JP4344053B2 - プリント基板のはんだ除去装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、廃棄処分されるプリント基板からはんだを除去する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
テレビ、ビデオ、コンピューター等の電子機器は、故障したり古くなったりすると修理されることなく廃棄処分されている。電子機器は、構成する材料がプラスチック、金属、ガラス等であり、これらの材料は焼却ができないため、廃棄処分は埋め立て処分である。電子機器を埋め立て処分すると、電子機器に組み込まれているプリント基板のはんだ付け部から鉛成分が溶出して地下水に混入することが懸念されている。
【0003】
つまり近年、化石燃料の多用から大気中には硫黄酸化物や窒素酸化物が大量に放出されているため、大気が酸性雰囲気となっている。この酸化雰囲気の大気中を雨が通過する間に雨は酸性雨となり、それが地中に浸透して埋め立て処分された電子機器のプリント基板に接するようになる。この酸性雨はプリント基板のはんだ付け部から鉛成分を溶出させ、それがさらに地中深く浸透して地下水に混入してしまうものである。鉛成分が含まれた地下水を長期間飲料していると、鉛成分が体内に蓄積され鉛中毒を起こすとされている。
【0004】
また電子機器を埋め立て処分するとプリント基板に付着していたはんだも永久的に埋められたままとなる。ところがはんだ中の錫は埋蔵量が少なく、いずれは地球上から枯渇する成分であり、電子機器をそのまま埋め立て処分することは資源の無駄となる。そのため各産業界からは、廃棄処分されるプリント基板からはんだを回収して再使用するというリサイクルが叫ばれている。
【0005】
そこで従来より電子機器を埋め立て処分する前にプリント基板からはんだを回収することが行なわれており、その装置も多数提案されていた。
【0006】
例えば、特開平9−316549号で提案されたはんだ除去装置は、プリント基板のはんだ付け面を回転するブラシで擦り、プリント基板のはんだ付け部に付着しているはんだを除去するようにしたものである。
【0007】
この回転するブラシでプリント基板のはんだ付け部を擦ってはんだを除去する装置(以下、ブラシ式除去装置という)は、ヒーターやブロワー等の加熱装置、回転ブラシ、回収容器、および搬送装置等から構成されている。この従来のブラシ式除去装置でのはんだの除去は、プリント基板を搬送装置で搬送中に加熱装置で加熱してプリント基板に付着しているはんだを溶融状態にし、その後、回転ブラシでプリント基板のはんだ付け面を擦って溶融はんだを掻き取る。そして回転ブラシで掻き取られたはんだを回収容器に受ける。ここでのはんだの回収率は90%以上という効率的な除去が行なえるもので、この程度にはんだが除去されたプリント基板は、そのまま埋め立て処分しても酸性雨による鉛成分の溶出する量がきわめて少ないため、地下水を汚染することがほとんどないといわれている。
【0008】
従来のブラシ式除去装置の搬送装置は、一対のチェーンコンベア、一対のレールおよびキャリヤから構成されていた。一対のチェーンコンベアは、同一方向に同一速度で走行するようになっており、その間に多数の係合棒が架橋されていた。係合棒と係合棒の間隔は、キャリヤの前部係合片と後部係合片と同じ長さとなっている。つまり係合棒と係合棒の上にキャリヤを載置するため係合棒間の間隔がキャリヤの係合片間と正確に一致していないと、キャリヤの係合片を係合棒に載置させるときに、正常位置へ載置できなくなる。
【0009】
一対のレールは、それぞれ一対のチェーンコンベアの近傍に設置されており、さらに回転ブラシの上方には押さえレールが設置されている。キャリヤには両側に四個の車輪が取り付けられており、またキャリヤの前部にはL字型の係合片が形成され、後部には段状の係合片が形成されていた。
【0010】
この従来の回転ブラシ式除去装置におけるプリント基板の搬送は、キャリヤにプリント基板を堅固に保持した後、走行しているチェーンコンベアの係合棒にキャリヤの係合片を載置する。するとキャリヤは、前部のL字型係合片が係合棒に係合してチェーンコンベアの走行に引っ張られるようにしてキャリヤの車輪がレール上を円滑に走行する。キャリヤに保持されたプリント基板は、プリヒーターで予備加熱、ブロワーではんだの溶解、回転ブラシではんだの除去が行なわれ、その後、チェーンコンベアの係合棒からキャリヤが外され、そしてキャリヤからプリント基板が取り出される。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところで従来のブラシ式除去装置は、チェーンコンベアへのキャリヤの係合が困難なものであった。つまり従来の回転ブラシ式除去装置の搬送装置は一対のチェーンコンベアの二本の係合棒にキャリヤの前部と後部の係合片を係合・載置させる構造であったため、走行するチェーンコンベアの係合棒がキャリヤの係合位置に到来するまでキャリヤを待機させておかなければならず、待ち時間があることから連続したはんだ除去作業ができなかった。
【0012】
また従来の回転ブラシ式除去装置の搬送装置は、チェーンコンベアの二本の係合棒にキャリヤのL字型の係合片を係合するとともに段状の係合片を載置しなければならず、これらを走行しているチェーンコンベアの係合棒に的確に係合・載置させることが難しいという問題もあった。本発明はチェーンコンベアの如何なる位置にでも係合でき、しかもチェーンコンベアへのキャリヤの係合が容易に行なえるという回転ブラシ式除去装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、キャリヤを直接チェーンコンベアに係合できるようにすればチェーンコンベアの如何なる位置にでもキャリヤを係合することができるようになって待ち時間がなくなり、またキャリヤのチェーンコンベアへの係合も容易に行なえるようになることに着目して本発明を完成させた。
【0014】
本発明は、プリント基板が保持されたキャリヤをチェーンコンベアで搬送しながらプリント基板のはんだ付け部を回転ブラシで擦ってはんだを除去する装置において、チェーンコンベアには上部に突出した係合部にローラーが設置され、キャリヤには係合部に係合するシャフトが設置されることを特徴とするプリント基板のはんだ除去装置である。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の回転ブラシ式除去装置は、チェーンコンベアの上部に形成した係合部とキャリヤのシャフトとを係合させることによりキャリヤを搬送する構造となっている。チェーンコンベアは内プレートと外プレートがピンで回動自在に連結されているものであり、本発明に使用するチェーンコンベアは内プレート或いは外プレートのいずれか一方に係合部が形成されている。該係合部は図3に示すようにチェーンコンベアの内プレートに上方に突出した状態で形成されている。係合部は、シャフトが係合できるものであれば如何なる形状でもよいが、係合部にローラーを設置しておくとシャフトの載置・取り外しが容易となる。
【0016】
係合部にローラーを設置する場合、ローラーの軸がシャフトの中心よりも少し上方となるようにしてローラーを設置しておくと、上方からキャリヤのシャフトをチェーンコンベアに載置したときに、シャフトがローラーの上に置かれてもローラーが回転してシャフトを容易に係合部と係合部の間に収納できるようになり、また取り外すときにもローラーが回転して取り外しが容易となる。しかもチェーンコンベアのローラーとローラー間に置かれたシャフトは、横方にローラーで押されてもローラーの軸がシャフトの中心よりも上方にあるため、横方の力に対してローラーは回転せず、シャフトは容易にローラー間から抜け出ない。つまりローラーは、シャフトの上下方向の移動に対しては回転するが、シャフトの横方向の移動に対しては回転せずシャフトを留まらせるものである。
【0017】
【実施例】
以下、図面に基づいて本発明を説明する。図1は本発明プリント基板のはんだ除去装置の平面図、図2は図1のX−X線断面図、図3はチェーンコンベアとシャフトの係合状態を説明する拡大斜視図である。
【0018】
本発明の除去装置は、プリヒーター1、ブロワー2、ロール状回転ブラシ3、衝立4、チェーンコンベア5、キャリヤ6、等から構成されている。
【0019】
プリヒーター1は、電熱ヒーターであり、プリント基板Pに付着したはんだSを溶かさない程度に予備加熱するものである。
【0020】
ブロワー2は、プリント基板Pに付着したはんだSを完全に溶融させる程の高温の熱風を吹き出す装置であり、吹き出し口を上方に向けて設置されている。
【0021】
ロール状回転ブラシ3は前述ブロワー2に隣接して設置されている。該ロール状回転ブラシはモーター7で回転するようになっており、その回転方向は、プリント基板の進行方向(矢印A:図中右方)に対して正方向(矢印B:図中右回転)となっている。ロール状回転ブラシ3は下部に引き出しを有するチャンバー8内に上部が少し突出した状態で設置されている。
【0022】
ブロワー2とロール状回転ブラシ3とが組み合わされており、この組み合わせで第一組と第二組の二組が並設されている。ブロワーとロール状回転ブラシを二組並設したのは、第一組目で除去できなかったプリント基板のはんだを第二組目で完全に除去できるようになるからである。
【0023】
ロール状回転ブラシの前方には、衝立4が立設されている。該衝立はバネ蝶番9で回動自在に保持されており、平時、つまりキャリヤが通過しないときは直立しているが、キャリヤ通過時にはキャリヤに押されて傾斜(矢印C)するようになっている。衝立4は、箱状容器10内の引き出し11に設置されており、衝立を完全に倒すと引き出し11が抜けるようになっている。衝立は、回転ブラシで飛ばされた微細はんだをそれよりも遠方に飛散させないようにするものである。
【0024】
チェーンコンベア5は、キャリヤを係合して矢印A方向に走行するものである。該チェーンコンベアには、係合部12が形成されている。チェーンコンベア5は、内プレート13、外プレート14がピン15で連結されており、全ての内プレート13…には走行方向(矢印A)上方に係合部12…が形成されている。該係合部にローラー16を設置しておくと、シャフトの係合、取り出し時、シャフトがローラーに当たってローラーが回転するためシャフトの係合、取り出しが容易に行なえる。
【0025】
チェーンコンベア5の近傍には、レール17が平行して敷設されており、さらにロール状回転ブラシ3、3の上方には、押さえレール18が設置されている。
【0026】
キャリヤ6はプリント基板Pを保持して搬送するもので、はんだ除去時にプリント基板が浮き上がったり横ずれしないように固定具19が設置されている。固定具については本発明に関係ないため詳細な説明は省略する。キャリヤ6の両側には4本の係合シャフト20と4個の車輪21が取り付けられている。係合シャフト20はキャリヤの搬送時、前述チェーンの係合部12と隣接した係合部12間に置かれるものである。従って、シャフト20の太さは係合部12と隣接した係合部12間の幅よりも少し細いものでなければならない。シャフトは図に示すような円柱状の他、楕円柱状、角柱状でもよい。シャフト20は、係合部に係合してキャリヤ6がチェーンで引っ張られることにより走行するようになっている。車輪17は前述レール13上を走行し、ロール状回転ブラシ3のところでは上方に設置された押さえレール14で車輪が上方から押さえられて、はんだ除去時にキャリヤが浮き上がらないようになっている。
【0027】
次に上記構成からなる本発明の除去装置でのはんだの除去について説明する。先ず廃棄処分される電子機器からプリント基板を取り出し、それをキャリヤ6に保持する。キャリヤ6では固定具19によりプリント基板Pを堅固に保持できる。そして走行しているチェーンの係合部12に係合シャフト20を係合する。このときチェーンコンベアの係合部は如何なる部分でもよく、作業者は単にチェーンコンベアにキャリヤを置くだけという簡単な操作でキャリヤの載置が行なえる。このようにチェーンコンベアにキャリヤを係合させると、キャリヤ6はチェーンの走行とともに矢印A方向に走行する。
【0028】
キャリヤ6に保持されたプリント基板Pは、先ずプリヒーター1上を通過し、ここではんだが溶融しない程度に全体が均一に予備加熱される。
【0029】
次いで第一組のブロワー2ではんだの融点以上に加熱されてからロール状回転ブラシ3ではんだ付け面が擦られる。するとプリント基板に付着していたはんだは溶融しているためロール状回転ブラシで容易に掻き取られる。ここで掻き取られたはんだはチャンバー8内に落下したり前方に飛ばされたりする。前方に飛ばされたはんだは衝立4に当たり、それ以上前方には飛び出すことはない。第一組のブロワーとロール状回転ブラシでほとんどのはんだが除去されるが、プリント基板に少し残ったはんだはさらにキャリヤの進行で第二組のブロワーとロール状回転ブラシで完全に除去される。この第二組でのはんだの除去時にも飛散されたはんだはチャンバー8内に落下し、また衝立4に当たって、それ以上前方に飛び出すことがない。衝立に当たった微細はんだは衝立に沿って箱状容器10の引き出し11に溜まる。
【0030】
第二組のブロワーとロール状回転部ブラシでプリント基板のはんだが除去されるとキャリヤ6は衝立4を前方に傾斜させながら進行する。キャリヤ6が衝立を通過した後は、衝立がバネ付勢により元のように直立して、つぎのプリント基板のはんだ除去に備える。そして箱状容器10の引き出し11に微細はんだが大量に溜まったなならば衝立4を横方に倒して引き出しを抜き、微細はんだを回収して精錬を行なう。
【0031】
衝立を通過したキャリヤは、今度は単にキャリヤを上方に持ち上げるという簡単な作業でチェーンコンベアから取り外すことができる。このキャリヤの取り外し作業は、人が行なうこともできるし、或いはアンローダーのような機械でも取り外すことができる。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の除去装置は、チェーンコンベアの上部に突出した係合部にローラーが設置され、キャリヤには該係合部に係合できるシャフトを取り付けてあるため、キャリヤの搬送時に、シャフトの載置・取り外しが容易となり、チェーンコンベアの如何なる位置の係合部にもシャフトを係合することができることから、従来の除去装置のように待ち時間の必要が全くないという連続作業に適したものである。また本発明の除去装置は、キャリヤのシャフトをチェーンコンベアの適当な位置に置いても、シャフトが必ず係合部に正確に係合できることから操作が極めて簡単にできるという作業性にも優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明プリント基板のはんだ除去装置の平面図
【図2】図1のX―X線断面図
【図3】チェーンコンベアとシャフトの係合状態を説明する拡大斜視図
【符号の説明】
1 プリヒーター
2 ブロワー
3 ロール状回転ブラシ
4 衝立
5 チェーンコンベア
6 キャリヤ
12 係合部
16 ローラー
20 シャフト
Claims (2)
- プリント基板が保持されたキャリヤをチェーンコンベアで搬送しながら前記プリント基板のはんだ付け部を回転ブラシで擦ってはんだを除去する装置において、
前記チェーンコンベアには上部に突出した係合部にローラーが設置され、
前記キャリヤには前記係合部に係合するシャフトが設置されることを特徴とするプリント基板のはんだ除去装置。 - 前記ローラーは、
前記シャフトの中心よりも当該ローラーの軸を上方の位置にして設置されることを特徴とする請求項1記載のプリント基板のはんだ除去装置。
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