JP4344916B2 - 水処理用薬品の濃度管理方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷却水系等の循環水系の水中の水処理用薬品(水処理薬剤、水系添加薬剤)の濃度管理方法及び装置に関するものであり、詳しくは、水処理用薬品と共にトレーサー物質としてのリチウムの水溶性塩、即ち、リチウムイオンを被処理水に添加し、リチウムイオン濃度をリチウムイオン電極により検出、定量することによって、安定的かつ効率的な水処理用薬品の濃度管理を行う方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、あらゆる産業において工業用水等の用水は重要な役割を果しており、循環水系で用いられることも多く、多用される循環水系にはボイラー水系や開放系や閉鎖系の冷却水系などがある。これらの循環水系の水処理には、腐食、スケール、スライム等の水に起因する障害を防ぐために種々の水処理用薬品(薬剤)が使用されている。一般に、冷却水系等の循環水系で使用される水処理薬剤には、防食剤、分散剤、スケール防止剤、殺菌剤、スライム防除剤(バイオファウリング抑制剤)などがある。
【0003】
これらの各種の薬剤の効果による適切な水処理を行い、これらの薬剤の有する効果を持続させるためには、任意の位置、時間等におけるこれらの薬剤濃度を正確に把握し、適切な濃度管理を行うことが必要である。
【0004】
ところが、薬剤の種類によっては、被処理水中の濃度の測定が不可能なものがある。また、比色法や比濁法やその他の定量法で測定ができたとしても、その操作が煩雑であったり、操作に長時間を要するため、プラントの運転管理上実用的で無い場合がある。そのため、水処理用薬品としてそれ自身の濃度の測定が不可能あるいは困難な薬剤を用いた場合の濃度管理方法として、簡単に濃度測定できる物質をトレーサーとして用いることが行われている。このトレーサー物質を用いる方法によれば、それ自身の濃度の測定が不可能な薬剤、あるいは困難な薬剤であっても、その被処理水中における濃度を迅速に測定することが可能となる。これまで、水処理用薬品の濃度をトレーサー物質により測定する従来方法は、トレーサー物質の種類により分類することができ、代表的な例として蛍光トレーサー法、色素トレーサー法、臭素トレーサー法、沃素トレーサー法、カリウムトレーサー法、リチウムトレーサー法などがある。
【0005】
トレーサーとして用いられるこれらの物質は、一般に、次に挙げるような多くの条件を満足することが望まれる。(1)工業用水等の用水中に存在しないか、あるいはその存在量が無視できるほど微量であること、(2)化学的に安定であること、(3)微生物の作用で容易に分解しないこと、(4)公害防止上の観点から実質的に無害であること、(5)対象の工業用水等の用水中の溶存塩類と反応して、不溶性物質やスケールを生じないこと、(6)水系の配管材料等の金属材料に対する腐食性がないこと、(7)溶存塩類による妨害を受けること無く定量分析が可能なこと、(8)分析が正確にかつ迅速に行なえることなどである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
水処理用薬品の濃度を測定する従来方法のうち、蛍光トレーサー法としては例えば特開平2−115697号公報に開示される方法、色素トレーサー法としては例えば特開2001−334255号公報に開示される方法がある。しかし、トレーサーとして用いる有機物質がボイラー水や冷却水等の循環水(特に開放系の冷却水)中において、光、熱、酸化剤、pHなどの影響により変質するものが多く、経時的な測定において、トレーサー濃度が水処理用薬品濃度に関係無く減少してしまい、水処理用薬品濃度に換算できなくなるという欠点がある。また、トレーサー以外の水処理用薬品を含むボイラー水や冷却水等の循環水自体が、スラッジ等の汚れによる影響により、程度の差こそあれ吸光物質あるいは蛍光物質を含有する場合があり、その妨害を考慮に入れた測定を行わなければならないという問題がある。
【0007】
水処理用薬品の濃度を測定する別の従来方法として、臭素イオン又は沃素イオンをトレーサーとして用いる方法が特開平4−296651号公報に開示されている。この公報の明細書では、迅速且つ簡単な臭素又は沃素の測定方法としては滴定法やイオン電極法を使うことが、高感度または他の陰イオンの同時測定が必要な場合はイオンクロマトグラフ法を使うことが示されている。しかしながら、滴定法は操作が煩雑で分析の自動化が難しくリアルタイムな濃度管理は不可能という欠点がある。また、臭素イオン電極法及び沃素イオン電極法は他の陰イオンとの選択性に難があり、冷却水中に含まれる不純物の影響を受け易いという欠点がある。イオンクロマトグラフ法は測定に大掛かりな装置が必要であり、また、試料水をサンプリングしてから測定結果を得るまでに長時間を要するためにリアルタイムな濃度管理は不可能という欠点がある。
【0008】
カリウムトレーサー法は特開平4−296652号公報に開示され、迅速且つ簡便な測定方法としてイオン電極法の適用が示唆されている。しかしながら、冷却水中にはもともと原水からの一定量のカリウムイオンが含まれており、冷却水への補給水として供給される原水中に含まれるカリウム濃度の変動の影響を受け易いという難点がある。
【0009】
リチウムトレーサー法は特開昭51−111388号公報に開示されている。この方法では原子吸光法による検出を必要としていた為、測定に大掛かりな装置が必要となり、また、試料水をサンプリングしてから測定結果を得るまでに長時間を要するためにリアルタイムな濃度管理は不可能という欠点があった。
【0010】
本発明者等は上記課題、即ち、トレーサー物質が循環水系中にて変質すること、トレーサー物質の濃度測定が被処理水中に存在する不純物の影響を受け易いこと、トレーサー物質の濃度測定に大掛かりな装置を必要とすること、また、測定結果を得るまでに長時間かかることなどの諸問題を解決する目的で、トレーサー物質としてリチウムイオンを用い、リチウムイオン電極により該リチウムイオン濃度を測定することを特徴とする水処理用薬品の濃度管理方法(リチウムイオン電極法)を開発し、特願2002−121433として出願した。
【0011】
しかしながら、本発明者等は、その後の研究により、リチウムイオン電極法では、後述の比較例で示す通り、冷却水系等の循環水系中での水処理用薬品濃度を一定に保つことが困難な場合があること、及び、その原因がリチウムイオン電極が示す応答電位に対する冷却水系等の循環水系の被処理水の水質、特に濃縮倍率の影響にあることを見出した。ボイラー水系や開放系や閉鎖系の冷却水系では、一般に原水として純水、水道水、工業用水等を用い、濃縮倍率は1〜10倍の範囲で運転される。また、冷却水の濃縮倍率は蒸発水量、ブロー水量、補給水量により絶えず経時的に変化する。従って、原水の水質の変動が大きくなく概ね安定している場合でも濃縮倍率が変動する冷却水等の循環水中のリチウムイオン濃度をリチウムイオン電極法で正確に測定することは困難であることが判明した。
【0012】
本発明は、上記のリチウムイオン電極法の問題点、即ち、リチウムイオン電極の応答電位が被処理水の水質、特に濃縮倍率に影響されるという問題を解決し、トレーサー物質として添加するリチウムイオンの濃度を精度良く測定することができる水処理用薬品の濃度管理方法及び装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、水処理用薬品と共にトレーサー物質としてのリチウムの水溶性塩を循環水系の被処理水中に添加し、リチウムイオン濃度により循環水系水中に添加した前記水処理用薬品の濃度管理を行う方法において、リチウムイオン電極の応答電位と、循環水系水の濃縮倍率及び/又は該濃縮倍率を求めるのに用い得る指標類の1つ以上の測定値から、循環水系水のリチウムイオン濃度を算出することを特徴とする水処理用薬品の濃度管理方法、並びに、リチウムイオン電極と、該リチウムイオン電極からの信号及び循環水系水の濃縮倍率及び/又は該濃縮倍率を求めるのに用い得る指標類の1つ以上の信号を受信して水処理用薬品濃度を算出する演算部と、算出された水処理用薬品濃度を基に循環水系の被処理水へ添加する水処理用薬品の添加量を決定する制御部を有することを特徴とする水処理用薬品の濃度管理装置を提供するものである。
【0014】
ここで、濃縮倍率を求めるのに用い得る指標としては、例えば、電気伝導率、ナトリウムイオン濃度、カルシウムイオン濃度、カリウムイオン濃度、塩素イオン濃度などを挙げることができる。これらの中で、電気伝導率が簡易に測定できて特に好ましい。
【0015】
以下に本発明を詳細に説明する。本発明によれば、水処理用薬品の既知量と共にリチウムの水溶性塩の既知量を冷却水系等の循環水系中の被処理水に加えておき、リチウムイオン電極の応答電位と、循環水系水の濃縮倍率及び/又は該濃縮倍率を求めるのに用い得る指標類の1つ以上の測定値から、上記循環水系水のリチウムイオン濃度を算出し、該水処理用薬品の既知量に比例するリチウムイオン濃度の算出濃度から上記水中に存在する水処理用薬品の濃度を定量することにより、該循環水系中の水中に存在する水処理用薬品濃度の検出を行うことができ、水処理用薬品の濃度管理を行うことができる。
【0016】
即ち、本発明の方法に使用するリチウムイオンは、工業用水等の用水中に通常存在せず、また、化学的に安定であり、微生物の影響も受けず、その使用濃度において実質的に無害であり、その有する化学的な性質からスケール障害の原因とはならない。本発明によれば、かかるリチウムイオンの濃度を、リチウムイオン電極を用いることによって、従来の原子吸光法などに比べて遥かに簡易に短時間に求めることができ、また、簡易な測定装置を用いて現場で測定することも可能である。
【0017】
本発明において使用するリチウムの水溶性塩としては、例えば、炭酸リチウム、水酸化リチウム、硫酸リチウム、塩化リチウムなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
リチウムイオンをトレーサー物質として水処理用薬品の添加量に比例して添加する。添加方法としては、リチウムイオンと水処理用薬品を別々に一定の割合で被処理水に添加する方法と、リチウムイオンを予め一定割合で水処理用薬品に配合しておき、水処理用薬品とリチウムイオントレーサーを同時に被処理水に添加する方法がある。
【0019】
本発明においては、リチウムイオン電極の示す応答電位を測定する。リチウムイオン電極は、リチウムイオン感応物質を含む感応膜を包含するリチウムイオン選択電極として機能する一種のリチウムイオンセンサーである。一般に、リチウムイオン電極は、測定対象であるリチウムイオンの水溶液中のリチウムイオン濃度を膜電極が示す膜電位(応答電位)によって測定できるようにした電極であり、簡便、且つ、迅速に選択的にリチウムイオン濃度を測定することが可能で、例えば、適当な位置、時間でリチウムイオン濃度を測定することも可能とする。但し、本発明においては、リチウムイオン電極の応答電位の測定値と共に、測定対象である循環水系水の濃縮倍率及び/又は該濃縮倍率を求めるのに用い得る指標類の1つ以上の測定値を併用して、リチウムイオン濃度を算出する。
【0020】
リチウムイオン感応物質は、代表的にはリチウムイオンに選択的に配位するイオン選択性配位分子であり、イオノフォアあるいはニュートラルキャリア等と称されることもある。かかるリチウムイオンに選択的に配位するイオン選択性配位分子の物質としては、例えば、6,6−ジベンジル−1,4,8,11−テトラオキサシクロテトラデカン(CAS No.106868−21−7)、6−[2−(ジエトキシフォスフォリルオキシ)エチル]−6−ドデシル−1,4,8,11−テトラオキサシクロテトラデカン、トランス−2,3−ジベンジルオキシメチル−9,9,10,10−テトラメチル−1,4,8,11−テトラオキサシクロテトラデカン(特開平6−73045号公報)、2,2,3,3−テトラメチル−9−テトラデシル−1,4,8,11−テトラオキサシクロテトラデカン(CAS No.151460−00−3)、(1R,14S,16R,18R)−1,17,17−トリメチル−7−テトラデシル−2,6,9,13−テトラオキサトリシクロ−[12.4.0.116.18]オクタデカンなどを挙げることができる。入手容易性の点では、6,6−ジベンジル−1,4,8,11−テトラオキサシクロテトラデカンが好ましい。感度の点では、2,2,3,3−テトラメチル−9−テトラデシル−1,4,8,11−テトラオキサシクロテトラデカンや、(1R,14S,16R,18R)−1,17,17−トリメチル−7−テトラデシル−2,6,9,13−テトラオキサトリシクロ−[12.4.0.116.18]オクタデカンが好ましい。
【0021】
図1は、リチウムイオンセンサーとしてのリチウムイオン電極の構造の一例を示す概略断面説明図である。このリチウムイオン電極は、電極線1をプラスチック外筒2で被覆し、電極線1の先端にリチウムイオンに選択的に配位するリチウムイオン選択性配位分子を液膜中に保持したリチウムイオン感応膜3を形成したものである。
【0022】
図2は、リチウムイオン電極の構造の他の一例を示す概略断面説明図である。外筒12中に、内部溶液13、リチウムイオンに選択的に配位するリチウムイオン選択性配位分子を液膜中に保持したリチウムイオン感応膜14、及び、内部参照電極11が収容されている構成である。内部溶液13としてはリチウムイオンを含む溶液を用いることができ、例えば、0.001〜1mol/Lの塩化リチウム水溶液等が好適に用いられる。内部参照電極11としては上記内部溶液13中で安定に動作するものを用いればよく、例えば、銀−塩化銀電極等が好適に用いられる。
【0023】
また、リチウムイオン電極は、冷却水中で劣化し易く耐久性に問題があることが分かった。本発明者等は、リチウムイオン電極の耐久性に影響を与える因子についても鋭意検討した結果、リチウムイオン電極の感応膜の表面に付着する生物膜が耐久性に重大な影響を与えていること、この生物膜の付着量は感応膜表面に達する光を遮断することにより大幅に減少させることができることを見出した。これらの知見より、本発明者等は、耐久性の問題は、少なくとも感応膜を覆う様に遮光性のカバーを取り付けることにより解決することができることも見出した。遮光性のカバーは感応膜のみを覆う構造であっても、また、リチウムイオン電極全体を覆う構造であっても良い。遮光性のカバーの形状は特に限定されないが、図3に示す様な感応膜のみを覆う箱状又は筒状、図4に示される様な感応膜のみを覆う傘状、図5に示される様なリチウムイオン電極全体を覆う箱状又は筒状などが好適である。図3〜5の概略断面説明図において、21は信号線、22はリチウムイオン電極、23は感応膜、24は感応膜のみを覆う箱状又は筒状又は傘状の遮光性カバー、25はリチウムイオン電極全体を覆う箱状又は筒状の遮光性のカバーを示す。遮光性のカバーの素材は、リチウムイオン電極及び冷却水系の双方に悪影響を与えず、冷却水中で耐久性を有するものであれば特に限定されず、例えば、黒色等に着色されたプラスチック類や金属類を好ましく使用することができる。
【0024】
ここで、リチウムイオン電極法の測定原理を説明する。リチウムイオン電極にはリチウムイオンに対し選択的に応答する感応膜があり、この感応膜部が試料溶液(試料水)中のリチウムイオンと接すると、その濃度に応じた膜電位を生じる。試料水中に浸漬させた比較電極をリチウムイオン電極の対極として高入力インピーダンスの直流電位差計に接続し、両電極間の電位差を測定することにより、膜電位が測定される。このとき直流電位差計により測定される相対電位を応答電位という。
【0025】
応答電位Eと試料水中のリチウムイオン濃度[Li+]との間には下記の数式1の関係がある。この数式はネルンスト式と呼ばれる。
【数1】
【0026】
ここで、E0は25℃での標準電極電位、Rは気体定数、Tは絶対温度、Fはファラデー定数、Logは常用対数である。数式1中の「2.303RT/F」をネルンスト定数と呼び、リチウムイオン濃度が10倍変化した場合のこの定数値を理論応答勾配又はネルンスト勾配という。例えば、25℃でのネルンスト勾配は約59mVとなる。
【0027】
通常、リチウムイオン電極を用いた測定を行う場合は、予めリチウムイオン濃度と応答電位との関係を下記の数式2によって求めておく。
【数2】
【0028】
試料水中のリチウムイオン濃度[Li+]を応答電位Eから下記の数式3を用いて決定することになる。
【数3】
【0029】
ここで、S(T)は、水温Tにおける応答電位Eの勾配である。一般にリチウムイオン電極は個体差を有する為、S(T)は必ずしも理論値に等しくなるとは限らない。従って、リチウムイオン濃度が既知の試料水を用い、リチウムイオン電極毎にS(T)を求めておくことが行われている。
【0030】
図6は、リチウムイオン電極が示す応答電位を測定することができる装置の構成の一例の概略説明図である。リチウムイオン濃度が既知の試験水をリチウムイオン濃度を変えて幾つか調製し、それらの試験水に対してリチウムイオン電極が示す応答電位を測定して、S(T)を求めることができる。任意の水温Tに設定された恒温槽36の中に試験水34を満たしたビーカー37が入れられている。リチウムイオン電極32とその対極としての比較電極33が試験水に浸漬されており、これらに接続された直流電位差計31で両電極間の電位差を測定することにより、膜電位、即ち応答電位が測定される。試験水34は、攪拌機35によって攪拌される。
【0031】
しかしながら、本発明者等は、後に比較例で示す通り、冷却水系等の循環水系の水中ではリチウムイオン電極の応答電位が必ずしも数式2に従わないこと、また、その原因が冷却水等の循環水系水の濃縮倍率にあることを見出した。
【0032】
そこで、本発明者等は、リチウムイオン電極の応答電位と循環水系水の濃縮倍率からリチウムイオン濃度を算出することにより、濃縮倍率の影響を実質的に受けることなくリチウムイオン濃度を求めることができることに想到し、本発明を完成したのである。
【0033】
【発明の実施の形態】
次に、発明の実施の形態を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
リチウムイオン電極の応答電位と循環水系水の濃縮倍率からリチウムイオン濃度を算出する方法については、例えば、濃縮倍率の異なる試料水毎に原子吸光法、イオンクロマトグラフ法等によるリチウムイオン濃度とリチウムイオン電極の示す応答電位を測定して、さらに必要であれば水温も連関させてその関係式を予め求めておき、各実測定におけるリチウム電極の示す応答電位と濃縮倍率、さらに必要であれば水温から測定対象の試料水中に含まれるリチウムイオン濃度を算出することにより実現できる。上記関係式は、測定値を再現するものであればその数式などの形を問わない。
【0035】
また、関係式を用いず、原子吸光法によるリチウムイオン濃度とリチウム電極の示す応答電位と濃縮倍率、さらに必要であれば水温からなる関係を表す表を予め作成しておき、測定毎に該表を参照してリチウムイオン濃度を算出する方法も好適に用いられる。
【0036】
ここで、濃縮倍率とは、冷却水等の循環水系水が蒸発により原水の何倍に濃縮されているかを示す数値である。この濃縮倍率は、一般に、原水の水質が大きく変動しないことを前提とすれば、電気伝導率、ナトリウムイオン濃度、カルシウムイオン濃度、カリウムイオン濃度、塩素イオン濃度等の濃縮倍率を求めるのに用い得る指標類のいずれか1つ以上の値について、原水と循環水の比を用いて算出することができる。
【0037】
従って、原水の水質変動がほぼ一定とみなされる場合、濃縮倍率に代えて、電気伝導率、ナトリウムイオン濃度、カルシウムイオン濃度、カリウムイオン濃度、塩素イオン濃度等の濃縮倍率を求めるのに用い得る指標類のいずれか1つ以上の値をそのまま、リチウムイオン電極の応答電位からのリチウムイオン濃度の計算に用いることも可能である。通常は、これらの指標類の一つを用いれば十分であるが、二つ以上の指標を用いることにより、1指標だけの場合の該指標の変動の影響を吸収してリチウムイオン電極の応答電位からのリチウムイオン濃度の計算がより正確性を増すこともある。また、本発明では、例えば、電気伝導率等の或る指標から求めた濃縮倍率と他の指標とを併用する場合を除外するものでもない。一般には、電気伝導率の測定値を用いるのが簡易で好ましい。電気伝導率の測定は公知の方法、例えばJIS−K−0101−1991工業用水試験方法12に記載の電気伝導率の測定方法等を用いることができる。
【0038】
ナトリウムイオン濃度、カルシウムイオン濃度、カリウムイオン濃度、塩素イオン濃度の測定は公知の方法、例えば、吸光法、イオンクロマトグラフ法、原子吸光法等を用いることができるが、測定が簡便かつ迅速に行えることからイオン電極法を用いることが好ましい。
【0039】
水処理用薬品の濃度算出法としては、前もって水系に対しての水処理用薬品の添加量とリチウムイオントレーサーの添加量との比率を既知の係数(リチウムイオントレーサーによる薬品濃度換算係数)として把握しておけば、例えば、適当な(採取)位置、時間で、被処理水中のリチウムイオントレーサーの濃度を検出して、その値に係数を乗じることにより、水処理用薬品濃度を算出することができる。この算出値に応じて、必要になった水処理用薬品とリチウムイオントレーサーの被処理水への添加量を算出することができる。
【0040】
冷却水等の被処理水中のリチウムイオン濃度は、0.01〜20mg/L(リットル、以下同様)の濃度範囲が好ましい。0.01mg/L未満ではリチウムイオン電極が感度の点で機能するには不十分となる場合がある濃度であり、また、20mg/Lを超えるとリチウムの水溶性塩の添加量が多くなり、一般的には不経済である。リチウムイオン感応物質として2,2,3,3−テトラメチル−9−テトラデシル−1,4,8,11−テトラオキサシクロテトラデカンや、(1R,14S,16R,18R)−1,17,17−トリメチル−7−テトラデシル−2,6,9,13−テトラオキサトリシクロ−[12.4.0.116.18]オクタデカンなどを用いた感応膜を組み込んだ高感度のリチウムイオン電極の場合は、更なる経済性の観点から、冷却水等の被処理水中のリチウムイオン濃度は、例えば、0.01〜2mg/Lであるのがより好ましい。
【0041】
さらに、本発明者等は、循環水系の被処理水へ添加する水処理用薬品の添加量は、リチウムイオン電極と、該リチウムイオン電極からの信号及び循環水系水の濃縮倍率及び/又は該濃縮倍率を求めるのに用い得る指標の1つ以上の信号を受信して水処理用薬品濃度を算出する演算部と、算出された水処理用薬品濃度を基に被処理水へ添加する水処理用薬品の添加量を決定する制御部を有することを特徴とする水処理用薬品の濃度管理装置をもって制御することが可能であることを見出した。かかる装置の一例の概略説明図を図7に示す。なお、演算部は、受信部を分離して考えることができるものでもよく、受信部を分離して考えることができないもの、即ち、受信部を包含するものでもよい。
【0042】
図7は、本発明の水処理用薬品濃度管理装置の一例を示し、且つ、この装置が冷却水系に用いられた場合の概略説明図である。この水処理用薬品濃度管理装置は、濃縮倍率を求めるのに用い得る指標類の1つとして冷却水の電気伝導率を測定する電気伝導率測定電極57と、リチウムイオン電極44及び比較電極45と、該電気伝導率測定電極57と該リチウムイオン電極44からの信号を受信信号線55を介して受信して電気伝導率と応答電位を求める受信部52と、電気伝導率と応答電位の値に基づいて水処理用薬品濃度を算出する演算部53と、算出された水処理用薬品濃度を基に被処理水へ添加する水処理用薬品の添加量を決定する制御部54を有する。制御部54にて、算出された水処理用薬品濃度を基に被処理水へ添加する水処理用薬品の添加量を決定し、その信号は制御信号線56を介して水処理用薬品注入ポンプ50に送られ該ポンプ50を該信号に従って適宜に駆動し、冷却水貯槽43に適量の水処理用薬品を注入する。
【0043】
この装置において、リチウムイオン電極の構成については前述の通りである。リチウムイオン電極と比較電極は別々に用いてもよく、また、リチウムイオン電極と比較電極を一体化した複合電極を用いても構わない。また、水温を測定する目的で、温度センサーをリチウムイオン電極の近傍に設置するのが好ましく、さらには、上記のような複合型電極の内部に温度センサーを組み込むことが、設置の便宜上、より好ましい。リチウムイオン電極は、冷却水系から一部試料水を採取し通水するフローセル等に設置しても良いが、採水ライン、フローセル等の付帯設備が必要となることから、冷却水ピット、冷却水貯槽、冷却水配管等の冷却水系に直接設置するのが好ましい。
【0044】
リチウムイオン電極からの信号を受信する受信部としては、公知の直流電位差計を用いることができるが、リチウムイオン電極の方にできるだけ電流を流さない様にして測定値を安定化させるためには特に1011Ω以上の高入力インピーダンスを有する直流電位差計が好ましい。
【0045】
図7では電気伝導率測定電極57が描かれているが、濃縮倍率を求めるのに用い得る指標としては、これに限られないのは勿論である。濃縮倍率、電気伝導率、ナトリウムイオン濃度、カルシウムイオン濃度、カリウムイオン濃度、塩素イオン濃度などから選ばれるいずれか1つ以上の信号を受信する受信部としては公知のものを用いることができる。他の測定計器にて測定された値を用いる場合は、例えば、4−20mA信号、1−5V信号、デジタル信号等により伝送される情報を受信すればよく、また、測定回路を受信部に内蔵することも可能である。
【0046】
濃縮倍率を算出する為には、原水と冷却水(循環水系水)の両方について、電気伝導率、ナトリウムイオン濃度、カルシウムイオン濃度、カリウムイオン濃度、塩素イオン濃度などの指標類から選ばれるいずれか1つ以上の測定を行う必要があるが、前述の様に、原水の水質変動が大きくなく、これを実質的に無視できる程度に小さいときは、原水中の測定を行うセンサーを省略することができる。図7は、このような場合の例を示しており、原水の電気伝導率を測定する為の電極は省略されている。
【0047】
演算部は、受信部により測定された応答電位信号及び濃縮倍率、電気伝導率、ナトリウムイオン濃度、カルシウムイオン濃度、カリウムイオン濃度、塩素イオン濃度などから選ばれるいずれか1つ以上の信号を、予め記憶させた検量線を用いて被処理水中に含まれるリチウムイオン濃度に換算する機能を有する。またさらに、前述の薬品濃度換算係数を用いて、被処理水中に含まれる水処理用薬品濃度を算出する機能を有する。
【0048】
制御部は、演算部で計算されたリチウムイオン濃度及び/又は水処理用薬品濃度を用いて、リチウムイオン及び/又は水処理用薬品の添加ポンプを制御する機能を有する。
【0049】
受信部、演算部、及び、制御部は独立した機能を有するが、同一の単位装置として構成しても構わない。演算部及び制御部はプログラマブルコントローラーやコンピューター等の利用が好ましい。
【0050】
【実施例】
以下、実施例で本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0051】
まず、実施例で用いたリチウムイオン電極の製作例を以下に説明する。
[リチウムイオン電極の製作例とその使用法]
以下の実施例では図2のリチウムイオン電極を用いた。このリチウムイオン電極は、内部参照電極11、内部溶液13、感応膜14から構成される。内部参照電極11としては銀−塩化銀電極を用いた。内部溶液13としては0.01mol/LのLiCl水溶液を用いた。感応膜は、リチウムイオン選択性配位分子とアニオン排除剤を膜溶媒に溶解し、これにポリ塩化ビニールを溶解したテトラヒドロフラン溶液を加え、よく撹拌した後にガラスシャーレ上に展開して一昼夜風乾させ、製膜した。その後、直径6mmの膜を切り出し、外筒12に取り付けた。なお、内部参照電極11及び外筒12は市販の液体膜型イオン電極キット(東亜ディーケーケー社製)を用いた。
【0052】
感応膜は液体膜であり、その組成は下記の表1の通りとした。アニオン排除剤としてはK−TCPB(同仁化学研究所社製)を、膜溶媒としてはNPOE(同仁化学研究所社製)を用いた。また、リチウムイオン選択性配位分子としては、下記の化学式(1)の6,6−ジベンジル−1,4,8,11−テトラオキサシクロテトラデカン(同仁化学研究所社製)を使用した。
【0053】
【表1】
【0054】
【化1】
【0055】
[リチウムイオン濃度換算表の作成例]
リチウムイオン濃度の測定例を以下に示す。測定対象として、開放循環冷却水系より採取した濃縮倍率10倍の水を純水により濃縮倍率2〜9倍になる様に希釈した水を用意し、それぞれにリチウムイオンが所定の濃度となる様に添加した試験水を準備した。リチウムイオン源としては塩化リチウムを用いた。使用した開放循環冷却水系の原水は埼玉県戸田市工業用水であった。濃縮倍率は電気伝導率計(東亜ディーケーケー社製・品番CM−14P)を用い、原水と試験水それぞれの電気伝導率を測定し、その比から算出した。測定は図6の装置を用いて行った。水温は25℃で一定となるようにした。リチウムイオン電極と、ダブルジャンクション型比較電極(東亜ディーケーケー社製・品番4083)を直流電位差計(東亜ディーケーケー社製・品番IM−55G)に接続した。リチウムイオン電極と比較電極を各試験水に浸漬し、両電極間の電位差を応答電位として上記直流電位差計で測定した。測定した結果の例を図8に示す。また、同様の試験を水温20℃、及び、30℃でも行った(図は示さず)。得られたデータより、例として濃縮倍率2倍の時の表2と濃縮倍率3倍の時の表3に示す様なリチウムイオン濃度換算表を作成した。なお、濃縮倍率4〜9倍の時のリチウムイオン濃度換算表を示すのは省略した。
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
図7の装置を以下の実施例の実験に使用した。図7の装置を説明する。冷却塔41で蒸発水の蒸発潜熱により冷却された水は冷却水ピット42を経由して冷却水貯槽43に一旦貯蔵される。この冷却水は、冷却水循環ポンプ46により送られ熱交換器47により熱交換するのに使用される。熱交換された水は冷却塔41に送られる。この様に冷却水は循環されている。補給水は必要に応じて補給水供給弁49を介して冷却水貯槽43に供給され、冷却水貯槽43中の冷却水の一部は必要に応じて冷却水ブロー弁48を介してブローされる。冷却水ピット42中の冷却水に電気伝導率測定電極57が浸漬され、その信号は受信信号線55を通って受信部52に入り、電気伝導率を測定する。また、同様に、冷却水ピット42中の冷却水にリチウムイオン電極44と比較電極45が浸漬されており、両者間の電位差の信号は受信信号線55を通って受信部52に入り、その中で直流電位差を応答電位として測定する。電気伝導率値又はそれに基づいて算出した濃縮倍率値及びリチウムイオン電極の応答電位値に基づいて演算部53でリチウムイオン濃度及び水処理用薬品濃度を算出し、算出された水処理用薬品濃度に基づいて制御部54で冷却水へ添加する水処理用薬品の添加量を決定する。水処理用薬品の添加量の決定値に基づく制御信号が制御信号線56を通って水処理用薬品注入ポンプ50に送られ、該ポンプ50を制御し、水処理用薬品貯槽51からの水処理用薬品を冷却水貯槽43に注入する。この図7においては、本発明の水処理用薬品の濃度管理装置は、電気伝導率測定電極57、リチウムイオン電極44、比較電極45、受信信号線55、受信部52、演算部53、制御部54、制御信号線56から主に構成されていると考えればよい。
【0059】
実施例では、リチウムイオン電極は前述のリチウムイオン電極を、比較電極は内部液無補給型比較電極(東亜ディーケーケー社製・品番4401L型)を使用し、直流電位差計(東亜ディーケーケー社製・品番IM−55G)に接続した。応答電圧は電位差計より電圧値としてアナログ出力し、これを、内部にアナログデジタルコンバーター、マイクロコンピューター、ソリッドステートリレーを含む制御装置に入れ、最終的に水処理用薬品注入ポンプを制御した。また、電気伝導率の測定は電気伝導率測定電極を含む電気伝導率測定セル(東亜ディーケーケー社製・品番CT−57101B)を電気伝導率測定器(東亜ディーケーケー社製・品番WM−50EG)に接続し、アナログ出力値を制御装置に入れ、アナログデジタルコンバーターでデジタル値に変換後、マイクロコンピューターに入力した。受信部には電気伝導率測定器及び直流電位差計及びアナログデジタルコンバーター、演算部にはマイクロコンピューター、制御部にはマイクロコンピューター及びソリッドステートリレーがそれぞれ相当する。また、本実験では循環水(冷却水)の水温が変化する為、リチウムイオン電極近傍に水温センサーを配置し、その出力信号を制御装置に入力するようにした。また、実験の記録用に、応答電位及び水温情報はデジタルアナログコンバーターを介して、制御装置外部にアナログ出力し、それを記録計に接続した。
【0060】
本実験系では原水の水質変動が小さいため、原水の電気伝導率測定は試験開始前に一度行い、その値をマイクロコンピューターに記憶させ、冷却水系水中の電気伝導率測定値は随時、マイクロコンピューター内にて濃縮倍率に換算した。
【0061】
入力された水温情報、応答電位、及び、濃縮倍率情報よりリチウムイオン濃度を算出する。マイクロコンピューターでは前述の濃縮倍率情報より、まず、予め記憶しておいた換算表の中から最も近い濃縮倍率のものを選び出す。続いて該換算表の中から入力された水温情報に最も近い値を選び出し、表中に記載された応答電位とリチウムイオン濃度の関係について補間式を作成、入力された応答電位の値をこの補間式に当てはめ、リチウムイオン濃度を算出する。
【0062】
計算されたリチウムイオン濃度と薬品濃度換算係数より、被処理水中に含まれる水処理用薬品濃度を計算する。さらには、予め設定された目標水処理用薬品濃度と比較することにより、水処理用薬品注入ポンプのOn/Offを制御する信号を発する。制御装置内部ではOn/Off情報に基づきソリッドステートリレーを作動させ、薬注ポンプの電源On/Offを行う。
【0063】
実施例
本発明の方法及び装置が使用可能であることを確認する為、開放循環冷却水系で試験を実施した。
[開放循環冷却水系]
実験を行った開放循環冷却水系の運転条件は次の通りである。
原水:埼玉県戸田市工業用水
保有水量:2トン
循環水量:1トン/分
熱交換器の冷却水入口水温:25℃
熱交換器の冷却水出口水温:35℃
なお、蒸発水量、及び、飛散水相当分は戸田市工業用水で補給した。
【0064】
[実験]
実験に供した薬品の配合は表4の通りである。トレーサー物質であるリチウムイオン源としては塩化リチウムを使用した。
【0065】
【表4】
【0066】
塩化リチウム12重量%をリチウムイオンに換算すると約2重量%なので、表4の水処理用薬品のリチウムイオン濃度に対する水処理用薬品濃度の換算係数は50倍となる。また、この水処理用薬品の目標管理濃度は50mg/Lであり、従って冷却水中でのリチウムイオン濃度は1.0mg/Lに保持すればよい。
【0067】
上記水処理用薬品を水処理用薬品貯槽51に投入し、制御装置により水処理用薬品濃度の制御を行わせた。また、経時的に、冷却水をサンプリングし、水処理用薬品濃度(薬剤濃度)及び濃縮倍率を測定した。なお、水処理用薬品濃度は水処理用薬品中にリンが含まれることから、これをJIS−K−0101−1991工業用水試験方法43.3.1に記載の全リンの測定方法に準じて行い測定し、水処理用薬品濃度を算出した。その結果を図9に示す。この結果から、本発明の方法及び装置を用いることにより、被処理水の水質、特に濃縮倍率が変動しても、その影響を受けることなく水処理用薬品の濃度(薬剤濃度)を一定に保つことが可能であることは明らかである。
【0068】
比較例
比較例として、上記換算表を用いたリチウムイオン濃度の代りにリチウムイオンを1mg/L及び3mg/L含む0.01mol/Lの塩化アンモニウム溶液により数式2による検量線を作成したリチウムイオン電極を用いたこと、及び、水処理用薬品の目標管理濃度を175mg/Lとしたこと以外は同じ条件で試験を行った。この場合、冷却水中でのリチウムイオン濃度は3.5mg/Lに保持すればよい。そのリチウムイオン濃度測定値対水処理用薬品濃度(薬剤濃度)の結果を図10に示す。リチウムイオン電極によりリチウムイオン濃度の測定値はほぼ3.5mg/L付近で一定であるにも拘らず、実際の水処理用薬品濃度は175mg/Lを大きく下回り、かつ、大きく変動している様子が見て取れる。更に、この水処理用薬品濃度(薬剤濃度)と濃縮倍率の経時変化を図示したのが図11である。水処理用薬品濃度の変動は濃縮倍率の影響を受けていること、即ち、リチウムイオン電極によるリチウムイオン濃度の測定は濃縮倍率の影響を受けていることは明らかである。
【0069】
【発明の効果】
本発明によれば、トレーサー物質としてリチウムイオンを使用する冷却水系等の循環水系における水処理用薬品濃度管理方法において、従来の方法では 正確な濃度測定が困難であった被処理水質の変動、特に濃縮倍率の影響が大きい水系においても、水系に添加した水処理用薬品の濃度を容易かつ迅速にしかも精度良く測定することができ、また、簡易な測定装置を用いて現場で実質的に連続的に測定することも可能で、適正な水処理用薬品の濃度管理を行うことが可能となる。なお、循環水系として、代表的なものとして開放系の冷却水系(水冷却塔)を中心に説明してきたが、本発明の方法は、閉鎖系の冷却水系、ボイラー、エバポレーティブコンデンサーなどにも利用することができるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、リチウムイオン電極の構造の一例を示す概略断面説明図である。
【図2】図2は、リチウムイオン電極の構造の他の一例を示す概略断面説明図である。
【図3】図3は、リチウムイオン電極の感応膜部を箱状又は筒状の遮光性カバーで覆った状態を示す概略断面説明図である。
【図4】図4は、リチウムイオン電極の感応膜部を傘状の遮光性カバーで覆った状態を示す概略断面説明図である。
【図5】図5は、リチウムイオン電極の全体を箱状又は筒状の遮光性カバーで覆った状態を示す概略断面説明図である。
【図6】図6は、リチウムイオン電極が示す応答電位を測定することができる装置の構成の一例の概略説明図である。
【図7】図7は、本発明の水処理用薬品濃度管理装置の一例を示し、且つ、この装置が冷却水系に用いられた場合の概略説明図である。
【図8】図8は、リチウムイオン電極を用いた応答電位の測定の結果を示し、リチウムイオン電極が示す応答電位対リチウムイオン濃度の関係の水の濃縮倍率依存性を示すグラフである。
【図9】図9は、本発明の方法に従った実施例における開放循環冷却水系の水処理用薬品濃度の管理を行った実験の結果を示すもので、薬剤濃度対濃縮倍率の経時変化を示すグラフである。
【図10】図10は、数式2による検量線を作成したリチウムイオン電極を用いた比較例における開放循環冷却水系の水処理用薬品濃度の管理を行った実験の結果を示すもので、リチウムイオン濃度測定値対薬剤濃度の関係を示すグラフである。
【図11】図11は、これも図10の実験の結果を示すもので、薬剤濃度対濃縮倍率の経時変化を示すグラフである。
【符号の説明】
1 電極線
2、12 外筒
3、14、23 感応膜
11 内部参照電極
24、25 遮光性カバー
31 直流電位差計
32、44 リチウムイオン電極
33、45 比較電極
52 受信部
53 演算部
54 制御部
57 電気伝導率測定電極
Claims (4)
- 水処理用薬品と共にトレーサー物質としてのリチウムの水溶性塩を循環水系の被処理水中に添加し、リチウムイオン濃度により循環水系水中に添加した前記水処理用薬品の濃度管理を行う方法において、リチウムイオン電極の応答電位と、循環水系水の濃縮倍率及び/又は該濃縮倍率を求めるのに用い得る指標類の1つ以上の測定値から、循環水系水のリチウムイオン濃度を算出することを特徴とする水処理用薬品の濃度管理方法。
- 前記循環水系水の濃縮倍率の異なる試料水毎にリチウムイオン濃度とリチウムイオン電極の応答電位を測定して、関係式、換算表又は検量線を予め作成しておき、実測定におけるリチウムイオン濃度の算出に利用することを特徴とする請求項1に記載の水処理用薬品の濃度管理方法。
- リチウムイオン電極と、該リチウムイオン電極からの信号及び循環水系水の濃縮倍率及び/又は該濃縮倍率を求めるのに用い得る指標類の1つ以上の信号を受信して水処理用薬品濃度を算出する演算部と、算出された水処理用薬品濃度を基に循環水系の被処理水へ添加する水処理用薬品の添加量を決定する制御部を有することを特徴とする水処理用薬品の濃度管理装置。
- 前記循環水系水の濃縮倍率の異なる試料水毎にリチウムイオン濃度とリチウムイオン電極の応答電位を測定して、関係式、換算表又は検量線を予め作成しておき、前記演算部において利用することを特徴とする請求項3に記載の水処理用薬品の濃度管理装置。
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