JP4338882B2 - 歯科インプラント用義歯の固定基盤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、欠如歯部の失われた口腔機能を回復するための歯科用インプラント治療において、歯科インプラント用義歯を短時間に製作して口腔内に装着し、失われた口腔機能の早期達成を図るための歯科インプラント用義歯の固定基盤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、欠如歯部における歯科補綴法としては、ブリッジによる方法と、床義歯による方法とが一般に行われてきた。
しかしながら、ブリッジによる方法は、欠如歯部の両側の健全な天然歯を切削して支台とし、この支台に係合固定される金属体間に欠如歯部に位置する歯科用補綴物を固設する方法であるので、支台を形成するために健全な天然歯を切削しなければならないばかりか、欠如歯部に位置する歯科用補綴物部分には咬合圧が直接には加わらないために当該部位で骨吸収を引き起こすという欠点があった。
また、床義歯による方法は、合成樹脂等で作成した義歯床に人工歯を固定したものを歯科用補綴物とする方法であるが、この方法では歯科用補綴物に作用する咬合力をその床義歯に隣接する残存天然歯及び/又は口腔粘膜によって負担させるものであるので、歯科用補綴物使用中に違和感があることや、口腔粘膜組織中に散在する味覚の受容器を義歯床が覆ってしまうことによる味覚の鈍麻が生じることがあり、更には長期間の使用によって顎堤の吸収を引き起こすという重大な欠点があった。
【0003】
そこでこれらの欠点を解消する治療方法として、チタン金属と骨とが結合することが発見されるに至り、この“骨結合”を前提として欠如歯部の顎骨内に形成した埋入孔内に歯科用補綴物の維持安定装置となるチタン金属製のインプラントフィクスチャーを埋入して天然歯における歯根の機能を代行せしめ、このインプラントフィクスチャーの口腔内側に固定されたアバットメントに歯科用補綴物の固定装置を固定して歯科用補綴物維持装置とし、この歯科用補綴物の固定装置に歯科用補綴物を固着する歯科インプラントの技術が開発され、実施されるようになってきている。
【0004】
このような歯科インプラントによる治療方法を実施すると、口腔粘膜を覆うことなく歯科用補綴物を固定することができるので、歯科用補綴物装着時の違和感や味覚の鈍麻が生じることがなく、天然歯に似た使用感が得られ、更に顎骨には適度な咬合力が付与されるためインプラントフィクスチャーが埋入されていない場合に想定される骨吸収を最小限に抑制できるという利点があるため、この治療方法は急速な発展を遂げて単独歯欠損,2歯以上の局部欠損のみならず、無歯顎(全歯欠損)に至るまでに適用できるようになってきている。
【0005】
この歯科インプラント治療においては、欠如歯部の顎骨内に形成された埋入孔内に埋入されたインプラントフィクスチャーが欠如歯部の顎骨に充分に結合することが必要であり、骨結合の獲得にはインプラントフィクスチャー埋入手術後の安静状態が重要である。即ち、手術後の創傷した骨組織は、安静状態の維持により正常な骨の治癒過程が確保されて骨のモデリングへと移行するが、生物不活性を有するチタン金属の清浄な表面を持つインプラントフィクスチャーの表面では、一層の糖蛋白を介して骨が結合する“骨結合”が達成されるのである。このためインプラントフィクスチャー埋入手術後はインプラントフィクスチャーに荷重がかからないよう歯肉を一旦戻してインプラントフィクスチャーを歯肉下に置き、緻密な骨が多い下顎では約4ヶ月、鬆粗な骨が多い上顎では約6ヶ月の安静治癒期間を与え、骨結合が獲得された後にそのインプラントフィクスチャーが埋入された口腔内側の歯肉部分を再度切開してインプラントフィクスチャーの口腔内側部分に歯科用補綴物の固定装置の取付部分となるアバットメントを固定するための再手術を行う二回法が主として採用されている。
【0006】
しかしながら、この二回法は2回の手術を患者に強いることになって患者の負担が大きいことから、一回法と称され前記のインプラントフィクスチャー埋入時にアバットメントを装着するか、又はアバットメントとアバットメントスクリューとがインプラントフィクスチャーと一体化された構造のアバットメントの機能を含む歯肉貫通型インプラントフィクスチャーを用いて埋入手術と同時に歯肉貫通までを行う方法が臨床に応用されてきているが、この方法は骨結合の達成以前にインプラントフィクスチャーに対して荷重が作用する危険性が大きくなるため、これを回避する注意が必要であった。
【0007】
このような二回法と一回法とのいずれのインプラント治療も、インプラントフィクスチャーとの骨結合が得られた後、歯科用補綴物を完成させて咀嚼機能を与える方法であるため、骨結合獲得のため一定治癒期間を経た後でなければ歯科用補綴物を装着できないので前記のような長期間に亘る負担を患者に強いており、更に大きな咀嚼力又は予測しない大きな外力等を受けた場合はインプラント周囲骨の吸収により骨結合の破壊が進むという生体反応が起こる危険性があるので、埋入されるインプラントフィクスチャー数,咬合力の加わり方,インプラントフィクスチャー同士の連結固定等の臨床的検討が要求されている。
【0008】
前述したように、骨結合を前提とするインプラント治療を成功させるには、インプラントフィクスチャーとの良好な骨結合の獲得、即ちインプラントフィクスチャーへの過大負荷及びインプラントフィクスチャーの動揺の回避が重要であるが、インプラントフィクスチャーを欠如歯部の顎骨内に形成した埋入孔内に埋入した際にインプラントフィクスチャーと顎骨とが或る程度の固定状態が得られ且つその後の多少の負荷に対しても固定状態の維持が得られれば、骨結合獲得期間内でも咀嚼機能を達成できることが近年臨床的に確認された結果、インプラントフィクスチャーを欠如歯部の顎骨内に形成した埋入孔内に埋入した後、即時に又は早期に仮の歯科用補綴物を装着する治療法が提案されており、この治療法は特に骨質の硬い下顎骨では骨質条件が良いことから応用し易いとされている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前述したようなインプラントフィクスチャーを欠如歯部の顎骨内に形成した埋入孔内に埋入した手術後、各インプラントフィクスチャーを強固に連結固定して即時に又は早期に咀嚼機能を与えることを可能とする歯科インプラント用義歯の固定基盤を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意研究の結果、欠如歯部の顎骨内に形成された埋入孔内に埋入された、口腔内側の歯肉内にアバットメントスクリューによりアバットメントが固定されているか、アバットメント機能を含むフレームシリンダーが固定されるか、又はアバットメント機能を含む歯肉貫通型インプラントフィクスチャーの更に口腔内側に設置される外側面に凸部及び/又は凹部を有するフレームシリンダーと、該フレームシリンダーを前記アバットメントスクリューに固定するフレームスクリューと、患者の顎堤に沿った形状を成し前記フレームシリンダーの外形より充分に大きいフレームシリンダー挿入穴が2個以上貫通形成されている歯科インプラント用義歯固定用金属製フレームとで歯科インプラント用義歯の固定基盤を構成すればよいことを究明して本発明を完成したのである。
【0011】
そして、歯科インプラント用義歯固定用金属製フレームのフレームシリンダー挿入穴が口腔内側が細くなるようにテーパー又は中間部に段部を有していたり、その中間に切欠き状凹条を有していたり、歯科インプラント用義歯固定用金属製フレームの外側面に義歯床用レジン係合用凹部が形成されていたり、歯科インプラント用義歯固定用金属製フレームの口腔内側面の頬側及び/又は舌側に義歯床用レジン係合用凸部が形成されていると好ましいことも併せて究明したのである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面により本発明に係る歯科インプラント用義歯の固定基盤について詳細に説明する。
図1は本発明に係る歯科インプラント用義歯の固定基盤をアバットメントスクリューによりアバットメントが固定されているインプラントフィクスチャーに固定した状態を示す説明用断面図、図2は本発明に係る歯科インプラント用義歯の固定基盤をアバットメント機能を含むフレームシリンダーが固定されたインプラントフィクスチャーに固定した状態を示す説明用断面図、図3は本発明に係る歯科インプラント用義歯の固定基盤をアバットメント機能を含む歯肉貫通型インプラントフィクスチャーに固定した状態を示す説明用断面図、図4は本発明に係る歯科インプラント用義歯の固定基盤におけるフレームシリンダーの1実施例の平面図、図5は図4の右半分を断面で示した正面図、図6は本発明に係る歯科インプラント用義歯の固定基盤におけるフレームスクリューの1実施例の平面図、図7は図6の正面図、図8は本発明に係る歯科インプラント用義歯の固定基盤における歯科インプラント用義歯固定用金属製フレームの1実施例の一部を断面で示した平面図、図9は図8の正面図、図10は図8の底面図、図11は図8におけるA−A線部分の断面図、図12は図8におけるB−B線部分の断面図、図13は図8におけるC−C線部分の断面図、図14は図8におけるD部矢視図である。
【0013】
図面中、1は欠如歯部の顎骨内に形成された埋入孔内に埋入される公知のインプラントフィクスチャーであり、図1に示した実施例では外周面にスクリュー1aが設けられており、その口腔内側に位置する部分にはその口腔内側外周面が丁度歯肉厚と略合致する長さであるアバットメント2が係合される六角形状等の多角形凸部1cが設けられており、この口腔内側に位置する部分に設けられた多角形凸部1cを貫通してその長軸に沿ってアバットメントを固定するためのアバットメントスクリュー3が螺合される雌ねじ部1bが螺設されていると共に多角形凸部1cが設けられている端部と反対側の端部にはタッピング用の切り刃部1dが設けられている。このインプラントフィクスチャー1としては、図2に示した実施例ではアバットメント2に相当する部分が後述するアバットメント機能を含むフレームシリンダー4'に設けられているので六角形状等の多角形凸部1cとアバットメント2に相当する部分とが係合することはないが、図1に示した形状と同様な形状のものである。また、このインプラントフィクスチャー1としては、図3に示すように、アバットメント2及びアバットメントスクリュー3に相当する部分がその口腔内側に一体に形成されているアバットメント機能を含む歯肉貫通型インプラントフィクスチャー1'であってもよい。
【0014】
4は本発明に係る歯科インプラント用義歯の固定基盤の一部材であるフレームシリンダー、4'は本発明に係る歯科インプラント用義歯の固定基盤の一部材であるアバットメント機能を含むフレームシリンダーであって、それぞれ欠如歯部の顎骨内に形成された埋入孔内に埋入された、口腔内側の歯肉内にアバットメントスクリュー3によりアバットメント2が固定されているインプラントフィクスチャー1か,アバットメント機能を含むフレームシリンダー4'が固定されるインプラントフィクスチャー1か、又はアバットメント機能を含む歯肉貫通型インプラントフィクスチャー1'の更に口腔内側に設置される外側面に凸部4a及び/又は凹部4b(図5及び図6に示した実施例では凸部4a及び凹部4b)を有し且つその中央部貫通穴には後述するフレームスクリュー5により前記インプラントフィクスチャー1又は1'に固定されるための突起部4dが設けられており、図示した実施例のように凸部4aがフランジ状である場合にはこの一部に切欠き部4cが設けられていることが好ましい。なおこのフレームシリンダー4,4'はその一部が歯肉に直接接触することがあるので、生体親和性が優れ且つ高い機械的性質を有するチタン,チタン合金又は金合金が望ましい。
【0015】
5は本発明に係る歯科インプラント用義歯の固定基盤の一部材であるフレームスクリューであり、フレームシリンダー4,4'の突起部4dに段部5bが当接するまでアバットメントスクリュー3の口腔内側又はインプラントフィクスチャー1,1'の口腔内側に螺設されている雌ねじ部に雄ねじ部5aを螺入されてフレームシリンダー4又は4'をインプラントフィクスチャー1又は1'に固定する役目をなすものである。
【0016】
6は本発明に係る歯科インプラント用義歯の固定基盤の一部材である患者の顎堤に沿った形状を成す歯科インプラント用義歯固定用金属製フレームであり、フレームシリンダー4又は4'の外形より充分に大きいフレームシリンダー挿入穴6aが2個以上(図示した実施例は4個)貫通形成されている。このフレームシリンダー挿入穴6aは、口腔内側が細くなるようにテーパー又は中間部に段部を有している形状であることが好ましく、またその中間に切欠き状凹条を有していることが好ましい。そして、この歯科インプラント用義歯固定用金属製フレーム6は、その外形を義歯床用レジンで隠して義歯を固定するための基盤となるものであるから、義歯床用レジンから離脱しないように外側面に義歯床用レジン係合用凹部6bが設けられていることが好ましい。更に、歯科インプラント用義歯固定用金属製フレーム6の口腔内側面の頬側及び/又は舌側に義歯床用レジン係合用凸部6cが形成されていると、義歯床用レジンとの係合がより確実になるので好ましい。なお、この歯科インプラント用義歯固定用金属製フレーム6は歯肉に直接接触することがあるので、生体親和性が優れ且つ高い機械的性質を有するチタン,チタン合金又は金合金が望ましい。
【0017】
7は本発明に係る歯科インプラント用義歯の固定基盤の一部材である歯科インプラント用義歯固定用金属製フレーム6に貫通形成されているフレームシリンダー挿入穴6aとこのフレームシリンダー挿入穴6a内に挿入されたフレームシリンダー4又は4'との間に注入充填され固化して歯科インプラント用義歯固定用金属製フレーム6とフレームシリンダー4又は4'とを一体化している硬質の樹脂である。この樹脂7としては歯科インプラント用義歯固定用金属製フレーム6のフレームシリンダー挿入穴6a及びフレームシリンダー4又は4'と強固に接着する接着性の樹脂が好ましい。
【0018】
このような構成において、インプラント治療を行うには、先ず欠如歯部の所定位置の顎骨内に埋入孔を形成し、この埋入孔内にアバットメントスクリュー3によりアバットメント2が固定されているか、アバットメント機能を含むフレームシリンダー4'が固定されるか、又はアバットメント機能を含む歯肉貫通型のインプラントフィクスチャー1又は1'を埋入する。このインプラントフィクスチャー1,1'は、図1〜図3に示した実施例のように外周面にスクリュー1aが設けられており口腔内側と反対側の端部にはタッピング用の切り刃部1dが設けられていると、埋入孔内に埋入した直後においても或る程度安定した状態を維持するので好ましい。そして、図1に示した実施例の場合は、その口腔内側に位置する部分に設けられている多角形凸部1cにその口腔内側外周面が丁度歯肉厚と略合致する長さであるアバットメント2を係合させ、このアバットメント2の中央を貫通している貫通穴を貫通させてアバットメントスクリュー3をインプラントフィクスチャー1の雌ねじ部1bに螺合させてアバットメント2をインプラントフィクスチャー1に固定する。この作業は、従来のインプラント治療において行う作業と同じである。
【0019】
次いで、アバットメント2が固定されているインプラントフィクスチャー1(図1に示した実施例の場合),アバットメント機能を含むフレームシリンダー4'が固定されるインプラントフィクスチャー1(図2に示した実施例の場合)又はアバットメント機能を含む歯肉貫通型インプラントフィクスチャー1'(図3に示した実施例の場合)の口腔内側にフレームシリンダー4又は4'(図1及び図3に示した実施例の場合はフレームシリンダー4,図2に示した実施例の場合はアバットメント機能を含むフレームシリンダー4')を設置し、その中央部貫通穴を貫通してフレームスクリュー5と同様な形状でその長さが長いガイドピン(図示なし)の雄ねじ部をフレームシリンダー4又は4'の突起部4dに段部が当接するまでアバットメントスクリュー3の中央に螺設されている雌ねじ部(図1に示した実施例の場合)、アバットメント機能を含むフレームシリンダー4'が固定されるインプラントフィクスチャー1の中央に螺設されている雌ねじ部(図2に示した実施例の場合)又はアバットメント機能を含む歯肉貫通型インプラントフィクスチャー1'の口腔内側中央に螺設されている雌ねじ部(図3に示した実施例の場合)に螺入させてフレームシリンダー4又は4'をインプラントフィクスチャー1又は1'に固定する。しかる後に、その口腔内側に各ガイドピン及びフレームシリンダー4又は4'がフレームシリンダー挿入穴6aを貫通するように歯科インプラント用義歯固定用金属製フレーム6を設置し、欠如歯部の顎骨内に埋入されたインプラントフィクスチャー1又は1'に対する歯科インプラント用義歯固定用金属製フレーム6の位置をフレームシリンダー4又は4'の外形より充分に大きいフレームシリンダー挿入穴6aで吸収させて歯科インプラント用義歯固定用金属製フレーム6が顎堤に沿った所望の位置に位置するようにして、フレームシリンダー4又は4'の外側面と歯科インプラント用義歯固定用金属製フレーム6のフレームシリンダー挿入穴6aの内面との間の空間に樹脂7を注入して固化させる。
【0020】
この際、フレームシリンダー4又は4'はその外側面に凸部4a及び/又は凹部4bが設けられているので、注入固化した樹脂7とフレームシリンダー4又は4'とは完全に一体化するのであり、図示した実施例のように凸部4aがフランジ状である場合にはこの一部に切欠き部4cが設けられていると樹脂7はこの切欠き部4cを通ってフレームシリンダー4の最も歯肉側まで(図1及び図3に示した実施例の場合)又はフレームシリンダー4'のアバットメントに相当する部分の最も口腔内側まで(図2に示した実施例の場合)注入されるのであり、また歯科インプラント用義歯固定用金属製フレーム6のフレームシリンダー挿入穴6aが口腔内側が細くなるようにテーパー又は中間部に段部を有している形状であると咬合力が歯科インプラント用義歯固定用金属製フレーム6を介してフレームシリンダー4又は4'に伝達されたときに注入固化した樹脂7に圧縮力が作用するため強度的に好ましいばかりか、インプラントフィクスチャー1の埋入角度がズレたときにも対応し易く、更に歯科インプラント用義歯固定用金属製フレーム6のフレームシリンダー挿入穴6aがその中間に切欠き状凹条を有していると注入固化した樹脂7と歯科インプラント用義歯固定用金属製フレーム6とが完全に一体化するのでより好ましい。
【0021】
かくして歯科インプラント用義歯固定用金属製フレーム6が樹脂7を介してフレームシリンダー4又は4'に、即ち欠如歯部の顎骨内に埋入されたインプラントフィクスチャー1又は1'に固定されると、歯科インプラント用義歯固定用金属製フレーム6と共に口腔内形状の印象採得を行うために印象材を印象採得部位に圧接した後に印象材と共に歯科インプラント用義歯固定用金属製フレーム6をアバットメントスクリュー3によりアバットメント2が固定されているインプラントフィクスチャー1(図1に示した実施例の場合),アバットメント機能を含むフレームシリンダー4'が固定されるインプラントフィクスチャー1(図2に示した実施例の場合)又はアバットメント機能を含む歯肉貫通型インプラントフィクスチャー1'(図3に示した実施例の場合)から分離して取り外して印象採得を完了するのであり、このような操作を行うためにはガイドピンとアバットメントスクリュー3,インプラントフィクスチャー1又は1'との螺合を解除することが必要であるが、ガイドピンはフレームスクリュー5に比べてその長さが長いのでその口腔内側端部に設けられているレンチやドライバー等との係合部が印象材の口腔内側面より突出しているので印象材を損傷させること無く容易にガイドピンとアバットメントスクリュー3,インプラントフィクスチャー1又は1'との螺合を解除することができる。
【0022】
このようにして印象採得が完了すると、印象材と一体を成している歯科インプラント用義歯固定用金属製フレーム6のフレームシリンダー4又は4'の口腔内側と反対側にアバットメント2と類似した外形状のアバットメントアナログ(図示なし)(図1及び図3に示した実施例の場合)又はアバットメント機能を含むフレームシリンダー4'が固定されるインプラントフィクスチャー1と類似した外形状のフィクスチャーアナログ(図示なし)(図2に示した実施例の場合)を前記ガイドピンにより装着して石膏模型を作製した後、この石膏模型のアバットメントアナログ又はフィクスチャーアナログからガイドピンを外して歯科インプラント用義歯固定用金属製フレーム6から印象材を取り外し、次いで歯科インプラント用義歯固定用金属製フレーム6の上面に通法により人工歯の配列と義歯床用レジンでの歯肉部の形成を行い、義歯が完成するのである。
【0023】
この作業において、歯科インプラント用義歯固定用金属製フレーム6は、その歯肉側を義歯床用レジンで覆われて義歯を義歯床用レジンを介して固定するための基盤となるものであるから、義歯床用レジンから離脱しないように外側面に義歯床用レジン係合用凹部6bが設けられていることが好ましい。更に、歯科インプラント用義歯固定用金属製フレーム6の口腔内側面の頬側及び/又は舌側に義歯床用レジン係合用凸部6cが形成されていると、義歯床用レジンとの係合がより確実になるので好ましいのである。
【0024】
かくして製造された義歯は、歯科インプラント用義歯固定用金属製フレーム6のフレームシリンダー挿入穴6aに対応する位置に配置されている人工歯には貫通穴が設けられており、インプラントフィクスチャー1又は1'の口腔内側にはフレームスクリュー5が挿通される貫通穴が形成されているので、この人工歯の貫通穴に挿入されたフレームスクリュー5の螺合により義歯はインプラントフィクスチャー1又は1'に固定されて使用されるのであり、歯科インプラント用義歯固定用金属製フレーム6にはフレームシリンダー挿入穴6aが2個以上形成されているため、欠如歯部の顎骨内に形成された埋入孔内に埋入されておりこのフレームシリンダー挿入穴6aに挿入されて樹脂7で一体化されているフレームシリンダー4又は4'と複数本の各インプラントフィクスチャー1又は1'とがフレームスクリュー5により固定されるので、インプラントフィクスチャー1又は1'が1本だけの場合には咬合負荷に対して過大な力を受け易いのに対し、複数本のインプラントフィクスチャー1又は1'に剛体とみなせる歯科インプラント用義歯固定用金属製フレーム6が固定されることになって、インプラントフィクスチャー1又は1'単体に作用する荷重は小さくなるためインプラントフィクスチャー1又は1'への過大負荷及びインプラントフィクスチャー1又は1'の動揺を回避することができるのである。
【0025】
【発明の効果】
以上に詳述した如く、本発明に係る歯科インプラント用義歯の固定基盤は、欠如歯部の顎骨内に形成された埋入孔内に埋入された、アバットメントスクリューによりアバットメントが固定されているか、アバットメント機能を含むフレームシリンダーが固定されるか、又はアバットメント機能を含む歯肉貫通型のインプラントフィクスチャーの更に口腔内側に設置される外側面に凸部及び/又は凹部を有するフレームシリンダーと,該フレームシリンダーを前記インプラントフィクスチャーに固定するフレームスクリューと、患者の顎堤に沿った形状を成し前記フレームシリンダーの外形より充分に大きいフレームシリンダー挿入穴が2個以上貫通形成されている歯科インプラント用義歯固定用金属製フレームとから成ることを特徴とするものであり、従来の義歯のように口腔粘膜を覆うことがないので歯科用補綴物装着時の違和感や味覚の鈍麻が生じることがなく、天然歯に似た使用感が得られ、更に顎骨には適度な咬合力が付与されるためインプラントフィクスチャーが埋入されていない場合に想定される骨吸収を最小限に抑制できるという利点がある歯科インプラント治療における欠点とされていた治療期間が短縮され、患者の負担が減少するばかりか、各インプラントフィクスチャーが剛体とみなせる歯科インプラント用義歯固定用金属製フレームに強固に連結固定されるため、インプラントフィクスチャー単体に大きな荷重が作用することが阻止され、骨結合期間中であっても骨結合が達成される等の利点があるのである。
【0026】
そして、歯科インプラント用義歯固定用金属製フレームのフレームシリンダー挿入穴が口腔内側が細くなるようにテーパー又は中間部に段部を有していると、咬合力が歯科インプラント用義歯固定用金属製フレームを介してフレームシリンダーに伝達されたときに注入固化した樹脂に圧縮力が作用するため強度的に好ましいばかりか、インプラントフィクスチャーの埋入角度がズレたときにも対応し易く、歯科インプラント用義歯固定用金属製フレームのフレームシリンダー挿入穴がその中間に切欠き状凹条を有していると注入固化した樹脂と歯科インプラント用義歯固定用金属製フレームとが完全に一体化するのでより好ましく、歯科インプラント用義歯固定用金属製フレームの外側面に義歯床用レジン係合用凹部が形成されていると、義歯床用レジンと歯科インプラント用義歯固定用金属製フレームとが離脱しないように一体化されて好ましく、更に歯科インプラント用義歯固定用金属製フレームの口腔内側面の頬側及び/又は舌側に義歯床用レジン係合用凸部が形成されていると、義歯床用レジンとの係合がより確実になるので好ましいのである。
【0027】
このような本発明に係る歯科インプラント用義歯の固定基盤は、インプラントフィクスチャーを欠如歯部の顎骨内に形成した埋入孔内に埋入した手術後、即時に又は早期に咀嚼機能を与えることを可能とするものであり、その歯科分野に貢献する価値は非常に大きなものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る歯科インプラント用義歯の固定基盤をアバットメントスクリューによりアバットメントが固定されているインプラントフィクスチャーに固定した状態を示す説明用断面図である。
【図2】 本発明に係る歯科インプラント用義歯の固定基盤をアバットメント機能を含むフレームシリンダーが固定されたインプラントフィクスチャーに固定した状態を示す説明用断面図である。
【図3】 本発明に係る歯科インプラント用義歯の固定基盤をアバットメント機能を含む歯肉貫通型インプラントフィクスチャーに固定した状態を示す説明用断面図である。
【図4】 本発明に係る歯科インプラント用義歯の固定基盤におけるフレームシリンダーの1実施例の平面図である。
【図5】 図4の右半分を断面で示した正面図である。
【図6】 本発明に係る歯科インプラント用義歯の固定基盤におけるフレームスクリューの1実施例の平面図である。
【図7】 図6の正面図である。
【図8】 本発明に係る歯科インプラント用義歯の固定基盤における歯科インプラント用義歯固定用金属製フレームの1実施例の一部を断面で示した平面図である。
【図9】 図8の正面図である。
【図10】 図8の底面図である。
【図11】 図8におけるA−A線部分の断面図である。
【図12】 図8におけるB−B線部分の断面図である。
【図13】 図8におけるC−C線部分の断面図である。
【図14】 図8におけるD部矢視図である。
【符号の説明】
1 インプラントフィクスチャー
1a スクリュー
1b 雌ねじ部
1c 多角形凸部
1d 切り刃部
1' アバットメント機能を含む歯肉貫通型インプラントフィクスチャー
2 アバットメント
3 アバットメントスクリュー
4 フレームシリンダー
4' アバットメント機能を含むフレームシリンダー
4a 凸部
4b 凹部
4c 切欠き部
4d 突起部
5 フレームスクリュー
5a 雄ねじ部
5b 段部
5c 係合部
6 歯科インプラント用義歯固定用金属製フレーム
6a フレームシリンダー挿入穴
6b 義歯床用レジン係合用凹部
6c 義歯床用レジン係合用凸部
7 樹脂
Claims (5)
- 欠如歯部の顎骨内に形成された埋入孔内に埋入された、口腔内側の歯肉内にアバットメントスクリューによりアバットメントが固定されているか,アバットメント機能を含むフレームシリンダーが固定されるか、又はアバットメント機能を含む歯肉貫通型のインプラントフィクスチャーの更に口腔内側に設置される外側面に凸部及び/又は凹部を有するフレームシリンダーと、
該フレームシリンダーを前記インプラントフィクスチャーに固定するフレームスクリューと、
患者の顎堤に沿った形状を成し前記フレームシリンダーの外形より充分に大きいフレームシリンダー挿入穴が2個以上貫通形成されている歯科インプラント用義歯固定用金属製フレームとから成ることを特徴とする歯科インプラント用義歯の固定基盤。 - 歯科インプラント用義歯固定用金属製フレームのフレームシリンダー挿入穴が口腔内側が細くなるようにテーパー又は中間部に段部を有している請求項1に記載の歯科インプラント用義歯の固定基盤。
- 歯科インプラント用義歯固定用金属製フレームのフレームシリンダー挿入穴がその中間に切欠き状凹条を有している請求項1又は2に記載の歯科インプラント用義歯の固定基盤。
- 歯科インプラント用義歯固定用金属製フレームの外側面に義歯床用レジン係合用凹部が形成されている請求項1から3までのいずれか1項に記載の歯科インプラント用義歯の固定基盤。
- 歯科インプラント用義歯固定用金属製フレームの口腔内側面の頬側及び/又は舌側に義歯床用レジン係合用凸部が形成されている請求項1から4までのいずれか1項に記載の歯科インプラント用義歯の固定基盤。
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