JP4355810B2 - 新規エンドグリコセラミダーゼ - Google Patents
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Description
本発明は、新規なEGCaseをコードする遺伝子及びそのホモログ、すなわち下記の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)又は(g)を含有するポリヌクレオチドを提供する:
(a)配列番号:15に記載の塩基配列の全部又は少なくともORF部分を含む一部からなるポリヌクレオチド;
(b)(a)に記載のポリヌクレオチドの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつエンドグリコセラミダーゼ(EGCase)活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(c)(a)に記載のポリヌクレオチドの塩基配列において1若しくは複数の塩基が置換、欠失、挿入、及び/又は付加された塩基配列からなり、かつエンドグリコセラミダーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(d)(a)に記載のポリヌクレオチドの塩基配列と少なくとも80%以上の同一性を有し、かつエンドグリコセラミダーゼ活性を有するタンパク質コードするポリヌクレオチド;
(e)配列番号:16に記載のアミノ酸配列の全部又は少なくともシグナル配列部分を除いた部分を含む一部からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(f)(e)に記載のタンパク質のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加したアミノ酸配列からなり、かつエンドグリコセラミダーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(g)(e)に記載のタンパク質のアミノ酸配列と少なくとも80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつエンドグリコセラミダーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
本発明のポリヌクレオチドは、好ましくは、Rhodococcus属に属する菌(好ましくは、Rhodococcus equi、より好ましくは、Rhodococcus equi M-750菌株)由来である。
本発明はまた本発明のポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質又はそのホモログ、すなわち下記の(e')、(f')又は(g')のタンパク質を提供する:
(e')配列番号:16に記載のアミノ酸配列の全部又は少なくともシグナル配列部分を除いた部分を含む一部からなるタンパク質;
(f')(e')に記載のタンパク質のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加したアミノ酸配列からなり、かつエンドグリコセラミダーゼ活性を有するタンパク質;
(g')(e')に記載のタンパク質のアミノ酸配列と少なくとも80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつエンドグリコセラミダーゼ活性を有するタンパク質。
(ア)スフィンゴ糖脂質に作用し、糖又は糖鎖−セラミド間の結合を加水分解的に切断して、糖又は糖鎖とセラミドとを生成することができ;
(イ)β-ガラクトシルセラミド結合を有するスフィンゴ糖脂質を加水分解することができるが、β-グルコシド結合を有するスフィンゴ糖脂質は分解せず;
(ウ)37℃で作用することができ;
(エ)至適pHは5.5〜6.0であり;かつ
(オ)分子量は約54 kDaである(測定は、SDS-PAGEによる。なお、本明細書で分子量をいうときは、特別な場合を除き、SDS-PAGEで測定した場合の値をいう)。
本発明のエンドグリコセラミダーゼ(EGCase)の酵素学的性質を以下に説明する。
(1) 作用
本発明のEGCaseは、スフィンゴ糖脂質に作用し、糖−セラミド間の結合を、加水分解的に切断することができる。
β-ガラクトシルセラミド結合を有するスフィンゴ糖脂質には作用し、加水分解することができる。本明細書の実施例に示した条件では、β-グルコシルセラミド結合を有するスフィンゴ糖脂質は作用しなかった。また、本明細書の実施例に示した条件では、β-ガラクトシド結合を有するスフィンゴ糖脂質であっても、ガングリオ系のGM4及びスルファチドには作用しなかった。
サイコシンにも作用することができる。
本発明者らは、本発明のEGCaseの至適温度の検討を10〜80℃の範囲で行った。その結果、40℃付近において、もっとも強い活性が見られた(データ示さず)。本発明のEGCaseは、37℃付近でよく作用することができる。最適pHは5.5〜6.0付近にある。
(4) 糖転移反応
本発明のEGCaseは、1−アルカノールへの糖転移反応も触媒しうる。特に、本明細書の実施例に示した条件では、TGCからメタノール、1−ヘキサノール、1−オクタノールへの糖の転移を高効率で触媒した。
本発明のEGCaseは、Rhodococcus属(好ましくは、Rhodococcus equi、より好ましくは、Rhodococcus equi M-750菌株)に属する菌の培養上清から、以下の手順で精製することができる。
(1)培養上清を80%硫酸アンモニウムで沈殿させ、その沈殿を緩衝液(例えば、20 mM 酢酸ナトリウム、pH6.0に0.1%のルブロールPXを加えたもの)で懸濁する。
(2)懸濁液を疎水性カラムにかけて、緩衝液(例えば、上記の20 mM 酢酸ナトリウム、pH6.0。以下同じ。)に溶出有効濃度の界面活性剤(例えば、1%のルブロールPX)を加えたもので溶出させ、TGC分解活性のある画分を回収する。
(3)活性画分を、弱陰イオン交換カラムにかけ、緩衝液に溶出有効濃度の塩(例えば、1M NaCl)を加えたもので溶出させ、TGC分解活性のある画分を回収する。
(4)活性画分に2価金属イオン(例えば、Cu2+イオン)をキレートし、キレート化疎水性カラムにかけ、緩衝液に溶出有効濃度の塩(例えば、2MのNH4Cl)を加えたもので溶出させ、活性画分を回収する。
(5)活性画分を脱塩する。例えば、疎水性カラムにかけ、緩衝液に溶出有効濃度の界面活性剤(例えば、0.5%ルブロールPX)を加えたもので溶出させ、活性画分を回収することによる。
(6)活性画分を弱陰イオン交換カラムにかけ、グラジエント溶媒を用いて、TGCを分解するEGCaseと、GM1aを分解する従来のEGCaseを分ける。この工程により、TGCを分解するEGCaseと、GM1aを分解する従来のEGCaseを分けることができる。例えば、上述の緩衝液と、1M NaClを含んだその緩衝液でグラジエント(0−20%/20 分)をかけ、次いで20%の混合液を40分流すことによる。
(7)所望により、さらに活性画分を緩衝液で平衡化した強陰イオン交換カラムにかけ、グラジエント溶媒(例えば、上述した緩衝液の混合液を用い、0−20%/20分、20−60%/250分)を用いて、活性画分を回収する。これを精製品とする。
本発明は、糖鎖・セラミド間がβ-ガラクトシド結合により構成される糖脂質(ガラ系糖脂質)に作用するEGCaseを提供するが、これにより、以前から得られているガングリオ系、グロボ系、ラクト系の糖脂質に作用する酵素との組み合わせで、すべての糖脂質から糖鎖を切り離すことができる。また、本発明のEGCaseは、ガラ系列の糖脂質の構造解析及び機能解析、並びにガラ系列の糖脂質の特異的な検出方法に応用することができる。また、ガラ系列糖脂質は病原性のカビに存在し、病原性との関連が疑われているが、ガラ系列の糖脂質は、病原性カビの分類にも使える可能性がある。したがって、本発明は、本発明のタンパク質、加水分解酵素、又はEGCaseを用いることを特徴とする、ガラ系列糖脂質の解析方法及び検出方法を提供する。
本明細書では、以下の略語を用いている。
bp : base pair
Cer : ceramide
CDS : ceramide disaccharide
CTS : ceramide trisaccharide
CTeS : ceramide tetrasaccharide
EGCase : endoglycoceramidase
Gal : galactose
GalCer : galactosylceramide
Glc : glucose
GlcCer : glucosylceramide
GSL(s) : glycosphingolipid(s)
LacCer : lactosylceramide
NBD : 4-nitrobenzo-2oxa-1,3-diazole
NeuAC: N-acetylneuraminic acid
ORF : open reading frame
PAGE : polyacrylamide gel electrophoresis
PCR : polymerase chain reaction
TBS : tris buffered seline
TGC : neogalatriaosylceramide (trigalactosylceramide)
TLC : thin-layer chromatography
材料
LA Taq、TAKARA LA PCR in vitro Cloning Kitはタカラバイオ株式会社より、プラスミドpET22bはNovagenより、制限酵素とLigation-Convenience KitはNippon Geneより、シリカゲル60TLCプレートはMerckより購入した。
放線菌Rhodococcus equi M-750は、Rhodococcus sp. G-74-2の変異株として単離した(Ito, M. and Yamagata, T. J. Biol. Chem.264, 9510-9519)。本菌は 、従来の方法(前掲非特許文献4)にて培養し、ゲノムDNAを抽出した(Saito, H., and Kimura, H. (1963) Biochem.Biophys. Acta. 72, 619-629)。大腸菌DH5α、BL21(λDE3)はタカラバイオ株式会社より購入した。
精製は、以下の手順で行った。
(1)培養上清(1.8L)を80%硫酸アンモニウムで沈殿させ、これを8000rpm、30min、4℃で遠心し、その沈殿を170 mLのバッファーA(20 mM 酢酸ナトリウム、pH6.0に0.1%のルブロールPXを加えたもの)で懸濁させた。
(2)これをバッファーAで平衡化した疎水性カラムOctyl-Sepharose CL-4B (200 ml, Amersham Bioscience, Uppsala, Sweden) にかけて、バッファーAに1%のルブロールPXを加えたもので溶出させ、TGC分解活性のある画分(270ml、100mg)を回収した。
(3)活性画分を、バッファーAで平衡化した弱陰イオン交換カラムDEAE-Sepharose FF (70 ml, Amersham Bioscience)にかけ、バッファーAに1M NaClを加えたもので溶出させ、TGC分解活性のある画分(75ml、31mg)を回収した。
(4)活性画分をCu2+イオンをキレートし、バッファーAに2MのNaClを加えたもので平衡化したChelating-Sepharose FF column(30 ml, Amersham Bioscience)にかけ、バッファーAに2MのNH4Clを加えたもので溶出させ、活性画分(175ml、12mg)を回収した。
(5)活性画分を脱塩するために疎水性カラムのOctyl-Sepharose FF (70 ml, Amersham Bioscience)にかけ、バッファーAに0.5%ルブロールPXを加えたもので溶出させ、活性画分(110ml)を回収した。
(6)活性画分をバッファーAで平衡化した、弱陰イオン交換カラムであるDEAE-5PW (7 ml, Tosoh Co., Tokyo, Japan)にかけ、バッファーAに1M NaCl を含んだもの(バッファーB)でグラジエント(0−20%/ 20 分)をかけ、次いで20%のバッファーBを40分流した。この過程により、TGCを分解するEGCaseと、GM1aを分解する従来のEGCaseを分けることができた。活性画分(110ml、5.6mg)を回収した。
(7)活性画分をバッファーAで平衡化した強陰イオン交換カラムPOROS HQ (10 ml, PE-Biosystems, USA)にかけ、バッファーBでグラジエント(0−20% 20分、20−60% 250分)をかけ、活性画分(80ml、0.016mg)を回収した。これを精製品とした。
精製したサンプルをクリーブランド法 (Cleveland, D. W. (1977) J. Biol. Chem. 252, 1102-1106)により、V8及びlysylendopeptidase AP-1 (Wako)で消化し、PVDF膜にブロッティングしCoomassie Brilliant Blueを用いて染色した。染色されたスポットを切り取りプロテインシーケンサー(Procise 49X-cLC;PE-Biosystems)にかけアミノ酸配列を決定した。
新規EGCase遺伝子獲得のため、精製酵素の部分アミノ酸配列より縮重プライマーを設計した。C-1479-S1(5’-GGNGCNAAYGTNAAYGG-3’配列番号:1)をセンスプライマーに、C-1485-A1(5’-TARAANGCYTGRAANGC-3’配列番号:2)をアンチセンスプライマーに、Rhodococcus equi M-750のゲノムDNAを鋳型にしてPCRを行った。PCRはGeneAmp PCR system 9700 (PE Biosystems)にて35サイクル(98 oC 10秒、アニーリング温度50oC 1分、伸張温度 72oC 30秒)をLA Taqを用いて行った。増幅産物をpGEM T-eazy ベクター (Promega)にサブクローニングし、塩基配列を決定した。
塩基配列はBigDye Terminater Cycle Seaquencing Ready Reaction Kit (PE Biosystems)とDNAシーケンサー(model 377A;Applied Biosystems)を用いたジデオキシ法にて決定した。アガロースゲルからのDNA抽出、菌体からのプラスミド抽出などは従来の方法(Sambrook, H., Fritsch, E. F., and Maniatis, T. (1989) A Laboratory Manual, 2nd. edn., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY)を参考にした。
ゲノムDNAをBamH1で完全に消化し、これに対応するTAKARA LA PCR in vitroCloning Kitに付属のカセットとライゲーションさせた。これを鋳型とし、カセットに相補的なプライマーと遺伝子の部分塩基配列と相補的な、5’末端決定プライマーEGCBamA1(5’-GTTGGACGCGTAGTCGTTG-3’配列番号:3)、及び3’末端決定プライマーEGCBamS1(5’-TCAGATCGGACGCTTCTACC-3’配列番号:4)を用いてGeneAmp PCR system 9700にて25サイクル(94 oC 30秒、アニーリング温度56oC 30秒、伸張温度 72oC 1分)PCRを行い、増幅産物をpGEM T-eazy ベクターにサブクローニングし、塩基配列を決定した。
塩基及びアミノ酸配列の解析はDNASIS ソフトウェア(Hitachi Software Engineering)にて行った。同一性のあるアミノ酸配列の検索はBLAST(Altschul, S. F., Gish, W., Miller, W., Myers, E. W., and Lipman, D. J. (1990) J. Mol.Biol. 215, 403-410)にて行った。アミノ酸配列のアラインメントはCLUSTAL W(Thompson, J. D., Higgins, D. G., and Gibson, T. J. (1994) Nucleic Acids Res. 22, 4673-4680)及びJALVIEW(Clamp, M., Cuff, J., Searle, S. M., and Barton, G. J. (2004) Bioinformatics. 20, 426-427)にて行った。
rEGC3-S2(5’-GGAAGCTTTCTCCGGTGCCGTCGGAC-3’ 配列番号:5)をセンスプライマーに、rEGC3-HisA(5’-GGCGGCCGCGAGTGTGGTGACCGAGTAC-3’ 配列番号:6)をアンチセンスプライマーにしてPCRを行った。rEGC3-S2は下線で示すようにHindIIIサイトを、rEGC3-HisAは下線で示すNotIサイトを含む。PCRはGeneAmp PCR system 9700にて25サイクル(98 oC 1 分、アニーリング温度56oC 30秒、伸張温度 72oC 2分)をLA Taqを用いて行った。増幅産物をHindIII、NotI処理し、同様の制限酵素で処理したpET22bにライゲーションし、発現コンストラクトpETrEGCとした。
pETrEGCを用いて形質転換させた大腸菌BL21(λDE3)を100μg/mlのアンピシリンを含むLuria-Bertani(LB(+))培地5 mlにて37oC、12時間振とう培養した。200 mlのLB(+)培地に移し、O. D. 600が約0.5になるまで振とう培養し、IPTG (isopropyl β-D-thiogalactoside) を終濃度0.1 mMになるように添加して発現を誘導した後、さらに5時間振とう培養した。培養液を8000 gで10分遠心し、菌体ペレットを100 mlの30 mM Tris-HCl pH 8 20%スクロースに完全に懸濁させ、60 μlの0.5 M EDTA, pH 8 (最終濃度1 mM) を加え、室温で10分間、穏やかに撹拌させた。4℃、10,000 × gで10分間遠心して集菌、上清を除去し、氷冷した100 ml の5 mM MgSO4にペレットを完全に懸濁し、この細胞懸濁液を氷中で緩やかに10分間撹拌させた。4℃、10,000 × gで10分間遠心して、浸透圧ショックを行った細胞を沈殿させ、上清を回収し、これをペリプラズム画分とした。ペリプラズム画分をNi2+でキレートしたHiTrap Chelating HPカラムにかけ、0.5 M NaCl、0.2 % Triton X-100、25 mMイミダゾールを含む20 mM リン酸バッファー pH7.4 で洗浄した。リコンビナント酵素は0.5M NaCl、0.2%Triton X-100、100 mMイミダゾールを含む20 mM リン酸バッファー pH7.4にて溶出させた。これを50 mM 酢酸ナトリウムバッファー pH 5.5に透析した。タンパク量はBSAをスタンダードとしてBCA法にて測定した。
酵素アッセイの反応系は、10 nmolの糖脂質、0.2%のTriton X-100、適量の酵素を含んだ50 mM 酢酸ナトリウムバッファー、pH 5.5 20 μlで構築した。以後の反応は37oCで行った。
最適pHを求めるために、TGCを基質として、50 mM 酢酸ナトリウムバッファー (pHレンジ 3-6)、50 mM リン酸バッファー ( pHレンジ 6〜8)を用い、上記の方法で反応系を構築した。金属イオンの影響を調べるため、様々な金属イオン(Fe3+、Fe2+、Zn2+、Mg2+、Ca2+、Co2+、Na+、Cu2+、Co2+、Mn2+、Hg2+)及びEDTAをそれぞれ5 mM添加した。基質特異性を調べるために、GT1b、GD1a、GM1a、Gb4Cer、Gb3Cer、LacCer、GalCer、GlcCer、GM4、GL-4、CDS、CTS、CTeSを基質として、それぞれ10 nmol使用した。
SDS-PAGEはLaemmliの方法に準じて行った。タンパクは12.5%のSDS-PAGEにて分離し、Coomassie Brilliant Blueを用いて染色した。Low-moleculer-mass SDS-PAGE calibration kit (Amersham Pharmacia Biotech)をスタンダードとして用いた。Western blottingのために、タンパクを12.5%のSDS-PAGEにて分離し、semi-dry blotter (Bio-Rad)を用いてニトロセルロース膜に転写した。膜を3%スキムミルク入りのTBSにて1時間ブロッキングを行い、0.02%のTween 20入りのTBSにて3回洗浄後、抗His 抗体 (Invitrogen)と2時間、室温で反応させた。これを0.02%のTween 20入りのTBSにて3回洗浄後、horseradish peroxidase-conjugated anti-mouse IgG抗体と1時間半、室温で反応させた。これを0.02%のTween 20入りのTBSにて3回洗浄後、peroxidase-stain kit (ナカライテスク株式会社)により発色させた。
反応系は、10 nmolの糖脂質、0.2%のTriton X-100、0.5 mUの酵素、20%の1-アルカノールを含んだ50 mM 酢酸ナトリウムバッファー、pH 5.5を20 μlスケールで構築した。これを37oCで1時間反応させ、スピードバックにより乾燥、メタノールに溶解させTLCプレートにアプライし、クロロホルム/メタノール/0.02%CaCl2=5/4/1にて展開させた。糖脂質とオリゴ糖、そしてアルキルグルコシドはオルシノール硫酸によって発色させ、Shimadzu CS-9300クロマトスキャナーにて、540 nmにセットしたreflectanceモードで発色強度を測定した。
反応系は、10 nmolの糖脂質、0.2%のTriton X-100、0.5 mUの酵素、1 nmolのC12-NBD-Cerを含んだ50 mM 酢酸ナトリウムバッファー、pH 5.5を20 μlスケールで構築した。また、この反応系にacetoneを添加した系を構築した。これらを37oCで1時間反応させ、スピードバックにより乾燥、メタノールに溶解させTLCプレートにアプライし、クロロホルム/メタノール/0.02%CaCl2=5/4/1にて展開させた。UV照射により蛍光標識を検出した。また、糖脂質、遊離オリゴ糖はオルシノール硫酸で検出した。
アミノ酸シーケンス
様々なカラムクロマトグラフィーにより、SDS-PAGE上でシングルバンドと確認された精製サンプルを用いてアミノ酸シーケンスを行った。その結果、表1で示す部分アミノ酸配列(配列番号:7〜14)を獲得した。
ペプチド断片C-1479、C-1485から得られたアミノ酸配列から設計した縮重プライマーC-1479-S1とC-1485-A1によるPCRを行い431 bpの特異的な増幅産物を得た。この増幅産物の配列中にはペプチド断片C-1479、C-1482、C-1485が確認された。遺伝子の全長を獲得するために、この遺伝子部分配列より新たにプライマーEGCBamA1、EGCBamS1を設計し、TAKARA LA PCR in vitro Cloning Kitを用いたPCRにより遺伝子全長を獲得した (図1)。
新規EGCaseの塩基配列(配列番号:15)及び推定アミノ酸配列(配列番号:16)を図1Aに示す。新規EGCaseの遺伝子は1464 bpのORFからなり、488アミノ酸をコードする。推定アミノ酸配列から、分子量は52299、pIは4.28と算定された。疎水性プロット(Kyte, J., and Doolittle, R. F. (1982) J. Mol. Biol. 157, 105-132)により、N末端にシグナル配列と思われる疎水性の高い22アミノ酸残基が確認された(図1B)。シグナル配列を除くと、分子量は50186と算定された。
発現コンストラクトpETrEGCを用いて、大腸菌BL21(λDE3)を形質転換させ、そのペリプラズム画分を調製し、これをHiTrap Chelating HPカラムにかけた。精製したリコンビナント新規EGCase (rEGCase)をSDS-PAGEに供したところ、分子量54 kDaと推定されるシングルプロテインバンドを検出した (図3A)。His-Tagを用いたWestern blottingによりこのプロテインバンドは、発現コンストラクトに由来するものであることを確認した (図3B)。rEGCaseは基質にβ-ガラクトシド結合をもつTGCをオリゴ糖とセラミドに加水分解したが、β-グルコシド結合をもつGM1には作用しなかった (図4)。一方で、Rhodococcus sp.由来の従来のEGCaseはTGCに対しては作用せず、GM1に対して強い加水分解活性を示した。このことから、本研究でクローニングに成功した酵素は、従来報告のあるEGCaseとは全く異なるものであることが示された。rEGCaseの比活性は6 U/mgであり、収量は1 Lカルチャーあたり4 mgであった。
TGCを基質としてrEGCaseの諸性質検討を行った。最適pHは5.5〜6.0であった(図5A)。界面活性剤の影響をみたところ、0.1 %のTriton X-100及びLubrol PXにより活性が大幅に上昇することを確認した (図5B)。金属イオンの影響は、Hg2+添加により活性は全消失し、Fe3+では約50%、Zn2+、Cu2+では90%ほど活性の低下が見られた (図5C)。その他の金属イオン及びEDTAはrEGCase活性に大きな影響を及ぼさなかった。そしてHanes-Wools plotsにより求めたKmは0.43 mM、Vmaxは87.8 pmol/min、Kcatは800 min-1、Kcat/Kmは1860.5 min-1・mM-1であった。
rEGCaseをケカビ由来のβ-ガラクトシド結合をもつ糖脂質CDS、CTS、CTeSに作用させたところ、TGC同様に加水分解反応を示した(図6、表2)。また、活性は弱いものの、GalCer及びサイコシンにも作用することが判明した(図6、表2)。一方で、β-グルコシド結合を有する糖脂質には長時間反応させたにも関わらず全く活性を示さなかった(表2)。
rEGCaseとTGCを1-アルカノール存在下で反応させると、TLCプレート上にTGC由来オリゴ糖ともTGCともRf値の異なる新たなバンドが検出された(図7)。これはTGC由来オリゴ糖が1-アルカノールに転移されて生じたものと考えられる。rEGCaseは加水分解のみならず、糖転移反応も触媒することが判明した。特にメタノール、1-ヘキサノール、1-オクタノールには反応率45〜47 %という高効率で転移が起こった(表3)。それに対し、1-プロパノールは糖転移反応はもとより、加水分解反応への阻害すらも認められた。
蛍光標識された糖脂質は、糖脂質の機能解析や糖脂質に作用する酵素の高感度アッセイ系の構築に大いに役立つ。rEGCaseの糖転移反応は蛍光標識セラミドもアクセプターとするのか試した。その結果、rEGCaseとTGC、C12-NBD-Cerそしてアセトンを15%添加した反応系において、糖転移反応の結果生じたと考えられるC12-NBD-TGCのバンドが確認された(図8)。
Claims (10)
- 下記の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)又は(g)を含有するポリヌクレオチド:
(a)配列番号:15に記載の塩基配列の全部又は少なくともORF部分を含む一部からなるポリヌクレオチド;
(b)(a)に記載のポリヌクレオチドの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつエンドグリコセラミダーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(c)(a)に記載のポリヌクレオチドの塩基配列において1〜9個の塩基が置換、欠失、挿入、及び/又は付加された塩基配列からなり、かつエンドグリコセラミダーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(e)配列番号:16に記載のアミノ酸配列の全部又はシグナル配列部分を除いた部分を少なくとも含む一部からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(f)(e)に記載のタンパク質のアミノ酸配列において1〜9個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加したアミノ酸配列からなり、かつエンドグリコセラミダーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。 - Rhodococcus属に属する菌由来である、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
- 下記の(e')、(f')又は(g')のタンパク質:
(e')配列番号:16に記載のアミノ酸配列の全部又はシグナル配列部分を除いた部分を少なくとも含む一部からなるタンパク質;
(f')(e')に記載のタンパク質のアミノ酸配列において1〜9個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加したアミノ酸配列からなり、かつエンドグリコセラミダーゼ活性を有するタンパク質。 - Rhodococcus equi M-750(FERM AP-20926)の培養上清より得られる、以下の性質を有する、加水分解酵素:
(ア)スフィンゴ糖脂質に作用し、糖又は糖鎖−セラミド間の結合を加水分解的に切断して、糖又は糖鎖とセラミドとを生成することができ;
(イ)β-ガラクトシルセラミド結合を有するスフィンゴ糖脂質を加水分解することができるが、β-グルコシルセラミド結合を有するスフィンゴ糖脂質は分解せず;
(ウ)37℃で作用することができ;
(エ)至適pHは5.5〜6.0であり;かつ
(オ)分子量は約54 kDaである。 - 請求項3に記載のタンパク質、又は請求項4に記載の加水分解酵素を用いることを特徴とする、ガラ系糖脂質の解析又は検出方法。
- 請求項3に記載のタンパク質、又は請求項4に記載の加水分解酵素を用いることを特徴とする、糖脂質又は糖鎖の処理方法。
- 請求項3に記載のタンパク質、又は請求項4に記載の加水分解酵素を用いることを特徴とする、糖脂質の製造方法。
- 請求項1に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
- 請求項8に記載のベクターにより形質転換された、形質転換菌。
- 請求項9に記載の形質転換菌を用いることを特徴とする、請求項3に記載のタンパク質、又は請求項4に記載の加水分解酵素を製造する方法。
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