以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
<第1の実施の形態>
図1に、本実施の形態に係る内燃機関の制御装置であるエンジンECU(Electronic Control Unit)で制御されるエンジンシステムの概略構成図を示す。なお、図1には、エンジンとして直列4気筒ガソリンエンジンを示すが、本発明はこのようなエンジンに限定されるものではない。
図1に示すように、エンジン10は、4つの気筒112を備え、各気筒112はそれぞれ対応するインテークマニホールド20を介して共通のサージタンク30に接続されている。サージタンク30は、吸気ダクト40を介してエアクリーナ50に接続され、吸気ダクト40内にはエアフローメータ42が配置されるとともに、電動モータ60によって駆動されるスロットルバルブ70が配置されている。このスロットルバルブ70は、アクセルペダル100とは独立してエンジンECU300の出力信号に基づいてその開度が制御される。一方、各気筒112は共通のエキゾーストマニホールド80に連結され、このエキゾーストマニホールド80は三元触媒コンバータ90に連結されている。
各気筒112に対しては、筒内に向けて燃料を噴射するための筒内噴射用インジェクタ110と、吸気ポートまたは/および吸気通路内に向けて燃料を噴射するための吸気通路噴射用インジェクタ120とがそれぞれ設けられている。これらインジェクタ110、120はエンジンECU300の出力信号に基づいてそれぞれ制御される。また、各気筒内噴射用インジェクタ110は共通の燃料分配管130に接続されており、この燃料分配管130は燃料分配管130に向けて流通可能な逆止弁140を介して、機関駆動式の高圧燃料ポンプ150に接続されている。なお、本実施の形態においては、2つのインジェクタが別個に設けられた内燃機関について説明するが、本発明はこのような内燃機関に限定されない。たとえば、筒内噴射機能と吸気通路噴射機能とを併せ持つような1個のインジェクタを有する内燃機関であってもよい。
図1に示すように、高圧燃料ポンプ150の吐出側は電磁スピル弁152を介して高圧燃料ポンプ150の吸入側に連結されており、この電磁スピル弁152の開度が小さいときほど、高圧燃料ポンプ150から燃料分配管130内に供給される燃料量が増大され、電磁スピル弁152が全開にされると、高圧燃料ポンプ150から燃料分配管130への燃料供給が停止されるように構成されている。なお、電磁スピル弁152はエンジンECU300の出力信号に基づいて制御される。
一方、各吸気通路噴射用インジェクタ120は、共通する低圧側の燃料分配管160に接続されており、燃料分配管160および高圧燃料ポンプ150は共通の燃料圧レギュレータ170を介して、電動モータ駆動式の低圧燃料ポンプ180に接続されている。さらに、低圧燃料ポンプ180は燃料フィルタ190を介して燃料タンク200に接続されている。燃料圧レギュレータ170は低圧燃料ポンプ180から吐出された燃料の燃料圧が予め定められた設定燃料圧よりも高くなると、低圧燃料ポンプ180から吐出された燃料の一部を燃料タンク200に戻すように構成されており、したがって吸気通路噴射用インジェクタ120に供給されている燃料圧および高圧燃料ポンプ150に供給されている燃料圧が上記設定燃料圧よりも高くなるのを阻止している。
エンジンECU300は、デジタルコンピュータから構成され、双方向性バス310を介して相互に接続されたROM(Read Only Memory)320、RAM(Random Access Memory)330、CPU(Central Processing Unit)340、入力ポート350および出力ポート360を備えている。
エアフローメータ42は吸入空気量に比例した出力電圧を発生し、このエアフローメータ42の出力電圧はA/D変換器370を介して入力ポート350に入力される。エンジン10には機関冷却水温に比例した出力電圧を発生する水温センサ380が取付けられ、この水温センサ380の出力電圧は、A/D変換器390を介して入力ポート350に入力される。
燃料分配管130には燃料分配管130内の燃料圧に比例した出力電圧を発生する燃料圧センサ400が取付けられ、この燃料圧センサ400の出力電圧は、A/D変換器410を介して入力ポート350に入力される。三元触媒コンバータ90上流のエキゾーストマニホールド80には、排気ガス中の酸素濃度に比例した出力電圧を発生する空燃比センサ420が取付けられ、この空燃比センサ420の出力電圧は、A/D変換器430を介して入力ポート350に入力される。
本実施の形態に係るエンジンシステムにおける空燃比センサ420は、エンジン10で燃焼された混合気の空燃比に比例した出力電圧を発生する全域空燃比センサ(リニア空燃比センサ)である。なお、空燃比センサ420としては、エンジン10で燃焼された混合気の空燃比が理論空燃比に対してリッチであるかリーンであるかをオン−オフ的に検出するO2センサを用いてもよい。
アクセルペダル100は、アクセルペダル100の踏込み量に比例した出力電圧を発生するアクセル開度センサ440に接続され、アクセル開度センサ440の出力電圧は、A/D変換器450を介して入力ポート350に入力される。また、入力ポート350には、機関回転数を表わす出力パルスを発生する回転数センサ460が接続されている。エンジンECU300のROM320には、上述のアクセル開度センサ440および回転数センサ460により得られる機関負荷率および機関回転数に基づき、運転状態に対応させて設定されている燃料噴射量の値や機関冷却水温に基づく補正値などが予めマップ化されて記憶されている。
図2および図3を参照して、エンジン10の運転状態に対応させた情報である、筒内噴射用インジェクタ110と吸気通路噴射用インジェクタ120との噴き分け比率(以下、DI比率(r)とも記載する。)を表わすマップについて説明する。これらのマップは、エンジンECU300のROM320に記憶される。図2は、エンジン10の温間用マップであって、図3は、エンジン10の冷間用マップである。
図2および図3に示すように、これらのマップは、エンジン10の回転数を横軸にして、負荷率を縦軸にして、筒内噴射用インジェクタ110の分担比率がDI比率rとして百分率で示されている。
図2および図3に示すように、エンジン10の回転数と負荷率とに定まる運転領域ごとに、DI比率rが設定されている。「DI比率r=100%」とは、筒内噴射用インジェクタ110からのみ燃料噴射が行なわれる領域であることを意味し、「DI比率r=0%」とは、吸気通路噴射用インジェクタ120からのみ燃料噴射が行なわれる領域であることを意味する。「DI比率r≠0%」、「DI比率r≠100%」および「0%<DI比率r<100%」とは、筒内噴射用インジェクタ110と吸気通路噴射用インジェクタ120とで燃料噴射が分担して行なわれる領域であることを意味する。なお、概略的には、筒内噴射用インジェクタ110は、出力性能の上昇に寄与し、吸気通路噴射用インジェクタ120は、混合気の均一性に寄与する。このような特性の異なる2種類のインジェクタを、エンジン10の回転数と負荷率とで使い分けることにより、エンジン10が通常運転状態(たとえば、アイドル時の触媒暖気時が、通常運転状態以外の非通常運転状態の一例であるといえる)である場合には、均質燃焼のみが行なわれるようにしている。
さらに、これらの図2および図3に示すように、温間時のマップと冷間時のマップとに分けて、筒内噴射用インジェクタ110と吸気通路噴射用インジェクタ120のDI分担率rを規定した。エンジン10の温度が異なると、筒内噴射用インジェクタ110および吸気通路噴射用インジェクタ120の制御領域が異なるように設定されたマップを用いて、エンジン10の温度を検知して、エンジン10の温度が予め定められた温度しきい値以上であると図2の温間時のマップを選択して、そうではないと図3に示す冷間時のマップを選択する。それぞれ選択されたマップに基づいて、エンジン10の回転数と負荷率とに基づいて、筒内噴射用インジェクタ110および/または吸気通路噴射用インジェクタ120を制御する。
図2および図3に設定されるエンジン10の回転数と負荷率について説明する。図2のNE(1)は2500〜2700rpmに設定され、KL(1)は30〜50%、KL(2)は60〜90%に設定されている。また、図3のNE(3)は2900〜3100rpmに設定されている。すなわち、NE(1)<NE(3)である。その他、図2のNE(2)や、図3のKL(3)、KL(4)も適宜設定されている。
図2および図3を比較すると、図2に示す温間用マップのNE(1)よりも図3に示す冷間用マップのNE(3)の方が高い。これは、エンジン10の温度が低いほど、吸気通路噴射用インジェクタ120の制御領域が高いエンジン回転数の領域まで拡大されるということを示す。すなわち、エンジン10が冷えている状態であるので、(たとえ、筒内噴射用インジェクタ110から燃料を噴射しなくても)筒内噴射用インジェクタ110の噴口にデポジットが堆積しにくい。このため、吸気通路噴射用インジェクタ120を使って燃料を噴射する領域を拡大するように設定され、均質性を向上させることができる。
図2および図3を比較すると、エンジン10の回転数が、温間用マップにおいてはNE(1)以上の領域において、冷間用マップにおいてはNE(3)以上の領域において、「DI比率r=100%」である。また、負荷率が、温間用マップにおいてはKL(2)以上の領域において、冷間用マップにおいてはKL(4)以上の領域において、「DI比率r=100%」である。これは、予め定められた高エンジン回転数領域では筒内噴射用インジェクタ110のみが使用されること、予め定められた高エンジン負荷領域では筒内噴射用インジェクタ110のみが使用されるということを示す。すなわち、高回転領域や高負荷領域においては、筒内噴射用インジェクタ110のみで燃料を噴射しても、エンジン10の回転数や負荷が高く吸気量が多いので筒内噴射用インジェクタ110のみでも混合気を均質化しやすいためである。このようにすると、筒内噴射用インジェクタ110から噴射された燃料は燃焼室内で気化潜熱を伴い(燃焼室から熱を奪い)気化される。これにより、圧縮端での混合気の温度が下がる。これにより対ノッキング性能が向上する。また、燃焼室の温度が下がるので、吸入効率が向上し高出力が見込める。
図2に示す温間マップでは、負荷率KL(1)以下では、筒内噴射用インジェクタ110のみが用いられる。これは、エンジン10の温度が高いときであって、予め定められた低負荷領域では筒内噴射用インジェクタ110のみが使用されるということを示す。これは、温間時においてはエンジン10が暖まった状態であるので、筒内噴射用インジェクタ110の噴口にデポジットが堆積しやすい。しかしながら、筒内噴射用インジェクタ110を使って燃料を噴射することにより噴口温度を低下させることができるので、デポジットの堆積を回避することも考えられ、また、筒内噴射用インジェクタの最小燃料噴射量を確保して、筒内噴射用インジェクタ110を閉塞させないことも考えられ、このために、筒内噴射用インジェクタ110を用いた領域としている。
図2および図3を比較すると、図3の冷間用マップにのみ「DI比率r=0%」の領域が存在する。これは、エンジン10の温度が低いときであって、予め定められた低負荷領域(KL(3)以下)では吸気通路噴射用インジェクタ120のみが使用されるということを示す。これはエンジン10が冷えていてエンジン10の負荷が低く吸気量も低いため燃料が霧化しにくい。このような領域においては筒内噴射用インジェクタ110による燃料噴射では良好な燃焼が困難であるため、また、特に低負荷および低回転数の領域では筒内噴射用インジェクタ110を用いた高出力を必要としないため、筒内噴射用インジェクタ110を用いないで、吸気通路噴射用インジェクタ120のみを用いる。
また、通常運転時以外の場合、エンジン10がアイドル時の触媒暖気時の場合(非通常運転状態であるとき)、成層燃焼を行なうように筒内噴射用インジェクタ110が制御される。このような触媒暖気運転中にのみ成層燃焼させることで、触媒暖気を促進させ、排気エミッションの向上を図る。
図4に、図1の部分拡大図を示す。図4は、図1の各気筒112における筒内噴射用インジェクタ110および吸気通路噴射用インジェクタ120の位置関係およびインテークマニホールド20と吸気バルブ122の位置関係を説明する図である。
インテークマニホールド20の燃焼室側には吸気バルブ122が設けられており、その吸気バルブ122の上流側に吸気通路噴射用インジェクタ120が配置されている。吸気通路噴射用インジェクタ120は、吸気通路であるインテークマニホールド20の内壁に付着したデポジットに向けて燃料を噴射する。このインテークマニホールド20の内壁には、吸気バルブ122と、排気バルブ(図示しない)とのオーバーラップにより燃焼室内のPMがインテークマニホールド20に逆流し、吸気通路噴射用インジェクタ120により噴射された燃料が噴霧され微細化された燃料が接着剤として働き、インテークマニホールド20の吸気バルブ122の近い側の内壁にデポジットとして堆積する。
吸気通路噴射用インジェクタ120は、このデポジットに向けて燃料を噴射するように配置されている。また、図4に示すように配置された筒内噴射用インジェクタ110と吸気通路噴射用インジェクタ120との燃料分担比率は、通常時においては前述の図2および図3に示したとおりである。
図5を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるエンジンECUにより実行されるプログラム制御構造について説明する。
ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、エンジンECU300は、イグニッションがオンにされたか否かを判断する。イグニッションがオンにされると、エンジン10が始動する。イグニッションがオンにされると(S100にてYES)、処理はS110へ移される。もしそうでないと(S100にてNO)、処理はS100へ戻され、イグニッションがオンにされるまで待つ。
S110にて、エンジンECU300は、デポジット付着を検知したか否かを判断する。この判断は、デポジットがインテークマニホールド20に付着することにより、吸気の流路断面積が減少して流速が上昇し、筒内気流強度が上昇して混合気の均質度合いが向上する。このため、燃焼状態が改善して燃焼速度が上昇して燃焼時間が短縮された結果、燃焼ガス温度が低下する。これを、排気側に設けられた排気温センサにより検知して、排気温が下がるとインテークマニホールド20にデポジットが付着していることを検知する。なお、別の方法によりデポジットの付着を検知するようにしてもよい。デポジットの付着が検知されると(S110にてYES)、処理はS120へ移される。もしそうでないと(S110にてNO)、処理はS140へ移される。
S120にて、エンジンECU300は、ポート温度(ここでは、デポジットが付着する被付着物である、インテークマニホールド20の吸気バルブ122近傍における温度をポート温度という)Tが冷間時のポート温度T(1)よりも高いか否かを判断する。ポート温度Tが冷間時のポート温度T(1)よりも高くなっていると(S120にてYES)、処理はS130へ移される。もしそうでないと(S120にてNO)、処理はS140へ移される。
S130にて、エンジンECU300は、図2および図3に示すマップにより定められる適合値に比べて吸気通路噴射用インジェクタ120による燃料噴射比率を高めて、筒内噴射用インジェクタ110および吸気通路噴射用インジェクタ120により燃料を噴き分ける。なお、このとき、筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射量を減らして、エンジン10に要求される適正な燃料量を実現する。
S140にて、エンジンECU300は、図2および図3に示すマップにより適合されたとおりの燃料噴射比率で、筒内噴射用インジェクタ110および吸気通路噴射用インジェクタ120により燃料を噴き分ける。
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係るエンジンECU300により制御されるエンジン10の動作について説明する。
インテークマニホールド20の吸気通路噴射用インジェクタ120側の内壁にデポジットが付着すると(S110にてYES)、ポート温度Tが冷間時のポート温度T(1)よりも高いか否かが判断される(S120)。ポート温度Tが冷間時のポート温度T(1)よりも上昇している場合には(S120にてYES)、マップにより適合される値に比べて吸気通路噴射用インジェクタによる燃料比率を高める(S130)。
このとき、ポート温度Tが冷間時のポート温度T(1)よりも高くなっており、一方インテークマニホールド20の内壁に付着したデポジットは吸気にさらされ温度が低下している(たとえば、外気温が低いときの暖気運転中)。この結果、ポート温度Tとデポジットの温度との差が大きくなっているため、熱膨張率が異なるこれらについてのそれぞれの熱膨張がより異なっておりインテークマニホールド20の内壁に付着したデポジットが剥離しやすい状態にある。このような場合には、吸気通路噴射用インジェクタ120からの燃料噴射比率を高めてより多くの燃料を噴射して、その燃料の噴霧力によりインテークマニホールド20に付着したデポジットを除去することができる。
一方、ポート温度Tが冷間時のポート温度T(1)以下の場合には、吸気通路噴射用インジェクタ120による燃料噴射比率を高めることなく、マップによる適合値どおりの燃料噴射比率で、筒内噴射用インジェクタ110および吸気通路噴射用インジェクタ120を制御する。このような場合には、吸気通路噴射用インジェクタ120からの燃料噴射比率を高めて、インテークマニホールド20に付着したデポジットを除去しようとしても、温度差があまりなく(熱膨張率に差があるとしても)熱膨張に大きな差がなく、デポジットを除去できる可能性が低いため、マップで適合されるとおりの燃料噴射比率で、筒内噴射インジェクタ110および吸気通路噴射用インジェクタ120の燃料噴射量をそれぞれ定める。
以上のようにして、本実施の形態に係る制御装置であるエンジンECUにより、デポジットが付着されていることが検知された場合であって、ポート温度が高く、ポート温度とデポジット温度との差が大きいと判断される場合には吸気通路噴射用インジェクタからの燃料噴射比率を高めて、剥離しやすい状態となっているインテークマニホールドに付着したデポジットを、吸気通路噴射用インジェクタにより噴射された燃料により除去させることができる。
<第2の実施の形態>
図6を参照して、本発明の第2の実施の形態に係るエンジンECU300で実行されるプログラムの制御構造について説明する。なお、第2の実施の形態に係る制御装置であるエンジンECU300においては、前述の第1の実施の形態に係るエンジンECU300で実行されるプログラムとは別のプログラムを実行する点のみが異なる。それ以外のハードウェア構成(図1、図4)やマップ(図2、図3)は同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
図6に示すフローチャートにおいて前述の図5のフローチャートに示した処理と同じ処理については同じステップ番号を付してある。それらについての処理も同じである。したがってそれらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
図6に示すように、本実施の形態に係るエンジンECU300で実行されるプログラムは、前述の図5のS120がS200に置き換わっている点のみが異なる。
S200にて、エンジンECU300は、WOT相当のエンジン負荷率KLを検知したか否かを判断する。すなわち、エンジンの負荷率KLが相当に大きくスロットル開度が大きいことが検知されたか否かが判断される。WOT相当のエンジン負荷率KLが検知されると(S200にてYES)、処理はS130へ移される。もしそうでないと(S200にてNO)、処理はS140へ移される。
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係るエンジンECU300で制御されるエンジン10の動作について説明する。なお、以下の説明においては、前述の第1の実施の形態と同じ動作の説明はここでは繰返さない。
デポジットの付着が検知され(S110にてYES)、WOT相当のエンジン負荷率KLが検知されると(S200にてYES)、図2および図3に示すマップにより適合される比率に比べて吸気通路噴射用インジェクタ120の燃料噴射比率を高めて、より多くの燃料を吸気通路噴射用インジェクタ120から噴射する。このとき、WOT相当のエンジン負荷率KLを検知しているためエンジン10の温度が相当高く、一方スロットル開度が大きく開いているため吸気量が多くデポジットが吸気により冷やされている状態である。このため、デポジットの温度とポート温度との差が大きくなっている。このような場合には、インテークマニホールド20に付着したデポジットが剥離しやすい状態であるため、吸気通路噴射用インジェクタ120による燃料噴射量を増加させてその燃料の噴霧力により剥離しやすくなったデポジットを確実に除去することができる。
図7に、ポート温度とデポジット温度の時間の変化を示す。図7に示すように、冷間からの過渡状態すなわち暖気状態においてはポート温度の方がデポジット温度よりも高く(S120にてYES)、このときに吸気通路噴射用インジェクタ120からの燃料噴射比率を増加させてインテークマニホールド20に付着したデポジットを燃料の噴霧力により除去することができる(第1の実施の形態)。また定常状態となるとポート温度とデポジット温度はほぼ同じになるが、WOTの過渡期においては、ポート温度の方がデポジットの温度よりも高くなる。これはエンジン10に対する負荷率KLが高くなりエンジンの温度が上昇する一方、吸気量が多くなり、その吸気によりデポジットが冷却されることにより温度差が生じる。このような場合においても、吸気通路噴射用インジェクタ120からの燃料噴射量を増加させて、その燃料の噴霧力によりインテークマニホールド20に付着したデポジットが剥離しやすい状態になったときに除去することができる(第2の実施の形態)。
<第3の実施の形態>
図8を参照して、本発明の第3の実施の形態に係るエンジンECU300で実行されるプログラムの制御構造について説明する。なお、第3の実施の形態に係る制御装置であるエンジンECU300においては、前述の第1の実施の形態に係るエンジンECU300で実行されるプログラムとは別のプログラムを実行する点のみが異なる。それ以外のハードウェア構成(図1、図4)やマップ(図2、図3)は同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
図8に示すフローチャートにおいて前述の図5のフローチャートに示した処理と同じ処理については同じステップ番号を付してある。それらについての処理も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
S300にて、エンジンECU300は、大気圧学習値が小さいか否かを判断する。これは、たとえば、車両が高地を走行中ではないのに吸気量が減ってしまったときにYESと判断される。すなわち、平地走行中においては、大気圧の学習値は高い水準になるが、インテークマニホールド20にデポジットが堆積するとそれが管路抵抗となるため吸気量が減少してしまう。これにより、学習値が小さい方へ移行し、デポジットが発生したことを検知することができる。大気圧学習値が小さいと判断されると(S300にてYES)、処理はS310へ移される。もしそうでないと(S300にてNO)、処理はS140へ移される。
S310にて、エンジンECUは、エンジン水温が高いか否かを判断する。エンジン水温が高いと(S310にてYES)、処理はS320へ移される。もしそうでないと(S310にてNO)、処理はS140へ移される。
S320にて、エンジンECU300は、吸気温が高いか否かを判断する。吸気温が高いと(S320にてYES)、処理はS130へ移される。もしそうでないと(S320にてNO)、処理はS140へ移される。
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係るエンジンECU300で制御されるエンジン10の動作について説明する。なお、以下の説明においては、前述の第1の実施の形態と同じ動作の説明はここでは繰返さない。
大気圧学習値が下がって(S300にてYES)、インテークマニホールド20の内壁にデポジットが付着していると判断される。このときに、エンジンの冷却水温が高く(S310にてYES)、吸気温が高いと(S320にてYES)、吸気通路噴射用インジェクタ120からの燃料噴射比率を高める。
このようにすると、エンジン冷却水温が高く吸気温も高いため、インテークマニホールド20の内壁に付着したデポジットの温度も高くインテークマニホールドの内壁の温度も高い状態である。このようなときに、インテークマニホールド20に付着したデポジットに向けて吸気通路噴射用インジェクタ120から低温の燃料を噴射すると、デポジットが急激に冷やされるが、インテークマニホールドの温度は高いままのためデポジット温度が下がり熱収縮し、インテークマニホールド20からデポジットを剥離させることができる。
なお、このようにデポジットを燃料により冷却させその熱収縮によりインテークマニホールド20内壁からデポジットを剥離させるときには、前述の第1の実施の形態および第2の実施の形態のようにポートの温度とデポジット温度との差のよる熱膨張の差により剥離しやすい状態で行なうようにして、これらの相乗効果により、デポジットを除去することも考えられる。
<第4の実施の形態>
図9を参照して、本発明の第4の実施の形態に係るエンジンECU300で実行されるプログラムの制御構造について説明する。なお、第4の実施の形態に係る制御装置であるエンジンECU300においては、前述の第1の実施の形態に係るエンジンECU300で実行されるプログラムとは別のプログラムを実行する点のみが異なる。それ以外のハードウェア構成(図1、図4)やマップ(図2、図3)は同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
図9に示すフローチャートにおいて前述の図1のフローチャートに示した処理と同じ処理については同じステップ番号を付してある。それらについての処理も同じである。したがってそれらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
S400にて、エンジンECU300は、大気圧学習かつデポジット学習判定値以上であるか否かを判断する。大気圧学習とは、大気標準状態との乖離を判断できる学習機能であって、これが判定値以上であると吸気量が減っていることを示し、デポジットがインテークマニホールドに付着していることを表わす。また、デポジット学習とは、吸気通路におけるデポジット付着を推定する学習機能である。大気圧学習かつデポジット学習が判定値以上であると(S400にてYES)、処理はS410へ移される。もしそうでないと(S400にてNO)、処理はS440へ移される。
S410にて、エンジンECU300は、エンジン水温が高いかつ吸気温が高いか否かを判断する。エンジン水温が高く吸気温も高いと(S410にてYES)、処理はS420へ移される。もしそうでないと(S410にてNO)、処理はS440へ移される。
S420にて、エンジンECU300は、マップ(図2、図3)による適合値に比べて吸気通路噴射用インジェクタ120による燃料噴射比率を高める。
S430にて、エンジンECUは予め定められた時間が経過したか否かを判断する。予め定められた時間が経過すると(S430にてYES)、処理はS440へ移される。もしそうでないと(S430にてNO)、処理はS400へ戻される。
S440にて、エンジンECU300は、図2および図3に示すマップによる適合どおりの筒内噴射用インジェクタ110と吸気通路噴射用インジェクタ120との燃料噴射比率に徐々に変化させる。
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係るエンジンECU300で制御されるエンジン10の動作について説明する。なお、以下の説明においては、前述の第1の実施の形態と同じ動作の説明はここでは繰返さない。
大気圧学習かつデポジット学習が判定値以上であると(S400にてYES)、インテークマニホールド20の内壁にデポジットが付着していると判断される。エンジン水温が高くかつ吸気温も高いと(S410にてYES)、吸気通路噴射用インジェクタ120の燃料噴射比率が高められる。この状態が予め定められた時間が経過するまで継続して行なわれる。
予め定められた時間が経過するまでに(S430にてNO)、大気圧学習かつデポジット学習が判定値未満になると(S400にてNO)、マップ適合どおりの燃料噴射比率に徐々に変化される(S440)。すなわち、インテークマニホールド20に付着したデポジットが燃料により急激に冷やされて熱収縮し、インテークマニホールド20の内壁からデポジットが除去されたことになる。このような場合には、図2および図3に示すマップの適合どおりの燃料噴射比率に徐々に変化させて、高圧で作動する筒内噴射用インジェクタ110の作動音を急激に発生させないようにすることができる。一方予め定められた時間が経過するまでに大気圧学習かつデポジット学習が判定値未満にならない場合には、予め定められた時間が経過すると(S430にてYES)、吸気通路噴射用インジェクタ120によるインテークマニホールド20の内壁に付着したデポジットの除去を中止し、マップ適合どおりの燃料噴射比率に徐々に変化させる(S440)。
以上のようにして、本実施の形態に係るエンジンECUによると、インテークマニホールドの内壁にデポジットが付着していることが検知された場合であってエンジン水温も吸気温も高い場合には、予め定められた時間内において吸気通路噴射用インジェクタによる燃料噴射比率を高める。吸気通路噴射用インジェクタ120から噴射された燃料がデポジットに当たりデポジットの温度を下げて熱収縮させるとともに、デポジットの温度とインテークマニホールド20の内壁の温度差が大きくなり確実にデポジットを剥離させることができる。
なお、図7に示したWOTへの過渡状態において、ポート温度がデポジット温度よりも高いように開示しているが、この逆の場合もあり得る。すなわち、吸気によりデポジットが効果的に冷却されなかった場合である。
また、図9に示すフローチャートのように予め定められた時間が経過するまでにデポジットが剥離しなかった場合には、大気圧学習かつデポジット学習の判定値を変更して、より剥離がしやすい状態のもとで吸気通路噴射用インジェクタ120による燃料噴射比率を上昇させるようにして、確実にインテークマニホールド20に付着したデポジットを除去するようにすることもできる。また、同じように、このときに、S410の水温と吸気温が高いか否かを判断するしきい値を変更することにより、吸気通路噴射用インジェクタ120による燃料噴射比率を増加させインテークマニホールド20に付着したデポジットを除去することを、より剥離が起りやすい状態で実行させるように変更することもできる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10 エンジン、20 インテークマニホールド、30 サージタンク、40 吸気ダクト、42 エアフローメータ、50 エアクリーナ、60 電動モータ、70 スロットルバルブ、80 エキゾーストマニホールド、90 三元触媒コンバータ、100 アクセルペダル、110 筒内噴射用インジェクタ、112 気筒、120 吸気通路噴射用インジェクタ、130 燃料分配管、140 逆止弁、150 高圧燃料ポンプ、152 電磁スピル弁、160 燃料分配管(低圧側)、170 燃料圧レギュレータ、180 低圧燃料ポンプ、190 燃料フィルタ、200 燃料タンク、300 エンジンECU、310 双方向性バス、320 ROM、330 RAM、340 CPU、350 入力ポート、360 出力ポート、370,390,410,430,450 A/D変換器、380 水温センサ、400 燃料圧センサ、420 空燃比センサ、440 アクセル開度センサ、460 回転数センサ。