飛散粒子17が受光手段8の受光面、および減衰フィルター9の表面に付着して受光手段8に到達する前記レーザー光強度が減衰するのを防止するために、受光手段8の前面、および減衰フィルターを覆うように設置され、ターゲット5の移動に同期して動作し、受光手段8の受光面の開放、閉鎖を行う。
【0032】
上記した図1の構成によれば、被検試料6のレーザーアブレーションに際して、実際に該被検試料6に照射されるレーザ出力と実質的に同等のレーザ出力を受光手段8で測定できるため、レーザー光源から被検試料6に至る間の光学系にある程度のコンタミネーションがあったとしても、実際に該被検試料6に照射されるレーザ出力を好適に制御することが容易となる。
【0033】
これに対して、従来のレーザー光源−光学系−被検試料の系においては、レーザー光源から発生するレーザ出力が一定であったとしても、途中の光学系の汚れにより、実際にサンプルに照射されるべきレーザ出力は変化(減少)してしまうことが不可避であった。
(レーザーパワー制御方法)
次に、図2を用いてレーザーパワー制御方法の詳細について説明する。
【0034】
図2を参照して、受光手段8ではレーザー光が照射されることにより、光エネルギーが光電変換され、電流信号として出力される。受光手段8から出力された信号は、I/V変換手段12により電流から電圧に変換され、レベル検出手段13に入力される。レベル検出手段13では入力された電圧レベルを検出し、検出データをレーザー強度比較手段14に送出する。レーザー強度比較手段では、予め設定されたレーザー強度設定値15と比較して、レベル検出手段から入力された値がレーザー強度設定値15より低ければ、超短パルスレーザー1の出力が高くなるように、レベル検出手段から入力された値がレーザー強度設定値15より高ければ、超短パルスレーザー1の出力が低くなるように、レーザー強度設定手段16を制御する。
【0035】
この一連の動作を繰り返すことにより、被検試料6に照射されるレーザー光エネルギーが一定になるように超短パルスレーザーの出力を決定し、分析対象となる高分子の原子化、原子イオン化の度合いを安定に保ち、精度の高い測定値および再現性を得ることができる。
【0036】
図2に示す態様の本発明のレーザーパワー制御装置では、光パルスの条件が一定であれば、被検試料6あるいは受光手段8に照射されるレーザー光のエネルギーが一定となるようにレーザー光強度を制御する。したがって、超短パルスレーザー1の出力を決定するために用いる光パワー、およびパルス幅は、必ずしも実際のレーザーアブレーションに用いる設定値と同等である必要はなく、これらの光パワー、およびパルス幅は、レーザーパワー制御手段に用いる電気回路、光検出器の周波数特性などの特性に応じた設定値であってもよい。
【0037】
例えば、光パワーをより正確かつ安定に測定するために、パワー測定時には直流信号を用い、かつレーザーアブレーションで使用する光出力よりも非常に低いレベルの光パワーを用いてもよい。通常、超短パルス、超高出力の光信号を検出することは非常に困難であり、高い周波数特性を持つ受光素子と検出回路が必要である。
【0038】
後述するような本発明の実施例で用いる、パルス幅110fsecの光を検出するためには、通常は、周波数特性が数十THz以上の光電変換特性を持つ光検出器が必要となり、そのような光検出器は入手困難かつ非常に高額である。また、受光素子が超高出力の光パルスによって損傷するのを防ぐための、減衰率の高い減光フィルターが必要となる場合もある。本態様では、レーザー光強度はパワーが低すぎる領域では出力が安定しない傾向を有するため、レーザー光強度が安定な領域でかつ広いパルス幅あるいは一定パワーのレーザー光を用いてレーザー光強度をモニターするように、一般的な光検出器とレーザー光による光検出器の損傷を防ぐ減衰フィルターを併用している。
【0039】
ここでは、上述したように、分析に用いる超短パルス、超高出力レーザーパルスに対して、レーザーパワーの計測において一定パワー低出力レーザー光、あるいは低周波パルス低出力レーザー光を用いることにより、受光素子に特別な仕様の高性能素子を用いることが必須でなくなり、容易(且つ安価)に目的とする機能を実現することができる。
(受光手段によるモニタの態様)
上記した図1の態様においては、付着防止板7および減衰フィルター9を利用して、必要に応じて、受光手段8の受光面の開放、閉鎖を行うことにより、受光手段8によるレーザ出力を間欠的にモニタする構成となっている。本発明においては、受光手段8のコンタミネーションを実質的に防止ないし低減することが可能な限り、受光手段8によるレーザ出力モニタをON/OFFする手段は特に制限されない。すなわち、例えば、真空容器4の横から、光軸内に受光手段8を必要に応じて「出し入れ」することにより、被検試料6の位置におけるレーザ出力を間欠的にモニタしてもよい。
【0040】
更には、受光手段8のコンタミネーションを実質的に防止ないし低減することが可能な限り、受光手段8により被検試料6の位置におけるレーザ出力を常時モニタしてもよい。この場合には、例えば、光軸を変化させる他の光学素子(例えば、ハーフミラー、光ファイバ、等)および/又は付着防止手段を適宜組み合わせればよい。
【0041】
【実施例】
本発明を以下の実施例によって更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
実施例1
まず、一辺が約2cmの略四角形状のシリコン基板(比抵抗1〜100Ω・cm、厚さ1mm、H2O2−硫酸系溶液によるクリーニング後)を用意し、該シリコン基板の上に、下記表1に示すように、サンプル1またはサンプル2の濃い溶液(分析対象たる高分子を溶媒で希釈したもの)をスポイトで滴下する。その後に、1000回転/秒で90秒間このシリコン基板を回転する。このようにシリコン基板を回転することにより、シリコン基板上に滴下されたサンプル1またはサンプル2の溶液は、広がりながら、該溶液中の溶媒を蒸発させ、更に表面を平らに保ちながら硬化(析出)する。次いで、このようにして得た、表面にサンプル1またはサンプル2の析出物を有するシリコン基板を、更に約120度の恒温槽に入れ、30分〜1時間放置する。
【0042】
ここで用いたサンプル1およびサンプル2の仕様を、下記の表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
この方法により、均一、かつ、超短パルスレーザー1から出射された超短パルスレーザー光の1ショット「nスポット」当たり1013程度の濃度で、1cmφ以上の面積を覆うサンプル1またはサンプル2を形成した被検試料6を作ることができる。
【0045】
上記のようにして作成した被検試料6を、図1に示す真空容器4内のターゲット5に装着して、真空容器4内を真空に引いて、真空容器4内の真空度が1.33×10−6hPa(10−6Torr)以下となるように設定する。
【0046】
次に、超短パルスレーザー1から出射された超短パルスレーザー光を、フォーカスレンズ2を用いて被検試料6に集光して、被検試料6上に形成されたサンプル1またはサンプル2をアブレーションする。ここで、超短パルスレーザー1から出射される超短パルスレーザー光のパルス幅は110フェムト秒であり、出力は53μJ、230μJ、480μJに変化させた。
【0047】
上記したターゲット5への超短パルスレーザー光の照射により発生した1価のイオンの質量を、四重極質量分析器11によって測定する。
【0048】
図3(a),(b),(c)には、上記した手法により、四重極質量分析器11によって測定されたサンプル1の質量スペクトラムを示す。ここで、図3(a)は短パルスレーザー光の出力230μJで測定した結果であり、図3(b)は短パルスレーザー光の出力53μJで測定した結果であり、図3(c)は短パルスレーザー光の出力480μJで測定した結果である。
【0049】
短パルスレーザー光の出力を53μJ(図3(b)参照)から230μJ(図3(a)参照)にあげることで、1価のイオンとなった12C、16O、19Fを、ほぼ構成比に対応した量で検出することができた。
【0050】
これにより、サンプル1の高分子は、フェムト秒レーザーなどの超短パルスレーザーによるアブレーションにより原子化され、その原子化と同時にイオン化されたことが確認された。
【0051】
ここで、更に短パルスレーザー光の出力を480μJに上昇させると、Cの割合が増加し、また、2価のシリコンイオンと思われるピークが顕著に現れてきた(図3(c)参照)。これは、高パワーのレーザーパルス照射により、サンプルのみならず基板の一部がアブレーションされた為である。なお、図3(c)の測定に関しては、四重極質量分析器11の感度を図3(a)ならびに図3(b)の測定の場合よりも二桁下げて測定した。
【0052】
図4は、被検試料6に形成された傷の深さと面積とを測定した結果を示している。ここで、深さレベルB(Lv,B)がシリコン基板の表面と考えられ、深さ8μm、幅224μmの円筒内にあったサンプル1と深さ6μm、幅48μmの円錐内のシリコンとが、8ショット分のパルスではぎ取られたものと認められる。
【0053】
上記した測定結果から、超短パルスレーザー光の1ショットではぎ取られたサンプルの量とシリコンの量とを見積もると、以下ような結果が得られる。
【0054】
超短パルスレーザー光の1ショットで剥ぎ取られたサンプルの量:
(224/2)2π×8×10−12[cm3]×1[g/cm3]×
{(6.02×1023)/1193}÷8=2.0×1013
超短パルスレーザー光の1ショットで剥ぎ取られたシリコンの量:
(48/2)2π×6×10−12×(1/3)[cm3]×2.33[g/cm3]
×{(6.02×1023)/28}÷8=2.3×1013
上記したように、サンプル1に関する実験結果から、超短パルスレーザー光(具体的には、パルス時間幅が110フェムト秒のフェムト秒レーザー光)のアブレーションにより、高分子を原子化・イオン化することが可能であることが実証された。
【0055】
次に、ラベルのついたDNAサンプルを用いて実験を行うために、サンプル2として市販のdATPを用いた以外は、サンプル1の場合と同様にして実験を行った。
【0056】
図5には、この実験により得られた質量スペクトラムが示されており、構成元素の12C、14N、16O、23Na、31Pのピークを観測することができた。
【0057】
この結果からも、超短パルスレーザー光(具体的には、パルス時間幅が110フェムト秒のフェムト秒レーザー光である)のアブレーションにより、高分子(分子量500程度)も原子化・イオン化させることができることが確認できた。更に、この結果から、Pの同位元素をラベルとして用いることも可能であることが判明する。
【0058】
以上のことから、高分子を高密度でシリコン基板上に塗布することにより、有機分子内の構成要素であるC,N,O,Na,F,Pなどを超短パルスレーザー光のアブレーションによって原子化・イオン化して検出できることが実証された。dATP内のPを検出できたことにより、Pの同位元素をラベルとして利用可能であることが判明した。
【0059】
尚、この時点で、レーザーパワーを測定するためにターゲットおよび付着防止板を移動させ、レーザーパワーモニター用光パルスとして、パルス幅110μsec、0.5Wに設定したレーザー光パルスを受光手段8に照射し、I/V変換手段の出力電圧を測定したところ、約850mVであった。ここで用いたI/V変換手段の構成は、以下の通りである。
<I/V変換手段の構成>
ここで用いるI/V変換手段は一般的な電流電圧変換アンプであり前記受光部から出力される電流を検出する抵抗と該抵抗両端に発生する電位差を増幅するオペアンプで構成される。
実施例2
前記サンプル1を用いて実施例1と同様にして作成したサンプル1をSi基板表面に固定することにより作成した被検試料6を、真空容器4内のターゲット5に装着して、真空容器4内を真空に引いた。真空容器4内の真空度は、1.33×10− 6hPa(10− 6Torr)以下となるように設定した。
【0060】
次に、超短パルスレーザー1から出射された超短パルスレーザー光を、フォーカスレンズ2を用いて被検試料6上に集光して、被検試料6上に形成されたサンプル1をアブレーションする操作を200回繰り返した。この際、超短パルスレーザー1から出射される超短パルスレーザー光のパルス幅は110フェムト秒であり、出力は480μJとした。この際に用いた超短パルスレーザー光の照射条件は、実施例1におけるものと同様とした。
【0061】
上記した200回のレーザーアブレーション操作の後、新たにサンプル1をSi基板表面に固定した被検試料6を、超短パルスレーザー光の照射によりアブレーションさせ、発生した1価のイオンの質量を四重極質量分析器11によって測定した。実施例1と同様に、超短パルスレーザー1から出射される超短パルスレーザー光のパルス幅は110フェムト秒であり、出力は53μJ、230μJ、480μJに変化させた。
【0062】
この測定により得られたサンプル1の質量スペクトラムと、実施例1で得られた質量スペクトラムを比較すると、実施例2の質量スペクトル測定においては、ピークレベルが実施例1の結果と比較して約5%低い結果となった。
【0063】
また、被検試料面に照射されるレーザーパワーの低下度合いを測定するためにターゲットおよび付着防止板を移動させ、レーザーパワーモニター用光パルスとして、パルス幅110μsec、0.5Wに設定したレーザー光パルスを受光手段8に照射し、I/V変換手段の出力電圧を測定したところ、810mVであり、200回の繰り返しレーザーアブレーション実験前に測定した実施例1の値と比較して、ピークレベルが約5%低い値になっていることを確認した。
【0064】
次に、パルス幅110μsecのまま、I/V変換手段の出力電圧が実施例1の測定値(850mV)と同等になるようにレーザー強度設定値を高く設定した状態で、ターゲットおよび付着防止板をもとの位置に戻し、サンプル1をSi基板表面に固定した被検試料6を、超短パルスレーザー光の照射によりアブレーションさせ、発生した1価のイオンの質量を四重極質量分析器11によって測定した。この時、実施例1と同様に、超短パルスレーザー1から出射される超短パルスレーザー光のパルス幅は110フェムト秒であり、出力は53μJ、230μJ、480μJに変化させた。
【0065】
この測定により得られたサンプル1の質量スペクトラムと、実施例1で得られた質量スペクトラムを比較すると、ほぼ同等のピークレベルとなる結果が得られた。
【0066】
更に、イソプロピルアルコールを用いてレーザー導入窓の内面をクリーニングし、導入窓内面に付着した被検試料からの飛散粒子を除去した状態にし、レーザー強度設定値を実施例1の値に戻した上で、サンプル1をSi基板表面に固定した被検試料6を、超短パルスレーザー光の照射によりアブレーションさせ、発生した1価のイオンの質量を四重極質量分析器11によって測定した。この時も、実施例1と同様に、超短パルスレーザー1から出射される超短パルスレーザー光のパルス幅は110フェムト秒であり、出力は53μJ、230μJ、480μJに変化させた。この測定により得られたサンプル1の質量スペクトラムと、実施例1で得られた質量スペクトラムを比較すると、ほぼ同等の結果が得られた。
【0067】
以上説明したように、レーザーパワー制御手段を用いて超短パルスレーザー光強度を制御することにより、レーザーアブレーションを用いた高分子の分析が安定に行えることを確認した。
【0068】
次に、以下に示す試料(S置換DNAサンプル)をサンプル3として用いるとともに、超短パルスレーザー1のパルス時間幅を110フェムト秒、尖頭値出力を2GWに設定した場合の実験結果について説明する。
【0069】
サンプル3:2‘−Deoxyadenosine 5’−O−(1−Thiotriphosphate)
化学式 :C10H13N5O11P3SNa3・3H2O
このサンプル3の場合にも、サンプル1ならびにサンプル2に関する実験の場合と同様に、四重極質量分析器11により高分子の質量分析を行う前に、まず、被検試料6として、質量分析の対象となる試料たる高分子(上記したS置換DNAサンプルである)を溶媒に溶かした溶液をシリコン基板に塗布し、そのシリコン基板を摂氏50度の恒温槽内に約30分間放置し、シリコン基板に塗布された溶媒を蒸発させたものを準備する。
【0070】
上記のようにして表面にサンプル3が硬化したターゲット5を真空容器4内に装着して、真空容器4内を真空に引いて、真空容器4内の真空度が10−6Torr以下となるように設定する。
【0071】
次に、超短パルスレーザー1から出射された上記したパラメーターを備えた超短パルスレーザー光を、フォーカスレンズ2を用いて被検試料6上に集光して、被検試料6をアブレーションし、四重極質量分析器11によって、被検試料6への超短パルスレーザー光の照射により発生した1価のイオンの質量を測定する。この際に用いた超短パルスレーザー光の照射条件は、実施例1におけるものと同様とした。
【0072】
図6には、上記した手法により、四重極質量分析器11によって測定された試料の質量分析スペクトラムの一例を示す。
【0073】
なお、本発明によるレーザーアブレーションを用いた高分子の分析方法は、例えば、DNA、タンパク質、RNA,PNA脂質、糖などの各種の高分子の質量分析に用いることが可能である。また、前記各種の高分子に関しては、該高分子に元素標識を付けたものも同様に、レーザーアブレーションし、質量分析により解析することができるのはもちろんである。
【0074】
即ち、超短パルスレーザーにより単数又は複数の同位体元素で標識したタンパク質、アルブミン、DNAなどの高分子をアブレーションすることにより、高分子構成元素を完全に原子イオン化し、イオン化した標識元素を質量分析することにより高分子の定量測定を行うことができる。これにより、多種類の同位体元素を標識として使用することができるようになる。従って、質量分析することができる高分子の対象範囲を飛躍的に拡げることができるようになる。
【0075】
つまり、本発明によって、同位体元素で標識した高分子試料それ自体を原子レベルでイオン化し、標識元素を検出することが可能となるため、質量分析可能な対象範囲を飛躍的に広げることができるようになる。例えば、DNAの標識として、同位体元素を用いることが可能となり、標識の種類を例えば安定同位体元素の数である270にも増やすことができる。これは、従来の標識法である蛍光法(2種類)や放射性同位元素(約10種類)と比較して、飛躍的に情報量を増やすことができる。
【0076】
なお、前述した実施の形態においては、質量分析器として四重極質量分析器を用いるようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、原子の飛行時間を測定することにより質量分析を行う飛行時間質量分析器を用いた場合には、複数の原子の質量分析を同時に行うことができる。
【0077】
また、前述した実施の形態においては、高分子の分析方法として質量分析に関して説明したが、これに限られるものではないことは勿論であり、質量分析以外の分析に関しては本発明を用いるようにしてもよい。このような「質量分析以外の分析」の方法としては、例えば、 、 、
等が挙げられる。
【0078】
【発明の効果】
上述したように本発明のレーザーパワー制御装置をレーザーアブレーションを用いた高分子分析装置に適用することにより、分析対象となる目的高分子をアブレーションする超短パルスレーザー光の被検試料面への照射エネルギーを一定に制御することができ、安定な分析結果を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の質量分析装置構成の一例を示す模式断面図である。
【図2】本発明のレーザーパワー制御装置構成の一例を示す模式断面図である。
【図3】本発明の実施例で測定したサンプルの質量スペクトル測定結果を示すグラフである。
【図4】本発明の実施例で用いたサンプルに形成されたレーザー照射痕の深さと面積を測定した結果を示すグラフである。
【図5】本発明の四重極質量分析器によって測定したサンプル2の質量スペクトル測定した結果を示すグラフである。
【図6】本発明の四重極質量分析器によって測定したサンプル3の質量スペクトル測定した結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1…超短パルスレーザー(レーザー光源)
2…フォーカスレンズ
3…レーザー導入窓
4…真空容器
5…ターゲット
6…被検試料
7…付着防止板
8…受光手段
9…減衰フィルター
10…レーザーパワー制御装置
11…四重極質量分析器
12…I/V変換手段
13…レベル検出手段
14…レーザー強度比較手段
15…レーザー強度設定値
16…レーザー強度設定手段
17…飛散粒子
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザーアブレーションを用いた高分子分析用の装置に関する。更に詳細には、本発明は、従来の装置と比較して分析の効率を著しく向上させることを可能にしたレーザーアブレーション高分子分析装置に関する。例えば、DNA,タンパク質、RNA、PNA、脂質、糖などの各種の高分子の質量分析に本発明の高分子分析装置を適用することにより、好適なレーザーアブレーションを用いた高分子分析が可能となる。
【0002】
また、本発明はレーザーアブレーションを用いた高分子の分析方法に用いる前記高分子分析装置において、レーザーアブレーションされる被検試料に照射されるべき前記超短パルスレーザー光の光エネルギーが一定になるように、レーザー光強度を設定可能とするレーザーパワー制御装置に関する。
【0003】
【従来の技術】
近年、質量分析法の応用範囲は、該分析法の原子、分子、クラスター等の粒子を分離検出するという特徴を活かして、物理や化学の分野から、医学や生化学などのライフサイエンスの分野へと急速に広がっている。特に、タンパク質の分子量の決定解析やアミノ酸配列の決定解析などへの質量分析法応用の発展には、目を見張るものがある。
【0004】
この分析法に使用すべき質量分析計の原理は、試料を種々の方法でイオン化することにより得られたイオンを質量/電荷に従って分離し、このように分離した各イオンの強度を測定するというものである。
【0005】
従来より、高分子の質量分析においては、高分子そのものに電子を付加してイオン化し、その質量を解析する、あるいは高分子量の分子を低分子量の分子イオンに細分化して質量分析を行い、構成分子を比較していた。このような従来の高分子の質量分析におけるイオン生成方法としては、例えば、高分子に高エネルギー原子イオンを衝突させてイオン化する2次イオン質量分析(SIMS)法や、電子衝撃によって低分子量の分子イオンに細分化して質量分析を行う電子イオン化(ED)法、マトリックス支援レーザーイオン化(MALDI)法などが知られている。
【0006】
しかしながら、上記した何れの方法においても、高分子イオンを質量分析するため、高分解能の質量分析装置が必要であるという問題点や、親イオンの中途半端な分解により生成したフラグメントイオンの存在が、質量スペクトルの解析を困難にするという問題などがあった。
【0007】
一方、従来より、化学分析に際して同位元素で標識した高分子試料の質量分析方法としては、例えば、ナノ秒レーザーにより原子化およびイオン化を行うレーザー原子化共鳴イオン化(LARIMP)法が知られている。
【0008】
しかしながら、このLARIMP法によれば、レーザーとして、標識希元素を原子化するための原子化レーザーと、原子化された標識元素の原子をイオン化するための共鳴イオン化レーザーとの2台のレーザーが必要となるため、システム構成が複雑になるという問題点があった。
【0009】
更に、LARIMP法においては、上記したように標識原子を共鳴イオン化する必要がある。このため、各標識原子に対して固有の波長のレーザー光を照射する必要があり、多種類の標識同位体が混入した状況では効率の良い分析を行うことが極めて困難であるという問題点があった。
【0010】
このような状況下で、上記した従来の技術の有する種々の問題点に鑑みてなされた高分子試料の質量分析方法、および質量分析装置として、高分子を構成する構成原子の原子イオンを生成する工程を1台のレーザーを用いて成し、生成した原子イオンを質量分析器を用いて分析するようにしたレーザーアブレーションを用いた高分子の分析方法が開発された。この新しい分析方法によれば、システム構成の大幅な簡素が計られ、多種類の標識同位体が混入した状況においても、効率の良い分析を行うことを可能とする、レーザーアブレーションを用いた高分子の質量分析方法および分析装置が提供される。より詳細には、例えば、質量分析を行う場合には、質量スペクトルの解析が困難になるおそれを排除するとともに、質量分析装置に高分解能を要しないようにしたレーザーアブレーションを用いた高分子の質量分析方法および質量分析装置が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0011】
該レーザーアブレーションを用いた高分子の質量分析方法および質量分析装置を用いることにより、システムが簡素化され、効率の良い高分子の分析が可能となったものの、分析対象となる高分子をアブレーションさせるレーザーのパワー制御については、音響光学素子等の光変調素子を用いてレーザーパワ一を制御するなどの一般的なレーザーパワー制御方法(例えば特許文献2参照)の使用が考えられている。この該レーザーパワ一制御はシステムに対して最適化するように特に工夫されていなかったため、上記した技術においては、レーザー光源そのもののパワーを管理しても、実際に資料に照射されるレーザーパワーは必ずしも設定値通りにはならないという欠点があった。
【0012】
【特許文献1】
特開2002−328114号公報
【特許文献2】
特開平9−212863号公報
【非特許文献1】
ブルース・ヤコブソン(K.Bruce Jacobson)外12名、An approach to the use of stable isotopes for DNA Sequencing、GENOMICS、1991年、第9巻、p.51−59
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来例においては、レーザーアブレーションを用いて、高分子を構成する構成原子の原子イオンを生成するシステム構成を簡素化した分析装置が提供されてきたが、レーザー光により質量分析装置内に装着された被検試料に含まれる原子をイオン化する過程で、レーザー光のエネルギーにより被検試料表面から飛散した試料分子および原子の一部は、被検試料を装着した真空容器内壁に付着する傾向がある。レーザー光を前記試料面に照射する光路中に設置された光学部材のうち、前記真空容器内に設置された光学部材、あるいは前記レーザー光を真空容器内に導入するレーザー光導入窓の真空容器内壁側面には、照射されたレーザー光のエネルギーにより前記被検試料表面から飛散した試料の粒子が付着し、計測を繰り返すことにより該付着粒子の厚みが増し、レーザー光を前記試料面に照射する光路中に設置された光学部材の透過率、あるいは反射率が経時変化することとなる。
【0014】
従って、従来の装置においてレーザー光源の出力を一定に保つように制御すると、光路中に設置された光学部材の光透過率あるいは反射率の減少により、前記被検試料に照射されるレーザーパワーが減少することになり、被検試料を構成する分子および原子のイオン化が安定に行われなくなり、質量分析値に影響するという問題があった。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者は鋭意研究の結果、分析すべき被検試料の近傍で(すなわち、「その場」で)、該被検試料に実際に照射されるべきレーザーパワーを測定することが、被検試料に照射するレーザー光のエネルギーが一定になるようにレーザー光源の光出射出力を制御することを可能として、被検試料を構成する分子および原子のイオン化を安定なものとし、且つ質量分析の定量化精度を向上させることにより、上記課題を解決するために極めて効果的であることを見出した。
【0016】
本発明のレーザーアブレーション高分子分析装置は上記知見に基づくものであり、より詳しくは、分析の対象である高分子にレーザー光を照射して該高分子をアブレーションすることにより、高分子を構成元素に原子化し、原子化した構成元素をイオン化し、イオン化した構成元素を分析器に導入して分析する高分子用分析装置であって;
前記超短パルスレーザー光を出射可能なレーザー出力装置と、前記レーザー光の光軸上に配設され、前記分析対象となる高分子を装着するターゲットと、前記超短パルスレーザー光を受光する受光手段と、前記超短パルスレーザー光によりアブレーションされた原子の種類および/又は量を分析する分析器とを有し;
前記ターゲット、受光手段および分析器は密閉容器内に配設され、更に前記受光手段からの信号入力に基づいて、前記超短パルスレーザー光のパワーを制御するレーザーパワー制御装置を有するものである。
【0017】
ここで、上記分析手段としては、前記超短パルスレーザー光によりアブレーションされた原子の種類および/又は量を分析可能である限り、特に制限されない。このような分析手段としては、例えば、質量分析を挙げることができる。質量分析以外の分析としては、具体的には、例えば、化学的分析(通常のいわゆる化学分析)や光学的分析(蛍光法など)を挙げることができる。
【0018】
また、上記したイオン化は、超短パルスレーザー光の高い尖頭値強度によって非共鳴課程によって行われるイオン化(非共鳴イオン化)であるため、他種類の標識同位体が混入した状況においても各標識原子をそれぞれイオン化することができ、多標識系への応用が容易であり、高精度かつ高効率な高分子の分析を行うことができるようになる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図1ないし図2を用いて説明する。
【0020】
本発明における高分子分析装置の一態様の構成を図1の模式断面図に示し、レーザーパワー制御手段の一態様の詳細構成を図2の模式断面図に示す。なお本発明はこの例に限定されるものではない。
(好適な一態様)
図1に示す高分子分析装置の態様において、超短パルスレーザー(レーザー光源)1から出射されたレーザー光はフォーカスレンズ2により集束され、レーザー導入窓3より真空容器4内に入射され、真空容器4内のターゲット5に固定された被検試料6上に焦点を結ぶ。
【0021】
該超短パルスレーザー光が前記被検試料6に照射されることにより、被検試料6に固定された分析対象となる高分子はアブレーションされ、構成元素に原子化すると同時にイオン化し、前記真空容器4中に飛散する。被検試料面から飛散した前記高分子の構成元素は、電磁界(図示しない電磁界発生手段により与えられる)により四重極質量分析器11に導入され、質量分析される。
【0022】
レーザーアブレーションされた構成元素が安定に原子化、原子イオン化され、質量分析されるために、真空容器4内の圧力(真空度)は、1.33×10−8〜1.33×10−6hPa(10−8〜10−6 Torr)であることが望ましい。
(超短パルスレーザー光)
本発明において、超短パルスレーザー光により高分子をアブレーションする際には、通常は、高分子に超短パルスレーザー光を1ショット(1パルス)照射すれば充分である場合が多いが、高分子に超短パルス光を複数ショット(複数パルス)照射してもよい。本発明においては、高分子への照射する超短パルスレーザー光のショット数(パルス数)は、適宜に選択することができる。
【0023】
超短パルスレーザーは、パルス時間幅が10ピコ秒以下であることが好ましく、特に、1フェムト秒以上1ピコ秒以下の(通常はフェムト秒レーザーと称される)レーザーを用いることが適当である。その尖頭値出力としては、前記被検試料6(図1)に固定された、分析対象となる高分子の構成元素が効率よく原子化、原子イオン化される範囲として、10メガワット以上が好ましく、特に、1ギガワット以上10ギガワット以下が好ましい。
【0024】
ここで用いた超短パルスレーザー1は、例えば、チタンサファイアレーザーにより構成することができる。図1の超短パルスレーザー1は、以下に示すようなパラメーターを備えている。
【0025】
ピーク幅(パルス時間幅):〜110fs(フェムト秒)
出力 :50〜480μJ(マイクロジュール)
(尖頭値出力:0.5〜4GW(ギガワット))
波長 :〜800nm(ナノメートル)
繰り返し :1kHz(キロヘルツ)
である。
【0026】
ここで、前記超短パルスレーザー光のレーザーアブレーションにより真空容器4中に飛散した前記構成元素の一部の飛散粒子は、四重極質量分析器11には導入されず、真空容器4中を飛行し、該真空容器4の内壁、光学部材である前記レーザー光導入窓3の内面、および真空容器4内のその他部材表面に付着する可能性がある。このように飛散粒子が真空容器4中を飛行する際に、該飛散粒子が前記レーザー光導入窓内面に付着すると、レーザー光導入窓の光透過率が低下し、前記被検試料6に到達するレーザー光のエネルギーが低下する。これによって、分析対象となる高分子の原子化、原子イオン化の度合いが変化し、精度の高い分析が困難となる。
【0027】
このような問題点を解決する方法として、本発明のこの態様においては、レーザー光源1から見て、真空容器内4に設置された前記ターゲットの背面方向に前記超短パルスレーザー光の受光手段8および減衰フィルター9を設置し、被検試料面のレーザーアブレーションを行う前に、レーザー光が受光手段8に到達するように前記ターゲット5および付着防止板7を移動させ、前記レーザー光を前記減衰フィルター9を通して受光手段8に照射する。
(光検出器と)
受光手段8に使用可能な代表的な光検出器としては、Siフォトダイオードがあげられる。一般的なSiフォトダイオードは、シリコン基板上にP/N接合を作り、P型層側に酸化シリコン膜を形成し、酸化シリコン膜側を受光面として光を照射し、P型層、N型層に接合した電極から該光照射量に応じた電流を取り出す構造になっている。しかしながら、本発明の超短パルスレーザーのように、光出力のピークレベルが非常に大きいレーザー光を受光手段8に照射すると、前記光検出器の酸化シリコン膜、P/N接合半導体部は強力な光エネルギーにより破壊される可能性がある。
【0028】
減衰フィルター9は、前述したように受光手段8に強力な光エネルギーが照射されて光検出器が破壊されるのを防ぐ目的で、光が該減衰フィルターを透過する際に一定の比率で光強度を減衰させる為に配置される。
【0029】
図1の態様においては、該受光手段8からの出力をレーザーパワー制御手段10に入力し、受光手段8の出力レベルを測定することにより、真空容器内に導入されたレーザー光のパワーをモニターする。このモニター値が常に一定になるように、前記レーザーパワー制御手段10により、レーザー光源である超短パルスレーザーの出力を決定する。
【0030】
超短パルスレーザーの出力決定後、ターゲット5を元の分析位置に戻し、決定したレーザー出力で前記被検試料6にレーザー光を照射し、被検試料6をレーザーアブレーションさせ、前述したように分析対象高分子を分析する。
【0031】
ここで、付着防止板7は、レーザーアブレーションによって真空容器4内に飛散した飛散粒子17が受光手段8の受光面、および減衰フィルター9の表面に付着して受光手段8に到達する前記レーザー光強度が減衰するのを防止するために、受光手段8の前面、および減衰フィルターを覆うように設置され、ターゲット5の移動に同期して動作し、受光手段8の受光面の開放、閉鎖を行う。
【0032】
上記した図1の構成によれば、被検試料6のレーザーアブレーションに際して、実際に該被検試料6に照射されるレーザ出力と実質的に同等のレーザ出力を受光手段8で測定できるため、レーザー光源から被検試料6に至る間の光学系にある程度のコンタミネーションがあったとしても、実際に該被検試料6に照射されるレーザ出力を好適に制御することが容易となる。
【0033】
これに対して、従来のレーザー光源−光学系−被検試料の系においては、レーザー光源から発生するレーザ出力が一定であったとしても、途中の光学系の汚れにより、実際にサンプルに照射されるべきレーザ出力は変化(減少)してしまうことが不可避であった。
(レーザーパワー制御方法)
次に、図2を用いてレーザーパワー制御方法の詳細について説明する。
【0034】
図2を参照して、受光手段8ではレーザー光が照射されることにより、光エネルギーが光電変換され、電流信号として出力される。受光手段8から出力された信号は、I/V変換手段12により電流から電圧に変換され、レベル検出手段13に入力される。レベル検出手段13では入力された電圧レベルを検出し、検出データをレーザー強度比較手段14に送出する。レーザー強度比較手段では、予め設定されたレーザー強度設定値15と比較して、レベル検出手段から入力された値がレーザー強度設定値15より低ければ、超短パルスレーザー1の出力が高くなるように、レベル検出手段から入力された値がレーザー強度設定値15より高ければ、超短パルスレーザー1の出力が低くなるように、レーザー強度設定手段16を制御する。
【0035】
この一連の動作を繰り返すことにより、被検試料6に照射されるレーザー光エネルギーが一定になるように超短パルスレーザーの出力を決定し、分析対象となる高分子の原子化、原子イオン化の度合いを安定に保ち、精度の高い測定値および再現性を得ることができる。
【0036】
図2に示す態様の本発明のレーザーパワー制御装置では、光パルスの条件が一定であれば、被検試料6あるいは受光手段8に照射されるレーザー光のエネルギーが一定となるようにレーザー光強度を制御する。したがって、超短パルスレーザー1の出力を決定するために用いる光パワー、およびパルス幅は、必ずしも実際のレーザーアブレーションに用いる設定値と同等である必要はなく、これらの光パワー、およびパルス幅は、レーザーパワー制御手段に用いる電気回路、光検出器の周波数特性などの特性に応じた設定値であってもよい。
【0037】
例えば、光パワーをより正確かつ安定に測定するために、パワー測定時には直流信号を用い、かつレーザーアブレーションで使用する光出力よりも非常に低いレベルの光パワーを用いてもよい。通常、超短パルス、超高出力の光信号を検出することは非常に困難であり、高い周波数特性を持つ受光素子と検出回路が必要である。
【0038】
後述するような本発明の実施例で用いる、パルス幅110fsecの光を検出するためには、通常は、周波数特性が数十THz以上の光電変換特性を持つ光検出器が必要となり、そのような光検出器は入手困難かつ非常に高額である。また、受光素子が超高出力の光パルスによって損傷するのを防ぐための、減衰率の高い減光フィルターが必要となる場合もある。本態様では、レーザー光強度はパワーが低すぎる領域では出力が安定しない傾向を有するため、レーザー光強度が安定な領域でかつ広いパルス幅あるいは一定パワーのレーザー光を用いてレーザー光強度をモニターするように、一般的な光検出器とレーザー光による光検出器の損傷を防ぐ減衰フィルターを併用している。
【0039】
ここでは、上述したように、分析に用いる超短パルス、超高出力レーザーパルスに対して、レーザーパワーの計測において一定パワー低出力レーザー光、あるいは低周波パルス低出力レーザー光を用いることにより、受光素子に特別な仕様の高性能素子を用いることが必須でなくなり、容易(且つ安価)に目的とする機能を実現することができる。
(受光手段によるモニタの態様)
上記した図1の態様においては、付着防止板7および減衰フィルター9を利用して、必要に応じて、受光手段8の受光面の開放、閉鎖を行うことにより、受光手段8によるレーザ出力を間欠的にモニタする構成となっている。本発明においては、受光手段8のコンタミネーションを実質的に防止ないし低減することが可能な限り、受光手段8によるレーザ出力モニタをON/OFFする手段は特に制限されない。すなわち、例えば、真空容器4の横から、光軸内に受光手段8を必要に応じて「出し入れ」することにより、被検試料6の位置におけるレーザ出力を間欠的にモニタしてもよい。
【0040】
更には、受光手段8のコンタミネーションを実質的に防止ないし低減することが可能な限り、受光手段8により被検試料6の位置におけるレーザ出力を常時モニタしてもよい。この場合には、例えば、光軸を変化させる他の光学素子(例えば、ハーフミラー、光ファイバ、等)および/又は付着防止手段を適宜組み合わせればよい。
【0041】
【実施例】
本発明を以下の実施例によって更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
実施例1
まず、一辺が約2cmの略四角形状のシリコン基板(比抵抗1〜100Ω・cm、厚さ1mm、H2O2−硫酸系溶液によるクリーニング後)を用意し、該シリコン基板の上に、下記表1に示すように、サンプル1またはサンプル2の濃い溶液(分析対象たる高分子を溶媒で希釈したもの)をスポイトで滴下する。その後に、1000回転/秒で90秒間このシリコン基板を回転する。このようにシリコン基板を回転することにより、シリコン基板上に滴下されたサンプル1またはサンプル2の溶液は、広がりながら、該溶液中の溶媒を蒸発させ、更に表面を平らに保ちながら硬化(析出)する。次いで、このようにして得た、表面にサンプル1またはサンプル2の析出物を有するシリコン基板を、更に約120度の恒温槽に入れ、30分〜1時間放置する。
【0042】
ここで用いたサンプル1およびサンプル2の仕様を、下記の表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
この方法により、均一、かつ、超短パルスレーザー1から出射された超短パルスレーザー光の1ショット「nスポット」当たり1013程度の濃度で、1cmφ以上の面積を覆うサンプル1またはサンプル2を形成した被検試料6を作ることができる。
【0045】
上記のようにして作成した被検試料6を、図1に示す真空容器4内のターゲット5に装着して、真空容器4内を真空に引いて、真空容器4内の真空度が1.33×10−6hPa(10−6Torr)以下となるように設定する。
【0046】
次に、超短パルスレーザー1から出射された超短パルスレーザー光を、フォーカスレンズ2を用いて被検試料6に集光して、被検試料6上に形成されたサンプル1またはサンプル2をアブレーションする。ここで、超短パルスレーザー1から出射される超短パルスレーザー光のパルス幅は110フェムト秒であり、出力は53μJ、230μJ、480μJに変化させた。
【0047】
上記したターゲット5への超短パルスレーザー光の照射により発生した1価のイオンの質量を、四重極質量分析器11によって測定する。
【0048】
図3(a),(b),(c)には、上記した手法により、四重極質量分析器11によって測定されたサンプル1の質量スペクトラムを示す。ここで、図3(a)は短パルスレーザー光の出力230μJで測定した結果であり、図3(b)は短パルスレーザー光の出力53μJで測定した結果であり、図3(c)は短パルスレーザー光の出力480μJで測定した結果である。
【0049】
短パルスレーザー光の出力を53μJ(図3(b)参照)から230μJ(図3(a)参照)にあげることで、1価のイオンとなった12C、16O、19Fを、ほぼ構成比に対応した量で検出することができた。
【0050】
これにより、サンプル1の高分子は、フェムト秒レーザーなどの超短パルスレーザーによるアブレーションにより原子化され、その原子化と同時にイオン化されたことが確認された。
【0051】
ここで、更に短パルスレーザー光の出力を480μJに上昇させると、Cの割合が増加し、また、2価のシリコンイオンと思われるピークが顕著に現れてきた(図3(c)参照)。これは、高パワーのレーザーパルス照射により、サンプルのみならず基板の一部がアブレーションされた為である。なお、図3(c)の測定に関しては、四重極質量分析器11の感度を図3(a)ならびに図3(b)の測定の場合よりも二桁下げて測定した。
【0052】
図4は、被検試料6に形成された傷の深さと面積とを測定した結果を示している。ここで、深さレベルB(Lv,B)がシリコン基板の表面と考えられ、深さ8μm、幅224μmの円筒内にあったサンプル1と深さ6μm、幅48μmの円錐内のシリコンとが、8ショット分のパルスではぎ取られたものと認められる。
【0053】
上記した測定結果から、超短パルスレーザー光の1ショットではぎ取られたサンプルの量とシリコンの量とを見積もると、以下ような結果が得られる。
【0054】
超短パルスレーザー光の1ショットで剥ぎ取られたサンプルの量:
(224/2)2π×8×10−12[cm3]×1[g/cm3]×
{(6.02×1023)/1193}÷8=2.0×1013
超短パルスレーザー光の1ショットで剥ぎ取られたシリコンの量:
(48/2)2π×6×10−12×(1/3)[cm3]×2.33[g/cm3]
×{(6.02×1023)/28}÷8=2.3×1013
上記したように、サンプル1に関する実験結果から、超短パルスレーザー光(具体的には、パルス時間幅が110フェムト秒のフェムト秒レーザー光)のアブレーションにより、高分子を原子化・イオン化することが可能であることが実証された。
【0055】
次に、ラベルのついたDNAサンプルを用いて実験を行うために、サンプル2として市販のdATPを用いた以外は、サンプル1の場合と同様にして実験を行った。
【0056】
図5には、この実験により得られた質量スペクトラムが示されており、構成元素の12C、14N、16O、23Na、31Pのピークを観測することができた。
【0057】
この結果からも、超短パルスレーザー光(具体的には、パルス時間幅が110フェムト秒のフェムト秒レーザー光である)のアブレーションにより、高分子(分子量500程度)も原子化・イオン化させることができることが確認できた。更に、この結果から、Pの同位元素をラベルとして用いることも可能であることが判明する。
【0058】
以上のことから、高分子を高密度でシリコン基板上に塗布することにより、有機分子内の構成要素であるC,N,O,Na,F,Pなどを超短パルスレーザー光のアブレーションによって原子化・イオン化して検出できることが実証された。dATP内のPを検出できたことにより、Pの同位元素をラベルとして利用可能であることが判明した。
【0059】
尚、この時点で、レーザーパワーを測定するためにターゲットおよび付着防止板を移動させ、レーザーパワーモニター用光パルスとして、パルス幅110μsec、0.5Wに設定したレーザー光パルスを受光手段8に照射し、I/V変換手段の出力電圧を測定したところ、約850mVであった。ここで用いたI/V変換手段の構成は、以下の通りである。
<I/V変換手段の構成>
ここで用いるI/V変換手段は一般的な電流電圧変換アンプであり前記受光部から出力される電流を検出する抵抗と該抵抗両端に発生する電位差を増幅するオペアンプで構成される。
実施例2
前記サンプル1を用いて実施例1と同様にして作成したサンプル1をSi基板表面に固定することにより作成した被検試料6を、真空容器4内のターゲット5に装着して、真空容器4内を真空に引いた。真空容器4内の真空度は、1.33×10− 6hPa(10− 6Torr)以下となるように設定した。
【0060】
次に、超短パルスレーザー1から出射された超短パルスレーザー光を、フォーカスレンズ2を用いて被検試料6上に集光して、被検試料6上に形成されたサンプル1をアブレーションする操作を200回繰り返した。この際、超短パルスレーザー1から出射される超短パルスレーザー光のパルス幅は110フェムト秒であり、出力は480μJとした。この際に用いた超短パルスレーザー光の照射条件は、実施例1におけるものと同様とした。
【0061】
上記した200回のレーザーアブレーション操作の後、新たにサンプル1をSi基板表面に固定した被検試料6を、超短パルスレーザー光の照射によりアブレーションさせ、発生した1価のイオンの質量を四重極質量分析器11によって測定した。実施例1と同様に、超短パルスレーザー1から出射される超短パルスレーザー光のパルス幅は110フェムト秒であり、出力は53μJ、230μJ、480μJに変化させた。
【0062】
この測定により得られたサンプル1の質量スペクトラムと、実施例1で得られた質量スペクトラムを比較すると、実施例2の質量スペクトル測定においては、ピークレベルが実施例1の結果と比較して約5%低い結果となった。
【0063】
また、被検試料面に照射されるレーザーパワーの低下度合いを測定するためにターゲットおよび付着防止板を移動させ、レーザーパワーモニター用光パルスとして、パルス幅110μsec、0.5Wに設定したレーザー光パルスを受光手段8に照射し、I/V変換手段の出力電圧を測定したところ、810mVであり、200回の繰り返しレーザーアブレーション実験前に測定した実施例1の値と比較して、ピークレベルが約5%低い値になっていることを確認した。
【0064】
次に、パルス幅110μsecのまま、I/V変換手段の出力電圧が実施例1の測定値(850mV)と同等になるようにレーザー強度設定値を高く設定した状態で、ターゲットおよび付着防止板をもとの位置に戻し、サンプル1をSi基板表面に固定した被検試料6を、超短パルスレーザー光の照射によりアブレーションさせ、発生した1価のイオンの質量を四重極質量分析器11によって測定した。この時、実施例1と同様に、超短パルスレーザー1から出射される超短パルスレーザー光のパルス幅は110フェムト秒であり、出力は53μJ、230μJ、480μJに変化させた。
【0065】
この測定により得られたサンプル1の質量スペクトラムと、実施例1で得られた質量スペクトラムを比較すると、ほぼ同等のピークレベルとなる結果が得られた。
【0066】
更に、イソプロピルアルコールを用いてレーザー導入窓の内面をクリーニングし、導入窓内面に付着した被検試料からの飛散粒子を除去した状態にし、レーザー強度設定値を実施例1の値に戻した上で、サンプル1をSi基板表面に固定した被検試料6を、超短パルスレーザー光の照射によりアブレーションさせ、発生した1価のイオンの質量を四重極質量分析器11によって測定した。この時も、実施例1と同様に、超短パルスレーザー1から出射される超短パルスレーザー光のパルス幅は110フェムト秒であり、出力は53μJ、230μJ、480μJに変化させた。この測定により得られたサンプル1の質量スペクトラムと、実施例1で得られた質量スペクトラムを比較すると、ほぼ同等の結果が得られた。
【0067】
以上説明したように、レーザーパワー制御手段を用いて超短パルスレーザー光強度を制御することにより、レーザーアブレーションを用いた高分子の分析が安定に行えることを確認した。
【0068】
次に、以下に示す試料(S置換DNAサンプル)をサンプル3として用いるとともに、超短パルスレーザー1のパルス時間幅を110フェムト秒、尖頭値出力を2GWに設定した場合の実験結果について説明する。
【0069】
サンプル3:2‘−Deoxyadenosine 5’−O−(1−Thiotriphosphate)
化学式 :C10H13N5O11P3SNa3・3H2O
このサンプル3の場合にも、サンプル1ならびにサンプル2に関する実験の場合と同様に、四重極質量分析器11により高分子の質量分析を行う前に、まず、被検試料6として、質量分析の対象となる試料たる高分子(上記したS置換DNAサンプルである)を溶媒に溶かした溶液をシリコン基板に塗布し、そのシリコン基板を摂氏50度の恒温槽内に約30分間放置し、シリコン基板に塗布された溶媒を蒸発させたものを準備する。
【0070】
上記のようにして表面にサンプル3が硬化したターゲット5を真空容器4内に装着して、真空容器4内を真空に引いて、真空容器4内の真空度が10−6Torr以下となるように設定する。
【0071】
次に、超短パルスレーザー1から出射された上記したパラメーターを備えた超短パルスレーザー光を、フォーカスレンズ2を用いて被検試料6上に集光して、被検試料6をアブレーションし、四重極質量分析器11によって、被検試料6への超短パルスレーザー光の照射により発生した1価のイオンの質量を測定する。この際に用いた超短パルスレーザー光の照射条件は、実施例1におけるものと同様とした。
【0072】
図6には、上記した手法により、四重極質量分析器11によって測定された試料の質量分析スペクトラムの一例を示す。
【0073】
なお、本発明によるレーザーアブレーションを用いた高分子の分析方法は、例えば、DNA、タンパク質、RNA,PNA脂質、糖などの各種の高分子の質量分析に用いることが可能である。また、前記各種の高分子に関しては、該高分子に元素標識を付けたものも同様に、レーザーアブレーションし、質量分析により解析することができるのはもちろんである。
【0074】
即ち、超短パルスレーザーにより単数又は複数の同位体元素で標識したタンパク質、アルブミン、DNAなどの高分子をアブレーションすることにより、高分子構成元素を完全に原子イオン化し、イオン化した標識元素を質量分析することにより高分子の定量測定を行うことができる。これにより、多種類の同位体元素を標識として使用することができるようになる。従って、質量分析することができる高分子の対象範囲を飛躍的に拡げることができるようになる。
【0075】
つまり、本発明によって、同位体元素で標識した高分子試料それ自体を原子レベルでイオン化し、標識元素を検出することが可能となるため、質量分析可能な対象範囲を飛躍的に広げることができるようになる。例えば、DNAの標識として、同位体元素を用いることが可能となり、標識の種類を例えば安定同位体元素の数である270にも増やすことができる。これは、従来の標識法である蛍光法(2種類)や放射性同位元素(約10種類)と比較して、飛躍的に情報量を増やすことができる。
【0076】
なお、前述した実施の形態においては、質量分析器として四重極質量分析器を用いるようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、原子の飛行時間を測定することにより質量分析を行う飛行時間質量分析器を用いた場合には、複数の原子の質量分析を同時に行うことができる。
【0077】
また、前述した実施の形態においては、高分子の分析方法として質量分析に関して説明したが、これに限られるものではないことは勿論であり、質量分析以外の分析に関しては本発明を用いるようにしてもよい。このような「質量分析以外の分析」の方法としては、例えば、 、 、
等が挙げられる。
【0078】
【発明の効果】
上述したように本発明のレーザーパワー制御装置をレーザーアブレーションを用いた高分子分析装置に適用することにより、分析対象となる目的高分子をアブレーションする超短パルスレーザー光の被検試料面への照射エネルギーを一定に制御することができ、安定な分析結果を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の質量分析装置構成の一例を示す模式断面図である。
【図2】本発明のレーザーパワー制御装置構成の一例を示す模式断面図である。
【図3】本発明の実施例で測定したサンプルの質量スペクトル測定結果を示すグラフである。
【図4】本発明の実施例で用いたサンプルに形成されたレーザー照射痕の深さと面積を測定した結果を示すグラフである。
【図5】本発明の四重極質量分析器によって測定したサンプル2の質量スペクトル測定した結果を示すグラフである。
【図6】本発明の四重極質量分析器によって測定したサンプル3の質量スペクトル測定した結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1…超短パルスレーザー(レーザー光源)
2…フォーカスレンズ
3…レーザー導入窓
4…真空容器
5…ターゲット
6…被検試料
7…付着防止板
8…受光手段
9…減衰フィルター
10…レーザーパワー制御装置
11…四重極質量分析器
12…I/V変換手段
13…レベル検出手段
14…レーザー強度比較手段
15…レーザー強度設定値
16…レーザー強度設定手段
17…飛散粒子
Claims (10)
- 分析の対象である高分子にレーザー光を照射して該高分子をアブレーションすることにより、高分子を構成元素に原子化し、原子化した構成元素をイオン化し、イオン化した構成元素を分析器に導入して分析する高分子用分析装置であって;
前記超短パルスレーザー光を出射可能なレーザー出力装置と、前記レーザー光の光軸上に配設され、前記分析対象となる高分子を装着するターゲットと、前記超短パルスレーザー光を受光する受光手段と、前記超短パルスレーザー光によりアブレーションされた原子の種類および/又は量を分析する分析器とを有し;
前記ターゲット、受光手段および分析器は密閉容器内に配設され、更に前記受光手段からの信号入力に基づいて、前記超短パルスレーザー光のパワーを制御するレーザーパワー制御装置を有するレーザーアブレーション高分子分析装置。 - 前記超短パルスレーザー光を、前記ターゲットを配設した密閉容器内に導入する導入窓を有し、且つ、
前記レーザーパワー制御装置が、前記受光手段から出力されるレーザー光受光電流を電圧に変換するI/V変換手段と、該I/V変換手段から出力される電圧信号により前記超短パルスレーザー光のピークレベルを検出するレベル検出手段と、予め設定されたレーザー強度比較値と前記レベル検出手段の出力値を比較するレーザー強度比較手段と、該レーザー強度比較手段の出力に応じて、前記レーザー出力装置から出射されるレーザー光強度が設定されるレーザー光強度設定手段とを有する請求項1記載のレーザーアブレーション高分子分析装置。 - 分析の対象である高分子にレーザー光を照射して該高分子をアブレーションすることにより、高分子を構成元素に原子化し、原子化した構成元素をイオン化し、イオン化した構成元素を分析するレーザアーアブレーションを用いた高分子の分析装置であって、分析対象となる高分子を固定した基板を装着するターゲットおよび前記超短パルスレーザー光の強度をモニタする受光手段が真空容器内に設置され、該真空容器と同一真空容器内に分析器が設置された請求項1または2に記載のレーザーアブレーション高分子分析装置。
- レーザーアブレーションにより構成元素に原子化された前記高分子の飛沫、塵埃が、前記受光手段の受光面に付着することを防止する付着防止板を前記受光手段前面に有し、
前記高分子のアブレーションおよび分析時には前記受光面を覆うように前記付着防止板を配置し;前記高分子のアブレーションおよび分析以外の時間で、かつレーザーパワー計測時に前記受光面を開放するように前記付着防止板を配置する付着防止板移動機構を有する請求項1記載のレーザーアブレーション高分子分析装置。 - 前記ターゲットが、アブレーションにより構成元素に原子化された前記高分子の飛沫、塵埃が前記受光手段の受光面に付着することを防止する付着防止板を兼ねている請求項4記載のレーザーアブレーション高分子分析装置。
- 前記受光手段の受光面の前面に、前記受光面に入射するレーザー光強度を減衰させる減衰フィルターが配置された請求項1記載のレーザーアブレーション高分子分析装置。
- 前記受光手段に入射するレーザーパルス幅を、前記高分子をアブレーションさせる超短パルスレーザー光のパルス幅より広く、直流までの間で可変できるパルス幅可変手段を有する請求項1記載のレーザーアブレーション高分子分析装置。
- 前記高分子が、元素標識されたものである請求項1〜7のいずれかに記載のレーザーアブレーション高分子分析装置。
- 前記高分子が、DNAマイクロアレイに定着された核酸または核酸の類似体である請求項8に記載のレーザーアブレーション高分子分析装置。
- 前記分析器が質量分析器である請求項1〜9のいずれかに記載のレーザーアブレーション高分子分析装置。
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WO2008038642A1 (fr) * | 2006-09-27 | 2008-04-03 | Riken | Procédé d'analyse d'échantillon et appareil d'analyse |
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JP2021009039A (ja) * | 2019-06-28 | 2021-01-28 | 株式会社エス・テイ・ジャパン | レーザーアブレーション用のセルおよび分析装置 |
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