JP4345287B2 - 駆動装置、レンズユニット、および、カメラ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、駆動装置、レンズユニット、および、カメラに関する。より詳しくは、圧電素子を用いた振動体により被駆動部材を駆動する駆動装置、および、この駆動装置を用いてレンズを駆動するレンズ駆動機構を備え、カメラ、ディジタルカメラ、ビデオカメラ、顕微鏡および双眼鏡等に搭載されるレンズユニットに関する。さらに、前記駆動装置によりレンズを駆動するレンズ駆動機構を備えた、カメラ、ディジタルカメラ、ビデオカメラ等のカメラに関する。
【0002】
【背景技術】
従来、カメラ等の精密機器を構成する可動部品を駆動する駆動装置としては、電磁モータの駆動力により被駆動部材を駆動するもの(例えば、特許文献1参照)が一般的に用いられている。
【0003】
特許文献1に開示された電磁モータを用いたレンズの駆動装置では、レンズユニット内に配置された被駆動部材としての複数のレンズ群と、レンズユニットの外側に設けられた電磁モータとが歯車やカム環を介して接続されている。そして、電磁モータに連動して歯車やカム環が回転し、この回転に伴って各レンズ群が光軸に沿って進退移動してズーミングおよびフォーカス調整が行われる。
しかし、このような電磁モータを用いた駆動装置では、大きな駆動力が得られるものの、レンズユニットの外側に大きな電磁モータを設ける必要があり、レンズユニットが大型化してしまうという不都合がある。
【0004】
レンズユニットの大型化を招かず小型化できる駆動装置として、圧電素子の変形によりレンズを駆動するもの(例えば、特許文献2ないし4参照)が提案されている。
【0005】
特許文献2ないし4に開示された圧電素子を用いた駆動装置は、被駆動部材としてのレンズおよびレンズ保持枠と、このレンズ保持枠と摩擦結合された駆動軸と、この駆動軸が固定された圧電素子とを備えて構成されている。
そして、この駆動装置では、圧電素子に所定の波形を有する電圧を印加することで、圧電素子が駆動軸に沿った方向に伸縮振動し、この伸縮振動が駆動軸に伝達されて、駆動軸に摩擦結合された被駆動部材が駆動される。すなわち、圧電素子に印加する電圧は駆動方向については緩やかに変位し、逆方向については急速に変位するようなパルス波形を有している。そして、駆動方向については駆動軸との摩擦力により被駆動部材が移動し、逆方向については被駆動部材の慣性力が摩擦力を上回って移動しないため、被駆動部材は、所定の駆動方向に駆動されることになる。
【0006】
従って、特許文献2ないし4の駆動装置では、前述の特許文献1の駆動装置のようにレンズユニットの外側に大きな電磁モータを設ける必要がなく、また、この電磁モータの駆動力を被駆動部材に伝達するための歯車やカム環等の複雑な構造も必要ない。従って、特許文献2ないし4の駆動装置によれば、レンズユニットを小型化し、その構造を単純化することができる。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−161001号公報 (第3−4頁)
【特許文献2】
特開平7−274546号公報 (第3−4頁)
【特許文献3】
特開平8−66068号公報 (第3−4頁)
【特許文献4】
特開平4−69070号公報 (第3−5頁)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献2ないし4の駆動方法では、電圧を印加した際に圧電素子が伸縮する動きを駆動軸に直接伝達し、この駆動軸とレンズ保持枠との摩擦結合により被駆動部材を駆動するものである。このような構成では、被駆動部材を高速に駆動するには、駆動軸を大きく移動させる必要があり、すなわち、圧電素子に大きな伸縮変位を生じさせる必要があるので、圧電素子の伸縮方向のサイズが大型化してしまうという問題がある。
また、被駆動部材は、その駆動方向について駆動軸との摩擦力によって保持されているが、この摩擦力が小さいと被駆動部材が容易に移動して安定せず、また、摩擦力が大きいと駆動時のエネルギーロスが大きくなるため、駆動効率が悪化するという問題がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は上記問題点に鑑み、小型化を図りながら、駆動効率を十分に高めることができる駆動装置、レンズユニット、および、カメラを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の駆動装置は、圧電素子を備え、この圧電素子の変形により振動する振動体と、軸回りに回転自在に設けられ、ねじ部が形成された駆動軸と、前記駆動軸のねじ部に螺合された被駆動部材とを備え、前記振動体は、前記駆動軸の周面に当接され、前記振動体の振動によって前記駆動軸が回転運動するとともに、前記被駆動部材が前記駆動軸の軸方向に沿って進退駆動されることを特徴とする。
【0011】
この際、本発明では、前記被駆動部材は、前記駆動軸に沿った異なる位置に複数設けられ、これらの被駆動部材が螺合される前記ねじ部は、各々の被駆動部材の位置ごとに所定のねじ形状に形成され、前記被駆動部材は、それぞれ前記ねじ形状に応じて進退駆動されることが望ましい。
なお、ここで、ねじ形状とは、ねじのピッチ、方向、径を意味する。
【0012】
また、本発明の駆動装置は、圧電素子を備え、この圧電素子の変形により振動する振動体と、所定方向に沿って進退移動自在に設けられた駆動部材と、前記駆動部材に固定された被駆動部材とを備え、前記振動体は、前記駆動部材の表面のうちの前記進退移動方向に沿った表面に当接され、前記振動体の振動によって前記駆動部材および前記被駆動部材が一体に進退駆動されるという構成を採用することも可能である。
【0013】
この際、本発明では、前記被駆動部材には、当該被駆動部材の進退移動を伝達するリンク機構を介して連動部材が連結され、前記連動部材は、前記被駆動部材の進退移動に連動し、当該移動方向に沿って駆動されることが望ましい。
なお、ここで、リンク機構としては、カム板やカム環、歯車、ラック、ベルト、ウォームギア等を用いて、被駆動部材の運動を連動部材に伝達できるものが採用できる。
【0014】
さらに、本発明の駆動装置は、圧電素子を備え、この圧電素子の変形により振動する振動体と、円筒状の保持部材と、この保持部材の内周面に沿って回転自在に設けられ、前記振動体が固定された被駆動部材とを備え、前記保持部材の内周面および前記被駆動部材の外面のいずれか一方には、他方に設けられた螺旋状のカム溝に係合するカムが設けられ、前記振動体は、前記保持部材の内周面に当接され、前記振動体の振動によって、前記被駆動部材が前記保持部材の内周面に沿って回転運動するとともに、前記カム溝に案内されて進退駆動されるという構成を採用することも可能である。
【0015】
この際、本発明では、前記振動体は、前記保持部材に固定され、かつ、前記被駆動部材の外面に当接されるように構成することができる。
【0016】
また、本発明の駆動装置は、圧電素子を備え、この圧電素子の変形により振動する振動体と、円筒状の保持部材と、この保持部材の内周面に沿って回転自在に設けられた2つの被駆動部材と、前記2つの被駆動部材を互いに連結し、一方の回転運動を他方に伝える連結部材とを備え、前記保持部材の内周面および前記2つの被駆動部材の外面のいずれか一方には、他方に設けられたカム溝に係合するカムが設けられ、前記カム溝は、前記2つの被駆動部材の各々に対応した一方側が螺旋状で他方側が円周状に、または、両方が螺旋状に形成され、前記振動体は、前記2つの被駆動部材のいずれか一方に固定されるとともに、前記保持部材の内周面に当接され、前記振動体の振動によって前記2つの被駆動部材が前記保持部材の内周面に沿って回転運動するとともに、当該2つの被駆動部材の一方または両方が前記カム溝に案内されて進退駆動されるという構成を採用することも可能である。
【0017】
この際、本発明では、前記振動体は、前記保持部材に固定され、かつ、前記被駆動部材のいずれか一方の外面に当接されるように構成することができる。
【0018】
なお、ここで、振動体としては、例えば、ステンレス鋼等から形成された板材と、この板材の表面に設けられた平板状の圧電素子とを備えて構成された圧電アクチュエータが採用できる。
また、1つまたは2つの被駆動部材を駆動する振動体の数は、特に限定されず、1つでもよいし、2つ以上の振動体を用意してもよい。
【0019】
このような本発明によれば、振動体を駆動軸、駆動部材、保持部材、または被駆動部材に当接し、これらの部材に振動体の振動を伝達することにより、被駆動部材を駆動することができる。従って、従来用いられていた電磁モータやそれに付随する歯車やカム環等の複雑な構造を設ける必要がなく、構造を単純化できるとともに、当該駆動装置を小型化することができる。さらに、振動体の振動により被駆動部材を駆動することにより、従来の圧電素子の伸縮変形によって駆動する場合と比較して、振動体のサイズを小さくでき、当該駆動装置をさらに小型化できる。
【0020】
また、この発明によれば、被駆動部材は、駆動軸の回転運動により駆動軸に沿って進退駆動され、あるいは、駆動部材と一体に進退駆動され、または、保持部材の内周面に沿ってカム溝に案内されて回転および進退駆動されるようになっている。従って、従来の摩擦結合によって駆動する場合と比較し、摩擦によるエネルギーロスが少ないので、駆動効率を十分に高めることができる。さらに、被駆動部材が駆動軸に螺合され、あるいは、振動体が当接された駆動部材に固定され、または、カム溝およびカムが係合されていることで、駆動停止時において、被駆動部材が容易に移動せず、その位置を安定させることができる。
【0021】
また、駆動軸の回転運動により被駆動部材が進退駆動される構成によれば、駆動軸自体は回転運動するのみで進退移動しないため、軸方向に沿った長さ寸法を短くでき、当該駆動装置をさらに小型化できる。さらに、螺合によって被駆動部材が駆動されるため、ねじ部のねじ形状を適宜設定することで、振動体の振幅に対する被駆動部材の移動量や移動方向を調節でき、駆動精度を高めることができる。この際、1本の駆動軸に対して複数の被駆動部材を螺合し、各被駆動部材ごとにねじ形状を設定すれば、各被駆動部材の移動量や移動方向を調節できる。
また、被駆動部材が駆動部材と一体に進退駆動される構成によれば、駆動力を伝達する途中におけるエネルギーロスをより少なくできるので、駆動効率をさらに高めることができる。
また、被駆動部材が保持部材の内周面に沿ってカム溝に案内されて回転および進退駆動される構成によれば、保持部材の外側に振動体や駆動部材等が露出しないので、当該駆動装置をさらに小型化できる。
また、被駆動部材に当該被駆動部材の進退移動を伝達するリンク機構を介して連動部材を連結した構成によれば、連動部材が被駆動部材の進退移動に連動して駆動されるので、被駆動部材および連動部材の各々を個別に駆動するための振動体を用意する必要がなく、部品点数の削減と装置の小型化を図ることができる。
【0022】
この際、本発明では、前記振動体を前記駆動軸、前記駆動部材、または前記保持部材の内周面のいずれかに向かって押圧する付勢手段を備えていることが望ましい。
この発明によれば、振動体が所定の押圧力で駆動軸、駆動部材または保持部材に当接され、これらの部材と振動体との間の摩擦力によって、被駆動部材をより確実に駆動できるとともに、被駆動部材の位置をさらに安定させることができる。
【0023】
さらに、本発明では、前記振動体は、往復振動と屈曲振動とを組み合わせた楕円軌道を描く振動モードを有していることが望ましい。
この発明によれば、振動体が楕円軌道を描いて振動することにより、振動体の軌道上における駆動軸、駆動部材または保持部材に近い側と遠い側とで、これらの部材と振動体との間の摩擦力が変化する。すなわち、振動体が駆動軸、駆動部材または保持部材に近い側の軌道上に位置する時の摩擦力が大きくなるため、その時の振動体の振動方向に応じて被駆動部材が確実に駆動される。
【0024】
さらに、本発明では、前記振動体は、前記楕円軌道を描く振動モードの振動方向を切り替え自在に構成されていることが望ましい。
この発明によれば、振動体の振動方向を切り替えることにより、被駆動部材の駆動方向を任意に制御できる。従って、被駆動部材の駆動方向に応じて2つ以上の振動体を用意する必要がなく、1つの振動体で被駆動部材を進退両方向について駆動することができる。
【0025】
一方、本発明のレンズユニットは、前述したいずれかの駆動装置と、この駆動装置が取り付けられる筐体とを備え、前記駆動装置を構成する被駆動部材がズームレンズおよびレンズ保持枠を有して構成されていることを特徴とする。
また、本発明のレンズユニットは、前述したいずれかの駆動装置と、この駆動装置が取り付けられる筐体とを備え、前記駆動装置を構成する被駆動部材がフォーカスレンズおよびレンズ保持枠を有して構成されていてもよい。
さらに、本発明のレンズユニットは、前述したいずれかの駆動装置と、この駆動装置が取り付けられる筐体と、この筐体に取り付けられるレンズとを備え、前記駆動装置を構成する被駆動部材が前記レンズによって結像される像を電気信号に変換する撮像素子を有して構成されていてもよい。
【0026】
なお、ここで、ズームレンズおよびフォーカスレンズは、単一の光学素子から構成されてもよく、複数の光学素子を組み合わせて構成されていてもよい。
また、撮像素子としては、撮像管や電荷結合素子(Charge-Coupled Device,CCD)等が採用できる。
このような本発明によれば、当該レンズユニットにおいて前述した各効果と同様の効果を奏することができる。すなわち、当該レンズユニットの小型化や駆動効率の向上を図ることができ、本発明の目的を達成できる。
【0027】
また、本発明のカメラは、前述したいずれかの駆動装置により駆動されるレンズと、このレンズによって結像される像を記録する記録媒体と、これらの駆動装置、レンズおよび記録媒体が収納されるケースとを備えたことを特徴とする。
また、本発明のカメラは、前述したいずれかのレンズユニットと、このレンズユニットを構成するレンズによって結像される像を記録する記録媒体と、これらのレンズユニットおよび記録媒体が取り付けられるケースとを備えて構成されていてもよい。
このような本発明によれば、当該カメラにおいて前述した各効果と同様の効果を奏することができる。すなわち、当該カメラの小型化や駆動効率の向上を図ることができ、本発明の目的を達成できる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、後述する第2実施形態以降では、以下に説明する第1実施形態での構成部品と同じ部品および同様な機能を有する部品には同一符号を付し、説明を簡単にあるいは省略する。
【0029】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態に係るレンズユニット10について説明する。なお、レンズユニット10は、図示しないカメラに搭載され、または、カメラと一体に製造され、利用されるものである。
図1は、レンズユニット10を示す断面図であり、図2は、レンズユニット10の要部を拡大して示す斜視図である。
図1において、レンズユニット10は、全体略円筒状の筐体11と、第1レンズ12、第2レンズ13および第3レンズ14の3枚のレンズ12,13,14で構成されるレンズ群15と、を備えたズームレンズ用ユニットである。
【0030】
第1レンズ12は、筐体11の一端側(図1中、右側)に設けられた第1レンズ保持部16に嵌め込まれ、第2レンズ13は、筐体11の他端側(図1中、左側)に設けられた第2レンズ保持部17に嵌め込まれて、それぞれ筐体11に固定されている。
第3レンズ14は、ズームレンズであり、筐体11の一端側から他端側に向かう光軸Aに沿って筐体11の内部を進退自在に支持されたレンズ保持枠21に保持されている。すなわち、レンズ保持枠21および第3レンズ14によって、被駆動部材22が構成され、この被駆動部材22は、図1中、白抜き矢印で示す両方向に往復移動可能に設けられている。
なお、第3レンズ14は、ズームレンズに限らず、フォーカスレンズであってもよい。その場合、レンズ群15の構成や、各レンズの光学特性を適宜設定することで、レンズユニット10をフォーカスレンズ用ユニットとして利用可能である。
【0031】
レンズ保持枠21には、第3レンズ14を嵌め込み保持する第3レンズ保持部21Aと、この第3レンズ保持部21Aの一方側(図1中、上側)にねじ孔21Bと、他方側(図1中、下側)に挿通孔21Cとが形成されている。
ねじ孔21Bおよび挿通孔21Cは、互いに光軸Aと平行になっており、ねじ孔21Bには駆動軸23のねじ部23Aが螺合され、挿通孔21Cには案内軸24が挿通されている。
【0032】
駆動軸23は、その回転軸Bが光軸Aと平行に配置された全体略円柱状の部材であり、筐体11のフランジ部分に設けられた2箇所の軸受け孔18に回転自在に軸支されている。また、駆動軸23の両端部は、それぞれ筐体11の外側に突出し、これらの突出部分は、ねじ部23Aが設けられた中央部分よりも軸径が大きく形成されている。従って、駆動軸23は、筐体11の軸受け孔18周縁によって軸方向への移動が規制されている。
また、駆動軸23の端部のうち、第2レンズ13の側の端部には、後述する振動体30が当接される当接軸部23Bが設けられている。この当接軸部23Bは、円柱状に形成され、その周面は、当接された振動体30がスムーズに振動し、また、振動体30の当接部分の摩耗を防ぐために、凹凸無く仕上げられている。
【0033】
案内軸24は、光軸Aに平行な棒状の部材であり、筐体11のフランジ部分に架設されている。また、案内軸24は、レンズ保持枠21の光軸Aに対する角度を一定に維持するとともに、駆動軸23回りの回転を規制する機能を備えている。従って、駆動軸23の回転によって、駆動軸23に螺合されたレンズ保持枠21は、光軸Aに対して第3レンズ14が直交した状態を維持しながら、進退駆動されることになる。
【0034】
駆動軸23の当接軸部23Bに隣接する位置(図1中、上方)には、筐体11に図示しないブラケット等で固定された振動体取付部19が設けられている。この振動体取付部19には、付勢手段としてのコイルばね25の一端側が固定され、このコイルばね25の他端側には、台座26が取り付けられている。そして、この台座26には、当接軸部23Bの周面に先端部分が当接された振動体30が固定されている。また、この振動体30は、駆動軸23の回転軸Bと略直交する平面内で振動し、かつ、回転軸Bに対してほぼ直角に当接するように配置されている。
なお、当接軸部23Bに対する振動体30の当接方向は、特に限定されず、駆動軸23を回転させることができる方向から振動体30が当接していればよい。
【0035】
振動体30は、図2に示すように、略矩形平板状に形成された補強板31と、この補強板31の表裏両面に設けられた平板状の圧電素子32とを備えている。
補強板31は、その長手方向の一端に凸部31Aが一体的に形成され、この凸部31Aの先端が当接軸部23Bの周面に当接されている。
また、補強板31の長手方向略中央には、幅方向両側に腕部31Bが一体的に形成されている。腕部31Bは、補強板31からほぼ直角に突出しており、これらの端部がそれぞれ台座26にビス27によって固定されている。
従って、振動体30は、台座26に固定された2箇所の腕部31Bの固定位置を支点として振動するようになっている。
【0036】
台座26は、金属製の板材からなり、振動体30の矩形平板状部分が接触しないように、振動体30と対向する部分に凹状の窪み部26Aが形成されている。また、台座26は、図示しない溝状のレールによって、その板厚方向への移動が規制され、かつ、振動体30の長手方向に沿ってスライド自在に支持されている。
コイルばね25は、台座26と振動体取付部19との間において、縮められた状態、すなわち、台座26を駆動軸23に向かって付勢するばね力を有した状態で取り付けられている。従って、コイルばね25のばね力は、台座26を介して振動体30を駆動軸23に押圧する押圧力として作用する。
この際、コイルばね25は、その伸縮量を変化させ、押圧力を調整する押圧力調整手段を備えてもよい。
【0037】
次に、振動体30の構造、および振動体30による駆動機構について詳説する。
振動体30を構成する補強板31は、ステンレス鋼、その他の材料から形成されている。
補強板31の両面の略矩形状部分に接着された圧電素子32は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、水晶、ニオブ酸リチウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、メタニオブ酸鉛、ポリフッ化ビニリデン、亜鉛ニオブ酸鉛、スカンジウムニオブ酸鉛等の材料の中から、適宜選択した材料から形成されている。
また、圧電素子32の両面には、ニッケルメッキ層および金メッキ層などが形成されて電極が形成されている。この電極は、切欠によって互いに電気的に絶縁された複数の電極を長手方向に沿った中心線を軸として線対称に形成されている。つまり、圧電素子32を幅方向にほぼ三等分するように二本の溝33Aが形成され、これらの溝33Aで分割された三つの電極のうち両側の電極ではさらに長手方向をほぼ二等分するように溝33Bが形成されている。
これらの溝33A,33Bにより、圧電素子32の表面には5つの電極32A,32B,32C,32D,32Eが形成される。そして、これらの電極32A〜32Eのうち、対角線上両端に位置する電極32Aおよび電極32Eをつなぐリード線34Aと、電極32Bおよび電極32Dをつなぐリード線34Bと、電極32Cに接続されたリード線34Cとは、図示しない印加装置に接続されている。
なお、これらの電極は、補強板31を挟んで設けられた表裏両方の圧電素子32に同様に設けられており、例えば電極32Aの裏面側には電極32Aが形成されている。
【0038】
このように形成された圧電素子32の表面の電極32A〜32Eのうち、所定の電極を選択して、印加装置により電圧を印加することにより、振動体30の長手方向に沿った往復振動である縦振動と、凸部31Aが補強板31の幅方向に振動する屈曲振動とを振動体30に生じさせることができる。
ここで、圧電素子32に印加する電圧の周波数は、補強板31の振動時に縦振動共振点の近くに屈曲共振点が現れて凸部31Aが良好な楕円軌道を描くように設定される。また、圧電素子32の寸法や、厚さ、材質、縦横比、電極の分割形態などは、圧電素子32に電圧が印加された時に、凸部31Aが良好な楕円軌道を描きやすいように適宜決定される。
なお、振動体30に印加される電圧の波形は特に限定されず、例えばサイン波、矩形状波、台形波などが採用できる。
【0039】
以上のように振動体30、駆動軸23および被駆動部材22を備えて構成された駆動装置は、次のように動作する。
適宜選択した圧電素子32の電極32A〜32Eに交流電圧を印加して振動体30を振動させると、振動体30は縦振動と屈曲振動とを組み合わせた楕円軌道を描いて振動する。ただし、この際、振動体30はコイルばね25のばね力により駆動軸23の当接軸部23Bに押圧されているため、凸部31Aは、楕円軌道を描けずに補強板31の幅方向に振動することとなる。そして、振動体30が描こうとする楕円軌道上における駆動軸23に近い側において、凸部31Aおよび当接軸部23Bの間の摩擦力が大きくなり、駆動軸23から遠い側においては摩擦力が小さくなる。
従って、凸部31Aが駆動軸23に近い側の軌道を描こうとする時の駆動力が大きくなるので、その時の振動方向に向かって駆動軸23が回転駆動されることとなる。この動作を所定の周波数で繰り返し行うことにより、駆動軸23は回転軸Bの回りの所定方向に回転運動することとなる。
また、圧電素子32に印加する電圧の電極を適宜切り替えることにより、駆動軸23の回転方向を反転させることができる。
【0040】
以上のように駆動軸23が回転運動することで、この駆動軸23のねじ部23Aに螺合されたレンズ保持枠21および第3レンズ14、すなわち、被駆動部材22が光軸Aに沿って(図1中、白抜き矢印で示す方向に)進退駆動されることになる。
この際、図示しない位置読み取りセンサによって被駆動部材22の位置を検出し、制御回路にフィードバックして駆動制御することにより、被駆動部材22は、光軸Aに沿った任意の位置で静止可能となっている。
なお、位置読み取りセンサとしては、被駆動部材22の位置を直接検出するものに限らず、駆動軸23の回転量を検出するロータリーエンコーダが採用できる。
従って、本実施形態のレンズユニット10では、振動体30の振動により駆動軸23を回転させ、この回転によって被駆動部材22を光軸Aに沿って進退駆動することができ、所定のズーム位置でズームレンズとしての第3レンズ14を静止させることができる。
【0041】
なお、本実施形態において、第2レンズ13を連動部材とし、この第2レンズ13を第3レンズ14に連動させるリンク機構を備えた構成が採用できる。
図3は、本実施形態の変形例に係るレンズユニット10を示す一部を断面した側面図である。
図3において、第2レンズ13は、光軸Aに沿って移動自在に筐体11に支持された第2レンズ保持枠17Aに保持されている。第2レンズ保持枠17Aには、筐体11の側面を貫通して外側に突出したカム棒17Bが固定されている。
第3レンズ14を保持するレンズ保持枠21にも、第2レンズ保持枠17Aと同様のカム棒21Dが固定されている。
これらのカム棒17A,21Dの突出側の筐体11側面には、略三角形状のカム板28が、支持部28Aを中心として回動自在に支持されている。カム板28には、2つのカム溝28B,28Cが形成されている。カム溝28Bは、略直線状に形成され、カム溝28Cは、略円弧状に形成されている。そして、カム溝28Bには第2レンズ保持枠17Aのカム棒17Bが係合し、カム溝28Cにはレンズ保持枠21のカム棒21Dが係合している。
【0042】
以上のような本実施形態の変形例に係るレンズユニット10では、振動体30の振動により駆動軸23を介して被駆動部材22である第3レンズ14およびレンズ保持枠21が進退駆動されると、カム棒21Dによってカム溝28Cの側部が押される。そして、カム溝28Cの円弧形状に応じて、カム板28が支持部28Aを中心に回動(図3中、矢印R方向)する。このカム板28の回動に伴って、カム棒17Bがカム溝28Bに案内され、第2レンズ保持枠17Aおよび第2レンズ13が光軸Aに沿って移動する。すなわち、第2レンズ13が第3レンズ14の進退移動に連動して移動することとなる。
なお、この第2レンズ13の移動方向および移動量は、カム溝28B,28Cの形状や支持部28Aからの距離等を適宜設定することで、調節可能である。また、連動部材としては、第2レンズ13に限らず、第1レンズ12でもよく、他のレンズでもよい。
【0043】
以上の本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
(1) 振動体30を駆動軸23の当接軸部23Bに当接し、振動体30の振動により駆動軸23を回転させることにより、被駆動部材22を駆動することができる。従って、従来用いられていた電磁モータやそれに付随する歯車やカム環等の複雑な構造を設ける必要がなく、構造を単純化できるとともに、レンズユニット10を小型化することができる。さらに、振動体30の振動により被駆動部材22を駆動することにより、従来の圧電素子の伸縮変形によって駆動する場合と比較して、振動体30のサイズを小さくでき、レンズユニット10をさらに小型化できる。
【0044】
(2) 被駆動部材22は、駆動軸23の回転運動により駆動軸23に沿って進退駆動されるようになっている。従って、従来の摩擦結合によって駆動する場合と比較し、摩擦によるエネルギーロスが少ないので、駆動効率を十分に高めることができる。さらに、被駆動部材22が駆動軸23に螺合されていることで、駆動停止時において、被駆動部材22が容易に移動せず、その位置を安定させることができる。また、振動体30の圧電素子32に印加する電圧を除いても被駆動部材22の位置が保持されるので、電圧を印加し続ける必要がなく、電力消費を抑制できる。
【0045】
(3) 駆動軸23の回転運動により駆動軸23のねじ部23Aに螺合された被駆動部材22を進退駆動することにより、駆動軸23自体は回転運動するのみで進退移動しないため、軸方向に沿った長さ寸法を短くでき、レンズユニット10をさらに小型化できる。また、振動体30の振幅と比較して駆動軸23の回転によるねじ部23Aを介した進退駆動量は小さいので、大きな動力が不要で、かつ、被駆動部材22を精度良く駆動できる。また、ねじ部23Aのねじの傾きの異なる駆動軸23を用いることで、被駆動部材22の移動量を調節でき、駆動精度を高めることができる。
【0046】
(4) 振動体30がコイルばね25による所定の押圧力で駆動軸23に当接されることにより、振動体30の凸部31Aと駆動軸23の当接軸部23Bとの間に摩擦力が生じ、被駆動部材22をより確実に駆動できるとともに、被駆動部材22の位置をさらに安定させることができる。
【0047】
(5) 振動体30が楕円軌道を描いて振動することにより、振動体30の凸部31Aが駆動軸23に近い側の軌道を描こうとする時の駆動力が大きくなるので、その時の振動方向に向かって駆動軸23が回転駆動されることとなり、被駆動部材22を所定方向に確実に駆動できる。
この際、案内軸24によって光軸Aに対するレンズ保持枠21の角度が維持されるので、第3レンズ14が光軸Aに対して傾くことなく、被駆動部材22を高精度で駆動できる。
【0048】
(6) 被駆動部材22の運動を伝達するリンク板28を介して第2レンズ13を連結した構成(図3)によれば、第2レンズ13が被駆動部材22としての第3レンズ14およびレンズ保持枠21の進退移動に連動して駆動されるので、被駆動部材22および第2レンズ13の各々を個別に駆動するための振動体を用意する必要がなく、部品点数の削減と装置の小型化を図ることができる。
【0049】
〔第2実施形態〕
次に、図4に基づいて本発明の第2実施形態に係るレンズユニット40について説明する。
レンズユニット40では、振動体30の振動によって駆動部材45およびこの駆動部材45に固定された被駆動部材44が光軸Aに沿って駆動される点が前述の第1実施形態のレンズユニット10と相違するものである。以下、相違点について詳しく説明する。
【0050】
図4は、レンズユニット40を示す断面図である。
図4において、レンズユニット40は、前述の第1実施形態のレンズユニット10と同様の筐体41と、第1レンズ12、第2レンズ13および第3レンズ14の3枚のレンズ12,13,14で構成されるレンズ群15と、を備えたズームレンズ用ユニットである。
ここで、第3レンズ14は、光軸Aに沿って筐体41の内部を進退自在に支持されたレンズ保持枠43に保持され、これらの第3レンズ14およびレンズ保持枠43によって、被駆動部材44が構成されている。すなわち、被駆動部材44は、所定方向としての光軸Aに沿った方向(図4中、白抜き矢印で示す方向)に往復移動可能に設けられている。
【0051】
レンズ保持枠43には、第3レンズ14を嵌め込み保持する第3レンズ保持部43Aと、この第3レンズ保持部43Aの一方側(図4中、上側)に固定孔43Bと、他方側(図4中、下側)に挿通孔43Cとが形成されている。
固定孔43Bおよび挿通孔43Cは、互いに光軸Aと平行になっており、固定孔43Bには駆動部材45が固定され、挿通孔43Cには案内軸46が挿通されている。
【0052】
駆動部材45は、光軸Aと平行に配置された長尺部材であり、筐体41のフランジ部分に設けられた2箇所の貫通孔42に摺動自在に支持されている。また、駆動部材45の貫通孔42に挿通される部分は、断面円形の棒状に形成され、この部分の長さ方向略中央に被駆動部材44が固定されている。そして、駆動部材45の端部のうち、第1レンズ12の側の端部は、被駆動部材44が筐体41内を往復移動した際に、貫通孔42から外れない程度の余長を有している。
また、駆動部材45の端部のうち、第2レンズ13の側の端部には、後述する振動体30が当接される当接面部45Aが設けられている。この当接面部45Aは、角柱状に形成され、その表面は、当接された振動体30がスムーズに振動し、また、振動体30の当接部分の摩耗を防ぐために、凹凸無く仕上げられている。
【0053】
案内軸46は、光軸Aに平行な棒状の部材であり、筐体41のフランジ部分に架設されている。また、案内軸46は、レンズ保持枠43の光軸Aに対する角度を一定に維持するとともに、駆動部材45回りの回転を規制する機能を備えている。従って、レンズ保持枠43は、光軸Aに対して第3レンズ14が直交した状態を維持しながら、進退駆動されることになる。
【0054】
駆動部材45の当接面部45Aに対向した位置には、振動体取付部19が設けられ、この振動体取付部19には、コイルばね25および台座26を介して、振動体30が取り付けられている。この振動体30は、当接面部45Aに先端部分がほぼ直角に当接され、かつ、光軸Aと平行な平面内で振動するように配置されている。
なお、当接面部45Aに対する振動体30の当接方向は、特に限定されず、駆動部材45を光軸Aに沿って進退移動させることができる方向から振動体30が当接していればよい。また、振動体30は、前述の第1実施形態と同様のものである。
【0055】
以上のように振動体30、駆動部材45および被駆動部材44を備えて構成された駆動装置は、次のように動作する。
振動体30の圧電素子32に電圧を印加すると、振動体30は縦振動と屈曲振動とを組み合わせた楕円軌道を描いて振動しようとする。しかし、振動体30はコイルばね25のばね力により駆動部材45の当接面部45Aに押圧されているため、凸部31Aは、楕円軌道を描けずに光軸Aに沿った方向に振動することとなる。そして、振動体30が描こうとする楕円軌道上における駆動部材45に近い側において、凸部31Aおよび当接面部45Aの間の摩擦力が大きくなり、駆動部材45から遠い側においては摩擦力が小さくなる。
従って、凸部31Aが駆動部材45に近い側の軌道を描こうとする時の駆動力が大きくなるので、その時の振動方向に向かって駆動部材45が駆動されることとなる。この動作を所定の周波数で繰り返し行うことにより、駆動部材45は所定方向に連続的に駆動されることとなる。
また、圧電素子32に印加する電圧の電極を適宜切り替えることにより、駆動部材45の駆動方向を反転させることができる。
【0056】
以上のように駆動部材45が駆動されることで、この駆動部材45に固定されたレンズ保持枠43および第3レンズ14、すなわち、被駆動部材44が光軸Aに沿って(図4中、白抜き矢印で示す方向に)進退駆動されることになる。
この際、図示しない位置読み取りセンサによって被駆動部材44の位置を読み取り、制御回路にフィードバックして駆動制御することにより、被駆動部材44は、光軸Aに沿った任意の位置で静止可能となっている。
従って、本実施形態のレンズユニット40では、振動体30の振動により駆動部材45および被駆動部材44が一体的に光軸Aに沿って進退駆動され、所定のズーム位置でズームレンズとしての第3レンズ14を静止させることができる。
【0057】
以上の本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
(7) 振動体30を駆動部材45の当接面部45Aに当接し、振動体30の振動により駆動部材45を駆動することにより、駆動部材45に固定された被駆動部材44を一体的に駆動することができる。従って、従来用いられていた電磁モータやそれに付随する歯車やカム環等の複雑な構造を設ける必要がなく、構造を単純化できるとともに、レンズユニット40を小型化することができる。さらに、振動体30の振動により被駆動部材44を駆動することにより、従来の圧電素子の伸縮変形によって駆動する場合と比較して、振動体30のサイズを小さくでき、レンズユニット40をさらに小型化できる。
【0058】
(8) 被駆動部材44は、駆動部材45と一体的に進退駆動されるようになっている。従って、従来の摩擦結合によって駆動する場合と比較し、摩擦によるエネルギーロスが少ないので、駆動効率を十分に高めることができる。さらに、駆動部材45の当接面部45Aに振動体30が当接されていることで、駆動停止時において、被駆動部材44が容易に移動せず、その位置を安定させることができる。また、振動体30の圧電素子32に印加する電圧を除いても被駆動部材44の位置が保持されるので、電圧を印加し続ける必要がなく、電力消費を抑制できる。
【0059】
(9) 振動体30の振動により駆動部材45および被駆動部材44が一体的に進退駆動されることにより、前述の第1実施形態と比較し、摩擦によるエネルギーロスをさらに少なくできるので、駆動効率をより一層高めることができる。
【0060】
( 10 ) 振動体30がコイルばね25による所定の押圧力で駆動部材45に当接されることにより、振動体30の凸部31Aと駆動部材45の当接面部45Aとの間に所定の摩擦力が生じ、被駆動部材44をより確実に駆動できるとともに、被駆動部材44の位置をさらに安定させることができる。
【0061】
( 11 ) 振動体30が楕円軌道を描いて振動することにより、振動体30の凸部31Aが駆動部材45に近い側の軌道を描こうとする時の駆動力が大きくなるので、その時の振動方向に向かって駆動部材45および被駆動部材44が確実に駆動される。
この際、案内軸46によって光軸Aに対するレンズ保持枠43の角度が維持されるので、第3レンズ14が光軸Aに対して傾くことなく、被駆動部材44を高精度で駆動できる。
【0062】
〔第3実施形態〕
次に、図5ないし図7に基づいて本発明の第3実施形態に係るレンズユニット50について説明する。
図5ないし図7は、それぞれレンズユニット50を示す断面図、側面図および一部を断面した斜視図である。
図5ないし図7において、レンズユニット50は、光軸Aの回りに設けられた円筒状の保持部材としての筐体51と、第1レンズ62および第2レンズ72と、を備えたズームレンズ用ユニットである。
筐体51の内周面51Aには、互いに逆向きの螺旋状に形成された2本のカム溝52,53が設けられている。
【0063】
第1レンズ62および第2レンズ72は、それぞれ第1レンズ保持枠61および第2レンズ保持枠71に保持され、これらの第1レンズ保持枠61および第1レンズ62から第1被駆動部材63が構成され、第2レンズ保持枠71および第2レンズ72から第2被駆動部材73が構成されている。すなわち、第1レンズ保持枠61および第2レンズ保持枠71には、それぞれ第1レンズ62および第2レンズ72を保持するレンズ保持部61A,71Aが形成され、これらのレンズ保持部61A,71Aに各レンズ62,72が嵌め込まれている。
また、第1レンズ保持枠61および第2レンズ保持枠71の外周部には、それぞれカム溝52,53に係合するカム61B,71Bが設けられている。そして、これらのカム61B,71Bがカム溝52,53に案内されることで、第1被駆動部材63および第2被駆動部材73は、それぞれ筐体51の内周面51Aに沿った回転運動に伴って、光軸Aに沿った(図5中、白抜き矢印で示す方向)往復移動するように支持されている。
【0064】
第1レンズ保持枠61には、光軸Aと平行に第2レンズ保持枠71に向かって延びる案内軸64が固定され、第2レンズ保持枠71には、案内軸64が挿通される挿通孔71Cが形成されている。すなわち、第1レンズ保持枠61および第2レンズ保持枠71は、互いに連結部材としての案内軸64によって連結されることで、一方の回転運動が他方に伝達されることとなる。
また、第2レンズ保持枠71の側面には、振動体30が取り付けられており、この振動体30は、筐体51の内周面51Aに先端部分がほぼ直角に当接され、かつ、光軸Aに略直交する平面内で振動するように配置されている。
なお、内周面51Aに対する振動体30の当接方向は、特に限定されず、第2レンズ保持枠71を内周面51Aに沿って回転させることができる方向から振動体30が当接していればよい。また、振動体30は、前述の第1実施形態と同様のものであり、前述の第1実施形態と同様の付勢手段により筐体51の内周面51Aに向かって押圧されていてもよい。
【0065】
以上のように振動体30、筐体51、第1被駆動部材63、第2被駆動部材73および案内軸64を備えて構成された駆動装置は、次のように動作する。
振動体30の圧電素子32に電圧を印加すると、振動体30は縦振動と屈曲振動とを組み合わせた楕円軌道を描いて振動しようとする。しかし、振動体30は筐体51の内周面51Aに当接されているため、凸部31Aは、楕円軌道を描けずに内周面51Aに沿った方向に振動することとなる。そして、振動体30が描こうとする楕円軌道上における内周面51Aに近い側において、凸部31Aおよび内周面51Aの間の摩擦力が大きくなり、内周面51Aから遠い側においては摩擦力が小さくなる。
従って、凸部31Aが内周面51Aに近い側の軌道を描こうとする時の駆動力が大きくなるので、その時の振動方向と反対方向に向かって第2被駆動部材73が回転駆動されることとなる。この動作を所定の周波数で繰り返し行うことにより、第2被駆動部材73は所定方向に連続的に回転駆動されることとなる。
この際、案内軸64により第2被駆動部材73と連結された第1被駆動部材63も、第2被駆動部材73と同様に回転駆動される。
また、圧電素子32に印加する電圧の電極を適宜切り替えることにより、第2被駆動部材73および第1被駆動部材63の駆動方向を反転させることができる。
【0066】
以上のように回転駆動された第1被駆動部材63および第2被駆動部材73は、これらに設けられたカム61B,71Bがカム溝52,53に案内されることで、光軸Aに沿って(図5中、白抜き矢印で示す方向に)進退駆動されることになる。すなわち、第1被駆動部材63および第2被駆動部材73は、互いに逆方向に進退駆動され、これらが有する第1レンズ62および第2レンズ72が、互いに接近あるいは遠ざかるように駆動される。
この際、図示しない位置読み取りセンサによって第1被駆動部材63および第2被駆動部材73の位置を読み取り、制御回路にフィードバックして駆動制御することにより、第1被駆動部材63および第2被駆動部材73は、光軸Aに沿った任意の位置で静止可能となっている。
従って、本実施形態のレンズユニット50では、振動体30の振動により第1被駆動部材63および第2被駆動部材73が光軸Aに沿って進退駆動され、また、所定位置で静止されることとなる。
【0067】
なお、本実施形態においては、カム溝52,53を互いに異なる方向の螺旋状に形成したが、これに限らず、同一の回転方向を有する螺旋状に形成してもよい。この際、各カム溝52,53の光軸Aに対する角度を同一にすれば、第1被駆動部材63および第2被駆動部材73は、互いの間隔を変えずに進退駆動されることとなる。また、各カム溝52,53が光軸Aに対して異なる角度となるように形成すれば、第1被駆動部材63および第2被駆動部材73は、互いに同じ方向にかつ互いの間隔を変化させながら進退駆動されることとなる。
また、本実施形態においては、カム溝52,53を両方ともに螺旋状に形成したが、これに限らず、一方のみを螺旋状に形成してもよい。例えば、第1被駆動部材63を案内するカム溝52のみを螺旋状に形成し、第2被駆動部材73を案内するカム溝53を円周状に形成することができる。このようにすれば、振動体30の振動によって、第2被駆動部材73が筐体51の内周面51Aに沿って回転運動し、この回転運動が案内軸64によって第1被駆動部材63に伝えられる。そして、第1被駆動部材63は、回転運動とともに、カム溝52に案内されて光軸Aに沿って進退駆動されることとなる。
【0068】
また、本実施形態においては、第1被駆動部材63および第2被駆動部材73を案内軸64で連結したが、これに限らず、案内軸64を省略することができる。この際、第1レンズ保持枠61および第1レンズ62を筐体51に固定し、第2レンズ保持枠71および第2レンズ72により構成される第2被駆動部材73のみを被駆動部材とする。このようにすれば、振動体30の振動によって、第2被駆動部材73が筐体51の内周面51Aに沿って回転運動するとともに、カム溝53に案内されて光軸Aに沿って進退駆動されることとなる。
さらに、被駆動部材が第1レンズ62や第2レンズ72を有して構成されているが、これに限らず、レンズによって結像される像を電気信号に変換する撮像素子(図示せず)を有して構成されていてもよい。具体的には、第2レンズ72に換えて撮像素子としての電荷結合素子(Charge-Coupled Device,CCD)を設けることができる。このようにすれば、上述のように駆動機構を動作させて第1レンズ62の結像位置に電荷結合素子を合わせることで、第1レンズ62によって結像された像を電荷結合素子で読み取ることができる。
【0069】
以上の本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
( 12 ) 振動体30を筐体51の内周面51Aに当接し、振動体30の振動により第2被駆動部材73を回転駆動することにより、第2被駆動部材73に案内軸64で連結された第1被駆動部材63を回転駆動することができる。そして、これらの第1被駆動部材63および第2被駆動部材73は、それぞれカム溝52,53に案内されて光軸Aに沿って進退駆動される。
従って、従来用いられていた電磁モータやそれに付随する歯車やカム環等の複雑な構造を設ける必要がなく、構造を単純化できるとともに、レンズユニット50を小型化することができる。さらに、振動体30の振動により第1被駆動部材63および第2被駆動部材73を駆動することにより、従来の圧電素子の伸縮変形によって駆動する場合と比較して、振動体30のサイズを小さくでき、レンズユニット50をさらに小型化できる。
【0070】
( 13 ) 第1被駆動部材63および第2被駆動部材73は、筐体51の内周面51Aに案内されて進退駆動されるようになっている。従って、従来の摩擦結合によって駆動する場合と比較し、摩擦によるエネルギーロスが少ないので、駆動効率を十分に高めることができる。さらに、カム溝52,53にカム61B,71Bが係合されていることで、駆動停止時において、第1被駆動部材63および第2被駆動部材73が容易に移動せず、その位置を安定させることができる。
【0071】
( 14 ) 第1被駆動部材63および第2被駆動部材73が筐体51の内周面51Aに沿ってカム溝52,53に案内されて回転および進退駆動されることにより、、筐体51の外側に振動体30等が露出しないので、前述の第1実施形態および第2実施形態と比較して、レンズユニット50をさらに小型化できる。
【0072】
( 15 ) 振動体30が楕円軌道を描いて振動することにより、振動体30の凸部31Aが筐体51の内周面51Aに近い側の軌道を描こうとする時の駆動力が大きくなるので、その時の振動方向と反対方向に向かって第2被駆動部材73が確実に駆動される。
【0073】
なお、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施の形態に関して特に図示され、かつ、説明されているが、以上述べた実施の形態に対し、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができる。
【0074】
例えば、前述の各実施形態では、1つまたは2つの被駆動部材を1つの振動体30で駆動するものとしたが、これに限らず、2つ以上の振動体によって駆動するものであってもよい。具体的には、往復振動のみの振動モードを有する振動体を、被駆動部材の進退両方向について1つずつ用意し、駆動する方向に応じて駆動軸、駆動部材あるいは保持部材の内周面に当接させる。各駆動方向に応じた振動体を個別に制御して、振動、停止させることで、被駆動部材を任意の方向に駆動可能である。
このようにすれば、各振動体が楕円振動に限らず、往復振動だけの単純な振動モードで振動する場合であっても、被駆動部材を所定の方向に進退駆動できるので、振動体の構造を簡単にできる。
【0075】
さらに、上述のように2つ以上の振動体によって被駆動部材を駆動する構成では、例えば、駆動方向について傾斜した状態で駆動軸や駆動部材に当接するような振動体の配置レイアウトを容易に実施できる。すなわち、1つの振動体の駆動方向を切り替えることで被駆動部材を進退駆動する場合、進退両方向の駆動力を均等にするために振動体の当接方向や当接角度等を厳密に調整する必要がある。このため、駆動方向について傾斜した状態で振動体を配置する場合には、2つ以上の振動体を適宜配置することにより、被駆動部材を確実に駆動でき、振動体の配置レイアウトの自由度が高まる。
【0076】
また、前述の各実施形態では、振動体30の振動によって駆動軸23や駆動部材45を回転または進退いずれかの駆動方向に駆動したが、これに限らず、回転および進退の2方向について駆動するものでもよい。具体的には、前述の第1実施形態における駆動軸23を回転駆動するとともに、その軸方向についても進退自在に支持して、この方向に駆動するための振動体を配置することができる。このようにすれば、被駆動部材を駆動軸の軸方向へは振動体の振幅に応じて高速駆動し、駆動軸のねじ部によりその回転運動を減速して伝えることで低速駆動することができる。従って、高速駆動および低速駆動を適宜組み合わせることにより、より高速かつ高精度に被駆動部材を駆動することができる。
【0077】
また、前述の第1実施形態では、駆動軸23にレンズ保持枠21を螺合し、被駆動部材22である第3レンズ14およびレンズ保持枠21を駆動するものとしたが、これに限らず、1本の駆動軸に複数の被駆動部材を螺合することができる。この際、各々の被駆動部材が螺合される位置に応じてねじ形状(ピッチ、方向、径)を設定すれば、振動体により駆動軸を所定方向に回転されるだけで、被駆動部材ごとに移動量や移動方向を任意に調節できる。
【0078】
また、前述の第3実施形態では、保持部材である筐体51の内周面にカム溝52,53を設け、被駆動部材63,73である第1レンズ保持枠61および第2レンズ保持枠71側にカム61B,71Bを形成したが、これに限らず、保持部材側にカムを設け、被駆動部材側にカム溝を設けることができる。ただし、被駆動部材が進退移動した際に、被駆動部材のカム溝から保持部材側のカムが外れないように、被駆動部材の駆動方向の長さ寸法を駆動ストロークに応じて長く形成しておく必要がある。
さらに、前述の第3実施形態では、振動体30を被駆動部材73である第2レンズ保持枠71に固定したが、これに限らず、保持部材側に固定してもよい。ただし、この際、被駆動部材が進退移動した際に、被駆動部材の当接面から振動体が外れないように、被駆動部材の駆動方向の長さ寸法を駆動ストロークに応じて長く形成しておく必要がある。
【0079】
【発明の効果】
前述のように本発明の駆動装置、レンズユニット、および、カメラによれば、小型化を図りながら、駆動効率を十分に高めることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態に係るレンズユニットを示す断面図である。
【図2】 前記実施形態のレンズユニットの要部を拡大して示す斜視図である。
【図3】 前記実施形態の変形例に係るレンズユニットを示す一部を断面した側面図である。
【図4】 本発明の第2実施形態に係るレンズユニットを示す断面図である。
【図5】 本発明の第3実施形態に係るレンズユニットを示す断面図である。
【図6】 前記実施形態のレンズユニットを示す側面図である。
【図7】 前記実施形態のレンズユニットを示す一部を断面した斜視図である。
【符号の説明】
10,40,50…レンズユニット、11,41,51…筐体、12,13,14,62,72…レンズ、17B,21D…リンク機構としてのカム棒、21,43,61,71…レンズ保持枠、22、44…被駆動部材、23…駆動軸、23A…ねじ部、25…付勢手段としてのコイルばね、28…リンク機構としてのカム板、30…振動体、32…圧電素子、45…駆動部材、51A…内周面、52,53…カム、61B,71B…カム溝、63…第1被駆動部材、64…連結部材としての案内軸、73…第2被駆動部材、A…所定方向としての光軸。
Claims (10)
- 圧電素子を備え、この圧電素子により振動する振動体と、
内周面に互いに逆向きの螺旋状に形成された2つのカム溝を有する円筒状の保持部材と、
前記2つのカム溝の一方に係合するカムを備え、前記振動体が固定された第1被駆動部材と、
他方に係合するカムを備えた第2被駆動部材と、
前記第1被駆動部材の回転運動を第2被駆動部材に伝える連結部材と、を備え、
前記振動体は、前記保持部材の内周面に当接され、
前記振動体の振動によって前記第1被駆動部材および第2被駆動部材が、前記保持部材の内周面に沿って回転運動して互いに接近あるいは遠ざかるように駆動されることを特徴とする駆動装置。 - 圧電素子を備え、この圧電素子により振動する振動体と、
内周面に互いに逆向きの螺旋状に形成された2つのカムを有する円筒状の保持部材と、
前記2つのカムの一方に係合するカム溝を備え、前記振動体が固定された第1被駆動部材と、
他方に係合するカム溝を備えた第2被駆動部材と、
前記第1被駆動部材の回転運動を第2被駆動部材に伝える連結部材と、を備え、
前記振動体は、前記保持部材の内周面に当接され、
前記振動体の振動によって前記第1被駆動部材および第2被駆動部材が、前記保持部材の内周面に沿って回転運動して互いに接近あるいは遠ざかるように駆動されることを特徴とする駆動装置。 - 請求項1ないし請求項2のいずれかに記載の駆動装置において、
前記振動体を前記駆動軸、前記駆動部材、または前記保持部材の内周面のいずれかに向かって押圧する付勢手段を備えたことを特徴とする駆動装置。 - 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の駆動装置において、
前記振動体は、往復振動と屈曲振動とを組み合わせた楕円軌道を描く振動モードを有していることを特徴とする駆動装置。 - 請求項4に記載の駆動装置において、
前記振動体は、前記楕円軌道を描く振動モードの振動方向を切り替え自在に構成されていることを特徴とする駆動装置。 - 請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の駆動装置と、この駆動装置が取り付けられる筐体とを備え、
前記駆動装置を構成する被駆動部材がズームレンズおよびレンズ保持枠を有して構成されていることを特徴とするレンズユニット。 - 請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の駆動装置と、この駆動装置が取り付けられる筐体とを備え、
前記駆動装置を構成する被駆動部材がフォーカスレンズおよびレンズ保持枠を有して構成されていることを特徴とするレンズユニット。 - 請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の駆動装置と、
この駆動装置が取り付けられる筐体と、この筐体に取り付けられるレンズとを備え、
前記駆動装置を構成する被駆動部材が前記レンズによって結像される像を電気信号に変換する撮像素子を有して構成されていることを特徴とするレンズユニット。 - 請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の駆動装置により駆動されるレンズと、
このレンズによって結像される像を記録する記録媒体と、
これらの駆動装置、レンズおよび記録媒体が収納されるケースとを備えたことを特徴とするカメラ。 - 請求項6ないし請求項8のいずれかに記載のレンズユニットと、
このレンズユニットを構成するレンズによって結像される像を記録する記録媒体と、
これらのレンズユニットおよび記録媒体が取り付けられるケースとを備えたことを特徴とするカメラ。
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