上述した移動通信システムにおける移動局での送信電力制御では、各基地局についての受信SIRを対応する基地局からの送信電力制御ビットの信頼度として扱っている。しかし、その受信SIRは、移動局での信号受信品質(上記合成SIR)があるレベルになるように各基地局にて送信電力制御がなされつつ送信された信号に基づいて当該移動局にて測定されるため、常に移動局と各基地局との間の電波伝送路の状態(フェージングの状態、距離など)を忠実に反映したものになっているとは限らない。ソフトハンドオーバに際しては移動する移動局と各基地局との間の電波伝送路の状態(特に、距離)が時々刻々と変化するため、そのような電波伝送路の状態をより忠実に考慮しつつ移動局の送信電力制御を行うことが所望の通信品質を満たしながら移動局の送信電力を低減させるうえで好ましい。
また、従来、CDMA方式の移動通信システムにおいて相互に信号の無線送受信を行う移動局と基地局のそれぞれは、次のようにして送信電力制御を行っている。
移動局は、基地局からの受信信号に対する希望波対干渉波及び雑音電力比(以下、受信SIR(Signal to Interference plus noise power ratio)を受信信号品質として測定し、その受信SIRと目標SIRとの差に基づいて送信電力制御ビット(電力増加または送信電力減少を表す)を生成する。そして、移動局は、その送信電力制御ビット(送信電力制御情報)を基地局に送信する。
基地局は、移動局からの送信電力制御ビットに基づいて送信電力を制御する一方、移動局からの受信信号に対する受信SIRを測定し、その受信SIRと目標SIRとの差に基づいて送信電力制御ビットを生成する。そして、基地局は、その送信電力制御ビットを移動局に送信する。
移動局は、上述したように基地局に送信すべき送信電力制御ビットを生成すると共に、基地局からの送信電力制御ビットに基づいて自局における送信電力を制御する。
上記のような移動局及び基地局での送信電力制御により、移動局では、基地局での受信SIRが目標SIRに近づくように送信電力の制御がなされる。また、基地局でも、同様に、移動局での受信SIRが目標SIRに近づくように送信電力制御がなされる。このような送信電力制御により、移動局と基地局との間の電波伝送路の状態(距離、フェージングの状態等)が変動しても、移動局及び基地局は、受信信号品質が安定した状態で無駄のない送信電力にて信号の送受信を行うことが可能となる。
移動局及び基地局において上述した送信電力制御が正常になされている場合、移動局及び基地局では、例えば、図20の正常で示す領域のように、受信SIRが目標SIRを挟む比較的狭い範囲を推移するようになる。しかし、上述したような送信電力制御を行っていても、例えば、図20の異常で示す領域のように、受信SIRが目標SIRに近づくことなく順次低下してしまうことがある。このような現象は、次のような理由に基づくものであると考えられる。
移動局での受信SIRが上記のように低下してしまう場合を例にすると、これは、移動局にて生成された送信電力制御ビットに基づいた基地局での送信電力制御が正常になされていないことである。その理由の一つとして、移動局から上りリンクで伝送される送信電力制御ビットの基地局での受信品質が十分ではなく、移動局で生成された送信電力制御ビットの値と異なった値にて基地局での送信電力制御がなされていることが考えられる。このような状況は、移動局から送信電力制御ビットを送信する際の送信電力制御がその送信電力制御ビットの基地局での受信品質を所定レベルに維持できるように必ずしもなされていないことによるものである。
即ち、上記のような状況では、移動局での受信SIRの低下に起因して基地局からの送信電力制御ビットの移動局での受信品質が低下して当該移動局での送信電力制御が正常に行なわれなくなり、その正常でない送信電力制御に起因して移動局からの送信電力制御ビットの基地局での受信品質が低下してしまう。そして、更に、その基地局での送信電力制御ビットの受信品質の低下により基地局での送信電力制御が正常に行なわれなくなって、移動局での受信SIRが益々低下してしまう。このような状況が続くと、移動局と基地局との間の通信が切断される事態に至ってしまうおそれがある。
また、従来、CDMA方式の移動通信システムにおいて、基地局と移動局との間で情報データの伝送を開始する前に、基地局と移動局は、共通制御チャネルを用いて種々の情報(使用する固有拡散符号に関する情報、個別チャネルの信号フォーマットに関する情報等)の送受信を行い、その後、上記各種の情報に基づいて決められた個別チャネルを用いて所定フォーマットによる信号の送受信を行って、双方の局での信号同期をとるようにしている。その同期をとるための処理は、例えば、図21に示す手順に従って行われる。
図21において、基地局200が所定フォーマットによる信号の送信(下り送信)を開始する((1))。この下り送信される信号は、所定のパターンとなる送信電力制御ビット(電力増加または電力減少を表す送信電力制御情報)が含まれる。移動局100は、受信される基地局200からの信号の同期引き込み処理を行う((2))。この同期引き込みの処理により同期が確立(下り同期確立)したことが判定されると((3))、移動局100は、受信される上記所定パターンの送信電力制御ビットに従って送信電力制御を行いつつ所定フォーマットによる信号の送信(上り送信)を開始する((4))。
基地局200は、受信される移動局100からの信号の同期引き込み処理を行う((5))。この同期引き込み処理により、当該基地局200での同期が確立される(上り同期確立)((6))。基地局200が信号の送信を開始((1))してから当該基地局200での上り同期確立((6))がなされるまで、有限の時間を要する。
上述したような同期をとるための処理の過程で、移動局100の送信電力制御は、例えば、図22に示すようになされる。
基地局200は、当初、移動局100からの信号を受信していない状態で、下り送信を開始しなければならないので(図21の(1)参照)、例えば、常に電力増加を表すパターン(例えば、全て「1」のパターン)の送信電力制御ビットを当該信号と共に送信する。移動局100は、下り同期確立(図21における(3))の判定を行った後に、図22に示すように、上り送信開始(図21における(4))の時刻t1から、送信電力を上記のような送信電力制御ビット(1,1,1,1,…)に従って、例えば、伝搬損失等に基づいて決められた初期値P0から順次上昇させる。
上記送信電力制御ビットに従った送信電力制御周期は、上記移動局100と基地局200にて同期確立がなされるまでに要する時間より非常に短い。そのため、上記送信電力制御ビットに従った送信電力制御により、送信電力値が上昇して最大値Pmaxに達すると、送信電力がその最大値Pmaxに維持される。
このようにして移動局100が最大値Pmaxとなるように送信電力制御を行いつつ信号を送信する過程で、その信号の基地局200での同期引き込みにより上り同期が確立すると(時刻t2)、それ以後、基地局200は、移動局100からの信号に対する希望波対干渉波及び雑音電力比(以下、受信SIR(Signal to Interference plus noise power ratio)という)を受信信号品質として測定し、その受信SIRと別に定められた目標SIRとの差に基づいて送信電力制御ビット(電力増加または電力減少を表す)を生成する。そして、基地局200は、そのように生成された送信電力制御ビットを移動局100に送信(下り送信)する。
上記のように基地局200での上り同期が確立した時点(時刻t2)では、移動局100は最大値Pmaxとなるように送信電力制御を行っているので、当該移動局100からの受信SIRは目標SIRより非常に大きな値となっており(過剰品質)、その上り同期が確立した直後においては、通常、連続的に電力減少を表す送信電力制御ビット(例えば、「0」)が生成される。
上記のように基地局200での上り同期確立がなされた以後(時刻t2以後)、移動局100は、上記のようにして基地局200にて生成される送信電力制御ビットに基づいて送信電力制御(閉ループ制御)を行いつつ信号の送信を行う(上り送信)。その結果、移動局100の送信電力は、基地局200での受信SIRが目標SIRに維持され得る適正な値に制御される。このような状態において、所定のタイミングにて、移動局100は、情報データを含めた信号を開始する。
上記のような基地局200と移動局100との間で情報データの伝送を開始する前における移動局100での送信電力制御方法では、基地局200からの信号の移動局100での下り同期が確立した後(図22における時刻t1後)において、移動局100は、基地局200からの連続的に電力増加を表す送信電力制御ビット(1,1,1,1,…)に基づいて送信電力を急速に上昇させるように制御しつつ信号の送信を行う。このような送信電力制御により、基地局200における移動局100からの信号の受信品質が急速に向上する。このため、基地局200での下り同期確立をより早期に実現することができるようになる。
しかし、基地局200と移動局100との信号の送受信において、移動局100での送信電力は、基地局200での受信信号品質(例えば、受信SIR)が目標品質(例えば、目標SIR)に維持されるものであれば十分である(図22における時刻t2以降の送信電力値参照)。このように基地局200での受信信号品質が目標品質に維持されるように移動局100での送信電力を制御すれば足りるにもかかわらず、前述したように、移動局100での送信電力を最大値Pmaxに制御したり、その最大値Pmaxに近い値に制御すると、基地局200と移動局100との間で情報データの伝送が開始される直前において移動局100の送信電力が一時的に過剰な値になり、上り回線における無駄な電力消費がなされると共に、基地局200にて無線リソースが無駄に費やされてしまう。
そこで、本発明の第一の課題は、移動局が複数の基地局と無線通信を行うに際して、移動局と各基地局との間の電波伝送路の状態をより忠実に考慮して移動局の送信電力制御を可能にする送信電力制御装置を提供することである。そして、本発明の第二の課題は、そのような送信電力制御装置にて送信電力制御のなされる移動局を提供することである。
また、本発明の第三の課題は、他の通信装置と信号の無線送受信を行い、受信信号品質に基づいて決定した上記他の通信装置での送信電力制御に用いられるべき送信電力制御情報を送信する通信装置において上記受信信号品質が連続して所定の品質より低下することを防止できるようにした送信電力制御方法及び装置を提供することである。本発明の第四の課題は、そのような送信電力制御装置を備えた通信装置を提供することである。
更に、本発明の第五の課題は、移動局と基地局との間で情報データの伝送が開始される前に、できるだけ早期に同期確立がなされると共に、より無駄のない移動局での送信電力となるように制御が可能な送信電力制御方法及び装置を提供することである。本発明の第六の課題は、そのような送信電力制御方法に従って送信電力の制御がなされる移動局を提供することである。
上記第一の課題を解決するため、本発明の一特徴に従えば、移動通信システムにおいて移動局と無線接続される複数の基地局のそれぞれが受信信号品質に基づいて決定した送信電力制御情報を移動局に送信した際に移動局にて得られる各基地局からの送信電力制御情報に基づいて移動局の送信電力を制御する送信電力制御装置において、各基地局から固定的な送信電力にて送信される所定の信号に基づいて移動局と各基地局との間の電波伝送路での伝搬損失を演算する伝搬損失演算手段と、移動局にて得られる各基地局からの送信電力制御情報と、上記伝搬損失演算手段にて演算された各基地局と移動局との間の電波伝送路の伝搬損失とに基づいて移動局の送信電力制御に用いられるべき送信電力制御情報を決定する送信電力制御情報決定手段とを有するように構成される。
このような送信電力制御装置では、移動局と各基地局との間の電波伝送路の伝搬損失を演算する際の基礎となる各基地局からの所定の信号が固定的な送信電力にて送信されるので、その演算される伝搬損失は、対応する移動局と基地局との間の電波伝送路の状態(距離、フェージング状態など)をより忠実に表す。そして、このような各基地局と移動局との間の電波伝送路の伝搬損失と、移動局にて得られる各基地局からの送信電力制御情報とに基づいて移動局の送信電力制御に用いられるべき送信電力制御情報が決定される。
送信電力制御情報を決定する際に、各基地局と移動局との間の電波伝送路の状態を、各状態に応じた重みを付けて考慮するという観点から、本発明の一特徴に従えば、上記送信電力制御装置において、上記送信電力制御情報決定手段は、移動局との間の電波伝送路の伝搬損失がより小さい基地局からの送信電力制御情報に対する重みがより大きくなるように、移動局にて得られる各基地局からの送信電力制御情報に対して重み付けを行って重み補正制御情報を生成する重み補正手段と、該重み補正手段にて得られた各基地局からの送信電力制御情報に対応した重み付け補正情報を合成して合成送信電力制御情報を生成する合成手段とを有し、該合成手段にて得られた合成送信電力制御情報に基づいて移動局の送信電力制御に用いられるべき送信電力制御情報を決定するように構成することができる。
上記各基地局から送信される送信電力制御情報は、電力増加の制御状態を表す第一の値及び電力減少の制御状態を表す第二の値を取り得る情報であると共に、移動局が各基地局からの送信電力制御情報を軟判定値として取得する場合、上記送信電力制御情報決定手段は、上記合成手段にて得られた合成送信電力制御情報の値を所定の閾値を用いて硬判定する硬判定手段を有し、その硬判定結果に基づいて移動局の送信電力制御に用いられるべき送信電力制御情報を決定するように構成することができる。
また、できるだけ無駄のない送信電力制御が可能となるという観点から、本発明の一特徴に従えば、上記送信電力制御装置において、上記硬判定手段にて用いられる上記所定の閾値は、各基地局から送信される送信電力制御情報が取り得る第一の値と第二の値との中間値より所定量だけ第一の値寄りの値となるように構成することができる。
このような送信電力制御装置では、上記所定の閾値が所定量だけ電力増加の制御状態を表す第一の値寄りになっているので、合成送信電力制御情報の値は、その閾値を用いた硬判定により、電力増加の制御状態でないと判定され易くなる。その結果、より低電力での送信電力制御が可能となる。
上記各基地局から送信される送信電力制御情報は、電力増加の制御状態を表す第一の値及び電力減少の制御状態を表す第二の値を取り得る情報であると共に、移動局が各基地局からの送信電力制御情報を軟判定値として取得する場合、より細かい送信電力制御が可能となるという観点から、上記送信電力制御情報決定手段は、上記合成手段にて得られた合成送信電力情報の値を第一の閾値を用いて硬判定する第一の硬判定手段と、上記合成送信電力制御情報の値を上記第一の閾値と異なる第二の閾値を用いて硬判定する第二の硬判定手段と、上記第一の硬判定手段での判定結果及び上記第二の硬判定手段での判定結果に基づいて、電力増加の制御状態を表す第一の制御情報、電力減少の制御状態を表す第二の制御情報及び電力維持の制御状態を表す第三の制御情報のいずれかを生成する制御情報生成手段とを有し、該制御情報生成手段にて生成された制御情報を移動局の送信電力制御に用いられるべき送信電力制御情報として決定するように構成することができる。
このような送信電力制御装置では、合成送信電力制御情報の値は、第一及び第二の閾値の双方より大きくなる場合、その双方より小さくなる場合、第一の閾値と第二の閾値の間の値となる場合がある。それらの場合を上記第一の制御状態、第二の制御状態及び第三の制御状態に対応付けることができる。
移動局との間の電波伝送路の状態が特に良好でない基地局からの送信電力制御情報を移動局の送信電力制御に用いるべき送信電力制御情報を決定する際に考慮しないようにできるという観点から、本発明の一特徴に従えば、上記送信電力制御装置において、上記送信電力制御情報決定手段は、移動局にて得られる各基地局からの送信電力制御情報から、上記伝搬損失演算手段にて演算された移動局との間の電波伝送路の伝搬損失が最小となる基地局からの送信電力制御情報を選択する選択手段を有し、該選択手段にて選択された送信電力制御情報に基づいて移動局の送信電力制御に用いられるべき送信電力制御情報を決定するように構成することができる。
また、無駄のない送信電力制御が可能となるという観点から、本発明の一特徴に従えば、上記送信電力制御装置において、上記送信電力制御情報決定手段は、移動局との間の電波伝送路の伝搬損失がより小さい基地局からの送信電力制御情報に対する重みがより大きくなるように、移動局にて得られる各基地局からの送信電力制御情報に対して重み付けを行って重み補正制御情報を生成する重み補正手段と、重み補正手段にて得られた各基地局からの送信電力制御情報に対応した該重み補正制御情報のうちから電力減少の制御状態を表す送信電力制御情報により近い補正情報が優先されるように決められた重み補正制御情報に基づいて制御情報を生成する制御情報生成手段とを有し、該制御情報生成手段にて生成された制御情報を移動局の送信電力制御に用いられるべき送信電力制御情報として決定するように構成することができる。
また、上記各基地局から送信される送信電力制御情報は、電力増加の制御状態を表す第一の値及び電力減少の制御状態を表す第二の値を取り得る情報であると共に、移動局が各基地局からの送信電力制御情報を軟判定値として取得する場合、上記制御情報生成手段は、上記重み補正手段にて得られた各基地局からの送信電力制御情報に対応した重み補正制御情報の値を所定の閾値を用いて硬判定する硬判定手段と、各基地局からの送信電力制御情報に対応した硬判定結果のいずれかを電力減少の制御状態を表す硬判定結果が優先されるように選択する選択手段とを有し、該選択手段にて選択された硬判定結果に基づいて制御情報を生成するように構成することができる。
上述したように、移動局との間の電波伝送路の良好な基地局からの送信電力制御情報を優先的に考慮すると共に、無駄のない送信電力を可能にするという観点から、本発明の一特徴に従えば、上記送信電力制御装置において、上記送信電力制御決定手段は、上記伝搬損失演算手段にて演算された各伝搬損失が所定の伝搬損失より小さいか否かを判定する伝搬損失判定手段と、該伝搬損失判定手段にて上記所定の伝搬損失より小さいと判定された伝搬損失が1つである場合、その判定された伝搬損失に対応した基地局からの送信電力制御情報に基づいて制御情報を生成し、上記伝搬損失判定手段にて上記所定の伝搬損失より小さいと判定された伝搬損失が複数となる場合、その複数の伝搬損失に対応した各基地局からの送信電力制御情報のうちから電力減少の制御状態を表す送信電力制御情報により近い送信電力制御情報が優先されるように決められた送信電力制御情報に基づいて制御情報を生成し、更に、上記伝搬損失判定手段にて全ての伝搬損失が上記所定の伝搬損失より小さくないと判定された場合、各基地局からの送信電力制御情報のうちから電力減少の制御状態を表す送信電力制御情報により近い送信電力制御情報が優先されるように決められた送信電力制御情報に基づいて制御情報を生成する制御情報生成手段とを有し、該制御情報生成手段にて生成された制御情報を移動局の送信電力制御に用いられるべき送信電力制御情報として決定するように構成することができる。
上記第一の課題を解決するため、本発明の一特徴に従えば、移動通信システムにおいて移動局と無線接続される複数の基地局のそれぞれが受信信号品質に基づいて決定した送信電力制御情報を移動局に送信した際に移動局にて得られる各基地局からの送信電力制御情報に基づいて移動局の送信電力を制御する送信電力制御装置において、各基地局から固定的な送信電力にて送信される所定の信号に基づいて移動局と各基地局との間の電波伝送路での伝搬損失を演算する伝搬損失演算手段と、移動局でのフェージングの状態を測定するフェージング測定手段と、該フェージング測定手段にて測定された移動局でのフェージングの状態が所定の状態より良好であるか否かを判定するフェージング状態判定手段と、該フェージング状態判定手段にて移動局でのフェージングの状態が所定の状態より良好であると判定されたときに第一の送信電力制御情報決定手段を有効にし、該フェージング状態判定手段にて移動局でのフェージングの状態が所定の状態より良好でないと判定されたときに第二の送信電力制御情報決定手段を有効にする切換え制御手段とを有し、上記第一の送信電力制御情報決定手段は、移動局との間の電波伝送路の伝搬損失がより小さい基地局からの送信電力制御情報に対する重みがより大きくなるように、移動局にて得られる各基地局からの送信電力制御情報に対して重み付けを行って重み補正制御情報を生成する重み補正手段と、該重み補正手段にて得られた各基地局からの送信電力制御情報に対応した該重み補正制御情報を合成して合成送信電力制御情報を生成する合成手段とを有し、該合成手段にて得られた合成送信電力制御情報に基づいて移動局の送信電力制御に用いられるべき送信電力制御情報を決定するようにし、上記第二の送信電力制御情報決定手段は、移動局にて得られる各基地局からの送信電力制御情報から、上記伝搬損失演算手段にて演算された移動局との間の電波伝送路の伝搬損失が最小となる基地局からの送信電力制御情報を選択する選択手段を有し、該選択手段にて選択された送信電力制御情報に基づいて移動局での送信電力制御に用いられるべき送信電力制御情報を決定するように構成される。
このような送信電力制御装置では、移動局でのフェージングの状態が所定の状態より良好な場合、各基地局と移動局との間の電波伝送路の状態をより忠実に表す伝搬損失と、移動局にて得られる各基地局からの送信電力制御情報とに基づいて移動局の送信電力制御に用いられるべき送信電力制御情報が決定される。一方、移動局でのフェージングの状態が所定の状態より良好でない場合、移動局との間の電波伝送路での伝搬損失が最小となる基地局からの送信電力制御情報に基づいて移動局での送信電力制御に用いられるべき送信電力制御情報が決定されるので、移動局との間の電波伝送路の状態が特に良好でない基地局からの送信電力制御情報は、移動局の送信電力制御に用いるべき送信電力制御情報を決定する際に考慮されなくなる。
更に、上記第一の課題を解決するため、本発明の一特徴に従えば、移動通信システムにおいて移動局と無線接続される複数の基地局のそれぞれが受信信号品質に基づいて決定した送信電力制御情報を移動局に送信した際に移動局にて得られる各基地局からの送信電力制御情報に基づいて移動局の送信電力を制御する送信電力制御装置において、各基地局から固定的な送信電力にて送信される所定の信号に基づいて移動局が無線接続すべき基地局を決定するために用いられる移動局と各基地局との間の伝送路品質を測定する伝送路品質測定手段と、移動局にて得られる各基地局からの送信電力制御情報と、上記伝送路品質測定手段にて得られた移動局と各基地局との間の伝送路品質とに基づいて移動局の送信電力制御に用いられるべき送信電力制御情報を決定する送信電力制御情報決定手段とを有するように構成される。
このような送信電力制御装置では、各基地局と移動局との間の電波伝送路の状態をより忠実に表す伝送路品質と、移動局にて得られる各基地局からの送信電力制御情報とに基づいて移動局の送信電力制御に用いられるべき送信電力制御情報が決定される。更に、上記のように測定される移動局と各基地局との間の伝送路品質は、もともと移動局が無線接続すべき基地局を決定するために用いられるものであり、当該送信電力制御装置の構成を簡略化することが可能となる。
上記各基地局から固定的な送信電力にて送信される所定の信号に基づいて測定される伝送路品質は、移動局と各基地局間の距離、フェージングの状態などを表し得るものであって、移動局が無線接続すべき基地局を決定するために用いられるものであれば特に限定されず、例えば、伝搬損失、移動局での該所定の信号の受信レベル及び該所定の信号に基づいて測定される希望波対干渉波及び雑音電力比(受信SIR(SIR:Signal to Interference plus noise power Ratio))のいずれであってもよい。
また、上記第一の課題を解決するため、本発明の一特徴に従えば、移動通信システムにおいて移動局と無線接続される複数の基地局のそれぞれが受信信号品質に基づいて決定した電力増加の制御状態を表す第一の値及び電力減少の制御状態を表す第二の値を取り得る情報となる送信電力制御情報を移動局に送信した際に移動局にて得られる各基地局からの送信電力制御情報の軟判定値に基づいて移動局の送信電力を制御する送信電力制御装置において、各基地局から固定的な送信電力にて送信される所定の信号に基づいて移動局と各基地局との間の伝送路品質を測定する伝送路品質測定手段と、移動局にて得られる各基地局からの送信電力制御情報の軟判定値と、上記伝送路品質測定手段にて測定された各基地局と移動局との間の伝送路品質に基づいて移動局の送信電力制御に用いられるべき送信電力制御情報を決定する送信電力制御情報決定手段とを有し、該送信電力制御手段は、移動局との間の伝送路品質がより良好な基地局からの送信電力制御情報に対する重みがより大きくなるように、移動局にて得られる各基地局からの送信電力制御情報の軟判定値に対して重み付けを行って重み補正制御情報を生成する重み補正手段と、該重み補正手段にて得られた各基地局からの送信電力制御情報に対応した該重み補正制御情報を合成して合成送信電力制御情報を生成する合成手段と、該合成手段にて得られた合成送信電力制御情報の値を、各基地局から送信される送信電力制御情報が取り得る第一の値と第二の値との中間値より所定量だけ第一の値寄りの値となる閾値を用いて硬判定する硬判定手段とを有し、その硬判定結果に基づいて移動局の送信電力制御に用いられるべき送信電力制御情報を決定するように構成される。
上記各基地局から固定的な送信電力にて送信される所定の信号に基づいて測定される移動局と各基地局との間の伝送路品質は、移動局と各基地局間の距離、フェージングの状態などを表し得るものであれば特に限定されず、例えば、伝搬損失、移動局での該所定の信号の受信レベル及び該所定の信号に基づいて測定される希望波対干渉波及び雑音電力比(受信SIR(SIR:Signal to Interference plus noise power Ratio))のいずれであってもよい。
更に、上記第一の課題を解決するため、本発明の一特徴に従えば、移動通信システムにおいて移動局と無線接続される複数の基地局のそれぞれが受信信号品質に基づいて決定した電力増加の制御状態を表す第一の値及び電力減少の制御状態を表す第二の値を取り得る情報となる送信電力制御情報を移動局に送信した際に移動局にて得られる各基地局からの送信電力制御情報の軟判定値に基づいて移動局の送信電力を制御する送信電力制御装置において、
各基地局から固定的な送信電力にて送信される所定の信号に基づいて移動局と各基地局との間の伝送路品質を測定する伝送路品質測定手段と、移動局にて得られる各基地局からの送信電力制御情報の軟判定値と、上記伝送路品質測定手段にて測定された各基地局と移動局との間の伝送路品質に基づいて移動局の送信電力制御に用いられるべき送信電力制御情報を決定する送信電力制御情報決定手段とを有し、該送信電力制御手段は、移動局との間の伝送路品質がより良好な基地局からの送信電力制御情報に対する重みがより大きくなるように、移動局にて得られる各基地局からの送信電力制御情報の軟判定値に対して重み付けを行って重み補正制御情報を生成する重み補正手段と、該重み補正手段にて得られた各基地局からの送信電力制御情報に対応した該重み補正制御情報を合成して合成送信電力制御情報を生成する合成手段と、該合成手段にて得られた合成送信電力制御情報の値を第一の閾値を用いて硬判定する第一の硬判定手段と、上記合成送信制御情報の値を上記第一の閾値と異なる第二の閾値を用いて硬判定する第二の硬判定手段と、上記第一の硬判定手段での判定結果及び第二の硬判定手段での判定手段に基づいて、電力増加の制御情報を表す第一の制御情報、電力減少の制御状態を表す第二の制御情報及び電力維持の制御状態を表す第三の制御情報のいずれかを生成する制御情報生成手段とを有し、該制御情報生成手段にて生成された制御情報を移動局の送信電力制御に用いられるべき送信電力制御情報として決定するように構成される。
また、上記第一の課題を解決するため、本発明の一特徴に従えば、移動通信システムにおいて移動局と無線接続される複数の基地局のそれぞれが受信信号品質に基づいて決定した送信電力制御情報を移動局に送信した際に移動局にて得られる各基地局からの送信電力制御情報に基づいて移動局の送信電力を制御する送信電力制御装置において、各基地局から固定的な送信電力にて送信される所定の信号に基づいて移動局と各基地局との間の伝送路品質を測定する伝送路品質測定手段と、移動局でのフェージングの状態を測定するフェージング測定手段と、該フェージング測定手段にて測定された移動局でのフェージングの状態が所定の状態より良好であるか否かを判定するフェージング状態判定手段と、該フェージング状態判定手段にて移動局でのフェージングの状態が所定の状態より良好であると判定されたときに第一の送信電力制御情報決定手段を有効にし、該フェージング状態判定手段にて移動局でのフェージングの状態が所定の状態より良好でないと判定されたときに第二の送信電力制御情報決定手段を有効にする切換え制御手段とを有し、上記第一の送信電力制御情報決定手段は、移動局との間の伝送路品質がより良好な基地局からの送信電力制御情報に対する重みがより大きくなるように、移動局にて得られる各基地局からの送信電力制御情報に対して重み付けを行って重み補正制御情報を生成する重み補正手段と、該重み補正手段にて得られた各基地局からの送信電力制御情報に対応した該重み補正制御情報を合成して合成送信電力制御情報を生成する合成手段とを有し、該合成手段にて得られた合成送信電力制御情報に基づいて移動局の送信電力制御に用いられるべき送信電力制御情報を決定するようにし、上記第二の送信電力制御情報決定手段は、移動局にて得られる各基地局からの送信電力制御情報から、上記伝送路品質測定手段にて測定された移動局との間の伝送路品質が最良となる基地局からの送信電力制御情報を選択する選択手段を有し、該選択手段にて選択された送信電力制御情報に基づいて移動局での送信電力制御に用いられるべき送信電力制御情報を決定するように構成される。
上記第二の課題を解決するため、本発明の一特徴に従えば、移動通信システムにおいて複数の基地局と無線接続され得る移動局において、複数の基地局からの信号を合成する信号合成手段と、該信号合成手段にて得られた合成信号から下り伝送情報を復元する情報復元手段と、上記信号合成手段にて得られた合成信号の受信品質を演算する受信品質演算手段と、該受信品質演算手段にて演算された受信品質に基づいて各基地局の送信電力を制御するための送信電力制御情報を生成する送信電力制御情報生成手段と、該送信電力制御情報生成手段にて生成された送信電力制御情報を各基地局に送信する送信電力制御情報送信手段と、前述した送信電力制御装置のいずれかとを有するように構成される。
上記第三の課題を解決するため、本発明の一特徴に従えば、他の通信装置と信号の無線送受信を行い、受信信号品質に基づいて決定した上記他の通信装置での送信電力制御に用いられるべき送信電力制御情報を送信する通信装置での送信電力を上記他の通信装置からの所定の情報に基づいて制御する送信電力制御方法において、上記受信信号品質が所定の品質より低下したか否かを判定する品質判定手順と、該品質判定手順により当該受信信号品質が所定の品質より低下したと判定されたときに、送信電力を、上記他の通信装置からの所定の情報にかかわらず、当該判定時の送信電力値から所定の特性に従って上昇させる自律制御手順とを有するように構成される。
このような送信電力制御方法では、通信装置での受信信号品質が所定の品質より低下すると、当該通信装置において送信電力が、上記他の通信装置からの所定の情報にかかわらず、所定の特性に従って自律的に上昇させられる。
このように当該通信装置での送信電力が上昇されることにより、受信信号品質に基づいて決定される他の通信装置での送信電力制御に用いられるべき送信電力制御情報を送信した際に、当該送信電力制御情報の上記他の通信装置での受信品質が改善される。その結果、上記他の通信装置は、その品質の改善された送信電力制御情報に基づいて送信電力制御を行えるようになる。
上記受信信号品質は、他の通信装置から送信制御がなされつつ送信される信号の当該通信装置での受信品質を表すものであれば、どのような情報によっても表すことができ、例えば、その信号の受信レベルであっても、その信号と干渉波として作用する他の信号や雑音との比を表すSIR(Signal to Interference plus noise power ratio)であってもよい。
また、上記送信電力を上昇させるための所定の特性は、上記判定時の送信電力値より低下しなければ、どのような特性であってもよく、ある傾きをもって徐々に上昇する特性であっても、ある値までステップ状に上昇させた後に、その値を維持するような特性であってもよい。更に、徐々に上昇させる過程で一時的に電力値が低下しても、その低下後の電力値が上記判定時の電力値より小さくならなければよい。
当該通信装置の送信電力制御に用いられる上記他の通信装置からの所定の情報は、上記他の通信装置から当該通信装置の送信電力制御に用いられる情報として伝送される情報であれば特に限定されず、上記他の通信装置にて測定された当該通信装置からの信号の受信品質に基づいて作成した送信電力制御情報であっても、上記他の通信装置において測定された当該通信装置からの信号の受信品質に関する情報であっても、更に、他の情報であってもよい。
上記通信装置が、受信信号品質値が目標受信品質値に近づくように決定した送信電力制御情報を他の通信装置に送信するものである場合、容易に受信品質の状態を判定できるという観点から、上記品質判定手順は、上記受信信号品質値が第一の閾値より低下したか否かを判定する第一の閾値判定手順を有し、上記第一の閾値判定手順にて上記受信信号品質値が上記第一の閾値より低下していると判定されたときに、上記受信信号品質が所定の品質より低下したと判定するように構成することができる。
また、同様の観点から、上記品質判定手順は、上記目標受信品質値から上記受信品質値を減算して差分値を演算する差分値演算手順と、上記差分値演算手順にて演算された当該差分値が第二の閾値以上となるか否かを判定する第二の閾値判定手順とを有し、上記第二の閾値判定手順にて上記差分値が上記第二の閾値以上となると判定されたときに、上記受信信号品質が所定の品質より低下したと判定するように構成することができる。
更に、上記通信装置が、受信信号品質値が所定のパラメータに従って制御される目標受信品質値に近づくよう決定した送信電力制御情報を他の通信装置に送信するものである場合、上記と同様の観点から、上記品質判定手順は、上記受信信号品質値が第一の閾値より低下したか否かを判定する第一の閾値判定手順と、上記目標受信品質値から上記受信品質値を減算して差分値を演算する差分値演算手順と、上記差分値演算手順にて演算された当該差分値が第二の閾値以上となるか否かを判定する第二の閾値判定手順と、上記第一の閾値判定手順にて上記受信信号品質値が上記第一の閾値より低下していると判定されたとき、または、上記第二の閾値判定手順にて上記差分値が上記第二の閾値以上であると判定されたときに、上記受信信号品質が所定の品質より低下したと判定するように構成することができる。
上記目標受信品質値の制御の基礎となる所定のパラメータは、特に限定されず、目標受信品質値が固定値ではなくその制御により変化する場合に、上記構成は有効となる。上記所定のパラメータは、例えば、通信装置にて得られる受信信号に含められた伝送情報の誤り率などを用いることができる。
上記自律制御手順は、例えば、上記所定の特性に従って送信電力を上昇させる自律送信電力制御情報を生成する手順と、上記品質判定手順により上記受信信号品質が所定の品質より低下したと判定されたときに、上記他の通信装置からの送信電力制御情報に基づいた送信電力制御から上記自律送信電力制御情報に基づいた送信電力制御に切換える制御切換え手順とを有するように構成することができる。
受信信号品質の改善がなされないまま無駄な送信電力上昇制御が行なわれることを防止するという観点から、本発明の一特徴に従えば、上記各送信電力制御方法において、上記自律制御手順は、上記所定の特性に従って送信電力を上昇させる過程で、その送信電力の上昇量が所定量に達したか否かを判定する判定手順と、該判定手順にてその送信電力の上昇量が所定量に達したと判定されたときに、上記所定の特性に従って送信電力を上昇させることを停止させる自律制御停止手順とを有するように構成することができる。
上記第三の課題を解決するため、本発明の一特徴に従えば、他の通信装置と信号の無線送受信を行い、受信信号品質に基づいて決定した上記他の通信装置での送信電力制御に用いられるべき送信電力制御情報を送信する通信装置での送信電力を上記他の通信装置からの所定の情報に基づいて制御する送信電力制御装置において、上記受信信号品質が所定の品質より低下したか否かを判定する品質判定手段と、該品質判定手段により当該受信信号品質が所定の品質より低下したと判定されたときに、送信電力を、上記他の通信装置からの所定の情報にかかわらず、当該判定時の送信電力値から所定の特性に従って上昇させる自律制御手段とを有するように構成される。
また、上記第四の課題は、他の通信装置と信号の無線送受信を行い、受信信号品質に基づいて決定した上記他の通信装置での送信電力制御に用いられるべき送信電力制御情報を送信する送信電力制御情報送信手段と、
上記他の通信装置からの所定の情報に基づいて送信電力を制御する制御手段と、
上記の送信電力制御装置を有する通信装置にて解決される。
更に、上記第五の課題を解決するため、本発明の一特徴に従えば、移動通信システムにおける基地局と移動局との間で情報データの伝送が開始される前において、基地局から移動局での送信電力制御に用いられるべき送信電力制御情報を送信すると共に基地局と移動局との間で信号を送受信して同期をとるための処理がなされる際に移動局での送信電力を制御する送信電力制御方法において、基地局からの信号に対する移動局での同期が確立された後に、基地局からの送信電力制御情報に係わらず、送信電力を、初期値から所定の特性に従って上昇させるように制御する自律制御手順を有するように構成される。
このような送信電力制御方法では、移動局と基地局との間で情報データの伝送が開始される前において、基地局と移動局との間で信号を送受信して同期をとるための処理がなされる際に、移動局では、基地局からの送信電力制御情報に係わらず、送信電力が初期値から所定の特性に従って上昇するように制御される。
上記所定の特性は、基地局からの送信電力制f1御情報が急激に送信電力を上昇させる特性を表すものであったとしても、その送信電力制御情報と関係なく、同期確立がより早期に行えると共に、より無駄のない送信電力制御が行えるという観点から決めることができる。この所定の特性は、上記初期値より送信電力が低下することがなければ、上記観点に従って任意に決めることができ、徐々に上昇する特性であっても、ある値までステップ状に上昇させた後に、その値を維持するような特性であってもよい。
特に、本発明の一特徴に従えば、上記送信電力制御方法において、上記自律制御手順は、上記基地局からの送信電力制御情報に基づいた送信電力制御による送信電力の変化より緩やかに変化する特性に従って送信電力を上昇させるように制御するように構成することができる。
上記自律制御手順に従った送信電力制御の停止時期にて送信電力制御の切換えをスムーズに行うようにするという観点から、本発明の一特徴に従えば、上記送信電力制御方法において、上記自律制御手順による送信電力の制御が開始された後に、当該自律制御手順による送信電力の制御を停止させるべき所定の条件が満足されたか否かを判定する自律制御停止条件判定手順と、該自律制御停止条件判定手順によって上記所定の条件が満足されたと判定されたときに、上記自律制御手順による送信電力の制御から上記基地局からの送信電力制御情報に基づいた送信電力の制御に切換える制御切換え手順とを有するように構成することができる。
上記のような送信電力制御方法では、上記所定の条件が満足されたとの判定時に、自律制御手順に従った送信電力の制御から基地局からの送信電力制御情報に基づいた送信電力の制御に切替わる。
上記自律制御手順による送信電力の制御を停止させるべき所定の条件は、基地局からの情報に係わりなく移動局にて判断できる条件であっても、基地局からの情報に基づいて移動局にて判断できる条件であってもよい。
前者の場合、より簡易にその停止時期を判定できるという観点から、本発明の一特徴に従えば、上記送信電力制御方法において、上記自律制御停止条件判定手順は、上記自律制御手順による送信電力の制御が開始されてから所定時間が経過したか否かを判定し、上記自律制御手順による送信電力の制御が開始されてから上記所定時間が経過したとの判定を上記所定の条件が満足されたとの判定とするように構成することができる。
また、後者の場合、本発明の一特徴に従えば、上記送信電力制御方法において、上記基地局は、当該基地局での同期が確立される前では、所定の送信電力制御情報を送信し、上記移動局からの信号に基づいて当該基地局での同期が確立された後では、移動局から送信される信号の受信品質に基づいて決められる閉ループ送信電力制御情報を送信するようにし、上記自律制御停止条件判定手順は、上記基地局から受信される送信電力制御情報が、上記所定の送信電力制御情報から閉ループ送信電力制御情報に変わったか否かを判定する制御情報変更判定手順を有し、該制御情報変更判定手順にてなされる上記基地局から受信される送信電力制御情報が上記所定の送信電力制御情報から閉ループ送信電力制御情報に変わったとの判定を上記所定の条件が満足されたとの判定とするように構成することができる。
基地局から送信される所定の送信電力制御情報が正しく移動局にて受信されない場合に、基地局からの送信電力制御情報が閉ループ送信電力制御情報に変わったと誤って判定される可能性を低減するという観点から、本発明の一特徴に従えば、上記送信電力制御方法において、上記自律制御停止条件判定手順は、上記自律制御手順による送信電力制御が開始されたから所定時間が経過したか否かを判定する開始タイミング判定手順を有し、該開始タイミング判定手順にて上記自律制御手順による送信電力制御が開始されてから上記所定時間が経過したと判定されたときに、上記制御情報変更判定手順に従った判定を開始するように構成することができる。
このような送信電力制御方法では、上記自律制御手順による送信電力制御が開始されてから少なくとも上記所定時間は、基地局からの送信電力制御情報が閉ループ送信電力制御であると判定されることはない。
上記第五の課題を解決するため、本発明の一特徴に従えば、移動通信システムにおける基地局と移動局との間で情報データの伝送が開始される前において、基地局から移動局での送信電力制御に用いられるべき送信電力制御情報を送信すると共に基地局と移動局との間で信号を送受信して同期をとるための処理がなされる際に移動局での送信電力を制御する送信電力制御方法において、基地局からの信号に対する移動局での同期が確立された後に、該基地局からの送信電力制御情報に基づいて生成される当該送信電力制御情報に基づいた送信電力制御による送信電力の変化より緩やかに変化する特性に従って送信電力を制御するための緩特性送信電力制御情報に基づいて送信電力を制御する緩特性送信電力制御手順を有するように構成される。
このような送信電力制御方法では、移動局と基地局との間で情報データの伝送が開始される前において、基地局と移動局との間で信号を送受信して同期をとるための処理がなされている際に、移動局では、基地局からの送信電力制御情報に基づいて生成される緩特性送信電力制御情報に基づいて送信電力の制御がなされる。これにより、基地局からの送信電力制御情報が急激に送信電力を変化させる特性を表すものであったとしても、その特性より緩やかに変化する特性にて移動局での送信電力を制御することができる。
上記緩特性送信電力制御情報は、基地局からの送信電力制御情報に基づいて生成されたものであれば特に限定されず、例えば、その送信電力制御情報から部分的に抽出された情報に基づいて作成されたものであっても、また、その送信電力制御情報を細分化して得られる各部分の平均的な情報に基づいて作成されたものであってもよい。
また、上記緩特性送信電力制御手順に従った送信電力制御の停止時期にて送信電力制御の切換えをスムーズに行うようにするという観点から、本発明の一特徴に従えば、上記送信電力制御方法において、上記緩特性送信電力制御手順による送信電力制御が開始された後に、当該緩特性送信電力制御手順による送信電力の制御を停止させるべき所定の条件が満足されたか否かを判定する緩特性送信電力制御停止判定手順と、該緩特性送信電力制御停止判定手順によって上記所定の条件が満足されたと判定されたときに、上記緩特性送信電力制御手順による送信電力の制御から上記基地局からの送信電力制御に基づいた送信電力の制御に切換える制御切換え手順とを有するように構成することができる。
更に、上記第一の課題を解決するため、本発明の一特徴に従えば、移動通信システムにおける基地局と移動局との間で情報データの伝送が開始される前において、基地局から移動局での送信電力制御に用いられるべき送信電力制御情報を送信すると共に基地局と移動局との間で信号を送受信して同期をとるための処理がなされる際に移動局での送信電力を制御する送信電力制御装置において、基地局からの信号に対する移動局での同期が確立された後に、基地局からの送信電力制御情報に係わらず、送信電力を、初期値から所定の特性に従って上昇させるように制御する自律制御手段を有するように構成される。
また、上記第五の課題を解決するため、本発明の一特徴に従えば、移動通信システムにおける基地局と移動局との間で情報データの伝送が開始される前において、基地局から移動局での送信電力制御に用いられるべき送信電力制御情報を送信すると共に基地局と移動局との間で信号を送受信して同期をとるための処理がなされる際に移動局での送信電力を制御する送信電力制御装置において、基地局からの信号に対する移動局での同期が確立された後に、該基地局からの送信電力制御情報に基づいて生成される当該送信電力制御情報に基づいた送信電力制御による送信電力の変化より緩やかに変化する特性に従って送信電力を制御するための緩特性送信電力制御情報に基づいて送信電力を制御する緩特性送信電力制御手段を有するように構成される。
上記第六の課題を解決するため、本発明の一特徴に従えば、送信電力制御に用いられるべき送信電力制御情報を送信する基地局に対して情報データの伝送を行う前において、基地局との間で信号を送信して同期をとるための処理がなされる際に送信電力を制御する送信電力制御装置を有する移動局において、上記送信電力制御装置は、基地局からの信号に対する当該移動局での同期が確立された後に、基地局からの送信電力制御情報に係わらず、送信電力を、初期値から所定の特性に従って上昇させるように制御する自律制御手段を有するように構成される。
更に、上記第六の課題を解決するため、本発明の一特徴に従えば、送信電力制御に用いられるべき送信電力制御情報を送信する基地局に対して情報データの伝送を行う前において、基地局との間で信号を送信して同期をとるための処理がなされる際に送信電力を制御する送信電力制御装置を有する移動局において、上記送信電力制御装置は、基地局からの信号に対する移動局での同期が確立された後に、該基地局からの送信電力制御情報に基づいて生成される当該送信電力制御情報に基づいた送信電力制御による送信電力の変化より緩やかに変化する特性に従って送信電力を制御するための緩特性送信電力制御情報に基づいて送信電力を制御する緩特性送信電力制御手段を有するように構成される。
なお、本発明の他の目的、特徴、利点は、添付図面と共になされる以下の詳細な説明にて、明らかにされる。
[実施例1]
本発明の実施の一形態に係る送信電力制御方法が適用されるCDMA方式の移動通信システムにおけるソフトハンドオーバの一般的なモデルが図1に示される。
図1において、ソフトハンドオーバでは、移動局MSは、基地局BS1のサービスエリアから基地局BS2のサービスエリアへの移動中に、それらのサービスエリアの境界領域において、双方の基地局BS1、BS2と無線接続される。この状態で、移動局MSは、各基地局BS1、BS2から受信した信号を合成し、その合成信号から伝送情報を取得する。また、各基地局BS1、BS2は、移動局MSから送信される信号を受信し、それらの受信信号が、例えば、上位局にて合成され、その合成信号から移動局MSからの伝送情報が得られる。
上記移動局MSと各基地局BS1、BS2とが無線接続された状態で、移動局MS及び各基地局BS1、BS2は、それぞれ通信相手局から伝送される送信電力制御ビットに基づいて送信電力制御を行う。
上記移動局MSは、例えば、図2に示すように構成される。
図2において、移動局MSは、送受分離部20を有すると共に、送信系として、誤り訂正符号化部11、データビット変調部12、送信電力制御ビット変調部13、拡散部14、無線送信部15及び送信電力制御部16を有する。
情報源(音声処理部、データ処理部など)からのデータに対して、所定の処理、例えば、CRC(cycle redundancy check)の手法に従って誤り検出用のパリティビットをフレーム単位に付加するなどの処理がなされる。誤り訂正符号化部11は、上記のような処理により得られたフレーム単位のパリティビット付きデータの符号化を行う。データビット変調部12は、誤り訂正符号化部11からのフレーム単位の符号化データに基づいてデータ変調信号を生成する。
送信電力制御ビット変調部13は、後述するように生成される基地局の送信電力を制御するための送信電力制御ビットに基づいて制御ビット変調信号を生成する。この制御ビット変調信号は、例えば、送信電力制御ビット「1」(電力増加を表す)に対応した値「+1」及び送信電力制御ビット「0」(電力低減を表す)に対応した値「−1」のいずれかの値を表す。
拡散部14は、上記データビット変調部12にて生成されたデータ変調信号及び送信電力制御ビット変調部13にて生成された制御ビット変調信号を多重化し、移動局MS固有の拡散コードを用いてその多重化された信号の拡散処理を行う。この拡散部14にて得られた拡散信号は、所定の周波数の信号として無線送信部15から送受分離部20を介して送信される。
送信電力制御部16は、後述するように生成される送信電力制御信号に基づいて無線送信部15での送信電力を制御する。上記送信電力制御信号は、例えば、送信電力増加、送信電力低減及び送信電力維持のいずれかの制御動作を表し得る。送信電力制御部16は、その送信電力制御信号が表す制御動作に従って、無線送信部15での送信電力を所定量(dB)だけ増加または低減させ、あるいは現在の送信電力を維持させる。
なお、各基地局BS1、BS2は、上記移動局MSの送信系と略同様の構成となる送信系を有している。これにより、各基地局BS1、BS2は、データと移動局MSでの送信電力を制御するための送信電力制御ビットとを多重化し、その多重化された信号を固有の拡散コードを用いて送信する。
また、移動局MSは、受信系として、無線受信部21、2つの逆拡散部22、23、復調/合成部24、誤り訂正復号/誤り検出部25、誤り測定部26、SIR測定部27、目標SIR決定部28、SIR比較部29及び送信電力制御ビット決定部30を有している。
ソフトハンドオーバに際して各基地局BS1、BS2から送信されるデータ及び送信電力制御ビットが多重化された拡散信号が送受分離部20を介して無線受信部21にて受信されると、その受信信号が逆拡散部22及び23に供給される。逆拡散部22は、基地局BS1固有の拡散コードを用いてその受信信号の逆拡散処理を行う。この逆拡散処理にて、基地局BS1から伝送されるデータ及び送信電力制御ビットに対応した受信データ信号及び受信送信電力制御ビット信号(以下、受信TPC信号1という)が得られる。逆拡散部23は、基地局BS2固有の拡散コードを用いてその受信信号の逆拡散処理を行う。この逆拡散処理にて、基地局BS2から伝送されるデータ及び送信電力制御ビットに対応した受信データ信号及び受信送信電力制御ビット信号(以下、受信TPC信号2という)が得られる。
復調/合成部24は、逆拡散部22及び23にて得られた各受信データ信号を復調して合成し、合成ベースバンド信号を生成する。その合成ベースバンド信号は、誤り訂正復号/誤り検出部25に供給され、フレーム単位に誤り訂正復号がなされると共に、CRCの手法に従って伝送誤りの有無の検出がなされる。その復号結果が情報出力として当該移動局MSの信号処理部(図示略)に供給される。この誤り訂正復号/誤り検出部25は、更に、フレーム単位毎に上記誤りの有無を表す誤り検出結果を出力する。
誤り率測定部26は、上記誤り訂正復号/誤り検出部25からの誤り検出結果に基づいて、例えば、フレーム誤り率(FER:Frame Error Rate)を受信信号(希望波)から復元した情報の受信品質として演算する。
SIR測定部27は、復調/合成部24からの合成ベースバンド信号に基づいて受信SIR(希望波対干渉波及び雑音電力比)を演算する。目標SIR決定部28は、誤り率測定部26から出力される情報の受信品質(FER)が目標品質となるように、目標SIRを決定する(アウターループ制御)。SIR比較部29は、上記SIR測定部27からの受信SIRと目標SIR決定部28からの目標SIRとを比較し、その比較結果を出力する。
送信電力制御ビット決定部30は、SIR比較部29からの比較結果に基づいて送信電力制御ビットの値を決定する(インナーループ制御)。具体的には、受信SIRが目標SIRより小さい場合、希望波の受信レベルが低いとして、送信電力制御ビットが送信電力を増加させるべき値「1」に決定される。一方、受信SIRが目標SIR以上となる場合、希望波受信レベルが高いとして、送信電力制御ビットが送信電力を低減させるべき値「0」に決定される。このように値の決定される送信電力制御ビットは、前述したような送信電力制御ビット変調部13に供給される。これにより、この送信電力制御ビットは、各基地局BS1、BS2に伝送され、各基地局BS1、BS2は、その送信電力制御ビットに基づいて送信電力制御を行う。
なお、各基地局BS1、BS2は、上記移動局MSの受信系と同様に、上記のように送信電力制御のなされる移動局からの信号の受信SIRを測定し、その受信SIRが目標SIRに近づくように送信電力制御ビットを決定している。
また、各基地局BS1、BS2は、上記データ及び送信電力制御ビットの伝送に用いられる拡散コードとは異なる拡散コードで拡散されたパイロットチャネルにてパイロット信号を常時固定電力値にて送信している。各基地局から送信されるパイロット信号は、移動局MSがソフトハンドオーバに際して無線接続すべき基地局を決定するために用いられる。即ち、移動局MSは、各基地局からのパイロット信号を受信し、そのパイロット信号の受信レベルまたは受信SIR、あるいは、これらの値と基地局から別途通知されているパイロット信号の送信レベルとを用いて求めた基地局及び移動局間の伝搬損失に基づいて無線接続すべき基地局を決定する。
ここで、パイロット信号の送信レベルは、各基地局のアンテナから送信されるパイロット信号の送信レベルを報知情報として移動局MSに通知されている値である。このパイロット信号の送信レベル(dBm)から移動局MSで測定された受信レベル(dBm)を減算した値が伝搬損失(dB)となる。伝播損失値を求める際に用いる受信レベルは、電波伝送路の状態の瞬時変動(フェージング変動)分の影響を受けない程度に平均化を施すことで距離変動分をより忠実に表すことができる。
移動局MSは、受信系として、更に、2つのパイロット信号復調/伝搬損失演算部31、32及び送信電力制御信号決定部33を有する。各パイロット信号復調/伝搬損失演算部31、32は、前述したように、移動局MSが無線接続すべき基地局を決定するために用いられる伝搬損失を演算する。具体的には、次のような処理がなされる。
ソフトハンドオーバに際して無線接続される基地局として決定された上記各基地局BS1、BS2から上記パイロットチャネルにて送信されるパイロット信号が送受分離部20を介して無線受信部21にて受信されると、その受信信号が逆拡散部22及び23に供給される。逆拡散部22は、基地局BS1のパイロットチャネルの拡散コードを用いてその受信信号の逆拡散処理を行う。この逆拡散処理にて、基地局BS1から伝送されるパイロット信号に対応した受信パイロット信号が得られる。また、逆拡散部23は、基地局BS2のパイロットチャネルの拡散コードを用いてその受信信号の逆拡散処理を行う。この逆拡散処理にて、基地局BS2から伝送されるパイロット信号に対応した受信パイロット信号が得られる。
逆拡散部22にて得られた受信パイロット信号は、パイロット信号復調/伝搬送信演算部31に供給される。パイロット信号復調/伝搬損失演算部31は、供給される受信パイロット信号を復調し、その復調信号からパイロット信号の受信レベル(dBm)を演算する。そして、このパイロット信号の受信レベル(dBm)と上述したようにネットワーク側から報知情報として通知されるパイロット信号の送信レベル(dBm)とを用いて移動局MSと基地局BS1との間の電波伝送路での伝搬損失1が演算される。具体的には、パイロット信号の送信レベル(dBm)とパイロット信号の受信レベル(dBm)との差分が伝搬損失1(dB)として演算される。
上記逆拡散部23にて得られた受信パイロット信号は、パイロット信号復調/伝搬損失演算部32に供給される。パイロット信号復調/伝搬損失演算部32は、供給される受信パイロット信号を復調し、その復調信号からパイロット信号の受信レベル(dBm)を演算する。そして、上記パイロット信号復調/伝搬損失演算部31と同様に、そのパイロット信号の送信レベル(dBm)と報知情報として通知されたパイロット信号の受信レベル(dBm)との差分が、移動局MSと基地局BS2との間の電波伝送路での伝搬損失2(dB)として演算される。
上述したように逆拡散部22にて得られた基地局BS1から送信される送信電力制御ビットに対応した受信TPC信号1、逆拡散部23にて得られた基地局BS2から送信される送信電力制御ビットに対応した受信TPC信号2、及び上記パイロット信号復調/伝搬損失演算部31にて得られた移動局MSと基地局BS1との間の電波伝送路での伝搬損失1、上記パイロット信号復調/伝搬損失演算部32にて得られた移動局MSと基地局BS2との間の電波伝送路での伝搬損失2が送信電力制御信号決定部33に供給される。
送信電力制御信号決定部33は、移動局MSと無線接続された各基地局BS1、BS2から伝送される2つの送信電力制御ビットの情報に基づいて当該移動局MSでの送信電力制御信号を決定するもので、上記受信TPC信号1、受信TPC信号2、伝搬損失1及び伝搬損失2に基づいて送信電力制御信号を決定する。この送信電力制御信号を決定するに際して、上記伝搬損失1及び伝搬損失2は、上記受信TPC信号1及び受信TPC信号2の信頼度として考慮される。
図3を参照して送信電力制御信号決定部33の第一の構成例について説明する。
図3において、送信電力制御信号決定部33は、2つのTPC復調部301、302、TPC軟判定値重み合成部303及び硬判定部304を有している。TPC軟判定値重み合成部303は、重み係数決定部310、2つの重み補正部311、312及び合成部313を有する。
上記TPC復調部301は、上記逆拡散部22からの受信TPC信号1を復調し、その復調信号のレベル値を基地局BS1からの送信電力制御ビットの軟判定値TPC-SS1として出力する。上記TPC復調部302は、上記逆拡散部23からの受信TPC信号2を復調し、その復調信号のレベル値を基地局BS2からの送信電力制御ビットの軟判定値TPC-SS2として出力する。これらの軟判定値TPC-SS1及びTPC-SS2は、移動局MSと各基地局BS1、BS2との間の電波伝送路の状態を反映しており、例えば、上述したように、送信電力制御ビットが「+1」、「−1」の値に変調されて伝送される場合、理想的な伝送路の状態では、「+1」または「−1」となる。
TPC軟判定値重み合成部303の重み係数決定部310は、伝搬損失1と伝搬損失2とに基づいて上記軟判定値TPC-SS1及び軟判定値TPC-SS2に対する重み係数を決定する。この重み係数決定部310は、より小さい伝搬損失に対してより大きい重み係数となるようにその重み係数を決定する。例えば、各伝搬損失1、2の逆数に基づいた重み係数が決定される。
重み補正部311は、上記送信電力制御ビットの軟判定値TPC-SS1に上記伝搬損失1に対応した重み係数を乗じ、その補正値を出力する。また、重み補正部312は、上記送信電力制御ビットの軟判定値TPC-SS2に上記伝搬損失2に対応した重み係数を乗じ、その補正値を出力する。これにより、上記伝搬損失1及び2が、上記送信電力制御ビットの軟判定値TPC-SS1及びTPC-SS2の信頼度として考慮されることになる。即ち、伝搬損失が小さく、より信頼度が高いと見込まれる軟判定値TPC-SS1またはTPC-SS2に対してより大きな重み係数が乗ぜられることになる。
合成部313は、各重み補正部311、312から出力される各軟判定値TPC-SS1、TPC-SS2の補正値を最大比合成(MRC:Maximum Ration Combining)する。具体的には、各補正値が加算され、合成部313からTPC合成軟判定値が出力される。
基地局BS1からの送信電力制御ビット(0,0,0,0,0,…)の軟判定値TPC-SS1が、例えば、
-0.2,-03,0.1,-0.3,-06,…
のように得られ、基地局BS2からの送信電力制御ビット(1,1,1,1,1,…)の軟判定値TPC-SS2が、例えば、
0.6,0.3,0.4,0.2,-0.1,…
のように得られ、更に、例えば、伝搬損失1に対応した重み係数が1.1、伝搬損失2に対応した重み係数が0.9とそれぞれ得られた場合、TPC合成軟判定値は、
0.32,-0.06,0.47,-0.15,-0.75,…
となる。
上記のようにして得られたTPC合成軟判定値は硬判定部304に供給される。この硬判定部304は、供給されるTPC合成軟判定値が所定の閾値以上であるか及びその閾値より小さいかのいずれかであるかを判定し、その判定結果を送信電力制御信号として出力する。この所定の閾値が、例えば、「0」で、TPC合成軟判定値が、例えば、上述したように、
0.32,-0.06,0.47,-0.15,-0.75,…
となる場合、
1,0,1,0,0,…
となる送信電力制御信号が出力される。
そして、この送信電力制御信号に基づいて上述した送信電力制御部16が無線送信部15での送信電力を所定量だけ増加(送信電力制御信号=1)またはその送信電力を所定量だけ減少(送信電力制御信号=0)させる。
上述したように、移動局MSでは、各基地局BS1、BS2から伝送される送信電力制御ビットの軟判定値TPC-SS1及びTPC-SS2が、送信電力制御のなされない(固定送信電力にて送信される)パイロット信号の送信レベル及び受信レベルに基づいて求められた移動局MSと各基地局BS1、BS2との間の伝送路での伝搬損失が信頼度として考慮されるように重み合成される。そして、その重み合成の結果得られたTPC合成軟判定値を硬判定した結果が送信電力制御信号として決定される。このようにして決定された送信電力制御信号に基づいて移動局MSでの送信電力制御がなされることにより、移動局MSと各基地局BS1、BS2との間の伝送路の状態をより忠実に考慮して移動局MSの送信電力制御が可能となる。
上記例では、上記硬判定部304での閾値が、例えば、各基地局BS1とBS2から送信される送信電力制御ビットの変調信号の取り得る値「+1」と「−1」の中心値「0」に設定される。無駄のない送信電力制御を可能にするという観点から、上記閾値を僅かに「+1」寄りの値に決めることもできる。この場合、上記TPC重み合成値が送信電力を低減することを表す「0」に硬判定され易くなり、比較的低電力での送信電力制御がなされる。硬判定部304での閾値は、移動通信システムにおいて常に移動局と基地局間での通信が適正になされる範囲で適当に設定することができる。
また、上記硬判定部304は、例えば、図4に示すように構成することもできる。この硬判定部304は、2つの閾値Th1、Th2を用いている。
図4において、この硬判定決定部304は、第一の硬判定部321、第二の硬判定部322及び演算部323を有する。第一の硬判定部321は、TPC軟判定値重み合成部303からのTPC合成軟判定値を第一の閾値Th1を用いて硬判定する。即ち、TPC合成軟判定値が上記第一の閾値Th1以上か、及び上記第一の閾値より小さいかのいずれであるかを判定し、その判定結果を出力する。また、第二の硬判定部322は、上記TPC合成軟判定値を上記第一の閾値Th1より小さい第二の閾値Th2(Th2<Th1)を用いて硬判定する。即ち、TPC合成軟判定値が上記第二の閾値Th2以上か、及び上記第二の閾値Th2より小さいかのいずれであるかを判定し、その判定結果を出力する。
演算部323は、上記第一の硬判定部321からの判定値A及び第二の硬判定部322からの判定値Bに基づいて得られる演算結果Cを送信電力制御信号として出力する。その演算論理は、例えば、図5に示すようになっている。即ち、判定値Aが「1」(TPC合成軟判定値が第一の閾値Th1以上であることを表す)で、かつ、判定値Bが「1」(TPC合成軟判定値が第二の閾値Th2以上であることを表す)である場合、演算結果C=「1」が送信電力を所定量(dB)だけ増加させることを表す送信電力制御信号として出力される。また、判定値Aが「0」(TPC合成軟判定値が第一の閾値Th1より小さいことを表す)で、かつ、判定値Bが「0」(TPC合成軟判定値が第二の閾値Th2より小さいことを表す)である場合、演算結果C=「0」が送信電力を所定量(dB)だけ減少させることを表す送信電力制御信号として出力される。
更に、判定値Aが「0」で、判定値Bが「1」である場合、即ち、TPC合成軟判定値が第一の閾値Th1より小さく、第二の閾値Th2以上である場合、演算結果C=「維持」が現在の送信電力を維持することを表す送信電力制御信号として出力される。なお、判定値Aが「1」で、判定値Bが「0」である状況は、第一の閾値Th1及び第二の閾値Th2の大小関係(Th1>Th2)から論理的にありえない。
このような硬判定部304の構成により、TPC合成軟判定合成値が、電力増大、電力減少を明確に表しうる値とならない場合(第一の閾値Th1より小さく、第二の閾値Th2以上)、現在の送信電力が維持されるようになるので、誤って送信電力を増大させたり、減少させたりする制御を防止することができる。
次に、図6を参照して上記送信電力制御信号決定部33の第二の構成例について説明する。なお、図6において、図3に示す部分と同様の部分については同一の参照符号が付されている。
図6において、この送信電力制御信号決定部33は、2つのTPC復調部301、302、比較部305、選択部306及び硬判定部307を有している。前述した例(図3参照)と同様に、TPC復調部301、302は、上記逆拡散部22、23からの受信TPC信号1及び受信TPC信号2を復調し、その復調信号のレベル値を基地局BS1及びBS2からの送信電力制御ビットの軟判定値TPC-SS1、TPC-SS2として出力する。
比較部305は、パイロット信号復調/伝搬損失演算部31にて演算された伝搬損失1と、パイロット信号復調/伝搬損失演算部32にて演算された伝搬損失2とを比較し、その比較結果を出力する。選択部306は、比較部305からの比較結果を選択制御信号として入力し、その選択制御信号に基づいて基地局BS1からの送信電力制御ビットの軟判定値TPC-SS1となるTPC復調部301からの出力及び基地局BS2からの送信電力制御ビットの軟判定値TPC-SS2となるTPC復調部302からの出力のいずれかを選択する。
比較部305から伝搬損失1が伝搬損失2より小さいという比較結果に基づいた選択制御信号が選択部306に入力されると、選択部306は、TPC復調部301からの出力を選択する。また、比較部305から伝搬損失2が伝搬損失1より小さいという比較結果に基づいた選択制御信号が選択部306に入力されると、選択部306は、TPC復調部302からの出力を選択する。
硬判定部307は、上記のようにして選択された送信電力制御ビットの軟判定値TPC-SS1またはTPC-SS2は、所定の閾値を用いて硬判定し、その硬判定結果を送信電力制御信号として出力する。なお、硬判定部307は、前述した硬判定部304(図3参照)と同様の処理にて軟判定値TPC-SS1またはTPC-SS2の硬判定を行うことができる。
上記のような送信電力制御信号決定部33の構成により、移動局MSと各基地局BS1、BS2との間の電波伝送路のうち伝搬損失が最小となる電波伝送路を通って伝送される送信電力制御ビットの軟判定値(TPC-SS1またはTPC-SS2)に基づいて送信電力制御信号が決定される。従って、移動局MSと各基地局BS1、BS2との間の伝送路の状態を考慮した移動局MSの送信電力制御が可能となる。
なお、上記構成例(図6参照)の送信電力制御信号決定部33にて決定された送信電力制御信号に基づいた移動機MSの送信電力制御は、移動局MSと各基地局との間の伝送路での伝搬損失に大きな差がある場合に、より適正な送信電力制御が可能になるという点で、好ましい。
次に、図7を参照して上記送信電力制御信号決定部33の第三の構成例について説明する。なお、図7において、図3に示す部分と同様の部分については同一の参照符号が付されている。
図7において、この送信電力制御信号決定部33は、2つのTPC復調部301、302、重み係数決定部310、2つの重み補正部311、312、2つの硬判定部314、315及び最小値選択部316を有している。
上述した第一の構成例(図3参照)と同様に、重み係数決定部310が伝搬損失1及び伝搬損失2に対応した重み係数を決定し、重み補正部311、312が、基地局BS1、BS2からの送信電力制御ビットの軟判定値TCP-SS1、TPC-SS2となるTPC復調部301、302の出力に対してその伝搬損失1、伝搬損失2に対応する重み係数を乗じて、その補正値を出力する。
硬判定部314は、所定の閾値を用いて重み補正部311から出力される軟判定値TPC-SS1の補正値の硬判定を行う。また、硬判定部315は、所定の閾値を用いて重み補正部312から出力される軟判定値TPC-SS2の補正値の硬判定を行う。硬判定部314からの硬判定出力は、基地局BS1から伝送される送信電力制御ビットに対応したものとなり、硬判定部315からの硬判定出力は、基地局BS2から伝送される送信電力制御ビットに対応したものとなる。
最小値選択部316は、硬判定部314、315からの両硬判定出力の値が同じ場合(送信電力増加を表す「1」または送信電力減少を表す「0」である場合)、その硬判定出力の値を送信電力制御信号として出力する。一方、最小値選択部316は、硬判定部314、315からの両硬判定出力の値が異なる場合(送信電力増加を表す「1」及び送信電力減少を表す「0」の場合)、そのうちの小さい値「0」を送信電力制御信号として出力する。
硬判定部314からの硬判定出力値が、例えば、
1、0、1、0、0、…
となり、硬判定部315からの硬判定出力値が、例えば、
1、1、1、1、1、…
となる場合、最小値選択部316は、
1、0、1、0、0、…
を送信電力制御信号として出力する。
上記のような送信電力制御信号決定部33の構成により、移動局MSでは、各基地局BS1、BS2との間の伝送路での伝搬損失が信頼度として考慮され、各基地局BS1、BS2から伝送される送信電力制御ビットの軟判定値TPC-SS1、TPC-SS2が重み補正される。そして、その重み補正された値の硬判定結果が異なる場合に、より小さい硬判定結果が送信電力制御信号として決定される。そのように決定される送信電力制御信号に基づいて移動局MSの送信電力制御を行うことにより、移動局MSと各基地局BS1、BS2との間の伝送路の状態をより忠実に考慮して移動局MSの無駄のない送信電力制御が可能となる。
次に、図8を参照して上記送信電力制御信号決定部33の第四の構成例について説明する。なお、図8において、図3に示す部分と同様の部分については同一の参照符号が付されている。
図8において、この送信電力制御信号決定部33は、2つのTPC復調部301、302、4つの硬判定部317、318、331、332、最小値選択部319及び選択部333を有する。上述した各例と同様に、TPC復調部301、302は、上記逆拡散部22、23(図2参照)からの受信TPC信号1及び受信TPC信号2を復調し、その復調信号のレベル値を基地局BS1及びBS2からの送信電力制御ビットの軟判定値TPC-SS1、TPC-SS2として出力する。
硬判定部317は、所定の閾値を用いて上記TPC復調部301からの軟判定値TPC-SS1の硬判定を行う。この硬判定部317からの硬判定出力は、基地局BS1から伝送される送信電力制御ビットに対応したものとなる。また、硬判定部318は、所定の閾値を用いて上記TPC復調部302からの軟判定値TPC-SS2の硬判定を行う。この硬判定部318からの硬判定出力は、基地局BS2から伝送される送信電力制御ビットに対応したものとなる
最小値選択部319は、硬判定部317、318からの両硬判定出力の値が同じ場合、その硬判定出力の値を出力する。一方、硬判定部317、318からの硬判定出力の値が異なる場合(「0」と「1」の場合)、そのうち小さい値「0」を送信電力制御信号として出力する。
硬判定部331は、パイロット信号復調/伝搬損失演算部31にて演算された伝搬損失1が所定の閾値以上か、及び所定の閾値より小さいかのいずれかの判定結果を硬判定結果として出力する。硬判定部332は、パイロット信号復調/伝搬損失演算部32にて演算された伝搬損失が上記所定の閾値以上か、及び所定の閾値より小さいかのいずれかの判定結果を硬判定結果として出力する。そして、各硬判定部331、332からの硬判定結果が選択制御信号として選択部333に供給される。
選択部333は、上記選択制御信号に基づいて基地局BS1から伝送される送信電力制御ビットに対応した硬判定部317の硬判定出力値A、最小選択部319からの出力値MIN及び基地局BS2から伝送される送信電力制御ビットに対応した硬判定部318の硬判定出力値Bのいずれかを選択する。
例えば、伝搬損失1が所定の閾値より小さく、伝搬損失2が所定の閾値以上の場合、硬判定部331、332から出力される硬判定結果に基づいた選択制御信号により、選択部333は、硬判定部317の硬判定出力値Aを選択して送信電力制御信号として出力する。また、伝搬損失1が所定の閾値以上で、伝搬損失2が所定の閾値より小さい場合、硬判定部331、332から出力される硬判定結果に基づいた選択制御信号により、選択部333は、硬判定部318の硬判定出力Bを選択して送信電力制御信号として出力する。更に、伝搬損失1及び伝搬損失2の双方が所定の閾値より小さい場合、または、その双方が所定の閾値以上の場合、硬判定部331、332から出力される硬判定結果に基づいた選択制御信号により、選択部333は、最小選択部319からの出力値MINを選択して送信電力制御信号として出力する。
上記のような送信電力制御信号決定部33の構成により、移動局MSと各基地局BS1、BS2との間の電波伝送路のうち伝搬損失がより小さい値となる電波伝送路を通って伝送される送信電力制御ビットの軟判定値の硬判定結果が送信電力制御信号として決定される。また、移動局MSと各基地局BS1、BS2との間の電波伝送路の伝搬損失が同じように所定の閾値以上、または同じように所定の閾値より小さい場合、基地局BS1、BS2から伝送される送信電力制御ビットの軟判定値TPC-SS1、TPC-SS2は、同程度の信頼性がある(同程度の信頼性しかない)として、それらの硬判定結果のうち小さい値(「0」)が送信電力制御信号として決定される。
従って、移動局MSと各基地局BS1、BS2との間の伝送路の状態を考慮した無駄のない送信電力制御が可能となる。
次に、図9を参照して上記送信電力制御信号決定部33の第五の構成例について説明する。なお、図9において、図3及び図6に示す部分と同様の部分については同一の参照符号が付されている。
図9において、送信電力制御信号決定部33は、図3に示す構成例と同様に、2つのTPC復調部301、302、TPC軟判定値重み合成部303及び硬判定部304を有している。また、この送信電力制御信号決定部33は、図6に示す構成例と同様に、2つのTPC復調部301、302からの軟判定値TPC-SS1、TPC-SS21のいずれかを選択する選択部306、伝搬損失1と伝搬損失2とを比較し、その比較結果を選択制御信号として選択部306に供給する比較部305及び硬判定部307を有している。更に、この送信電力制御信号決定部33は、硬判定部304からの硬判定出力値及び硬判定部307からの硬判定出力値のいずれかを選択する選択部334を有している。
また、この移動局MSは、フェージング周波数測定部40及びフェージング判定部41を有している。フェージング周波数測定部40は、受信信号のフェージング周波数を測定する。このフェージング周波数は、例えば、復調/合成部24からの出力信号(合成復調信号)のレベル変動に基づいて測定することができる。また、各拡散チャネルでのパイロット信号の復調信号のレベル変動に基づいて各拡散チャネル毎のフェージング周波数を求めることができる(例えば、本願出願人が既に出願している特願2000-082929参照)。この拡散チャネル毎のフェージング周波数の平均値や、その各フェージング周波数のうちでより大きいフェージング周波数をフェージング周波数の測定値として用いることもできる。更に、フェージングによって希望波のレベルが低下すると、受信SIRが低下し、その受信SIRを目標SIRに近づけるように送信電力制御ビットが決定される。従って、このように決定される送信電力制御ビットの変動状況に基づいてフェージング周波数を測定することもできる。
フェージング判定部41は、上記のようにしてフェージング周波数測定部40にて測定されたフェージング周波数が基準値以上であるか否かを判定し、その判定結果を選択制御信号として出力する。選択部334は、フェージング判定部41からフェージング周波数の測定値が基準値より小さいとする判定結果に対応した選択制御信号を入力すると、硬判定部304からの硬判定出力値を選択して送信電力制御信号として出力する。一方、選択部334は、フェージング判定部41からフェージング周波数の測定値が基準値以上であるとする判定結果に対応した選択制御信号を入力すると、硬判定部307からの硬判定出力値を選択して送信電力制御信号として出力する。
このような送信電力制御信号決定部33の構成により、移動局MSの移動速度が比較的小さく、移動局MSでのフェージング周波数が比較的小さい場合には、図3に示す例と同様に、各基地局BS1、BS2から伝送される送信電力制御ビットの軟判定値TPC-SS1、TPC-SS2が、移動局MSと各基地局BS1、BS2との間の電波伝送路での伝搬損失1、2に基づいて重み合成され、その重み合成の結果得られたTPC合成軟判定値を硬判定した結果が送信電力制御信号として決定される。一方、移動局MSの移動速度が比較的大きく、移動局MSでのフェージング周波数が比較的大きい場合には、図6に示す例と同様に、移動局MSと各基地局BS1、BS2との間の電波伝送路のうち伝搬損失が最小となる電波伝送路を通って伝送される送信電力制御ビットの軟判定値に基づいて送信電力制御信号が決定される。
従って、移動局MSと各基地局BS1、BS2との間の伝送路の状態が比較的良好なとき(フェージング周波数が比較的小さいとき)には、各基地局BS1、BS2から伝送される双方の送信電力制御ビットに基づいて移動局MSでの送信電力制御信号が決定される。また、移動局MSと各基地局BS1、BS2との間の伝送路の状態があまり良くないとき(フェージング周波数が比較的大きいとき)には、最も良好な(伝搬損失が最小となる)伝送路を通って伝送される送信電力制御ビットだけに基づいて移動局MSでの送信電力制御信号が決定されることになる。その結果、移動局MSと各基地局BS1、BS2との間のより良い伝送路の状態を考慮した移動局MSでの送信電力制御が可能となる。
なお、上記例では、図6に示す構成にて得られる送信電力制御信号と、図3に示す構成にて得られる送信電力制御信号とを、フェージング周波数に基づいて切換えるようにしたが、その図6に示す構成にて得られる送信電力制御信号に代えて、図7または図8に示す構成にて得られる送信電力制御信号を用いることもできる。
なお、上記各例では、移動局MSが2つの基地局BS1、BS2と無線接続される場合について説明したが、移動局MSが3つ以上の基地局と無線接続される場合についても、同様の処理を行うことにより、移動局MSの送信電力制御を行うことができる。
また、上記各例では、移動局MSと各基地局BS1、BS2との間の電波伝送路の伝搬損失を考慮して移動局MSにて得られる各基地局からの送信電力制御情報から送信電力制御に用いられるべき送信電力制御情報を決定している。本発明はこれに限定されず、上記伝搬損失に代えて、各基地局から送信されるパイロット信号に基づいて測定される移動局MSと各基地局BS1、BS2との間の伝送路品質を表す情報となるパイロット信号の受信レベルや該パイロット信号から演算される受信SIR等を用いることも可能である。その伝送品質を表す情報は、移動局MSが無線接続されるべき基地局を決定するために使用されるものであることが、装置の構成を簡略化できるという観点から好ましい。
上記各例において、パイロット信号復調/伝搬損失演算部31、32は、伝搬損失演算手段、伝送路品質測定手段に対応し、送信電力制御信号決定部33は、送信ン電力制御情報決定手段に対応する。
また、重み係数決定部310、重み補正部311、312は、重み補正手段に対応し、合成部313は合成手段に対応し、図9に示す選択部334は、選択手段に対応する。
[実施例2]
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づいて説明する。
本発明の実施の一形態に係る送信電力制御方法が適用される無線通信システムは、例えば、図10に示すように構成される。この無線通信システムは、移動局と基地局との間で信号の送受信がなされるCDMA方式の移動通信システムである。
図10において、移動局100と基地局200とが、CDMA方式に従って信号(パケット、制御信号、音声信号など)の送受信を行う。移動局100は、送受信装置110、信号処理部150及びユーザインタフェース160を有する。また、基地局200は、送受信装置210及び信号処理部220を有する。
移動局100のユーザインタフェース160にてユーザから入力された情報(音声、文書、画像等)は、信号処理部150にて所定の形式の信号となるように処理される。信号処理部150からの信号は、送受信装置110に供給され、符号化処理、変調処理等の所定の処理が施される。そして、その処理により得られた信号が送受信装置110から基地局200に送信される。
移動局100からの信号を受信した基地局200の送受信装置210は、その受信信号に対して復調処理、復号処理等の所定の処理を施す。そして、送受信装置210にて生成された信号が信号処理部220にてネットワーク上を伝送可能な形式に変換され、その信号が信号処理部220からネットワークを介して通信相手の端末に送信される。
基地局200において、ネットワークから供給される信号は、信号処理部220にて所定の形式となるように処理される。この信号処理部220からの信号は、送受信装置210に供給され、符号化処理、変調処理等の所定の処理が施される。その処理により得られた信号が送受信装置210から移動局100に送信される。
基地局200からの信号を受信した移動局100の送受信装置110は、その受信信号に対して復調処理、復号処理等の所定の処理を施す。そして、送受信装置110で生成された信号が信号処理部150にてユーザインタフェース160で処理可能な形式に変換され、その信号に基づいてユーザインタフェース160からユーザに対して情報(音声、文書(メール)、画像等)の提示がなされる。
移動局100の送受信装置110は、基地局200から送信される送信電力制御ビット(電力増加または電力減少を表す送信電力制御情報)に基づいて送信電力制御(上り回線送信電力制御)を行う。基地局200の送受信装置210も、移動局100から送信される送信電力制御ビットに基づいて送信電力制御(下り回線送信電力制御)を行う。従って、移動局100及び基地局200の送受信装置110及び210は、送信電力制御に関して略同様の構成となっている。以下、上り回線送信電力制御について説明する。
移動局100の送受信装置110は、例えば、図11に示すように構成される。
図11において、この送受信装置110は、送受分離部111を共用した送信系と受信系とを有している。受信系は、無線受信部112、誤り訂正符号/誤り検出部113、誤り率測定部114、SIR測定部115、SIR比較部116、目標SIR決定部117、送信電力制御ビット決定部118及び送信電力制御ビット抽出部119を有している。
基地局200から送信される信号が送受分離部111を介して無線受信部112に供給される。この無線受信部112は、送受分離部111から供給される受信信号に対して逆拡散処理及び復調処理を施してベースバンド信号を生成する。後述するように、上記受信信号は、基地局200から送信されるデータに対応したデータ信号と送信電力制御ビットに対応した制御信号とを含んでおり、その制御信号に対する復調処理にて得られたベースバンド信号は、送信電力制御ビット抽出部119に供給される。送信電力制御ビット抽出部119は、そのベースバンド信号から送信電力制御ビットを復元する。
無線受信部112による上記データ信号に対する復調処理にて得られたベースバンド信号は、誤り訂正復号/誤り検出部113に供給され、フレーム単位に誤り訂正復号がなされると共に、例えば、CRC(cycle redundancy check)の手法に従って伝送誤りの有無の検出がなされる。その復号結果が情報出力として当該送受信装置110から信号処理部150(図10参照)に供給される。この誤り訂正復号/誤り検出部113は、更に、フレーム単位毎に上記伝送誤りの有無を表す誤り検出結果を出力する。
誤り率測定部114は、上記誤り訂正復号/誤り検出部113からの誤り検出結果に基づいて、フレーム誤り率(FER:Frame Error Rate)を受信信号(希望波)から復元した情報の受信品質として演算する。
SIR測定部115は、無線受信部112にて得られた受信信号に基づいて受信SIR(希望波対干渉波及び雑音電力比)を演算する。この演算周期は、データのフレーム周期より短い。目標SIR決定部117は、誤り測定部114から出力される情報の受信品質(FER)が目標品質となるように、目標SIRを決定する。具体的には、この目標SIR決定部117は、情報の受信品質が目標品質より低ければ、目標SIRの値を高くし、情報の受信品質が目標品質より高ければ、目標SIRの値を低くするような制御(アウターループ制御)を行う。SIR比較部116は、上記SIR測定部115からの受信SIRと目標SIR決定部117からの目標SIRとを比較し、その比較結果を出力する。
送信電力制御ビット決定部118は、SIR比較部116からの比較結果に基づいて、基地局200での送信電力制御に用いられるべき送信電力制御ビットを決定する(インナーループ制御)。受信SIRが目標SIRより小さい場合、希望波の受信レベルが低いとして、送信電力制御ビットが送信電力を増加させるべき値(例えば、「1」)に決定される。一方、受信SIRが目標SIRより大きい場合、希望波の受信レベルが高いとして、送信電力制御ビットが送信電力を低減させるべき値(例えば、「0」)に決定される。このように値の決定された送信電力制御ビットは、送信電力制御ビット決定部118から後述するような送信系の無線送信部122に供給され、基地局200に伝送される。
移動局100の送信系では、前述したように信号処理部150(図10参照)から供給される情報に対して所定の処理、例えば、CRCの手法に従って誤り検出用のパリティビットをフレーム単位に付加する処理、このような処理により得られたフレーム単位のパリティ付きデータの誤り訂正符号化を行う処理等がなされる。この符号化データは、無線送信部122に供給される。
無線送信部122は、上記のように供給される符号化データに対して変調処理を行ってデータ変調信号を生成する。また、無線送信部122は、前述したように送信電力制御ビット決定部118から供給される送信電力制御ビットに対して変調処理を行って制御ビット変調信号を生成し、この制御ビット変調信号と上記データ変調信号とを多重化する。そして、所定の拡散コードを用いてその多重化された信号の拡散処理がなされる。無線送信部122は、その拡散処理にて得られた信号を、送受分離部111を介して送信する。
この移動局100の送信系は、更に、送信電力制御部123、SIR監視部124、徐々上げビットパターン生成部125及びスイッチ126を有している。
上記受信系における送信電力制御ビット抽出部119からの送信電力制御ビットは、スイッチ126を介して送信電力制御部123に供給される。この場合、送信電力制御部123は、上記基地局200からの送信電力制御ビットに基づいて無線送信部122での送信電力を制御する。このような制御により、基地局200での受信SIRが目標SIRに近づくように、移動局100における無線送信部122での送信電力制御がなされる。
SIR監視部124は、前述したSIR測定部115にて測定された受信SIR及び目標SIR決定部117にて決定された目標SIRを入力し、予め設定された第一の閾値ThA及び第二の閾値ThBを用いて上記受信SIRが正常な状態にあるか否かを監視する。そして、このSIR監視部124は、受信SIRが正常な状態であると判定すると、第一の状態(例えば、ローレベル)の制御信号を出力する一方、受信SIRが異常な状態であると判定すると、第二の状態(例えば、ハイレベル)となる制御信号を出力する。
上記SIR監視部124から第一の状態となる制御信号が出力される場合(受信SIRが正常な状態)、その制御信号に基づいて上記スイッチ126は、送信電力制御ビット抽出部119を送信電力制御部123に接続する状態となる。その結果、上述したように、送信電力制御ビット抽出部119からの送信電力制御ビットが送信電力制御部123に供給される。
一方、上記SIR監視部124から第二の状態となる制御信号が出力される場合(受信SIRが異常な状態)、その制御信号に基づいて徐々上げビットパターン生成部125が起動される。この徐々上げビットパターン生成部125は、送信電力が徐々に上昇するように作用する送信電力制御ビット列に対応したビットパターン(以下、徐々上げビットパターンという)を生成する。また、その制御信号に基づいて上記スイッチ126は、徐々上げビットパターン生成部125を送信電力制御部123に接続する状態となる。その結果、徐々上げビットパターン生成部125にて生成される徐々上げビットパターンが送信電力制御部123に供給される。
上記SIR監視部124は、例えば、図12に示すように構成される。
図12において、SIR監視部124は、受信SIRと第一の閾値ThAとを比較する比較器131、目標SIRから受信SIRを減算してSIR差分値ΔSIRを出力する減算器132、減算器132から出力されるSIR差分値ΔSIRと第二の閾値ThBとを比較する比較器133を有している。上記比較器131は、受信SIRが第一の閾値ThAより小さくなるときに、例えば、ハイレベルとなる信号を出力し、受信SIRが第一の閾値ThA以上となるときに、例えば、ローレベルとなる信号を出力する。上記比較器133は、上記SIR差分値ΔSIRが第二の閾値ThB以上となるときに、例えば、ハイレベルとなる信号を出力し、上記SIR差分値ΔSIRが第二の閾値ThBより小さくなるときに、例えば、ローレベルとなる信号を出力する。
また、このSIR監視部124は、オアゲート134、アップ/ダウンカウンタ135及びアンドゲート136を有する。上記比較器131及び133の出力信号がオアゲート134に入力され、このオアゲート134からの出力信号がアップ/ダウンカウンタ135のスタート端子(S)及びリセット端子(R)に入力すると共にアンドゲート136に入力されている。また、前述した徐々上げビットパターン生成部125にて生成される徐々上げビットパターンがアップ/ダウンカウンタ135の計数端子(C)に入力されている。
アップ/ダウンカウンタ135は、オアゲート134からの出力信号がハイレベルに立ち上がると、リセットされてスタートし、その出力信号をハイレベルに立ち上げる。このアップ/ダウンカウンタ135は、徐々上げビットパターンの電力増加を表すビット(例えば、「1」)が入力されると+1だけアップカウントし、電力減少を表すビット(例えば、「0」)が入力されると−1だけダウンカウントする。そして、その計数値が所定値Nに達するとアップ/ダウンカウンタ135は、その出力信号をローレベルに立ち下げる。このアップ/ダウンカウンタ135の出力信号は上記オアゲート134の出力と共にアンドゲート136に入力される。このアンドゲート136の出力がSIR監視部124の出力となる。
上記徐々上げビットパターンの各ビットの値に応じてアップカウント及びダウンカウントを行うアップ/ダウンカウンタ135でのカウント値は、その徐々上げビットパターンにて制御される送信電力の上昇量に対応する。このアップ/ダウンカウンタ135に設定される上記所定値Nは、徐々上げビットパターンにて制御される送信電力の上昇量の上限に対応したものとなる。
上記のような構成となる移動局100では、例えば、図13に示すような送信電力制御(上り回線送信電力制御)がなされる。
図13において、受信SIRが目標SIRを挟む比較的狭い範囲を推移している状態(時刻t1までの期間)では、受信SIRは第一の閾値ThA以上の値となり、目標SIRと受信SIRとの差を表すSIR差分値ΔSIRは第二の閾値ThBより小さい値となる。従って、SIR監視部124における比較器131及び133の出力は共にローレベルとなって、このSIR監視部124から出力される制御信号は第一の状態(ローレベル)となる。この制御信号により、スイッチ26は送信電力制御ビット抽出部119を送信電力制御部123に接続する状態となり、この送信電力制御ビット抽出部119にて抽出される基地局200からの送信電力制御ビット(…11100001111000)に基づいて送信電力制御部123が無線送信部122の送信電力制御を行う。この状態は、正常な状態であり、移動局100での送信電力制御は、基地局200での受信SIRが目標SIRに近づくようになされる。
ここで、何らかの原因で、基地局200からの受信信号の品質が低下して受信SIRが低下する(時刻t1から時刻t2までの間)。この状態では、受信SIRと目標SIRとの関係に基づいて、送信電力制御ビット決定部118は、基地局200の送信電力を上昇させるための送信電力制御ビットを生成し、その送信電力制御ビットが移動局100から基地局200に送信されている。それにも係わらず、基地局200からの受信信号の品質が低下して受信SIRが第一の閾値ThAより小さくなると(時刻t2)、SIR監視部124における比較器131の出力がハイレベルとなり、それに伴って、アップ/ダウンカウンタ135が起動され、アップ/ダウンカウンタ135の出力信号がハイレベルとなる。その結果、アンドゲート136、即ち、SIR監視部124から第二の状態(ハイレベル)となる制御信号が出力される。
このようにSIR監視部124から出力される制御信号が第二の状態となると、徐々上げビットパターン生成部125が起動されると共に、スイッチ126がこの徐々上げビットパターン生成部125を送信電力制御部123に接続する状態に切換わる。それにより、送信電力制御部123は、徐々上げビットパターン生成部125からの徐々上げビットパターンに基づいて無線送信部122の送信電力制御を行う。
上記徐々上げビットパターンが、例えば、(11101110111)となる場合、所定周期で3回の所定量(例えば、1dB)増加と1回の所定量減少とが交互になされることによって、送信電力は徐々に上昇する。その過程で、移動局100から送信される送信電力制御ビットの基地局200での受信品質が改善されると、基地局200では、移動局100にて生成された送信電力制御ビットに基づいた正常な送信電力制御を行うようになる。
このように移動局100において、基地局200からの送信電力制御ビットに係わらず、徐々上げビットパターンに基づいた送信電力の自律的な制御がなされることにより、移動局100のSIR測定部115で測定される受信SIRが、図13の点線で示すように更に低下する異常な挙動を示すことなく、徐々に上昇し、時刻t3で上記第一の閾値ThA以上になると、SIR監視部124における比較器131の出力がローレベルに立ち下がる。それにより、SIR監視部124からの制御信号が第一の状態(ローレベル)に切換わる。すると、スイッチ126が送信電力制御ビット抽出部119を送信電力制御部123に接続する状態に切換わり、送信電力制御部123は、上述した正常時と同様に、送信電力制御ビット抽出部119にて抽出された基地局200から送信される送信電力制御ビット(00111000011…)に基づいて無線送信部122の送信電力制御を行う。
移動局100では、目標SIRが受信される情報の品質(FER)に基づいて制御されている(アウターループ制御)。このため、受信SIRの絶対値だけを監視していても、必ずしもその受信SIRの異常を検出することができない。このため、この例では、更に、目標SIRから受信SIRを減算して得られるSIR差分値ΔSIRと第二の閾値ThBと比較し、その比較結果に基づいて、送信電力制御を行っている。
即ち、受信SIRが第一の閾値ThA以上となる状態であっても、SIR差分値ΔSIRが第二の閾値ThB以上になると、SIR監視部124の比較器132の出力がハイレベルとなり、前述したのと同様に、SIR監視部124から第二の状態(ハイレベル)となる制御信号が出力される。この第二の状態となる制御信号により、上述したのと同様に、徐々上げビットパターンに基づいた送信電力の自律的な制御がなされる。
また、上記のように徐々上げビットパターンに基づいた送信電力の自律的な制御がなされている過程で、受信SIRがなかなか改善されない場合、当該受信SIRが第一の閾値ThA以上となる前にSIR監視部124におけるアップ/ダウンカウンタ135の計数値が所定値Nに達してしまう。即ち、送信電力の上昇量が上限に達してしまう。すると、アップ/ダウンカウンタ135からの出力信号がローレベルに立下り、SIR監視部124からの制御信号が第一の状態に切換わる。これにより、上記のような徐々上げビットパターンに基づいた送信電力の自律的な制御が中断され、基地局200からの送信電力制御ビットに基づいた通常の送信電力制御が行なわれるようになる。
このように、徐々上げビットパターンの各ビットの値に応じてアップカウント及びダウンカウントを行うアップ/ダウンカウンタ135の計数値が所定値Nに達したときに、その徐々上げビットパターンに基づいた送信電力の自律的な制御を中断することにより、受信SIRの改善の見込みがない状態での無駄な送信電力の上昇を防止することができる。
上述したような移動局100での送信電力制御によれば、受信SIRに基づいて生成される送信電力制御ビットを基地局200に送信していいるにも係わらず、その受信SIRの改善がなされない場合に、移動局100での送信電力を徐々に上昇させるようにしているので、基地局200にて受信される送信電力制御ビットの品質を改善することができるようになる。その基地局200での受信送信電力制御ビットの品質の改善により、基地局200での送信電力制御が正常に行なわれるようになり、移動局100にて測定される受信SIRが連続して所定の品質(目標SIR)より低下することが防止されるようになる。
上述した第一の閾値ThA及び第二の閾値THBは、移動通信システムにおける実際の通信状況等に基づいて実験的に求められた適当な値に設定される。また、アップ/ダウンカウンタ135に設定される送信電力の上昇量の上限に対応した所定値Nは、受信SIRの改善特性や無駄のない電力制御などの兼ね合いなどに基づいて定められる。
なお、上記例では、受信SIRと第一の閾値ThAとの比較結果及びSIR差分値ΔSIRと第二の閾値ThBとの比較結果に基づいて受信SIRが正常であるか否かを判定しているが、いずれか一方の比較結果に基づいて受信SIRが正常か否かを判定することもできる。特に、目標SIRを固定値として送信電力制御を行う場合、上記両比較結果のいずれか一方に基づいて受信SIRの正常性を判定すればよい。
閾値を用いて受信SIRの正常性を判定する手法は、上述した例に限られず、正常から異常に移行する際の閾値と、異常から正常に復帰する際の閾値を別にすることもできる。また、閾値で区別される状態(正常状態または異常状態)が所定時間継続したときに、その状態であることの最終判定を行うようにしてもよい。更に、閾値を用いた他の一般的な判定手法を用いることができる。
上記の例では、徐々上げビットパターンにより、電力増加及び電力減少を組み合わせて送信電力が徐々に上昇するようにしているが、電力増加と電力を維持するという制御状態を用いて、送信電力を徐々に上昇させることもできる。
上記例では、受信SIRが改善されるまで送信電力を徐々に上昇させるようにしているが、受信SIRが異常であると判定されたときに、送信電力を所定量だけ一気に上昇させ、その状態を維持して受信SIRが所定時間内に改善されるか否かを判定することもできる。この場合、その所定時間内に受信SIRがある状態まで改善された場合は、通常の送信電力制御に戻す。なお、この場合、受信SIRが改善されないまま比較的高い送信電力値を維持することによる無駄な制御が行なわれることを防止するという観点から、受信SIRがある状態まで改善されないまま上記所定時間が経過した場合には、通常の送信電力制御に戻すこともできる。
また、上記例では、徐々上げビットパターンに基づいた送信電力の自律的な制御を行っている過程で、その上昇量が上限に達したとき(アップ/ダウンカウンタ135の計数値が所定値Nに達したとき)に送信電力制御ビットに基づいた通常の送信電力制御に戻すようにしているが、その時点での送信電力値に固定するようにすることもできる。
上記SIR監視部124にて用いられる受信SIRは、上記例では、例えば、各スロット毎に測定される値を用いたが、複数スロットに渡って平均化した値を用いることもできる。
また、移動局100がソフトハンドオーバにより複数の基地局と無線接続される場合、各基地局から受信信号を合成した合成受信信号に対する受信SIRに基づいて上述した送信電力制御を行うことができる。
上述した送信電力制御は移動局100でなされるようにしたが、基地局100でなされるようにしてもよい。
上記例において、SIR監視部124は、品質判定手順(手段)に対応し、徐々上げビットパターン生成部125及びスイッチ126は、自律制御手順(手段)に対応する。
図12に示す比較器131は、第一の閾値判定手順(手段)に対応し、減算器132は差分値演算手順(手段)に対応し、比較器133は、第二の閾値判定手順(手段)に対応する。
徐々上げビットパターン生成部125は、自律送信電力制御情報を生成する手順(手段)に対応し、スイッチ126は、制御切換え手順(手段)に対応する。また、図12に示すアップ/ダウンカウンタ135は、判定手順(手段)に対応し、アンドゲート136は、自律制御停止手順(手段)に対応する。
[実施例3]
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明の実施の一形態に係る送信電力制御方法が適用される移動通信システムは、前述した移動通信システムと同様、図10に示すように構成される。
図10において、移動局100と基地局200とが、CDMA方式に従って信号(パケット、制御信号、音声信号など)の送受信を行う。移動局100は、送受信装置110、信号処理部150及びユーザインタフェース160を有する。また、基地局200は、送受信装置210及び信号処理部220を有する。
移動局100のユーザインタフェース160にてユーザから入力された情報(音声、文書、画像等)は、信号処理部150にて所定の形式の信号となるように処理される。信号処理部150からの信号は、送受信装置110に供給され、符号化処理、変調処理等の所定の処理が施される。そして、その処理により得られた信号が送受信装置110から基地局200に送信される。
移動局100からの信号を受信した基地局200の送受信装置210は、その受信信号に対して復調処理、復号処理等の所定の処理を施す。そして、送受信装置210にて生成された信号が信号処理部220にてネットワーク上を伝送可能な形式に変換され、その信号が信号処理部220からネットワークを介して通信相手の端末に送信される。
基地局200において、ネットワークから供給される信号は、信号処理部220にて所定の形式となるように処理される。この信号処理部220からの信号は、送受信装置210に供給され、符号化処理、変調処理等の所定の処理が施される。その処理により得られた信号が送受信装置210から移動局100に送信される。
基地局200からの信号を受信した移動局100の送受信装置110は、その受信信号に対して復調処理、復号処理等の所定の処理を施す。そして、送受信装置110で生成された信号が信号処理部150にてユーザインタフェース160で処理可能な形式に変換され、その信号に基づいてユーザインタフェース160からユーザに対して情報(音声、文書(メール)、画像等)の提示がなされる。
移動局100の送受信装置110は、通常、基地局200から送信される送信電力制御ビット(電力増加または電力減少を表す送信電力制御情報)に基づいて送信電力制御(上り回線送信電力制御)を行う。基地局200の送受信装置210も、移動局100から送信される送信電力制御ビットに基づいて送信電力制御(下り回線送信電力制御)を行う。
移動局100の送受信装置110は、例えば、図14に示すように構成される。
図14において、この送受信装置110は、送受分離部111を共用した送信系と受信系とを有している。受信系は、無線受信部112、誤り訂正復号/誤り検出部113、誤り率測定部114、SIR測定部115、SIR比較部116、目標SIR決定部117、送信電力制御ビット決定部118及び送信電力制御ビット抽出部119を有している。
基地局200から送信される信号が送受分離部111を介して無線受信部112に供給される。この無線受信部112は、送受分離部111から供給される受信信号に対して逆拡散処理及び復調処理を施してベースバンド信号を生成する。後述するように、上記受信信号は、基地局200から送信される情報データに対応したデータ信号と送信電力制御ビットに対応した制御信号とを含んでおり、その制御信号に対する復調処理にて得られたベースバンド信号は、送信電力制御ビット抽出部119に供給される。送信電力制御ビット抽出部119は、そのベースバンド信号から送信電力制御ビットを復元する。
無線受信部112による上記データ信号に対する復調処理にて得られたベースバンド信号は、誤り訂正復号/誤り検出部113に供給され、フレーム単位に誤り訂正復号がなされると共に、例えば、CRC(cycle redundancy check)の手法に従って伝送誤りの有無の検出がなされる。その復号結果が情報出力として当該送受信装置110から信号処理部150(図10参照)に供給される。この誤り訂正復号/誤り検出部113は、更に、フレーム単位毎に上記伝送誤りの有無を表す誤り検出結果を出力する。
誤り率測定部114は、上記誤り訂正復号/誤り検出部113からの誤り検出結果に基づいて、フレーム誤り率(FER:Frame Error Rate)を受信信号(希望波)から復元した情報の受信品質として演算する。
SIR測定部115は、無線受信部112にて得られた受信信号に基づいて受信SIR(希望波対干渉波及び雑音電力比)を演算する。この演算周期は、データのフレーム周期より短い。目標SIR決定部117は、誤り率測定部114から出力される情報の受信品質(FER)が目標品質となるように、目標SIRを決定する。具体的には、この目標SIR決定部117は、情報の受信品質が目標品質より低ければ、目標SIRの値を高くし、情報の受信品質が目標品質より高ければ、目標SIRの値を低くするような制御(アウターループ制御)を行う。SIR比較部116は、上記SIR測定部115からの受信SIRと目標SIR決定部117からの目標SIRとを比較し、その比較結果を出力する。
送信電力制御ビット決定部118は、SIR比較部116からの比較結果に基づいて、基地局200での送信電力制御に用いられるべき送信電力制御ビットを決定する(インナーループ制御)。受信SIRが目標SIRより小さい場合、希望波の受信レベルが低いとして、送信電力制御ビットが送信電力を増加させるべき値(例えば、「1」)に決定される。一方、受信SIRが目標SIRより大きい場合、希望波の受信レベルが高いとして、送信電力制御ビットが送信電力を低減させるべき値(例えば、「0」)に決定される。このように値の決定された送信電力制御ビットは、送信電力制御ビット決定部118から後述するような送信系の無線送信部122に供給され、基地局200に伝送される。
上記のような構成の受信系は、更に、同期状態判定部130及び閉ループ制御開始タイミング決定部135を有している。
移動局100は、基地局200に伝送すべきデータを送信するための実質的な上り回線通信を開始する前に、基地局200との間で所定のフォーマットとなる信号の送受信を行って同期をとるための処理を行う。この同期をとるための処理では、無線受信部112は、基地局200からの信号に基づいて同期引き込みを行い、その同期引き込みにより同期を確立させる。
上記同期状態判定部130は、無線受信部112での同期引き込みの状態を監視し、同期(上り同期)が確立されたか否かを判定する。この同期が確立されたことが判定されると、同期状態判定部130は、同期確立信号を出力する。また、上記閉ループ制御開始タイミング決定部135は、タイマ機能を有し、上記同期をとるための処理の過程で、当該送受信装置110の送信電力制御を行うために用いられるべき送信電力制御情報を切換えるための切換え制御信号を出力する。なお、この閉ループ制御開始タイミング決定部135の機能の詳細は、後述する。
移動局100の送信系では、前述したように信号処理部150(図10参照)から供給される情報に対して所定の処理、例えば、CRCの手法に従って誤り検出用のパリティビットをフレーム単位に付加する処理、このような処理により得られたフレーム単位のパリティ付きデータの誤り訂正符号化を行う処理等がなされる。このようにして得られた符号化データは、無線送信部122に供給される。
無線送信部122は、上記のように供給される符号化データに対して変調処理を行ってデータ変調信号を生成する。また、無線送信部122は、前述したように送信電力制御ビット決定部118から供給される送信電力制御ビットに対して変調処理を行って制御ビット変調信号を生成し、この制御ビット変調信号と上記データ変調信号とを多重化する。そして、所定の拡散コードを用いてその多重化された信号の拡散処理がなされる。無線送信部122は、その拡散処理にて得られた信号を、送受分離部111を介して送信する。
この移動局100における送受信装置110の送信系は、更に、送信電力制御部123、徐々上げビットパターン生成部125、スイッチ126及び送信開始/停止制御部127を有している。
送信電力制御部123は、スイッチ126を介して供給される送信電力制御ビット抽出部119にて抽出された基地局200からの送信電力制御ビットまたは徐々上げビットパターン生成部125にて生成される送信電力制御ビット(以下、徐々上げビットパターンという)に基づいて無線送信部122での送信電力を制御する。徐々上げビットパターン生成部125にて生成される徐々上げビットパターンは、連続して電力増加を表す送信電力制御ビット(1,1,1,1,…)に基づいて制御される送信電力の変化より緩やかに変化する特性にて送信電力を上昇させるように制御するための送信電力制御ビットとなる。この徐々上げビットパターンは、例えば、電力増加を表す連続した2つのビット「1」と電力減少を表す1つのビット「0」が繰り返し配列されるパターン(1,1,0,1,1,0,1,1,0,…)となる。
前述したように、同期状態判定部130から同期確立信号が出力されると、送信開始/停止制御部127は、無線送信部122に基地局100での同期処理に必要な所定フォーマットの信号の送信を開始させる。送信開始/停止制御部127は、無線送信部122に上記所定フォーマットの信号の送信を開始させる際に、送信開始信号(1)を出力する。閉ループ制御開始タイミング決定部135は、送信開始/停止制御部127からの送信開始信号(1)により起動されるタイマを有している。この閉ループ制御開始タイミング決定部135は、上記タイマでの計測時間が所定時間に達したか否かを判定し、その計測時間が所定時間に達すると、切換え制御信号を出力する。
当該移動局100が基地局200に対する情報データの伝送を開始する前では、スイッチ126は、通常、送信電力制御部123を徐々上げビットパターン生成部125に接続する状態となる。この状態において、電力制御部123は、徐々上げビットパターン生成部125からの徐々上げビットパターンに基づいて無線送信部122の送信電力制御を行う。上記閉ループ制御開始タイミング決定部135から切換え制御信号が出力されると、スイッチ126は、送信電力制御部123を送信電力制御ビット抽出部119に接続する状態に切替わる。この状態において、電力制御部123は、送信電力制御ビット抽出部119にて抽出される基地局200からの送信電力制御ビットに基づいて無線送信部122の送信電力制御を行う(閉ループ制御)。
なお、基地局200の送受信装置210は、移動局100の送受信装置110と同様に、移動局100からの受信信号に対する受信SIRに基づいて送信電力制御ビットを決定し、その送信電力制御ビットを移動局100に送信する。また、基地局200の送受信装置210は、移動局100からの送信電力制御ビットに従って送信電力の制御を行う。
上記のような構成の移動通信システムにおいて、基地局200と移動局100との間で情報データの伝送が開始される前に、従来のシステムと同様に、基地局200と移動局100は、共通制御チャネルを用いて種々の情報の送受信を行い、その後、上記各種の情報に基づいて決められた個別チャネル(拡散符号チャネル)を用いて所定フォーマットとなる信号の送受信を行って、同期をとるための処理を行う。この同期をとるための処理の基本的な手順は、図21に示すものと同様である。
このような同期をとるための処理の過程で、移動局100での同期が確立すると(図21に示す(3))、送受信装置110の同期状態判定部130から出力される同期確立信号に基づいた送信開始/停止制御部127の制御により、無線送信部122から所定フォーマットの信号の送信が開始される(図21に示す(4))。そして、その信号に対する送信電力制御が、例えば、図15に示すようになされる。この送信電力制御の開始と同時に、上記同期状態判定部130からの送信開始信号(1)により閉ループ制御開始タイミング決定部135のタイマが起動される。
なお、基地局200は、当初、移動局100からの送信を受信していない状態で、下り送信を開始しなければならないので(図21に示す(1)参照)、例えば、従来のシステムと同様に、連続的に電力増加を表すパターンの送信電力制御ビット(1,1,1,1,…)を送信する。
図15において、移動局100での同期が確立して、時刻t1から所定フォーマットの信号が無線送信部122から送信される際に、徐々上げビットパターン生成部125からの徐々上げビットパターン(1,1,01,1,0,…)がスイッチ126を介して送信電力制御部123に供給される。送信電力制御部123は、その徐々上げビットパターンに従って、無線送信部122の送信電力を、例えば、伝搬損失等に基づいて決められた初期値P0から順次上昇させる。この場合、送信電力の上昇特性は、基地局200からの送信電力制御ビット(1,1,1,1,…)に従った送信電力の変化(二点鎖線参照)より緩やかに変化するものである。
このように送信電力が徐々に上昇されつつ無線送信部122から上記所定の信号が送信される過程で、その信号に基づいて基地局200で同期引き込みがなされ(図21に示す(5))、例えば、時刻t21において基地局200での同期が確立すると、基地局200は、上記のような連続的な電力増加を表す送信電力制御ビット(1,1,1,1,…)に代えて、移動局100からの信号に対する受信SIRに基づいて決定される送信電力制御ビットの出力を開始する。
上記基地局200での同期が確立する時刻t21では、まだ、閉ループ制御開始タイミング決定部135は、タイマでの計測時間が所定時間(自律制御期間Ts)に達したと判定しないので、電力制御部123は、徐々上げビットパターンに従った送信電力制御を継続する。そして、時刻t3において、閉ループ制御開始タイミング決定部135にてタイマでの計測時間が所定時間に達したと判定されると、閉ループ制御開始タイミング決定部135から切換え制御信号が出力される。この切換え制御信号により、スイッチ126が、送信電力制御部123を送信電力制御ビット抽出部119に接続する状態に切替わる。以後、当該移動局100からの信号の受信SIRに基づいて決定される基地局200からの送信電力制御ビットに従って無線送信部122の送信電力制御(閉ループ制御)がなされる。
このような基地局200からの送信電力制御ビットに従って無線送信部122の送信電力が制御されることにより、上記時刻t3以後の送信電力は、徐々に低下し、基地局200での受信SIRが目標SIRに維持され得る適正な値に維持されるようになる。このような状態において、所定のタイミングにて、移動局100の送受信装置110は、伝送すべきデータを含めた信号を送信するための実質的な上り回線通信を開始する。
上述したような基地局200と移動局100との間で情報データの伝送が開始される前における移動局100での送信電力制御によれば、移動局100での同期が確立した後に、当該移動局100から信号を送信する際に徐々上げビットパターン(1,1,0,1,1,0,…)に従って送信電力の制御がなされるので、送信電力が、従来のシステムのように急激に上昇することが防止される。また、このような徐々上げビットパターンに従った送信電力制御であっても、基地局200での受信品質(受信SIR)が所望の品質(目標SIR)に維持できる程度の送信電力値には比較的早期に達するので、基地局200での同期も比較的早期に確立することができる。
上記閉ループ制御開始タイミング決定部135のタイマに設定される所定時間は、上記徐々上げビットに従った送信電力制御がなされつつ移動局100から送信される信号に基づいて基地局200で同期の確立に要すると予想される時間に基づいて決められる。通常、その所定時間は、その予想される時間より僅かに長い時間に設定される。しかし、移動局100と基地局200との間の伝送路の状態によっては、基地局200での同期の確立に上記所定時間より長い時間を要してしまう場合がある。
このような場合、図15に示すように、徐々上げビットパターンに従った送信電力制御から基地局200からの送信電力制御ビットに従った送信電力に切換えられる時刻t3から基地局200での同期が実際に確立される時刻t22までの間は、基地局200からの連続して電力増加を表す送信電力制御ビット(1,1,1,1,…)に従って送信電力制御がなされる。この場合、時刻t3から時刻t22まで、送信電力は上昇するが、通常は、時刻t3と時刻t22との間の時間は僅かであるので、移動局100で費やされる送信電力の増分も比較的少なくて済む(図15における点線で示す特性参照)。
一方、時刻t3から時刻t22との間の時間が長くなる場合は、基地局100と移動局200との間の伝送路の状態が極めて良くない状態である。このような状態では、基地局200での同期を確立するために、本来、移動局100の送信電力を十分大きな値に制御しなければならないので、この時刻t3と時刻t22の間でなされる連続して電力増加を表す送信電力制御ビットに従った送信電力制御は、無駄なものではない。
上記閉ループ制御開始タイミング決定部135は、例えば、図16に示す手順に従って送信電力制御を切換えるための切換え制御信号を出力することもできる。この例では、図14に示すように、閉ループ制御開始タイミング決定部135は、上記送信開始/停止制御部127からの送信開始信号(1)と共に、送信電力制御ビット抽出部119にて抽出される基地局200からの送信電力制御ビット(2)の状態に基づいて送信電力制御の切換えタイミングを決定している。
また、閉ループ制御開始タイミング決定部135による図16に示す手順に従った処理により、移動局200の無線送信部122の送信電力は、例えば、図17に示すように変化する。
図16において、上記送信開始信号(1)に基づいて無線送信部122から基地局200での同期を確立するために用いられる信号の送信の開始(上り送信開始:図21に示す(4)参照)が認識されると(S1)、タイマTが起動される(S2)。そして、そのタイマTでの計測時間が所定時間T0に達したか否かが判定される(S3)。このタイマTの計測時間が所定時間T0に達していない状態(S3でNO)では、前述した例と同様に、送信電力制御部123は、徐々上げビットパターン生成部125からの徐々上げビットパターンに従って無線送信部122の送信電力を制御する。その結果、無線送信部122の送信電力は、上記徐々上げビットパターンに従って比較的緩やかな特性にて徐々に上昇する。
このような状態で、例えば、図17に示す時刻t2において、上記タイマTの計測時間が所定時間T0に達すると、カウンタnがゼロにリセットされ(S4)、その後、そのカウンタnが+1だけインクリメントされる(S5)。そして、閉ループ制御開始タイミング決定部135は、送信電力制御ビット抽出部119にて抽出された基地局200からの単一の送信電力制御ビットの値Bn(1または0であり、以下、TPCビット値という)を取得する(S6)。そして、そのTPCビット値Bnを用いて、移動平均値Anが
カウンタ値nが所定値n0に達するまで(S8参照)、カウンタnのインクリメント(S5)、TPCビット値Bnの取得(S6)、移動平均値Anの演算(S7)が繰り返し実行される。そして、カウンタ値nが所定値n0に達すると(S8でYES)、その時点で得られる移動平均値Anは、連続するn0個のTPCビット値B1〜Bn0の平均値となる。TPCビット値は、1または0であり、その移動平均値Anは、その平均値演算(上記式(1)参照)に供される1となるTPCビット値の数と0となるTPCビット値の数の割合を反映させた値となる。
即ち、基地局200で同期が確立していない状態では、全て「1」となる送信電力制御ビットが基地局200から出力されるので、その移動平均値Anは、理想的には1となる。一方、基地局200での同期が確立した直後では、移動局200からの信号の受信品質(受信SIR)に基づいて決定される送信電力制御ビットが基地局200から出力されるので、TPCビット値Bnは0となる割合が高くなり、その移動平均値Anは、1より小さくなる。
従って、上記のようにカウンタ値nが所定値n0を超えると、TPCビット値Bnの移動平均値Anが基準値α(0<α<1)以下であるか否かが判定される(S9)。そして、その移動平均値Anがその基準値α以下となるまで、取得されるTPCビット値Bnを用いて移動平均値Anが演算される(S6、S7)。
そのような処理(S5、S6、S7、S8、S9)を繰り返し実行する過程で、例えば、図17に示す時刻t3で基地局200での同期が確立すると、それ以後、基地局200から0となる送信電力制御ビットが送信される頻度が高くなり、図17に示す時刻t4で、その移動平均値Anが基準値α以下になると(S9でYES)、閉ループ制御開始タイミング決定部135は、切換え制御信号を出力する(S10)。
この切換え制御信号によりスイッチ126は、送信電力制御部123に送信電力制御ビット抽出部119を接続する状態となり、送信電力制御部123は、送信電力制御ビット抽出部119にて抽出される基地局200からの送信電力制御ビットに基づいて無線送信部122の送信電力制御を行う。従って、図17に示す時刻t4以降では、無線送信部122の送信電力は順次低下し、移動局100の基地局200での受信SIRが目標SIRに維持できる程度の送信電力値に制御されるようになる。
上記の例では、基地局200での同期が確立する前には、当該基地局200から全て「1」となる送信電力制御ビットが送信され、同期が確立した後には、当該基地局200から移動局100からの信号の受信品質(受信SIR)に基づいて決定された送信電力制御ビット(閉ループ送信電力制御ビット)が送信されることを利用し、閉ループ制御開始タイミング決定部135が基地局200での同期が確立したか否かを判定している。即ち、閉ループ制御開始タイミング決定部135は、基地局200から送信される送信電力制御ビットが、全て「1」となるパターンから「0」と「1」が混在するパターンに変わったことを検出することにより、基地局200での同期が確立したことを検出する。
また、上記のように基地局200から1となる送信電力制御ビットの数と0となる送信電力制御ビットの数との割合に基づいて、徐々上げパターンに従った送信電力の終了タイミングを判定するだけでなく、0となる送信電力制御ビットの所定の期間の累計値に基づいて判定することもできる。
なお、図17において、時刻t2から時刻t4までの時間が、図16に示すS5〜S9の処理を繰り返し実行している期間(監視期間Tw)となる。この監視期間Twでは、基地局200からの送信電力制御ビットが監視されると共に、徐々上げビットパターンに従って無線送信機122の送信電力制御が行なわれる。
また、上記基地局200からの送信電力制御ビットの監視は、移動局100からの信号の送信が開始された時刻t2から開始することもできる。しかし、上記例では、移動局100からの信号の送信が開始された時刻t2から所定時間T0は、上述したような送信電力制御の監視がなされない。このため、この期間で、送信電力制御ビットの受信誤りがあっても、その誤りビットは上記監視の対象にはならない。送信電力制御ビットのパターンの変化が見込まれる期間だけ当該送信電力ビットの監視を行えばよいので、移動局100での処理の負担が低減される。
移動局100の送受信装置110は、例えば、図18に示すように構成することもできる。この例では、移動局100での同期が確立して当該移動局100から所定フォーマットの信号を基地局200に送信する際に、基地局200から送信される送信電力制御ビットに基づいてこの送信電力制御ビットによる送信電力の変化より緩やかに変化する特性に従って送信電力を制御するための送信電力制御情報(以下、1/N送信電力制御ビットという)を生成する。そして、その1/N送信電力制御ビットに従って移動局100の送信電力を制御するようにしている。なお、図18において、図14と同様の部位には同じ参照番号が付されている。
図18において、この送受信装置110は、前述した例と同様に、送受分離部111を共用する受信系及び送信系を有する。当該受信系は、前述した例と同様に、無線受信部112、誤り訂正復号/誤り検出部113、誤り率測定部114、SIR測定部115、SIR比較部116、目標SIR決定部117、送信電力制御ビット決定部118、送信電力制御ビット抽出部119及び同期状態判定部130を有している。また、上記送信系は、前述した例と同様に、無線送信部122及び送信開始/停止制御部127を有している。
送信系は、更に、送信電力制御部123a、1/N送信電力制御部123b、制御切換えスイッチ128を有している。制御切換えスイッチ128は、所定の制御部(図示略)からの切換え制御信号によって、無線送信部122を1/N送信電力制御部123bに接続する状態から、無線送信部122を送信電力制御部123aに接続する状態に切替わる。送信電力制御部123aは、送信電力制御ビット抽出部119にて抽出される基地局200からの送信電力制御ビットがスイッチ128を介して供給されると、その送信電力制御ビットに基づいて無線送信部122の電力制御を行う。各送信電力制御ビットは、1スロットに割当てられており、送信電力制御部123aは、その送信電力制御ビットに従って、無線送信部122の送信電力をスロット毎に更新する。
1/N送信電力制御部123bは、送信電力制御ビット抽出部119にて抽出される基地局200からの送信電力制御ビットをNビット(例えば、3ビット)ずつ走査し、その中で最も多い値となる代表ビット(以下、1/N送信電力制御ビットという)を決める。そして、1/N送信電力制御部123bは、その1/N送信電力制御ビットに従ってNスロット毎に無線送信部の送信電力を更新する。
例えば、図19に示すように、移動局100での同期が確立し、無線送信部122から所定フォーマットの信号の送信が時刻t1で開始されると、1/N送信電力制御部123bが、送信電力制御ビットから生成される1/N送信電力制御ビットに基づいて無線送信部122の送信電力を初期値から、3スロット(N=3)毎に更新する。
例えば、図19に示すように、送信電力制御ビットが、
111111101111101111100000001110011
となる場合、
1/N送信電力制御ビットは、
・1・・1・・1・・1・・1・・1・・0・・0・・0・・1・・1…
となる。
このような1/N送信電力制御ビットに基づいて3スロット毎に更新されるように制御される送信電力は、元の送信電力制御ビットに基づいて各スロット毎に更新されるように制御される送信電力より緩やかに変化する(図19における点線の特性、及び実線の特性参照)。従って、無駄な電力消費を行うことなく、基地局200での同期を確立させることができるようになる。
このように送信電力制御がなされつつ移動局100から送信される信号に基づいて、例えば、図19に示す時刻t2において、基地局200での同期が確立すると、以後、基地局200は、移動局100からの信号の受信品質(受信SIR)に基づいて決められる送信電力制御ビットを送信する。
移動局100では、1/N送信電力制御部123bが、送信電力制御ビット抽出部119にて抽出される上記送信電力制御ビットから前述した手法に従って1/N送信電力制御ビットを決定し、その1/N送信電力制御ビットに基づいて上記と同様の送信電力制御を継続する。そして、予め定めた所定のタイミングになると(図19における時刻t3)、所定の制御部からの切換え制御信号により、制御切換えスイッチ128は、無線送信部122を送信電力制御部123aに接続する状態に切替わる。
それにより、送信電力制御部123aは、送信電力制御ビット抽出部119にて抽出される基地局200からの送信電力制御ビットに基づいて無線送信部122の送信電力をスロット毎に更新する。
基地局200での同期が確立した後(時刻t2以後)、移動局100からの信号の基地局200での受信品質(受信SIR)が安定してくると、その受信信号品質と目標品質との差に基づいて決定される送信電力制御ビットに従った送信電力制御後の送信電力の変動幅は比較的小さいものとなる。このような状態では、基地局200からの送信電力制御ビットに基づいて各スロット毎に更新される送信電力の変動と、1/N送信電力制御ビットに基づいて3スロット毎に更新される送信電力の変動との差は大きくならない(図19における時刻t2以降の実線及び破線の変動参照)。従って、上記1/N送信電力制御ビットに基づいた送信電力制御から元の送信電力制御ビットに基づいた送信電力制御への切換えタイミング(時刻t3)は、比較的ラフに、かつ遅目に設定することができる。
上記例では、送信電力制御ビットをNビットずつ走査して、その中で最も多い値となるビットを1/N送信電力制御ビットとして決めているが、そのNビット毎の平均値等に基づいて決めることもできる。
上記各例において、徐々上げビットパターンに従った送信電力制御は、自律制御手順(手段)に対応し、閉ループ制御開始タイミング決定部135は、自律制御停止条件判定手順(手段)に対応し、スイッチ126は、制御切換え手順(手段)に対応する。
また、図18に示す1/N送信電力制御部123bは、緩特性送信電力制御手順(手段)に対応し、図18に示す切換え制御信号を出力する所定の制御部は、緩特性送信電力制御停止判定手順(手段)に対応し、図18に示す制御切換えスイッチ128は、制御切換え手順(手段)に対応する。