JP4340334B2 - 対象と対象の3次元表現との間の変換を決定する方法及びその装置 - Google Patents

対象と対象の3次元表現との間の変換を決定する方法及びその装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、a)検査ゾーン内に在る対象のX線像を獲得する段階と、
b)定義された投影幾何構造による対象の2次元ゾーンへの投影を表わす疑似投影像をデータセットから得る段階と、
c)X線像と疑似投影像との間の位置合わせの程度を表わす類似度を計算する段階と、
d)類似度に基づいて最も良い位置合わせが得られるまで、変更された投影パラメータを用いて段階b)及びc)を繰り返す段階と、
e)X線像と最も良く位置が合う疑似投影像の投影パラメータを利用して空間的変換を決定する段階とからなる、対象とデータセットから得られる対象の3次元表現との間の空間的変換を決定する方法に関する。
【0002】
また、本発明はかかる方法を実施する装置に関する。
【0003】
【従来の技術】
種々の手術方法において、患者の身体内で所定の位置を正確に見つけることが重要である。例えば、脊椎手術の場合、脊髄索への損傷を絶対的に防止しながら脊椎にネジを配置する必要がある。他の外科的挿入の場合、大動脈の位置を知ることが重要である。このため、例えば、コンピュータ断層撮影法を用いて、処置されるべき患者の3次元像が介入前に形成され、外科的介入はこの3次元像に基づいて計画される。患者は、患者の3次元表現が得られたデータセットの獲得中と同様に、介入中に一般的に同じ位置に静止していないので、データセット内の所定の位置が患者の身体内の点に割り当てられるように、患者と患者の3次元表現との間の空間的変換を決定する必要がある。
【0004】
この空間的変換の決定は、論文誌“医学物理学(Medical Physics) ”、第21巻、第11号、1994年11月発行、ページ1749−1760に記載された上記の方法を用いて実現される。この方法の場合、疑似投影像の投影パラメータは、X線照射中の放射線源及び像検出器に関する対象と全く同じ関係で対象が像平面及び投影点に関して配置されるように選定され、疑似投影像とX線像との位置が揃う。従って、対象と対象の3次元表現との間の割当ては上記投影パラメータに基づく。最適投影パラメータを決定するため、位置が揃うまで投影パラメータが変更される。位置合わせの程度は、類似度、例えば、相互相関関数を用いて計算される。
【0005】
上記方法の利点は、3次元データセットの獲得中及びX線照射中に、対象に付随する基準フレーム又は基準マーカーを用いなくてもよい点にある。また、X線像と3次元表現との間の正確な割当てを実現するため、X線像を区分し、又は、X線像若しくはデータセットに特徴点を指定することが必要とされない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の従来の方法の欠点は、3次元データセットによって表わされた全ての体積部分(ボリューム)に対し疑似投影像を計算しなければならないので、計算作業量が多いことである。また、3次元データセットの獲得時には映像化されない対象(外科的器具又は手術台)がX線像中に再生されるとき、結果は不正確になりやすい。
【0007】
本発明の目的は、対象と対象の3次元表現との間の空間的割当てが容易に決定され得るような上記の種類の方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、上記目的は、
f)疑似投影像を取得する前に検査ゾーンの小さい体積部分(サブボリューム)を選択する段階と、
g)小さい体積部分に制限されたデータセットの一部分から各疑似投影像を形成する段階と、
h)像内の対応する構造が差分画像内で互いに打ち消し合うように、X線像及び夫々の疑似投影像、又は、均等にフィルタを通過させられたX線像及び夫々の疑似投影像のいずれか一方から夫々の差分画像を取得する段階と、
i)少なくとも差分画像の一部分の構造に依存する測度である類似度を使用する段階とを行うことにより達成される。
【0009】
本発明によれば、疑似投影像を形成するため、3次元データセットの全ての体積部分ではなく、診断に関連した3次元データセットの小さい体積部分、例えば、脊椎だけが使用される。小さい体積部分の大きさは、データセットによって表わされた体積部分の一部に過ぎないので、疑似投影像の計算は実質的に高速に行うことが可能である。しかし、従来の方法の類似度は、X線像と疑似投影像との間に同一の像領域が存在することを前提としているので適切ではない。小さい体積部分に制限されたデータセットが疑似投影像を生成するため使用される場合、X線像は小さい体積部分の前後に在る器官も再生するので、上記の前提は一般的ではない。従って、本発明は、X線像及び疑似投影像から得られた差分画像(又は差分画像の一部分)の構造化状態(structuredness)に依存した類似度を利用する。
【0010】
この考えは以下の考察に基づいている。小さい体積部分、例えば、脊椎が、X線照射中のように疑似投影像の計算中に像平面及び投影点に関して空間内で同じ位置を占めるとき、X線像が脊椎の前後に在る領域を再生することにより、X線像及び疑似投影像はこの領域で互いに離れる。これは、理想的な場合に脊椎の再生が差分画像内で除去されることを意味する。この領域で差分画像は、X線像、又は、脊椎の像の位置が揃わない差分画像よりも少ない構造しか含まない。その結果として、差分画像内の構造化状態又は構造の個数は、疑似投影像とX線像との間の適当な類似度であり、差分画像内に在る構造が少なくなると共に、疑似投影像とX線像の類似度が増加する。これは、差分画像が疑似投影像及びX線像から直接的に取得されたか、又は、フィルタを通過させられた疑似投影像及びX線像から得られたかとは無関係に成立する。
【0011】
本発明の方法は、小さい体積部分内の体素(ボクセル)だけが投影像を計算するため考慮されるので比較的高速に実行される。差分画像の構造化状態は、例えば、データセットの獲得中に存在しなかったカテーテルがX線像に再生されるとき増加する。しかし、構造化状態は全ての差分画像で同程度に変化する。従って、差分画像から取得された類似度に基づく投影パラメータの最適化はそれによる影響をうけない。
【0012】
疑似投影像及びX線像の個々の画像点の画像値は、小さい体積部分(脊椎)が疑似投影像とX線像の同じ位置にある場合でも一致する必要はない。その場合、差分画像内で関連した構造は完全には消失しない。その結果生じる類似度への影響は、X線像及び/又は疑似投影像の画像値が差分画像を獲得する前にスケーリングファクタにより重み付けされる本発明の他の実施例により除去される。
【0013】
原則として、任意の映像様式、例えば、磁気共鳴装置を用いて対象の3次元再生用のデータセットを生成することが可能である。しかし、磁気共鳴装置の使用は特殊なケースに制限される。かかる特殊なケースとは、(対照媒体を用いる)磁気共鳴血管造影又はX線像における脈管系の映像化である。しかし、本発明の一変形例によれば、データセットは、X線照射の前にコンピュータ断層撮影を用いて形成される。別の変形例において、疑似投影像の形成前に、一定値が小さい体積部分の体素の体素値から減算される。体素は体積要素を意味し、体素値は体素と関連した吸収値を表わすことに注意する必要がある。かくして、所定の環境において類似度の質に悪影響を与える可能性のある輝度勾配が、小さい体積部分が投影された画像領域のエッジで発生することは防止され得る。
【0014】
本発明の別の一変形例において、画像値が隣接した画素の画像値から離れている差分画像又は差分画像の一部の画素数は構造化状態を決定するよう決定される。ここで、画素とは画像要素を表わす。隣接した画素の画像値から離れた画像値を有する差分画像内の画素が多いほど、構造化状態はより大きくなるので、画素数は適当な類似度を表わす。
【0015】
本発明の他の一変形例において、類似度の計算は、隣接した画素の画像値の間の差を重み付けし、小さい差の場合に第1の値を生成し、大きい値の場合に第1の値とは異なる第2の値を生成する加重関数を利用し、加重関数によって重み付けられた差は加算される。この加重関数は、例えば、ノイズに起因した画像値の間の小さい差は類似度に影響を与えず、一方、差が所定の大きさを越えた場合、画像値は差の程度とは無関係に相違しているとして評価される。
【0016】
上記の説明において離れた場所にある画素の画像値を比較しても意味がない。その理由は、大きい体積部分の画像値の差が生ずる他の原因もあり得るからである。従って、本発明の他の一変形例において、当該画素の周囲の円の範囲内に在る画素の画像値だけが各画素に対する類似度を計算するため考慮される。画素が構造内に配置されているか否かを決定するため、当該画素の周辺の所定の半径内に在る画素だけが考慮される。
【0017】
他の一変形例において、類似度は、次式
【0018】
【数2】
Figure 0004340334
【0019】
に従って、差分画像の画素の画像値から計算され、式中、
− i,jは差分画像の少なくとも一部分の画素を表わし、
− Id (i,j)は関連した画像値を表わし、
− σは選定可能なパラメータを表わし、
− k,lは、rが選定可能なパラメータであるとき、
関係式r2 ≧k2 +l2
を充たす整数値を表わす。
【0020】
かくして得られた類似度を使用して、対象又は対象のX線像と、データセットから獲得されたその3次元表現との間の空間的割当ては非常に正確に決定される。
請求項9の記載によれば、差分画像は空間的にフィルタを通過させられた像から得られる。
【0021】
上記本発明の方法を実施する装置は、
3次元的に対象を再生するデータセットを形成する第1の映像装置と、
検査ゾーン内に在る対象のX線像を形成するX線装置と、
データセットから疑似投影像を得る手段と、
X線像と、関連した疑似投影像との間の位置合わせの程度を表わす類似度を計算する手段と、
(A)疑似投影像を取得する前に検査ゾーンの小さい体積部分を選択し、
(B)小さい体積部分に制限されたデータセットの一部分から各疑似投影像を発生させ、
(C)差分画像においてX線像と疑似投影像の同じ構造が互いに打ち消し合うように、X線像及び夫々の疑似投影像、又は、均等にフィルタを通過させられたX線像及び夫々の疑似投影像のいずれかから夫々の差分画像を獲得し、
(D)少なくとも差分画像の一部分において構造化状態に関する測度である類似度を使用する画像処理動作が実行されるようにプログラムされた画像処理ユニットとからなる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の詳細な説明を行う。図1には、外科的介入の前に患者3のコンピュータ断層写真CT1、CT2等の系列を形成するため使用されるコンピュータ断層撮影装置2が示されている。コンピュータ断層写真は、患者の長手軸に直交して延在する平行スライスを表わす。これらのコンピュータ断層写真は、患者の3次元再生用のデータセットを形成する。後の段で行われるべき外科的介入は、このデータセットに基づいて正確に計画される。
【0023】
図1に別個に示され、後の介入と関係した小さい体積部分CTp は、この目的のため選択される。小さい体積部分は、後の介入に不可欠である患者の一部分、例えば、脊椎を含む立体でも構わない。しかし、脊椎自体がこの小さい体積部分の構成要素である。このため、小さい体積部分が自動又は手動で区分される必要がある。これはかなり時間を消費する動作ではあるが、外科的介入の前に行われるので煩わしくはない。
【0024】
この準備段階の後、患者3が手術室の手術台4の上に載せられている間に、外科的介入の開始前、又は、外科的介入中にX線像が形成される。X線像は、X線源6及び像捕捉装置7が(図示しない)スタンド11により支持されたC字形アームに取り付けられているX線検査装置を用いて形成され得る。X線源6及び像検出器7を備えたC字形アームは、必要に応じて少なくとも一つの水平軸周りに旋回可能である。
【0025】
例えば、テレビジョン回路が接続されたX線像増倍器であるX線像捕捉装置7は、出力信号をA/D(アナログ・ディジタル)変換器14を介して画像メモリ15に供給する。画像メモリ15は、コンピュータ断層撮影装置2により形成され、画像メモリ15又は別の画像メモリに格納されたデータセットを処理し得る画像処理ユニット16に接続される。画像処理ユニット16は表示モニタ18に接続される。上記の構成部品はプログラマブル制御ユニット17により制御される。
【0026】
コンピュータ断層写真データセットにより表わされた患者の画像、特に、区分された脊椎と、この脊椎の空間的な位置との間の空間的な変換、又は、割当ては、X線像を用いて決定される。この変換を決定するため、疑似投影像Ip が図2に概略的に示される如く小さい体積部分CTp から形成される。疑似投影像Ip の寸法はX線像の寸法と対応する。小さい体積部分の疑似投影像への投影が行われる投影点Sのこの疑似投影像に対する位置は、X線照射中の像捕捉装置7に対するX線源6の位置(又は、X線を放射するX線源の焦点)に対応する。図2には小さい体積部分CTp の疑似投影像Ip への投影は境界Rを有する区分だけを覆うことが示されている。
【0027】
一般的に言うと、投影点S及び投影方向に関して最初に選定された小さい体積部分CTp の開始位置は、X線像の獲得中にX線源6及び像捕捉装置7に対する実際の小さい体積部分の位置及び方向と対応しない。従って、上記投影パラメータ、即ち、投影点S及び投影像Ip の像平面に対する位置及び方向は変更され、投影像は上記変更された投影パラメータを用いて計算される。
【0028】
図1には、疑似投影像Ip 及びX線像Ir を取得する映像システム6,7が示されている。差分画像Id は疑似投影像Ip 及びX線像Ir から取得され、疑似投影像の下に重なる脊椎の位置及び方向がX線源6及び像捕捉装置7に対する実際の脊椎の位置及び方向と対応しているならば、脊椎の像CTp は差分画像では打ち消される。
【0029】
以下、図3を参照して本発明の方法を詳細に説明する。初期化後(ステップ100)、被検査体積部分内の吸収分布を3次元的に表わす患者のデータセットがコンピュータ断層撮影装置2を用いて獲得される(ステップ101)。当該体素のX線吸収を表わす体素値は被検査体積部分内の各体素に割り当てられる。
次のステップ(ステップ102)の間に、小さい体積部分CTp (図1)は被検査体積部分から選択される。小さい体積部分は、検査されるべき元の体積部分の一部、例えば、20分の1以下だけに対応する。小さい体積部分は、介入と関係し、好ましくは剛性のある検査ゾーンの一部分、例えば、脊椎を含む。選択は体積部分を囲む立体を予め設定することにより手動により行えるが、区分化によって自動で行っても構わない。
【0030】
ステップ103において、小さい体積部分又は区分された脊椎の近傍の吸収の平均値に対応する一定値a0 が小さい体積部分に在る体素の(位置依存形)体素値aから減算される。かくして小さい体積部分の体素は、当該体素の吸収と近傍の吸収との差に対応した体素値が割り当てられる。これにより、後の段階で差分画像Id の境界領域R(図2)でエッジ又は輝度変化の発生が阻止される。他の処理段階の間に、このように計算された小さい体積部分の体素の体素値だけが考慮される。小さい体積部分の外側にある体素は更なる処理に関与しなくなる。
【0031】
図3に破線で示される如く、ステップ101乃至103は実際の介入前に行われる。次に、患者3が手術台4上に載せられ、X線像Ir が獲得される(ステップ104)。手術台4又は手術が行われる空間に対する映像システム6,7の位置及び方向は、図1には示されていない適当なシステムを用いて記録される。
次のステップ(ステップ105)の間に、選択された小さい体積部分CTp の疑似投影像Ip が投影像Ip の像平面に対して、X線像獲得中に像捕捉装置7の入口に対するX線源6の位置と同じ位置の投影点Sに基づいて計算される。投影像内の画素に対する画像値は、画素と投影点Sとの間にある小さい体積部分の全体素の体素値(吸収値)から得られる。これは、疑似投影像の完成まで、投影の全画素に対し繰り返される。
【0032】
疑似投影像は、固定した座標系x’,y’,z’に関する小さい体積部分CTp の位置及び方向に依存する。従って、各投影像は、固定した座標系に関して小さい体積部分の位置(tx ,ty ,tz で表わされるパラメータ)と角度位置又は方向(α,β,γで表わされるパラメータ)とを座標系内で表わす6個の投影パラメータによって表わされる。
【0033】
疑似投影像及びX線像は、同数の画素、例えば、128×128画素により構成されるべきである。原画像が高解像度、例えば、512×512画素を有する場合、原画像は適当なローパスフィルタリングが施され、各画素の画像値は原画像の数個(例えば、16個)の画素の画像値から得られる。また、疑似投影像及びX線像は同等の画像鮮明性を有するべきである。コンピュータ断層撮影データセットの解像度に起因して疑似投影像の画像鮮明性がX線像の画像鮮明性よりも劣るとき、小さい体積部分CTp の高解像度の再生が補間によってコンピュータ断層写真データセットから得られる。
【0034】
次のステップの間に、投影像の計算のため仮定された小さい体積部分CTp の位置及び方向がX線像の形成中に映像システム6,7に対する実際の小さい体積部分の位置及び方向と対応する程度を判定する必要がある。このため、ステップ106において、最初に差分画像Id がX線像Ir 及び投影像Ip から得られる。このため、X線像Ir 及び疑似投影像Ip 内の対応した画素の画像値は必ずしも互いに減算されなくてもよく、小さい画像値が疑似投影像の高吸収性の領域と関係し、大きい画像値がX線像の高吸収性の領域と関係するとき、画像値は加算する必要がある。ここで使用される用語「差分画像」は、加算的な重ね合わせを含むことに注意する必要がある。X線像と投影像の同じ場所にある対応した構造が差分画像において互いに打ち消し合うように重ね合わせが行われることだけが本質的である。
【0035】
小さい体積部分の体素値及びX線像の画像値は同じ映像システムを用いて取得されないので、X線像Ir の画像値又は疑似投影像Ip の画像値を減算又は加算する前にスケーリングファクタcで重み付けすることにより、ダイナミックレンジに関して2個の画像値を適合させることが必要である。
次のステップ107の間に、類似度が差分画像Id 、又は、投影像の輪郭R(図2を参照のこと)により定められた差分画像の一部分に基づいて形成される。この類似度は以下の考察に基づいている。
【0036】
理想的な場合に、疑似投影像の計算がX線像の取得中のX線源又は像捕捉装置に対する(実際の)小さい体積部分の位置及び方向と一致した投影点及び像平面(図2を参照のこと)に対する小さい体積部分の位置及び方向に基づいている場合、小さい体積部分の再生は、疑似投影像とX線像の同じ場所で行われる。その場合、差分画像(又は差分画像の区分)は最低限の量の構造しか含まない。理想的な場合から外れた場合、差分画像にはより多数の構造が現れる。従って、構造化状態は適当な類似度であり、差分画像に現れる構造が少なくなるに連れて、X線像Ir と疑似投影像Ip の類似度が増加する。
【0037】
できる限り多数の隣接した画素からできるだけ巧く区別できる画素ほど、構造に属すると考えることができる。しかし、中心が当該画素の周りの半径rの円の範囲内にある画素だけが隣接した画素であると考えられる。半径rに対する適当な値は、例えば、画素幅の2乃至10倍であり、128×128画素からなる画像の場合に、rは画素幅の3倍に達する。
【0038】
類似度又は構造化状態の計算のため、隣接した画素の画像値の間の差は、小さい差の場合に、例えば、値1である第1の値になる傾向があり、大きい差の場合に、例えば、値0である第2の値になる傾向があり、大きい値と小さい値の間の変化ゾーンで単調に変化する加重関数を用いて重み付けられるべきである。
図4には加重関数が示され、同図において2個の隣接した画素の画像値の間の差uが横軸にプロットされ、関連した加重関数f(u)が縦軸にプロットされている。小さい差uに対し、関数f(u)は最大値1から僅かに異なる関数値を有し、一方、大きい差に対し値0に漸近的に向かうことが分かる。かくして、例えば、ノイズにより誘発された小さい偏差は、対応した画素と略同じ方法で評価され、大きい偏差はその大きさとは無関係に評価される。変化ゾーンにおいて、関数f(u)は単調に変化し、また、この変化ゾーン内に変曲点を有する。
【0039】
加重関数f(u)は、図4に従って値f(u)を各入力値、即ち、2個の画像値の間の各差uに割り当てるルックアップテーブルから得られる。しかし、加重関数f(u)を、例えば、以下の式
【0040】
【数3】
Figure 0004340334
【0041】
に従って解析的に計算することが可能である。式中、σは適当に選定されたパラメータである。指数関数f(u)を計算するため比較的大量の計算作業が必要とされることが欠点である。より高速に計算することができる関数は、以下の式
【0042】
【数4】
Figure 0004340334
【0043】
から得られる。
適当な値は、X線像又は投影像のダイナミックレンジが0乃至255であるならば、σ=10である。画像値の差uが値σの3分の1以下に達する場合、加重関数f(u)は0.9以上の値を有し、一方、画像値の差がσの3倍よりも大きくなるとき、加重関数f(u)は0.1未満の値を有する。
【0044】
かくして、構造化状態に依存する類似度は、以下の式
【0045】
【数5】
Figure 0004340334
【0046】
に従って得られる。式中、i,jは差分画像又は差分画像区分内の画素の座標を表わし、Id (i,j)はこの画素i,jと関連した画像値を表わす。k,lは、
【0047】
【数6】
Figure 0004340334
【0048】
となる整数であり、式中、rは、中の画素が画素i,jと隣接する円の半径を定義する。式(3)の加数f()はf(u)と対応するので、uに対し、
【0049】
【数7】
Figure 0004340334
【0050】
のように表わされる。
式(3)から分かることは、所定の画素i,jに対し、この画素の画像値Id (i,j)と、隣接した画素の画像値Id (i+k,j+l)との差は、加重関数f(u)で重み付けられ、上記加重関数全体についての合計が計算される必要があることである。これは、少なくとも画像区分R内で全ての画素i,jに対し繰り返され、得られた合計値が次に加算されなければならない。
【0051】
式(5)を式(2)に代入することにより、類似度Pを計算する式
【0052】
【数8】
Figure 0004340334
【0053】
が得られる。
上記のステップ107の説明において、最初にX線像Ir 及び疑似投影像Ip は、差分画像を得るため画素毎に互いに減算され、次に、差分画像内で互いに隣接した画素の画像値の間の差が類似度を決定するため使用された。しかし、最初に隣接した画素の画像値の間の差が像Ir と像Ip とに対し別々に決定され、次に差分画像がこのように修正された像の差から得られるように、処理の順序を逆にしてもよい。差分画像に含まれる構造は、像Ir と像Ip との間の対応がよりよくなると共に少なくなる。より詳細に言うと次の通りである。
【0054】
最初に、隣接した画素の画像値の間の差が像Ir と像Ip とに対し別々に決定されるので、例えば、i方向に勾配を有するいわゆるグラジエント画像が以下の関係式
gri (i,j)=Ir (i−1,j)−Ir (i+1,j) (7)
又は
gpi (i,j)=Ip (i−1,j)−Ip (i+1,j) (8)
に従って得られる。同様に、グラジエント画像をj方向に対し以下の関係式
gpj (i,j)=Ip (i,j−1)−Ip (i,j+1) (9)
又は
grj (i,j)=Ir (i,j−1)−Ir (i,j+1)(10)
が得られる。これらから、グラジエント差分画像が以下の関係式
dgi (i,j)=Igri (i,j)−cIgpi (i,j) (11)
又は
dgj (i,j)=Igrj (i,j)−cIgpj (i,j) (12)
に従って導かれる。式中、cは適当に選定された定数であり、好ましくは、空間的平均値が両方の画像で一致するように選定される。
【0055】
式(6)と同様に、構造化状態依存性類似度が次式
【0056】
【数9】
Figure 0004340334
【0057】
の通り決定され、式中、σi 及びσj は適当に選定されたパラメータである。小さい体積部分の再生が疑似投影像とX線像とにおいて同じ場所にある場合、又は、差分画像が最小の構造の量を含む場合に、Pは最大値をとる。
原則として、像Ir と像Ip からの2方向の中の1方向に対するグラジエント画像だけで充分であるので、式(7)、(8)及び(11)、若しくは、式(9)、(10)及び(12)のいずれかだけを解法すればよく、式(13)の2個の加算の中の一方は無くなる。しかし、上記の方法の確度は、好ましくない環境において害される場合がある。
【0058】
式(7)乃至(10)に従うグラジエント画像は、像Ir 又は像Ip のi方向又はj方向の1次微分を表わす。しかし、1次微分の代わりに高次微分又は差分空間フィルタリング、好ましくは、像Ir 又は像Ip のエッジの再生を強調するフィルタリング、例えば、2次元高域通過フィルタリングをを用いることが可能である。
【0059】
ステップ107に続いて、類似度Pが最適値に到達したか否かが検査される(ステップ108)。検査の結果が否定的であるならば、ステップ109において疑似投影像の投影パラメータを変更した後、ステップ105、106、107及び108が繰り返し実行される。
類似度Pが最適である場合、即ち、類似度が最大値を有する場合を認定するため、好ましくは6個の投影パラメータの中の1個のパラメータだけが最初に比較的大きい刻みで変更される。次に、類似度の絶対最大値が6次元投影パラメータ空間で得られるまで、他の投影パラメータが変更される。6個の投影パラメータがステップ105、106、107及び108からなるループの第1回目の実行のため選定された初期値に対し変更されることにより、区分された小さい体積部分により表わされた脊椎の位置が正確に決定できるようになる。このようにして最適値が検出された後、上記方法はステップ110で終了する。
【0060】
必要に応じて、外科医が位置合わせを視覚的に検査するため最適値と関連した差分画像がモニタに表示され得る。脊椎はこの差分画像に再生されるべきではなく、或いは、できる限り再生されるべきではない。
式(6)の結果から分かるように、ステップ105の後に、差分画像の全画素に対する画像値が同時に得られることが絶対的に要求されるわけではない。本例の場合、差分画像の小さい部分、又は、区分R(図2を参照のこと)の画素だけが計算され、類似度Pの関連した部分が決定され、次に、差分画像の他の部分の画像値が計算されるならば充分である。従って、差分画像の全画像値又は区分の画像値だけが同時に存在する必要はなく、本発明の説明において、用語「差分画像」は、少なくとも区分Rに対する画像値が時間的に連続して利用可能である場合にも関係する。しかし、差分画像又は区分の全画像値が記憶された形式で同時に利用できることが推奨される。その理由は、個々の画像値が記憶されていない場合、式(1)又は式(6)により例証されるように個々の画像値を数回計算する必要があるからである。
【0061】
上記の説明では、脊椎に対する小さい体積部分が選択されている。しかし、他の解剖学上の領域、例えば、骨構造、又は、対照媒体で充填された大動脈(若しくはその一部分)が小さい体積部分として区分され得る。小さい体積部分が限定される構造は周囲の構造のX線吸収性よりも高い若しくは低いX線吸収性を有することだけが重要である。その上、上記構造は静止し、若しくは、脊柱への大動脈のように剛体部分に堅固に連結される必要がある。
【0062】
本発明による方法は、x方向及びy方向、即ち、X線源6を像捕捉装置7に接続する線と直交した方向での割当て又は変換の非常に正確な決定を可能にする。しかし、決定は中心X線の方向で実質的に正確さが低下する。これは、第1の像のため使用されたビームパスに直交して延在するビームパスで第2のX線像を獲得することにより回避され、対象は第1の照射中と同じ位置に留まり、本発明による方法は第2のX線像を用いても実行される。或いは、二つのX線像を同時に使用しても構わない。その場合、二つの疑似投影像は、異なるビームパスを考慮して、図3に示されたフローチャートのステップ105において計算されるべきである。ステップ106において、2枚の異なる画像は2枚の投影像及び2枚のX線像から取得される。ステップ107において、類似度は2枚の異なる画像から得られ、類似度は適当に合成され、例えば、加算される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法を説明する概要図である。
【図2】小さい体積部分の投影像の変換を説明する図である。
【図3】本発明の方法の動作を説明するフローチャートである。
【図4】差分画像内の差分画像値が重み付けされる加重関数を表わす図である。
【符号の説明】
2 コンピュータ断層撮影装置
3 患者
4 手術台
6 X線源
7 像捕捉装置
11 スタンド
14 A/D変換器
15 画像メモリ
16 画像処理ユニット
17 プログラマブル制御ユニット
18 表示モニタ
CT1,CT2 コンピュータ断層写真
CTp 脊椎像
r X線像
p 疑似投影像
d 差分画像

Claims (10)

  1. 制御ユニットがX線装置の各部を制御して、
    a)検査ゾーン内に在る対象のX線像(Ir)を獲得し、
    b)上記検査ゾーンの小さい体積部分(CTp)を選択し、
    c)定義された投影幾何構造による対象の2次元ゾーンへの投影を表わす疑似投影像(Ip)を、上記小さい体積部分に制限された、データセットの一部分から取得し、
    d)上記X線像と上記疑似投影像内の対応する構造が差分画像内で互いに打ち消し合うように、上記X線像(Ir)及び関連した上記疑似投影像(Ip)、又は、均等にフィルタを通過させられた上記X線像(Ir)及び関連した疑似投影像(Ip)から夫々の差分画像(Id,Idgi,Idgj)を取得し、
    e)上記X線像と上記疑似投影像との間の位置合わせの程度を表わす類似度(P)を計算し、上記類似度は、少なくとも上記差分画像の一部分の構造に依存する測度であり、
    f)上記類似度に基づいて最も良い位置合わせが得られるまで、変更された投影パラメータを用いてc)、d)及びe)を繰り返し、
    g)上記X線像と最も良く位置が合う疑似投影像の投影パラメータを利用すると共に空間的変換を決定する、
    対象(3)と、データセットから得られる上記対象の3次元表現との間の空間的変換を決定する、画像モニタ装置の作動方法。
  2. X線像の画像値及び/又は疑似投影像の画像値が差分画像を獲得する前にスケーリングファクタにより重み付けされることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 上記データセットは、X線照射の前にコンピュータ断層撮影装置(2)を用いて形成されることを特徴とする請求項1記載の方法。
  4. 疑似投影像を形成する前に、一定値(a0)が小さい体積部分の体素の体素値(a)から減算されることを特徴とする請求項3記載の方法。
  5. 隣接した画素の画像値とは異なる画像値を有する差分画像の画素数又は差分画像の一部分の画素数が構造化状態を決定するために決定されることを特徴とする請求項1記載の方法。
  6. 上記類似度の計算は、隣接した画素の画像値の間の差(Id(i,j))を重み付けし、差(u)の値が小さい場合に第1の値を生成し、差の値が大きい場合に第1の値とは異なる第2の値を生成する加重関数(f(u))を利用し、上記加重関数によって重み付けられた差は加算されることを特徴とする請求項5記載の方法。
  7. 当該画素(i,j)の周囲の円の範囲内に在る画素(i+k,j+l)の画像値だけが各画素(i,j)に対する上記類似度(P)を計算するため考慮されることを特徴とする請求項6記載の方法。
  8. 上記類似度(P)は、
    i,jが差分画像の少なくとも一部分の画素を表わし、
    Id(i,j)が関連した画像値を表わし、
    σが選定可能なパラメータを表わし、
    k,lは、rが選定可能なパラメータであるとき、関係式
    r2≧k2+l2
    を充たす整数値を表わしているとき、式
    Figure 0004340334
    に従って、差分画像の画素(i,j)の画像値(Id(i,j))から計算されることを特徴とする請求項6記載の方法。
  9. 上記差分画像(Idgi,Idgj)は、均等にフィルタリングされた上記X線像(Ir)及び上記疑似投影像(Ip)の像(Igri,Igpi)から取得され、
    上記類似度は、小さい画像値を有する画素に大きい値が割り当てられ、大きい画像値を有する画素に小さい値が割り当てられるように決定され、上記差分画像の画素に対し割り当てられた上記値が加算されることを特徴とする請求項1記載の方法。
  10. 3次元的に対象を再生するデータセットを形成する第1の映像装置(2)と、
    検査ゾーン内に在る対象のX線像を形成するX線装置(12,13)と、
    上記データセットから疑似投影像を得る手段と、
    上記X線像と関連した上記疑似投影像との位置合わせの程度を表わす類似度を計算する手段と、
    (A)上記疑似投影像を取得する前に上記検査ゾーンの小さい体積部分を選択し、
    (B)上記小さい体積部分に制限された上記データセットの一部分から各疑似投影像を発生させ、
    (C)差分画像においてX線像と疑似投影像の同じ構造が互いに打ち消し合うように、上記X線像及び関連した上記疑似投影像、又は、均等にフィルタを通過させられた上記X線像及び関連した上記疑似投影像のいずれかから夫々の差分画像を獲得し、
    (D)少なくとも上記差分画像の一部分において構造化状態に関する測度である類似度を使用する画像処理動作が実行されるようにプログラムされた画像処理ユニットとからなる請求項1記載の画像モニタ装置の作動方法を実施する装置。
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