従来より、超音波振動子から生体組織内に超音波ビームを繰り返し送信し、生体組織から反射される超音波ビームのエコー信号を同一あるいは別体に設けた超音波振動子で受信して、二次元的な可視像である超音波断層画像を表示装置の画面上に表示させて、病変部の診断等に用いる超音波診断装置が種々提案されている。
この超音波診断装置と組み合わせて使用される機器としては、体腔内に挿入し体内臓器を観察できる内視鏡の挿入部の先端部に超音波振動子を備えた超音波内視鏡等がある。そして、この超音波内視鏡のひとつに、前記超音波振動子を機械的に回転させてラジアル走査を行なえる機械式の超音波内視鏡がある。この超音波内視鏡では、例えば操作部又は超音波観測装置に設けた駆動モータの回転駆動力をフレキシブルシャフトを介して内視鏡先端部に設けた超音波振動子へと伝達することにより、これをラジアル方向に回転させるようにしている。
このような形態の超音波内視鏡では、上述したように操作部又は超音波観測装置の側に駆動モータ等の超音波振動子を駆動する駆動手段が設けられていることから、例えば操作部に当該駆動手段が配設されている場合には、操作部の重量が大きくなってしまい、この操作部を常に把持して使用する操作者の負荷が大きくなってしまうという問題点がある。
また、操作部又は超音波観測装置に駆動モータ等の駆動手段を配設したものでは、駆動モータの回転駆動力はフレキシブルシャフトを介して超音波振動子へと伝達するようにしている。このことから、例えばフレキシブルシャフトに捻れ力が生じることに起因して駆動手段側のエンコーダと先端部側の超音波振動子との間に位相ずれが発生する場合がある。このような場合において生成される超音波断層画像には、例えば揺れや歪み等が生じ、画質劣化の原因になる可能性がある。
そして、フレキシブルシャフトを介して駆動モータの回転駆動力を超音波振動子に伝達し、これを回転させるようにした超音波内視鏡では、長いフレキシブルシャフトを介するために、設定し得る超音波振動子の回転速度に限界が生じてしまうという問題点がある。
さらに、駆動モータの回転とフレキシブルシャフトの回転との間の同期を取ることが困難であって、回転駆動力の伝達系によるロータの回転位置誤差が生じてしまう可能性もある。この場合には、高精細な超音波断層画像を生成することが困難になってしまうという問題点がある。
そこで、上述したような種々の問題点を解消するために、本出願人は先に特開2001−128981号公報等による超音波内視鏡についての提案を行なっている。
この特開2001−128981号公報によって開示される超音波内視鏡は、超音波内視鏡における先端部の先端硬質部の内部に超音波振動子を設けると共に、これに加えて超音波振動子を回転させる駆動モータ(回転駆動手段)とスリップリング(回転型信号伝達手段)とエンコーダ(回転位置検出手段)とを少なくとも配設し、当該駆動モータによって超音波振動子を直接的に回転させ得るように構成している。
この場合において、超音波振動子・スリップリング・エンコーダ・駆動モータ等を所定のハウジングによって一体化して超音波観察ユニットを構成し、超音波内視鏡の先端部を構成する先端部本体に対して当該超音波観察ユニットをネジ等の締結手段を用いて着脱自在に構成している。
これによれば、超音波内視鏡における先端部の先端硬質部の内部に超音波振動子と駆動モータとスリップリングとエンコーダとを先端側から順に直列かつ一体に配設したので、良好な超音波診断を容易に行なうことができると同時に、先端部の細径化及び小型化を実現して幅広い診断用途に活用することができ、さらに組立性の向上に寄与すると共に、組立後における保守管理に優れた超音波内視鏡を提供することができるというものである。
また、上述したように上記特開2001−128981号公報によって開示される手段では、先端硬質部に駆動モータやスリップリング等を配設して、超音波振動子を駆動モータにより直接的に回転させるように構成している。このような構成としたことから、駆動モータの回転駆動力をフレキシブルシャフトを介して超音波振動子を回転させるものに比べて、超音波振動子をより高速に回転させることができるようになる。
ところで、一般に超音波振動子を機械的に回転させてラジアル走査を行なう機械式の超音波内視鏡においては、超音波振動子の回転速度によって超音波断層画像(動画像)を表示する際のフレームレート、即ち単位時間当たりの画像信号の取り込み数が決定される。
スコープや臓器の動きに対する追従性は、フレームレートの高低によって決定される。つまり、フレームレートが高い程、実際の動きに追従した超音波断層画像を生成し得ることになる。
したがって、上述の特開2001−128981号公報によって開示される手段等を用いることによって超音波振動子の回転速度をより高速に設定することができれば、高いフレームレートを設定することができ、これによって追従性の良好な超音波断層画像を生成することができるようになる。
一方、従来の機械式の超音波内視鏡においては、例えば超音波振動子から放射する超音波ビームの周波数を段階的に切り換えて、その深達度に応じた表示レンジの切り換え設定をすることができるように構成したものがある。そして、この表示レンジの切り換えに応じて超音波振動子の駆動制御を行なって、フレームレートの設定をも自動的に切り換わるように構成した超音波観測装置については、例えば特開平6−138211号公報等によって開示されている。
上記特開平6−138211号公報によって開示されている超音波観測装置は、半周走査を行なうソナー(sonar:水中音波探知装置)である。つまり、このソナーは、送受波器(超音波振動子)の送受波面を俯角方向で揺動させて右旋回と左旋回とを交互に繰り返して行なって超音波の送受波を行なうように構成されるものである。
このような半周走査ソナーにおいて、送受信波器を揺動させる際の速度設定を高速設定とし、表示レンジを長距離側のレンジに設定して観測を行なった場合には、例えば左旋回時の送波に対する受波が右旋回時になってしまい、生成される超音波画像に歪みや捻れ等が生じてしまうことがあるという問題点がある。
このことを考慮して、当該公報に開示されているソナーにおいては、設定した表示レンジに応じた適切な旋回速度を自動設定する手段を設けている。これにより、設定した表示レンジに応じて送受波器を適切に揺動させるようにして、常に明確な超音波画像を取得することができるようにしている。
他方、従来の超音波内視鏡において電子走査式のものでは、超音波振動子から放射する超音波ビームの周波数を段階的に切り換えることによって、被検体近傍の深さ方向の表示範囲、即ち表示レンジを切り換えて任意に設定し得るものがある。この場合においては、設定した表示レンジに応じて適切なフレームレートが自動的に設定されるようになっている。
特開2001−128981号公報
特開平6−138211号公報
以下、図示の実施の形態によって本発明を説明する。
図1は、本発明の一実施形態の超音波診断装置の構成を示す概略構成図である。また、図2は、本実施形態の超音波診断装置における超音波観測装置の内部構成の概略を示すブロック構成図である。そして、図3と図4とは、本実施形態の超音波診断装置に用いられる超音波内視鏡における先端硬質部とこれに装着される超音波観察ユニットを拡大して示す要部拡大断面図であって、図3は両者が接続されていない状態を、図4は両者が接続されている状態を、それぞれ示している。そして、図5は、図3に示す超音波観察ユニットのA−A線に沿う断面図である。
まず、本実施形態の超音波診断装置の全体的な概略構成と、この超音波診断装置の一部を構成する超音波観測装置及び超音波内視鏡の概略的な構成について図1〜図5を参照しながら以下に説明する。
図1に示すように本実施形態の超音波診断装置は、これと組み合わせて使用される機器としての機械走査式の超音波内視鏡1と、この超音波内視鏡1の統括的な制御等を主に行なう制御部(14a;図2参照)や上記超音波内視鏡1を用いて生成される所定の電気信号に基づいてその信号に対応する超音波断層画像を生成し表示する表示部(14e;図2参照)等を具備して構成される超音波観測装置14等によって構成される。
超音波内視鏡1は、体腔内等に挿入される細長形状の内視鏡挿入部(以下、単に挿入部と略記する)2と、この挿入部2の基端部に設けられ把持部を備えた操作部3と、この操作部3の例えば側部から延出され可撓性を有するユニバーサルコード4等によって主に構成されている。
ユニバーサルコード4の端部にはスコープコネクタ5が設けられている。このスコープコネクタ5には光源コネクタ6と電気コネクタ7と超音波コネクタ8と吸引口金9と送気送水口金10が設けられている。
光源コネクタ6には照明光を供給する光源装置11が着脱自在に接続されるようになっている。また、電気コネクタ7には、所定の信号ケーブル(図示せず)を介して各種の信号処理等を行なうビデオプロセッサ12が着脱自在に接続されるようになっている。そして、超音波コネクタ8には超音波ケーブル13を介して超音波観測装置14が着脱自在に接続されるようになっている。さらに、吸引口金9には吸引チューブ(図示せず)を介して吸引ポンプ15が着脱自在に接続されるようになっている。また、送気送水口金10には送気チューブ及び送水チューブ(図示せず)を介して送水タンク16が着脱自在に接続されるようになっている。
なお、送気送水口金10は細径部材で形成されているので、例えば意図しない衝撃等による所定以上の力量が加わると容易に破損してしまう虞等がある。そこで、そのような事故を防止するために送気送水口金10の近傍には、当該送気送水口金10よりも突出量を大きく(高く)なるように設定した突起部17(図1参照)が設けられている。
超音波観測装置14は、上述したように超音波内視鏡1の統括的な制御を行なうものであって、例えば後述する超音波観察ユニット24の駆動制御や、これによって取得した電気信号の信号処理等を行なう制御回路等に加え、取得した信号に基づいて超音波断層画像を表示する表示装置等を含んで構成されている(図2参照。詳細は後述する)。
超音波内視鏡1における挿入部2は、例えば硬質部材によって形成される先端硬質部21と、この先端硬質部21の基端部に連設され例えば上下方向及び左右方向に任意に湾曲自在に構成される湾曲部22と、この湾曲部22の基端部に連設され長尺状でかつ可撓性を有する可撓管部23とによって構成されている。
先端硬質部21の先端には、超音波振動子31等を一体に構成した超音波観察ユニット24が着脱自在に配設されている。この超音波観察ユニット24(超音波振動子31)は、挿入部2から操作部3及びユニバーサルコード4の内部を挿通する信号ケーブル32を介して超音波コネクタ8に接続されている。そして、この超音波コネクタ8には、上述したように超音波ケーブル13を介して超音波観測装置14が接続されるようになっている。したがって、これにより超音波観察ユニット24の超音波振動子31から出力される電気信号が超音波観測装置14へと伝達される状態になると共に、当該超音波観測装置14からの各種の制御信号等が超音波観察ユニット24の超音波振動子31や駆動モータ37(図3と図4とを参照)等へと伝達され得るようになっている。なお、超音波観察ユニット24の詳細構成については後述する。
操作部3には湾曲部22の湾曲操作を行なう湾曲操作ノブ25と、送気送水操作及び吸引操作をそれぞれ行なう送気送水吸引ボタン26とが設けられている。また、処置具を挿入するための処置具挿入口27が所定の位置に設けられている。
次に、本実施形態の超音波診断装置における超音波内視鏡1の先端硬質部21及び超音波観察ユニット24の詳細構成を図3と図4とを参照して以下に説明する。
図3と図4とに示すように先端硬質部21は、その所定の位置に前面側に向けた斜面部21cが形成されている。この斜面部21cには、照明光学系を構成する照明窓(図示せず)と観察光学系を構成する観察窓21dが設けられている。上述の光源装置11(図1参照)から供給される照明光は、ユニバーサルコード4及び挿入部2を挿通するライトガイド(図示せず)を介して伝送され、照明窓から出射されるようになっており、これにより体腔内における患部等の被検体を照明するようになっている。
この照明光によって照明された被検体を表わす光学像は、観察窓21dに臨む位置に配設される対物レンズ21eによって、その結像位置に配置される電荷結合素子(以下、CCDという)等の撮像素子(図示せず)の撮像面に結像するようになっている。そして、このCCDで光電変換された電気信号は、ユニバーサルコード4及び挿入部2を挿通する所定の信号線(図示せず)を介して上述のビデオプロセッサ12(図1参照)へと伝送されるようになっている。これを受けてビデオプロセッサ12は所定の信号処理を行なって標準的な映像信号に変換し、これを所定の表示装置(図示せず)の画面上に内視鏡観察画像として表示するようになっている。
一方、先端硬質部21の先端部本体21aにおける先端部近傍の内部空間には、超音波観察ユニット24を配置し得る内部形状を有する超音波観察ユニット配設部21bが形成されている。この超音波観察ユニット配設部21bの最先端部には開口21fが形成されている。
また、この超音波観察ユニット配設部21bの最奥部には、超音波振動子31から出力される信号を伝達する信号ケーブル32の一端部が接続される接続端子(以下、コネクタという)33が配設されている。このコネクタ33aには、超音波観察ユニット配設部21bに配置される超音波観察ユニット24の最後端部に設けられるコネクタ33bが接続されるようになっている。そして、図4に示すように超音波観察ユニット配設部21bに対して超音波観察ユニット24が収納される形態で配置されるとコネクタ33aとコネクタ33bは電気的に接続されるようになっている。これにより、超音波観察ユニット24の超音波振動子31からの出力信号は、信号ケーブル32を介して最終的に超音波観測装置14(図1参照)へと伝達される状態となる。
他方、超音波観察ユニット24は、先端硬質部21の一部を構成する先端部本体21aにおける超音波観察ユニット配設部21bに対して着脱自在に配設されるようになっている。
超音波観察ユニット24は、例えば流動パラフィンや水やカルボキシメチルセルロース水溶液等の超音波伝達媒体40が内部に充填される先端キャップ34と、超音波ビームを送受信する超音波振動子31と、回転状態の超音波振動子31と信号の授受を行なう回転型信号伝達手段であるスリップリング35と、超音波振動子31の回転位置を検出する回転位置検出手段であるエンコーダ36と、超音波振動子31を回転させる回転駆動手段である駆動モータ37等が超音波観察ユニットハウジング(以下、ユニットハウジングと略記する)38によって一体化した形態で構成されている。
超音波振動子31は、振動子保持部材31aに一体に形成される回動軸31bによって保持されている。この回動軸31bは、超音波振動子31の回転位置を検出するエンコーダ36に接続されており、このエンコーダ36と駆動モータ37とが軸継手39を介して一体的に結合されている。そして、スリップリング35及びエンコーダ36は固定部材であるユニットハウジング38によって保持されており、これにより各部材が一体化されて超音波観察ユニット24を構成している。
なお、本実施形態における超音波観察ユニット24においては、その一部を構成する超音波振動子31の超音波送受面(以下、単に送受面と略記する)31cが駆動モータ37の回転中心軸(図3〜図5に示す符号O参照)から超音波の放射方向に離間した位置となるように設定されている。つまり、このような設定とすることによって、超音波振動子31の送受面31cは先端キャップ34の内壁面に近い位置で回転し、超音波振動子31から放射される超音波ビームが超音波伝達媒体40を通過する距離が短縮し得る構成となっている。
先端キャップ34の基端部は、ユニットハウジング38の先端部近傍において水密的に接着固定されている。つまり、先端キャップ34は超音波観察ユニット24と一体に固定されている。そして、ユニットハウジング38と先端キャップ34の両者が一体となった状態で超音波観察ユニット24を構成している。
先端キャップ34は、例えば超音波透過性材質である低密度ポリエチレンやポリメチルペンテン等によって形成されている。そして、先端キャップ34の内部空間には超音波振動子31が配置されると共に、例えば流動パラフィンや水やカルボキシメチルセルロース水溶液等の超音波伝達媒体40が充填されている。
なお、超音波伝達媒体40は、例えば先端キャップ34の先端部分に形成される先端開口34aから注入されるようになっている。この先端開口34aは密栓部材34bによって水密的に塞がれるようになっている。
このように構成される超音波観察ユニット24は、例えばねじ込み等の連結手段(特に図示せず)によって先端硬質部21の先端部本体21aの超音波観察ユニット配設部21bに対して着脱自在に配設されるようになっている。そして、この状態において、超音波観察ユニット24のコネクタ33bは、先端部本体21a側のコネクタ33aに接続されることになる(図4の接続状態を参照)。
超音波観察ユニット24のコネクタ33bには、超音波振動子31と電気的に接続される信号線(図示せず)及びエンコーダ36と電気的に接続される信号ケーブル(図示せず)等がそれぞれ電気的に接続されている。
一方、本実施形態の超音波診断装置における超音波観測装置14の内部構成の概略を図1と図2とを参照して以下に説明する。
本実施形態の超音波診断装置における超音波観測装置14は、上述したように超音波内視鏡1の統括的な制御等を主に行なうものである。この超音波観測装置14は、後述する超音波観察ユニット24(図3や図4等を参照)における超音波振動子31を励振させて超音波を送信する等の駆動制御のための制御信号を送信する送信部14bと、超音波観察ユニット24からの電気信号を受けて増幅等の信号処理を行なう受信部14cと、この受信部14cからの出力信号を受けて超音波断層画像を生成するための信号処理等を行なう画像処理部14dと、この画像処理部14dからの出力信号に基づいて超音波断層画像を表示する表示部14eと、超音波観察ユニット24の駆動モータ37の駆動制御を行なうモータ制御部14gと、本超音波観測装置14の上述した内部構成回路等及びこれらの構成回路等を介して接続される超音波内視鏡1の統括的な制御を行なう制御部14aと、本超音波診断装置を操作するための操作指示信号を入力するキーボード等の信号入力装置からなる操作入力部14f等によって構成されている。
操作入力部14fには、超音波内視鏡1を使用する際に被検体近傍の深さ方向の表示範囲(表示レンジ)を切り換えて選択設定するためのレンジ切換スイッチ14ffが設けられている。つまり、このレンジ切換スイッチ14ffを操作者が任意に操作することによって、所望の観察範囲を設定し得るようになっている。
制御部14aの内部には、上述の操作入力部14fのレンジ切換スイッチ14ffからの指示信号(レンジ信号)を受けて駆動モータ37の駆動制御を行なうためのデータに変換処理するデータ変換部14aaが設けられている。
より詳しく説明すると、制御部14aの内部に設けられるデータ変換部14aaは、操作入力部14fのレンジ切換スイッチ14ffからの指示信号(レンジ信号)を受けると、そのレンジ信号データに応じたモータ回転速度データに変換するようになっている。
ここで、レンジ切換スイッチ14ffを操作することによって生じるレンジ信号は、例えば本超音波観測装置14において設定し得る複数種類の表示レンジに応じた信号である。
このレンジ信号を受けた制御部14aは、これをデータ化してデータ変換部14aaへと渡す。データ変換部14aaは、入力されたレンジ信号データに基づいて所定の信号処理を行なって駆動モータ37を駆動制御するためのモータ回転速度データを生成する。そして、これをモータ制御部14gへと出力するようになっている。
このモータ回転速度データを受けたモータ制御部14gは、当該受信データに応じた回転速度によって駆動モータ37の駆動制御を行なうようになっている。
また、モータ回転速度データは、制御部14aから送信部14bへも出力されるようになっている。この場合において、送信部14bでは、当該モータ回転速度データを参照して超音波観察ユニット24の超音波振動子31から送信すべき超音波ビームの放射制御を行なうようになっている。
さらに、モータ回転速度データは、制御部14aから画像処理部14dへも同時に出力されるようになっている。画像処理部14dでは、このモータ回転速度データを参照して、受信部14cから入力される画像信号のフレームレートを確認し、これに応じた画像信号処理を行なって所定の画像データを生成するようになっている。こうして生成された画像データは表示部14eへと伝達され、この表示部14eによって超音波断層画像として表示されるようになっている。
このように構成される本実施形態の超音波診断装置の作用について、以下に説明する。
本実施形態の超音波診断装置を用いた超音波観察診断を行なう場合においては、まずその使用に先立って操作入力部14fのレンジ切換スイッチ14ffを操作して、これから行なおうとする超音波観察診断に適した所望の表示レンジを選択し設定する等の準備設定操作が必要である。
このレンジ切換スイッチ14ffによる表示レンジの切り換え設定操作を行なった後に、当該超音波診断装置の使用が開始されると、超音波観測装置14は、設定された表示レンジに応じた回転速度によって駆動モータ37(超音波振動子31)を駆動制御し、設定された表示レンジに最適となるフレームレートによって所定の画像データを生成するための信号処理を画像処理部14dにおいて行ない、表示部14eにおいて良好な超音波断層画像を表示すべく、各種所定の制御動作を自動的に行なうことになる。
この場合において、レンジ切換スイッチ14ffによる表示レンジの切り換え設定操作は使用者によって行なわれる。このときに設定される表示レンジに応じて超音波観測装置14が駆動モータ37の回転速度を自動的に設定しフレームレートの自動切り換え制御を行なう際の一連の作用を、図6のフローチャートによって以下に説明する。
まず、本超音波診断装置を構成する各機器のそれぞれが図1に示すような形態で各接続された状態において、所定の電源スイッチのオン操作がなされて各機器に対して必要な電力の供給がなされた通電状態となっているものとする。
この状態において、当該超音波診断装置を使用して観察診断を行なうための各種の準備設定操作が行なわれる。この準備設定操作のうちの一つとして、これから行なおうとする超音波観察診断に適した所望の表示レンジを選択し設定する表示レンジ選択設定操作がある。
この表示レンジ選択設定操作は、上述したように超音波観測装置14の操作入力部14fにおけるレンジ切換スイッチ14ffを操作することによって行なわれるものである。この操作を行なうことによって生じる指示信号を受けて上記超音波観測装置14(の制御部14a等)は所定の制御処理、即ち表示レンジ設定処理を実行する。
まず、図6に示すステップS1において、超音波観測装置14の制御部14aは、操作入力部14fのレンジ切換スイッチ14ffが操作されたか否かの判断を行なう。この判断は、レンジ切換スイッチ14ffから所定のオン(ON)信号が生じたか否かを判定することによりなされる。
このステップS1において、制御部14aは、レンジ切換スイッチ14ffからの所定のオン(ON)信号を監視しており、使用者がレンジ切換スイッチ14ffを操作する等によって当該オン信号が発生すると、その信号は制御部14aへと伝達される。これを受けて制御部14aは、次のステップS2の処理を実行する。
なお、本実施形態の超音波診断装置における超音波観測装置14において設定し得る表示レンジとしては、例えば4cmレンジ/6cmレンジ/9cmレンジ/12cmレンジの四つの表示レンジを選択設定し得るようになっている。ここで、各レンジの示す距離は、超音波振動子31を中心とする半径を示し、超音波振動子31から放射される超音波ビームのおよその到達距離を示すものである。したがって、その距離の半径内の範囲が観察範囲となる。
この場合において、レンジ切換スイッチ14ffは、これを操作する毎に各表示レンジが順に設定されるようになっている。つまり、最初の電源投入後の初期状態では、4cmレンジ又は前回の使用終了時に設定されていた表示レンジXcmレンジが設定されるようになっている。そして、このときレンジ切換スイッチ14ffからは、当該設定されている表示レンジに関する指示信号(レンジ信号)が発生し、これを受けて制御部14aは対応するレンジ信号データを生成する。そして、このレンジ信号データはデータ変換部14aaへと出力されるようになっている。
また、この状態(例えば4cmレンジ又は前回設定のXcmレンジに設定されている状態)で使用者がレンジ切換スイッチ14ffを一回操作すると、6cmレンジ又は前回設定のXcmレンジの次の表示レンジが設定される。そして、このとき切り換え設定された表示レンジに応じた指示信号(レンジ信号)が発生し、同様に制御部14aが対応するレンジ信号データを生成して、このレンジ信号データはデータ変換部14aaへと出力される。
さらにここで、再度レンジ切換スイッチ14ffを操作すると、9cmレンジ又はXcmレンジの次の次の表示レンジが設定される。そして、このとき切り換え設定された表示レンジに応じた指示信号(レンジ信号)が発生し、制御部14aにより生成されたレンジ信号データはデータ変換部14aaへと出力される。
以下同様に、表示レンジの切り換え設定が順に行なわれ、これに伴って設定された表示レンジに応じた指示信号(レンジ信号)が適宜発生し、そのレンジ信号データが制御部14aのデータ変換部14aaへと出力される。
したがって、当該超音波観測装置14及び操作入力部14fが通電状態になった時点においては、レンジ切換スイッチ14ffからは表示レンジに関する何らかの指示信号が発生している状態となる。
換言すれば、このステップS1の処理において制御部14aは、超音波観測装置14及び操作入力部14fが通電状態となったか、又は通電状態とされた後にレンジ切換スイッチ14ffが使用者により操作されることで発生するいずれかのレンジ信号の監視を行なっている。
このように、上述のステップS1の処理において制御部14aは、レンジ切換スイッチ14ffからのいずれかのレンジ信号を受けると、次のステップS2の処理に進み、このステップS2において、当該制御部14aは、上述のステップS1でレンジ切換スイッチ14ffから受けたレンジ信号をデータ化する。そして、そのレンジ信号データがいずれの表示レンジを表わすものであるかの判断を行なう。これと共に、そのレンジ信号データに対応する表示レンジ、即ち現在設定されている表示レンジと所定の閾値nとの比較を行なう。ここで、現在設定されている表示レンジの値<所定の閾値nの条件を満たす場合、即ち設定されているレンジ信号データが閾値nよりも小であると判断された場合には、ステップS3の処理に進む。また、設定されているレンジ信号データが閾値nよりも大であると判断された場合には、ステップS4の処理に進む。
なお、本実施形態においては、設定されている表示レンジが4cmレンジ又は6cmレンジ又は9cmレンジのいずれかであると判断された場合には、制御部14aは、設定されている表示レンジのデータが閾値nよりも小であると判断して、ステップS3の処理に進む。また、これ以外の場合、即ち設定されている表示レンジが12cmレンジであると判断された場合には、設定されている表示レンジのデータが閾値nよりも大であると判断して、ステップS4の処理へと進む。
次のステップS3において、制御部14aは、受信したレンジ信号データをその内部のデータ変換部14aaへ送り、そのレンジ信号データに応じたモータ回転速度データに変換する。このモータ回転速度データは、表示レンジに応じて駆動モータ37を駆動制御するための回転速度等に関するデータである。つまり、その回転速度にて駆動モータ37を駆動制御した時に生成される超音波断層画像のフレームレートに関するフレームレートデータでもある。
したがって、このステップS3において生成されるモータ回転速度データ(フレームレートデータ)は、表示レンジが4cmレンジ又は6cmレンジ又は9cmレンジに設定したときに対応する駆動モータ37の回転速度に関するデータである。
一般的な超音波内視鏡1においては、短い距離の表示レンジが設定された場合には、駆動モータ37を高速に回転させても、超音波観測装置14はその送受信信号を確実に処理することができる。そして、超音波振動子31を高速回転によって回転させることで、常に良好な超音波断層画像を確実に生成し得ることになる。
なお、本実施形態に適用される超音波内視鏡1の先端部に設けられる駆動モータ37は、その回転速度を、例えば高速回転モードと低速回転モードとの二段階に切り換えることができるようにされている。
したがって、このステップS3においては、制御部14aのデータ変換部14aaは、受信したレンジ信号データを受けて駆動モータ37を高速回転モードで動作制御させるべく、フレームレート=highの高速モードデータを生成する。
こうして生成されたフレームレート=highの高速モードデータは、当該制御部14aからモータ制御部14gへと出力される。その後、制御部14aは、図6の表示レンジ設定処理のシーケンスを終了する(END)。
一方、ステップS4において制御部14aは、上述のステップS3の処理と同様に受信したレンジ信号データをその内部のデータ変換部14aaへ送り、そのレンジ信号データに応じたモータ回転速度データに変換する。このステップS4において生成されるモータ回転速度データは、表示レンジが12cmレンジに設定したときに対応する駆動モータ37の回転速度に関するデータである。即ち、制御部14aのデータ変換部14aaは、受信したレンジ信号データを受けて駆動モータ37を低速回転モードで動作制御させるべく、フレームレート=lowの低速モードデータを生成する。
こうして生成されたフレームレート=lowの低速モードデータは、当該制御部14aからモータ制御部14gへと出力される。その後、制御部14aは、図6の表示レンジ設定処理のシーケンスを終了する(END)。
なお、上述のステップS3及びステップS4の両処理において生成されたフレームレートに関するモードデータを受けたモータ制御部14gは、当該データに基づいて駆動モータ37の駆動制御処理を実行し得る状態になる。こうして、表示レンジ設定に関する準備設定操作は完了する。
以上説明したように上記一実施形態によれば、超音波振動子31とスリップリング(回転型信号伝達手段)35とエンコーダ(回転位置検出手段)36と駆動モータ(回転駆動手段)37等をユニットハウジング38によって一体に構成した超音波観察ユニット24を内視鏡挿入部2の先端部本体21aに配設したラジアル走査型の超音波内視鏡1と、超音波観測装置14とからなる超音波診断装置において、観察診断を行うのに先立って、超音波観測装置14に設けられる操作入力部14fのレンジ切換スイッチ14ffを用いて、超音波振動子31から放射される超音波の到達範囲が所望の表示レンジとなるように切り換え、その選択設定操作を行なうと、この操作入力部14fからの指示信号を受けて制御部14aは、設定された表示レンジに応じたフレームレートにて超音波断層画像を生成すべくモータ制御部14gによる駆動モータ37の回転速度の駆動制御を行ない得る状態にする。
つまり、本超音波診断装置においては、使用者が選択した所望の表示レンジに応じて適切なフレームレートに切り換わるように駆動モータ37の回転速度モードを自動的に切り換える制御が行なわれる。したがって、これにより超音波観察診断を実行した際には、常に良好な超音波断層画像を確実に生成することができる。
なお、上述の一実施形態において、レンジ切換スイッチ14ffは、これを操作する毎に各表示レンジが順に設定されるようにしているが、これに限らず、例えばレンジ切換スイッチ14ffを設定し得る表示レンジに対応する数だけ設けることで、所望の表示レンジを直接的に設定し得るように構成することもできる。
また、上述の一実施形態においては、表示レンジに応じて駆動モータ37の回転速度モードを高速回転モードと低速回転モードとの二段階に切り換える制御を行なっている。この場合における切り換えは、設定されている表示レンジが4cmレンジ又は6cmレンジ又は9cmレンジのいずれかであるときには高速回転モードに、12cmレンジであるときには低速回転モードとなるように制御される。
しかしながら、回転速度モードの切り換えについては、この例に限らず例えば1〜4cmレンジでは高速回転モードとし、6〜9cmレンジでは中速回転モードとし、12cmレンジでは低速回転モードとなるような制御を行なうようにしてもよい。また、これとは別に、1〜12cmレンジまでの間で設定し得る全ての表示レンジに応じて駆動モータの回転速度を適宜変化させるような制御を行なうようにしてもよい。
[付記]
上記発明の実施形態により、以下のような構成の発明を得ることができる。
(1)
超音波を送受信する超音波振動子と、この超音波振動子を機械的に回転させる回転駆動手段と、回転状態にある上記超音波振動子と信号の授受を行なう回転型信号伝達手段と、上記超音波振動子の回転位置を検出する回転位置検出手段とを一体に構成した超音波観察ユニットを、体腔内に挿入すべく構成された内視鏡挿入部の先端部本体に配設したラジアル走査型の超音波内視鏡と、この超音波内視鏡からの信号を受けて超音波断層画像を生成する超音波観測装置とを具備して構成される超音波診断装置において、
上記超音波観測装置は、モニタ上の表示レンジを切り換えて選択設定するための操作入力部と、この操作入力部からの指示信号を受けてレンジ信号データを生成し、このレンジ信号データに基づいてフレームレートデータを生成し出力する制御部と、このフレームレートデータに基づいて駆動モータの回転速度の駆動制御を行なうモータ制御部とを具備する超音波診断装置。
(2)
付記(1)に記載の超音波診断装置において、
上記レンジ切換スイッチによって設定し得る表示レンジのうち短距離側の表示レンジが設定されたときには、上記モータ制御部は上記駆動モータを高速側で回転させる駆動制御を行ない、上記レンジ切換スイッチによって設定し得る表示レンジのうち長距離側の表示レンジが設定されたときには、上記モータ制御部は上記駆動モータを低速側で回転させる駆動制御が行なわれるように上記制御部による制御がなされる超音波診断装置。
(3)
付記(1)に記載の超音波診断装置において、
上記モータ制御部は、
上記レンジ切換スイッチによって設定し得る表示レンジのうち短距離側の表示レンジが設定されたときには上記駆動モータを高速側で回転させる駆動制御を行ない、
上記レンジ切換スイッチによって設定し得る表示レンジのうち中距離領域の表示レンジが設定されたときには上記駆動モータを中速で回転させる駆動制御を行ない、
上記レンジ切換スイッチによって設定し得る表示レンジのうち長距離側の表示レンジが設定されたときには上記駆動モータを低速側で回転させる駆動制御を行なうように
上記制御部による制御がなされる超音波診断装置。
(4)
付記(1)に記載の超音波診断装置において、
上記モータ制御部は、
上記レンジ切換スイッチによって設定し得る複数の表示レンジのそれぞれに各対応した規定の速度で上記駆動モータを回転させる駆動制御を行なうように上記制御部による制御がなされる超音波診断装置。