JP4352996B2 - 耐振動疲労性銅撚線及びその製造方法 - Google Patents

耐振動疲労性銅撚線及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、耐振動疲労性銅撚線及びその製造方法に関するものである。
近年の科学技術においては、動力源としての電力や、電気信号など、あらゆる部分に電気が用いられており、それらを伝達するためにケーブルやリード線などの導線が用いられている。そして、その導線に用いられる素材としては、銅、銀などの導電率の高い金属が用いられ、とりわけ、コスト面などを考慮し、銅線が極めて多く用いられている。
銅と一括りにする中にも、その分子の配列等に応じて、大きく分けて、硬質銅と軟質銅とに分けられる。そして利用目的に応じて所望の性質を有する種類の銅が用いられているのである。
例えば、産業用ロボットや自動工作機械等の駆動部に接続されるケーブルなどには、剛直な硬銅線は不的確であり、軟銅線が用いられる。
また、電子部品用リード線には、硬銅線が用いられるが、これは、一度接続された後は動く必要がなく、取り付けの際に変形してしまうことを防ぐためである。
ただ、いずれの銅線においても、無添加銅を用いることは少なく、所望の性質を有するように適量の添加物を用いることが多く、また、分子構造等の制御も行われている。
例えば、耐熱性や機械的特性は、純銅よりもインジウムや錫などを添加することにより、向上させることができるが、添加量が多すぎると逆に導電率が低下する。
また、銅中の酸素の量が増加すると導電性や冷間加工性が低下し、また、添加物との間において酸化物を形成することにより、微細線を形成した際の断線を引き起こすといった問題がある。
このような問題に対して、今日まで、様々な工夫がなされてきた。(例えば、特許文献1及び2参照)。
特開2002−363668号公報 特開平9−256084号公報
しかしながら、軟銅線に関しては、まだまだ充分に検討がなされたとは言えない。例えば、特許文献1に係る発明は、あくまでも硬銅線に関する発明であり、耐屈曲性に対する具体的な評価はされておらず、より耐屈曲性に優れる軟銅線についての検討は何らなされていない。また、耐熱性についての評価もされていない。
また、特許文献2に係る発明は、軟質銅合金に関する発明ではあるが、焼鈍後の結晶粒径が1.6μm以下とするものであり、結晶粒径をこのレベルに維持するには製造条件が厳しいので、性質的には優れるものの、これを実現することは経済的な負担が多く実用的であるとは言えない。
更に、軟質銅合金線よりなる撚線は、銅の高導電性及び低価格性などを理由に、送電線などに多く用いられているのであるが、送電線は風が当たることで日々振動を繰り返しているため、より高い耐振動疲労性を有する銅合金撚線が求められているものの、その期待に応え得る銅合金撚線はまだ開発されていない。
本発明は、以上の点を鑑みてなされたものであり、その目的は、構造物や電気設備におけるリード線への利用に適する量産性及び耐振動疲労性に優れた長寿命リード線及びその製造方法を提供することにある。
本発明の耐振動疲労性銅撚線は、加工前の組織が等軸晶を構成し、10massppm以下の酸素と、0.05〜0.6mass%のインジウムとを含む銅からなる銅合金より形成された銅合金線を複数本撚り合わせて形成したことを特徴とする。
等軸晶を構成する銅合金は、鋳造時の溶銅温度が融点より10〜45度高く設定されることを特徴とする。
更に、0.0001〜0.003mass%のリンを含むことができる。
更に、0.01〜0.1mass%のホウ素を含むことができる。
リンとホウ素とを合わせて0.1mass%以下の範囲で含むことが好ましい。また、インジウムが0.1〜0.2mass%であることが好ましい。
更に、焼鈍した後の平均結晶粒径が2〜20μm以下であることが好ましい。
本発明の耐振動疲労性銅撚線の製造方法は、10massppm以下の酸素と、0.05〜0.6mass%のインジウムとを含む銅からなり等軸晶を構成する銅合金を製造し、銅合金を鋳造圧延した後に冷間伸線して銅合金線を作製し、銅合金線を複数本撚り合わせて耐振動疲労性銅撚線を形成したことを特徴とする
等軸晶を構成する銅合金の鋳造時の溶銅温度を融点より10〜45度高く設定することを特徴とする。
銅合金は0.0001〜0.003mass%のリンを更に含むことを特徴とする。
銅合金は0.01〜0.1mass%のホウ素を更に含むことを特徴とする。
銅合金はリンとホウ素とを合わせて0.1mass%以下の範囲で含むことが好ましい。
銅合金に含まれるインジウムが0.1〜0.2mass%であることが好ましい。
また、冷間伸線の際に焼鈍を行い、焼鈍した後の平均結晶粒径が2〜20μm以下であることを特徴とする。
本発明によれば、量産性及び耐振動疲労性に優れた銅合金撚線及びその製造方法を提供することが可能となるので、構造物や電気設備におけるリード線として用いた際にリード線の長寿命化が期待できる。
以下、本発明に係る銅合金の好適な実施例について説明する。
[鋳造バー及び荒引き線の品質]
連続鋳造により得られる荒引き線の品質は、加工前の鋳造バーにおける銅合金の組織の状態により決定される。したがって、銅−インジウム系の合金線を工業的に使用可能となる安定品質で製造するためには、鋳造バーの段階における組織の制御が必要となる。
表1に幾つかの異なる条件において鋳造バーを製造したときの、組織の状態及び当該鋳造バーより得られた荒引き線の品質の比較を示す。ここで、鋳造速度は30トン/h、銅製の鋳造リングで鋳造冷却したものである。また、連続鋳造圧延についてはSCRシステムにより行った。
尚、本実施例においては、いずれもSCRシステムにより連続鋳造圧延を行ったものであるが、本発明はこれに限らず、ヘズレータイプ連続鋳造圧延方式その他の製造方法を用いたものであってもよい。
Figure 0004352996
一般には、銅や銅合金の鋳造時における溶銅温度は、融点よりも50度以上高温となる温度が望ましいとされているが、表1に示す結果より、融点より10度から45度だけ高い温度における合金溶銅温度の場合において、良質な荒引き線を得ることができた。このことより、合金溶銅温度が融点を50度以上超過しない場合であっても、良好な荒引き線が得られることがわかった。但し、合金溶銅温度が融点を5度以上超過しない場合においては、機械が停止してしまい、製品を得ることはできなかった。また、良好な荒引き線が得られた際の鋳造バーにおける銅合金の組織は等軸晶を示すものであった。以上のことより、良質な荒引き線を得るためには等軸晶を構成する銅合金よりなる鋳造バーを使用することが望ましく、更には、等軸晶を構成する銅合金よりなる鋳造バーを製造するためには、鋳造時の溶銅温度を融点より10〜50度高い温度に設定することが望ましいということがわかった。より好ましくは、鋳造時の溶銅温度を融点より10〜45度高い温度に設定することが望ましい。
尚、表1においては、いずれの例においてもリンやホウ素などの添加物を含むものではないが、本銅−インジウム合金系においては、リン又はホウ素の微量添加の有無に関わらず、同様の結果を得ることができた。
また、鋳造組織断面の比較図を図1に示す。
[銅合金線の導電性についての検討]
次に、本発明に係る銅合金における好適な組成を決定するために、幾つかの異なる組成からなる合金を用いて試験を行った結果を、表2に示す。
Figure 0004352996
尚、表2において、結晶粒径についての評価は、20μm以下を合格として○で表し、20μmを超えるものは不合格として×で表した。また、耐熱性についての評価は、400℃で1時間の加熱試験後の強度低下が4%以内を合格として○で表し、それを超えるものは不合格として×で表した。更に、総合評価については、優良と判断されるものを◎、良と判断されるものを○、不合格を×、でそれぞれ表した。
表2における各実験結果は、いずれも、表1における適性条件の範囲内において得られた鋳造バーから、SCR鋳造圧延にて製造された8mm径の荒引き線を用いて行ったものである。更に、当該荒引き線1.2mmまで冷間伸線した。また、その伸線時においては、速度220m/min、焼鈍電圧24V以上の条件による通電アニーラ焼鈍によって行った。
まず、インジウム以外の添加物を含まない合金線について、異なるインジウムの含有量による各種性質の比較を行った。
試料1から11を比較すると、インジウムの含有率の増加に応じて、導電率が低下し、軟質銅合金線耐力が増加することが確認された。一般に、軟質銅合金線においては導電率は85%IACS以上が望ましいとされているので、この基準を当てはめた場合、試料1から試料10は基準を満たすが、試料11はこの基準を満たさなかった。これらの結果より、本発明に係る銅合金において望ましいインジウムの含有量は最大0.6mass%ということになる。
また、屈曲寿命に影響を及ぼす0.2%耐力は、一般に焼鈍後の純銅(TPC)が110〜125MPaの値を示し、試料2から試料11のいずれも純銅の平均的な値を上回るものであった。
以上のことより、試料2から試料10までが、導電性及び軟質銅合金線耐力の点においては、本発明に係る銅合金としての基準を満たすものとなり、その条件は、インジウムの含有量が0.005〜0.6mass%となった。
インジウムの含有量が上記のような値であるときに、好適な性質を示す理由としては、銅−インジウム系合金において銅単体よりも各種特性が向上されるのがインジウムが銅中に固溶元素として存在することによるものである。銅中に固溶元素として存在するインジウムが増加すると、銅合金の機械特性を向上させることができるが、その一方で銅合金の導電率を低下させる働きも有するのである。
具体的には、インジウムの含有量が0.005mass%未満である場合には、上記の固溶元素としての特性向上が得られないので、0.005mass%以上のインジウムが必要となるが、インジウムの含有量が0.6mass%を超えると、導電率が基準値以下にまで低下するのである。
よって、本発明に係る銅合金線のインジウム含有量は0.005〜0.6mass%が求められることになる。
[銅合金線の酸素含有量についての検討]
連続鋳造圧延法においては、銅合金に含まれる酸素の量は10massppm以下が望ましいとされている。その理由としては、上記のように、銅−インジウム系合金において銅単体よりも各種特性が向上されるのがインジウムが銅中に固溶元素として存在することによるものであるところ、含有酸素が増加することによりインジウムが酸化物を形成してしまうために当該特性向上に寄与できなくなるからである。
そこで本発明に係る銅合金においても、酸素の含有量は10massppm以下を基準値とした。
[銅合金線の結晶粒径についての検討]
また、結晶粒径については、添加物の含有率のみならず、その合金線の製造条件によっても変化する。結晶粒径はその値が小さい程、機械的特性、特に耐力が向上する。結晶粒径が20μmを超えると耐力の低下に影響を及ぼすため、本発明品としては望ましくなくなる。例えば、合金の組成や焼鈍条件によっては、結晶粒径が20μmを超えることとなる。その一方、結晶粒径が2μm未満となると優れた機械的特性を得ることができるのであるが、これを達成するには製造条件が厳しく、量産的ではない。そのため、本発明に係る銅合金における結晶粒径は、2〜20μmをその範囲と設定した。
表2における結晶粒径の評価に示すように、銅合金中のインジウムの含有量が0.005mass%以下の場合においては、結晶粒径が20μmを超え不合格であったが、0.01mass%含む場合においては、いずれも結晶粒径が20μm以下となり合格であった。このことより、本発明に係る銅合金におけるインジウムの含有量は、0.01〜0.6mass%がより好ましいということがわかった。
図2に、表2における試料1と試料6のそれぞれの結晶組織の一例を示す。これより、発明品においては結晶粒が小さく、良好な組織が得られていることがわかった。
[銅合金線の耐熱性についての検討]
次いで、耐熱性についての検討を行った。本発明に係る銅合金における耐熱性の評価基準としては、400℃、1時間の加熱の後、強度の低下が4%以内であることを条件とした。
本発明に係る銅合金を用いて様々な条件による加熱試験後の強度を測定した結果を表3に示す。
Figure 0004352996
耐熱性試験に用いた試料については、400℃、1時間の加熱の後の強度変化はほとんど生じず、充分に合格と判定された。また、加熱試験の温度条件を変化させた場合においても強度変化は少なく、比較材である純銅に比べ極めて小さかった。
また、試験時間を10時間に延長して行った場合の結果についても、加熱試験後の強度変化は極めて小さく、本発明に係る銅合金は、良好な耐熱特性を有していることが確認された。
表2における耐熱性の評価に示すように、銅合金中のインジウムの含有量が0.005mass%以下の場合においては、耐熱性は基準を満たさなかったが、0.01mass%含む場合においては、いずれも耐熱性は基準を満たし合格であった。このことからも、本発明に係る銅合金におけるインジウムの含有量は、0.01〜0.6mass%がより好ましいということがわかった。
[銅合金中のリン、ホウ素の濃度範囲についての検討]
次に、銅−インジウム系合金に添加物を加えた場合について検討を行った。
銅合金中にホウ素を添加することは、結晶の微細化に有用であり、また、導電率を大きく下げるといった心配もない。そこで、本発明に係る銅合金の1つの実施形態として、ホウ素を添加したものが、表2における試料12である。
試料12におけるインジウムの含有量は0.15mass%であり、これと同量のインジウム含有量を有する比較試料はないが、インジウム含有量が0.1mass%である試料6、及びインジウム含有量が0.2mass%である試料7と比較すると、試料12の示す導電率の値は、試料6と試料7の示す導電率の値の中間にあたり、ホウ素の添加により銅合金の導電率には影響を及ぼさないことがわかる。その一方で、試料12の示す耐力の値は、試料6と試料7の示す耐力の値のいずれよりも高く、ホウ素の添加が銅合金の耐力の向上に寄与していることがわかる。
ホウ素の添加量が少ない場合には、結晶微細化効果が充分に得られないが、その一方で添加量が多い場合には、鋳造時にトラブルが生じやすくなる。以上のことより、本発明におけるホウ素の添加量の適正範囲は、0.01〜0.1mass%とした。
また、銅合金中にリンを添加することは、ブローホールの発生を防ぎ、鋳造材の品質を高める効果があり、荒引き線の表面品質の向上に有用である。そこで、本発明に係る銅合金の1つの実施形態として、リンを添加したものが、表2における試料14である。
試料14におけるインジウムの含有量は0.1mass%であり、これと同量のインジウム含有量を有する比較試料である試料6と比較すると、試料14の示す導電率の値は、試料6の示す導電率の値と等しく、試料14におけるリンの添加量においては銅合金の導電率には影響を及ぼさないことがわかる。また、試料14の示す耐力の値は、試料6の示す耐力の値よりも高く、リンの添加が銅合金の耐力の向上に寄与していることがわかるが、これは鋳造材の品質を高める効果によると思われる。
このような効果を得るためには、リンを0.0001mass%以上添加する必要があるが、0.003mass%の添加時における導電率は、無添加時と比較して約2.2%の低下を示す。よって、0.003mass%以上のリンを添加すると導電性の低下が著しくなるので望ましくない。以上のことから、本発明に係る銅合金におけるリンの添加量の基準値は、0.0001〜0.003mass%とした。
また、銅合金中にホウ素及びリンの双方を添加した場合の実施例が、表2中の試料13である。
試料13におけるインジウムの含有量は0.3mass%であり、これと同量のインジウム含有量を有する比較試料である試料8と比較すると、試料13の示す導電率の値は、試料8の示す導電率の値とほとんど変わらず、また、試料13の示す耐力の値は、試料8の示す耐力の値よりも高く、ホウ素及びリンの双方を添加しても特に悪影響を及ぼすことはなく、銅合金の耐力の向上に寄与していることがわかる。
以上をまとめると、本発明における銅合金において好適な組成は、酸素の含有量は10massppm以下であり、インジウムの含有量は、導電率及び耐力を考慮した場合において0.005〜0.6mass%、結晶粒径及び耐熱性をも考慮した場合には0.01〜0.6mass%が望ましいということになる。更に、ホウ素、リンは必ずしも必要とはされないが、添加する場合においては、ホウ素は0.01〜0.1mass%、リンは0.0001〜0.003mass%の添加が望ましい、ということになる。
その他の元素の添加については、銅合金の物性の向上に寄与するものではないので、特に求められるものではない。但し、銅合金の製造現場において他元素が混入することは起こりうるものである。混入するものとしては、例えば、錫、マグネシウム、銀などの元素が考えられる。これらの元素の混入により、機械的特性が低下することは考えにくいものであるが、導電率については低下するおそれが有る。そこで、銅合金の導電率が85%IACSを下回らない範囲においては、これらの錫、マグネシウム又は銀を含むものであったとしても、本発明に含まれるものとする。
[銅合金線の耐力についての検討]
本発明に係る銅合金線は、屈曲寿命の高さが要求される。0.2%耐力の異なる銅合金線における屈曲寿命を測定した結果を表4に示す。
Figure 0004352996
屈曲寿命の測定は、0.1mm径の銅合金線を用い、曲げ歪0.5%、荷重32g、左右90度曲げ、4sec/wayの条件で行った。
純銅における耐力は一般に100〜125MPa程度であり、今回の試験に用いた比較材である純銅においては110MPaであった。これに対し、本発明に係る銅合金はいずれも焼鈍条件により異なるもののいずれも高い耐力の値を示し、また耐力の向上に応じて、屈曲寿命も増加していることがわかった。
0.2%耐力が131MPaであるサンプルと、耐力が110MPaである比較材とを比較すると、屈曲寿命は約1.5倍に増加しており、この結果は屈曲寿命の長寿命化という目的に対しては充分効果的である。これより、本発明に係る銅合金線において求められる0.2%耐力の値は130MPa以上とするとした。
[通電アニーラ焼鈍について]
前述したように、本発明に係る銅合金線の製造においては、荒引き線から伸線する際に通電アニーラ焼鈍を行った。本発明に好適な通電アニーラ焼鈍の条件を決定するための試験を行った。
速度を220m/minに設定した上で、焼鈍電圧を変化させて通電アニーラにおける焼鈍電圧を変化させて得られた銅合金線の引張り強度、0.2%耐力及び伸びについての比較した結果を表5に示す。ここで用いられた銅合金は、銅−0.1mass%インジウム合金である。
Figure 0004352996
合格基準値として、伸び10%以上、0.2%耐力125MPa以上としたところ、焼鈍電圧が24Vから28Vの範囲において基準をクリアすることができた。なお、28Vを超えるものについては、装置の限界により実験ができなかった。
なお、本実験においては、生産性に優れた通電アニーラ焼鈍により行ったが、管状電気炉を用いた走行焼鈍により行った場合には、本実験の結果よりも伸び及び耐力の安定した銅合金線が得られると思われる。
[銅撚線についての検討]
また、本発明は、上記銅合金を用いた銅撚線に関するものでもある。本発明に係る銅撚線の好適な実施例について説明する。
銅撚線に用いられる銅合金については、これまで述べてきた銅合金を用いることが可能であるが、インジウムの含有量を更に制御することにより、より高品質な銅撚線を得ることができる。
具体的には、これまで述べてきた本発明に係る銅合金における好適なインジウムの含有量は0.005〜0.6mass%、より好ましくは0.01〜0.6mass%であったが、インジウムの含有量が0.05mass%未満の場合には、引張強さ及び伸びの各性質に関して銅撚線としての使用に際して決して充分ではないからである。そこで、インジウムの含有量を0.05〜0.6mass%である銅合金を使用することがより好ましいこととなる。
銅合金として、ホウ素、リンを共に添加した銅−インジウム系合金を伸線することにより得られた1.2mm径の軟質銅合金線を、7本用いて撚り線加工することにより、試料を形成した。また、同時に比較材として、当該試料と同サイズであるタフピッチ銅による比較試料も用意した。これら2つの試料を用いて、耐振動疲労性及び導電率を測定した結果を、表6に示す。
Figure 0004352996
ここで、耐振動疲労性は線材が破断するまでの振動回数を測定することにより求め、その方法は、試料である線材に張力を掛け、一定の周波数と振幅で何回繰り返し振動を加えれば、線材が破断するかによって評価した。
表6より明らかなように、本発明に係る銅撚線の耐振動疲労性は、同サイズのタフピッチ銅撚線のそれと比較して、約2.5倍であった。その一方、導電率についてはほぼ同程度の値を示し、ほとんど低下していないということがわかった。
以上のことより、本発明に係る銅撚線は、タフピッチ銅撚線と比較して導電率をほとんど低下させることなく、耐振動疲労性を格段に増加させたものであり、高架配線されるリード線などに用いられる銅撚線のように高い耐振動疲労性の要求される分野での利用が見込まれるのである。
結晶構造が柱状晶を示す鋳造バーと、等軸晶を示す鋳造バーのそれぞれの組織断面図である。 本発明に係る銅合金と比較材純銅との結晶組織を比較する断面図である。

Claims (14)

  1. 加工前の組織が等軸晶を構成し、10massppm以下の酸素と、0.05〜0.6mass%のインジウムとを含む銅からなる銅合金より形成された銅合金線を複数本撚り合わせて形成したことを特徴とする耐振動疲労性銅撚線。
  2. 等軸晶を構成する銅合金は、鋳造時の溶銅温度が融点より10〜45度高く設定されることを特徴とする請求項1記載の耐振動疲労性銅撚線。
  3. .0001〜0.003mass%のリンを更に含むことを特徴とする請求項1記載の耐振動疲労性銅撚線。
  4. .01〜0.1mass%のホウ素を更に含むことを特徴とする請求項1記載の耐振動疲労性銅撚線。
  5. ンとホウ素とを合わせて0.1mass%以下の範囲で含むことを特徴とする請求項1記載の耐振動疲労性銅撚線。
  6. インジウムが0.1〜0.2mass%であることを特徴とする請求項1記載の耐振動疲労性銅撚線。
  7. 鈍した後の平均結晶粒径が2〜20μm以下であることを特徴とする請求項1からいずれか記載の耐振動疲労性銅撚線。
  8. 10massppm以下の酸素と、0.05〜0.6mass%のインジウムとを含む銅からなり等軸晶を構成する銅合金を製造し、
    銅合金を鋳造圧延した後に冷間伸線して銅合金線を作製し、
    銅合金線を複数本撚り合わせて耐振動疲労性銅撚線を形成したことを特徴とする耐振動疲労性銅撚線の製造方法
  9. 等軸晶を構成する銅合金の鋳造時の溶銅温度を融点より10〜45度高く設定することを特徴とする請求項8記載の耐振動疲労性銅撚線の製造方法。
  10. 銅合金は0.0001〜0.003mass%のリンを更に含むことを特徴とする請求項8記載の耐振動疲労性銅撚線の製造方法。
  11. 銅合金は0.01〜0.1mass%のホウ素を更に含むことを特徴とする請求項8記載の耐振動疲労性銅撚線の製造方法。
  12. 銅合金はリンとホウ素とを合わせて0.1mass%以下の範囲で含むことを特徴とする請求項8記載の耐振動疲労性銅撚線の製造方法。
  13. 銅合金に含まれるインジウムが0.1〜0.2mass%であることを特徴とする請求項8記載の耐振動疲労性銅撚線の製造方法。
  14. 冷間伸線の際に焼鈍を行い、焼鈍した後の平均結晶粒径が2〜20μm以下であることを特徴とする請求項8から13いずれか記載の耐振動疲労性銅撚線の製造方法。
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