以下、図面を参照しつつ本発明に係る同報通信システムの好適な実施形態について説明する。
図1に示すように、同報通信システム1は、一般電話網2の通信プロトコルによって基地局3に音声データを送信する親局4と、基地局3から送信された音声データを受信して複数の子局6,7,8に音声データを送信する通信衛星9とを備える。複数の子局6,7,8は、同報通信のための設定によって予めグループ化されている。ユーザーは、親局4に電話番号などを入力操作することによって、代表子局7を特定する。親局4と代表子局7との間には通信用パスP1が設定されており、この通信用パスP1を介して親局4から代表子局7に音声データが送信される。代表子局7以外の子局6,8は、その音声データを傍受する。なお、親局4と代表子局7との間での音声データの送受信は、通信衛星9を介在させることなく設定された通信用パスによって行うようにしてもよい。
さらに、同報通信システム1は、一般電話網2を介して親局4に接続された発言権制御装置10を備える。発言権制御装置10は、基地局3、通信衛星9を介して代表子局7及びその他の子局6,8に接続されている。発言権制御装置10と親局4との間には、第1の制御用パスP2が設定され、発言権制御装置10と代表子局7との間には、第2の制御用パスP3が設定されている。第2の制御用パスは本発明の制御用パスに相当する。通信用パスP1を傍受可能な複数の子局6,7,8からなるグループと、第2の制御用パスP3を傍受可能なグループとは同一である。そして、そのような括り付けを可能にするため、例えば、通信用パスP1上での制御信号などで第2の制御用パスP3上を送信される後述の発言権関連データ(周波数、タイムスロット等)を送信したり、通信用パスP1と第2の制御用パスP3とを含めて一つのパスとみなして動作できるような論理パスを定義して管理するようにしたり、通信用パスP1と第2の制御用パスP3との間に一定の数学的関係を定義したりする。
図2は親局4の機能ブロック図である。親局4は、機能的には、図2に示すように入力受付部41と、通信制御部42と、通信管理部43と、制御装置接続部44とを備えている。各機能要素の説明については後述する。
図3は親局4のハードウェアの構成を示す図である。親局4は、物理的には、図3に示すように、親局4の動作制御を司るCPU501と、CPU501が作動する際に用いるデータやプログラムが記憶されたRAM502と、CPU501によって実行されるプログラムや恒久的なデータが記憶されたROM503と、入力デバイスである操作部504と、所定の画像を出力するディスプレイ505と、データ送受信デバイスである通信モジュール506などを含んで構成されている。親局4の各機能は、CPU501、RAM502等のハードウェア上に所定のプログラムを読み込ませることにより、CPU501の制御のもとで通信モジュール506、操作部504、ディスプレイ505を動作させるとともに、RAM502におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。以下、親局4の各機能要素について説明する。
図2に示すように、入力受付部41は、ユーザーによる電話番号などの操作入力や音声データの入力、代表子局7との間に設定された通信用パスP1を解放する切断入力などを受け付ける。
通信制御部42は、入力受付部41によって受け付けられた電話番号に基づいて代表子局7を特定するために、メンバーIDを含む呼出データを代表子局7に送信する。そして、通信制御部42は、代表子局7からの応答データを受信すると、音声データを送信するための伝送路網の論理的構成である通信用パスP1(図1参照)を代表子局7との間に設定する。さらに、通信制御部42は、通信用パスP1を介して代表子局7及びその他の子局6,8からの音声データを受信する。さらに、通信制御部42は、ユーザーの入力操作によって入力受付部41が切断入力を受け付けた場合に、通信用パスP1を介して切断データを送信するとともに、通信用パスP1を解放する。また、通信制御部42は、代表子局7から切断データを受信した場合も通信用パスP1を解放する。
通信管理部43は、制御装置接続部44に指示し、制御用パス設定要求データを発言権制御装置10に送信させる。さらに、通信管理部43は、制御装置接続部44に指示し、発言権強制切替要求データまたは発言権強制切替拒否データを発言権制御装置10との間で送受信するための第1の制御用パスP2を設定させる。
発言権とは、代表子局6及びその他の子局7,8のいずれか一つに与えられる権利であり、発言権を取得した子局6,7,8は、通信用パスP1を利用して音声データを親局4に送信することが可能になる。また、発言権強制切替要求データとは、例えば、代表子局7が発言権を有している場合に、この発言権を強制的に他の子局6,8に切り替えるためのデータであり、発言権強制切替拒否データとは、親局4からの切替要求を拒否することを示すために発言権制御装置10から親局4に送信されるデータである。
また、通信管理部43は、通信用パスP1と第1の制御用パスP2との双方を同時に認識し、双方の連動した動作を管理する。例えば、通信管理部43は、通信用パスP1が解放された場合には、制御装置接続部44に指示し、制御用パス解放データの発言権制御装置10への送信と第1の制御用パスP2の解放とを行わせる。
制御装置接続部44は、通信管理部43からの指示を受けて、発言権制御装置10との間に第1の制御用パスP2を設定し、また、第1の制御用パスP2の解放を行う。さらに、制御装置接続部44は、通信管理部43からの指示を受けて、発言権強制切替要求データを発言権制御装置10に送信する。さらに、制御装置接続部44は、発言権強制切替拒否データを受信する。
図4は代表子局7の機能ブロック図である。代表子局7は、機能的には、図4に示すように入力受付部71と、通信制御部72と、通信管理部73と、制御装置接続部74とを備えている。なお、代表子局7はCPUやRAMなどを備えており、物理的な構成は親局4と同様であるため詳細説明は省略する。
入力受付部71は、音声データを受信するための操作入力、発言権の取得を要求する発言権要求入力、発言権を取得した場合の音声データの入力、親局4との間に設定された通信用パスP1を解放する切断入力、発言権を取得した後の発言権の利用を中止する場合の発言権放棄入力などを受け付ける。
通信制御部72は、親局4からの呼出データを受信すると、呼出データに含まれているメンバーIDから自局が指定されたことを認識し、音の出力、振動または光の点灯などによってユーザーに呼出データを受信したことを報知する。そして、通信制御部72は、入力受付部71が音声データを受信するための操作入力を受け付けると、親局4に応答データを送信する。さらに、通信制御部72は、通信用パスP1を介して親局4からの音声データを受信するとともに、発言権を有する場合には、通信用パスP1を介して音声データを親局4に送信する。さらに、通信制御部72は、入力受付部71が切断入力を受け付けた場合には通信用パスP1を介して切断データを送信するとともに、通信用パスP1を解放する。また、通信制御部72は、代表子局7から切断データを受信した場合も通信用パスP1を解放する。
通信管理部73は、親局4からの呼出データにより同報通信を確認すると、制御装置接続部74に指示し、制御用パス設定要求データを発言権制御装置10に送信させる。さらに、通信管理部73は、制御装置接続部74に指示し、発言権関連データを発言権制御装置10との間で送受信するための第2の制御用パスP3を設定させる。さらに、通信管理部73は、制御装置接続部74に指示し、第2の制御用パスP3を介して発言権関連データを発言権制御装置10に送信させる。さらに、通信管理部73は、通信用パスP1と第2の制御用パスP3との双方を同時に認識し、双方の連動した動作を管理する。例えば、通信管理部73は、発言権の有無を管理し、発言権を取得していない場合には通信用パスP1への音声データの送信を抑止する送話不可状態にし、発言権を取得している場合には音声データの送信を可能にする送話可能状態にする。さらに、通信管理部73は、通信制御部72が通信用パスP1を解放すると、制御装置接続部74に指示して制御用パス解放データを発言権制御装置10に送信させるとともに、第2の制御用パスP3を解放させる。
なお、発言権関連データとは、発言権要求入力によって制御装置接続部74から発言権制御装置10に送信される発言権要求データ、発言権放棄入力によって制御装置接続部74から発言権制御装置10に送信される発言権放棄データ、発言権要求データに対して発言権を付与する場合に発言権制御装置10から制御装置接続部74に送信されるOK応答データ、発言権要求データに対して発言権の付与を拒否する場合に発言権制御装置10から制御装置接続部74に送信されるNG応答データなどである。
制御装置接続部74は、通信管理部73の指示を受けて、以下の処理を行う。つまり、制御装置接続部74は、第2の制御用パスP3の設定及び解放を行い、また、発言権制御装置10への制御用パス設定要求データ、発言権要求データ及び発言権放棄データの送信を行う。さらに、制御装置接続部74は、OK応答データ及びNG応答データを受信する。
図5は子局6の機能ブロック図である。子局6は、機能的には、図5に示すように入力受付部61と、通信傍受部62と、通信管理部63と、制御装置傍受部64とを備えている。なお、子局6はCPUやRAMなどを備えており、物理的な構成は親局4と同様であるため詳細説明は省略する。また、子局7の機能的及び物理的な構成は子局6と同一であるため、詳細説明は省略する。
入力受付部61は、音声データを傍受するための傍受入力、発言権の取得を要求する発言権要求入力、発言権を取得した場合の音声データの入力、発言権を取得した後の発言権の利用を中止する場合の発言権放棄入力などを受け付ける。なお、子局6は代表子局7とは異なり、通信用パスP1を解放する切断入力の受け付けは行わない。
通信傍受部62は、親局4からの呼出データを受信した際に、音の出力や振動、またはディスプレイ上の画像などによって同報通信に係る呼出データを受信したことを報知する。そして、通信傍受部62は、入力受付部61が傍受入力を受け付けると、通信用パスP1を介して親局4から送信される音声データを傍受する。さらに、通信傍受部62は、発言権を取得すると、通信用パスP1を介して音声データを親局4に送信する。
通信管理部63は、親局4から送信される音声データを内部的に傍受可能とするために、例えば通信用パスP1に関する各種データをメモリエリアに格納して傍受可能状態にする。また、通信管理部63は、通信用パスP1もしくは第2の制御用パスP3が外的要因によって解放されたことを検出すると、連動するパスの傍受を中止させるために、傍受可能状態に係るリソースの解放を行って内部的に傍受不可状態にする。また、通信管理部63は、入力受付部61が発言権要求入力を受け付けると制御装置傍受部64に指示し、第2の制御用パスP3を介して発言権要求データを発言権制御装置10に送信させる。さらに、通信管理部63は、入力受付部61が発言権放棄入力を受け付けると制御装置傍受部64に指示し、第2の制御用パスP3を介して発言権放棄データを発言権制御装置10に送信させる。さらに、通信管理部63は、通信用パスP1と第2の制御用パスP3との双方を同時に認識し、双方の連動した動作を管理する。例えば、通信管理部63は、発言権の有無を管理し、発言権を取得していない場合には通信用パスP1への音声データの送信を抑止する送話不可状態にし、発言権を取得すると音声データの送信を可能にする送話可能状態にする。
制御装置傍受部64は、第2の制御用パスP3を介して送受信されるデータを傍受する。さらに、制御装置傍受部64は、通信管理部63の指示を受けて、第2の制御用パスP3を介して発言権要求データまたは発言権放棄データを発言権制御装置10に送信する。
図6は発言権制御装置10の機能ブロック図である。発言権制御装置10は、機能的には、図6に示すように接続部101と、パス管理部102と、発言権制御部103とを備えている。各機能要素について後述する。
図7は発言権制御装置10のハードウェアの構成を示す図である。発言権制御装置10は、物理的には、図7に示すように、発言権制御装置10の動作制御を司るCPU201と、CPU201が作動する際に用いるデータやプログラムが記憶されたRAM202と、CPU201によって実行されるプログラムや恒久的なデータが記憶されたROM203と、ハードディスクなどの記憶装置204と、データ送受信デバイスである通信モジュール205などを含んで構成されている。発言権制御装置10の各機能は、CPU201、RAM202等のハードウェア上に所定のプログラムを読み込ませることにより、CPU201の制御のもとで通信モジュール205などを動作させるとともに、RAM202におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。以下、発言権制御装置10の各機能要素について説明する。
図6に示すように、接続部101は、発言権強制切替要求データを受信するための第1の制御用パスを親局4との間に設定するとともに、発言権関連データを送受信するための第2の制御用パスを代表子局7との間に設定する。さらに、接続部101は、親局4から制御用パス解放データを受信したときに第1の制御用パスP2を解放し、代表子局7から制御用パス解放データを受信したときに第2の制御用パスP3を解放する。さらに、接続部101は、親局4、代表子局7及びその他の子局6,8から第1及び第2の制御用パスP2,P3を介して送信される発言権強制切替要求データ及び発言権関連データを受信する。
パス管理部102は、第1の制御用パスP2と第2の制御用パスP3との双方を同時に認識し、双方の連動した動作を管理する。
発言権制御部103は、発言権付与状態を管理する。例えば、発言権制御部103は、発言権を有している代表子局7及びその他の子局6,8のメンバーID、発言権を利用して音声データを親局4に送信している時間を監視するための発話時間タイマ、代表子局7及びその他の子局6,8が発言権を取得した回数を監視するための発言権取得回数管理タイマなどを管理する。さらに、発言権制御部103は、第2の制御用パスP3を介して受信した発言権要求データに基づいて、発言権要求データの発信元である代表子局7またはその他の子局6,8に発言権を付与するか否かを判断する。なお、発言権制御部103が代表子局7及びその他の子局6,8のいずれか一つに発言権を付与することは、通信用パスP1の利用を許可する子局を決定することに相当し、発言権制御部103が発言権を付与しないことは、通信用パスP1の利用を不許可にすることに相当する。
続いて、同報通信システム1によって実行される同報通信方法について説明する。この同報通信方法は、代表子局7及びその他の子局6,8から親局4に向けて音声データの送信を行うための準備段階となる第1の通信段階と、実際に代表子局7及びその他の子局6,8から親局4に音声データの送信が行われる第2の通信段階とがある。まず、図8を参照して第1の通信段階における同報通信システム1の動作を説明するとともに、図9〜図12を参照して、同報通信システム1を構成する各要素の動作について説明する。各図では、ステップをSと略記している。
図8は、第1の通信段階における同報通信方法を示すシーケンスチャートである。親局4は、交換機を介して、同報通信を開始するために呼出データD1を代表子局7に送信する。呼出データD1には、代表子局7を特定するためのメンバーID及び同報通信を行うグループのメンバーを特定するためのグループIDが含まれている。代表子局7は、呼出データD1を受信すると、メンバーIDから自局が指定されたことを認識して応答すべきと判断し、応答データD2を親局4に送信する。また、代表子局7以外の子局6,8は、呼出データD1を受信すると、自局が指定されていないから応答すべきでないと判断するが、グループIDによって特定される同報通信のグループに自局が含まれるために傍受すべきと判断する。
親局4は、代表子局7から応答データD2を受信すると、代表子局7との間に通信用パスP1を設定し、代表子局7は、応答データD2を発信すると、親局4との間に通信用パスP1を設定する(図18参照)。代表子局7以外の子局6,8は、通信用パスP1の傍受を開始する。
親局4は、通信用パスP1を設定した後に、グループIDを含む制御用パス設定要求データD3を発言権制御装置10に送信する。発信権制御装置10は、制御用パス設定要求データD3を受信すると、親局4との間に第1の制御用パスP2を設定する(図19参照)。また、代表子局7は、通信用パスP1を設定した後に、グループIDを含む制御用パス設定要求データD4を発言権制御装置10に送信する。発信権制御装置10は、制御用パス設定要求データD4を受信すると、代表子局7との間に第2の制御用パスP3を設定する(図20参照)。代表子局7以外の子局6,8は、第2の制御用パスP3の傍受を開始する。以上で第1の通信段階は終了する。続いて、第1の通信段階での同報通信システム1を構成する各要素の動作について説明する。
図9は、親局4の通信用パス設定処理の動作手順を示すフローチャートである。同報通信を開始しようとするユーザーは、親局4の操作部504(図3参照)を操作して代表子局7の電話番号を入力する。その際、ユーザーは、同報通信を指定する操作入力も行う。通信制御部42(図2参照)は、入力受付部41がユーザーによる電話番号の入力操作を受け付けると、代表子局7及びその他の子局6,8に対して代表子局7のメンバーIDを含む呼出データを送信する(ステップ1)。
さらに、通信制御部42は、同報通信を指定する操作入力の有無を判断し(ステップ2)、指定する操作入力が無いと判断する場合には代表子局7との間で一対一での音声データの送受信を行う通常発信処理を行う(ステップ3)。一方で、通信制御部42は、同報通信を指定する操作入力が有ると判断する場合には代表子局7との間に通信用パスP1を設定する(ステップ4)。続いて、通信管理部43は、制御装置接続部44に指示して、発言権制御装置10に対して制御用パス設定要求データD3を送信させる(ステップ5)。その後、親局4は、通信用パスP1を介して代表子局7に対する音声データの送信を開始して通信用パス設定処理を終了する。
図10は、代表子局7によって行われる通信用パス設定処理の動作手順を示すフローチャートである。図10に示すように、代表子局7の通信制御部72(図4参照)は、親局4から呼出データを受信するとグループID及びメンバーIDを抽出する(ステップ11)。そして、通信制御部72は、抽出したグループIDから同報通信の確認を行い、抽出したメンバーIDから自局が代表子局として指定されていることを確認すると(ステップ12)、親局4との間に通信用パスP1(図1参照)を設定する(ステップ13)。続いて、制御装置接続部74は、発言権制御装置10に対して制御用パス設定要求データを送信(ステップ14)する。その後、代表子局7は、通信用パスP1を介して親局4からの音声データの受信を開始して通信用パス設定処理を終了する。
図11は、第1の通信段階において発言権制御装置10によって行われる制御用パス設定処理の動作手順を示すフローチャートである。図11に示すように、発言権制御装置10の接続部101(図6参照)は、親局4から制御用パス設定要求データを受信すると(ステップ21)、親局4との間に第1の制御用パスP2を設定する(ステップ22)。さらに、接続部101は、第2の制御用パスP3を設定するための待ち時間を管理する待ちタイマを起動する(ステップ23)。接続部101は待ちタイマを監視してタイムアウトになると(ステップ24)、第1の制御用パスP2を解放し(ステップ25)、初期状態に戻る。一方で、タイムアウトになる前に代表子局7から制御用パス設定要求データを受信する(ステップ26)と、待ちタイマを停止し(ステップ27)、第2の制御用パスP3を設定(ステップ28)して制御用パス設定処理を終了する。
図12は、子局6によって行われる傍受準備処理の動作手順を示すフローチャートである。図12に示すように、子局6の通信傍受部62(図5参照)は、親局4から呼出データD1を受信するとグループID及びメンバーIDを抽出する(ステップ31)。そして、通信傍受部62は、抽出したグループIDから同報通信の確認を行い、抽出したメンバーIDから自局以外が代表子局として指定されていることを確認すると(ステップ32)、親局4と代表子局7との間に設定された通信用パスP1の傍受を開始する(ステップ33)。続いて、制御装置傍受部64は、発言権制御装置10と代表子局7との間に設定された第2の制御用パスP3の傍受を開始し、傍受準備処理を終了する。なお、子局8も同様の動作を行って傍受を開始する。
次に、図13を参照して第2の通信段階における同報通信システムの動作を説明するとともに、図14〜図16を参照して、第2の通信段階での子局(代表子局含む)6,7,8及び発言権制御装置10の動作について説明する。
図13は、第2の通信段階における同報通信方法を示すシーケンスチャートである。代表子局7以外の子局6,8は、通信用パスP1及び第2の制御用パスP3を傍受している。子局6は、発言権を取得するために第2の制御用パスP3を介して発言権要求データD5を発言権制御装置10に送信する。発言権要求データD5には、子局6を特定するためのメンバーIDが含まれている。発言権制御装置10は、後述の発言権付与処理(図15参照)の結果、子局6に通信用パスP1の利用を許可することを決定すると、第2の制御用パスP3を介してOK応答データD6を代表子局7に送信する。子局6は第2の制御用パスP3を傍受しており、OK応答データD6が送信されたことを確認すると、送話可能状態になり、通信用パスP1を介して音声データD9(図20参照)を親局4に送信する。
続いて、発言権制御装置10は、親局4から発言権強制切替要求データを受信すると後述の発言権強制切替処理(図16参照)を行い、その結果、子局8に発言権を付与することを決定すると、第2の制御用パスP3を介してOK応答データD8を代表子局7に送信する。子局6及び子局8は第2の制御用パスP3を傍受している。そして、子局6は、OK応答データD8を確認すると、送話不可状態になり、子局8は、OK応答データD8を確認すると、送話可能状態になる。
次に、第2の通信段階での子局(代表子局含む)6,7,8及び発言権制御装置10の動作について説明する。
図14は、子局(代表子局含む)6,7,8によって行われる発言権要求処理の動作手順を示すフローチャートである。図14に示すように、例えば、発言権の取得を希望する子局6の通信管理部63(図5参照)は、制御装置傍受部64に指示し、第2の制御用パスP3を介して発言権要求データD5を発言権制御装置10に送信させる(ステップ51)。なお、代表子局7が発言権の取得を希望する場合、通信管理部73が通信管理部63と同様の動作を実行し、制御装置接続部74が制御装置傍受部64と同様の動作を実行する。以下の各処理も同様である。
その後、通信管理部63はタイマを起動するとともに(ステップ52)、タイマの監視を開始し(ステップ53)、発言権制御装置10からの応答データを傍受する前にタイムアウトになった場合には発言権要求処理を終了する。また、通信管理部63は、タイムアウト前に応答データを傍受した場合であっても、応答データがNG応答データの場合(ステップ54)には、タイマを停止して(ステップ57)、発言権要求処理を終了する。一方で、通信管理部63は、応答データがOK応答データの場合(ステップ54)には、送話可能状態にして、発言権要求処理を終了する。
図15は、発言権制御装置10によって行われる発言権付与処理の第1例に係る動作手順を示すフローチャートである。図15に示すように、発言権制御装置10の発言権制御部103は(図6参照)は、接続部101(図6参照)が、例えば、発言権の取得を希望する子局6から発言権要求データを受信すると(ステップ61)、発言権付与状態を確認する。そして、発言権制御部103は、子局6以外に発言権を付与中の場合(ステップ62)には、子局6へ発言権を付与しないことを決定し、NG応答データを第2の制御用パスP3を介して代表子局7に送信する。一方で、発言権制御部103は、発言権を付与していない場合(ステップ62)には、子局6へ発言権を付与することを決定し、OK応答データD6(図13参照)を第2の制御用パスP3を介して代表子局7に送信する。その後、発言権制御部103は、発話時間タイマの更新、発言権取得回数管理タイマの更新などを行って発言権付与状態の更新を行い(ステップ65)、発言権付与処理を終了する。
図16は、発言権制御装置10によって行われる発言権強制切替処理の動作手順を示すフローチャートである。図16に示すように、発言権制御装置10の発言権制御部103(図6参照)は、接続部101が、第1の制御用パスP2を介して親局4から発言権強制切替要求データを受信すると(ステップ91)、親局4からの切替要求が許容されるか否かを判断する(ステップ92)。例えば、発言権制御部103は、子局6から子局8に発言権を切り替えることを要求する発言権強制切替要求データを受信した場合に、子局6の発話時間タイマを確認し、所定時間を超えていれば親局4からの切替要求を許容できると判断し、所定時間内であれば親局4からの切替要求を許容できないと判断する。そして、発言権制御部103は、切替要求を許容できないと判断する場合には、発言権強制切替拒否データを第1の制御用パスP3を介して親局4に送信し(ステップ95)、発言権強制切替処理を終了する。
一方で、発言権制御部103は、親局4からの切替要求を許容できると判断する場合には(ステップ92)、親局4が指定する子局8へ発言権を付与することを決定し、第2の制御用パスP3を介して代表子局7にOK応答データD8(図13参照)を送信する。OK応答データD8には、子局8を特定するためのメンバーIDも含まれる。その後、発言権制御部103は、発話時間タイマの更新、発言権取得回数管理タイマの更新などを行って発言権付与状態の更新を行い(ステップ94)、発言権強制切替処理を終了する。OK応答データD8を確認した子局6は送話不可状態になり、子局8は送話可能状態になる。
続いて、発言権制御装置10の発言権付与処理の第2例に係る動作手順について説明する。図17は、第2例に係る発言権付与処理の動作手順を示すフローチャートである。図17に示すように、発言権制御装置10の発言権制御部103(図6参照)は、例えば、接続部101が発言権の取得を希望する子局8から発言権要求データを受信すると(ステップ81)、発言権付与状態を確認する。そして、発言権制御部103は、発言権を付与していない場合(ステップ82)には、OK応答データを第2の制御用パスP3を介して代表子局7に送信する(ステップ86)。その後、発言権制御部103は、発話時間タイマの更新、発言権取得回数管理タイマの更新などを行って発言権付与状態の更新を行い(ステップ87)、発言権付与処理を終了する。
一方で、発言権制御部103は、例えば、子局6に発言権を付与中であっても(ステップ82)、発話時間タイマ及び発言取得回数管理タイマを確認し、それらの数値が保護閾値内であれば、子局8に発言権を付与することを決定し、ステップ86及びステップ87と同様の処理を行う。また、発言権制御部103は、発話時間タイマ及び発言取得回数管理タイマの数値が保護閾値内と判断すると、子局8には発言権を付与しないと決定し、接続部101に指示してNG応答データを代表子局7に送信させる。
以上の同報通信システム1及び同報通信方法によれば、親局4と代表子局7との間に設定された通信用パスP1を介して親局4は代表子局7に音声データを送信する。その音声データは代表子局7で受信されるとともに、グループ化された他の子局6,8によって傍受される。その結果として、親局4から複数の子局6,7,8への音声データの同報通信が可能になる。
更に、同報通信システム1の発言権制御装置10は、通信用パスP1とは異なる第2の制御用パスP3を自装置と代表子局7との間に設定することで子局6,7,8からの発言権要求データを受信可能とする。子局6,7,8は、通信用パスP1ではなく、第2の制御用パスP3を介して発言権要求データを発言権制御装置10に送信する。発言権制御装置10は、受信した発言権要求データに基づいて、通信用パスP1の利用を許可する子局6,7,8を決定する。そして、通信用パスP1の利用を許可された子局6,7,8のみが通信用パスP1を介して親局4に音声データを送信できる。その結果として、複数の子局6,7,8から通信用パスP1を介して一斉に音声データが送信されることがなくなり、音声データ同士の衝突による音声データの破損を回避できる。さらに、複数の子局6,7,8から親局4への音声データの送信のために通信用パスP1を利用できるため、リソースの有効活用が可能になる。なお、発言権要求データは第2の制御用パスP3上で衝突することが考えられる。しかしながら、発言権要求データの場合には、所定時間内に発言権制御装置10からの応答が無ければ発言権要求データの送信をリトライすれば足りるため問題は少ない。
さらに、発言権制御装置10は、第1例に係る発言権付与処理において、例えば、子局6に対して発言権を付与して通信用パスP1の利用を許可している間に、他の子局7,8からの発言権要求データを受信したときには、他の子局7,8による通信用パスの利用を不許可にする。その結果として、一つの子局6が通信用パスP1の利用を許可されている間には、他の子局7,8は通信用パスP1を利用できないため、通信用パスP1上での音声データの衝突が確実に防止される。
また、発言権制御装置10は、第2例に係る発言権付与処理において、例えば、子局6に対して発言権を付与している間に、他の子局8からの発言権要求データを受信した場合には、子局6が発言権を取得してからの時間または子局6の発言権の取得回数を確認し、それらの時間または回数に基づいて所定の保護閾値外であれば子局8に発言権を付与する。その結果として、一つの子局6が長時間にわたって発言権を独占するということを防止できる。
また、発言権制御装置10は、発言権強制切替処理において、親局4からの切替要求が許容される場合には、発言権を有する子局6,7,8の切替えが行われるため、親局4から発言権の付与を制御できる。
また、発言権制御装置10は、代表子局7から制御用パス設定要求データD4を受信した場合に、自装置と代表子局7との間に第2の制御用パスP3を設定するため、第2の制御用パスP3の設定を代表子局7から制御することが可能となる。
1…同報通信システム、4…親局、6,8…子局、7…代表子局、10…発言権制御装置、P1…通信用パス、P3…第2の制御用パス、D3,D4…制御用パス設定要求データ、D5…発言権要求データ、D9,D10…音声データ。