以下、添付図面を参照して、本発明に係るパターン描画装置、パターン描画方法、情報記録媒体製造用原盤の製造方法、および情報記録媒体の製造方法の最良の形態について説明する。
最初に、電子ビーム描画装置1の構成について、図面を参照して説明する。
電子ビーム描画装置(以下、「描画装置」ともいう)1は、本発明におけるパターン描画装置に相当し、図1に示すように、X−Y移動機構2、ターンテーブル3、ビーム発生部4、ブランキング制御部5、ビーム成形部6、ビーム偏向器7、制御部8および記憶部9を備えて、ビーム発生部4によって電子ビームEB(本発明における描画用ビームの一例)を出力して基材10に情報記録媒体製造用の露光パターンP(図4参照)を描画可能に構成されている。この場合、基材10は、スタンパー11(本発明における情報記録媒体製造用原盤の一例:図11参照)を製作するための支持体であって、図2に示すように、円板状のSiウエハ10aの表面に樹脂層10b(一例として、電子ビーム感光性を有するネガ型レジストを塗布して形成したレジスト層)が形成されている。この場合、樹脂層10bの厚みは、一例として100nm程度に規定されている。
また、基材10を用いて製作されるスタンパー11は、図3に示すディスクリートトラック型の磁気記録媒体15(本発明における情報記録媒体の一例)を製造するための原盤であって、後述するように、描画装置1によって樹脂層10bに描画された露光パターンPを現像して形成した凹凸パターンP1(図9参照)を転写することによって製作される。さらに、スタンパー11を使用して製造される磁気記録媒体15は、磁気記録媒体15を回転させるモータや、磁気記録媒体15に対する記録データの記録再生を実行する記録再生ヘッドH(記録ヘッドおよび再生ヘッドが形成された浮上式ヘッドスライダ)などと共に筐体内(図示せず)に収容されて、磁気記録装置(ハードディスクドライブ)を構成する。この場合、図3に示すように、この磁気記録装置では、回転中心O15を中心として磁気記録媒体15を矢印Bの向きで回転させつつ、回動中心OHを中心としてアームAを矢印Cの方向に回動させることで、記録再生ヘッドHを磁気記録媒体15上の所定の半径位置に移動させて磁気記録媒体15に対する記録データの記録再生を行う構成が採用されている。
この場合、図3に実線で示すように、記録再生ヘッドHが磁気記録媒体15におけるディスク中央部MDの中央部トラックMTにオントラックしている状態では、記録再生ヘッドHの幅方向に対して平行な線分と、中央部トラックMTの幅方向に対して平行な線分とが互いに平行となる。一方、同図に一点鎖線で示すように、記録再生ヘッドHがディスク外周部ODの外周側トラックOTにオントラックしている状態では、記録再生ヘッドHの幅方向に対して平行な線分と、外周側トラックOTの幅方向に対して平行な線分との間にスキュー角θOが生じる。また、同図に二点鎖線で示すように、記録再生ヘッドHがディスク内周部IDの内周側トラックITにオントラックしている状態では、記録再生ヘッドHの幅方向に対して平行な線分と、内周側トラックITの幅方向に対して平行な線分との間にスキュー角θIが生じる。
この場合、この磁気記録媒体15では、後述するように、同心円状に形成された各トラックにオントラックさせるためのバーストパターン、トラック番号およびセクター(サーボパターンエリア)番号などの各種情報を特定可能なサーボパターンが、磁性層に形成された凹凸パターンによって形成されている。したがって、サーボパターンを構成する各パターンの正確な読み取りを可能とするためには、磁気記録媒体15のディスク外周部ODおよびディスク内周部IDにおけるスキュー角θO,θIの存在を考慮して、各パターンの幅方向の辺と、記録再生ヘッドHの読み取り幅方向とを磁気記録媒体15の全面(全域)においてそれぞれ一致させる必要がある。具体的には、図4に示すように、中央部トラックMT,MT・・のサーボパターンPSM,PSM・・については、各パターンPSM1,PSM2・・をそれぞれほぼ矩形に形成することで各パターンPSM1,PSM2・・における幅方向の辺と、記録再生ヘッドHの読み取り幅方向とを一致させることができる。
これに対して、外周側トラックOT,OT・・のサーボパターンPSO,PSO・・については、各パターンPSO1,PSO2・・における幅方向の辺と、記録再生ヘッドHの読み取り幅方向とを一致させるために、各パターンPSO1,PSO2・・にスキュー角θOを付与してそれぞれ平行四辺形に形成する必要がある。また、内周側トラックIT,IT・・のサーボパターンPSI,PSI・・については、各パターンPSI1,PSI2・・における幅方向の辺と、記録再生ヘッドHの読み取り幅方向とを一致させるために、各パターンPSI1,PSI2・・にスキュー角θIを付与してそれぞれ平行四辺形に形成する必要がある。なお、磁気記録媒体15では、一例として、一つのトラックにつき(磁気記録媒体15の一回転当りに)200箇所のサーボパターンエリアが規定されて各サーボパターンエリア内に1つのサーボパターンがそれぞれ形成され、磁気記録媒体15が一回転する間に記録再生ヘッドHを介して200箇所のサーボパターンが読み取られてトラッキングサーボ制御される。
一方、X−Y移動機構2は、本発明における移動機構に相当し、ターンテーブル3によって回転させられる基材10の回転面に沿ってターンテーブル3を移動させる。ターンテーブル3は、本発明における回転機構に相当し、基材10を載置可能に構成されて制御部8の制御下で描画速度が一定の線速度(一例として、230mm/s)となるように基材10を回転させる。また、ターンテーブル3は、本発明における基準信号生成部に相当し、その内部でテーブルの回転に同期して生成する信号(一例として、一回転あたり36000パルスのパルス信号:本発明における内部信号)に基づいて基材10の回転に同期した基準信号S1を生成して、一例として、基材10を一回転させる間に基準信号S1を200回(磁気記録媒体15の一回転当りにおけるサーボパターンエリアの数)出力する。ビーム発生部4は、ブランキング制御部5と相俟って本発明におけるビーム出力部を構成し、基材10における樹脂層10bに露光パターンPを描画するための電子ビームEBを生成して出力する。ブランキング制御部5は、ビーム発生部4による電子ビームEBの出力を制御部8の制御に従ってON/OFF制御する。ビーム成形部6は、ビーム成形レンズおよびアパーチャ(図示せず)などを備えて、ビーム発生部4によって出力された電子ビームEBをその有効描画幅が一例として30nm程度となるように成形(細径化)する。この場合、図6に示すように、この描画装置1では、例えばサーボパターンPSOにおけるパターンPSO1を描画する際に、その有効描画幅がパターンPSO1の幅よりも狭い電子ビームEB(一例として、その有効描画幅がパターンPSO1の幅の1/8程度の電子ビームEB)を照射してパターンPSO1を8回に分けて描画する。なお、データトラックパターンPDO等(図6参照)については、そのトラック幅TWがサーボパターンPSO等の幅よりも狭いため、上記の電子ビームEBを照射して4回に分けて描画する。ビーム偏向器7は、ビーム成形部6によって成形された電子ビームEBを制御部8の制御に従って偏向して、樹脂層10bに対する照射位置を変化させる。
制御部8は、X−Y移動機構2を制御してターンテーブル3と共に基材10を移動させると共に、ターンテーブル3を制御して基材10を回転させる。また、制御部8は、ターンテーブル3(基準信号生成部)によって出力される基準信号S1に応じて、ビーム発生部4、ブランキング制御部5およびビーム偏向器7を制御することにより、ターンテーブル3によって回転させられている基材10の樹脂層10bの所定位置に電子ビームEBを照射させる。記憶部9は、基材10に描画すべき露光パターンPの描画手順を特定可能な描画手順データDPを記憶する。この場合、描画手順データDPには、基準信号S1が出力されてからブランキング制御部5に対して電子ビームEBの照射を開始させるまで待機時間を各サーボパターン毎に特定可能な情報と、各サーボパターンを構成する各パターンのトラック方向に沿った長さ(すなわち、ブランキング制御部5によって電子ビームEBをON制御する時間)を特定可能なデータとが記録されている。
次に、描画装置1によって基材10に露光パターンPを描画する方法について、図面を参照して説明する。
まず、樹脂層10bの形成面を上向きにして基材10をターンテーブル3の上に載置する。次に、制御部8が図5に示す描画処理20を開始する。この描画処理20では、制御部8は、まず、ターンテーブル3を制御して所定の描画位置(半径位置)において所望する描画速度(線速度)となるように基材10を回転させる(ステップ21)。次いで、制御部8は、X−Y移動機構2を制御してターンテーブル3と共に基材10をその半径方向に移動させることにより、基材10に対する露光パターンPの描画開始位置がビーム発生部4の直下に位置するように位置決めする(ステップ22:以下、この移動処理を「半径方向の位置決め」ともいう)。この場合、この描画装置1では、一例として、磁気記録媒体15のディスク外周部ODに対応する部位から露光パターンPの描画を開始する。したがって、制御部8は、X−Y移動機構2を制御して、ビーム発生部4の直下に基材10の外周部が位置するように半径方向の位置決めを行う。次に、制御部8は、ターンテーブル3によって基準信号S1が出力されたか否かを監視すると共に(ステップ23)、基準信号S1が出力されたときには、描画手順データDPに従い、描画対象のサーボパターンPSOの描画を開始するまでの待機時間が経過したか否かを判別する(ステップ24)。
具体的には、図6に示すように、この描画装置1では、例えばサーボパターンPSOのうちのパターンPSO1を描画する際に、このパターンPSO1をその幅方向で分割した描画領域PSO11〜PSO18の8つの領域毎に描画する。したがって、制御部8は、記憶部9に記憶されている描画手順データDPに従い、まず、樹脂層10bに対する電子ビームEBの照射位置が矢印O1で示す位置となるようにビーム偏向器7を制御すると共に、基準信号S1が出力された時刻t0から描画領域PSO11の描画を開始する時刻t11sが到来するまでの時間t1wだけ待機した後に、ブランキング制御部5に電子ビームEBのON/OFF制御(電子ビームEBの出力および出力停止の制御)を開始させる(ステップ25)。なお、同図では、電子ビームEBの照射位置を矢印O1〜O8の向きに移動させているように図示しているが、実際には、基材10が同図の右から左に向けて移動(回転)させられることによって電子ビームEBの照射位置が基材10に対して相対的に移動する。次に、制御部8は、電子ビームEBの出力を開始させてから描画領域PSO11の描画を終了する時刻t11eが到来するまでの時間t11onだけブランキング制御部5に電子ビームEBを出力させた後に、時刻t11eが到来した時点でブランキング制御部5に電子ビームEBの出力を停止させる。これにより、描画領域PSO11の描画が完了する。
次いで、制御部8は、描画手順データDPに従い、パターンPSO2における描画領域PSO21の描画を開始する時刻t12sが到来するまでの時間t11offだけ待機した後に、時刻t12sが到来した時点でブランキング制御部5に電子ビームEBの出力を開始させ、時刻t12eが到来した時点でブランキング制御部5に電子ビームEBの出力を停止させる。これにより、描画領域PSO21の描画が完了する。この後、制御部8は、パターンPSO3,PSO4・・(図4参照)についても同様にして最初の描画領域を描画する。次に、制御部8は、1つのサーボパターンエリア内のサーボパターンPSO(およびデータトラックパターンPDO)の部分描画が完了した時点で、基材10の一回転当り(一周当たり)に描画すべき各サーボパターンPSO,PSO・・における各描画領域の描画が完了したか否かを判別し(ステップ26)、完了していないと判別したとき(描画すべき各サーボパターンPSO,PSO・・が存在すると判別したとき)には、ステップ23に戻って基準信号S1の出力を監視する。この際に、ターンテーブル3によって基準信号S1が出力された際には、制御部8は、上記のサーボパターンPSOについての描画処理と同様にして、描画が開始されていないサーボパターンPSOにおけるパターンPSO1,PSO2・・の描画領域PSO11,PSO21・・を描画する。
一方、基材10の一回転当たりに描画すべき各描画領域の描画が完了したときには(ステップ26)、制御部8は、基材10に描画すべき露光パターンP全体の描画が完了したか否かを判別し(ステップ27)、完了していないと判別したときには、X−Y移動機構2を駆動させずに次の各描画領域をビーム偏向器7による電子ビームEBの偏向によって描画可能か否かを判別する(ステップ28)。この際に、描画可能と判別したときには、制御部8は、記憶部9に記憶されている描画手順データDPに従い、樹脂層10bに対する電子ビームEBの照射位置が図6に矢印O2で示す位置となるようにビーム偏向器7を制御する(ステップ29)。なお、この例では、ビーム偏向器7による偏向によって電子ビームEBの照射位置を変更する構成を採用しているが、ビーム偏向器7は必ずしも必要ではなく、X−Y移動機構2によるターンテーブル3(基材10)の移動によって電子ビームEBの照射位置を変更する構成を採用することもできる。この構成を採用した場合には、上記のステップ28,29に代えて前述したステップ22を実行する。
次に、制御部8は、ターンテーブル3によって基準信号S1が出力された時刻t0から描画領域PSO12の描画を開始する時刻t21sが到来するまでの時間t2wだけ待機した後に、ブランキング制御部5に電子ビームEBのON/OFF制御を開始させる(ステップ25)。次いで、制御部8は、電子ビームEBの出力を開始させてから描画領域PSO12の描画を終了する時刻t21eが到来するまでの時間t21onだけブランキング制御部5に電子ビームEBを出力させた後に、時刻t21eが到来した時点でブランキング制御部5に電子ビームEBの出力を停止させる。これにより、描画領域PSO12の描画が完了する。
この場合、記憶部9に記憶されている描画手順データDPには、基材10の1回転目において基準信号S1が出力されてから描画領域PSO11の描画を開始する時刻t11sまでの時間t1wよりも、基材10の2回転目において基準信号S1が出力されてから描画領域PSO12の描画を開始する時刻t21sまでの時間t2wを時間toだけ短時間とする旨の情報が記録されている。この場合、時間toについては、前述したスキュー角θOの存在を考慮して、描画領域PSO11の描画開始位置と描画領域PSO12の描画開始位置とを結ぶ線分が、外周側トラックOTにオントラックした記録再生ヘッドHの幅方向に対して平行となるように規定されている。したがって、図6に示すように、この描画手順データDPに従って描画される描画領域PSO12は、時間toの間に基材10が移動する距離だけ描画領域PSO11よりも手前側(基準信号S1が出力された時刻t0におけるビーム発生部4の直下の位置に近い側)に描画される。この結果、描画領域PSO11,PSO12にスキュー角θOに対応する位置ずれが生じる。
次いで、制御部8は、パターンPSO2における描画領域PSO22を描画させる。この後、制御部8は、パターンPSO3,PSO4・・(図4参照)についても同様にして2番目の描画領域を描画する。次に、制御部8は、1つのサーボパターンエリア内のサーボパターンPSO(およびデータトラックパターンPDO)の部分描画が完了した時点で、基材10の一回転当りに描画すべき各サーボパターンPSO,PSO・・における各描画領域の描画が完了したか否かを判別し(ステップ26)、完了していないと判別したときには、ステップ23に戻って基準信号S1の出力を監視する。また、ターンテーブル3によって基準信号S1が出力された際には、制御部8は、上記のサーボパターンPSOについての描画処理と同様にして、描画領域PSO12,PSO22・・を描画する。これらの一連の部分的描画処理(ステップ23〜29)を基材10が例えば8回転する間に亘って繰り返して実行する。
なお、この描画装置1では、サーボパターンPSOを構成する各パターンにおける幅方向の一部(上記の例における描画領域PSO13,PSO23・・等)についての描画処理が完了した後に、次にサーボパターンPSOを描画すべきサーボパターンエリアとの間に形成するデータトラックパターンPDO(図6参照)におけるトラック幅TWの一部についての描画処理を実行する。この場合、データトラックパターンPDOの描画処理については、サーボパターンPSO等の描画処理と同様であり、後述するように、サーボパターンPSOの描画およびデータトラックパターンPDOの描画が交互に連続して実行される。これにより、各パターンPSO1,PSO2・・における描画領域PSO18,PSO28・・の描画が完了した際に、1つ目のトラックについての各サーボパターンPSO,PSO・・およびデータトラックパターンPDO,PDO・・の描画が完了する。以下、理解を容易とするために、主としてサーボパターンの描画処理について説明する。
次に、制御部8は、2つ目のトラック(各サーボパターンPSO,PSO・・の描画が完了したトラックよりも内周側のトラック)についての各サーボパターンPSO,PSO・・を描画する際に、ビーム偏向器7による電子ビームEBの偏向によって各描画領域PSO11,PSO21・・の描画が困難と判別したときには(ステップ28)、X−Y移動機構2を制御して半径方向の位置決めを行う(ステップ22)。この後、制御部8は、上記のステップ23〜29の一連の処理を繰り返して実行することにより、2つ目のトラックについての各サーボパターンPSO,PSO・・およびデータトラックパターンPDO,PDO・・を描画する。また、制御部8は、3つ目以降の各トラックについても同様にして各サーボパターンPSO,PSO・・およびデータトラックパターンPDO,PDO・・を描画する。この場合、描画手順データDPには、内周側のトラックほど、前述した時間toが短時間となる旨が記録されている。したがって、描画されたサーボパターンPSO,PSO・・は、内周側のトラックほどパターンPSO1,PSO2・・に付与されたスキュー角θOが小さくなる。
一方、中央部トラックMTに対応するトラックについてのサーボパターンPSM,PSM・・を描画する際には、ターンテーブル3によって基準信号S1が出力されたか否かを検出すると共に(ステップ23)、基準信号S1が出力されたときには、描画手順データDPに従い、描画対象のサーボパターンPSMの描画を開始するまでの待機時間が経過したか否かを判別する(ステップ24)。具体的には、図7に示すように、制御部8は、まず、樹脂層10bに対する電子ビームEBの照射位置が矢印M1で示す位置となるようにビーム偏向器7を制御すると共に、基準信号S1が出力された時刻t0から描画領域PSM11の描画を開始する時刻t11sが到来するまでの時間t1wだけ待機した後に、ブランキング制御部5に電子ビームEBのON/OFF制御を開始させる(ステップ25)。次に、制御部8は、電子ビームEBの出力を開始させてから描画領域PSM11の描画を終了する時刻t11eが到来するまでの時間t11onだけブランキング制御部5に電子ビームEBを出力させた後に、時刻t11eが到来した時点でブランキング制御部5に電子ビームEBの出力を停止させる。これにより、描画領域PSM11の描画が完了する。
次いで、制御部8は、描画手順データDPに従い、パターンPSM2における描画領域PSM21を描画する。同様にして、制御部8は、パターンPSM3,PSM4・・(図4参照)についても同様にして最初の描画領域を描画する。次に、制御部8は、基材10の一回転当りに描画すべき各サーボパターンPSM,PSM・・における各描画領域の描画が完了したか否かを判別し、一回転当たりに描画すべき各描画領域の描画が完了したときには(ステップ26)、基材10に描画すべき露光パターンP全体の描画が完了したか否かを判別する(ステップ27)。また、露光パターンP全体の描画が完了していないと判別したときには、制御部8は、次の各描画領域をビーム偏向器7による電子ビームEBの偏向によって描画可能か否かを判別し(ステップ28)、描画可能と判別したときには、樹脂層10bに対する電子ビームEBの照射位置が矢印M2で示す位置となるようにビーム偏向器7を制御する(ステップ29)。
次に、制御部8は、ターンテーブル3によって基準信号S1が出力された時刻t0から描画領域PSM12の描画を開始する時刻t11sが到来するまでの時間t1wだけ待機した後に、ブランキング制御部5に電子ビームEBのON/OFF制御を開始させる(ステップ25)。この場合、サーボパターンPSMの描画時には、スキュー角θO,θIを付与する必要がないため、制御部8は、描画領域PSM11の描画に際して待機した時間t1wと同じ時間だけ待機して描画領域PSM12の描画を開始する。同様にして、描画領域PSM22を描画した後に、制御部8は、パターンPSM3,4・・(図4参照)についても同様にして2番目の描画領域を描画する。次に、制御部8は、1つのサーボパターンエリア内のサーボパターンPSMの部分描画が完了した時点で、基材10の一回転当りに描画すべき各サーボパターンPSM,PSM・・における各描画領域の描画が完了したか否かを判別し(ステップ26)、完了していないと判別したときには、ステップ23に戻って基準信号S1の出力を監視する。また、ターンテーブル3によって基準信号S1が出力された際には、制御部8は、上記のサーボパターンPSMについての描画処理と同様にして、描画領域PSM12,PSM22・・を描画する。これらの一連の部分的描画処理(ステップ23〜29)を基材10が8回転する間に亘って繰り返して実行することにより、各パターンPSM1,PSM2・・における描画領域PSM18,PSM28・・の描画が完了し、中央部トラックMTに対応するトラックについての各サーボパターンPSM,PSM・・およびデータトラックパターンPDM,PDM・・の描画が完了する。
また、制御部8は、ディスク内周部IDにおける内周側トラックITに対応する各トラックについても同様にしてサーボパターンPSI,PSI・・を描画する。具体的には、図8に示すように、制御部8は、記憶部9に記憶されている描画手順データDPに従い、まず、樹脂層10bに対する電子ビームEBの照射位置が矢印I1で示す位置となるようにビーム偏向器7を制御すると共に、基準信号S1が出力された時刻t0から描画領域PSI11の描画を開始する時刻t11sが到来するまでの時間t1wだけ待機した後に、ブランキング制御部5に電子ビームEBのON/OFF制御を開始させる(ステップ25)。次に、制御部8は、電子ビームEBの出力を開始させてから描画領域PSI11の描画を終了する時刻t11eが到来するまでの時間t11onだけブランキング制御部5に電子ビームEBを出力させた後に、時刻t11eが到来した時点でブランキング制御部5に電子ビームEBの出力を停止させる。これにより、描画領域PSI11の描画が完了する。
次いで、制御部8は、描画手順データDPに従い、パターンPSI2における描画領域PSI21の描画を開始する時刻t12sが到来するまでの時間t11offだけ待機した後に、時刻t12sが到来した時点でブランキング制御部5に電子ビームEBの出力を開始させ、時刻t12eが到来した時点でブランキング制御部5に電子ビームEBの出力を停止させる。これにより、描画領域PSI21の描画が完了する。この後、制御部8は、パターンPSI3,PSI4・・(図4参照)についても同様にして最初の描画領域を描画する。次に、制御部8は、1つのサーボパターンエリア内のサーボパターンPSIの部分描画が完了した時点で、基材10の一回転当りに描画すべき各サーボパターンPSI,PSI・・における各描画領域の描画が完了したか否かを判別し(ステップ26)、完了していないと判別したときには、ステップ23に戻って基準信号S1の出力を監視する。また、ターンテーブル3によって基準信号S1が出力された際には、制御部8は、上記のサーボパターンPSIについての描画処理と同様にして、描画領域PSI11,PSI21・・を描画する。
一方、基材10の一回転当たりに描画すべき各描画領域の描画が完了したときには(ステップ26)、制御部8は、基材10に描画すべき露光パターンP全体の描画が完了したか否かを判別し(ステップ27)、完了していないと判別したときには、次の各描画領域をビーム偏向器7による電子ビームEBの偏向によって描画可能か否かを判別する(ステップ28)。この際に、描画可能と判別したときには、制御部8は、記憶部9に記憶されている描画手順データDPに従い、樹脂層10bに対する電子ビームEBの照射位置が矢印I2で示す位置となるようにビーム偏向器7を制御する(ステップ29)。次に、制御部8は、ターンテーブル3によって基準信号S1が出力された時刻t0から描画領域PSI12の描画を開始する時刻t21sが到来するまでの時間t2wだけ待機した後に、ブランキング制御部5に電子ビームEBのON/OFF制御を開始させる(ステップ25)。次いで、制御部8は、電子ビームEBの出力を開始させてから描画領域PSI12の描画を終了する時刻t21eが到来するまでの時間t21onだけブランキング制御部5に電子ビームEBを出力させた後に、時刻t21eが到来した時点でブランキング制御部5に電子ビームEBの出力を停止させる。これにより、描画領域PSI12の描画が完了する。
この場合、記憶部9に記憶されている描画手順データDPには、基材10の1回転目において基準信号S1が出力されてから描画領域PSI11の描画を開始する時刻t11sまでの時間t1wよりも、基材10の2回転目において基準信号S1が出力されてから描画領域PSI12の描画を開始する時刻t21sまでの時間t2wを時間tiだけ長時間とする旨の情報が記録されている。この場合、時間tiについては、前述したスキュー角θIの存在を考慮して、描画領域PSI11の描画開始位置と描画領域PSI12の描画開始位置とを結ぶ線分が、内周側トラックITにオントラックした記録再生ヘッドHの幅方向に対して平行となるように規定されている。したがって、図8に示すように、この描画手順データDPに従って描画される描画領域PSI12は、時間tiの間に基材10が移動する距離だけ描画領域PSI11よりも先(基準信号S1が出力された時刻t0でビーム発生部4の直下の位置から遠い側)に描画される。この結果、描画領域PSI11,PSI12にスキュー角θIに対応する位置ずれが生じる。
次いで、制御部8は、パターンPSI2における描画領域PSI22を描画させる。この後、制御部8は、パターンPSI3,4・・(図4参照)についても同様にして2番目の描画領域を描画する。次に、制御部8は、1つのサーボパターンエリア内のサーボパターンPSIの部分描画が完了した時点で、基材10の一回転当りに描画すべき各サーボパターンPSI,PSI・・における各描画領域の描画が完了したか否かを判別し(ステップ26)、完了していないと判別したときには、ステップ23に戻って基準信号S1の出力を監視する。また、ターンテーブル3によって基準信号S1が出力された際には、制御部8は、上記のサーボパターンPSIについての描画処理と同様にして、描画領域PSI12,PSI22・・を描画する。これらの一連の部分的描画処理(ステップ23〜29)を基材10が8回転する間に亘って繰り返して実行する。これにより、各パターンPSI1,PSI2・・における描画領域PSI18,PSI28・・の描画が完了し、1つのトラックについての各サーボパターンPSI,PSI・・およびデータトラックパターンPDI,PDI・・の描画が完了する。
次に、制御部8は、各サーボパターンPSI,PSI・・の描画が完了したトラックよりも内周側のトラックについての各サーボパターンPSI,PSI・・を描画する際に、ビーム偏向器7による電子ビームEBの偏向によって各描画領域PSI11,PSI21・・の描画が困難と判別したときには(ステップ28)、X−Y移動機構2を制御して半径方向の位置決めを行う(ステップ22)。この後、制御部8は、上記のステップ23〜29の一連の処理を繰り返して実行することにより、各サーボパターンPSI,PSI・・およびデータトラックパターンPDI,PDI・・を描画する。また、制御部8は、さらに内周の各トラックについても同様にして各サーボパターンPSI,PSI・・およびデータトラックパターンPDI,PDI・・を描画する。この場合、描画手順データDPには、内周側のトラックほど、前述した時間tiが長時間となる旨が記録されている。したがって、描画されたサーボパターンPSI,PSI・・は、内周側のトラックほど各パターンPSI1,PSI2・・に付与されたスキュー角θIが大きくなる。以上の一連の処理(各サーボパターンPSIについての部分描画処理および各データトラックパターンPDIについての部分描画処理)を基材10の外周部から内周部にかけて(ディスク外周部ODに対応する部位からディスク内周部IDに対応する部位まで)繰り返して実行し、露光パターンP全体の描画が完了したと判別したときには(ステップ27)、この描画処理20を終了する。これにより、基材10の樹脂層10bに対する露光パターンP(各サーボパターンおよび各データトラックパターンのすべて)の描画が完了する。
このように、この描画装置1によれば、基準信号S1が出力されたときに予め規定された待機時間(上記の例における時間t1w,t2w・・)だけ待機した後に電子ビームEBを出力させてパターンPSO1,PSO2・・,PSM1,PSM2・・,PSI1,PSI2・・における幅方向の一部(描画領域PSO11,PSO21・・など)を描画する部分描画処理(描画処理20におけるステップ23〜25)と、部分描画処理による描画位置を変更する描画位置変更処理(描画処理20におけるステップ22,29)とを交互に複数回実行して樹脂層10bに露光パターンPを描画することにより、基材10に対する基準位置特定用のマーク等の形成を不要にできるため、スタンパー11およびスタンパー11を使用して製造する磁気記録媒体15の製造コストを低減することができる。また、電子ビームEBの出力を開始するまでの待機時間を適宜変更して設定するだけで所望のスキュー角θO,θIを付与したパターンを描画することができるため、各サーボパターンPSO,PSO・・等が正確に読み取られ得る磁気記録媒体15を製造することができる。さらに、基準位置特定用のマークが不要のため、例えばこの描画装置1を用いてスタンパー11を製造するための露光パターンPを描画する際には、中心位置特定用マークの形成と、中心位置特定用マークを基材10の回転中心に一致させる処理とを不要にできる結果、露光パターンPを正確かつ容易に描画することができる。
また、この描画装置1によれば、ターンテーブル3が基材10を一回転させる間に基準信号S1を複数回出力することにより、例えば基材10の一回転当りに一回だけ基準信号S1を出力する構成と比較して、各基準信号S1が出力された時刻t0からサーボパターンPSO等の描画開始までの時間が短時間となる結果、基材10の一回転当りに描画すべきサーボパターンPSO,PSO・・等をそれぞれ一層正確に描画することができる。この場合、ターンテーブル3が基材10を一回転させる間にサーボパターン(サーボパターンPSO等)を描画すべきサーボパターンエリアの数だけ基準信号S1を出力することにより、すべてのサーボパターンについての描画開始タイミングを各々に対応して出力される基準信号S1の出力に基づいて決定することができるため、基材10の一回転当りに描画すべきサーボパターンPSO,PSO・・等を一層正確に描画することができる。
次いで、描画装置1による露光パターンPの描画が完了した基材10を用いてスタンパー11を製造する方法(本発明における凹凸パターンの形成方法)について、図面を参照して説明する。
まず、露光パターンPの描画が完了した基材10を現像処理することにより、図9に示すように、樹脂層10bにおいて電子ビームEBが照射されていない部位を除去して凹凸パターンP1を形成する。次に、図10に示すように、凹凸パターンP1を覆うようにしてスパッタ法等によって成膜層11aを形成し、この成膜層11aを電極として用いてめっき処理することにより、電解ニッケル層11bを形成する。これにより、凹凸パターンP1が転写された凹凸パターンP2を有するスタンパー11が基材10の上に形成される。次いで、Siウエハ10aからスタンパー11を剥離すると共に、必要に応じて溶剤等を用いてスタンパー11を洗浄する。これにより、図11に示すように、スタンパー11が完成する。この場合、完成したスタンパー11には、その平面形状が描画装置1によって基材10の樹脂層10bに描画した露光パターンPと平面形状が同様の凹凸パターンP2が形成されている。したがって、凹凸パターンP2におけるディスク外周部ODおよびディスク内周部IDに対応する部位の各サーボパターンには、露光パターンPの描画時にスキュー角θO,θIが付与されたパターンが形成される。
このように、このスタンパー11の製造方法によれば、上記の描画装置1によって露光パターンPが描画された樹脂層10bに所定の処理をして形成した凹凸パターンP1を転写して製造することにより、基材10に対する基準位置特定用のマーク等の形成を不要にできるため、スタンパー11の製造コストを低減することができる。この場合、各サーボパターンエリア内のサーボパターン(サーボパターンPSO等)を構成する各パターン(パターンPSO1,PSO2・・等)毎に予め規定されたスキュー角θO,θIを付与した露光パターンPを描画して製造することにより、ディスク外周部ODおよびディスク内周部IDにおいて各サーボパターンPSO,PSO・・等が正確に読み取られ得る磁気記録媒体15を製造することができる。また、描画装置1による露光パターンPの描画に際して1つのサーボパターンエリア内のサーボパターンPSO等を構成する各パターンについての描画処理が完了した後に、次にサーボパターンPSO等を描画すべきサーボパターンエリアとの間に形成するデータトラックパターンPDO等についての描画処理を実行することにより、サーボパターンとデータトラックパターンとを一括して描画することができる。したがって、所望のスキュー角が付与された高精度のサーボパターンとデータ記録用のデータトラックパターンとを一括して形成可能なスタンパー11を製造することができる。
続いて、スタンパー11を使用して磁気記録媒体15を製造する方法について、図面を参照して説明する。
まず、図11に示すように、樹脂層15cが形成された中間体15mを加熱しつつ、インプリント法によってスタンパー11を中間体15mに押し付ける。これにより、図12に示すように、スタンパー11の凹凸パターンP2が樹脂層15cに転写されて中間体15m上に凹凸パターンP3が形成される。この場合、中間体15mは、磁気記録媒体15を製造するための中間体であって、円板状の基材15aの表面に磁性層15bが形成されて構成されている。なお、中間体15mは、実際には、下地層、軟磁性層、配向層、記録層(磁性層15b)および保護層等が基材15aの上に積層されて構成されているが、本発明についての理解を容易とするために、中間体15mの詳細な層構造についての説明および図示を省略する。次に、凹凸パターンP3をマスクとして用いて中間体15mをエッチングする。この際には、凹凸パターンP3の凹部の底面から磁性層15bが露出し、さらにエッチング処理を実行することにより、図13に示すように、磁性層15bに凹凸パターンP4が形成される。
この場合、凹凸パターンP4は、凹凸パターンP2を転写した凹凸パターンP3をマスクとして用いて形成されているため、凹凸パターンP4におけるディスク外周部ODおよびディスク内周部IDの各サーボパターンには、凹凸パターンP2と同様にして、露光パターンPの描画時にスキュー角θO,θIが付与されたパターンが転写されている。この後、凹凸パターンP4の凹部に非磁性材料を充填した後に例えば研磨処理によって磁性層15b(凹凸パターンP4の凸部の先端)を非磁性材料から露出させ、磁性層15bの表面に保護膜を形成するなどして、磁気記録媒体15が完成する。
このように、この磁気記録媒体15の製造方法によれば、上記の描画装置1によって描画された露光パターンPに対応する凹凸パターンP3を転写して凹凸パターンP4を形成したことにより、スタンパー11の製作コストが安価であるため、磁気記録媒体15の製作コストを低減することができる。また、ディスク外周部ODおよびディスク内周部IDに対応する部位のサーボパターンPSO,PSO・・,PSI,PSI・・にスキュー角θO,θIが付与された凹凸パターンP3を有するスタンパー11を使用することで、各サーボパターンPSO,PSO・・等を正確に読み取らせることができる。この場合、スタンパー11の製造時における描画装置1による露光パターンPの描画に際して1つのサーボパターンエリア内のサーボパターンを構成する各パターンについての描画処理が完了した後に、次にサーボパターンを描画すべきサーボパターンエリアとの間に形成するデータトラックパターンについての描画処理を実行することにより、サーボパターンとデータトラックパターンとを一括して描画することができる。したがって、所望のスキュー角が付与された高精度のサーボパターンとデータ記録用のデータトラックパターンとを一括して形成することができる。
次に、描画装置1による露光パターンPの他の描画方法(本発明に係るパターン描画方法の一例)について、図面を参照して説明する。
まず、樹脂層10bの形成面を上向きにして基材10をターンテーブル3の上に載置した後に、ターンテーブル3を制御して基材10を回転させる。次に、制御部8が、X−Y移動機構2を制御してターンテーブル3と共に基材10をその半径方向に移動させることにより、半径方向の位置決めを行う。この場合、この描画装置1では、一例として、磁気記録媒体15のディスク外周部ODに対応する部位から露光パターンPの描画を開始するものとする。したがって、制御部8は、X−Y移動機構2を制御して、ビーム発生部4の直下に基材10の外周部が位置するように半径方向の位置決めを行う。次に、制御部8は、ターンテーブル3によって基準信号S1が出力されたか否かを検出すると共に、基準信号S1が出力されたときには、描画手順データDPに従い、描画対象のサーボパターンPSOの描画を開始するまでの待機時間が経過したか否かを判別する。
具体的には、図14に示すように、制御部8は、記憶部9に記憶されている描画手順データDPに従い、まず、樹脂層10bに対する電子ビームEBの照射位置と描画すべきサーボパターンPSOを含むトラックの中心線とが一致するようにビーム偏向器7を制御すると共に、基準信号S1が出力された時刻t0からサーボパターンPSOにおける最初のパターンの描画を開始する時刻t11sが到来するまでの時間t1w(本発明における待機時間の一例)だけ待機した後に、ブランキング制御部5に電子ビームEBのON/OFF制御を開始させる。同時に、制御部8は、ビーム偏向器7を制御して、描画すべきサーボパターンPSOの幅方向でターンテーブル3(基材10)の回転速度に応じて電子ビームEBを往復動させる。この場合、この描画装置1では、サーボパターンPSOの描画に際して、サーボパターンPSO内の各パターンに付与すべきスキュー角θOと、基材10の回転速度とに応じて、ビーム偏向器7による電子ビームEBの偏向方向(往復動の方向)、および往復動の速度等の諸条件を規定して制御する。この結果、樹脂層10bに対する電子ビームEBの照射位置が図14に矢印O11で示すように蛇行させられる。
また、制御部8は、電子ビームEBの出力を開始させてからサーボパターンPSOにおける最初のパターンの描画を終了する時刻t11eが到来するまでの時間t11onだけブランキング制御部5に電子ビームEBを出力させた後に、時刻t11eが到来した時点でブランキング制御部5に電子ビームEBの出力を停止させる。これにより、サーボパターンPSOにおける最初のパターンが樹脂層10bに描画される。この後、制御部8は、サーボパターンPSOにおける2つ目以降のパターンについても同様にして描画して、1つのサーボパターンエリア内のサーボパターンPSOの描画処理が完了した後にデータトラックパターンPDOを描画し、その後に、次のサーボパターンエリア内に描画すべきサーボパターンPSOを描画する。この描画処理を繰り返して実行することにより、1つ目のトラックについての各サーボパターンPSO,PSO・・および各データトラックパターンPDO,PDO・・の描画が完了する。次いで、制御部8は、X−Y移動機構2を制御して電子ビームEBの照射位置を基材10の内周寄りに変更した後に、2つ目のトラックについても同様にして各サーボパターンPSO,PSO・・および各データトラックパターンPDO,PDO・・を描画する。さらに、制御部8は、3つ目以降のトラックについても、同様にして描画する。この場合、内周寄りのトラックについての各サーボパターンPSO,PSO・・を描画する都度、ビーム偏向器7によって電子ビームEBを往復動させる方向(上記のスキュー角θO)を徐々に小さくすることで、各トラック毎に対応するスキュー角θOを付与した各サーボパターンPSO,PSO・・が描画される。
一方、中央部トラックMTに対応するトラックについてのサーボパターンPSM,PSM・・およびデータトラックパターンPDM,PDM・・を描画する際には、ターンテーブル3によって基準信号S1が出力されたか否かを検出すると共に、基準信号S1が出力されたときには、図15に示すように、上記のサーボパターンPSOおよびデータトラックパターンPDOの描画時と同様にして、所定の待機時間(この場合、時間t1w)だけ待機した後に、ブランキング制御部5に電子ビームEBのON/OFF制御を開始させると共に、ビーム偏向器7に電子ビームEBを振り動かすように偏向させる。この場合、サーボパターンPSMやデータトラックパターンPDMの描画時には、スキュー角θO,θIを付与する必要がないため、制御部8は、基材10の回転速度に応じてサーボパターンPSMやデータトラックパターンPDMを含むトラックの中心線に直交する向きに対して電子ビームEBの照射位置が蛇行するように電子ビームEBを往復動させる。この結果、樹脂層10bに対する電子ビームEBの照射位置が同図に矢印M11で示すように蛇行させられる。これにより、サーボパターンPSM,PSM・・およびデータトラックパターンPDM,PDM・・の描画が完了する。
また、制御部8は、ディスク内周部IDにおける内周側トラックITに対応する各トラックについては、図16に示すように、制御部8は、まず、樹脂層10bに対する電子ビームEBの照射位置が描画すべきサーボパターンPSIを含むトラックの中心線と一致するようにビーム偏向器7を制御すると共に、基準信号S1が出力された時刻t0からサーボパターンPSIの描画を開始する時刻t11sが到来するまでの時間t1w(本発明における待機時間の一例)だけ待機した後に、ブランキング制御部5に電子ビームEBのON/OFF制御を開始させる。同時に、制御部8は、ビーム偏向器7を制御して、描画すべきサーボパターンPSIの幅方向で基材10の回転速度に応じて電子ビームEBを往復動させる。この場合、この描画装置1では、サーボパターンPSIの描画に際して、サーボパターンPSI内の各パターンに付与すべきスキュー角θIと、基材10の回転速度とに応じて、ビーム偏向器7による電子ビームEBの偏向方向(往復動の方向)、および往復動の速度等の諸条件を規定して制御する。この結果、樹脂層10bに対する電子ビームEBの照射位置が同図に矢印I11で示すように蛇行させられる。
また、制御部8は、電子ビームEBの出力を開始させてからサーボパターンPSIにおける最初のパターンの描画を終了する時刻t11eが到来するまでの時間t11onだけブランキング制御部5に電子ビームEBを出力させた後に、時刻t11eが到来した時点でブランキング制御部5に電子ビームEBの出力を停止させる。これにより、サーボパターンPSIにおける最初のパターンが樹脂層10bに描画される。この後、制御部8は、サーボパターンPSIにおける2つ目以降のパターンについても同様にして描画して、1つのサーボパターンエリア内のサーボパターンPSIの描画処理が完了した後にデータトラックパターンPDIを描画し、その後に、次のサーボパターンエリア内に描画すべきサーボパターンPSIを描画する。この描画処理を繰り返して実行することにより、1つのトラックについての各サーボパターンPSI,PSI・・および各データトラックパターンPDI,PDI・・の描画が完了する。次いで、制御部8は、X−Y移動機構2を制御して電子ビームEBの照射位置を基材10の内周寄りに変更した後に、次のトラックについても上記の描画処理と同様にして各サーボパターンPSI,PSI・・および各データトラックパターンPDI,PDI・・を描画する。また、制御部8は、さらに内周側のトラックについても、同様にして描画する。この場合、内周寄りのトラックについての各サーボパターンPSI,PSI・・を描画する都度、ビーム偏向器7によって電子ビームEBを往復動させる方向(上記のスキュー角θI)を徐々に大きくすることで、各トラック毎に対応するスキュー角θIを付与した各サーボパターンPSI,PSI・・が描画される。これらの描画処理を基材10の全面に亘って実行することにより、基材10の樹脂層10bに対する露光パターンPの描画が完了する。
このように、この描画装置1、および描画装置1による描画方法によれば、基準信号S1が出力されたときに予め規定された待機時間(この場合、時間t1w等)だけ待機した後に電子ビームEBを出力させると共に、描画すべきパターンに付与すべきスキュー角θO,θIと基材10の回転速度とに応じて規定された偏向方向および往復動の速度で電子ビームEBを偏向させることでパターンの幅方向で電子ビームEBを往復動させてパターン(サーボパターンPSO等)を描画する描画処理を実行してスキュー角θO,θIをサーボパターンPSO,PSO・・,PSI,PSI・・等に付与した露光パターンPを樹脂層10bに描画することにより、基材10に対する基準位置特定用のマーク等の形成を不要にできるため、スタンパー11およびスタンパー11を使用して製造する磁気記録媒体15の製造コストを低減することができる。また、電子ビームEBを往復動させる方向および往復動の速度を適宜偏向するだけで、所望のスキュー角θO,θIを付与したパターンを描画することができるため、各サーボパターンPSO,PSO・・,PSI,PSI・・等が正確に読み取られ得る磁気記録媒体15を製造することができる。さらに、基準位置特定用のマークが不要のため、例えば、この描画装置1を用いてスタンパー11を製造するための露光パターンPを描画する際には、中心位置特定用マークの形成と、中心位置特定用マークを基材10の回転中心に一致させる処理とを不要にできる結果、露光パターンPを正確かつ容易に描画することができる。
次いで、描画装置1による露光パターンPのさらに他の描画方法(本発明に係るパターン描画方法の他の一例)について、図面を参照して説明する。なお、上記の描画方法と同様の工程については、その説明および図示を省略する。
上記の描画方法では、サーボパターンPSOの描画に際して、樹脂層10bに対する電子ビームEBの照射位置を図14に矢印O11で示すように蛇行させたが、本発明はこれに限定されず、図17に示すように、樹脂層10bに対して電子ビームEBの照射位置を矢印O11aで示すように蛇行させることによってサーボパターンPSOを描画することもできる。具体的には、制御部8は、まず、X−Y移動機構2を制御して、ビーム発生部4の直下に基材10の外周部が位置するように半径方向の位置決めを行う。次に、制御部8は、ターンテーブル3によって基準信号S1が出力されたか否かを検出すると共に、基準信号S1が出力されたときには、描画手順データDPに従い、描画対象のサーボパターンPSOの描画を開始するまでの待機時間が経過したか否かを判別する。この際に、制御部8は、記憶部9に記憶されている描画手順データDPに従い、まず、樹脂層10bに対する電子ビームEBの照射位置と描画すべきサーボパターンPSOを含むトラックの中心線とが一致するようにビーム偏向器7を制御すると共に、基準信号S1が出力された時刻t0からサーボパターンPSOにおける最初のパターンの描画を開始する時刻t11sが到来するまでの時間t1w(本発明における待機時間の一例)だけ待機した後に、ブランキング制御部5に電子ビームEBのON/OFF制御を開始させる。
同時に、制御部8は、ビーム偏向器7を制御して、描画すべきサーボパターンPSOの幅方向で電子ビームEBを高速に往復動させる。この場合、この描画装置1では、サーボパターンPSOの描画に際して、サーボパターンPSO内の各パターンに付与すべきスキュー角θOと、基材10の回転速度とに応じて、ビーム偏向器7による電子ビームEBの偏向方向(往復動の方向)、および往復動の速度等の諸条件を規定して制御する。また、制御部8は、電子ビームEBを高速に往復動させることによって生じる多重露光を考慮して、ビーム発生部4を制御して電子ビームEBのパワーを適宜調節する。一方、制御部8は、電子ビームEBの出力を開始させてからサーボパターンPSOにおける最初のパターンの描画を終了する時刻t11eが到来するまでの時間t11onだけブランキング制御部5に電子ビームEBを出力させた後に、時刻t11eが到来した時点でブランキング制御部5に電子ビームEBの出力を停止させる。これにより、サーボパターンPSOにおける最初のパターンが樹脂層10bに描画される。この後、制御部8は、サーボパターンPSOにおける2つ目以降のパターンについても同様にして描画して、1つのサーボパターンエリア内のサーボパターンPSOの描画処理が完了した後にデータトラックパターンPDOを描画し、その後に、次のサーボパターンエリアに描画すべきサーボパターンPSOを描画する。この描画処理を繰り返して実行することにより、1つ目のトラックについての各サーボパターンPSO,PSO・・および各データトラックパターンPDO,PDO・・の描画が完了する。この後、制御部8は、サーボパターンPSM,PSM・・およびデータトラックパターンPDM,PDM・・やサーボパターンPSI,PSI・・およびデータトラックパターンPDI,PDI・・についても同様にして描画処理を実行する。これにより、基材10の樹脂層10bに対する露光パターンPの描画が完了する。
このように、この描画装置1、および描画装置1による描画方法によれば、基準信号S1が出力されたときに予め規定された待機時間(この場合、時間t1w等)だけ待機した後に電子ビームEBを出力させると共に、描画すべきパターンに付与すべきスキュー角θO,θIと基材10の回転速度とに応じて規定された偏向方向および往復動の速度で電子ビームEBを偏向させることでパターンの幅方向で電子ビームEBを往復動させてパターン(サーボパターンPSO等)を描画する描画処理を実行してスキュー角θO,θIをサーボパターンPSO,PSO・・,PSI,PSI・・等に付与した露光パターンPを樹脂層10bに描画することにより、基材10に対する基準位置特定用のマーク等の形成を不要にできるため、スタンパー11およびスタンパー11を使用して製造する磁気記録媒体15の製造コストを低減することができる。また、電子ビームEBを往復動させる方向および往復動の速度を適宜偏向するだけで、所望のスキュー角θO,θIを付与したパターンを描画することができるため、各サーボパターンPSO,PSO・・,PSI,PSI・・等が正確に読み取られ得る磁気記録媒体15を製造することができる。さらに、基準位置特定用のマークが不要のため、例えば、この描画装置1を用いてスタンパー11を製造するための露光パターンPを描画する際には、中心位置特定用マークの形成と、中心位置特定用マークを基材10の回転中心に一致させる処理とを不要にできる結果、露光パターンPを正確かつ容易に描画することができる。
なお、本発明は、上記した本発明の構成および方法に限定されない。例えば、上記の方法では、露光パターンPを描画した後に凹凸パターンP1を形成し、この凹凸パターンP1を転写してスタンパー11を作製した例について説明したが、本発明はこれに限定されず、中間体15mの上に形成した樹脂層15cに描画装置1によって露光パターンPを直接描画して現像処理することで前述した凹凸パターンP3を形成し、この凹凸パターンP3をマスクとして用いて磁気記録媒体15を製造することもできる。この方法に従って製造した磁気記録媒体15によれば、中間体15m上に形成された樹脂層15cに描画装置1よって露光パターンPに対応する凹凸パターンP3を用いて製造したことにより、基準位置特定用のマーク等を検出してパターンの描画を開始するのと比較して、中間体15mに対する基準位置特定用のマーク等の形成を不要にできるため、磁気記録媒体15の製造コストを低減することができる。この場合、各サーボパターンエリア内のサーボパターンを構成する各パターン毎に予め規定されたスキュー角θO,θIを付与した露光パターンPを描画して製造することにより、ディスク外周部ODおよびディスク内周部IDにおいて各サーボパターン等が正確に読み取られ得る磁気記録媒体15を製造することができる。また、露光パターンPの描画に際して1つのサーボパターンを構成する各パターンについての描画処理が完了した後に、次に描画すべきサーボパターンとの間に形成するデータトラックパターンについての描画処理を実行することにより、サーボパターンとデータトラックパターンとを一括して描画することができるため、高精度のサーボパターンとデータ記録用のデータトラックパターンとを一括して形成することができる。
また、上記の方法では、中間体15m上に形成した凹凸パターンP3をマスクとして用いて中間体15mをエッチングすることで磁気記録媒体15を製造する例について説明したが、本発明における情報記録媒体の製造方法はこれに限定されず、リフトオフ法によって凹凸パターンP4を形成して磁気記録媒体15を製造することもできる。さらに、上記の方法では、電子ビームEBを照射して露光パターンPを描画する例について説明したが、本発明における描画用ビームは電子ビームEBに限定されずに任意のエネルギー線を用いることができる。また、ディスクリートトラック型の磁気記録媒体15、およびその磁気記録媒体15を製造するためのスタンパー11を製作するための露光パターンPの描画方法について説明したが、本発明における情報記録媒体は、ディスクリートトラック型の磁気記録媒体に限定されず、本発明に係る情報記録媒体製造用原盤の製造方法および情報記録媒体の製造方法をサーボパターンの形成時に適用した磁気記録媒体(サーボパターン部のみに凹凸パターンが形成された媒体)や、データ記録領域をメッシュ状またはドット状に区切って(各データ記録用トラックをその長さ方向(媒体の回転方向)においても磁気的に複数に分離させて)形成したデータ記録部(磁性体部)が島状(アイランド状)に孤立している、いわゆるパターンド媒体も含まれる。
さらに、上記の描画装置1では、ターンテーブル3がその内部でテーブルの回転に同期して生成したパルス信号(内部信号)に基づいて基材10の回転に同期した基準信号S1を生成して制御部8に出力する構成を採用したが、本発明における基準信号生成部の構成はこれに限定されず、例えば、制御部8が、ターンテーブル3を回転させるための回転駆動信号に基づいて基材10の回転に同期した基準信号S1を生成すると共に回転駆動信号をターンテーブル3に出力する構成を採用することができる。また、ターンテーブル3を回転させるための回転駆動信号を生成する駆動信号生成部を別途配設して、この駆動信号生成部が回転駆動信号に基づいて基材10の回転に同期した基準信号S1を生成して制御部8に出力すると共に回転駆動信号をターンテーブル3に出力する構成を採用することもできる。さらに、基材10の1回転当たりにおける基準信号S1の出力数については、上記の例に限定されず、基材10の1回転当たりに1回以上出力する限り、任意の出力数に規定することができる。加えて、Siウエハ10aの表面にネガ型レジスト(樹脂層10b)を塗布して露光パターンPを描画した例について説明したが、本発明における樹脂層の形成材料として、ネガ型レジストに限定されず、ポジ型レジストなどの各種樹脂材料を使用することができる。