JP4356063B2 - パターン製造装置およびパターン製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体材料を所望のパターン形状、特に微細なパターン形状に形成するためのパターン製造装置およびパターン製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ナノテクノロジーの発達とともに、ナノパーティクルやカーボンナノチューブあるいは自己組織化膜などのナノスケールの人工的な構造物が、所望のパターンにより形成される技術が提案されている。自己組織化膜が基板上にサブマイクロメーターの精度のパターニングされた状態で、液体材料であるシリコンナノパーティクルが基板上に供給されることにより、シリコンナノパーティクル層がパターニングされる技術が提案されている(たとえば特許文献1。)。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−353436号公報(第1頁ないし第5頁、図1)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このように、シリコンナノパーティクルに代表される液体材料が、所望のパターンによりマイクロコンタクトプリンティング法によりパターニングされる場合には、次のような問題がある。
すなわち、フィルムが凹凸部分を有しており、このフィルムの凹凸部分には有機分子の溶液が付着される。その溶液は、フィルムの凹凸部分から基板側に転写することにより、基板上には自己組織化膜が形成される。この自己組織化膜の間の基板領域上には、シリコンナノパーティクルが供給される。
このシリコンナノパーティクルが基板上に供給する手段としては、蒸着法やCVD(化学気相成長法)を用いている。
【0005】
このように、シリコンナノパーティクルのような液体材料を自己組織化膜の間の基板領域上に供給するには、蒸着を行う装置やCVD装置が必要となる。基板は蒸着装置やCVD装置内に装着していずれかの処理を行うことから、パターン製造時間に時間がかかってしまい、コスト高になってしまう。
そこで本発明は上記課題を解消し、液体材料によるパターンを製造する際に、製造工程を簡素化して製造時間を短縮し、したがってコストダウンを図ることができるパターン製造装置およびパターン製造方法を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、基板上に自己組織化膜のパターンを転写した後に液体材料を充填して乾燥させることで前記液体材料のパターンを製造するためのパターン製造装置であり、前記基板上に第1自己組織化膜を転写して前記第1自己組織化膜のパターンを形成するための自己組織化膜転写部と、前記基板の前記第1自己組織化膜のパターン内の前記基板領域に対応した凹部を有する本体を備え、前記本体の前記凹部には、前記液体材料の溶媒に対して撥液性を有する第2自己組織化膜が付着されており、前記凹部には前記液体材料を保持しており、前記凹部に保持された前記液体材料を前記第1自己組織化膜のパターン内の前記基板領域に転写して充填するための液体材料の充填部と、前記基板の前記第1自己組織化膜のパターン内に充填された前記液体材料を乾燥して焼成する加熱部と、を備えることを特徴とするパターン製造装置である。
【0007】
上記構成によれば、自己組織化膜転写部は、基板上に第1自己組織化膜を転写して第1自己組織化膜のパターンを形成する。
液体材料の充填部は、本体を備えている。この本体は、基板の第1自己組織化膜のパターン内の基板領域に対応した凹部を有している。この本体の凹部には、液体材料の溶媒に対して撥液性を有する第2自己組織化膜が付着されており、この凹部には液体材料を保持するようになっている。液体材料の充填部は、凹部に保持された液体材料を、第1自己組織化膜のパターン内の基板領域に転写して充填する。
加熱部は、基板の第1自己組織化膜のパターン内に充填された液体材料を乾燥して焼成する。
【0008】
これにより、まず自己組織化膜転写部は、基板上に第1自己組織化膜を転写して第1自己組織化膜のパターンを形成する。
液体材料の充填部の本体の凹部には、液体材料を保持する。この際に、液体材料は、凹部に保持されている。液体材料の充填部が、凹部に保持された液体材料を第1自己組織化膜のパターン内の基板領域に転写して充填する際には、凹部には撥液性を有する第2自己組織化膜があらかじめ付着されているので、凹部の液体材料は第1自己組織化膜のパターン内の基板領域側へ確実に転写して充填することができる。
このことから、簡単な構造でありながら、液体材料の充填部は、基板上の第1自己組織化膜のパターン内の基板領域に対して、確実にかつスムーズに液体材料を転写して充填できる。
このことから、パターン製造時における製造工程として蒸着装置やCVD装置が不要となり、液体材料のパターン製造時間を短縮して、コストダウンを図ることができる。
【0022】
第2の発明は、基板上に自己組織化膜のパターンを転写した後に液体材料を充填して乾燥させることで前記液体材料のパターンを製造するためのパターン製造方法であり、自己組織化膜転写部により前記基板上に第1自己組織化膜を転写して前記第1自己組織化膜のパターンを形成するための自己組織化膜転写ステップと、充填部を前記基板に対面させて、前記基板の前記第1自己組織化膜のパターン内の前記基板領域に対応した前記充填部の凹部には、前記液体材料の溶媒に対して撥液性を有する第2自己組織化膜が付着されており、前記充填部の前記凹部には前記液体材料を保持しており、前記充填部の前記凹部に保持された前記液体材料を前記第1自己組織化膜のパターン内の前記基板領域に転写して充填するための液体材料の充填ステップと、加熱部を用いて前記基板の前記第1自己組織化膜のパターン内に充填された前記液体材料を乾燥して焼成する加熱ステップと、を備えることを特徴とするパターン製造方法である。
【0023】
上記構成によれば、自己組織化膜転写ステップでは、自己組織化膜転写部が、基板上に第1自己組織化膜を転写して第1自己組織化膜のパターンを形成する。
液体材料の充填ステップでは、充填部が基板に対面されている。この充填部は、基板の第1自己組織化膜のパターン内の基板領域に対応した充填部の凹部には、液体材料の溶媒に対して撥液性を有する第2自己組織化膜が付着されている。充填部の凹部には液体材料が保持される。そして充填部の凹部に保持された液体材料は、第1自己組織化膜のパターン内の基板領域に転写して充填する。
加熱ステップでは、加熱部が基板の第1自己組織化膜のパターン内に充填された液体材料を乾燥して焼成する。
【0024】
これにより、まず自己組織化膜転写部は、基板上に第1自己組織化膜を転写して第1自己組織化膜のパターンを形成する。
液体材料の充填部の本体の凹部には、液体材料を保持する。この際に、液体材料は、凹部に保持されている。液体材料の充填部が、凹部に保持された液体材料を第1自己組織化膜のパターン内の基板領域に転写して充填する際には、凹部には撥液性を有する第2自己組織化膜があらかじめ付着されているので、凹部の液体材料は第1自己組織化膜のパターン内の基板領域側へ確実に転写して充填することができる。
このことから、簡単な構造でありながら、液体材料の充填部は、基板上の第1自己組織化膜のパターン内の基板領域に対して確実にかつスムーズに液体材料を転写して充填できる。
このことから、パターン製造時における製造工程として蒸着装置やCVD装置が不要となり、液体材料のパターン製造時間を短縮して、コストダウンを図ることができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明のパターン製造装置の好ましい実施形態を示している。このパターン製造装置10は、基板上に自己組織化膜のパターンを転写した後に、液体材料を充填して乾燥させることで、たとえば液晶表示装置の基板に透明電極のパターンを製造するための装置である。
【0030】
図2に示すのは、液晶表示装置のITO(Indium Tin Oxide)電極のパターン部分21の例を示す平面図である。液晶表示装置12の透明の基板20の表面20Aには、微細なパターン22が形成されている。この微細なパターン22は、微細な人工構造物と呼ぶこともできる。パターン22は、液体の焼成後に作られたITO電極パターン部分21を有している。各パターン部分21は、たとえば正方形状であり、寸法例として寸法L1が10μmであり、パターン部分21の間隔L2は1μmである。
【0031】
このように、図1に示すパターン製造装置10は、液晶表示装置の微細なITO電極パターン部分21を製造することができる。
パターン部分21を形成するために使用する液体材料としては、たとえばインジウムアセチルアセトナートIn(C5H7O2)とジーnブチルチンジアセタート(CH3(CH2)3)2Sn(OOCCH3)2の混合溶質を1:1でエタノールに溶解させ濃度0.1mol/lに調整したものや、ITOナノ粒子を分散させた溶液として使用する。
【0032】
図1に戻ると、パターン製造装置10は、概略的には自己組織化膜転写部30、液体材料の充填部31、加熱部33およびロード/アンロードユニット35を有している。
ロード/アンロードユニット35は、被処理対象物である基板20を、自己組織化膜転写部30、液体材料の充填部31、加熱部33に対して、E1,E2,E3,E4,E5方向に供給する。
自己組織化膜転写部30は、基板撥液処理ユニットなどとも呼んでいる。液体材料の充填部31は、液体材料パターン処理ユニットとも呼んでいる。加熱部33は乾燥処理ユニット37と焼成処理ユニット39を有している。
【0033】
ロード/アンロードユニット35は、基板20を、E1,E2,E3,E4およびE5に沿って、自己組織化膜転写部30、液体材料の充填部31、乾燥処理ユニット37および焼成処理ユニット39へ送ることができる。パターン製造された基板20は、再びロード/アンロードユニット35に対してE5方向に沿って戻すことができる。
【0034】
図3と図4は、図1に示す本発明のパターン製造装置10のより具体的な構造例を示している。
図3は、自己組織化膜転写部30を示している。図4(E)と図4(F)と図4(I)は、液体材料の充填部31を示している。図4(G)と図4(H)は、加熱部33を示している。
【0035】
まず図3(A)ないし図3(D)を参照して、自己組織化膜転写部30について説明する。
図3の自己組織化膜転写部30は、型部材40と操作部41を有している。図3(B)と図3(C)に示す型部材40は、凸部44と凹部45を有する部材である。型部材40の凸部44と凹部45は、図3(B)の容器42に収容された撥液材料43に浸漬することにより、図3(C)に示すように型部材40の凸部44と凹部45には第1自己組織化膜50を付着させるようになっている。図3(C)に示す操作部41は、型部材40を、容器42とロード/アンロードユニット35の間で移動するアクチュエータである。
【0036】
図3(A)に示すロード/アンロードユニット35の搭載面36には、被処理対象物である基板20が着脱可能に搭載されている。このロード/アンロードユニット35は、図3(C)に示すように型部材40に対面する位置に位置決めできるようにE1方向に移動できる。このロード/アンロードユニット35は、自己組織化膜転写部30の搭載部である。ロード/アンロードユニット35は、その内部にヒータ49を有している。
【0037】
図3(B)の型部材40は、たとえばCO2レーザやYAGレーザのレーザ光などにより、直接たとえばフィルムを加工することで形成することができる。このフィルムとしては、たとえばPDMS(ポリジメチルシロキサン)フィルムである。
このように、レーザ光により型部材40を加工することで、凸部44と凹部45を形成することによって、レジスト工程なしに容易に低コストで型部材40を作ることができる。
またレーザ光を用いれば、エネルギー密度(ショット数)を変化させることで、凹部45の溝深さや幅などをミクロン単位で任意に変えることも可能である。
【0038】
図3(B)の型部材40は、スタンプとも呼ぶことができる。型部材40はPDMSに限らずゴムやエラストマーにより作ることもできる。型部材40の材料は、弾性材料でありある程度の硬度があり、粘着しないため界面自由エネルギーが低く、インク吸収性があり、耐溶剤性などの機能が求められることになる。
型部材40の材質としては、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、スチレン―ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレン・プロピレンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴムなどの架橋型ゴムや、非架橋型である熱可塑性弾性体(TPE):ポリスチレン系(ポリスチレン)、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン)、ポリ塩化ビニル系(ポリ塩化ビニル)、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系エラストマーを用いることができる。
【0039】
図3(C)に示す第1自己組織化膜50は、たとえば図3(B)に示す撥液材料43であるが、撥液材料に代えて撥水材料でもよい。したがって第1自己組織化膜50は、撥液膜または撥水膜である。たとえばこの第1自己組織化膜50は、上述した液体材料の溶媒に対して撥液性を有する官能基をもつ有機分子材料である。この官能基としては、アルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、エポキシ基などの撥液/撥水特性を有しているものである。
上述した液体材料は、上述したITOナノ粒子や金属粒子を分散したもの、InやSnを含む有機錯体物質を含む溶液である。また液体材料は、第1自己組織化膜50のパターンの間の基板領域に充填された後に、適切な条件で乾燥して焼成することで、所望の物質のパターンを形成することができる材質を採用できる。
【0040】
図3(C)と図3(D)に戻ると、自己組織化膜転写部30では、操作部41の操作により型部材40が基板20の表面20Aに対して所定のパターンの第1自己組織化膜50を転写する。図3(D)に示すように、基板20の表面には、第1自己組織化膜50が所定のパターンで転写して形成される。
ヒータ49の発熱により、この転写された第1自己組織化膜50は基板上において即座に乾燥して固めることができる。
このことから、型部材40による第1自己組織化膜50の転写作業およびヒータ49による第1自己組織化膜50の加熱乾燥により、自己組織化膜転写作業の時間を短縮することができる。
【0041】
次に、図4(E)および図4(F)、図4(I)を参照しながら、液体材料の充填部31について説明する。
液体材料の充填部31は、本体70を有している。この本体70は、複数の凹部71を有している。各凹部71は、基板20側の第1自己組織化膜50のパターン60内の基板領域61に対応して形成された部分である。本体70は、たとえば図3(B)に示す型部材40と同様にして形成することができる。
【0042】
本体70の凹部71には、第2自己組織化膜74が付着されている。この第2自己組織化膜74は、第1自己組織化膜と同様の撥液膜もしくは撥水膜である。この各凹部71には、液体材料80が保持される。この液体材料80は、すでに説明した液体材料であり、図4(E)に示すように容器81の中にあらかじめ収容されている。
この液体材料80は、本体70の凹部71の第2自己組織化膜74内に浸漬法により収容される。液体材料80の量は、凹部71の収容量よりもやや多く保持されている。
第2自己組織化膜74が凹部71に形成されていることにより、液体材料80が凹部71から基板20表面の基板領域61側に移る機能を促進でき、液体材料80の転写する作業を容易にすることができる。
【0043】
ここで、図4(I)を参照しながら、容器81内から本体70の凹部71内に液体材料80を移して保持させるための液体材料の浸漬法について簡単に説明する。
容器81内には、液体材料80が収容されている。本体70の凹部71側が液体材料80に対して浸漬される。そして、本体70を液体材料80から引き上げることにより、液体材料80は、各凹部71内に移って保持される。この場合に、液体材料80の量は、凹部71の容量よりもやや多く保持されて、液体材料80の表面が下に向けて凸状のメニスカスを形成する。
そして、図4(F)に示すように、各基板領域61内に凹部71から液体材料80が所定量転写される。
【0044】
図4は、加熱部33を示している。加熱部33は、乾燥処理ユニット37と焼成処理ユニット39を有している。
乾燥処理ユニット37は、図4(G)に示すように基板領域61内の液体材料80を乾燥させて液体材料80中の溶媒を飛ばすためのものである。図4(H)に示す焼成処理ユニット39は、乾燥された液体材料80を焼成して固める。乾燥処理ユニット37が液体材料80を加熱する際の温度はたとえば100℃であり、焼成処理ユニット39が液体材料80を焼成する際の温度はたとえば400℃である。
焼成処理ユニット39は、好ましくは基板20の上面側と下面側に配置する。これによって、より短時間で液体材料80を焼成して、液体材料の焼成後のパターン部分21を作ることができる。
【0045】
次に、上述したパターン製造装置10を用いて、本発明の液体材料のパターン製造方法について説明する。
図3は、本発明のパターン製造方法の自己組織化膜転写ステップST1を示しており、図4(E)と図4(F)、図4(I)は、液体材料の充填ステップST2を示し、図4(G)および図4(H)は、加熱ステップST3を示している。
【0046】
自己組織化膜転写ステップST1
このステップでは、図3(A)に示すようにロード/アンロードユニット35の搭載面36に処理対象物である基板20を搭載する。このロード/アンロードユニット35は、基板20を図3(C)に示すように、型部材40に対面する位置に移動する。
一方、図3(B)に示すように、型部材40は容器42内のたとえば撥液材料43に浸漬されることにより、図3(C)に示すように、スタンプである型部材40の凸部44には第1自己組織化膜50が形成される。
【0047】
次に、型部材40は操作部41の操作により、Z方向に移動されることにより、型部材40の凸部44の第1自己組織化膜50が基板20の表面20Aに対して図3(D)に示すように転写される。転写された第1自己組織化膜50は、予め図2に一部を例示する定められた所定パターンで形成されていて、ヒータ49により基板20を加熱することにより、第1自己組織化膜50が加熱されて乾燥される。
【0048】
このようにして、第1自己組織化膜50は基板20に対して型部材40を用いて転写することにより、簡単に転写して形成することができるとともに、ヒータ49により加熱することにより、即座に第1自己組織化膜50のパターンが確定する。
これによって、自己組織化膜転写ステップをスムーズかつ短時間で行うことができる。
なお、ヒータ49が加熱する温度としてはたとえば100℃である。また型部材40の凸部44は、基板20の表面20Aに対して押し付けることで第1自己組織化膜50を転写するのが望ましい。これにより、確実に第1自己組織化膜50を基板20の表面20Aに転写することができるのである。
【0049】
液体材料の充填ステップST2
充填ステップST2では、図4(E)に示すように、予め液体材料の充填部31の本体70の凹部71に対して液体材料80が保持されている。本体70と基板20が対面する位置に配置される。
図4(E)に示すように、本体70の凹部71内には、たとえば図4(I)の浸漬法により毛細管現象を利用して予め液体材料80が保持されている。各凹部71の液体材料80は、第1自己組織化膜50のパターン60内の基板領域61にそれぞれ対面している。
【0050】
そして本体70がZ1方向に押し下げられることにより、各凹部71の液体材料80は、各基板領域61に転写することができる。基板20の表面には第1自己組織化膜50が予め形成されているので、所定のパターンに形成された基板領域61内に液体材料80を確実に転写することができる。図4(F)は、各基板領域61内に液体材料80が供給された状態を示している。
【0051】
加熱ステップST3
図4(G)に示す乾燥処理ユニット37は、基板20の液体材料80をたとえば100℃で加熱することにより、液体材料80の溶媒を飛ばす。そして図4(H)に示すように焼成処理ユニット39が、液体材料80を加熱することにより液体材料の焼成後のパターン部分21を形成することができる。この場合の焼成温度はたとえば400℃である。
乾燥処理ユニット37と焼成処理ユニット39は、たとえば赤外線(IR)ヒータを使用することができる。
液体材料80が転写後、加熱して乾燥および焼成されることにより、パターン部分21は所望のパターン形状、膜厚および膜質を得ることができる。
【0052】
図5は、図4(E)と図4(F)における液体材料の充填ステップST2において、特に好ましい充填方法を示している。
図5(A)に示すように、第1自己組織化膜50のパターン60の基板領域61、すなわち第1自己組織化膜50が形成されていない基板の表面には、あらかじめ親液膜76が形成されている。この親液膜76が形成されていることにより、液体材料80が基板領域61へ吸着する能力を確保することができ、液体材料80が基板領域61に確実に吸着した状態を確保する。
このことによって、液体材料80は基板領域61に確実に保持されるので、図4(F)の状態から図4(G)に示すように充填ステップから加熱ステップに基板20が移動される場合であっても、液体材料80が基板領域61から外部に移動してしまうのを確実に防げる。
【0053】
図4(I)の液体材料の充填ステップST2では、充填部31の本体70の凹部71に対して液体材料80がいわゆる浸漬法により充填して保持されている。これに対して図6は、液体材料がいわゆるキャップコート(Cap Coat)法により凹部71に充填する例を示している。
図6(I)に示すキャップコート法に用いるキャップコート装置100は、容器101とノズル102を有している。容器101の中には液体材料80が収容されている。ノズル102は容器101内の液体材料80を毛細管現象により本体70の各凹部71に対して充填する構造である。
【0054】
図7と図8は、このキャップコート装置100の具体的な構造例を示している。
図7(A)に示すようにキャップコート装置100は、カバー103を備えている。カバー103は操作部105により、図7(B)に示すようにG方向に移動することで、容器101の開口部104を開けることができる。開口部104の中にはノズル102の先端部が位置できるように、ノズル102はZ2方向に上昇可能である。
液体材料の充填部31の本体70は、操作部110の動作によりX方向に直線移動可能になっている。操作部110と操作部105は制御部113により制御される。
【0055】
次に、図7と図8を参照しながら、キャップコート法により本体70の各凹部71に対して液体材料80を注入して保持させる動作について簡単に説明する。
図7(A)では、操作部110が本体70をX方向に移動する。これと同時に図7(B)に示すようにカバー103がG方向に移動するとともに、ノズル102がZ1方向の上昇される。
【0056】
図7(C)に示すように、本体70はX方向に移動することにより、ノズル102が毛細管現象により液体材料80を本体70の凹部71に供給していく。
図8(D)と図8(E)に示すように、各凹部71に液体材料80が充填された後に、ノズル102がZ1方向に下がるとともに、図8(F)のようにカバー103が開口部104を閉じる。
このようにして、液体材料80は各凹部71に充填して保持させることができる。
上述したように、凹部71内への液体材料80の充填は図4(E)に示す浸漬法に代えて、キャップコート法を用いることができる。
【0057】
次に、本発明のパターン製造装置とパターン製造方法の別の実施形態について説明する。
図9に示すのは、図4(E)に示す液体材料の充填部31の別の実施形態である。図9に示す液体材料の充填部31は、本体170と液体材料充填促進部200を有している。
本体170は、複数の凹部71を有しているが、この本体170は、各凹部71に対応する位置に細い貫通した孔171を有している。各孔171は、凹部71と本体170の面173に通じる貫通孔である。各凹部71の内面には、図4(E)の場合と同様にして、第2自己組織化膜74が形成されていることは同じである。
【0058】
図9(B)に示す液体材料充填促進部200は、本体170の面173に対面する位置に設けられる。液体材料充填促進部200は、ヒータ部材175を有している。このヒータ部材175は、図9(B)に示すように凹部71内に保持されている。液体材料80を、図9(C)に示すように、加熱することにより第1自己組織化膜の基板領域61側に対して積極的に移して転写させる機能を有している。
【0059】
図9(A)に示すように、本体170の凹部71が容器81内の液体材料80内に浸漬されることにより、孔171の毛細管現象により、液体材料80の液面が上昇する。これによって、液体材料80は、図9(B)に示すように凹部71内に容易に収容して保持することができる。
そして図9(B)のヒータ部材175を作動して凹部71内の液体材料80を加熱することにより、液体材料80は熱膨張を起こす。
これによって、液体材料80は、図9(C)に示すように基板20側の基板領域61に対して積極的に押し出されることにより簡単にかつ短時間で確実に転写することができる。ヒータ部材175により凹部71内の液体材料80の温度を調整することにより、液体材料80が基板領域61側に供給される量の調整も可能である。
【0060】
図10は、本発明の液体材料の充填部31のさらに別の実施形態を示している。
図10に示す液体材料の充填部31は、図9に示す液体材料の充填部31のヒータ175に代えて、開閉弁250、圧力室251および圧力調整部253を備えている点が異なる。
図10に示す液体材料の充填部31のその他の部分は、図9の液体材料の充填部31と同様であるのでその説明を用いる。
【0061】
図10(A)に示す液体材料の充填部31の本体170の面173には、圧力室251が配置されている。圧力室251の内部には、複数の開閉弁250が設けられている。各開閉弁250は、孔171を開閉するためのものである。各開閉弁250は弁操作部255により開閉操作できる。
圧力室251は、孔171と開閉弁250をすべて収容することができ、圧力調整部253により内部の圧力が調整できるようになっている。
各開閉弁250は、細孔である孔171に対面した位置にあり、孔171を開閉できる。
【0062】
図10(B)において、圧力調整部253が、圧力室251を減圧して負圧にすることで、液体材料80が凹部71内に入り込む量を調整することが可能である。この際には、弁操作部255は開閉弁250を操作して各孔171を開けている。
所定量の液体材料80が図10(B)に示すように凹部71内に収容して保持された状態では、所定の高さのメニスカス高さKを保持している。
各開閉弁250は弁操作部255により孔171を閉鎖すると、液体材料80がメニスカス高さKによる液面の保持をすることができる。
【0063】
図10(C)に示すように、圧力調整部253が圧力室251内を加圧する。この際には、本体170は基板20に対面している。各凹部71は基板領域61に対応した位置にある。この状態で圧力調整部253が圧力室251に圧力をかけるとともに、開閉弁250は孔171を開けた状態になっている。
これによって、圧力室251内の圧力により、各凹部71内の液体材料80は、各基板20側の各基板領域61側にスムーズかつ短時間で移して転写することができる。つまり液体材料80は凹部71から基板領域61側に対して積極的に押し出されることにより転写されるのである。
これによって、液体材料の転写時間を短時間にすることができる。
【0064】
図10に示す圧力調整部253は、たとえば小型のコンプレッサーを用いることができ、圧力媒体としてはたとえばガスを用いることができる。図11は、液体材料の充填部31のさらに別の実施形態を示している。
図9と図10に示す液体材料の充填部31は、容器内の液体材料80に対して本体の凹部を浸漬することにより、液体材料80を凹部71内に充填して保持する構造である。
【0065】
これに対して図11の液体材料の充填部31と図12に示す液体材料の充填部31の各実施形態は、浸漬法を用いるものではない。
図11に示す液体材料の充填部31は、本体170、液体材料供給室310、液体収容部313、そして液体吐出ヘッド315,317を備えている。
液体材料供給室310は、本体170の孔171を収容するようにして本体170の面173に設けられている。液体材料供給室310の中には液体材料80が供給されるようになっている。液体材料供給室310と液体収容部313の間には、パイプ370,371が設けられている。パイプ370には液体吐出ヘッド315が設けられている。パイプ371には液体吐出ヘッド317が設けられている。
【0066】
液体吐出ヘッド315を作動させることにより、液体材料供給室310内の液体材料80がパイプ370を通じて液体収容部313側に戻されるようになっている。これに対して、液体吐出ヘッド317を作動することにより、パイプ371を介して液体収容部313内の液体材料80が液体材料供給室310側に供給されるようになっている。
液体吐出ヘッド315,317は、たとえばいわゆるインクジェット式ヘッドを用いることができる。
【0067】
液体吐出ヘッド315を作動させることにより、本体170の凹部71内における液体材料80のメニスカス高さKを制御することができる。
図11(B)に示すように本体170の凹部71が基板20の基板領域61に対面された状態で、液体吐出ヘッド317を作動させることにより、液体材料供給室310への圧力を高めて、液体材料80が基板領域61側に供給される量を調整しながら、基板領域61側に液体材料80を移してスムーズかつ素早く転写させることができる。
これにより液体材料の転写速度を速めることができる。
【0068】
図12に示す液体材料の充填部31は、本体170、液体材料供給室310、液体収容部313および電磁弁360を備えている。液体収容部313は、上下動操作部320によりZ方向に高さ位置を調整することができる。すなわち液体収容部313は、上下動操作部320の作動により、本体170の基準位置LLに対してZ1方向に上昇したりZ2方向に下降したりできる。
【0069】
液体材料供給室310は本体170の面173において各孔171を収容するようにして設けられている。液体材料供給室310と液体収容部313の間にはパイプ327が設けられている。電磁弁360はパイプ327の途中に設けられている。電磁弁360は、制御部からの指令により、パイプ327の途中を開けたり閉鎖することができる。
【0070】
図12(A)に示す基準位置LLは、本体170の面173の位置である。
図12(B)に示すように液体収容部313がZ1方向に押し上げられた状態では、電磁弁360がパイプ327を開くことにより、液体収容部313内の液体材料80が液体材料供給室310側に供給される。
図12(B)および図12(C)に示すように、液体収容部313の位置を基準位置LLに対してZ1方向に上昇させたりあるいはZ2方向に下降させたりすることにより、凹部71内の液体材料80のメニスカス高さKを調整することができる。
基板20の基板領域61に対して凹部71の液体材料80を対面させた状態で、図12(B)に示すように液体収容部313をZ1方向に持ち上げることにより、液体材料供給室310側に圧力が加わり、凹部71内の液体材料80は基板領域61側にスムーズかつ素早く移して転写することができる。
【0071】
このようにして、液体収容部313の高さ方向の位置を、液体材料供給室310に対して相対的に変更することにより、容器170の凹部71内の液体材料80は、確実に基板20側の基板領域61に転写することができる。
なお、各実施形態において、凹部71内の液体材料80のメニスカス高さKは、たとえばセンサーにより非接触で検出することも可能である。
【0072】
本発明のパターン製造装置10は、たとえば図2に示す基板20の表面20Aに対してたとえばITO電極パターン部分21を形成する際に液体材料80を所定のパターンに従って形成することができる。この所定のパターンはたとえば図2に一部を示していて、パターン部分21は、ミクロンオーダーの微細パターンである。
本発明のパターン製造装置10は、基板上に自己組織化膜のパターンを転写した後に液体材料を充填して乾燥させることで液体材料のパターンを製造するのであるが、このパターンは特に微細パターンである。
本発明のパターン製造装置と製造方法は、従来用いられているような蒸着装置やCVD装置などが不要であり、製造時のエネルギー削減の観点からも優れている。
【0073】
本発明のパターン製造装置およびパターン製造方法では、たとえば液晶表示装置に用いられるITO電極パターン部分21を液体材料を用いて形成している。しかしこれに限らず、本発明は、電子機器であって、光学素子、配線、電極などを含む各種の電子機器、あるいは電子デバイスを製造する際に用いることができる。
本発明の製造装置および製造方法は、液体材料を用いた構造物、特にたとえば1μm程度の微細構造物の形成に対して有効であり、電子機器もしくは電子デバイスの配線や素子、あるいはディスプレイ装置の画素やディスプレイ装置のカラーフィルター、そして光学素子の形成に対して使用できる。
【0074】
本発明のパターン製造装置および製造方法では、基板の表面に対して第1自己組織化膜を転写する際には、自己組織化膜転写部材を用いている。そして、基板上に形成された第1自己組織化膜の間の基板領域に対して液体材料を供給する場合には、液体材料の充填部31が用いられていて、この液体材料の充填部31が基板領域61側に液体材料80を移して転写している。
このため、簡単な装置構成でありながら、図2に示すようなパターン部分21が精度良く短時間で作れる。
【0075】
これにより、基板20の表面20Aの面において、第1自己組織化膜を転写し、その後充填部が液体材料を基板領域に転写するだけである。つまり基板の表面でこのような処理を施すことが可能になることから、蒸着装置やCVD装置などに基板を移して処理する必要もなく、短時間で精度良くパターン形成ができる。図2に示す基板20のサイズとしては、たとえば8インチサイズのものであっても第1自己組織化膜を基板上に形成しそして第1自己組織化膜の間の基板領域に対して液体材料を転写する作業が一括して精度良く行える。
【0076】
自己組織化膜転写部は、基板上に第1自己組織化膜を転写して第1自己組織化膜のパターンを形成する。液体材料の充填部の本体の凹部には、液体材料を保持する。
この際に、液体材料は、凹部に保持されている。液体材料の充填部が、凹部に保持された液体材料を第1自己組織化膜のパターン内の基板領域に転写して充填する際には、凹部には、液体材料の溶媒に対して撥水性を有する第2自己組織化膜が付着されているので、凹部の液体材料は第1自己組織化膜のパターン内の基板領域側へ確実に転写して充填することができる。
このことから、簡単な構造でありながら、液体材料の充填部は、基板上の第1自己組織化膜のパターン内の基板領域に対して確実にかつスムーズに液体材料を転写して充填できる。このことから液体材料のパターン製造時におけるコストダウンを図ることができる。
【0077】
自己組織化膜転写部のヒータは、搭載部に搭載された基板上の第1自己組織化膜を加熱することができ、第1自己組織化膜は、即時に乾燥して形成することができる。このことからパターン製造時間を短縮できる。
充填部の液体材料充填促進部が設けられていることにより、本体の凹部内の液体材料を、基板の第1自己組織化膜のパターン内の基板領域側へ移して充填する時間を短縮することができる。このことからパターン製造時間を短縮できる。
【0078】
液体材料充填促進部は、たとえばヒータ部材である。このヒータ部材は、充填部の凹部に通じるように本体に形成された孔を介して凹部内の液体材料の熱膨張を起こして、液体材料を凹部から基板の第1自己組織化膜のパターン内の基板領域へスムーズにかつ即座に移して転写することができる。これによって、パターン製造時間を短縮できる。
第1自己組織化膜のパターン内の基板領域に供給された液体材料は、基板上の親液膜により確実に基板領域へ吸着して保持させることができる。
第1自己組織化膜50と第2自己組織化膜74は、たとえば同じ材質のものを使うことができ、撥液膜もしくは撥水膜である。
【0079】
本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。
上記実施形態の各構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のパターン製造装置の好ましい実施形態を示す平面図。
【図2】 本発明のパターン製造装置により製造されるパターン例を示す平面図。
【図3】 自己組織化膜転写部の例を示す図。
【図4】 液体材料の充填部および加熱部の例を示す図。
【図5】 液体材料の充填ステップにおいて、基板領域に親液膜が形成された例を示す図。
【図6】 図4(E)の浸漬法に代えてキャップコート法の例を示す図。
【図7】 キャップコート法の構造例を示す図。
【図8】 図7に続いてキャップコート法の構造例を示す図。
【図9】 本発明のパターン製造装置の液体材料の充填部の別の実施形態を示す図。
【図10】 本発明のパターン製造装置の液体材料の充填部のさらに別の実施形態を示す図。
【図11】 本発明のパターン製造装置の液体材料の充填部のさらに別の実施形態を示す図。
【図12】 本発明のパターン製造装置の液体材料の充填部のさらに別の実施形態を示す図。
【符号の説明】
10・・・パターン製造装置、20・・・基板(処理対象物)、30・・・自己組織化膜転写部、31・・・液体材料の充填部、33・・・加熱部、50・・・第1自己組織化膜、61・・・第1自己組織化膜のパターン内の基板領域、70・・・液体材料の充填部の本体、71・・・本体の凹部、74・・・第2自己組織化膜、80・・・液体材料
Claims (2)
- 基板上に自己組織化膜のパターンを転写した後に液体材料を充填して乾燥させることで前記液体材料のパターンを製造するためのパターン製造装置であり、
前記基板上に第1自己組織化膜を転写して前記第1自己組織化膜のパターンを形成するための自己組織化膜転写部と、
前記基板の前記第1自己組織化膜のパターン内の前記基板領域に対応した凹部を有する本体を備え、前記本体の前記凹部には、前記液体材料の溶媒に対して撥液性を有する第2自己組織化膜が付着されており、前記凹部には前記液体材料を保持しており、前記凹部に保持された前記液体材料を前記第1自己組織化膜のパターン内の前記基板領域に転写して充填するための液体材料の充填部と、
前記基板の前記第1自己組織化膜のパターン内に充填された前記液体材料を乾燥して焼成する加熱部と、
を備えることを特徴とするパターン製造装置。 - 基板上に自己組織化膜のパターンを転写した後に液体材料を充填して乾燥させることで前記液体材料のパターンを製造するためのパターン製造方法であり、
自己組織化膜転写部により前記基板上に第1自己組織化膜を転写して前記第1自己組織化膜のパターンを形成するための自己組織化膜転写ステップと、
充填部を前記基板に対面させて、前記基板の前記第1自己組織化膜のパターン内の前記基板領域に対応した前記充填部の凹部には、前記液体材料の溶媒に対して撥液性を有する第2自己組織化膜が付着されており、前記充填部の前記凹部には前記液体材料を保持しており、前記充填部の前記凹部に保持された前記液体材料を前記第1自己組織化膜のパターン内の前記基板領域に転写して充填するための液体材料の充填ステップと、
加熱部を用いて前記基板の前記第1自己組織化膜のパターン内に充填された前記液体材料を乾燥して焼成する加熱ステップと、
を備えることを特徴とするパターン製造方法。
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