従来より、空気調和システム(以下、空調システムという。)には、冷媒ガスを圧縮して、システムに冷媒ガスを循環させるための気体圧縮機が用いられている。
ここで、気体圧縮機は、作動方式として往復動式や回転式などが実用化されているが、回転式の気体圧縮機は、例えば図7に示すものが知られている。図示した気体圧縮機は、ベーンロータリ形式のコンプレッサ100であり、圧縮機本体が、ハウジング10の内部に内蔵された電動モータ90によって駆動されるものである。
詳しくは、内部に電動モータ90が配設され、この電動モータ90の回転軸91が延びる方向のうち一方の端部側が開口したモータハウジング13と一端部が開口したケース11とからなるハウジング10と、電動モータ90の回転軸91と一体的に回転する回転軸51を具備した圧縮機本体と、ケース11の一端部に締結され、モータハウジング13の開口とケース11の開口とを互いに対向させて締結ボルト71により両者11,13を締結した状態で形成されるハウジング10の内部空間を、モータハウジング13側の空間とケース11側の空間とに仕切るとともに、ケース11側の空間に配設される圧縮機本体を保持するセンタープレート12(支持部材)とを備えている。
ここで、センタープレート12は、ケース11の一端部に、締結ボルト72によって締結固定されている。
圧縮機本体は、回転軸51回りに回転軸51と一体的に回転するロータ50(回転体)と、ロータ50の外周面の外方を覆う内周面の断面輪郭が楕円状のシリンダ40と、ロータ50およびシリンダ40をロータ50およびシリンダ40の両端面側からそれぞれ挟むフロントサイドブロック20,リヤサイドブロック30と、ロータ50からシリンダ40の内周面方向に突出可能とされた図示しない複数のベーンとを備えた構成である。
そして、ロータ50の回転に伴って、ロータ50とシリンダ40と2つのサイドブロック20,30と回転方向前後2つのベーンとによって囲まれた空間(圧縮室)の容積が周期的に変化することにより、この圧縮室に吸入された冷媒ガスG(気体)が圧縮されて高圧となり、吐出される。
なお、電動モータ90の回転軸91と圧縮機本体の回転軸51とは、物理的には別体の部材であるものの他、一体に形成されているものもある。
また、モータハウジング13には、外部から冷媒ガスGを取り入れる吸入ポート14が形成され、吸入ポート14から吸入された冷媒ガスGは、モータハウジング13側の内部空間のうち電動モータ90の占有空間以外の空隙空間(吸入室)15に供給される。
一方、ケース11には、圧縮された冷媒ガスGを外部に吐出する吐出ポート17が形成され、圧縮機本体から吐出された高圧の冷媒ガスGは、ケース11側の空間のうち圧縮機本体の占有空間以外の空間(吐出室)16を介して、吐出ポート17から外部に吐出される。
そして、吸入室15に供給された冷媒ガスGは、センタープレート12に形成された通気孔12aを介して圧縮機本体に吸入されて高圧に圧縮され、この吐出室16を経て吐出ポート17から吐出される。
なお、図7において、電動モータ90の回転軸91は、その一端が、ボールベアリング93によりモータハウジング13に軸支されている。また、圧縮機本体のリヤサイドブロック30には、圧縮室から吐出室16に吐出される冷媒ガスGに混入した冷凍機油Rを冷媒ガスGから分離するための金網である油分離器(図示せず)を具備したサイクロンブロック60が取り付けられている。
ここで、図7に示したものは、センタープレート12とモータハウジング13とが別体のものであるが、センタープレート12とモータハウジング13とが一体のものであっても、吐出室が高圧であることに変わりはない(特許文献1)。
また、電動モータ90を備えない形式の気体圧縮機においても同様である。
特開2004−36455号公報
ところで、上述したコンプレッサ100の吐出室16には高圧の冷媒ガスGが吐出されるため、吐出室16の内圧Fは高く、この内圧Fは、圧縮機本体を介してセンタープレート12に作用し、センタープレート12とケース11とを締結する締結ボルト72に、引張り荷重として作用する。
同様に、センタープレート12とモータハウジング13とが一体的に形成されているものでは、ケース11とモータハウジング13とを締結する締結ボルト(図7における締結ボルト71に相当する。)に引張り荷重が作用し、電動モータ90を備えないもの、すなわちモータハウジング13を備えないものにあっては、ケース11とフロントヘッド(図7におけるセンタープレート12に相当する。)とを締結する締結ボルト(図7における締結ボルト72に相当する。)に引張り荷重が作用する。
ここで、特に冷媒ガスGが、二酸化炭素ガス(R744)やR410a等の高圧動作冷媒ガスであるときは、旧来の伝統的な冷媒ガスである一般的なフロンガス等よりも吐出圧が顕著に高いため、上述した締結ボルトには、一般的なフロンガスを用いた気体圧縮機よりも強い引張り荷重が作用する。したがって、重量軽減や、製造コストの低減を目的として、締結部材の数量を減らすことは困難であった。
そこで、吐出室16自体を小さくすることにより、吐出室16に臨む圧縮機本体あるいはセンタープレート12の受圧面積を小さくして、圧縮機本体あるいはセンタープレート12に作用する圧力を低減することも考えられるが、吐出室16を小さくすると、この吐出室16に吐出された冷媒ガスGの流速を、冷凍機油Rの分離に適当な流速まで低下させることができず、冷凍機油Rの分離性能が低下して、コンプレッサ100の外部に持ち去られる冷凍機油Rの量が増大し、コンプレッサ100の内部の潤滑等に支障を来たす虞がある。
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、吐出室の内部の容積の低減を抑制しつつ、ケースと支持部材とを締結する締結部材に作用する荷重を低減させることができる気体圧縮機を提供することを目的とするものである。
本発明に係る気体圧縮機は、ケースの開口となる一端部を、回転軸の中心方向に向けて張り出させることにより、ケースの開口面積を縮小し、この一端部に取り付けられる圧縮機本体や支持部材の、ケースの開口面積に相当するケース側空間に臨む受圧面積を低減して、支持部材とケースとを締結する締結ボルトへの負荷荷重を低減しつつ、ケース側空間の容積が低減するのを抑制したものである。
すなわち、本発明の請求項1に係る気体圧縮機は、回転軸を具備した圧縮機本体と、前記回転軸が延びる方向のうち一方の端部側が開口したケースと、前記ケースの前記一端部に締結され、前記ケースとによって囲まれた内部の空間に配設される前記圧縮機本体を保持する支持部材とを備え、前記圧縮機本体により圧縮された気体を前記ケースの内部の空間に吐出する気体圧縮機において、前記ケースの前記一端部が、前記回転軸の中心方向に向けて張り出して、該ケースの開口面積を縮小したことを特徴とする。
上記支持部材とは、ケースと同様に、外部空間と内部空間とを仕切る外形のケースとして機能するものであってもよいし、あるいは、ケースと他のケース部材とによって囲まれた内部空間を、2つの空間に分割するように仕切る部材であってもよい。
また、ケースの一端部が回転軸の中心方向に向けて張り出した構成は、このケースの内部に対して開口が狭窄することとなるため、このケースを型によって成型するに際しては、砂型を用いるのが好ましい。もちろん、砂型を用いずに、例えばダイキャストにより、ケースの内部の広がりを、狭窄した開口と略同一の広さとして成型した後、ケース内部を切削等の加工を施し、内部に対して開口が相対的に狭窄したものとして成形することもできる。
ここで、ケースの内部の空間は、圧縮機本体から高圧の気体が吐出されるため、高圧となる。そして、このケース側の空間内の内圧は瞬間的には略静圧p[N/mm2]と見なすことができ、この空間内に存在する各部材には、空間内に露出する面積S[mm2]に応じた荷重F[N](=pS)が作用する。
そして、圧縮機本体を支持する支持部材に作用する、回転軸方向に沿った荷重Fは、ケースの開口面積Sに応じた荷重(F=pS)となる。もちろん、支持部材がケース側の開口の全面を塞いでいるのではなく、圧縮機本体がケース側の開口を塞ぎ、これにより、圧縮機の、回転軸に直交する面(面積合計ΣSi=S)に静圧pが作用して、圧縮機本体に荷重F(=pS)が作用し、この圧縮機本体に作用した荷重Fが、圧縮機本体を支持する支持部材に作用することになる。
この点に関し、本発明に係る気体圧縮機は、ケースの開口を形成する一端部が、回転軸の中心方向に向けて張り出して、ケースの開口面積が縮小されているため、支持部材に作用する荷重が低減される。
したがって、支持部材とケースとを締結する締結部材に作用する荷重を低減することができる。
また、ケースの一端部のみが張り出しているだけであるため、ケースの内部の容積は大幅に減少することがない。この結果、容積が大幅に減少した場合に生じる、ケースの内部の空間における吐出気体の流速の低下抑制作用を回避することができる。
ここで、気体圧縮機は、内部の機構部分の潤滑や、その他例えばベーンロータリ形式の気体圧縮機ではベーンの背圧を得る等のために、潤滑油(冷凍機油等)が用いられており、この潤滑油は、その一部が圧縮対象の気体に混合されて、圧縮機本体から吐出され、ケース側の空間内で気体から分離されるが、流速が低下しないと、この油分離性能が損なわれる。
この点に関し、本発明に係る気体圧縮機は、ケースの内部の空間における吐出気体の流速の低下抑制作用を回避するため、油分離性能が損なわれるのを防止することができる。
また、本発明の請求項2に係る気体圧縮機は、内部に収容された電動機の回転軸が延びる方向のうち一方の端部側が開口したモータハウジングと、一端部が開口したケースと、前記電動機の回転軸と一体的に回転する回転軸を具備した圧縮機本体と、前記ケースの前記一端部に締結され、前記モータハウジングの開口と前記ケースの開口とを互いに対向させた状態で形成される内部空間を、前記モータハウジング側の空間と前記ケース側の空間とに仕切るとともに、前記ケース側の空間に配設される前記圧縮機本体を保持する支持部材とを備え、前記モータハウジング側の空間の気体を、前記支持部材に形成され通気孔を介して前記圧縮機本体に吸入させて圧縮し、この圧縮された気体を前記ケース側の空間に吐出する気体圧縮機において、前記ケースの前記一端部が、前記回転軸の中心方向に向けて張り出して、該ケースの開口面積を縮小したことを特徴とする。
ケースの一端部が回転軸の中心方向に向けて張り出した構成は、このケースの内部に対して開口が狭窄することとなるため、このケースを型によって成型するに際しては、砂型を用いるのが好ましい。もちろん、砂型を用いずに、例えばダイキャストにより、ケースの内部の広がりを、狭窄した開口と略同一の広さとして成型した後、ケース内部を切削等の加工を施し、内部に対して開口が相対的に狭窄したものとして成形することもできる。
ここで、ケース側の空間は、圧縮機本体から高圧の気体が吐出されるため、高圧となる。そして、このケース側の空間内の内圧は瞬間的には略静圧と見なすことができ、この空間内に存在する各部材には、空間内に露出する面積に応じた荷重が作用する。
そして、圧縮機本体を支持する支持部材に作用する、回転軸方向に沿った荷重は、ケースの開口面積に応じた荷重となる。もちろん、支持部材がケース側の開口の全面を塞いでいるのではなく、圧縮機本体がケース側の開口を塞ぎ、これにより、圧縮機の、回転軸に直交する面に静圧が作用して、圧縮機本体に荷重が作用し、この圧縮機本体に作用した荷重Fが、圧縮機本体を支持する支持部材に作用することになる。
この点に関し、本発明に係る気体圧縮機は、ケースの開口を形成する一端部が、回転軸の中心方向に向けて張り出して、ケースの開口面積が縮小されているため、支持部材に作用する荷重が低減される。
したがって、支持部材とケースとを締結する締結部材に作用する荷重を低減することができる。
また、ケースの一端部が張り出しているだけであるため、ケースの内部の容積は大幅に減少することがない。この結果、容積が大幅に減少した場合に生じる、ケース側の空間における吐出気体の流速の低下抑制作用を回避することができる。
ここで、気体圧縮機は、内部の機構部分の潤滑や、その他例えばベーンロータリ形式の気体圧縮機ではベーンの背圧を得る等のために、潤滑油(冷凍機油等)が用いられており、この潤滑油は、その一部が圧縮対象の気体に混合されて、圧縮機本体から吐出され、ケース側の空間内で気体から分離されるが、流速が低下しないと、この油分離性能が損なわれる。
この点に関し、本発明に係る気体圧縮機は、ケース側の空間における吐出気体の流速の低下抑制作用を回避するため、油分離性能が損なわれるのを防止することができる。
また、本発明の請求項3に係る気体圧縮機は、請求項1または2に係る気体圧縮機において、前記気体が、高圧動作冷媒ガスであることを特徴とする。
ここで、高圧動作冷媒ガスとしては、例えば、二酸化炭素ガス(R744)や、R410a等の冷媒ガスを適用することができる。
高圧動作冷媒ガスを圧縮対象とする気体圧縮機は、圧縮機本体から吐出される気体の圧力が、旧来の伝統的な冷媒ガスである一般的なフロンガス等よりも高いため、この気体が吐出されたケース側の空間内の圧力は、そのような一般的なフロンガス等を用いたものに比べて格段に高圧となる。
このため、支持部材に作用する回転軸方向に沿った荷重も非常に強くなり、本発明による荷重低減効果を、一層顕著に発揮させることができる。すなわち、高圧動作冷媒ガスを用いた気体圧縮機では、支持部材に作用する荷重が非常に強いため、この支持部材とケースの一端部とを締結する締結部材の数量を増加させる必要があるが、本発明に係る気体圧縮機では、支持部材に作用する荷重を低減することができるため、この支持部材とケースの一端部とを締結する締結部材の数量を増加させる必要がなく、あるいは増加数量を抑制することができる。
しかも、高圧動作冷媒ガスを用いた場合、ガスの特性上、圧縮機本体のサイズ(容量)を小さくしても、所望とする冷凍能力を得やすい、という特徴がある。したがって、ケースの一端部を回転軸の中心方向に向けて張り出させてケースの開口面積を縮小したときに、それに伴って圧縮機本体のサイズを小さくしても、所望とする吐出圧を確保することが可能である。
本発明の請求項4に係る気体圧縮機は、請求項1から3のうちいずれか1項に係る気体圧縮機において、前記圧縮機本体は、前記回転軸回りに該回転軸と一体的に回転する回転体と、前記回転体の外周面の外方を覆うシリンダと、前記回転体および前記シリンダを該回転体および該シリンダの両端面側からそれぞれ挟む2つのサイドブロックと、前記回転体から前記シリンダの内周面方向に突出可能とされた複数のベーンとを備え、前記支持部材は、前記2つのサイドブロックのうち該支持部材の側のサイドブロックおよび前記シリンダの外方を覆い、前記2つのサイドブロックのうち前記ケースの側のサイドブロックの外周縁部が、前記ケースの開口の内周縁部に当接していることを特徴とする。
圧縮機本体が、回転軸回りに回転軸と一体的に回転する回転体と、この回転体の外周面の外方を覆うシリンダと、回転体およびシリンダを回転体およびシリンダの両端面側からそれぞれ挟む2つのサイドブロックと、回転体からシリンダの内周面方向に突出可能とされた複数のベーンとを備えたものは、いわゆるベーンロータリー形式の気体圧縮機であるが、この形式の気体圧縮機は、圧縮機本体の内部すなわち圧縮室に吸入させる気体が待機する吸入室と、圧縮室から高圧の気体が吐出される吐出室(ケース側の空間)とが、回転軸の延びた方向に関して、圧縮機本体を挟んで互いに反対側に配設されるものとなる。
そして、吸入室は低圧であり、吐出室は高圧であるため、圧縮機本体は、この室内圧間の圧力バランスによって本質的に吐出室側から吸入室側に押圧されやすい構造となっている。
したがって、支持部材に掛る荷重が大きく、よって、本発明の気体圧縮機によって奏される支持部材への負荷荷重軽減効果が、より効果的に発揮される。
本発明の請求項5に係る気体圧縮機は、請求項4に係る気体圧縮機において、前記ケースの側のサイドブロックには潤滑油用通路が形成され、該潤滑油用通路の給油口は、前記ケースの側の空間に臨んで開口し、この給油口に、前記ケースの側の空間の下部に貯留した潤滑油の液面よりも下方において開口する給油管が接続されていることを特徴とする。
ケースの一端部が回転軸の中心方向に向けて張り出しており、しかも、ケースの側のサイドブロックの外周縁部がケースの開口の内周縁部に当接していることにより、サイドブロックに形成された潤滑油用通路の給油口は、従来の気体圧縮機における給油口よりも高い位置となる。
このため、ケースの側の空間すなわち吐出室に貯留された潤滑油の貯留量によっては、潤滑油の液面が給油口よりも低い位置となる場合が生じうる。このように潤滑油の液面が給油口よりも下がると、給油口から潤滑油用通路に潤滑油を供給することができなくなり、潤滑油による潤滑を必要とする部分の潤滑が不十分となる虞がある。
また、ベーンロータリ形式の気体圧縮機においては、ベーン背圧を適切に得ることができない虞が生じる。
この点に関して、本発明の気体圧縮機は、給油口に、ケースの側の空間の下部に貯留した潤滑油の液面よりも下方において開口する給油管が接続されているため、例え、潤滑油の液面が給油口よりも低い位置となった場合にも、給油管の開口が潤滑油の液面よりも下方位置にあるため、給油管を介して潤滑油用通路に潤滑油を供給することができ、潤滑性能が低下するのを防止することができる。
一方、本発明の請求項6に係る気体圧縮機は請求項1から4のうちいずれか1項に係る気体圧縮機において、ケースの一端部の、回転軸の中心方向に向けた張出しは、開口の下縁部を除いた部分に形成されていることを特徴とする。
このように形成された気体圧縮機においては、ケース内に底面と開口の下縁とが略同一高さとなり、したがって、圧縮機本体の下面に給油口が形成されているものであっても、この給油口は、開口の下縁よりもわずかに高い位置、すなわちケース内の底面よりもわずかに高い位置にとどめることができ、潤滑油の液面がケース内の底面近傍に低下するまでは、給油口から潤滑油を適正に給油することができ、給油管を備えることなく、潤滑性能を確保することができる。
本発明に係る気体圧縮機によれば、ケースの開口を形成する一端部が、回転軸の中心方向に向けて張り出して、ケースの開口面積が縮小されているため、支持部材に作用する荷重が低減される。
しかも、ケースの一端部のみが張り出しているだけであるため、ケースの内部の容積は大幅に減少することがなく、容積が大幅に減少した場合に生じる、ケースの内部の空間における吐出気体の流速の低下抑制作用を回避することができ、気体からの潤滑油の分離性能が損なわれるのを防止することができ、また、ベーン背圧を適切に得ることができる。
以下、本発明の気体圧縮機に係る最良の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る気体圧縮機の一実施形態であるベーンロータリ形式のコンプレッサ100を示す縦断面図である。
図示のコンプレッサ100は、圧縮機本体が、ハウジング10の内部に内蔵された電動モータ90によって駆動されるものであり、車両に搭載される空気調和システムに用いられ、二酸化炭素ガス(R744)を冷媒ガスG(気体)として吸入し、この冷媒ガスGを圧縮し、圧縮された冷媒ガスGを吐出する。
詳しくは、内部に電動モータ90が配設され、この電動モータ90の回転軸91が延びる方向のうち一方の端部側が開口したモータハウジング13と一端部が開口したケース11とからなるハウジング10と、電動モータ90の回転軸91と一体的に回転する回転軸51を具備した圧縮機本体と、ケース11の一端部に締結され、モータハウジング13の開口とケース11の開口とを互いに対向させて締結ボルト71により両者11,13を締結した状態で形成されるハウジング10の内部空間を、モータハウジング13側の空間とケース11側の空間とに仕切るとともに、ケース11側の空間に配設される圧縮機本体を図2に示すように6本のボルト73によって保持するセンタープレート12(支持部材)とを備えている。
ここで、センタープレート12は、図2の断面図に示すように、ケース11の一端部に5本の六角穴付きボルト72(締結部材)によって締結固着されており、また、図1に示すように、略ハット状の断面を有して、このハット状断面の凸部分が、電動モータ90のステータよりも内周側に形成された空隙空間に突入した配置となっている。
このように、回転軸51,91の軸方向に関して、電動モータ90の占有空間のうち実際には空隙となっている空間に、センタープレート12の一部を突入させた配置としたことにより、回転軸51,91の軸方向に沿った空間利用効率を向上させることができ、コンプレッサ100の、軸方向に沿った長さの短縮が図られている。なお、符号92は、電動モータ90を駆動する電力を供給される電気配線が設けられたターミナルである。
圧縮機本体は、回転軸51と一体的に回転軸51回りに回転するロータ50(回転体)と、ロータ50の外周面の外方を覆う内周面の断面輪郭が楕円状のシリンダ40と、ロータ50およびシリンダ40をこれらの両端面側からそれぞれ挟む2つのサイドブロック(フロントサイドブロック20,リヤサイドブロック30)と、ロータ50からシリンダ40の内周面方向に突出可能とされた図示しない複数のベーンとを備えた構成である。
そして、ロータ50の回転に伴って、ロータ50とシリンダ40と2つのサイドブロック20,30と回転方向前後2つのベーンとによって囲まれた空間(圧縮室)の容積が周期的に変化することにより、この圧縮室に吸入された冷媒ガスG(気体)が圧縮されて高圧となり、吐出される。
なお、電動モータ90の回転軸91と圧縮機本体の回転軸51とは、物理的には別体の部材であってもよいし、あるいは、一体に形成されているものであってもよい。
また、モータハウジング13には、外部から冷媒ガスGを取り入れる吸入ポート14が形成され、この吸入ポート14から吸入された気体Gは、モータハウジング13側の内部空間のうち電動モータ90の占有空間以外の空隙空間(吸入室)15に供給される。
一方、ケース11には、圧縮された気体Gを外部に吐出する吐出ポート17が形成され、圧縮機本体から吐出された高圧の冷媒ガスGは、ケース11側の空間のうち圧縮機本体の占有空間以外の空間(吐出室)16を介して、吐出ポート17から外部に吐出される。
そして、吸入室15に供給された冷媒ガスGは、センタープレート12に形成された通気孔12aを介して圧縮機本体に吸入されて高圧に圧縮され、この吐出室16を経て吐出ポート17から吐出される。
また、センタープレート12は、2つのサイドブロック20,30のうちセンタープレート12の側のサイドブロックすなわちフロントサイドブロック20とシリンダ40との外方を覆い、ケース11の側のサイドブロックすなわちリヤサイドブロック30の外周縁部が、ケース11の開口11c(図3参照)の内周縁部に当接している。
なお、図1において、電動モータ90の回転軸91は、その一端が、ボールベアリング93によりモータハウジング13に軸支されている。また、圧縮機本体のリヤサイドブロック30には、圧縮室から吐出室16に吐出される冷媒ガスGに混入した冷凍機油Rを冷媒ガスGから分離するための金網である油分離器(図示せず)を具備したサイクロンブロック60が取り付けられている。
ここで、ケース11は、図3に示すように、開口11cを形成する一端部11dが回転軸51,91の中心C方向に向けて張り出して形成されている。
そして、一端部11dが中心C方向に張り出した結果、この張出し部分11aの内周縁部が開口11cの開口径D2となり、この開口径D2は、ケース11の内部における、中心Cに直交する面内での空間径D1よりも小さい径(D2<D1)となる。
次に本実施形態のコンプレッサ100の作用について説明する。
まず、ケース11側の内部空間である吐出室16は、圧縮機本体から高圧の冷媒ガスGが吐出されるため高圧となる。そして、この吐出室16の内圧は瞬間的には略静圧p[N/mm2]と見なすことができ、この吐出室16に臨む圧縮機本体すなわちサイクロンブロック60およびリヤサイドブロック30には、ケース11の開口11cの面積Sに応じた、回転軸51の沿った方向への荷重F(=pS)が作用する。
ケース11の開口11cの面積Sは、開口径D2に依存するため、開口径D2が大きければ開口面積Sは大きく、したがって作用する荷重Fが大きくなり、一方、開口径D2が小さければ、開口面積Sが小さく、したがって作用する荷重Fが小さくなる。
そして、圧縮機本体に作用した回転軸51方向に沿った荷重Fは、この圧縮機本体を支持するセンタープレート12に作用する。このときセンタープレート12に作用する、回転軸51方向に沿った荷重は、圧縮機本体に作用する荷重Fに応じたものとなる(摩擦力等を考慮しないときは、荷重Fに略等しいと見なすことができる。)。
このセンタープレート12に作用する荷重は、センタープレート12とケース11とを締結する六角穴付きボルト72に、引張り荷重として作用する。
ここで、本実施形態に係るコンプレッサ100におけるケース11の開口径D2は、従来のコンプレッサのようにケース11の内部における空間径D1と等しくはなく、ケース11の内部の空間径D1より小さく形成されているため、六角穴付きボルト72に作用する引張り荷重は、従来のコンプレッサよりも低減される。
したがって、この六角穴付きボルト72の使用本数を減らしたり、より細いボルトを使用することができ、これによりコンプレッサ100の重量を軽減し、また製造コストを低減することができる。
しかも、ケース11の一端部11dの一部(張出し部分11a)のみが張り出しているだけであるため、ケース11の内部の容積が大幅に減少することがなく、この結果、容積が大幅に減少した場合に生じる吐出室16における冷媒ガスGの流速の低下抑制作用を回避することができる。したがって、吐出室16における冷媒ガスGの流速の低下抑制に伴う冷凍機油Rの分離性能の低下を防止することができる。
また、本実施形態に係るコンプレッサ100は、その圧縮対象気体が、高圧動作冷媒ガス(二酸化炭素ガス(R744))であるため、圧縮機本体から吐出される冷媒ガスGの圧力が、旧来の伝統的な冷媒ガスである一般的なフロンガス等よりも高く、吐出室16の内部の圧力は、そのような一般的なフロンガス等を用いたものに比べて格段に高圧となる。
このため、センタープレート12に作用する回転軸51の延びる方向に沿った荷重Fも高圧となるところ、上述した荷重低減効果が、一層顕著に発揮される。
しかも、このような高圧動作の冷媒ガスGを圧縮対象とする圧縮機本体は、高圧の吐出圧を得ることができるため、圧縮機本体のサイズを小さくしても、所望とする吐出圧力を得やすい、という特徴がある。したがって、ケース11の一端部11dを回転軸51の中心C方向に向けて張り出させてケース11の開口面積Sを縮小したときに、それに伴って圧縮機本体のサイズを小さくしても、所望とする吐出圧を確保することができる。
また、本実施形態に係るコンプレッサ100は、圧縮機本体が、回転軸51回りに回転軸51と一体的に回転するロータ50と、このロータ50の外周面の外方を覆うシリンダ40と、ロータ50およびシリンダ40をロータ50およびシリンダ40の両端面側からそれぞれ挟む2つのサイドブロック20,30と、ロータ50からシリンダ40の内周面方向に突出可能とされた複数のベーンとを備えたベーンロータリ形式の気体圧縮機であるが、この形式のコンプレッサ100は、圧縮機本体の内部すなわち圧縮室に吸入させる冷媒ガスGが待機する吸入室15と、圧縮室から高圧の冷媒ガスGが吐出される吐出室16とが、回転軸51の延びた方向に関して、圧縮機本体を挟んで互いに反対側に配設される。
そして、吸入室15は低圧であり、吐出室16は高圧であるため、この室内圧間の圧力バランスにより、圧縮機本体は本質的に、吐出室16側から吸入室15側に押圧されやすい構造となっている。
したがって、センタープレート12に掛る荷重が大きく、よって、本実施形態のコンプレッサ100によって奏されるセンタープレート12への負荷荷重軽減効果を、より顕著なものとすることができる。
なお、本実施形態に係るコンプレッサ100は、ケース11の一端部11dのうち、主として図示上側の部分が中心Cに向けて大きく張り出され、図示下側の部分の張出し量は、上側の張出し部分11aに比べて相対的に小さく設定されているが、下側の張出し部分11aについても、上側の張出し部分11aと同様に、中心Cに向けて大きく張り出されたものとしてもよい。
この場合、ケース11の開口面積をさらに小さくすることができ、六角穴付きボルト72に掛る荷重をさらに低減することができる。
ただし、この場合、ケース11の下側の張出し部分11aの張出し量の増大に伴って、リヤサイドブロック30の下端部の位置が、図4(a)に示すように、図示上方に移動する。
ここで、リヤサイドブロック30には、吐出室16に貯留した冷凍機油Rの通路である油路32(潤滑油用通路)が形成されており、リヤサイドブロック30の下端部には、油路32に冷凍機油Rを取り入れる取入れ口31(給油口)が吐出室16に臨んで開口している。
そして、油路32を通った冷凍機油Rは、圧縮機本体の各部の潤滑や、圧縮機本体のベーンへの背圧供給のために用いられるが、吐出室16における冷凍機油Rの貯留量が少ないときは、リヤサイドブロック30の下端部に形成された取入れ口31が、貯留している冷凍機油Rの液面よりも高い位置となる機会が生じやすくなり、潤滑や背圧供給を適切に行えなくなる虞がある。
そこで、この取入れ口31に、吐出室16の下部に貯留した冷凍機油Rの液面よりも下方において開口する給油管33を接続した構成を採用するのが好ましい。
このように、取入れ口31に給油管33が接続されていることにより、例え、冷凍機油Rの液面が取入れ口31よりも低い位置となった場合にも、給油管33の下側開口は冷凍機油Rの液面よりも下方位置にあるため、給油管33を介して油路32に冷凍機油Rを供給することができ、潤滑性能や背圧供給性能が低下するのを防止することができる。
また、本実施形態に係るコンプレッサ100は、ハウジング10の内部に電動モータ90を備えたものであり、このため、センタープレート12が、電動モータ90側の内部空間とケース11側の内部空間とを仕切る構成であるが、本発明の気体圧縮機はこの構成に限定されるものではなく、電動モータ90を備えずに、外部から駆動力を得る気体圧縮機であってもよい。
そして、電動モータ90を備えない気体圧縮機では、内部空間を仕切るセンタープレート12は備えない構成となるが、例えば図5に示すコンプレッサ100のように、ケース11の一端部に締結され、ケース11とによって囲まれた内部の空間に配設される圧縮機本体(回転軸51、ロータ50、シリンダ40、フロントサイドブロック20、リヤサイドブロック30等)を保持するフロントヘッド12′は、上述した支持部材たるセンタープレート12と同様の機能を奏するため、このようなコンプレッサ100も、本発明に係る気体圧縮機の一実施形態とすることができる。
なお、図5に示したコンプレッサ100の各符号は、図1に示した同一符号の各構成要素に対応している。また、符号80は、例えば車載エンジンなどの動力供給源から受けた動力を、回転軸51へ伝達する電磁クラッチである。
このように構成された実施形態のコンプレッサ100にあっても、図1に示したコンプレッサ100と同様に、ケース11の一端部が回転軸51方向に張り出して形成されており、この張出し部分11aの内周縁部によって規定されるケース11の開口面積を従来よりも小さくすることができる。
したがって、フロントヘッド12′(支持部材)に作用する荷重を低減することができ、フロントヘッド12′とケース11とを締結する六角穴付きボルト72に作用する引張り荷重を低減することができる。
さらに、ケース11の張出し部分11aのみが張り出しているだけであるため、ケース11の内部の容積が大幅に減少することがなく、この結果、容積が大幅に減少した場合に生じる吐出室16における冷媒ガスGの流速の低下抑制作用を回避することができる。したがって、吐出室16における冷媒ガスGの流速の低下抑制に伴う冷凍機油Rの分離性能の低下を防止することができる。
なお、その他の効果についても、図1に示したコンプレッサ100と同様に発揮することができる。
上述した各実施形態のコンプレッサ100は、ケース11の一端部11dの開口全周が、中心Cに向けて張り出したものであるが、開口全周に張出し部分を形成するのではなく、例えば図6に示すように、張出し部分を、開口11cの下縁部を除いた部分に形成したもの、すなわち下側張出し部分11aの張出し量を0(ゼロ)とした形態も採用することができる。
このように下側張出し部分11aの張出し量を0としたコンプレッサ100は、ケース11の内部の吐出室16の底面と開口11cの下縁とが同一の高さとなり、したがって、圧縮機本体の下面に形成された取入れ口31を、開口1cの下縁よりもわずかに高い位置、すなわち吐出室16の底面よりもわずかに高い位置にとどめることができ、冷凍機油Rの液面が吐出室16の底面近傍に低下するまでは、取入れ口31から冷凍機油Rを適正に給油することができ、給油管33を具備することなく、潤滑性能やベーン背圧を十分に確保することができる。