JP4350578B2 - インホイールモータ搭載全輪駆動車及びその制駆動方法 - Google Patents
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Description
そこで、近年、図6(b)に示すような、内燃機関42に発電機43を取付け、内燃機関42にて前輪40F,40Fを駆動しつつ、上記発電機43で発生した電力により、上記内燃機関42とは独立して、車体40の後部に搭載された電気モータ44を用いて後輪40R,40Rを駆動させる方式の全輪駆動車が提案されている。なお、同図において、符号44Cは上記電気モータ44を制御するモータコントローラである。この方式は、車体40の前部から車体40の後部に動力を伝達するトランスファ41dやプロペラシャフト41cなどが不要となるため、居住空間の拡大が図れるとともに、車輌重量を軽減できるというメリットがある。
しかしながら、周知の通り、一般的なインホイールモータ車では、モータ44が車輌バネ下部に固定的に取付けられていることからバネ下質量が大きくなり、そのため、上記図6(a),(b)に示した構成の全輪駆動車に比べて、後輪40R,40R側の乗り心地性とタイヤ接地性とが悪化するという問題点を抱えることになる。
このように、インホイールモータを車輌バネ下部に取付ける際に、上記モータ3を、弾性要素と粘性要素を介して車輌バネ下部に支持させるような構造とすれば、インホイールモータ3自身はバネ下質量とはならず、バネ下の振動を低減するダイナミックダンパ装置として作動することになるので、接地性は逆に向上する。
ところで、上記モータ3を全駆動領域で使用せず、例えば、低μ路での発進時のアシストとしてのみ使用するというような、用途を限定して使用する場合には、未使用時には上記ホイール2と上記モータ3間の動力伝達路を切り離す必要が生じてくる。しかしながら、上記構成のインホイールモータ3を従動輪に装着したシステムにおいては、上記動力伝達機構をスムーズに断続する動力断続手段については、本出願人の知るところでは、提案されてはいない。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインホイールモータ搭載全輪駆動車において、上記動力伝達機構を、2枚の中空円盤状のプレートを、ロータ周方向に配置された、表裏で作動方向が直交する複数のクロスガイドにより結合する構成としたものである。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のインホイールモータ搭載全輪駆動車において、上記動力伝達機構のホイールと連結される側のプレートを、ブレーキディスクとともにブレーキキャリパで両側から挟み込む構成の制動手段を設けたものである。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のインホイールモータ搭載全輪駆動車において、上記動力伝達機構のホイールと連結される側のプレートのブレーキディスクとの摺動面に高い摩擦力を有する部材を取付けたものである。
また、上記ホイールと連結される側のプレートをブレーキディスクとともにブレーキキャリパで両側から挟み込む構造として、ブレーキキャリパのブレーキパットとブレーキディスク間、ブレーキディスクとホイールに連結される側のプレート間、及び、上記プレートと上記ブレーキパット間にて摩擦力を発生させるようにすれば、簡単な構成で、確実に制動力を得ることができる。このとき、上記ホイールと連結される側のプレートのブレーキディスクとの摺動面に、ブレーキパット材のような高い摩擦力を有する摩擦材を配置すれば、動力を更に確実に伝達することができる。
図1は、本最良の形態に係わるインホイールモータシステムの構成を示す図で、同図において、1はタイヤ、2はリム2aとホイールディスク2bとから成るホイール、3は半径方向に対して内側に設けられた非回転側ケース3aに固定されたモータステータ(以下、ステータという)3Sと、半径方向に対して外側に設けられ、軸受け3jを介して上記非回転側ケース3aに対して回転可能に接合された回転側ケース3bに固定されたモータロータ(以下、ロータという)3Rとを備えたアウターロータ型のインホイールモータである。
4はホイール2とその回転軸において連結されたハブ部、5は上下のサスペンションアーム6a,6bに連結されるナックル、7はショックアブゾーバ等から成るサスペンション部材、8は上記ハブ部4に装着されたブレーキディスク、9Aは本発明によるローラ付キャリパ、9Bはブレーキキャリパである。
また、10はモータの非回転側ケース3aを、車輌の足回り部品であるナックル5に対して、車輌の上下方向及び前後方向に粘性要素及び弾性要素により支持する緩衝機構、20はモータの回転側ケース3bに取付けられた中空円盤状のモータ側プレート21とホイール2に連結される側のプレートである動力伝達用プレート22とを表裏で作動方向が直交するように配置された複数個のクロスガイド23により結合した動力伝達機構で、モータ3の回転力を、上記ブレーキディスク8及びハブ部4を介して、ホイール2に伝達する。
また、ブレーキキャリパ9Bは、その内壁側の上記ブレーキディスク8に対向する位置に設けられた摩擦材から成るブレーキパット94と、このブレーキパット94をブレーキディスク8に押し付けるためのピストン95とを備えている。
本例では、上記動力伝達機構20の動力伝達用プレート22に、動力伝達用連結部材24を取付け、この連結部材24をブレーキディスク8と上記ローラ91とにより両側から挟み込むことにより、上記モータ3の回転力を、ハブ部4を介して、ホイール2に伝達する。また、上記連結部材24をブレーキディスク8と上記ブレーキパット94とにより両側から挟み込むことにより、上記ホイール2の回転を制動する。
上記連結部材24は、詳細には、動力伝達用プレート22からブレーキディスク8方向に突出する水平片24aとこの水平片から上記ブレーキディスク8の延長方向に平行に延長する垂直片24bとを備えたもので、この垂直片24bの上記ブレーキディスク8側に、ブレーキパット材のような高い摩擦力を有する摩擦材24cが取付けられている。
本例の動力断続手段は、上記動力伝達用プレート22に取付けられた上記連結部材24と、上記ローラ付きピストン93と、ブレーキディスク8とにより構成され、制動手段は、上記連結部材24と上記ローラ付きピストン93とブレーキディスク8とブレーキパット94とにより構成される。
なお、上記連結部材24は、ハブ部4にベアリング24kを介して連結されており、上記モータ3の動力は、モータ側プレート21及び動力伝達用プレート22から直接ホイール2に伝達されるのではなく、ハブ部4に装着されたブレーキディスク8を介して伝達される。
上記動力伝達機構20に用いられるクロスガイド23は、図5(a)に示すように、モータ側プレート21に装着されるビーム状の部材である第1のガイドレール23Aと、動力伝達用プレート22に配置される第2のガイドレール23Bと、上面及び下面にそれぞれ案内溝23a,23bが設けられたクロスガイド本体23Cとを備えたもので、第1のガイドレール23Aと第2のガイドレール23Bとは、クロスガイド本体23Cの案内溝23a,23bに沿って互いに直交する方向に稼動することができる。
本例では、図5(b)に示すように、モータ側プレート21と動力伝達用プレート22との間に、上記クロスガイド23を4個等間隔(90°間隔)に配置するとともに、上記各クロスガイド23の第1のガイドレール23Aを、その稼動方向が全て上記プレート21の径方向に対して45°方向になるように配置している。したがって、第1のガイドレール23Aの各稼動方向は全て同方向(45°方向)を向き、第2のガイドレール23Bのそれぞれの稼動方向は、上記各第1のガイドレール23Aの稼動方向に対してそれぞれ直交する方向となる。これにより、インホイールモータ3の回転側ケース3bからの回転力は、まず、モータ側プレート21を介して、第1のガイドレール23Aに入力され、この第1のガイドレール23Aに入力された周方向の力はクロスガイド本体23Cを通して、第2のガイドレール23Bに伝達され、これにより、動力伝達用プレート22が回転し、この回転が、ブレーキディスク8及びハブ部4を介して、上記ホイール2に伝達される。
このとき、クロスガイド本体23Cには、第1のガイドレール23Aからの入力と第2のガイドレール23Bからの反作用によって、周方向に回転する力と径方向外側に押し出される力とが作用する。しかし、第1のガイドレール23Aと第2のガイドレール23Bとは回転する方向に動くが、常に互いに直交した方向を保とうとするため、上記クロスガイド23を径方向外側に押し出そうとする力は、クロスガイド本体23Cの捩れ反力と釣り合う。その結果、複数のクロスガイド23のみで偏心を吸収することができる。
本最良の形態では、上記モータ3を上記緩衝機構10により弾性支持しているため、モータロータ軸とホイール軸とは相対的に偏心するが、ロータ3Rとホイール2とを上記動力伝達機構20を用いて結合させることにより、上記のような偏心が生じた場合でも、ロータ3Rからのトルクをスムーズにホイール2に伝達させることができる。
低μ路での発進時のようにモータアシストが必要な場合には、ローラ付キャリパ9Aのローラ付きピストン93のピストン92を稼動させて、ローラ91,91をブレーキディスク8側に突出させ、動力伝達用プレート22の連結部材24とブレーキディスク8とを上記ローラ91,91で挟み込む。このとき、ローラ91と連結部材24間、及び、ローラ91とブレーキディスク8間には摩擦が発生しないので、連結部材24もブレーキディスク8もそのまま回転する。
一方、動力伝達用プレート22とブレーキディスク8との間には挟み込みの摩擦力が発生するので、上記動力伝達用プレート22と上記ブレーキディスク8とはともに回転する。本例では、上記連結部材24とブレーキディスク8との摺動面である垂直片24bのブレーキディスク8側に、ブレーキパット材のような高い摩擦力を有する摩擦材24cを取付けているので、上記動力伝達用プレート22とブレーキディスク8とは滑ることなく、一体に回転する。したがって、モータ3からの回転力を確実にホイール2に伝達することができる。
また、制動時には、ブレーキキャリパ9Bのピストン95を稼動させて、ブレーキパット94,94をブレーキディスク8側に突出させ、動力伝達用プレート22の連結部材24とブレーキディスク8とを上記ローラ91,91で挟み込むようにすれば、ブレーキパット94とブレーキディスク8間、ブレーキディスク8と動力伝達用プレート22間、動力伝達用プレート22と上記ブレーキパット94間にて摩擦力を発生させ、制動力を得ることができる。また、連結部材24の垂直片24bには摩擦材24cを取付けられているので、動力伝達用プレート22とブレーキディスク8との回転を確実に制動することができる。
また、連結部材24をブレーキディスク8とともにブレーキキャリパ9Bで両側から挟み込む構造の制動手段を設けたので、簡単な構成で、確実に制動力を得ることができる。
更に、上記モータ3を、粘性要素及び弾性要素を備えた緩衝機構10により、車輌のバネ下部に対して支持し、ダイナミックダンパ装置として作動するようにしたので、タイヤの接地性能を高めることができるとともに、凹凸路走行時のバネ下振動を大幅に低減することができるので、安全性が高く、かつ、乗り心地性に優れたインホイールモータ搭載全輪駆動車を得ることができる。
また、緩衝機構についても、上記構成の緩衝機構10に限らず、インホイールモータ3を車輌バネ下部に対して、粘性要素及び弾性要素により上下方向に支持する構成のものであればよい。
3 インホイールモータ、3R モータロータ、3S モータステータ、
3a 非回転側ケース、3b 回転側ケース、3j 軸受け、4 ハブ部、
5 ナックル、6a,6b サスペンションアーム、7 サスペンション部材、
8 ブレーキディスク、9A ローラ付キャリパ、9B ブレーキキャリパ、
10 緩衝機構、20 動力伝達機構、21 モータ側プレート、
22 動力伝達用プレート、23 クロスガイド、24 動力伝達用連結部材、
24a 水平片、24b 垂直片、24c 摩擦材、24k ベアリング、
91 ローラ、92,95 ピストン、93 ローラ付きピストン、
94 ブレーキパット。
Claims (5)
- 内燃機関の回転力により前輪または後輪のどちらか一方を駆動する車輌の非駆動輪に搭載された、補助駆動用の電気モータが、上記非駆動輪のバネ下部に対して、粘性要素及び弾性要素により上下方向に支持された構造のインホイールモータと、
上記モータの回転を上記非駆動輪のホイールに伝達する動力伝達機構と、
上記モータとホイールとの連結を断続する動力断続手段とを備えたインホイールモータ搭載全輪駆動車であって、
上記動力伝達機構を、上記モータのロータと上記ホイールとを連結する、複数枚の中空円盤状のプレートと、隣接する中空円盤状のプレート間を結合するガイド部材とを備えた構成とし、
上記動力断続手段を、上記動力伝達機構のホイールと連結される側のプレートを、ブレーキディスクの周方向に回転可能なローラとブレーキディスクとにより両側から挟み込む構成としたことを特徴とするインホイールモータ搭載全輪駆動車。 - 上記動力伝達機構を、2枚の中空円盤状のプレートを、ロータ周方向に配置された、表裏で作動方向が直交する複数のクロスガイドにより結合する構成としたことを特徴とする請求項1に記載のインホイールモータ搭載全輪駆動車。
- 上記動力伝達機構のホイールと連結される側のプレートを、ブレーキディスクとともにブレーキキャリパで両側から挟み込む構成の制動手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載のインホイールモータ搭載全輪駆動車。
- 上記動力伝達機構のホイールと連結される側のプレートのブレーキディスクとの摺動面に高い摩擦力を有する部材を取付けたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のインホイールモータ搭載全輪駆動車。
- 内燃機関の回転力により前輪または後輪のどちらか一方を駆動する車輌の非駆動輪に、補助駆動用の電気モータが、上記非駆動輪のバネ下部に対して、粘性要素及び弾性要素により上下方向に支持され、かつ、上記モータのロータとホイールとが、複数枚の中空円盤状のプレートと、隣接する上記プレート間を結合するガイド部材とを備えた動力伝達機構を介して連結された構造のインホイールモータを搭載した全輪駆動車を制駆動する際に、上記動力伝達機構のホイールと連結される側のプレートである動力伝達用プレートを、ブレーキディスクの周方向に回転可能なローラとブレーキディスクとにより両側から挟み込む構成の動力断続手段を設け、モータアシストが必要な場合のみ、上記動力伝達用プレートを上記ローラと上記ブレーキディスクとにより両側から挟み込んで、上記モータの回転力を上記ホイールに伝達することで、上記モータの回転力により上記非駆動輪を駆動し、上記動力伝達用プレートを、ブレーキディスクとともにブレーキキャリパで両側から挟み込むことで、上記ホイールの回転を制動するようにしたことを特徴とするインホイールモータ搭載全輪駆動車の制駆動方法。
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