JP4344640B2 - 真空アーク蒸発装置およびその運転方法 - Google Patents

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Description

この発明は、例えば自動車部品、機械部品、工具、金型等の基体の表面に、例えば潤滑性や硬度等に優れた薄膜を形成すること等に用いられる真空アーク蒸発装置およびその運転方法に関し、より具体的には、当該装置を構成する真空アーク蒸発源においてパルスアーク放電を発生させる手段の改良に関する。
従来のこの種の真空アーク蒸発装置は、真空中におけるアーク放電によって陰極を加熱して陰極の前面から陰極物質を蒸発させる真空アーク蒸発源と、この真空アーク蒸発源にアーク電圧を印加する直流のアーク電源とを備えている。
このような真空アーク蒸発装置において、基体上に形成する膜質の制御(例えば膜の密着性向上)等のために、アーク放電をパルス状に断続させるパルスアーク放電を発生させて、陰極物質の蒸発をパルス状に断続させたいという要望がある。
真空アーク蒸発源におけるアーク放電の点弧は、通常、特許文献1にも記載されているように、機械接触式のトリガ電極を機械的に駆動することによって行われる。
しかし、このようなトリガ電極を用いた真空アーク蒸発源では、パルスアーク放電を発生させることはできない。これは、トリガ電極の機械的駆動にある程度の時間を要し、それ以上の短周期で点弧を繰り返すことができないからである。また、トリガ電極の寿命もすぐに尽きてしまうからである。
一方、非特許文献1には、上記のような機械接触式のトリガ電極を用いずに、パルスアーク放電を発生させる技術が記載されている。この技術は、陰極とその周囲のトリガリングとの間に絶縁物を挟み、この絶縁物表面の抵抗を調整し、陰極とトリガリング間にパルス高電圧を印加することによって生じる、絶縁物表面における沿面放電でアーク点弧を行うものである。
特開平10−53866号公報(段落0028、図1) 石井孝也、外3名、「金属パルスイオン注入によるTiAl の高温耐酸化性向上」、電気学会放電研究会資料、2001年12月10日、Vol.ED−01、No.252−262、p.19−22
上記非特許文献1に記載の技術は、パルスアーク放電を発生させることはできるけれども、次のような課題を有している。即ち、絶縁物を介した沿面放電によるアーク点弧では、沿面放電を生じさせる絶縁物表面の抵抗値が、アーク放電によって生じる陰極物質の付着によって、運転時間経過に伴って変化し、やがては沿面放電によるアーク点弧が不可能になる。従って寿命が短い。再使用のためには、絶縁物表面の洗浄および再度の抵抗値調整等が必要になり、非常に面倒である。
そこでこの発明は、トリガ電極や絶縁物の沿面放電を利用することなく、パルスアーク放電を発生させることができる装置および方法を提供することを主たる目的としている。
この発明に係る真空アーク蒸発装置は、真空中におけるアーク放電によって陰極を加熱して陰極の前面から陰極物質を蒸発させる真空アーク蒸発源と、この真空アーク蒸発源にパルス状のパルスアーク電圧を印加するパルスアーク電源とを備える真空アーク蒸発装置にあって、前記真空アーク蒸発源の陰極を貫通して設けられていて陰極の後面から前面に向けてガスを通す管状の穴であって、当該陰極の前面につながっていて他の部分よりも直径の大きい管状の大径部を有するガス導入穴と、このガス導入穴の大径部の内壁と斜めに交差する磁界を発生させる磁界発生器とを備えていることを特徴としている(請求項1に相当)。
この真空アーク蒸発装置によれば、ガス導入穴にガスを通した状態で、前記パルスアーク電源から前記真空アーク蒸発源にパルスアーク電圧を印加すると、当該パルスアーク電圧の波高値が高い期間に、前記ガス導入穴の大径部内でホローカソード放電が生じ、それによってアーク放電の陰極点が当該大径部内に(より具体的には、当該大径部内の内壁に)発生する。ホローカソード放電とは、簡単に言えば、穴を有する陰極の穴内で発生するイオン密度および電子密度の高いグロー放電のことである。
この大径部の内壁には、前記磁界発生器で発生させた磁界が斜めに交差しているので、当該磁界と内壁との成す角が、陰極の前面側に向かって鋭角になっている領域が存在する。このような領域におけるアーク放電の陰極点は、当該鋭角側に、即ち陰極の前面側に向かって移動する性質を有しているので、アーク放電の陰極点は大径部内から陰極の前面に出てくる。これが種となって、陰極の前面におけるアーク放電が自己点弧し、アーク放電が発生する。これによって、陰極を加熱して陰極物質を蒸発させることができる。
その後、パルスアーク電圧の波高値が、前記アーク放電を維持できる値以下の期間に入ると、前記アーク放電は自然に消滅する。その後再び、パルスアーク電圧の波高値が高い期間に入ると、前記と同様にアーク放電が自己点弧する。以降このようなアーク放電の断続が繰り返される。
以上のような作用によって、トリガ電極や絶縁物の沿面放電を利用することなく、パルスアーク電圧に同期したパルスアーク放電を発生させることができる。
前記斜めに交差する磁界を発生させるには、前記ガス導入穴の中心軸と前記磁界発生器の中心軸とを互いにずらして配置しても良い(請求項2に相当)。例えば、前記ガス導入穴を前記陰極の中心軸上に設け、前記磁界発生器の中心軸を前記陰極の中心軸からずらして配置しても良いし、前記ガス導入穴を前記陰極の中心軸からずらして設け、前記磁界発生器の中心軸を前記陰極の中心軸上に配置しても良い。
前記ガス導入穴の大径部の直径を2mm〜10mmとし、前記磁界発生器を、前記陰極の前面において、前記陰極の半径方向の成分が5mT以上の磁界を発生させるものにするのが好ましい(請求項3に相当)。そのようにすれば、前記アーク放電の自己点弧がより確実になる。
前記磁界発生器は、永久磁石でも良いし(請求項4に相当)、コイルでも良い(請求項7に相当)。
前記永久磁石は、前記陰極に内蔵しても良いし(請求項5に相当)、陰極支持体に内蔵しても良い(請求項6に相当)。後者にすれば、陰極交換時に永久磁石まで交換する必要がないので、陰極の交換が簡単になる。
前記コイルを、前記パルスアーク電源と前記真空アーク蒸発源との間に直列に接続しても良い(請求項8に相当)。そのようにすれば、パルスアーク電源から真空アーク蒸発源に流れるアーク電流によって前記コイルを励磁することができるので、前記コイル励磁専用の電源が不要になる。また、前記コイルのインダクタンスによって、アーク放電発生時のアーク電流を安定化させる作用効果も奏する。
この発明に係る運転方法は、前述したような真空アーク蒸発装置において、前記ガス導入穴にガスを通すと共に、前記陰極の前面近傍における圧力を1Pa〜50Paの範囲内に保ち、前記パルスアーク電圧の印加によって前記ガス導入穴の大径部内でアーク放電の陰極点を発生させ、かつそれを前記磁界によって前記陰極の前面へ移動させ、それによって前記パルスアーク電圧に同期して前記アーク放電を自己点弧させてパルスアーク放電を発生させることを特徴としている(請求項9に相当)。これによって、真空アーク蒸発装置において、トリガ電極や絶縁物の沿面放電を利用することなく、パルスアーク電圧に同期したパルスアーク放電を発生させることができる。
以上のように請求項1〜8に記載の発明によれば、トリガ電極や絶縁物の沿面放電を利用することなく、パルスアーク電圧に同期したパルスアーク放電を発生させることができる。その結果、トリガ電極使用時の前記課題および絶縁物の沿面放電利用時の前記課題を解決しつつ、パルスアーク放電を発生させて、陰極物質の蒸発をパルス状に断続させることができる。
また、請求項3に記載の発明によれば、アーク放電の自己点弧がより確実になる、という更なる効果を奏する。
請求項6に記載の発明によれば、陰極交換時に永久磁石まで交換する必要がないので、陰極の交換が簡単になる、という更なる効果を奏する。
請求項8に記載の発明によれば、パルスアーク電源から真空アーク蒸発源に流れるアーク電流によって前記コイルを励磁することができるので、前記コイル励磁専用の電源が不要になると共に、前記コイルのインダクタンスによって、アーク放電発生時のアーク電流を安定化させることができる、という更なる効果を奏する。
請求項9に記載の発明によれば、真空アーク蒸発装置において、トリガ電極や絶縁物の沿面放電を利用することなく、パルスアーク電圧に同期したパルスアーク放電を発生させることができる。その結果、トリガ電極使用時の前記課題および絶縁物の沿面放電利用時の前記課題を解決しつつ、パルスアーク放電を発生させて、陰極物質の蒸発をパルス状に断続させることができる。
図1は、この発明に係る真空アーク蒸発装置を備える薄膜形成装置の一例を示す概略図である。図2は、図1中の真空アーク蒸発源を拡大して示す断面図である。図3は、図2中の陰極支持体および永久磁石を下から見て示す図である。
この薄膜形成装置は、図示しない真空排気装置によって真空排気される真空容器2を備えている。この真空容器2内には、成膜しようとする基体4を保持するホルダ6が設けられており、これらには、必要に応じて、バイアス電源8から例えば−50V〜−500V程度の負のバイアス電圧を印加することができる。但し、ホルダ6および基体4にバイアス電圧を印加せずに、それらを接地電位にする場合もある。真空容器2は、この例では電気的に接地されている。
この薄膜形成装置は、更に、真空アーク蒸発源10とパルスアーク電源36とを有する真空アーク蒸発装置50を備えている。
真空アーク蒸発源10は、真空容器2の壁面に、ホルダ6上の基体4に向けて取り付けられている。この真空アーク蒸発源10は、陽極(この例では真空容器2がそれを兼ねているが、陽極を別途設ける場合もある)と陰極12との間で真空アーク放電(即ち、真空中におけるアーク放電)を生じさせて、当該アーク放電によって陰極12を加熱してその前面(蒸発面とも呼ばれる)14から陰極物質(即ち、陰極12を構成する物質)16を蒸発させて基体4の表面に薄膜を形成するものである。陽極兼用の真空容器2と陰極12との間は電気的に絶縁されている。
陰極12は、この例では、非磁性金属から成る陰極支持体18に、その後面15(即ち、前面14と反対側の面。図2も参照)で支持されている。陰極支持体18と真空容器2との間は絶縁物22で絶縁されている。
この真空アーク蒸発源10には、より具体的にはその陰極12と陽極兼用の真空容器2との間には、パルスアーク電源36から、インダクタ42を直列に介して、パルス状のパルスアーク電圧VA が、陰極12を負極側にして印加される。
パルスアーク電圧VA は、例えば、方形波電圧である。このパルスアーク電圧VA のパルス繰り返し数は、例えば、100pps〜20kppsである。パルスアーク電圧VA の電圧印加パルス幅は、例えば、50μs〜2μsである。パルスアーク電圧VA のデューティ比は、例えば、5%〜1%である。パルスアーク電圧VA の波高値は、例えば、1kV〜2kVである。これらの値の組み合わせの代表例は、パルス繰り返し数が5kpps、電圧印加パルス幅が9μs、デューティ比が4.5%、波高値が1kVである。もっとも、パルスアーク電圧VA は、他の波形、例えば台形波電圧でも良い。
図2も参照して、陰極12および陰極支持体18には、それらを貫通していて、陰極12の後面15から前面14に向けてガス24を通す、即ち外部から真空容器2内へガス24を通す、1本の管状のガス導入穴20が設けられている。この例では、後述する永久磁石28を押さえる磁石押さえ26にも、上記ガス導入穴20が貫通して設けられている。
ガス24の種類は、アルゴン等の不活性ガスでも良いし、陰極物質16と反応して化合物を形成する反応性ガスでも良い。
前記ガス導入穴20は、陰極12の前面14につながっていて他の部分よりも直径の大きい管状の大径部20aを有している。より具体的には、このガス導入穴20は、陰極12の前面14につながる大径部20aと、それよりも直径の小さい小径部20bとを有しており、二段構造になっている。ガス導入穴20をこのような構造にすると、陰極12の前面14につながる大径部20a内のみでホローカソード放電を発生させてアーク放電の陰極点32を発生させることができるので、当該陰極点32の前面14への引き出しおよびそれによるアーク放電の自己点弧が容易になる。
大径部20aの直径(内径)は、2mm以上で10mm以下が好ましい。この範囲内にすれば、大径部20a内でホローカソード放電が安定して生じてアーク放電の陰極点32が安定して発生しやすくなると共に、この陰極点32が陰極12の前面14へ移動しやすくなるからである。即ち、2mm未満では、大径部20a内でホローカソード放電が安定して生じにくく、アーク放電の陰極点32が発生しにくい。10mmより大きいと、大径部20a内で陰極点32が発生してもそれが陰極12の前面14へ出にくくなる。
小径部20bの直径(内径)は、1mm以下が好ましい。そのようにすると、小径部20b内でホローカソード放電が生じるのを防ぐことができるからである。
更にこの例では、ガス導入穴20の大径部20aの内壁と斜めに交差する磁界を発生させる磁界発生器の一例として、そのような磁界を発生させる永久磁石28を真空アーク蒸発源10に設けている。この永久磁石28が発生する磁界を、図2中に磁力線30を用いて示している(図4および図6においても同様)。即ち、永久磁石28は、大径部20aの内壁と角度θで斜めに交差する磁力線30を発生させる。この角度θは、大径部20aの内壁面と、そこを交差する磁力線30の接線との成す角度である。
永久磁石28は、陰極12の前面14において、陰極12の半径方向の成分が5mT以上の磁界を発生させるものが好ましい。そのようにすれば、当該磁界によって、大径部20aからアーク放電の陰極点32を前面14へ引き出しやすくなる。
この例では、永久磁石28を、前記陰極支持体18の後面近くに内蔵している(換言すれば、埋め込んでいる。以下同様)。しかも、前記のように斜めに交差する磁界を発生させるために、図2および図3からも分かるように、ガス導入穴20の中心軸と永久磁石28の中心軸とを互いにずらして配置している。より具体的には、この例では、ガス導入穴20を陰極12の中心軸上に設け、永久磁石28の中心軸を陰極12の中心軸からずらして配置している。永久磁石28は、この例では平面形状がほぼ扇形をしているが(図3参照)、それに限定されない。
上記真空アーク蒸発装置50の動作(運転方法)を説明すると、真空容器2内を真空排気しつつ、ガス導入穴20にガス24を通した状態で、前記パルスアーク電源36から真空アーク蒸発源10にパルスアーク電圧VA を印加する。このとき、陰極12の前面近傍における圧力を1Pa〜50Paの範囲内に保つのが好ましく、4Pa〜20Paの範囲内に保つのがより好ましい。アーク放電の自己点弧がより確実になるからである。
上記パルスアーク電圧VA を印加すると、当該パルスアーク電圧VA の波高値が高い期間に、ガス導入穴20の大径部20a内でホローカソード放電が生じ、それによってアーク放電の陰極点32が当該大径部20a内に(より具体的には、当該大径部20a内の内壁に)発生する。
この大径部20aの内壁には、永久磁石28で発生させた磁界が斜めに交差しているので、当該磁界(磁力線30で模式的に示す)と内壁との成す角θが、陰極12の前面14側に向かって鋭角になっている領域が存在する。このような磁界領域におけるアーク放電の陰極点32は、当該鋭角側に、即ち陰極12の前面14側に向かって移動する性質を有しているので、アーク放電の陰極点32は大径部20a内から陰極12の前面14に出てくる。この前面14に出てきた陰極点32が種となって、陰極12の前面14におけるアーク放電が自己点弧し、アーク放電が発生する。これによって、陰極12を加熱して陰極物質16(図1参照)を蒸発させることができる。なお、上記アーク放電は、いずれも、前述したように、陽極兼用の真空容器2(図1参照。陽極を別途設ける場合は当該陽極)との間で発生する。
その後、パルスアーク電圧VA の波高値が、前記アーク放電を維持できる値以下の期間に入ると、前記アーク放電は自然に消滅する。その後再び、パルスアーク電圧VA の波高値が高い期間に入ると、前記と同様にアーク放電が自己点弧する。以降このようなアーク放電の断続が繰り返される。
以上のような作用によって、この真空アーク蒸発装置50によれば、トリガ電極や絶縁物の沿面放電を利用することなく、パルスアーク電圧VA に同期したパルスアーク放電を発生させることができる。その結果、特許文献1に記載のようなトリガ電極使用時の前記課題、および、非特許文献1に記載のような絶縁物の沿面放電利用時の前記課題を解決しつつ、パルスアーク放電を発生させて、陰極物質16の蒸発をパルス状に断続させることができる。
上記の場合、パルスアーク電源36と真空アーク蒸発源10との間に流れるアーク電流IA は、両者間にインダクタ42を直列挿入しているので、三角波状になる。このインダクタ42は、それへのエネルギーの蓄積および放出によって、アーク放電が発生している期間中にアーク電流IA を安定化する作用をするので、この例のように設けるのが好ましい。但し、後述するように、コイル34にこのインダクタ42を兼ねさせても良い。
なお、上記角θが陰極12の前面14に向かって鋭角になっている壁面と反対側の壁面では、当該角θが陰極12の後面15に向かって鋭角になっており、その領域で発生したアーク放電の陰極点は大径部20aの奥に向かって移動して消滅することになるが、それでも構わない。その反対側の壁面の陰極点32は、上記のように陰極12の前面14に向かって移動して、それが前面14におけるアーク放電の種になるからである。
前記磁界と大径部内壁との成す角θは、20°以上の鋭角、即ち20°≦θ<90°の範囲内にするのが好ましい。20°より小さいと、磁界によってアーク放電の陰極点32を陰極12の前面14に引き出す力が弱過ぎるからである。
磁界(磁力線)30の向きは、図示例とは逆向きでも構わない。それでも、当該磁界と大径部20aの内壁との成す角θが陰極12の前面14に向かって鋭角になる領域ができ、その領域の陰極点32は前面14に向かって移動するからである。
前述したような磁界を発生させる永久磁石28を、陰極12に内蔵させても良い。その場合の永久磁石28の配置およびそれが発生する磁界(磁力線30)の一例を図4および図5に示す。円柱状(または円板状)の永久磁石28を陰極12の中心軸からずらして配置している。もっとも、図2に示す例の方が、陰極12の交換時に永久磁石28まで交換する必要がないので、陰極12の交換が簡単になるという利点がある。
前述した磁界発生器は、コイルでも良い。その場合のコイル34の配置およびそれが発生する磁界(磁力線30)の一例を図6に示す。リング状のコイル34を陰極12の中心軸からずらして配置している。このコイル34は、図示しない電源(直流電源)によって励磁するようにしても良いし、次に説明するようにしても良い。
即ち、コイル34を用いる場合、当該コイル34をパルスアーク電源36と真空アーク蒸発源10との間に直列に接続して、例えばパルスアーク電源36と陰極支持体18(それを設けない場合は陰極12)との間に直列接続して、アーク放電時に流れるアーク電流IA によってコイル34を励磁するようにしても良い。
そのようにすれば、アーク電流IA によってコイル34を励磁することができるので、コイル励磁専用の電源が不要になる。また、コイル34のインダクタンスによって、アーク放電発生時のアーク電流IA を安定化させる作用効果も奏する。従って、前記インダクタ42を省くことも可能になる。
なお、陰極12に設けるガス導入穴20を陰極12の中心軸から左右にずらして設け、磁界発生器を構成する永久磁石28またはコイル34の中心軸を陰極12の中心軸上に配置しても良い。そのようにしても、陰極12の大径部20aに前記のような斜めに交差する磁界を発生させることができる。その場合、永久磁石28は、必要に応じて、リング状にしても良い。
この発明に係る真空アーク蒸発装置を備える薄膜形成装置の一例を示す概略図である。 図1中の真空アーク蒸発源を拡大して示す断面図である。 図2中の陰極支持体および永久磁石を下から見て示す図である。 真空アーク蒸発源の陰極周りの他の例を示す図である。 図4中の陰極および永久磁石を下から見て示す図である。 真空アーク蒸発源の他の例を示す断面図である。
符号の説明
10 真空アーク蒸発源
12 陰極
14 前面
16 陰極物質
18 陰極支持体
20 ガス導入穴
20a 大径部
24 ガス
28 永久磁石(磁界発生器)
30 磁力線
32 陰極点
34 コイル(磁界発生器)
36 パルスアーク電源
50 真空アーク蒸発装置

Claims (9)

  1. 真空中におけるアーク放電によって陰極を加熱して陰極の前面から陰極物質を蒸発させる真空アーク蒸発源と、この真空アーク蒸発源にパルス状のパルスアーク電圧を印加するパルスアーク電源とを備える真空アーク蒸発装置において、
    前記真空アーク蒸発源の陰極を貫通して設けられていて陰極の後面から前面に向けてガスを通す管状の穴であって、当該陰極の前面につながっていて他の部分よりも直径の大きい管状の大径部を有するガス導入穴と、
    このガス導入穴の大径部の内壁と斜めに交差する磁界を発生させる磁界発生器とを備えていることを特徴とする真空アーク蒸発装置。
  2. 前記ガス導入穴の中心軸と前記磁界発生器の中心軸とを互いにずらして配置している請求項1記載の真空アーク蒸発装置。
  3. 前記ガス導入穴の大径部の直径は2mm〜10mmであり、前記磁界発生器は、前記陰極の前面において、前記陰極の半径方向の成分が5mT以上の磁界を発生させるものである請求項1または2記載の真空アーク蒸発装置。
  4. 前記磁界発生器が永久磁石である請求項1ないし3のいずれかに記載の真空アーク蒸発装置。
  5. 前記永久磁石を前記陰極に内蔵している請求項4記載の真空アーク蒸発装置。
  6. 前記陰極をその後面で支持するものであって非磁性金属から成る陰極支持体を有しており、この陰極支持体に前記永久磁石を内蔵している請求項4記載の真空アーク蒸発装置。
  7. 前記磁界発生器がコイルである請求項1ないし3のいずれかに記載の真空アーク蒸発装置。
  8. 前記コイルが、前記パルスアーク電源と前記真空アーク蒸発源との間に直列に接続されている請求項7記載の真空アーク蒸発装置。
  9. 請求項1ないし8のいずれかに記載の真空アーク蒸発装置において、前記ガス導入穴にガスを通すと共に、前記陰極の前面近傍における圧力を1Pa〜50Paの範囲内に保ち、前記パルスアーク電圧の印加によって前記ガス導入穴の大径部内でアーク放電の陰極点を発生させ、かつそれを前記磁界によって前記陰極の前面へ移動させ、それによって前記パルスアーク電圧に同期して前記アーク放電を自己点弧させてパルスアーク放電を発生させることを特徴とする真空アーク蒸発装置の運転方法。
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