JP2004518357A - 無条件レスキューチャンネル作動のためのオープンループパワー制御の拡張 - Google Patents
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Abstract
レスキュー手続きにおいて、MSのリバースリンク通信の送信機が切断した呼を迅速かつ高い成功率で復帰させるための、有効かつ信頼性の高いパワーレベルを決定する方法および装置が開示される。移動局が接続レスキュー手続きの最中に送信を行うとき、最初にこの移動局の平均受信入力パワーレベルを決定することによって、この移動局の平均レスキュー送信出力パワーレベルが決定される。そしてこの平均受信入力パワーレベルは4つまでのパラメータを用いて調整される。これら4つの変数は(1)プレレスキューパワーデルタ、(2)レスキュー干渉デルタ、(3)レスキュー遅延補償値、および(4)既定値を含む。
Description
関連出願への参照
本発明の実施形態は、2001年1月19日提出の米国仮特許出願番号60/262,689“無条件レスキューチャネル作動のオープンループパワー制御の拡張”に基づいて優先権を主張するものであり、また2001年10月16日提出の米国特許出願番号09/978,974“電気通信システムにおけるフォワードリンクにもとづくレスキューチャネル方法および装置”に関連するものであり、これらの内容は参照によって事実上本明細書に組み込まれる。
【0001】
発明の背景
1. 発明の分野
本発明は通信ネットワーク管理に、一実施形態としては接続レスキュー手続き中における移動局送信機の送信パワーを制御するオープンループパワー制御を利用する方法および装置に関する。
2. 関連技術の説明
イントロダクション
緊急時の通信用途を提供するに留まらず、セルラー電話システムは急速に今日の社会の主たる通信形態となりつつある。セルラー電話の使用が普及するにつれ、セルラー電話ネットワークはますます有力なものとなり、また消費者の要求に応じてより広いエリアのカバーを提供しつつある。図1は、無線のセクタA14およびセクタB16を有する第1の基地局(BS)12と、セクタC20を有する第2のBS18とを含む無線インフラストラクチャーまたはネットワークのサービス下にある地理的領域を移動してまわる、移動ユーザによって操作される移動局(MS)10の一例を表している。この移動の経路において、MS10は位置Aから位置B、位置Cへと移り、そして必然的に通信相手のBSの通信リンクの信号強度や信号品質の変化を体験する。信号の強度と品質は、MS10がセクタA14の点線で規定された領域からセクタB16の点線で規定された領域へ移動するとき、あるいはセクタ16からセクタC20へ移動するときのような、セクタの端近くでは特に頼りないものとなる。接続切れが発生しがちなのは、これらの移行領域や他の弱い信号の強度と品質の領域においてである。ここで記す接続とは、音声、マルチメディアのビデオまたはオーディオのストリーミング、パケット交換データおよび回線交換データ接続、ショートメッセージシーケンスあるいはデータバースト、ならびにページングを含み、かつこれらに限定されない。
【0002】
接続切れは、セルラー電話ユーザに対して迷惑となる程度のものから甚大な被害をもたらすものまで広汎に渡る。例えば、緊急の911の接続切れは重大で、致命的ですらある。接続切れは、消費者がサービスプロバイダを変更する原因となるに足るほどの大きなフラストレーションをもたらし得る。このように、接続切れの防止はセルラー電話ネットワークにとって非常に重要なものである。
【0003】
セルラー電話ネットワーク
図2は、MS24とBS26の間の通信リンク22の一例を表している。BS26からMS24への通信はフォワードリンクと呼ばれ、MS24からBS26への通信はリバースリンクと呼ばれている。BS26は一般的に複数の、典型的には3つのセクタから構成される。それぞれのセクタは別の方向に向けられた分離した送信機とアンテナ(受信機)を有している。セルサイトは統合化されていても区分化されていてもよいので、ここではBSとセクタとはある程度読み替えできるように解されるべきである。フォワードとリバースのリンクはいくつかのフォワードとリバースのチャネルを利用する。例えば、BS26はMSと多数のフォワードの共通チャネルあるいはリンクを用いて通信し、これらは以降で詳細に説明する1つまたは複数のパイロットチャネル、1つの同期チャネル、および1つまたは複数のページングチャネルを含むが、それらに限定されない。BS26はこれらのチャネルをネットワーク中の全てのMSに提供することができるので、これらのチャネルは共通チャネルと呼ばれる。一般的に、これらの共通チャネルはデータの搬送には用いられず、共通情報のブロードキャストや配送に用いられる。
【0004】
BS26内のそれぞれのセクタは、そのセクタを識別するものであり、かつMS24が簡単にデコードできるものである1つのパイロットチャネルをブロードキャストする。セクタとパイロットチャネルの両方は疑似ノイズ(PN)オフセットによって区別される。“パイロット”という単語はセクタという語とほぼ相互に読み替えできるように使用される、というのも1つのパイロットチャネルが1つのセクタを特定するからである。パイロットチャネルは、暗にタイミング情報をMSに提供し、またコヒーレント復調にも用いられるが、それ以外は一般的にデータを含まない。MSは最初にパワーオンとなると、パイロットチャネルの探索を開始する。MSがパイロットチャネルを捕捉する(復調可能になる)と、このパイロットチャネルに暗に存在するタイミング情報によってMSは迅速かつ容易にネットワークにより送信される同期チャネルを復調することができる。
【0005】
同期チャネルはより詳細なタイミング情報を有しているので、MSがこの同期チャネルを捕捉すると、MSはパイロットチャネルを送信しているのと同じBSによって送信されているページングチャネルを捕捉することができる。このBSはアクティブなBSとして知られている。あるセルラーネットワークがある特定のBSを介してMSとの通信を開始しようとしているとき、1つの“ページ”がこのBSのページングチャネルによってMSに送信される。このように、ひとたびMSが特定のBSのページングチャネルを復調することができるようになると、このMSはアイドルで外からの接続やメッセージの待ち受け状態にあるとき、このページングチャネルをモニタすることができる。一般的にそれぞれのBSは、全てのMSが共通して受信することができる1つのパイロットチャネル、1つの同期チャネル、および1つのページングチャネルを利用することができる。しかし、1つのページングチャネルを用いて同時に呼び出されるMSの数には実際上限りがあるので、複数のページングチャネルを使用するBSもある。
【0006】
フォワードの共通チャネルに加え、BS26は個々のMSと、多数のフォワード専用のチャネルあるいはリンクを用いて通信を行い、これらは複数のトラフィックチャネル、複数の付加チャネル、並びに複数のアクセスチャネルと制御チャネルを含むが、それらに限定されない。BSはこれらのチャネルを特定のMS24に提供するので、これらのチャネルは専用チャネルと呼ばれ、またこれらのチャネルはデータを搬送することができる。
【0007】
リバースチャネルは1つのアクセスチャネルおよび1つまたは複数のリバースのトラフィックチャネルと制御チャネルを有することができる。MSがBSからのページ呼び出しを受信すると、MSは1つのアクセスチャネル等を用いて接続のセットアップを開始する。
【0008】
これまでに説明したチャネルは異なるコーディングの方式を使用してもよい。時分割多元接続(TDMA)では、複数のチャネルが特定の1つの周波数のある時間ウインドウの中で、このウインドウ内の異なる時間にそれら複数のチャネルを送信することで提供される。このようにして、例えば、チャネルXが1セットのタイムスロットを使用中にチャネルYが別のセットのタイムスロットを使用することができる。周波数分割多元接続(FDMA)では、複数のチャネルが特定の時刻のある周波数ウィンドウの中で、このウィンドウ内の異なる周波数でそれら複数のチャネルの送信を行うことで提供される。
【0009】
符号分割多元接続(CDMA)は独自の符号列を用いて複数のチャネルを生成するスペクトラム拡散多元接続デジタル通信技術である。これによって、複数のMSが1つまたは複数の隣接するセルサイトのBSと、同時に同じ周波数で通信を行うことができる。CDMAでは、ある周波数と時間の領域において、それぞれのチャネルに特定のWalsh符号や疑似直交関数(QOF)のような直交符号が割り当てられる。ダイレクトシーケンスCDMAにおいては、それぞれのチャネルからのデータはWalsh符号あるいはQOFで符号化され、そしてそれらは合成されて1つの合成信号となる。この合成信号は特定の1つの時刻に広範囲の周波数帯に渡って拡散される。
【0010】
この合成信号がオリジナルのデータの拡散に用いられたのと同じ符号を使用して逆拡散されると、このオリジナルのデータが取り出される。このオリジナルデータの回復は、Walsh符号とQOFが、合成されたときにお互いに干渉しない符号化データを生成することにより可能となり、そのため後の時点においてこのデータが分離されて様々なチャネルにおける情報を回復させることができる。言い換えれば、2つの符号化されたデータ列が互いに足し合わさり3番目の系列を生成した場合、この3番目の系列にオリジナルの系列を相関させることにより、オリジナルの系列を回復することができる。特定の符号で復調する場合、他の符号を知る必要はない。
【0011】
CDMAシステムにおいては、信号は高レベルの狭帯域あるいは広帯域の干渉が存在する中で受信されることがある。現実的な信号受信の限界はチャネルの状況や干渉のレベルに依存する。干渉のタイプとしては、信号がマルチパスチャネルを介して伝搬したときに発生したもの、同一のまたは別のセルサイトにおいて他のユーザへ、または他のユーザから送信された信号、およびこの装置すなわちMSによって発生した自己干渉あるいはノイズがある。しかし、何が実際に送信されたかを決定するために、このフィールドにおけるノイズと干渉のエラー訂正が必要かもしれない。
【0012】
CDMA無線通信システムはすべて2500 Wilson Blvd.、Arlington、VA 22201、のTELECOMMUNICATIONS INDUSTRY ASSOCIATIONの規格技術部から発行され、またすべてここで参照として取り入れられた以下の規格、すなわち1993年発行のTIA/EIA−95A、1999年2月1日発行のTIA/EIA−95B2000年3月1日発行のTIA/EIA/IS−2000、1−5巻、リリースA、2001年6月1日発行のTIA/EIA−98D、WCDMA規格で2001年9月発行の3GPP TS 25.214 V4.2.0、2001年9月発行のTS 25.401 V5.1.0、2001年10月8日発行のTS 25.331 V4.2.0、および2001年10月2日発行のTR25.922 V4.1.0に十分に記載されている。
【0013】
以上あるCDMAシステムの一例を参照して説明したように、直交符号は特定のチャネルの符号化に用いることができる。例えば、上述したデコードが簡単なパイロットチャネルには固定で、全1符号W0 Walshコードのような既知の符号を用いることができる。同じように、同期チャネルは極性交換W32 Walshコードを用いてもよい。トラフィックチャネルのようなチャネルの定義に用いられる直交符号に加え、例えば自分がアンスクランブルすることができるトラフィックチャネルのデータのみをMSが読むことができるように、プライバシースクランブルを追加してもよい。
【0014】
個々のMSはBSのセクタを様々なセットにグループ化するが、これらのセットは以降で詳細に説明するアクティブセット、ネイバーセット、候補セット、残存セットを含み、かつこれらに限定されない。
【0015】
MSアクティブセットは、任意の時点においてMSと通信するBSセクタに関するパイロットのPNオフセット識別子を有する。ただし、ここで説明の簡単化のために、MSアクティブセットは“パイロット”を有していると認識されることを記しておく。このように、MSがアイドル状態であるが、1つのBSについてページ呼び出しとオーバーヘッド更新をモニタしているとき、このMSのアクティブセットはこのBSパイロットのPNオフセット識別子を唯一の構成要素として有する。しかし、MSが1つのBSあるいはセクタから他へハンドオフされ、そしてこのハンドオフの間に実際に複数のBSあるいはセクタと同時に通信できる時があり得る。例えば“ソフトハンドオフ”においては、BS“A”と通信しているMSは、最初にBS“A”との接続を切ることなくBS“B”と通信を開始し、その結果として“A”“B”の両BSがアクティブセット中に存在することになる。“ソフターハンドオフ”においては、BS“A”のセクタ“A”と通信しているMSは、最初にセクタ“A”との接続を切ることなくBS“A”のセクタ“B”と通信を開始し、その結果として“A”、“B”の両セクタがアクティブセット中に存在することになる。しかし、“ハードハンドオフ”においては、BS“A”と通信しているMSは、最初にBS“A”との接続を切ってからに限りBS“B”と通信を開始し、その結果として“A”“B”のいずれかのBSが任意一時にアクティブセット中に存在し、両方が存在することはない。
【0016】
MSが複数のBSと通信している間、MSはレイク受信フィンガーを同時に1つまたは複数のセクタからの複数のチャネルに割り当てる。MSが複数のBSと同時に通信しているとき、このMSはこれらのBSの両方から同一のデータを受信する。しかし、データが同一であっても、チャネルが異なることで、それらは異なるBSから別々に提供される。レイク受信機はそれゆえエンコードされたデータを異なるチャネルの異なるセクタから受信し、これらのセクタ毎に独立に復調し、それらのデータを合成することになる。このデータが最大レート合成あるいは他の同様な合成アルゴリズムによって合成される場合、強いチャネルからのデータの方が、より大きなエラーをもたらしがちな弱いチャネルからのデータよりもウエイトがかかる。このように、最終結果を生成するときには、正確である可能性がより高いデータがより高いウエイトを与えられる。
【0017】
MSがアイドル状態のとき、MSはアクティブなBSの近隣のBSを含むネイバーリストを共通チャネルで受信する。しかし、MSがアクティブでBSと1つのトラフィックチャネルで通信しているとき、ネイバーセットはこのトラフィックチャネルに基づいて更新される。
【0018】
アクティブ、ネイバー、あるいは(後述する)候補セットに存在しないネットワーク中の他のBSは、残存セットを構成する。図3に示されるように、MSがアイドルであろうがアクティブであろうが、ネットワークは繰り返しオーバーヘッドメッセージ30、32、および34をMSに送信する。これらのオーバーヘッドメッセージはネットワークの構成に関する情報を有している。例えば、拡張ネイバーリストのオーバーヘッドメッセージ34はMSに対してどのネイバーが存在してどこを探せばよいかを通知する。これらのネイバーの識別子は少なくとも一時的にMSのメモリ内に保存される。
【0019】
候補セットはMSが自己のアクティブセットの一部とするよう要求したが、今のところアクティブセットに昇格していないBSのセットである。これらの候補BSが今のところ昇格していないのは、MSからのメッセージに応えて、このMSに自己のアクティブセットを変更してこれらのBSを含めるよう指示するハンドオフ指示メッセージ(HDM)をネットワークが送信していないからである。このようなメッセージの交換は、概して後述するハンドオフの過程の一部として発生する。
【0020】
ハンドオフ
図4は、無線インフラストラクチャ56の一般的構造を表している。クライアントのMS36は、BS38のような近隣のBSから受信しているパイロットチャネルの強度を継続的にモニタし、規格に記載されるように固定値でも可変値でもよいハンドオフにおける“パイロット付加閾値”(T_ADD)よりも十分強いパイロットを探す。この技術分野においてネイバーセットとして知られる近隣のパイロットチャネル情報は、セルクラスター42を制御することができ移動交換センタ(MSC)44と通信するBSコントローラ(BSC)40を含むネットワークインフラストラクチャ体を介してこのMSに提供される。このMSとこれらのネットワークインフラストラクチャ体の1つまたは複数が、このMSとネットワークの相関性を制御するための1つまたは複数のプロセッサを有することを理解すべきである。このプロセッサはメモリと本技術分野の当業者には周知の他の周辺機器を含む。MS36がBS38によってカバーされる領域から他のBSの領域に移動すると、MS36はT_ADDよりも高い信号強度を有するパイロットをネイバーセットから候補セットへ昇格させ、さらにパイロットのネイバーセットから候補セットへの昇格をパイロット強度測定メッセージ(PSMM)によってBS38あるいは複数のBSに通知する。またこのPSMMは受信したパイロット信号の強度についての情報も有している。BS38はこの受信したPSMMに従って新しいBSまたはネットワークのアクティブセットを決定し、また新しいアクティブセットをHDMによってMS36に通知してもよい。ただし、ネットワークがBSの資源について対処が必要な問題を有していることもあるので、この新しいアクティブセットは常に正確にMSの要求を満たすとは限らない。
【0021】
MS36は、この新しいアクティブセットに含まれる全てのBSとBSセクタとの通信を維持することができる。このアクティブセットが複数のBSを有しているとき、MSはこれらのBSとソフトハンドオフにあると言われる。このアクティブセットが同一のBSを起源とする複数のセクタを有しているとき、MSはこれらのセクタとソフターハンドオフにあると言われる。
【0022】
MS36は一般的にこのアクティブセット中の全てのBSとBSセクタとの通信を、それぞれのBSのパイロットがハンドオフにおける“パイロット切断閾値”(T_DROP)よりも強度が高い限り維持する。このパイロットの1つが、T_TDROP(信号強度の一時的な落ち込みのあるパイロットが接続切れになることを防ぐための制限時間)を超える時間の間T_DROP未満まで弱まっていると、MS36はBSにPSMMを介してこの変化を通知する。そしてネットワークは、通常はT_TDROPの期間T_DROP未満に落ちたと報告されたパイロットのBSまたはセクタを含まない新しいアクティブセットを決定し、MS36にこの新しいアクティブセットを通知することができる。ネットワークによる通知があると、MS36はこの弱まったパイロットをネイバーセットに降格させる。このメカニズムによってソフトおよびソフターハンドオフが可能となる。T_ADDやT_DROPのような、このソフトハンドオフの過程で使用されるパラメータのほとんどはネットワークによって決定あるいは少なくとも制限される。
【0023】
ソフトハンドオフによって、MSは1つまたは複数のBS(セクタ)との通信を、これらのリンクのどの1つが単一のリンクで通信を可能とするには不十分な状態となっても、同時に維持することが可能となる。またこれによって、MSが1つのBS(セクタ)がサービスする領域から離れて他のBS(セクタ)がサービスする領域に入るとき、MSと交換センタとの通信の中断を回避することができる。
【0024】
接続が不全となって切れたときにMS36がハンドオフを開始するあるいはハンドオフの過程にあるのはよくあることである。これは、信号対干渉非が突然変化し、パイロットの汚染があり、また全て本技術分野において周知であるセル微動、容量制限、ネットワーク資源の有効性、およびネットワークのカバー状態に大きく影響される領域であるセルの境界近くに、貧弱なカバーあるいは弱信号環境が通常存在することから予期することができる。
【0025】
接続切れ
接続切れは種々の形で発生する。図5は、本技術分野においてCDMA無線ネットワークにおけるレイヤ2確認応答不全として知られる状況を示している。図5の例では、MSはBSによる確認応答を求めるPSMM48を送信している。このBSはそれを正しく受信しているかもしれないが、図5に示すケースでは、MSはBSの認証(ACK)46を受信していない。このMSは再送カウンタに従ってメッセージをNlm(=9)回再送信し、その後接続を終了(切断)する。レイヤ2確認応答不全が発生する元のメッセージが、MSが接続を維持するために必要なパイロットの要求を含むPSMM48であるときにこのタイプの不全がよく発生する。
【0026】
図6は、第2の状況として、CDMA無線ネットワークにおいて本発明を用いて回復が可能な状況を示している。この状況は、本技術分野においてフォワードリンクフェード不全として知られている。フェードとは受信信号パワーのある期間の減衰のことである。この状況に置いては、MSはN2m(=12)の連続する不良フレーム50を受信し、これに対する応答としてはそのMSの送信機52を使用不可とすることである。もしフェードタイマがT5m(=5)秒後に満了するまでにN3m(=2)の連続する良好フレームを受信することができない場合、このMSは接続54を切断する。MSがあるパイロットを候補セットに昇格させてPSMMを送信する必要がある間に、あるいはMSがPSMMを送信した後ハンドオフ指示メッセージを受信する前に、このタイプの不全がよく発生する。
【0027】
レイヤ2確認応答不全とフォワードリンクフェード不全は、過剰に高いフレームエラーレートまたは爆発的なエラーレートによって起こり得る。図7に示す様に、チャネル58は、典型的には80ミリセカンドの長さを持つスロット60すなわちスーパーフレームに分割することができる。それぞれのスロットは3つのフェイズ62に分割することができる。これらのフェイズは0、1、および2と番号付けられる。これらのフェイズの上に重なるのが4つのフレーム64である。これら4つのフレームは上記3つのフェイズとスーパーフレームの境界で揃うように並んでいる。それぞれのフレーム64はそれゆえ典型的には20ミリセカンドの長さとなる。5ms、10ms、および20msの倍数といった他のフレームサイズもまた用いることができる。例えばリバースアクセスチャネルやリバース共通制御チャネルの場合において、これらのデータフレームに先だって、様々な長さのプリアンブルがデータフレームに先立って送信されてもよい。フレーム64の内容は変化してもよいことが理解されるべきである。あるフレームは異なる符号のチャネルによって複合化されたパイロット、シグナリング、およびデータを含み、別のフレームはシグナリングのみを含み、また別のフレームはデータのみを有していてもよい。それぞれのフレーム64はまた、フレーム単位で変化し得るデータレートが異なっていてもよい。いくつかの通信規格の例では、全、半、四分の一、八分の一の4つのレートがある。このように、例えば、音声活動をすることない情報は八分の一フレームレートで送信することができ、それは、情報をより遅いレートで提供するにはより低いパワーあるいは帯域幅が要求されることから有益である。ネットワークの容量は干渉が減少するに従い増大する。
【0028】
実際の通信ネットワークにおいては、ゼロパーセントのエラーレート(すなわち、全てのフレームが適切に受信されること)を目標とするのは現実的でも望ましくもない。むしろ、例えば1パーセントのフレームエラーレートが目標とされる。望ましいフレームエラーレートを維持するためにパワー制御ループが用いられる。この例においては、もしこのフレームエラーレートが1パーセントより大きくなれば、パワー制御ループはフレームエラーレートが約1パーセントまで減少するよう、MSによって送信される信号のパワーを増大させることができる。一方、フレームエラーレートが1パーセント以下の場合、パワー制御ループはパワーを節約し、干渉を抑え、そしてフレームエラーレートが1パーセントまで上がることを許すよう、送信パワーを下げることができる。BSはそれゆえ継続的に、このMSが特定のエリアを動きまわる、あるいは別のタイプの干渉が始まりまたは終了するときに、約1パーセントのエラーレートを維持するために様々なパワーレベルで送信を行うよう、フレーム中の所定の位置内のパワー制御ビット群を用いてこのMSに指示することができる。このMSは大体においては、このBSによって自分に推奨されているパワーレベルに従う。それに加え、BSも自らの送信機の特定のチャネルへのパワーを、同様のパワー制御ループによって変化させることができる。これによって、BSとMSの両方が相手のパワーレベルを変化させるために継続的に互いにフィードバックを提供し合うことができる。しかしながら、チャネルパワー割り当て限度のようなBSの資源管理によっては、このBSは必ずしもその送信機のパワーレベルをMSからのフィードバックにもとづいて変更するとは限らない。
【0029】
上述したパワー制御ループにもかかわらず、限定された送信機パワーを持つMSが、あるセルラーネットワークを動きまわって物理的障害、近接チャネルからの干渉、およびセクタの辺部近くである所在地による信号強度や信号品質の変化を経験しするときは、エラーレートをおよそ1パーセントに制御することができないかもしれない。エラーレートが許容不能レベルにまで上昇すると、接続切れが問題となる。
【0030】
レスキュー手続き
リバースリンクあるいは接続の再開にもとづくレスキュー手続きは以前に提案されている。一般的に、セクタ(パイロット)であって、仮に接続不全のMSが自己のアクティブセット中にこのパイロットを有していたなら接続を維持することができたものがあれば、接続不全のレスキューは可能である。レスキュー手続きはこれらの失われているパイロットをMSとネットワークのアクティブセットに加えるよう試みる。本来は、MSはパイロットを自律的にそのアクティブセットに加え、さらにリバースリンクが開始したレスキューの場合、更新されたアクティブセットを用いて、大体においては予約され(専用とされ)あらかじめ設定されたリバースレスキューチャネルを送信する。ネットワークはそのアクティブセットを更新し、またMSが送信を検知できるようにあらかじめ設定されたフォワードレスキューチャネルを送信する。大体においては、レスキューを完遂するために、チャネル割り当てあるいはハンドオフメッセージを用いてMSに形式的にネットワークのアクティブセットと同期する新しいアクティブセットを指定することができる。
【0031】
リバースリンクにもとづいたレスキュー方法論は共通の、あるいは専用のチャネル手法を含む。典型的なリバースにもとづいたレスキュー手続きにおいては、MSは共通と専用のいずれかのチャネルからレスキューチャネルを送信し、通信ネットワークは1つまたは複数のセクタをこのレスキューチャネルを復号する試みにおいて利用する。
【0032】
フォワードにもとづいたレスキュー手続きも提案されている。そのようなフォワードにもとづいたレスキュー手続きの1つは、2001年10月16日提出の米国特許出願番号09/978974である“電気通信システムにおけるフォワードリンクにもとづくレスキューチャネル方法および装置”で開示され、そこでは電気通信ネットワークにおけるMSとインフラストラクチャの間の信号損失と接続切れを防止する方法および装置が説明されている。そこで呼ばれる接続とは、音声、マルチメディアのビデオまたはオーディオのストリーミング、パケット交換データおよび回線交換データ接続、ショートメッセージシーケンスあるいはデータバースト、ならびにページングを含み、かつこれらに限定されない。そこで通常フォワードレスキュー手続き(FRP)と呼ばれる手続きによって、それがなければ接続切れに終わるMSあるいはBSの不全からシステムは復帰することができる。FRPを用いて解決可能な不全のシナリオの例としては、フォワードリンクレイヤ2(L2)確認応答不全と、ある閾値を超える期間の信号のフレームの損失の原因となるフェードによるフォワードリンク信号の損失がある。潜在的な接続切れの状況に対応して、MSは切断の危機にある接続を復帰させるために、自律的にBSのパイロットチャネルを自己のレイク受信機のアクティブセットに追加する。同時に、ネットワークのインフラストラクチャはFRPの最中にMSによってモニタされる見込みのある別のフォワードリンクチャネルにおいて送信を開始する。もし同じチャネルがMSによってモニタされておりまたインフラストラクチャの送信の対象になっている場合、この切断の危機にある接続は復帰することができる。
【0033】
一般的なFRPはMSのFRPをを含み、またインフラストラクチャのFRPを含んでもよい。図8は、典型的な接続レスキュー状態にあるMSのFRPとインフラストラクチャのFRPの時系列の一例を示している。MSのFRPはどのようなレスキューにおいても主要なものであるが、インフラストラクチャのFRPは、推奨されるものの、必須ではない。
【0034】
MSのFRP開始のきっかけは、発生する不全のタイプに依存する。レイヤ2不全の場合、FRPは確認応答を要求するメッセージの複数の再伝送不全によって発動する。フォワードリンクフェード不全の場合、FRPは閾値(参照番号72)を超える期間信号の損失がある場合発動する。
【0035】
MSはFRPタイマをレスキューの試みが開始するときにスタートさせる(参照番号74)。このFRPタイマがレスキュー完了前に満了すると、接続は切れる。さらに、レスキューの試みが開始するとき、MSは自己の送信機の作動を停止し、新しいアクティブセットを選択する(参照番号74)。本実施形態においては、MSは実効的に自ら送信したPSMMにもとづいて(PSMMが実際に送出、または確認応答されるとされないとに関わらず)ハンドオフの指示があると仮定する。言い換えれば、MSはハンドオフの指示を受けることなく自発的にパイロットをアクティブセットに昇格させ(すなわち、新しいアクティブセットは古いアクティブセットと自発的に昇格されたアクティブなパイロットである:S”=SUS’)(参照番号76)。そしてMSはこのレスキューチャネルのための新しいアクティブセットの探索を繰り返し始める。上述した様に、レスキューチャネルという言葉は、様々な通信プロトコルによって利用される通り、チャネルを定義する様々なスキームを包含するものであるが、説明の簡単化のために、ここではレスキューチャネルは仮定符号チャネル(ACC)(参照番号78)として認識される。
【0036】
上記の様に、インフラストラクチャのFRPはネットワーク内のあらゆるBSにとって、推奨されるものの、厳密に必須ではない。もしこのインフラストラクチャのFRPが実装されていれば(参照番号80)、このインフラストラクチャ(ネットワーク)はACCの送信元のセクタを選択する。
【0037】
FRPの一実施形態においては、レスキューの最中にACCを通じてヌルの(空の)データが送信される。別の実施形態においては、データはACCを通じて送信されてもよいが、MSは実際にこのACCを見つけて正しく復調する場合に限りこのデータを聞き取る。
【0038】
ある時点において、このMSはACCにおけるN3Mの良好なフレームを見つけて復調し(参照番号82)、自己の送信機の作動を開始し、このBSに対して返送を始める。MSとBSの双方が所定の数の良好なフレームを受信すると、レスキューは完了し(参照番号84)、BSはMSに対してより常設的なチャネルを再割り当てすることができる。更に、このネットワークは例えばACCをオーバーヘッドによって再割り当てすることもできる。またBSは、一般もしくはユニバーサルハンドオフ指示メッセージの様な既存のメッセージを再利用可能なレスキュー完了ハンドオフメッセージを送信することで、MSにこのレスキューの後に削除するアクティブセットを再指定することも可能である。フォワードにもとづくレスキュー手続きの例についての更なる詳細は、2001年10月16日提出の米国特許出願番号09/978,974“電気通信システムにおけるフォワードリンクにもとづくレスキューチャネルの方法および装置”を参照されたい。
【0039】
移移動局の送信パワーレベル
通常の作動においては、MSはネットワークから受信した伝送データ中のパワー制御ビット群によって決められたパワーレベルで送信を行う。ビット群はフォワードリンクにおいては“穴空き”になっており、それによってMSにパワーを1ステップ上げるまたは下げるよう指示をする。“穴空き”とは、送信するBSの変調前の出力ストリームの毎X番目のビットが、MSにSにパワーを1ステップ上げるまたは下げるよう伝えるゼロまたは1で置き換えられることを意味している。これらのビット群はデータ伝送において重きを置かれる部分ではないので、エラー訂正は行われない。このビット群はデータストリームのMSにとって既知の固定位置で穴空きとなっているので、MSはこれらのビット群をパワー制御ビットとして読みとることができる。このステップのサイズはオーバーヘッドメッセージによって提供される。MSの送信パワーレベルの調整のための変化ステップのサイズの特定は、米国特許番号5,896,411に開示されている。
【0040】
MSの送信パワーレベルはMSによって受信されたパワーレベルの関数である。任意の時刻における受信と送信のレベル間の差は、一般的には固定の差(オープンループパワー制御を示す)に対して、パワー制御ビット群によって規定された付加量(クローズドループパワー制御を示す)を加算した、あるいは差し引いたものである。このように、クローズドループパワー制御なしでは、送信パワーレベルはこの固定の差でオフセットされた受信パワーレベルに“追従”する。パワー制御ビット群によって規定されるパワーレベルの調整は以前に受信されたパワー制御ビット群の総和である。言い換えれば、(現在の)総パワーレベルを決定するためには、一連の“アップ”と“ダウン”のステップの全てを考慮に入れなければならない。
【0041】
以下に示す表1は、通常作動中のMSの平均送信出力パワーをdBm単位で概略的に表している。この平均送信出力パワーは、MSの平均受信入力パワーの符号反転値(表1の第1行)にオフセットパワー(表1の第2行)を付加することで計算される。ここでいう“平均受信入力パワー”は、直近のパワー制御グループの時間(例えば1.25ms)に渡って計測された瞬時平均パワーを指していてもよいし、あるいはこの技術分野における当業者に理解できる受信パワーを指定するための他の方法に係るものでもよい。このオフセットパワーはオープンループパワー制御を示す固定量である。例えば、この平均受信入力パワーが−106dBmでオフセットパワーが−76dBである場合、平均送信出力パワーは−(−106dBm)+(−76dB)=30dBである。
【0042】
更に、クローズドループパワー制御(表1の第3行)を示すパワーがMSの平均送信出力パワーに加えられてもよい。信号環境が同一ならばオフセット値のみの使用でも十分である。しかし、フォワード/リバースリンク不均衡と呼ばれる、アップリンク(リバースリンク)とダウンリンク(フォワードリンク)のそれぞれが異なる信号環境下に置かれる場合があり得るので、クローズドループパワー制御が提供される。
【0043】
【表1】
【0044】
図9は通常のMS通信機のブロック図である。受信経路においては、アンテナで受信された信号はデュプレクサ90を通ってローノイズアンプ(LNA)92によって増幅される。LNA92は、近隣のキャリアからの干渉である相互変調歪み(IMD)を最小化するために用いられる。受信した信号は受信機の自動ゲイン制御ブロック(AGC)94においてゲイン調整され、中間周波数(IF)ブロック96によってベースバンドにダウンコンバートされる。なお、ACGブロック94はまた受信信号強度指標(RSSI)を計測し生成する。このベースバンド信号は、レイク受信機、相関器、インターリービング、デコーダ等を含むベースバンドブロック98で処理される。送信経路においては、ベースバンド信号はIFブロック96でアップコンバートされ、その後パワー制御として送信自動ゲイン制御(TX AGC)ブロック150でRSSIを用いてゲイン調整される。このIF信号はパワー増幅器PA152によって増幅され、デュプレクサ90を通ってアンテナ88へ届く。1つまたは複数のプロセッサ154はこの通信機の制御を行う。
【0045】
レスキューの最中、レスキュー手続きがリバースにもとづくかフォワードにもとづくかに関わらず、レスキュー中のある点においてMSはリバースリンクを通じて送信を行わなければならない。例えば、あるリバースにもとづくレスキュー手続きにおいて、MSはレスキューチャネルを送信する。フォワードにもとづくレスキュー手続きにおいては、ネットワークからレスキューチャネルを受信した後、MSはデータあるいはメッセージング情報を送信することができる。どちらの場合でも、レスキューの際にリバースリンクで送信するとき、そのMS送信機のパワーレベルが確定していなければならない。
【0046】
MSの送信パワーレベルを確定する1つの方法は、MSの送信をレスキューが開始する前の接続で用いられた最後のパワーレベルでスタートすることであろう。この方法論を用いて、先述したクローズドループパワー制御は、MSの送信パワーが一定となるように停止される。しかし、上記接続において使用された最後のパワーレベルは最大パワー近くとなっていがちである、というのも接続不全の前には接続は高いフレームエラーレートの状態になっており、それゆえネットワークによって最大のパワーレベルとなるよう制御されがちとなるからである。
【0047】
それゆえ、MSの送信機の、レスキュー手続きの最中のリバースリンク通信における、切断した呼を迅速に高い成功率で復帰させるための効果的で信頼性のあるパワーレベルを決定する方法および装置が必要となる。
【0048】
発明の概要
接続のレスキューの間、レスキュー手続きがリバースにもとづいていようとフォワードにもとづいていようと、そのレスキューのある点においてMSはリバースリンクを通じて送信を行わなければならない。例えば、あるリバースにもとづくレスキュー手続きにおいて、MSはレスキューチャネルを送信する。フォワードにもとづくレスキュー手続きにおいては、ネットワークからレスキューチャネルを受信した後、MSはデータあるいはメッセージング情報を送信することができる。どちらの場合でも、レスキューの際にリバースリンクで送信するとき、そのMS送信機のパワーレベルが確定していなければならない。
【0049】
本発明の各実施形態は、レスキューの間にオープンループパワー制御(ここで送信パワーは受信のRSSIの関数である)をサポートするメカニズムに視点を置いている。レスキューの送信がスタートすると、クローズドループパワー制御は停止され、MSの平均レスキュー送信出力パワーレベルを決定するために、受信パワーの変化等にもとづいてオープンループパワー制御が調整される。
【0050】
1つの実施形態では、MSの平均レスキュー送信出力パワーレベルは、最初にMSが送信を再開するときの、MSの平均レスキュー受信入力パワーレベルを決定することで計算される。そして、MSの平均レスキュー送信出力パワーレベルは、MSの平均レスキュー受信入力パワーレベルの符号反転値を4つまでのパラメータを用いて調整することで計算される。これら4つの変数は、(1)プレレスキューパワーデルタ、(2)レスキュー干渉デルタ、(3)レスキュー遅延補償値、および(4)既定値である。
【0051】
プレレスキューパワーデルタは、レスキューが開始する前のネットワークによるパワー制御グループ(パワー制御ビット群)の最後の送信時において、MSの平均受信パワーレベルをMSの送信パワーレベルから差し引くことで計算される。MSの送信がレスキューの途中で開始すると、MSの平均レスキュー送信出力パワーレベルが、上記プレレスキューパワーデルタを平均レスキュー受信入力パワーレベルの符号反転値に加算することで計算され、レスキューの期間のクローズドループパワー制御の欠如を補償する。
【0052】
MSはまた、レスキュー干渉デルタをMSの平均送信出力パワーレベルに加算するが、ここでレスキュー干渉デルタは通常の(レスキュー前の送信の最後の)アクティブセットの干渉補正項と、更新されたレスキューアクティブセットの干渉補正項との差を表す。
【0053】
MSはまた、レスキュー遅延補償値をMSの平均レスキュー送信出力パワーレベルに加算し、フェードの開始とMSの送信の開始の間の時間tの増大に伴って、新しい平均レスキュー送信出力パワーレベルの、増大した不確定性を補償する。一般的に、tが増大すると、新しいMSの送信パワーレベルの計算における更なる不確定性もたらされ、初期レスキュー送信パワーレベルを増加させることがより望ましくなり得る。
【0054】
MSによって行われる上記の調整に加え、遅延、クローズドループパワー制御の欠如による不確定性を補償し、またレスキューの成功の可能性を増大させるためにMSの平均レスキュー送信出力パワーレベルに加算する既定値を、MSはレスキューに先立ってネットワークから受信してもよい。この既定値はネットワークまたは規格によって特定される。
【0055】
本件技術に習熟した者には、以下の本発明の実施形態の詳細な説明から、図面および付加した請求項を併せて読むことで、本発明の実施形態の多数の特徴や利点が容易に明らかになるだろう。
【0056】
好ましい実施形態の説明
以下の好ましい実施形態の説明において、本明細書の一部を成し、本発明が実施可能となる図示特有の実施形態として表される添付図面への参照が行われる。他の実施形態を利用することもでき、また本発明の好ましい実施形態の範囲から離れることなく構造的な変更を行うこともできることを理解すべきである。
【0057】
さらに、ここで行われる説明は、説明のためのみにCDMA通信プロトコル(符号にもとづいたプロトコル)を参照するが、本発明の実施形態は他の通信プロトコルおよびデジタルラジオ技術に通常応用可能であり、またCDMA、TDMA、FDMA、GSM、GPRS等を含み、またこれらに限定されないことを理解すべきである。
【0058】
本発明の実施形態は、レスキューの間にオープンループパワー制御(ここで送信パワーは受信RSSIの関数である)をサポートするメカニズムを指向している。レスキュー送信が開始すると、クローズドループパワー制御が停止され、受信パワー等の変化に基づいてオープンループパワー制御が調整される。
【0059】
図10aは本発明の一実施形態の例によるフォワードにもとづくレスキュー作動前、あるいは途中の受信および送信パワーの時系列である。Rxのプロット100は、特定のチャネルの総受信dBmパワー(RSSI)である、MSの平均受信入力パワーを示す。なお、受信パワーのプロットとレベル100、120および116は左の目盛りに対応し、送信パワーのプロットとレベル102、122および112は右の目盛りに対応する。図10aの例では、通常の(レスキューでない)作動においては、MSの平均受信入力パワー100はおよそ−106から−75dBmまで変化し、MSの送信パワーはおよそ+10から+25dBまで変化する。図10aの例では、時刻104におけるフェードの検出に先立ち、MSの平均受信入力パワー100は一般的に減少し(結果上昇カーブとなる)、そして同時に、MSが通常クローズドループパワー制御ビット群に強い傾向がなければ受信パワーレベル100に追従することによりMSの送信パワー102は増大する。104のある時点において、フェードが検出され、MSは自己の送信機の作動を止め、続いてフォワードレスキュー手続きが時刻106で開始される。なお、時刻104はフェードが最初にスタートする時刻ではなく、むしろフェードがMSのプロセッサによって検出される時刻である。
【0060】
フォワードレスキュー手続きにおいて、MSはレスキューチャネルをネットワークから受信しようと試みる(参照番号136)。ある後の時刻108において、もしMSがレスキューチャネルを正しく受信することができれば、MSはリバースリンクにおいて送信を再開し、確認応答やハンドオフメッセージングがMSとネットワークとの間で交換され、レスキュー手続きは時刻134で接続が継続されて終了する。このとき、MSの平均レスキュー受信パワーレベル116はそのレスキュー前レベル120から変化していてもよい。
【0061】
本発明の実施形態においては、まずMSが時刻108で送信を再開するときのMSの平均レスキュー受信入力パワーレベル116を決定し、そしてMSの平均レスキュー送信出力パワーレベル112をデルタパワーレベル114によってMSの平均レスキュー受信入力パワーレベル116に関連づけることで、MSの平均レスキュー送信出力パワーレベル112を計算する。
【0062】
このデルタパワーレベル114は本来、MSの平均レスキュー送信出力パワーレベル112をMSの平均レスキュー受信入力パワーレベル116に関連づけるオフセットを有している。図11に示す様に、このオフセットとMSの平均レスキュー受信入力パワーレベル116は、通信環境の性質に従って固定(すなわち一定)1100、線形1110、あるいはより高次の多項式関数1120となってもよい。図11は平均受信パワーレベルに対するこのオフセットの複数の実例を示しているが、本発明はこれらの実例に限定されず、テーブル検索や平均受信入力パワーレベルをオープンループの手法で送信出力パワーと関連づける他の方法を用いてもよい。
【0063】
平均レスキュー受信入力パワーレベル116の符号反転値は、デルタパワーレベル114によって4つまでのパラメータを用いて調整され、MSの平均レスキュー送信出力パワーレベル112を生成する。これら4つのパラメータは(1)プレレスキューパワーデルタ、(2)レスキュー干渉デルタ、(3)レスキュー遅延補償値、および(4)既定値であり、以下で詳細に説明される。なお、MSの平均レスキュー送信出力パワーレベル112は、MSの平均レスキュー受信入力パワーレベル116の変化によって、レスキューの途中で再計算されてもよい。それに加え、レスキューが進展するにつれてデルタパワーレベル114を構成する選択されたパラメータはレスキューの途中で動的に再計算されてもよく、またパラメータがデルタパワーレベル114の計算に追加され、または削除されて、結果として時刻108から時刻134のレスキューの終了までデルタパワーレベル114が変化してもよい。なお、時刻134でレスキューが完了した後、MSの受信パワー100と送信パワー102はMSによって受信されるパワー制御ビット群に従って変化してもよいことにも。
【0064】
図10bは本発明の一実施形態の例によるリバースにもとづくレスキュー作動前、あるいは途中の受信および送信パワーの時系列である。この図10bの例によれば、時刻104のある時点においてフェードが検出され、MSは自己の送信機の作動を止め、次に時刻106においてリバースレスキュー手続きが開始される。このとき、MSの平均レスキュー受信パワーレベル116はレスキュー前レベル120から変化していてもよい。このリバースレスキュー手続きにおいて、MSはネットワークにレスキューチャネルを送信し、同時にネットワークからフォワードリンクを受信しようと試みる(参照番号130)フォワードレスキュー手続きと同様、リバースレスキュー手続きを利用する本発明の実施形態においては、MSの平均レスキュー送信出力パワーレベル112をデルタパワーレベル114によってレスキューのスタート106におけるMSの平均レスキュー受信パワーレベル116と関連づけることで、MSの平均レスキュー送信出力パワーレベル112を決定する。このデルタパワーレベル114は本来、MSの平均レスキュー送信出力パワーレベル112をMSの平均レスキュー受信パワーレベル116に関連づけるオフセットを有している。図11に示すように、このオフセットとMSの平均レスキュー受信パワーレベル116は固定(一定)1100、線形1110、あるいはより高次の多項式関数1120となってもよい。
【0065】
平均レスキュー受信入力パワーレベル116の符号反転値は、デルタパワーレベル114によって先述した4つのパラメータのうち1つまたは複数を用いて調整されることで、MSの平均レスキュー送信出力パワーレベル112を生成する。ある後の時刻132において、もしMSがこのMSに指定されたフォワードリンクチャネルを正しく受信することができれば、ハンドオフや確認応答メッセージがMSとネットワークとの間で交換され、接続は継続することができ、レスキュー手続きは時刻138で終了する。
【0066】
デルタパワーレベル114を構成できる上記した4つのパラメータ、MSの平均レスキュー受信パワーレベル116、およびこれらのMSの平均レスキュー送信出力パワーレベル112への寄与は表2に示され、以下で個々に議論される。なお、これら4つのパラメータ(プレレスキューパワーデルタ、レスキュー干渉デルタ、レスキュー遅延補償値、および既定値)の1つまたは組み合わせは、オープンループパワー制御を示すオフセットがデルタパワーレベル114の計算に本来備わっているものである限り、デルタパワーレベル114を計算するために用いられてもよいことに注意すべきである。
【0067】
このオフセットはプレレスキューパワーデルタに本来備わっているものなので、このプレレスキューパワーデルタはデルタパワーレベル114を計算するために単独でも他の3つのパラメータの1つまたは複数と組でも用いることができる。一方、既定値はもしそれがオフセットを含んでいれば、デルタパワーレベル114を計算するために単独でも他の3つのパラメータの1つまたは複数と組でも用いることができる。
【0068】
【表2】
【0069】
本発明の一実施形態において、不全となりそうな接続が検出される前の最後の信頼性のあるパワー制御グループ(パワー制御ビット群)の受信時刻における送信および平均受信パワーレベルの両方を計測し保存する。図10aおよび10bの例では、最後の信頼性のあるパワー制御グループの受信時刻はほぼフェードが検出された時刻104であり、そのときのMSの送信および平均受信パワーレベルはそれぞれ参照番号120および122によって示される。そして、プレレスキューパワーデルタ124は平均受信パワー120を送信パワー122から差し引くことで算出される。なお、このプレレスキューパワーデルタ124は、クローズドループパワー制御に加えて先述したオフセットを含むことになる。MSの送信がレスキューの途中の時刻108で開始すると、このレスキュー期間におけるクローズドループパワー制御の欠如を補償するために、プレレスキューパワーデルタ124が平均レスキュー受信値有力パワーレベル116の符号反転値に加算される。
【0070】
なお、上記したプレレスキューパワーデルタ124の計算の説明は、不全となりそうな接続が検出される前の最後の信頼性のあるパワー制御グループの受信時刻のパワーレベルの使用に基づいている。この時刻は、信頼性のあるパワー制御が可能であった最後の時点として定義されてもよい。信頼性のあるパワー制御は複数の方法で定義でき、それは例えばパワー制御ビット群の受信を含む。このパワー制御ビット群の信頼性は、穴空きとなっているフレームのシンボルあるいはビットエラーレートにもとづいていてもよい。このパワー制御ビット群はレスキューの開始より遙か以前に受信されていてもよい。最後の信頼性のあるパワー制御ビット群の受信とレスキューの開始との時間間隔が大きくなるほど、より条件が変化してしまっていることになりやすい。それゆえ、本発明の別の実施形態においては、最後の信頼性のあるパワー制御グループの受信と不全となりそうな接続(例えばフェード)の検出との時間間隔が大きくなるにつれ(図10aおよび10bの参照番号126)、より大きなオフセットが補償のために用いられる。例えばこのオフセットは、最後の信頼性のあるパワー制御グループの受信と不全となりそうな接続(例えばフェード)の検出との時間間隔126の(例えば線形あるいはより高次の多項式)関数として増大することができる。この関数を定義する係数はMSにあらかじめ保存されていてもよいし、レスキューに先立つメッセージによってネットワークからMSに通知されてもよい。
【0071】
更に他の実施形態においては、別の時間参照が使用され得る。例えば、送信された最後のフレームによる受信および送信パワーレベルの1つあるいは両方の平均が、プレレスキューパワーデルタの計算に用いられ得る。
【0072】
レスキュー干渉デルタ
上記した通り、MSは通常作動中はアクティブセットANを維持し、レスキュー中は更新済みレスキューアクティブセットARを自発的に生成する。ANはパイロット強度PSNの重み付き和によって表すことができ、ARはパイロット強度PSRの重み付き和によって表すことができる。MSの更新済みレスキューアクティブセット中のセクタ/BSは、通常のアクティブセットとは異なりがちであり、また通常のアクティブセットとは異なる干渉のレベルで受信されがちである。この理由から、本発明の実施形態においては、MSは通常の(レスキュー以前の送信の最後における)アクティブセットに対する干渉補正項と更新済みレスキューアクティブセットに対する干渉補正項との差を表すレスキュー干渉デルタを利用することができる。
【0073】
これらの干渉補正項は、アクティブセットのPS値(パイロットEC/IO値の混合)の関数として計算される。例えば、通常のアクティブセットICNおよび更新済みレスキューアクティブセットICRに対する干渉補正(IC)項は以下のように計算される:
ICN=min(max(OFFSET−PSN,LO_IC),HI_IC)dB、
ICR=min(max(OFFSET−PSR,LO_IC),HI_IC)dB、
ただしOFFSETは重要なPS値の範囲内の最大値である。OFFSETは、この最も大きい重要なPS値を有用なIC項の範囲内の最小値LO_ICに写像するために用いられ、またそれぞれの重要なPS値をLO_ICからHI_ICまでの範囲の有用なIC値に写像するために用いられる。それゆえ一般的に、上記のそれぞれの等式は、重要なPS値を含む多数のあり得るPS値を、LO_ICとHI_ICによって制限される有用なIC項の小さな領域に写像する。なお、最も大きい重要なPS値(すなわちOFFSET)とOFFSETより大きな全てのPS値は、有用なIC値の最小値LO_ICに写像され、最小の重要なPS値と、この最小の重要なPS値より小さい全てのPS値は、有用なIC値の最大値HI_ICに写像されることになる。
【0074】
OFFSET値は、推定されたあるいは経験的に決定された重要な混合パイロット強度値(あるいは逆に言えば、MSの平均レスキュー送信出力パワーレベルに対するその影響が同様な手法で取り扱われることになる、推定されたあるいは経験的に決定された重要でない混合パイロット強度値)にもとづいて選択されてもよく、LO_ICとHI_ICは、MSの平均レスキュー送信出力パワーレベルに対するレスキュー干渉デルタの望まれる最高の寄与に依存して選択されてもよい。OFFSET、LO_IC、およびHI_IC値はあらかじめMSに保存されていてもよいし、レスキューに先立つメッセージによってネットワークからMSに通知されてもよい。使用可能な(重要な)PS値は典型的にはおよそ−5からおよそ−18dBまでの値をとる。この範囲はネットワークの設定あるいはシステムの設計に依存することになる。OFFSETはそれゆえ使用可能な範囲の最初(例えば−5dB、使用可能なPS値の範囲内の最大値)とほぼ一致するように選ぶことができる。使用可能なPS値の範囲内の最低値はMSのモデム(すなわち探索機の感度とレイク受信機の限界)の性能によって決定される。典型的にはレイク受信機はほぼ−25dBの低い信号レベルを受信することができるが、信頼性があるのはほぼ−20dBの低さまでである。
【0075】
IC項が算出されると、レスキュー干渉デルタの計算が可能となる。本発明の実施形態において、レスキュー干渉デルタは:
ICR−ICN
となる。
【0076】
他の実施形態では、レスキュー干渉デルタは、レスキュー手続きの実行中に更新されたパイロットARのレスキューアクティブセットあるいは混合通常パイロット強度値PSRの変化に伴って再計算されてもよい。この再計算はARまたはPSRの変化を反映するために固定の時間間隔で発生してもよく、またARあるいはPSRの変化があった時にのみ発生してもよい。
【0077】
レスキュー干渉デルタの計算の一例を、図解の目的のみのために示す。多数のあり得るPSの値を有用なIC項の範囲である0から7まで(3ビットの2進数で表示できる)に写像することが要求され、そこでは最大の重要なPS値−7は0に写像され、最小の重要なPS値−14は7に写像される等々となり、そしてIC項は以下のように計算される:
ICN=min(max(−7−PSN,0),7)dB
ICR=min(max(−7−PSR,0),7)dB
これに従うICNの写像の結果は以下の表3に示される。
【0078】
【表3】
【0079】
例えば、もしPSR=−11dBでPSN=−14dBならば、ICR=4dBでICN=7dBとなり、レスキュー干渉デルタは−3dBとなる。この例では、レスキューアクティブセットAR中のパイロットは通常アクティブセットANのパイロットよりも3dB強く、したがってAR中のBSはAN中のBSよりもMSから良好に受信し、より少ないMS送信パワーで足り、本例においては、MSの送信パワーは3dB下げられる。ここでは大きなリンク不均衡がないと仮定している。なお、もしこのPSの特定の値が、上記の例のように−7〜−14dB(7をオフセットとする7の幅)の範囲内にあれば、PS値のIC値への写像は不要である、というのも単にPSN−PSRの計算、つまり−14−(−11)すなわち−3dB、を行うことで同じ結果を得ることができるからである。しかし、PS値の特定の値が−7dBから−14dBまでの範囲外にある場合、上記の等式で定義される写像を用いなければならない。例えば、もしPSR=−6dBでPSN=−17dBなら、ICR=0dBでICN=7dBであり、レスキュー干渉デルタは−7dBである。なお、この例では、PSN−PSRが−11dB、すなわち別の結果となってしまう。
【0080】
別の実施形態では、IC項は通常およびレスキューアクティブセットのPS値以外の基準にもとづくこともできる。例えば、平均パイロット強度値を用いることができる。さらに、最早(最短)のパイロット、参照パイロット(MSによってタイミングの参考として用いられるパイロット)、あるいは最弱または最強アクティブセットパイロットのような、単一のパイロットを用いることができる。あるいは、パワーを最大化するために最強の通常アクティブセットパイロットを最弱のレスキューアクティブセットパイロットと組み合わせて用いることもできる。
【0081】
なお、レスキューインターフェースデルタは干渉の差を補償するが、MSの平均レスキュー受信入力パワーレベルと同じことは実現しない。例えば、MSの平均受信入力パワーレベルがレスキュー手続きの途中で改善した(すなわち、MSの平均受信入力パワーレベルが不全以前の方が低く、レスキュー中に増加した)場合を考える。この場合、プレレスキューデルタを組み込めば、今はMSの平均レスキュー受信入力パワーレベルが不全以前より高いので、単独で送信パワーが相対的に低くなる原因となる。しかし、もしMSの受信干渉が増大してMSのレスキューアクティブセットの受信信号の強度が今度はMSの以前(レスキュー前)のアクティブセットの信号強度より小さい場合、MSの平均レスキュー受信入力パワーレベルはより弱い送信パワーを用いるよう求めるが、レスキュー干渉デルタはより高い送信パワーを用いるよう求め、これによってMSの平均レスキュー受信入力パワーレベル調整を打ち消す作用となる。
【0082】
レスキュー遅延補償
再び図10aおよび10bの例に戻り、信頼性のあるパワー制御が可能な最後の時点として定義される時刻104と、レスキュー134あるいは138の終了との間に時間128で示される時間がある。信頼性のあるパワー制御を、例えばパワー制御ビット群の受信、あるいはフォワードリンクの受信を含む複数の方法で定義することができる。なお、図10aにおいては、時刻108の後のどの時刻においてもレスキューが完了し得るのに対して、図10bにおいては、レスキューは106以降のどの時刻においても完了し得る。しかし、レスキューが完了することなく進行し、時間128が長くなると、MSの最後のパワー制御ビットの受信からより時間が経過し、MSの位置が変わってしまうおよび/または環境が変化してしまう可能性が増大する。一般に、時間128が増加すると、新しく必要となるMS送信パワーレベル112の計算においてより大きな不確定性がもたらされる。本発明の実施形態においては、レスキュー遅延補償値は時間128の増大を考慮に入れようとする。一般には、時間128が長くなるほど、条件が変化してしまう可能性が高くなり、したがって補償のために更なるパワーが追加される。このレスキュー遅延補償値は、例えば、時間128の(例えば線形)関数であってもよいし、MSにあらかじめ保存された係数が乗じられた定数であってもよいし、またはレスキュー前にネットワークからMSにメッセージによって伝えられてもよい。遅延時間128の増大と共にレスキュー遅延補償値は増大し、あるいは固定の時間間隔で再計算されてもよい。
【0083】
他の実施形態においては、時間128の計算は、MSの送信機が停止されてから、フェードの開始から、フェードがMSによって通知されてから、フェード条件が開始してから、あるいはパワー制御ビット群が(例えばフレームエラーレート閾値によって規定される)信頼性を有して受信された最後の時点から、行ってもよい。
【0084】
既定値
本発明の他の実施形態においては、デルタパワーレベル114は既定値を含んでいてもよい。一般的に、この既定値の目的はMSの平均レスキュー送信出力パワーレベルを増大させて、MSが過度に高い送信パワーレベルを使用しないことを保証しつつ、このMSのレスキュー送信が信頼性をもって受信される機会を最大化することである。この既定値は、レスキューの開始前のメッセージング中にネットワークからMSに通知されてもよい。他の実施形態では、この既定値はMS中の固定値となっていてもよい。
【0085】
ある実施形態においては、先述したオープンループパワー制御が寄与するオフセットが、欠けているクローズドループパワー制御を補償するためにこの既定値の中に含まれていてもよい。他の実施形態においては、この既定値はネットワークエンジニアによって、および/または履歴、経験あるいは統計の情報に基づいて柔軟に決定されてもよい。例えば、デルタパワーレベルにある閾値の量までの送信パワーを付加することは、一般的に十分なレスキュースピードあるいはパワー比のdBあたりの成功率の改善をもたらすが、この閾値を超えてパワーを付加することは、ユーザのニーズやMSの制限を考慮すれば、割に合わない結果になるということを、この情報が示すことができる。この閾値はそれゆえ既定値として選択される。
【0086】
他の実施形態
以上に説明した本発明の各実施形態は、MSの平均レスキュー送信出力パワーレベル112の算出のメカニズムについて開示している。しかし、この出力パワーレベルはレスキューの期間ずっと一定である必要はない。例えば、他の実施形態においては、MSの平均レスキュー送信出力パワーレベル112はクローズドループパワー制御にもとづいて適応変化してもよい。リバースにもとづくレスキューにおいては(図10bを参照)、パワー制御ビット群は、レスキュー106の開始からMSがフォワードリンクを受信する時刻132までネットワークから受信されてもよい。MSの平均レスキュー送信出力パワー112もまた、変化する干渉レート、変化する受信パワー、あるいは動的に計算された(レスキュー中に再計算される)デルタパワーレベル114の使用にもとづいて連続的に適応変化してもよい。加えて、MSの更新されたアクティブセットおよび/またはパイロット信号は変化してもよく、それはMSの平均受信入力パワーレベル116と先述したレスキュー干渉デルタの変化の原因となるので、MSの平均レスキュー送信出力パワーレベル112は変化してもよい。またさらに、レスキューの進行とレスキュー中の遅延が増大すると、先述したレスキュー遅延補償値が変化する。
【0087】
また、MSの平均レスキュー送信出力パワーレベル112に寄与することのできる先述の4つのパラメータは、レスキューが進展するにつれてデルタパワーレベル114の計算に追加されてもよいし削除されてもよい。例えば、レスキュー遅延補償値が最初はデルタパワーレベル114の計算の一部を成していなかったとしても、もしMSの最後の信頼性のあるパワー制御ビット群の受信から始まる時間128が閾値に達してなおレスキューが完了してないなら、MSのプロセッサはレスキュー遅延補償値をデルタパワーレベル114の計算に使用する。
【0088】
他の実施形態においては、MSの平均レスキュー送信出力パワーレベル112を始点として用いてパワー制御ステップを利用することができる。言い換えれば、レスキューの途中のMSの送信は、アクセスチャネル探索のように、あらかじめ定められたステップサイズを用いてパワーについてステップアップすることができる。
【0089】
以上に説明したパワー制御拡張の概念は一例としてセルラーネットワークを用いたが、レスキュー中のパワー制御拡張の基本概念は、ページングシステム、衛星通信システム、コードレス電話システム、フリート通信システム等の他の無線プロトコルおよび技術に応用可能でありあるいは拡張してもよい。ここで説明されたBSの概念は、リピータまたは別のアンテナダイバシティ機構、コードレス親機、衛星、あるいは他の電話等を含む。ここで説明されたMSの概念は、ページャ、衛星電話、コードレス電話、フリートラジオ、無線端末装置、テレマティクスモデム等を含む概念である。
【0090】
本発明は、実施形態と関連し、添付した図面を参照して十分に説明されたが、本技術分野において習熟した者にとって様々な変化および修正が明らかとなるだろう。そのような変化および修正は、付記される請求項によって規定されるように、本発明の範囲内に含まれるものとして理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【図1】
無線通信システムにおいてセクタ間の様々な場所を動きまわる移動局を示す図である。
【図2】
無線通信システムにおける移動局と基地局との間の通信リンクの一例を示す図である。
【図3】
無線通信システムにおける基地局から移動局へのオーバーヘッドメッセージを示す図である。
【図4】
動きまわる移動局と通信を行う無線通信インフラストラクチャを示す図である。
【図5】
レイヤ2確認応答不全による接続切れとなる移動局と基地局との間の一連のメッセージを示す図である。
【図6】
無線通信システムにおけるフォワードリンクのフェージングに起因する接続切れの代表例の時系列を示す図である。
【図7】
無線電気通信ネットワークに用いられる、3つのフェイズと4つのフレームに分割されるスーパーフレームの時系列を示す図である。
【図8】
一実施形態におけるフォワードレスキュー手続きが始動したときの時系列を示す図である。
【図9】
通常のMS通信機のブロック図である。
【図10】
aは、本発明の一実施形態の例によるフォワードにもとづくレスキュー作動前、あるいは途中の受信および送信パワーの時系列を示す図である。bは、本発明の一実施形態の例によるリバースにもとづくレスキュー作動前、あるいは途中の受信および送信パワーの時系列を示す図である。
【図11】
本発明の一実施形態におけるMS平均受信入力パワーに対するオープンループパワー制御オフセットをプロットした図である。
本発明の実施形態は、2001年1月19日提出の米国仮特許出願番号60/262,689“無条件レスキューチャネル作動のオープンループパワー制御の拡張”に基づいて優先権を主張するものであり、また2001年10月16日提出の米国特許出願番号09/978,974“電気通信システムにおけるフォワードリンクにもとづくレスキューチャネル方法および装置”に関連するものであり、これらの内容は参照によって事実上本明細書に組み込まれる。
【0001】
発明の背景
1. 発明の分野
本発明は通信ネットワーク管理に、一実施形態としては接続レスキュー手続き中における移動局送信機の送信パワーを制御するオープンループパワー制御を利用する方法および装置に関する。
2. 関連技術の説明
イントロダクション
緊急時の通信用途を提供するに留まらず、セルラー電話システムは急速に今日の社会の主たる通信形態となりつつある。セルラー電話の使用が普及するにつれ、セルラー電話ネットワークはますます有力なものとなり、また消費者の要求に応じてより広いエリアのカバーを提供しつつある。図1は、無線のセクタA14およびセクタB16を有する第1の基地局(BS)12と、セクタC20を有する第2のBS18とを含む無線インフラストラクチャーまたはネットワークのサービス下にある地理的領域を移動してまわる、移動ユーザによって操作される移動局(MS)10の一例を表している。この移動の経路において、MS10は位置Aから位置B、位置Cへと移り、そして必然的に通信相手のBSの通信リンクの信号強度や信号品質の変化を体験する。信号の強度と品質は、MS10がセクタA14の点線で規定された領域からセクタB16の点線で規定された領域へ移動するとき、あるいはセクタ16からセクタC20へ移動するときのような、セクタの端近くでは特に頼りないものとなる。接続切れが発生しがちなのは、これらの移行領域や他の弱い信号の強度と品質の領域においてである。ここで記す接続とは、音声、マルチメディアのビデオまたはオーディオのストリーミング、パケット交換データおよび回線交換データ接続、ショートメッセージシーケンスあるいはデータバースト、ならびにページングを含み、かつこれらに限定されない。
【0002】
接続切れは、セルラー電話ユーザに対して迷惑となる程度のものから甚大な被害をもたらすものまで広汎に渡る。例えば、緊急の911の接続切れは重大で、致命的ですらある。接続切れは、消費者がサービスプロバイダを変更する原因となるに足るほどの大きなフラストレーションをもたらし得る。このように、接続切れの防止はセルラー電話ネットワークにとって非常に重要なものである。
【0003】
セルラー電話ネットワーク
図2は、MS24とBS26の間の通信リンク22の一例を表している。BS26からMS24への通信はフォワードリンクと呼ばれ、MS24からBS26への通信はリバースリンクと呼ばれている。BS26は一般的に複数の、典型的には3つのセクタから構成される。それぞれのセクタは別の方向に向けられた分離した送信機とアンテナ(受信機)を有している。セルサイトは統合化されていても区分化されていてもよいので、ここではBSとセクタとはある程度読み替えできるように解されるべきである。フォワードとリバースのリンクはいくつかのフォワードとリバースのチャネルを利用する。例えば、BS26はMSと多数のフォワードの共通チャネルあるいはリンクを用いて通信し、これらは以降で詳細に説明する1つまたは複数のパイロットチャネル、1つの同期チャネル、および1つまたは複数のページングチャネルを含むが、それらに限定されない。BS26はこれらのチャネルをネットワーク中の全てのMSに提供することができるので、これらのチャネルは共通チャネルと呼ばれる。一般的に、これらの共通チャネルはデータの搬送には用いられず、共通情報のブロードキャストや配送に用いられる。
【0004】
BS26内のそれぞれのセクタは、そのセクタを識別するものであり、かつMS24が簡単にデコードできるものである1つのパイロットチャネルをブロードキャストする。セクタとパイロットチャネルの両方は疑似ノイズ(PN)オフセットによって区別される。“パイロット”という単語はセクタという語とほぼ相互に読み替えできるように使用される、というのも1つのパイロットチャネルが1つのセクタを特定するからである。パイロットチャネルは、暗にタイミング情報をMSに提供し、またコヒーレント復調にも用いられるが、それ以外は一般的にデータを含まない。MSは最初にパワーオンとなると、パイロットチャネルの探索を開始する。MSがパイロットチャネルを捕捉する(復調可能になる)と、このパイロットチャネルに暗に存在するタイミング情報によってMSは迅速かつ容易にネットワークにより送信される同期チャネルを復調することができる。
【0005】
同期チャネルはより詳細なタイミング情報を有しているので、MSがこの同期チャネルを捕捉すると、MSはパイロットチャネルを送信しているのと同じBSによって送信されているページングチャネルを捕捉することができる。このBSはアクティブなBSとして知られている。あるセルラーネットワークがある特定のBSを介してMSとの通信を開始しようとしているとき、1つの“ページ”がこのBSのページングチャネルによってMSに送信される。このように、ひとたびMSが特定のBSのページングチャネルを復調することができるようになると、このMSはアイドルで外からの接続やメッセージの待ち受け状態にあるとき、このページングチャネルをモニタすることができる。一般的にそれぞれのBSは、全てのMSが共通して受信することができる1つのパイロットチャネル、1つの同期チャネル、および1つのページングチャネルを利用することができる。しかし、1つのページングチャネルを用いて同時に呼び出されるMSの数には実際上限りがあるので、複数のページングチャネルを使用するBSもある。
【0006】
フォワードの共通チャネルに加え、BS26は個々のMSと、多数のフォワード専用のチャネルあるいはリンクを用いて通信を行い、これらは複数のトラフィックチャネル、複数の付加チャネル、並びに複数のアクセスチャネルと制御チャネルを含むが、それらに限定されない。BSはこれらのチャネルを特定のMS24に提供するので、これらのチャネルは専用チャネルと呼ばれ、またこれらのチャネルはデータを搬送することができる。
【0007】
リバースチャネルは1つのアクセスチャネルおよび1つまたは複数のリバースのトラフィックチャネルと制御チャネルを有することができる。MSがBSからのページ呼び出しを受信すると、MSは1つのアクセスチャネル等を用いて接続のセットアップを開始する。
【0008】
これまでに説明したチャネルは異なるコーディングの方式を使用してもよい。時分割多元接続(TDMA)では、複数のチャネルが特定の1つの周波数のある時間ウインドウの中で、このウインドウ内の異なる時間にそれら複数のチャネルを送信することで提供される。このようにして、例えば、チャネルXが1セットのタイムスロットを使用中にチャネルYが別のセットのタイムスロットを使用することができる。周波数分割多元接続(FDMA)では、複数のチャネルが特定の時刻のある周波数ウィンドウの中で、このウィンドウ内の異なる周波数でそれら複数のチャネルの送信を行うことで提供される。
【0009】
符号分割多元接続(CDMA)は独自の符号列を用いて複数のチャネルを生成するスペクトラム拡散多元接続デジタル通信技術である。これによって、複数のMSが1つまたは複数の隣接するセルサイトのBSと、同時に同じ周波数で通信を行うことができる。CDMAでは、ある周波数と時間の領域において、それぞれのチャネルに特定のWalsh符号や疑似直交関数(QOF)のような直交符号が割り当てられる。ダイレクトシーケンスCDMAにおいては、それぞれのチャネルからのデータはWalsh符号あるいはQOFで符号化され、そしてそれらは合成されて1つの合成信号となる。この合成信号は特定の1つの時刻に広範囲の周波数帯に渡って拡散される。
【0010】
この合成信号がオリジナルのデータの拡散に用いられたのと同じ符号を使用して逆拡散されると、このオリジナルのデータが取り出される。このオリジナルデータの回復は、Walsh符号とQOFが、合成されたときにお互いに干渉しない符号化データを生成することにより可能となり、そのため後の時点においてこのデータが分離されて様々なチャネルにおける情報を回復させることができる。言い換えれば、2つの符号化されたデータ列が互いに足し合わさり3番目の系列を生成した場合、この3番目の系列にオリジナルの系列を相関させることにより、オリジナルの系列を回復することができる。特定の符号で復調する場合、他の符号を知る必要はない。
【0011】
CDMAシステムにおいては、信号は高レベルの狭帯域あるいは広帯域の干渉が存在する中で受信されることがある。現実的な信号受信の限界はチャネルの状況や干渉のレベルに依存する。干渉のタイプとしては、信号がマルチパスチャネルを介して伝搬したときに発生したもの、同一のまたは別のセルサイトにおいて他のユーザへ、または他のユーザから送信された信号、およびこの装置すなわちMSによって発生した自己干渉あるいはノイズがある。しかし、何が実際に送信されたかを決定するために、このフィールドにおけるノイズと干渉のエラー訂正が必要かもしれない。
【0012】
CDMA無線通信システムはすべて2500 Wilson Blvd.、Arlington、VA 22201、のTELECOMMUNICATIONS INDUSTRY ASSOCIATIONの規格技術部から発行され、またすべてここで参照として取り入れられた以下の規格、すなわち1993年発行のTIA/EIA−95A、1999年2月1日発行のTIA/EIA−95B2000年3月1日発行のTIA/EIA/IS−2000、1−5巻、リリースA、2001年6月1日発行のTIA/EIA−98D、WCDMA規格で2001年9月発行の3GPP TS 25.214 V4.2.0、2001年9月発行のTS 25.401 V5.1.0、2001年10月8日発行のTS 25.331 V4.2.0、および2001年10月2日発行のTR25.922 V4.1.0に十分に記載されている。
【0013】
以上あるCDMAシステムの一例を参照して説明したように、直交符号は特定のチャネルの符号化に用いることができる。例えば、上述したデコードが簡単なパイロットチャネルには固定で、全1符号W0 Walshコードのような既知の符号を用いることができる。同じように、同期チャネルは極性交換W32 Walshコードを用いてもよい。トラフィックチャネルのようなチャネルの定義に用いられる直交符号に加え、例えば自分がアンスクランブルすることができるトラフィックチャネルのデータのみをMSが読むことができるように、プライバシースクランブルを追加してもよい。
【0014】
個々のMSはBSのセクタを様々なセットにグループ化するが、これらのセットは以降で詳細に説明するアクティブセット、ネイバーセット、候補セット、残存セットを含み、かつこれらに限定されない。
【0015】
MSアクティブセットは、任意の時点においてMSと通信するBSセクタに関するパイロットのPNオフセット識別子を有する。ただし、ここで説明の簡単化のために、MSアクティブセットは“パイロット”を有していると認識されることを記しておく。このように、MSがアイドル状態であるが、1つのBSについてページ呼び出しとオーバーヘッド更新をモニタしているとき、このMSのアクティブセットはこのBSパイロットのPNオフセット識別子を唯一の構成要素として有する。しかし、MSが1つのBSあるいはセクタから他へハンドオフされ、そしてこのハンドオフの間に実際に複数のBSあるいはセクタと同時に通信できる時があり得る。例えば“ソフトハンドオフ”においては、BS“A”と通信しているMSは、最初にBS“A”との接続を切ることなくBS“B”と通信を開始し、その結果として“A”“B”の両BSがアクティブセット中に存在することになる。“ソフターハンドオフ”においては、BS“A”のセクタ“A”と通信しているMSは、最初にセクタ“A”との接続を切ることなくBS“A”のセクタ“B”と通信を開始し、その結果として“A”、“B”の両セクタがアクティブセット中に存在することになる。しかし、“ハードハンドオフ”においては、BS“A”と通信しているMSは、最初にBS“A”との接続を切ってからに限りBS“B”と通信を開始し、その結果として“A”“B”のいずれかのBSが任意一時にアクティブセット中に存在し、両方が存在することはない。
【0016】
MSが複数のBSと通信している間、MSはレイク受信フィンガーを同時に1つまたは複数のセクタからの複数のチャネルに割り当てる。MSが複数のBSと同時に通信しているとき、このMSはこれらのBSの両方から同一のデータを受信する。しかし、データが同一であっても、チャネルが異なることで、それらは異なるBSから別々に提供される。レイク受信機はそれゆえエンコードされたデータを異なるチャネルの異なるセクタから受信し、これらのセクタ毎に独立に復調し、それらのデータを合成することになる。このデータが最大レート合成あるいは他の同様な合成アルゴリズムによって合成される場合、強いチャネルからのデータの方が、より大きなエラーをもたらしがちな弱いチャネルからのデータよりもウエイトがかかる。このように、最終結果を生成するときには、正確である可能性がより高いデータがより高いウエイトを与えられる。
【0017】
MSがアイドル状態のとき、MSはアクティブなBSの近隣のBSを含むネイバーリストを共通チャネルで受信する。しかし、MSがアクティブでBSと1つのトラフィックチャネルで通信しているとき、ネイバーセットはこのトラフィックチャネルに基づいて更新される。
【0018】
アクティブ、ネイバー、あるいは(後述する)候補セットに存在しないネットワーク中の他のBSは、残存セットを構成する。図3に示されるように、MSがアイドルであろうがアクティブであろうが、ネットワークは繰り返しオーバーヘッドメッセージ30、32、および34をMSに送信する。これらのオーバーヘッドメッセージはネットワークの構成に関する情報を有している。例えば、拡張ネイバーリストのオーバーヘッドメッセージ34はMSに対してどのネイバーが存在してどこを探せばよいかを通知する。これらのネイバーの識別子は少なくとも一時的にMSのメモリ内に保存される。
【0019】
候補セットはMSが自己のアクティブセットの一部とするよう要求したが、今のところアクティブセットに昇格していないBSのセットである。これらの候補BSが今のところ昇格していないのは、MSからのメッセージに応えて、このMSに自己のアクティブセットを変更してこれらのBSを含めるよう指示するハンドオフ指示メッセージ(HDM)をネットワークが送信していないからである。このようなメッセージの交換は、概して後述するハンドオフの過程の一部として発生する。
【0020】
ハンドオフ
図4は、無線インフラストラクチャ56の一般的構造を表している。クライアントのMS36は、BS38のような近隣のBSから受信しているパイロットチャネルの強度を継続的にモニタし、規格に記載されるように固定値でも可変値でもよいハンドオフにおける“パイロット付加閾値”(T_ADD)よりも十分強いパイロットを探す。この技術分野においてネイバーセットとして知られる近隣のパイロットチャネル情報は、セルクラスター42を制御することができ移動交換センタ(MSC)44と通信するBSコントローラ(BSC)40を含むネットワークインフラストラクチャ体を介してこのMSに提供される。このMSとこれらのネットワークインフラストラクチャ体の1つまたは複数が、このMSとネットワークの相関性を制御するための1つまたは複数のプロセッサを有することを理解すべきである。このプロセッサはメモリと本技術分野の当業者には周知の他の周辺機器を含む。MS36がBS38によってカバーされる領域から他のBSの領域に移動すると、MS36はT_ADDよりも高い信号強度を有するパイロットをネイバーセットから候補セットへ昇格させ、さらにパイロットのネイバーセットから候補セットへの昇格をパイロット強度測定メッセージ(PSMM)によってBS38あるいは複数のBSに通知する。またこのPSMMは受信したパイロット信号の強度についての情報も有している。BS38はこの受信したPSMMに従って新しいBSまたはネットワークのアクティブセットを決定し、また新しいアクティブセットをHDMによってMS36に通知してもよい。ただし、ネットワークがBSの資源について対処が必要な問題を有していることもあるので、この新しいアクティブセットは常に正確にMSの要求を満たすとは限らない。
【0021】
MS36は、この新しいアクティブセットに含まれる全てのBSとBSセクタとの通信を維持することができる。このアクティブセットが複数のBSを有しているとき、MSはこれらのBSとソフトハンドオフにあると言われる。このアクティブセットが同一のBSを起源とする複数のセクタを有しているとき、MSはこれらのセクタとソフターハンドオフにあると言われる。
【0022】
MS36は一般的にこのアクティブセット中の全てのBSとBSセクタとの通信を、それぞれのBSのパイロットがハンドオフにおける“パイロット切断閾値”(T_DROP)よりも強度が高い限り維持する。このパイロットの1つが、T_TDROP(信号強度の一時的な落ち込みのあるパイロットが接続切れになることを防ぐための制限時間)を超える時間の間T_DROP未満まで弱まっていると、MS36はBSにPSMMを介してこの変化を通知する。そしてネットワークは、通常はT_TDROPの期間T_DROP未満に落ちたと報告されたパイロットのBSまたはセクタを含まない新しいアクティブセットを決定し、MS36にこの新しいアクティブセットを通知することができる。ネットワークによる通知があると、MS36はこの弱まったパイロットをネイバーセットに降格させる。このメカニズムによってソフトおよびソフターハンドオフが可能となる。T_ADDやT_DROPのような、このソフトハンドオフの過程で使用されるパラメータのほとんどはネットワークによって決定あるいは少なくとも制限される。
【0023】
ソフトハンドオフによって、MSは1つまたは複数のBS(セクタ)との通信を、これらのリンクのどの1つが単一のリンクで通信を可能とするには不十分な状態となっても、同時に維持することが可能となる。またこれによって、MSが1つのBS(セクタ)がサービスする領域から離れて他のBS(セクタ)がサービスする領域に入るとき、MSと交換センタとの通信の中断を回避することができる。
【0024】
接続が不全となって切れたときにMS36がハンドオフを開始するあるいはハンドオフの過程にあるのはよくあることである。これは、信号対干渉非が突然変化し、パイロットの汚染があり、また全て本技術分野において周知であるセル微動、容量制限、ネットワーク資源の有効性、およびネットワークのカバー状態に大きく影響される領域であるセルの境界近くに、貧弱なカバーあるいは弱信号環境が通常存在することから予期することができる。
【0025】
接続切れ
接続切れは種々の形で発生する。図5は、本技術分野においてCDMA無線ネットワークにおけるレイヤ2確認応答不全として知られる状況を示している。図5の例では、MSはBSによる確認応答を求めるPSMM48を送信している。このBSはそれを正しく受信しているかもしれないが、図5に示すケースでは、MSはBSの認証(ACK)46を受信していない。このMSは再送カウンタに従ってメッセージをNlm(=9)回再送信し、その後接続を終了(切断)する。レイヤ2確認応答不全が発生する元のメッセージが、MSが接続を維持するために必要なパイロットの要求を含むPSMM48であるときにこのタイプの不全がよく発生する。
【0026】
図6は、第2の状況として、CDMA無線ネットワークにおいて本発明を用いて回復が可能な状況を示している。この状況は、本技術分野においてフォワードリンクフェード不全として知られている。フェードとは受信信号パワーのある期間の減衰のことである。この状況に置いては、MSはN2m(=12)の連続する不良フレーム50を受信し、これに対する応答としてはそのMSの送信機52を使用不可とすることである。もしフェードタイマがT5m(=5)秒後に満了するまでにN3m(=2)の連続する良好フレームを受信することができない場合、このMSは接続54を切断する。MSがあるパイロットを候補セットに昇格させてPSMMを送信する必要がある間に、あるいはMSがPSMMを送信した後ハンドオフ指示メッセージを受信する前に、このタイプの不全がよく発生する。
【0027】
レイヤ2確認応答不全とフォワードリンクフェード不全は、過剰に高いフレームエラーレートまたは爆発的なエラーレートによって起こり得る。図7に示す様に、チャネル58は、典型的には80ミリセカンドの長さを持つスロット60すなわちスーパーフレームに分割することができる。それぞれのスロットは3つのフェイズ62に分割することができる。これらのフェイズは0、1、および2と番号付けられる。これらのフェイズの上に重なるのが4つのフレーム64である。これら4つのフレームは上記3つのフェイズとスーパーフレームの境界で揃うように並んでいる。それぞれのフレーム64はそれゆえ典型的には20ミリセカンドの長さとなる。5ms、10ms、および20msの倍数といった他のフレームサイズもまた用いることができる。例えばリバースアクセスチャネルやリバース共通制御チャネルの場合において、これらのデータフレームに先だって、様々な長さのプリアンブルがデータフレームに先立って送信されてもよい。フレーム64の内容は変化してもよいことが理解されるべきである。あるフレームは異なる符号のチャネルによって複合化されたパイロット、シグナリング、およびデータを含み、別のフレームはシグナリングのみを含み、また別のフレームはデータのみを有していてもよい。それぞれのフレーム64はまた、フレーム単位で変化し得るデータレートが異なっていてもよい。いくつかの通信規格の例では、全、半、四分の一、八分の一の4つのレートがある。このように、例えば、音声活動をすることない情報は八分の一フレームレートで送信することができ、それは、情報をより遅いレートで提供するにはより低いパワーあるいは帯域幅が要求されることから有益である。ネットワークの容量は干渉が減少するに従い増大する。
【0028】
実際の通信ネットワークにおいては、ゼロパーセントのエラーレート(すなわち、全てのフレームが適切に受信されること)を目標とするのは現実的でも望ましくもない。むしろ、例えば1パーセントのフレームエラーレートが目標とされる。望ましいフレームエラーレートを維持するためにパワー制御ループが用いられる。この例においては、もしこのフレームエラーレートが1パーセントより大きくなれば、パワー制御ループはフレームエラーレートが約1パーセントまで減少するよう、MSによって送信される信号のパワーを増大させることができる。一方、フレームエラーレートが1パーセント以下の場合、パワー制御ループはパワーを節約し、干渉を抑え、そしてフレームエラーレートが1パーセントまで上がることを許すよう、送信パワーを下げることができる。BSはそれゆえ継続的に、このMSが特定のエリアを動きまわる、あるいは別のタイプの干渉が始まりまたは終了するときに、約1パーセントのエラーレートを維持するために様々なパワーレベルで送信を行うよう、フレーム中の所定の位置内のパワー制御ビット群を用いてこのMSに指示することができる。このMSは大体においては、このBSによって自分に推奨されているパワーレベルに従う。それに加え、BSも自らの送信機の特定のチャネルへのパワーを、同様のパワー制御ループによって変化させることができる。これによって、BSとMSの両方が相手のパワーレベルを変化させるために継続的に互いにフィードバックを提供し合うことができる。しかしながら、チャネルパワー割り当て限度のようなBSの資源管理によっては、このBSは必ずしもその送信機のパワーレベルをMSからのフィードバックにもとづいて変更するとは限らない。
【0029】
上述したパワー制御ループにもかかわらず、限定された送信機パワーを持つMSが、あるセルラーネットワークを動きまわって物理的障害、近接チャネルからの干渉、およびセクタの辺部近くである所在地による信号強度や信号品質の変化を経験しするときは、エラーレートをおよそ1パーセントに制御することができないかもしれない。エラーレートが許容不能レベルにまで上昇すると、接続切れが問題となる。
【0030】
レスキュー手続き
リバースリンクあるいは接続の再開にもとづくレスキュー手続きは以前に提案されている。一般的に、セクタ(パイロット)であって、仮に接続不全のMSが自己のアクティブセット中にこのパイロットを有していたなら接続を維持することができたものがあれば、接続不全のレスキューは可能である。レスキュー手続きはこれらの失われているパイロットをMSとネットワークのアクティブセットに加えるよう試みる。本来は、MSはパイロットを自律的にそのアクティブセットに加え、さらにリバースリンクが開始したレスキューの場合、更新されたアクティブセットを用いて、大体においては予約され(専用とされ)あらかじめ設定されたリバースレスキューチャネルを送信する。ネットワークはそのアクティブセットを更新し、またMSが送信を検知できるようにあらかじめ設定されたフォワードレスキューチャネルを送信する。大体においては、レスキューを完遂するために、チャネル割り当てあるいはハンドオフメッセージを用いてMSに形式的にネットワークのアクティブセットと同期する新しいアクティブセットを指定することができる。
【0031】
リバースリンクにもとづいたレスキュー方法論は共通の、あるいは専用のチャネル手法を含む。典型的なリバースにもとづいたレスキュー手続きにおいては、MSは共通と専用のいずれかのチャネルからレスキューチャネルを送信し、通信ネットワークは1つまたは複数のセクタをこのレスキューチャネルを復号する試みにおいて利用する。
【0032】
フォワードにもとづいたレスキュー手続きも提案されている。そのようなフォワードにもとづいたレスキュー手続きの1つは、2001年10月16日提出の米国特許出願番号09/978974である“電気通信システムにおけるフォワードリンクにもとづくレスキューチャネル方法および装置”で開示され、そこでは電気通信ネットワークにおけるMSとインフラストラクチャの間の信号損失と接続切れを防止する方法および装置が説明されている。そこで呼ばれる接続とは、音声、マルチメディアのビデオまたはオーディオのストリーミング、パケット交換データおよび回線交換データ接続、ショートメッセージシーケンスあるいはデータバースト、ならびにページングを含み、かつこれらに限定されない。そこで通常フォワードレスキュー手続き(FRP)と呼ばれる手続きによって、それがなければ接続切れに終わるMSあるいはBSの不全からシステムは復帰することができる。FRPを用いて解決可能な不全のシナリオの例としては、フォワードリンクレイヤ2(L2)確認応答不全と、ある閾値を超える期間の信号のフレームの損失の原因となるフェードによるフォワードリンク信号の損失がある。潜在的な接続切れの状況に対応して、MSは切断の危機にある接続を復帰させるために、自律的にBSのパイロットチャネルを自己のレイク受信機のアクティブセットに追加する。同時に、ネットワークのインフラストラクチャはFRPの最中にMSによってモニタされる見込みのある別のフォワードリンクチャネルにおいて送信を開始する。もし同じチャネルがMSによってモニタされておりまたインフラストラクチャの送信の対象になっている場合、この切断の危機にある接続は復帰することができる。
【0033】
一般的なFRPはMSのFRPをを含み、またインフラストラクチャのFRPを含んでもよい。図8は、典型的な接続レスキュー状態にあるMSのFRPとインフラストラクチャのFRPの時系列の一例を示している。MSのFRPはどのようなレスキューにおいても主要なものであるが、インフラストラクチャのFRPは、推奨されるものの、必須ではない。
【0034】
MSのFRP開始のきっかけは、発生する不全のタイプに依存する。レイヤ2不全の場合、FRPは確認応答を要求するメッセージの複数の再伝送不全によって発動する。フォワードリンクフェード不全の場合、FRPは閾値(参照番号72)を超える期間信号の損失がある場合発動する。
【0035】
MSはFRPタイマをレスキューの試みが開始するときにスタートさせる(参照番号74)。このFRPタイマがレスキュー完了前に満了すると、接続は切れる。さらに、レスキューの試みが開始するとき、MSは自己の送信機の作動を停止し、新しいアクティブセットを選択する(参照番号74)。本実施形態においては、MSは実効的に自ら送信したPSMMにもとづいて(PSMMが実際に送出、または確認応答されるとされないとに関わらず)ハンドオフの指示があると仮定する。言い換えれば、MSはハンドオフの指示を受けることなく自発的にパイロットをアクティブセットに昇格させ(すなわち、新しいアクティブセットは古いアクティブセットと自発的に昇格されたアクティブなパイロットである:S”=SUS’)(参照番号76)。そしてMSはこのレスキューチャネルのための新しいアクティブセットの探索を繰り返し始める。上述した様に、レスキューチャネルという言葉は、様々な通信プロトコルによって利用される通り、チャネルを定義する様々なスキームを包含するものであるが、説明の簡単化のために、ここではレスキューチャネルは仮定符号チャネル(ACC)(参照番号78)として認識される。
【0036】
上記の様に、インフラストラクチャのFRPはネットワーク内のあらゆるBSにとって、推奨されるものの、厳密に必須ではない。もしこのインフラストラクチャのFRPが実装されていれば(参照番号80)、このインフラストラクチャ(ネットワーク)はACCの送信元のセクタを選択する。
【0037】
FRPの一実施形態においては、レスキューの最中にACCを通じてヌルの(空の)データが送信される。別の実施形態においては、データはACCを通じて送信されてもよいが、MSは実際にこのACCを見つけて正しく復調する場合に限りこのデータを聞き取る。
【0038】
ある時点において、このMSはACCにおけるN3Mの良好なフレームを見つけて復調し(参照番号82)、自己の送信機の作動を開始し、このBSに対して返送を始める。MSとBSの双方が所定の数の良好なフレームを受信すると、レスキューは完了し(参照番号84)、BSはMSに対してより常設的なチャネルを再割り当てすることができる。更に、このネットワークは例えばACCをオーバーヘッドによって再割り当てすることもできる。またBSは、一般もしくはユニバーサルハンドオフ指示メッセージの様な既存のメッセージを再利用可能なレスキュー完了ハンドオフメッセージを送信することで、MSにこのレスキューの後に削除するアクティブセットを再指定することも可能である。フォワードにもとづくレスキュー手続きの例についての更なる詳細は、2001年10月16日提出の米国特許出願番号09/978,974“電気通信システムにおけるフォワードリンクにもとづくレスキューチャネルの方法および装置”を参照されたい。
【0039】
移移動局の送信パワーレベル
通常の作動においては、MSはネットワークから受信した伝送データ中のパワー制御ビット群によって決められたパワーレベルで送信を行う。ビット群はフォワードリンクにおいては“穴空き”になっており、それによってMSにパワーを1ステップ上げるまたは下げるよう指示をする。“穴空き”とは、送信するBSの変調前の出力ストリームの毎X番目のビットが、MSにSにパワーを1ステップ上げるまたは下げるよう伝えるゼロまたは1で置き換えられることを意味している。これらのビット群はデータ伝送において重きを置かれる部分ではないので、エラー訂正は行われない。このビット群はデータストリームのMSにとって既知の固定位置で穴空きとなっているので、MSはこれらのビット群をパワー制御ビットとして読みとることができる。このステップのサイズはオーバーヘッドメッセージによって提供される。MSの送信パワーレベルの調整のための変化ステップのサイズの特定は、米国特許番号5,896,411に開示されている。
【0040】
MSの送信パワーレベルはMSによって受信されたパワーレベルの関数である。任意の時刻における受信と送信のレベル間の差は、一般的には固定の差(オープンループパワー制御を示す)に対して、パワー制御ビット群によって規定された付加量(クローズドループパワー制御を示す)を加算した、あるいは差し引いたものである。このように、クローズドループパワー制御なしでは、送信パワーレベルはこの固定の差でオフセットされた受信パワーレベルに“追従”する。パワー制御ビット群によって規定されるパワーレベルの調整は以前に受信されたパワー制御ビット群の総和である。言い換えれば、(現在の)総パワーレベルを決定するためには、一連の“アップ”と“ダウン”のステップの全てを考慮に入れなければならない。
【0041】
以下に示す表1は、通常作動中のMSの平均送信出力パワーをdBm単位で概略的に表している。この平均送信出力パワーは、MSの平均受信入力パワーの符号反転値(表1の第1行)にオフセットパワー(表1の第2行)を付加することで計算される。ここでいう“平均受信入力パワー”は、直近のパワー制御グループの時間(例えば1.25ms)に渡って計測された瞬時平均パワーを指していてもよいし、あるいはこの技術分野における当業者に理解できる受信パワーを指定するための他の方法に係るものでもよい。このオフセットパワーはオープンループパワー制御を示す固定量である。例えば、この平均受信入力パワーが−106dBmでオフセットパワーが−76dBである場合、平均送信出力パワーは−(−106dBm)+(−76dB)=30dBである。
【0042】
更に、クローズドループパワー制御(表1の第3行)を示すパワーがMSの平均送信出力パワーに加えられてもよい。信号環境が同一ならばオフセット値のみの使用でも十分である。しかし、フォワード/リバースリンク不均衡と呼ばれる、アップリンク(リバースリンク)とダウンリンク(フォワードリンク)のそれぞれが異なる信号環境下に置かれる場合があり得るので、クローズドループパワー制御が提供される。
【0043】
【表1】
【0044】
図9は通常のMS通信機のブロック図である。受信経路においては、アンテナで受信された信号はデュプレクサ90を通ってローノイズアンプ(LNA)92によって増幅される。LNA92は、近隣のキャリアからの干渉である相互変調歪み(IMD)を最小化するために用いられる。受信した信号は受信機の自動ゲイン制御ブロック(AGC)94においてゲイン調整され、中間周波数(IF)ブロック96によってベースバンドにダウンコンバートされる。なお、ACGブロック94はまた受信信号強度指標(RSSI)を計測し生成する。このベースバンド信号は、レイク受信機、相関器、インターリービング、デコーダ等を含むベースバンドブロック98で処理される。送信経路においては、ベースバンド信号はIFブロック96でアップコンバートされ、その後パワー制御として送信自動ゲイン制御(TX AGC)ブロック150でRSSIを用いてゲイン調整される。このIF信号はパワー増幅器PA152によって増幅され、デュプレクサ90を通ってアンテナ88へ届く。1つまたは複数のプロセッサ154はこの通信機の制御を行う。
【0045】
レスキューの最中、レスキュー手続きがリバースにもとづくかフォワードにもとづくかに関わらず、レスキュー中のある点においてMSはリバースリンクを通じて送信を行わなければならない。例えば、あるリバースにもとづくレスキュー手続きにおいて、MSはレスキューチャネルを送信する。フォワードにもとづくレスキュー手続きにおいては、ネットワークからレスキューチャネルを受信した後、MSはデータあるいはメッセージング情報を送信することができる。どちらの場合でも、レスキューの際にリバースリンクで送信するとき、そのMS送信機のパワーレベルが確定していなければならない。
【0046】
MSの送信パワーレベルを確定する1つの方法は、MSの送信をレスキューが開始する前の接続で用いられた最後のパワーレベルでスタートすることであろう。この方法論を用いて、先述したクローズドループパワー制御は、MSの送信パワーが一定となるように停止される。しかし、上記接続において使用された最後のパワーレベルは最大パワー近くとなっていがちである、というのも接続不全の前には接続は高いフレームエラーレートの状態になっており、それゆえネットワークによって最大のパワーレベルとなるよう制御されがちとなるからである。
【0047】
それゆえ、MSの送信機の、レスキュー手続きの最中のリバースリンク通信における、切断した呼を迅速に高い成功率で復帰させるための効果的で信頼性のあるパワーレベルを決定する方法および装置が必要となる。
【0048】
発明の概要
接続のレスキューの間、レスキュー手続きがリバースにもとづいていようとフォワードにもとづいていようと、そのレスキューのある点においてMSはリバースリンクを通じて送信を行わなければならない。例えば、あるリバースにもとづくレスキュー手続きにおいて、MSはレスキューチャネルを送信する。フォワードにもとづくレスキュー手続きにおいては、ネットワークからレスキューチャネルを受信した後、MSはデータあるいはメッセージング情報を送信することができる。どちらの場合でも、レスキューの際にリバースリンクで送信するとき、そのMS送信機のパワーレベルが確定していなければならない。
【0049】
本発明の各実施形態は、レスキューの間にオープンループパワー制御(ここで送信パワーは受信のRSSIの関数である)をサポートするメカニズムに視点を置いている。レスキューの送信がスタートすると、クローズドループパワー制御は停止され、MSの平均レスキュー送信出力パワーレベルを決定するために、受信パワーの変化等にもとづいてオープンループパワー制御が調整される。
【0050】
1つの実施形態では、MSの平均レスキュー送信出力パワーレベルは、最初にMSが送信を再開するときの、MSの平均レスキュー受信入力パワーレベルを決定することで計算される。そして、MSの平均レスキュー送信出力パワーレベルは、MSの平均レスキュー受信入力パワーレベルの符号反転値を4つまでのパラメータを用いて調整することで計算される。これら4つの変数は、(1)プレレスキューパワーデルタ、(2)レスキュー干渉デルタ、(3)レスキュー遅延補償値、および(4)既定値である。
【0051】
プレレスキューパワーデルタは、レスキューが開始する前のネットワークによるパワー制御グループ(パワー制御ビット群)の最後の送信時において、MSの平均受信パワーレベルをMSの送信パワーレベルから差し引くことで計算される。MSの送信がレスキューの途中で開始すると、MSの平均レスキュー送信出力パワーレベルが、上記プレレスキューパワーデルタを平均レスキュー受信入力パワーレベルの符号反転値に加算することで計算され、レスキューの期間のクローズドループパワー制御の欠如を補償する。
【0052】
MSはまた、レスキュー干渉デルタをMSの平均送信出力パワーレベルに加算するが、ここでレスキュー干渉デルタは通常の(レスキュー前の送信の最後の)アクティブセットの干渉補正項と、更新されたレスキューアクティブセットの干渉補正項との差を表す。
【0053】
MSはまた、レスキュー遅延補償値をMSの平均レスキュー送信出力パワーレベルに加算し、フェードの開始とMSの送信の開始の間の時間tの増大に伴って、新しい平均レスキュー送信出力パワーレベルの、増大した不確定性を補償する。一般的に、tが増大すると、新しいMSの送信パワーレベルの計算における更なる不確定性もたらされ、初期レスキュー送信パワーレベルを増加させることがより望ましくなり得る。
【0054】
MSによって行われる上記の調整に加え、遅延、クローズドループパワー制御の欠如による不確定性を補償し、またレスキューの成功の可能性を増大させるためにMSの平均レスキュー送信出力パワーレベルに加算する既定値を、MSはレスキューに先立ってネットワークから受信してもよい。この既定値はネットワークまたは規格によって特定される。
【0055】
本件技術に習熟した者には、以下の本発明の実施形態の詳細な説明から、図面および付加した請求項を併せて読むことで、本発明の実施形態の多数の特徴や利点が容易に明らかになるだろう。
【0056】
好ましい実施形態の説明
以下の好ましい実施形態の説明において、本明細書の一部を成し、本発明が実施可能となる図示特有の実施形態として表される添付図面への参照が行われる。他の実施形態を利用することもでき、また本発明の好ましい実施形態の範囲から離れることなく構造的な変更を行うこともできることを理解すべきである。
【0057】
さらに、ここで行われる説明は、説明のためのみにCDMA通信プロトコル(符号にもとづいたプロトコル)を参照するが、本発明の実施形態は他の通信プロトコルおよびデジタルラジオ技術に通常応用可能であり、またCDMA、TDMA、FDMA、GSM、GPRS等を含み、またこれらに限定されないことを理解すべきである。
【0058】
本発明の実施形態は、レスキューの間にオープンループパワー制御(ここで送信パワーは受信RSSIの関数である)をサポートするメカニズムを指向している。レスキュー送信が開始すると、クローズドループパワー制御が停止され、受信パワー等の変化に基づいてオープンループパワー制御が調整される。
【0059】
図10aは本発明の一実施形態の例によるフォワードにもとづくレスキュー作動前、あるいは途中の受信および送信パワーの時系列である。Rxのプロット100は、特定のチャネルの総受信dBmパワー(RSSI)である、MSの平均受信入力パワーを示す。なお、受信パワーのプロットとレベル100、120および116は左の目盛りに対応し、送信パワーのプロットとレベル102、122および112は右の目盛りに対応する。図10aの例では、通常の(レスキューでない)作動においては、MSの平均受信入力パワー100はおよそ−106から−75dBmまで変化し、MSの送信パワーはおよそ+10から+25dBまで変化する。図10aの例では、時刻104におけるフェードの検出に先立ち、MSの平均受信入力パワー100は一般的に減少し(結果上昇カーブとなる)、そして同時に、MSが通常クローズドループパワー制御ビット群に強い傾向がなければ受信パワーレベル100に追従することによりMSの送信パワー102は増大する。104のある時点において、フェードが検出され、MSは自己の送信機の作動を止め、続いてフォワードレスキュー手続きが時刻106で開始される。なお、時刻104はフェードが最初にスタートする時刻ではなく、むしろフェードがMSのプロセッサによって検出される時刻である。
【0060】
フォワードレスキュー手続きにおいて、MSはレスキューチャネルをネットワークから受信しようと試みる(参照番号136)。ある後の時刻108において、もしMSがレスキューチャネルを正しく受信することができれば、MSはリバースリンクにおいて送信を再開し、確認応答やハンドオフメッセージングがMSとネットワークとの間で交換され、レスキュー手続きは時刻134で接続が継続されて終了する。このとき、MSの平均レスキュー受信パワーレベル116はそのレスキュー前レベル120から変化していてもよい。
【0061】
本発明の実施形態においては、まずMSが時刻108で送信を再開するときのMSの平均レスキュー受信入力パワーレベル116を決定し、そしてMSの平均レスキュー送信出力パワーレベル112をデルタパワーレベル114によってMSの平均レスキュー受信入力パワーレベル116に関連づけることで、MSの平均レスキュー送信出力パワーレベル112を計算する。
【0062】
このデルタパワーレベル114は本来、MSの平均レスキュー送信出力パワーレベル112をMSの平均レスキュー受信入力パワーレベル116に関連づけるオフセットを有している。図11に示す様に、このオフセットとMSの平均レスキュー受信入力パワーレベル116は、通信環境の性質に従って固定(すなわち一定)1100、線形1110、あるいはより高次の多項式関数1120となってもよい。図11は平均受信パワーレベルに対するこのオフセットの複数の実例を示しているが、本発明はこれらの実例に限定されず、テーブル検索や平均受信入力パワーレベルをオープンループの手法で送信出力パワーと関連づける他の方法を用いてもよい。
【0063】
平均レスキュー受信入力パワーレベル116の符号反転値は、デルタパワーレベル114によって4つまでのパラメータを用いて調整され、MSの平均レスキュー送信出力パワーレベル112を生成する。これら4つのパラメータは(1)プレレスキューパワーデルタ、(2)レスキュー干渉デルタ、(3)レスキュー遅延補償値、および(4)既定値であり、以下で詳細に説明される。なお、MSの平均レスキュー送信出力パワーレベル112は、MSの平均レスキュー受信入力パワーレベル116の変化によって、レスキューの途中で再計算されてもよい。それに加え、レスキューが進展するにつれてデルタパワーレベル114を構成する選択されたパラメータはレスキューの途中で動的に再計算されてもよく、またパラメータがデルタパワーレベル114の計算に追加され、または削除されて、結果として時刻108から時刻134のレスキューの終了までデルタパワーレベル114が変化してもよい。なお、時刻134でレスキューが完了した後、MSの受信パワー100と送信パワー102はMSによって受信されるパワー制御ビット群に従って変化してもよいことにも。
【0064】
図10bは本発明の一実施形態の例によるリバースにもとづくレスキュー作動前、あるいは途中の受信および送信パワーの時系列である。この図10bの例によれば、時刻104のある時点においてフェードが検出され、MSは自己の送信機の作動を止め、次に時刻106においてリバースレスキュー手続きが開始される。このとき、MSの平均レスキュー受信パワーレベル116はレスキュー前レベル120から変化していてもよい。このリバースレスキュー手続きにおいて、MSはネットワークにレスキューチャネルを送信し、同時にネットワークからフォワードリンクを受信しようと試みる(参照番号130)フォワードレスキュー手続きと同様、リバースレスキュー手続きを利用する本発明の実施形態においては、MSの平均レスキュー送信出力パワーレベル112をデルタパワーレベル114によってレスキューのスタート106におけるMSの平均レスキュー受信パワーレベル116と関連づけることで、MSの平均レスキュー送信出力パワーレベル112を決定する。このデルタパワーレベル114は本来、MSの平均レスキュー送信出力パワーレベル112をMSの平均レスキュー受信パワーレベル116に関連づけるオフセットを有している。図11に示すように、このオフセットとMSの平均レスキュー受信パワーレベル116は固定(一定)1100、線形1110、あるいはより高次の多項式関数1120となってもよい。
【0065】
平均レスキュー受信入力パワーレベル116の符号反転値は、デルタパワーレベル114によって先述した4つのパラメータのうち1つまたは複数を用いて調整されることで、MSの平均レスキュー送信出力パワーレベル112を生成する。ある後の時刻132において、もしMSがこのMSに指定されたフォワードリンクチャネルを正しく受信することができれば、ハンドオフや確認応答メッセージがMSとネットワークとの間で交換され、接続は継続することができ、レスキュー手続きは時刻138で終了する。
【0066】
デルタパワーレベル114を構成できる上記した4つのパラメータ、MSの平均レスキュー受信パワーレベル116、およびこれらのMSの平均レスキュー送信出力パワーレベル112への寄与は表2に示され、以下で個々に議論される。なお、これら4つのパラメータ(プレレスキューパワーデルタ、レスキュー干渉デルタ、レスキュー遅延補償値、および既定値)の1つまたは組み合わせは、オープンループパワー制御を示すオフセットがデルタパワーレベル114の計算に本来備わっているものである限り、デルタパワーレベル114を計算するために用いられてもよいことに注意すべきである。
【0067】
このオフセットはプレレスキューパワーデルタに本来備わっているものなので、このプレレスキューパワーデルタはデルタパワーレベル114を計算するために単独でも他の3つのパラメータの1つまたは複数と組でも用いることができる。一方、既定値はもしそれがオフセットを含んでいれば、デルタパワーレベル114を計算するために単独でも他の3つのパラメータの1つまたは複数と組でも用いることができる。
【0068】
【表2】
【0069】
本発明の一実施形態において、不全となりそうな接続が検出される前の最後の信頼性のあるパワー制御グループ(パワー制御ビット群)の受信時刻における送信および平均受信パワーレベルの両方を計測し保存する。図10aおよび10bの例では、最後の信頼性のあるパワー制御グループの受信時刻はほぼフェードが検出された時刻104であり、そのときのMSの送信および平均受信パワーレベルはそれぞれ参照番号120および122によって示される。そして、プレレスキューパワーデルタ124は平均受信パワー120を送信パワー122から差し引くことで算出される。なお、このプレレスキューパワーデルタ124は、クローズドループパワー制御に加えて先述したオフセットを含むことになる。MSの送信がレスキューの途中の時刻108で開始すると、このレスキュー期間におけるクローズドループパワー制御の欠如を補償するために、プレレスキューパワーデルタ124が平均レスキュー受信値有力パワーレベル116の符号反転値に加算される。
【0070】
なお、上記したプレレスキューパワーデルタ124の計算の説明は、不全となりそうな接続が検出される前の最後の信頼性のあるパワー制御グループの受信時刻のパワーレベルの使用に基づいている。この時刻は、信頼性のあるパワー制御が可能であった最後の時点として定義されてもよい。信頼性のあるパワー制御は複数の方法で定義でき、それは例えばパワー制御ビット群の受信を含む。このパワー制御ビット群の信頼性は、穴空きとなっているフレームのシンボルあるいはビットエラーレートにもとづいていてもよい。このパワー制御ビット群はレスキューの開始より遙か以前に受信されていてもよい。最後の信頼性のあるパワー制御ビット群の受信とレスキューの開始との時間間隔が大きくなるほど、より条件が変化してしまっていることになりやすい。それゆえ、本発明の別の実施形態においては、最後の信頼性のあるパワー制御グループの受信と不全となりそうな接続(例えばフェード)の検出との時間間隔が大きくなるにつれ(図10aおよび10bの参照番号126)、より大きなオフセットが補償のために用いられる。例えばこのオフセットは、最後の信頼性のあるパワー制御グループの受信と不全となりそうな接続(例えばフェード)の検出との時間間隔126の(例えば線形あるいはより高次の多項式)関数として増大することができる。この関数を定義する係数はMSにあらかじめ保存されていてもよいし、レスキューに先立つメッセージによってネットワークからMSに通知されてもよい。
【0071】
更に他の実施形態においては、別の時間参照が使用され得る。例えば、送信された最後のフレームによる受信および送信パワーレベルの1つあるいは両方の平均が、プレレスキューパワーデルタの計算に用いられ得る。
【0072】
レスキュー干渉デルタ
上記した通り、MSは通常作動中はアクティブセットANを維持し、レスキュー中は更新済みレスキューアクティブセットARを自発的に生成する。ANはパイロット強度PSNの重み付き和によって表すことができ、ARはパイロット強度PSRの重み付き和によって表すことができる。MSの更新済みレスキューアクティブセット中のセクタ/BSは、通常のアクティブセットとは異なりがちであり、また通常のアクティブセットとは異なる干渉のレベルで受信されがちである。この理由から、本発明の実施形態においては、MSは通常の(レスキュー以前の送信の最後における)アクティブセットに対する干渉補正項と更新済みレスキューアクティブセットに対する干渉補正項との差を表すレスキュー干渉デルタを利用することができる。
【0073】
これらの干渉補正項は、アクティブセットのPS値(パイロットEC/IO値の混合)の関数として計算される。例えば、通常のアクティブセットICNおよび更新済みレスキューアクティブセットICRに対する干渉補正(IC)項は以下のように計算される:
ICN=min(max(OFFSET−PSN,LO_IC),HI_IC)dB、
ICR=min(max(OFFSET−PSR,LO_IC),HI_IC)dB、
ただしOFFSETは重要なPS値の範囲内の最大値である。OFFSETは、この最も大きい重要なPS値を有用なIC項の範囲内の最小値LO_ICに写像するために用いられ、またそれぞれの重要なPS値をLO_ICからHI_ICまでの範囲の有用なIC値に写像するために用いられる。それゆえ一般的に、上記のそれぞれの等式は、重要なPS値を含む多数のあり得るPS値を、LO_ICとHI_ICによって制限される有用なIC項の小さな領域に写像する。なお、最も大きい重要なPS値(すなわちOFFSET)とOFFSETより大きな全てのPS値は、有用なIC値の最小値LO_ICに写像され、最小の重要なPS値と、この最小の重要なPS値より小さい全てのPS値は、有用なIC値の最大値HI_ICに写像されることになる。
【0074】
OFFSET値は、推定されたあるいは経験的に決定された重要な混合パイロット強度値(あるいは逆に言えば、MSの平均レスキュー送信出力パワーレベルに対するその影響が同様な手法で取り扱われることになる、推定されたあるいは経験的に決定された重要でない混合パイロット強度値)にもとづいて選択されてもよく、LO_ICとHI_ICは、MSの平均レスキュー送信出力パワーレベルに対するレスキュー干渉デルタの望まれる最高の寄与に依存して選択されてもよい。OFFSET、LO_IC、およびHI_IC値はあらかじめMSに保存されていてもよいし、レスキューに先立つメッセージによってネットワークからMSに通知されてもよい。使用可能な(重要な)PS値は典型的にはおよそ−5からおよそ−18dBまでの値をとる。この範囲はネットワークの設定あるいはシステムの設計に依存することになる。OFFSETはそれゆえ使用可能な範囲の最初(例えば−5dB、使用可能なPS値の範囲内の最大値)とほぼ一致するように選ぶことができる。使用可能なPS値の範囲内の最低値はMSのモデム(すなわち探索機の感度とレイク受信機の限界)の性能によって決定される。典型的にはレイク受信機はほぼ−25dBの低い信号レベルを受信することができるが、信頼性があるのはほぼ−20dBの低さまでである。
【0075】
IC項が算出されると、レスキュー干渉デルタの計算が可能となる。本発明の実施形態において、レスキュー干渉デルタは:
ICR−ICN
となる。
【0076】
他の実施形態では、レスキュー干渉デルタは、レスキュー手続きの実行中に更新されたパイロットARのレスキューアクティブセットあるいは混合通常パイロット強度値PSRの変化に伴って再計算されてもよい。この再計算はARまたはPSRの変化を反映するために固定の時間間隔で発生してもよく、またARあるいはPSRの変化があった時にのみ発生してもよい。
【0077】
レスキュー干渉デルタの計算の一例を、図解の目的のみのために示す。多数のあり得るPSの値を有用なIC項の範囲である0から7まで(3ビットの2進数で表示できる)に写像することが要求され、そこでは最大の重要なPS値−7は0に写像され、最小の重要なPS値−14は7に写像される等々となり、そしてIC項は以下のように計算される:
ICN=min(max(−7−PSN,0),7)dB
ICR=min(max(−7−PSR,0),7)dB
これに従うICNの写像の結果は以下の表3に示される。
【0078】
【表3】
【0079】
例えば、もしPSR=−11dBでPSN=−14dBならば、ICR=4dBでICN=7dBとなり、レスキュー干渉デルタは−3dBとなる。この例では、レスキューアクティブセットAR中のパイロットは通常アクティブセットANのパイロットよりも3dB強く、したがってAR中のBSはAN中のBSよりもMSから良好に受信し、より少ないMS送信パワーで足り、本例においては、MSの送信パワーは3dB下げられる。ここでは大きなリンク不均衡がないと仮定している。なお、もしこのPSの特定の値が、上記の例のように−7〜−14dB(7をオフセットとする7の幅)の範囲内にあれば、PS値のIC値への写像は不要である、というのも単にPSN−PSRの計算、つまり−14−(−11)すなわち−3dB、を行うことで同じ結果を得ることができるからである。しかし、PS値の特定の値が−7dBから−14dBまでの範囲外にある場合、上記の等式で定義される写像を用いなければならない。例えば、もしPSR=−6dBでPSN=−17dBなら、ICR=0dBでICN=7dBであり、レスキュー干渉デルタは−7dBである。なお、この例では、PSN−PSRが−11dB、すなわち別の結果となってしまう。
【0080】
別の実施形態では、IC項は通常およびレスキューアクティブセットのPS値以外の基準にもとづくこともできる。例えば、平均パイロット強度値を用いることができる。さらに、最早(最短)のパイロット、参照パイロット(MSによってタイミングの参考として用いられるパイロット)、あるいは最弱または最強アクティブセットパイロットのような、単一のパイロットを用いることができる。あるいは、パワーを最大化するために最強の通常アクティブセットパイロットを最弱のレスキューアクティブセットパイロットと組み合わせて用いることもできる。
【0081】
なお、レスキューインターフェースデルタは干渉の差を補償するが、MSの平均レスキュー受信入力パワーレベルと同じことは実現しない。例えば、MSの平均受信入力パワーレベルがレスキュー手続きの途中で改善した(すなわち、MSの平均受信入力パワーレベルが不全以前の方が低く、レスキュー中に増加した)場合を考える。この場合、プレレスキューデルタを組み込めば、今はMSの平均レスキュー受信入力パワーレベルが不全以前より高いので、単独で送信パワーが相対的に低くなる原因となる。しかし、もしMSの受信干渉が増大してMSのレスキューアクティブセットの受信信号の強度が今度はMSの以前(レスキュー前)のアクティブセットの信号強度より小さい場合、MSの平均レスキュー受信入力パワーレベルはより弱い送信パワーを用いるよう求めるが、レスキュー干渉デルタはより高い送信パワーを用いるよう求め、これによってMSの平均レスキュー受信入力パワーレベル調整を打ち消す作用となる。
【0082】
レスキュー遅延補償
再び図10aおよび10bの例に戻り、信頼性のあるパワー制御が可能な最後の時点として定義される時刻104と、レスキュー134あるいは138の終了との間に時間128で示される時間がある。信頼性のあるパワー制御を、例えばパワー制御ビット群の受信、あるいはフォワードリンクの受信を含む複数の方法で定義することができる。なお、図10aにおいては、時刻108の後のどの時刻においてもレスキューが完了し得るのに対して、図10bにおいては、レスキューは106以降のどの時刻においても完了し得る。しかし、レスキューが完了することなく進行し、時間128が長くなると、MSの最後のパワー制御ビットの受信からより時間が経過し、MSの位置が変わってしまうおよび/または環境が変化してしまう可能性が増大する。一般に、時間128が増加すると、新しく必要となるMS送信パワーレベル112の計算においてより大きな不確定性がもたらされる。本発明の実施形態においては、レスキュー遅延補償値は時間128の増大を考慮に入れようとする。一般には、時間128が長くなるほど、条件が変化してしまう可能性が高くなり、したがって補償のために更なるパワーが追加される。このレスキュー遅延補償値は、例えば、時間128の(例えば線形)関数であってもよいし、MSにあらかじめ保存された係数が乗じられた定数であってもよいし、またはレスキュー前にネットワークからMSにメッセージによって伝えられてもよい。遅延時間128の増大と共にレスキュー遅延補償値は増大し、あるいは固定の時間間隔で再計算されてもよい。
【0083】
他の実施形態においては、時間128の計算は、MSの送信機が停止されてから、フェードの開始から、フェードがMSによって通知されてから、フェード条件が開始してから、あるいはパワー制御ビット群が(例えばフレームエラーレート閾値によって規定される)信頼性を有して受信された最後の時点から、行ってもよい。
【0084】
既定値
本発明の他の実施形態においては、デルタパワーレベル114は既定値を含んでいてもよい。一般的に、この既定値の目的はMSの平均レスキュー送信出力パワーレベルを増大させて、MSが過度に高い送信パワーレベルを使用しないことを保証しつつ、このMSのレスキュー送信が信頼性をもって受信される機会を最大化することである。この既定値は、レスキューの開始前のメッセージング中にネットワークからMSに通知されてもよい。他の実施形態では、この既定値はMS中の固定値となっていてもよい。
【0085】
ある実施形態においては、先述したオープンループパワー制御が寄与するオフセットが、欠けているクローズドループパワー制御を補償するためにこの既定値の中に含まれていてもよい。他の実施形態においては、この既定値はネットワークエンジニアによって、および/または履歴、経験あるいは統計の情報に基づいて柔軟に決定されてもよい。例えば、デルタパワーレベルにある閾値の量までの送信パワーを付加することは、一般的に十分なレスキュースピードあるいはパワー比のdBあたりの成功率の改善をもたらすが、この閾値を超えてパワーを付加することは、ユーザのニーズやMSの制限を考慮すれば、割に合わない結果になるということを、この情報が示すことができる。この閾値はそれゆえ既定値として選択される。
【0086】
他の実施形態
以上に説明した本発明の各実施形態は、MSの平均レスキュー送信出力パワーレベル112の算出のメカニズムについて開示している。しかし、この出力パワーレベルはレスキューの期間ずっと一定である必要はない。例えば、他の実施形態においては、MSの平均レスキュー送信出力パワーレベル112はクローズドループパワー制御にもとづいて適応変化してもよい。リバースにもとづくレスキューにおいては(図10bを参照)、パワー制御ビット群は、レスキュー106の開始からMSがフォワードリンクを受信する時刻132までネットワークから受信されてもよい。MSの平均レスキュー送信出力パワー112もまた、変化する干渉レート、変化する受信パワー、あるいは動的に計算された(レスキュー中に再計算される)デルタパワーレベル114の使用にもとづいて連続的に適応変化してもよい。加えて、MSの更新されたアクティブセットおよび/またはパイロット信号は変化してもよく、それはMSの平均受信入力パワーレベル116と先述したレスキュー干渉デルタの変化の原因となるので、MSの平均レスキュー送信出力パワーレベル112は変化してもよい。またさらに、レスキューの進行とレスキュー中の遅延が増大すると、先述したレスキュー遅延補償値が変化する。
【0087】
また、MSの平均レスキュー送信出力パワーレベル112に寄与することのできる先述の4つのパラメータは、レスキューが進展するにつれてデルタパワーレベル114の計算に追加されてもよいし削除されてもよい。例えば、レスキュー遅延補償値が最初はデルタパワーレベル114の計算の一部を成していなかったとしても、もしMSの最後の信頼性のあるパワー制御ビット群の受信から始まる時間128が閾値に達してなおレスキューが完了してないなら、MSのプロセッサはレスキュー遅延補償値をデルタパワーレベル114の計算に使用する。
【0088】
他の実施形態においては、MSの平均レスキュー送信出力パワーレベル112を始点として用いてパワー制御ステップを利用することができる。言い換えれば、レスキューの途中のMSの送信は、アクセスチャネル探索のように、あらかじめ定められたステップサイズを用いてパワーについてステップアップすることができる。
【0089】
以上に説明したパワー制御拡張の概念は一例としてセルラーネットワークを用いたが、レスキュー中のパワー制御拡張の基本概念は、ページングシステム、衛星通信システム、コードレス電話システム、フリート通信システム等の他の無線プロトコルおよび技術に応用可能でありあるいは拡張してもよい。ここで説明されたBSの概念は、リピータまたは別のアンテナダイバシティ機構、コードレス親機、衛星、あるいは他の電話等を含む。ここで説明されたMSの概念は、ページャ、衛星電話、コードレス電話、フリートラジオ、無線端末装置、テレマティクスモデム等を含む概念である。
【0090】
本発明は、実施形態と関連し、添付した図面を参照して十分に説明されたが、本技術分野において習熟した者にとって様々な変化および修正が明らかとなるだろう。そのような変化および修正は、付記される請求項によって規定されるように、本発明の範囲内に含まれるものとして理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【図1】
無線通信システムにおいてセクタ間の様々な場所を動きまわる移動局を示す図である。
【図2】
無線通信システムにおける移動局と基地局との間の通信リンクの一例を示す図である。
【図3】
無線通信システムにおける基地局から移動局へのオーバーヘッドメッセージを示す図である。
【図4】
動きまわる移動局と通信を行う無線通信インフラストラクチャを示す図である。
【図5】
レイヤ2確認応答不全による接続切れとなる移動局と基地局との間の一連のメッセージを示す図である。
【図6】
無線通信システムにおけるフォワードリンクのフェージングに起因する接続切れの代表例の時系列を示す図である。
【図7】
無線電気通信ネットワークに用いられる、3つのフェイズと4つのフレームに分割されるスーパーフレームの時系列を示す図である。
【図8】
一実施形態におけるフォワードレスキュー手続きが始動したときの時系列を示す図である。
【図9】
通常のMS通信機のブロック図である。
【図10】
aは、本発明の一実施形態の例によるフォワードにもとづくレスキュー作動前、あるいは途中の受信および送信パワーの時系列を示す図である。bは、本発明の一実施形態の例によるリバースにもとづくレスキュー作動前、あるいは途中の受信および送信パワーの時系列を示す図である。
【図11】
本発明の一実施形態におけるMS平均受信入力パワーに対するオープンループパワー制御オフセットをプロットした図である。
Claims (38)
- ネットワークおよび少なくとも1つの移動局(以下MSと記す)を備え、前記少なくとも1つのMSとの通信を可能とするためのシステムであり、前記少なくとも1つのMSは不全となりそうな接続になり得るネットワークとの接続を有し、前記システムは前記不全となりそうな接続を検出すると前記不全となりそうな接続を復帰させるレスキュー手続きを実行するためのものであるシステムにおいて、不全となりそうな接続を有しているMSの平均レスキュー送信出力パワーレベルを計算する方法であり、その方法は:
前記MSが前記レスキュー手続きの最中に送信を開始するときの、前記MSの平均レスキュー受信パワーレベルの決定と、
デルタパワーレベルを前記平均レスキュー受信パワーレベルの符号反転値に加算することによるMSの平均レスキュー送信出力パワーレベルの計算と、を備え、前記デルタパワーレベルは本来的にオープンループパワー制御を表すオフセットを含む。 - 請求項1に記載の方法において、前記MSの平均レスキュー受信パワーレベルが変化すると、前記MSの平均レスキュー送信出力パワーレベルが前記レスキュー手続きの最中に再計算される。
- 請求項1に記載の方法において、前記デルタパワーレベルは、前記MSの平均受信パワーレベルを前記MSの送信パワーレベルから差し引くことで計算されるプレレスキューパワーデルタを含み、前記MSの平均受信パワーレベルと前記MSの送信パワーレベルは、前記不全となりそうな接続の検出の前にパワー制御ビット群が前記MSによって受信された時刻に計測されるものであり、前記プレレスキューパワーデルタは前記オフセットを含むものである。
- 請求項3に記載の方法において、その方法はさらに遅延時間に依存し直接比例する値を持つ係数を前記オフセットに乗算することを備え、前記遅延時間は、前記不全となりそうな接続の前記検出の前にパワー制御ビット群が前記MSによって受信された時刻に始まり、前記レスキュー手続きの開始の時に終了する時間間隔を示すものである。
- 請求項4に記載の方法において、前記係数は前記レスキュー手続きの前記開始の前のメッセージによって前記MSに通知される。
- 請求項1に記載の方法において、少なくとも1つのMSは通常作動中にはパイロットの通常アクティブセットANを、レスキュー手続きの最中にはパイロットの更新されたレスキューアクティブセットARを維持することができ、前記パイロットの通常アクティブセットANは混合通常パイロット強度値PSNを生成し、前記パイロットの更新されたレスキューアクティブセットARは混合レスキューパイロット強度値PSRを生成し、
前記方法はさらにレスキュー干渉デルタを前記デルタパワーレベルに含むことを備え、前記レスキュー干渉デルタは通常アクティブセットの第1の干渉補正項ICN=min(max(OFFSET−PSN,LO_IC),HI_IC)とレスキューアクティブセットの第2の干渉補正項ICR=min(max(OFFSET−PSR,LO_IC),HI_IC)を計算することおよび前記レスキュー干渉デルタをICR−ICNとして計算することによって決定され、ここでOFFSETはPSNとPSRの値の選択された範囲の中の最大値であり、LO_ICはICNとICRの値の選択された範囲の最小値であり、HI_ICはICNとICRの値の選択された範囲の最大値である。 - 請求項6に記載の方法において、前記OFFSET、LO_IC、またはHI_ICの値は前記レスキュー手続きの開始の前のメッセージによって前記MSに通知される。
- 請求項6に記載の方法おいて、前記レスキュー干渉デルタと前記デルタパワーレベルは、前記レスキュー手続きの最中に、前記パイロットの更新されたレスキューアクティブセットARあるいは前記混合レスキューパイロット強度値PSRが変化すると再計算される。
- 請求項1に記載の方法において、前記デルタパワーレベルは遅延時間が増大すると共に増大する係数が乗されるレスキュー遅延補償値を含み、前記遅延時間は、前記不全となりそうな接続の前記検出の前にパワー制御ビット群が前記MSによって受信された時刻に始まり、前記レスキュー手続きの開始の時に終了する時間間隔を示すものである。
- 請求項9に記載の方法において、前記レスキュー遅延補償値は前記レスキュー手続きの実行中に固定時間間隔で再計算される。
- 請求項9に記載の方法において、前記レスキュー遅延補償値あるいは前記係数は前記レスキュー手続きの開始の前のメッセージによって前記MSに通知される。
- 請求項1に記載の方法において、前記デルタパワーレベルは、前記レスキュー手続きを完了するために必要な時間と前記MSの平均レスキュー送信出力パワーレベルとを考慮に入れるために選択された既定値を含む。
- 請求項12に記載の方法において、前記既定値は前記レスキュー手続きの開始の前のメッセージによって前記MSに通知される。
- 請求項12に記載の方法において、前記既定値は前記オフセットを含む。
- ネットワークおよび少なくとも1つの移動局(以下MSと記す)を備え、前記少なくとも1つのMSとの通信を可能とするためのシステムであり、前記少なくとも1つのMSは不全となりそうな接続になり得るネットワークとの接続を有し、前記システムは前記不全となりそうな接続を検出すると前記不全となりそうな接続を復帰させるレスキュー手続きを実行するためのものであるシステムにおいて、不全となりそうな接続を有しているMSの平均レスキュー送信出力パワーレベルを計算する方法であり、前記MSは通常作動中にはパイロットの通常アクティブセットANを、前記レスキュー手続きの最中にはパイロットの更新されたレスキューアクティブセットARを維持することができ、前記パイロットの通常アクティブセットANは混合通常パイロット強度値PSNを生成し、前記パイロットの更新されたレスキューアクティブセットARは混合レスキューパイロット強度値PSRを生成し、前記方法は:
前記MSが前記レスキュー手続きの最中に送信を開始するときの、前記MSの平均レスキュー受信パワーレベルの決定と、
デルタパワーレベルを前記平均レスキュー受信パワーレベルの符号反転値に加算することによるMSの平均レスキュー送信出力パワーレベルの計算と、を備え、前記デルタパワーレベルは本来的にオープンループパワー制御を表すオフセットを含み、
また前記デルタパワーレベルは4つのパラメータの内1つあるいは複数からの寄与を有し、
前記4つのパラメータは前記MSの平均受信パワーレベルを前記MSの送信パワーレベルから差し引くことで計算されるプレレスキューパワーデルタを含み、ここで前記MSの平均受信パワーレベルと前記MSの送信パワーレベルは、前記不全となりそうな接続の検出の前にパワー制御ビット群が前記MSによって受信された時刻に計測されるものであり、前記プレレスキューパワーデルタは前記オフセットを含むものであり、
また前記4つのパラメータは通常アクティブセットの第1の干渉補正項ICN=min(max(OFFSET−PSN,LO_IC),HI_IC)とレスキューアクティブセットの第2の干渉補正項ICR=min(max(OFFSET−PSR,LO_IC),HI_IC)を計算すること、および前記レスキュー干渉デルタをICR−ICNとして計算することによって決定されるレスキュー干渉デルタを含み、ここでOFFSETはPSNとPSRの値の選択された範囲の中の最大値であり、LO_ICはICNとICRの値の選択された範囲の最小値であり、HI_ICはICNとICRの値の選択された範囲の最大値であり、
また前記4つのパラメータは遅延時間が増大すると共に増大する係数が乗されるレスキュー遅延補償値を含み、ここで前記遅延時は間前記不全となりそうな接続の前記検出の前にパワー制御ビット群が前記MSによって受信された時刻に始まり、前記レスキュー手続きの開始の時に終了する時間間隔を示すものであり、
また前記4つのパラメータは前記レスキュー手続きを完了するために必要な時間と前記MSの平均レスキュー送信出力パワーレベルとを考慮に入れるために選択された既定値を含む。 - 請求項15に記載の方法において、前記4つのパラメータの内1つまたは複数は前記レスキュー手続きの実行中に再計算される。
- 請求項15に記載の方法において、前記4つのパラメータの内1つまたは複数であって以前に前記デルタパワーレベルに寄与していなかったものが、その後前記レスキュー手続きの実行中に前記デルタパワーレベルに含まれる。
- 請求項15に記載の方法において、前記4つのパラメータの内1つまたは複数であって以前に前記デルタパワーレベルに寄与していたものが、その後前記レスキュー手続きの実行中に前記デルタパワーレベルの計算から除外される。
- ネットワークおよび少なくとも1つの移動局(MS)を備え、前記少なくとも1つのMSとの通信を可能とするためのシステムであり、前記少なくとも1つのMSは不全となりそうな接続になり得るネットワークとの接続を有し、前記システムは前記不全となりそうな接続を検出すると前記不全となりそうな接続を復帰させるレスキュー手続きを実行するためのものであるシステムにおいて、不全となりそうな接続を有しているMSの平均レスキュー送信出力パワーレベルを計算する方法であり、その方法は:
前記MSが前記レスキュー手続きの最中に送信を開始するときに、前記MSの平均レスキュー受信パワーレベルを決定するステップと、
デルタパワーレベルを前記平均レスキュー受信パワーレベルの符号反転値に加算することによってMSの平均レスキュー送信出力パワーレベルを計算するステップと、を備え、前記デルタパワーレベルは本来的にオープンループパワー制御を表すオフセットを含む。 - ネットワークと通信するための移動局(MS)であり、前記MSが不全となりそうな接続になった前記ネットワークとの接続を有しているときに、レスキュー手続きを実行し、またリバースリンクを通じてある特定の平均レスキュー送信出力パワーレベルで送信を行うことで前記MSのレスキューを補助するためのものであり、前記MSは:
MSプロセッサを備え、前記MSプロセッサは、
前記MSが前記レスキュー手続き中に送信を開始するとき、前記MSの平均レスキュー受信パワーレベルを決定するようプログラムされており、かつ
デルタパワーレベルを前記平均レスキュー受信パワーレベルの符号反転値に加算することによってMSの平均レスキュー送信出力パワーレベルを計算するようプログラムされており、また前記デルタパワーレベルは本来的にオープンループパワー制御を表すオフセットを含む。 - 請求項20に記載のMSにおいて、前記MSプロセッサはさらに、前記MSの平均レスキュー受信パワーレベルが変化すると前記MSの平均レスキュー送信出力パワーレベルを前記レスキュー手続きの最中に再計算するようプログラムされている。
- 請求項20に記載のMSにおいて、前記MSプロセッサはさらに、前記デルタパワーレベル中にプレレスキューパワーデルタを計算して含めるようプログラムされており、前記プレレスキューデルタは前記MSの平均受信パワーレベルを前記MSの送信パワーレベルから差し引くことで計算され、前記MSの平均受信パワーレベルと前記MSの送信パワーレベルは、前記不全となりそうな接続の検出の前にパワー制御ビット群が前記MSによって受信された時刻に計測されるものであり、前記プレレスキューパワーデルタは前記オフセットを含むものである。
- 請求項22に記載のMSにおいて、前記MSプロセッサはさらに、遅延時間に依存し直接比例する値を持つ係数を前記オフセットに乗算するようプログラムされており、前記遅延時間は、前記不全となりそうな接続の前記検出の前にパワー制御ビット群が前記MSによって受信された時刻に始まり、前記レスキュー手続きの開始の時に終了する時間間隔を示すものである。
- 請求項23に記載のMSにおいて、前記MSプロセッサはさらに、前記係数を前記レスキュー手続きの前記開始の前のメッセージによって受信するようプログラムされている。
- 請求項20に記載のMSにおいて、前記MSプロセッサはさらに、
通常作動中にはパイロットの通常アクティブセットANを維持し、混合通常パイロット強度値PSNをANから計測し、また前記レスキュー手続きの実行中にはパイロットの更新されたレスキューアクティブセットARを維持し、混合レスキューパイロット強度値PSRをARから計測するようプログラムされており、
またレスキュー干渉デルタを前記デルタパワーレベルに含むようプログラムされており、前記レスキュー干渉デルタは通常アクティブセットの第1の干渉補正項ICN=min(max(OFFSET−PSN,LO_IC),HI_IC)とレスキューアクティブセットの第2の干渉補正項ICR=min(max(OFFSET−PSR,LO_IC),HI_IC)を計算することおよび前記レスキュー干渉デルタをICR−ICNとして計算することによって決定され、ここでOFFSETはPSNとPSRの値の選択された範囲の中の最大値であり、LO_ICはICNとICRの値の選択された範囲の最小値であり、HI_ICはICNとICRの値の選択された範囲の最大値である。 - 請求項25に記載のMSにおいて、前記MSプロセッサはさらに、前記OFFSET、LO_IC、またはHI_ICの値を前記レスキュー手続きの開始の前のメッセージによって受信するようプログラムされている。
- 請求項25に記載のMSにおいて、前記MSプロセッサはさらに、前記レスキュー手続きの最中に、前記パイロットの更新されたレスキューアクティブセットARあるいは前記混合レスキューパイロット強度値PSRが変化すると、前記レスキュー干渉デルタと前記デルタパワーレベルを再計算するようプログラムされている。
- 請求項20に記載のMSにおいて、前記MSプロセッサはさらに、レスキュー遅延補償値を前記デルタパワーレベルに含めるようプログラムされており、前記レスキュー遅延補償値は遅延時間が増大すると共に増大する係数が乗され、前記遅延時間は、前記不全となりそうな接続の前記検出の前にパワー制御ビット群が前記MSによって受信された時刻に始まり、前記レスキュー手続きの開始の時に終了する時間間隔を示すものである。
- 請求項28に記載のMSにおいて、前記MSプロセッサはさらに、前記レスキュー遅延補償値を前記レスキュー手続きの実行中に固定時間間隔で再計算するようプログラムされている。
- 請求項28に記載のMSにおいて、前記MSプロセッサはさらに、前記レスキュー遅延補償値あるいは前記係数を前記レスキュー手続きの開始の前のメッセージによって受信するようプログラムされている。
- 請求項20に記載のMSにおいて、前記MSプロセッサはさらに既定値を前記デルタパワーレベルに含むようプログラムされており、前記既定値は前記レスキュー手続きを完了するために必要な時間と前記MSの平均レスキュー送信出力パワーレベルとを考慮に入れるために選択されるものである。
- 請求項31に記載のMSにおいて、前記MSプロセッサはさらに、前記既定値を前記レスキュー手続きの開始の前のメッセージによって受信するようプログラムされている。
- 請求項31に記載のMSにおいて、前記既定値は前記オフセットを含む。
- ネットワークと通信するための移動局(MS)であり、前記MSが不全となりそうな接続になった前記ネットワークとの接続を有しているときに、レスキュー手続きを実行し、またリバースリンクを通じてある特定の平均レスキュー送信出力パワーレベルで送信を行うことで前記MSのレスキューを補助するためのものであり、前記MSは:
MSプロセッサを備え、前記MSプロセッサは、
前記MSが前記レスキュー手続き中に送信を開始するとき、前記MSの平均レスキュー受信パワーレベルを決定するようプログラムされており、かつ
デルタパワーレベルを前記平均レスキュー受信パワーレベルの符号反転値に加算することによってMSの平均レスキュー送信出力パワーレベルを計算するようプログラムされており、また前記デルタパワーレベルは本来的にオープンループパワー制御を表すオフセットを含み、
また前記MSプロセッサは、さらに4つのパラメータの内1つまたは複数の寄与を前記デルタパワーレベルに含めるようプログラムされており、
前記4つのパラメータは前記MSの平均受信パワーレベルを前記MSの送信パワーレベルから差し引くことで計算されるプレレスキューパワーデルタを含み、ここで前記MSの平均受信パワーレベルと前記MSの送信パワーレベルは、前記不全となりそうな接続の検出の前にパワー制御ビット群が前記MSによって受信された時刻に計測されるものであり、前記プレレスキューパワーデルタは前記オフセットを含むものであり、
また前記4つのパラメータは、通常作動中にはパイロットの通常アクティブセットANを維持することと混合通常パイロット強度値PSNをANから計測すること、前記レスキュー手続きの実行中にはパイロットの更新されたレスキューアクティブセットARを維持することと混合レスキューパイロット強度値PSRをARから計測すること、通常アクティブセットの第1の干渉補正項ICN=min(max(OFFSET−PSN,LO_IC),HI_IC)とレスキューアクティブセットの第2の干渉補正項ICR=min(max(OFFSET−PSR,LO_IC),HI_IC)を計算すること、および前記レスキュー干渉デルタをICR−ICNとして計算すること、によって決定されるレスキュー干渉デルタを含み、ここでOFFSETはPSNとPSRの値の選択された範囲の中の最大値であり、LO_ICはICNとICRの値の選択された範囲の最小値であり、HI_ICはICNとICRの値の選択された範囲の最大値であり、
また前記4つのパラメータは遅延時間が増大すると共に増大する係数が乗されるレスキュー遅延補償値を含み、ここで前記遅延時は間前記不全となりそうな接続の前記検出の前にパワー制御ビット群が前記MSによって受信された時刻に始まり、前記レスキュー手続きの開始の時に終了する時間間隔を示すものであり、
また前記4つのパラメータは前記レスキュー手続きを完了するために必要な時間と前記MSの平均レスキュー送信出力パワーレベルとを考慮に入れるために選択された既定値を含む。 - 請求項34に記載のMSにおいて、前記MSプロセッサはさらに、前記レスキュー手続きの実行中に前記4つのパラメータの内1つまたは複数を再計算するようプログラムされている。
- 請求項34に記載のMSにおいて、前記MSプロセッサはさらに、前記4つのパラメータの内1つまたは複数であって以前に前記デルタパワーレベルに寄与していなかったものを、その後前記レスキュー手続きの実行中に前記デルタパワーレベルに含めるようプログラムされている。
- 請求項34に記載のMSにおいて、前記MSプロセッサはさらに、前記4つのパラメータの内1つまたは複数であって以前に前記デルタパワーレベルに寄与していたものを、その後前記レスキュー手続きの実行中に前記デルタパワーレベルの計算から除外するようプログラムされている。
- ネットワークと通信するための移動局(MS)であり、前記MSが不全となりそうな接続になった前記ネットワークとの接続を有しているときに、レスキュー手続きを実行し、またリバースリンクを通じてある特定の平均レスキュー送信出力パワーレベルで送信を行うことで前記MSのレスキューを補助するためのものであり、前記MSは:
前記MSが前記レスキュー手続き中に送信を開始するとき、前記MSの平均レスキュー受信パワーレベルを決定する手段と、
デルタパワーレベルを前記平均レスキュー受信パワーレベルの符号反転値に加算することによってMSの平均レスキュー送信出力パワーレベルを計算する手段を備え、前記デルタパワーレベルは本来的にオープンループパワー制御を表すオフセットを含む。
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