JP4338803B2 - ランセット発射デバイス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、微量採血時に使用される、刺通要素(例えば針)を有するランセット(採血針)発射デバイス、いわゆるランシング・デバイス(lancing device)に関する。より詳しくは、本発明は、発射デバイスに内蔵されたスプリング手段によって、ランセットを前進させて、対象部位(例えば指先)である皮膚を刺通した後に、後退させる機構を持つ発射デバイスに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、血液分析測定装置およびそのための試験紙(採血した血液をこの試験紙上に移し、血液分析測定装置にて分析測定する)は、その性能が急速に進歩し、分析測定に必要な血液量も少なくて済むようになっており、例えば2μl〜5μlの量の血液を採取するだけで十分であることが多い。また、分析測定できる項目も、以前からの血糖値に加えて、ヘモグロビン、コレステロール、ある種のウィルス(例えばエイズウィルス)に関する種々の項目まで測定できるようになってきている。
【0003】
更に、分析測定の性能だけでなく、分析測定装置の小型化と価格の低下も進み、病院や医院のみならず、家庭においても、小型化された血液分析測定装置の使用も増加し続けている。従って、微量の血液を採取する機会は増加している。
【0004】
そのような微量採血を行う場合、通常、ユーザーは、ランセットを発射デバイスに装填し、採血すべき対象部位、例えば指先に向けて発射する。発射デバイスの中のランセットは、刺通要素が皮膚を刺通した後、発射デバイスが内蔵している後退機構により、自動的に発射デバイス内に後退するようになっている。
【0005】
通常、ランセットが、発射デバイスから発射された後、刺通要素の先端部(例えば針先)が発射デバイスから突出して皮膚を刺通し、後退して先端部が皮膚から引き抜かれるまでに要する時間は、0.003秒〜0.010秒であると言われている。このようなランセットの動きは、皮膚を刺通した後、自動的に後退したままであり、その後、もう一度、同様に前進、刺通、後退する、あるいは、更にもう一度同様に前進、刺通および後退する、即ち、対象部位を繰り返して刺通することはないもの(即ち、対象部位は1回だけ刺通される)と考えられていた。
【0006】
このようなランセットの動きは、肉眼では認識することは不可能であるが、0.001秒の分解能を持つ高速度ビデオカメラを利用すれば、この動きを0.001秒毎の動きに正確に分解し、認識することができることを本願発明者は見出した。
【0007】
本願発明者は、このような高速度ビデオカメラを使用して、ランセットの発射、後退時の挙動を観察した。それによれば、前進および後退のための2つのスプリング手段を用いるタイプの発射デバイスを使用した場合、ランセットは、最初に1回皮膚を刺通した後、自動的に後退し、更に2回目の前進があって、皮膚を再度刺通し、後退があり、更に3回目の前進がある、という挙動をしていることが判明した。市販されている発射デバイスの中には、スプリング手段およびカム手段の協働機構を採用しているデバイスがあり、このデバイスにおいては再刺通の問題は無いが、機構が複雑であるために高価であるという難点がある。
【0008】
いずれの理論により拘束されるものではなく、また、後述する本発明を限定するものではないが、上述のようなランセット挙動は、発射デバイスの機構から考えてみると、1つの可能性として、次のように解析することが可能である:
【0009】
発射デバイスは、2つのスプリング手段(AおよびB)を有する。ランセットの発射の直前では、一方のスプリング手段Aは、元の形状から十分に圧縮された状態においてエネルギーをためた状態で拘束され、その拘束状態が解除されて元の形状に向かってスプリング手段Aが伸びようとする時に、ランセットを前方に向けて勢いよく発射する。スプリング手段Aが元の形状に向かって伸びて、更に、元の形状より伸びた状態に向かって伸び、それによりランセットが前進する間に、他方のスプリング手段Bはランセットの発射の直前では元の伸びていた状態から圧縮されてエネルギーを蓄える。
【0010】
ランセットの刺通要素が皮膚を刺通する時、ランセット本体の端面は、エジェクターのエンドキャップの端面に衝突し、その後、エンドキャップによって跳ね返され、ランセットの運動方向が逆になる、即ち、ランセットは後退する。この時、スプリング手段Aは伸びるのを停止して元の形状に向かって縮み、逆に、圧縮されていたスプリング手段Bが伸びようとする。即ち、スプリング手段Aは、カバー要素による反発のエネルギーに加えて、スプリング手段Bが伸びようとするエネルギーによって、元の形状より伸びた状態から元の形状に戻ろうとし、スプリング手段Bは、圧縮されていた状態から元の形状に向かって伸びようとする。
【0011】
上述のような発射デバイスの場合、カバー要素による反発のエネルギーおよびスプリング手段Bが伸びようとすることによるエネルギーは非常に大きく、その結果、スプリング手段Aは、元の形状を通り越して再度圧縮された状態(皮膚への刺通およびカバー要素への衝突等によるエネルギーロスのため、最初の圧縮の程度よりは小さい程度の圧縮)となって、再度エネルギーを蓄積する。
【0012】
このようにして、スプリング手段Aは再度エネルギーを蓄積し、ランセットの後退が停止した後、再度、スプリング手段Aは元の形状に向かって再び伸びようとし、その勢いによって、ランセットは、スプリング手段Bを圧縮すると共に、再度エンドキャップの端面に衝突する。この時、刺通要素は皮膚を再度刺通することになる。その後、先と同様に、ランセットは後退し、スプリング手段Bは伸び、スプリング手段Aは縮み、場合によっては、スプリング手段Aが再々度圧縮されて3度目の刺通が生じることがある。
【0013】
このように、従来の発射デバイスによるランセットの発射に際しては、2つのスプリング手段が圧縮および延伸を繰り返すことによって、エジェクターに装填されたランセットは前進・刺通・後退運動を繰り返し、この運動が次第に減衰して停止するものと考えられる。
【0014】
また、上述のようなランセットの前進、後退を2つのスプリング手段(前進用スプリング手段Aおよび後退用スプリング手段B)に依存しているランセット発射デバイスにおいては、繰り返されるランセットの前進および後退としての直線運動が、実質的に同じ軸に沿って繰り返されないことがあり、上述のような2度目の刺通は、最初に刺通した箇所とは別の箇所で皮膚を可能性がある。この場合、ランセットは、1回の採血のために実質的に2回の刺通を行うことになり、このことは、使用者に不必要な苦痛と皮膚の損傷を与えることになる。このような軸が異なる運動は、上述するように、皮膚の代わりに、粘土の表面にこのタイプの採血デバイスを使用してランセットを発射させてみた場合に、刺通痕が二つ出来ることから確認することができた。刺通痕が近接する場合には、実質的にはより大きな1つの刺通痕となることもある。
【0015】
糖尿病患者の血糖値測定の場合を考えてみると、インシュリン依存型患者の場合、1日に5回〜7回の採血を行うことがあるので、このように1回の採血において皮膚を2〜3回刺通するようなランセット発射デバイスを使用すると、刺通部位は大きなダメージを受けることになり、必要以上の痛みと、傷口の回復が遅いという二重苦をデバイスの使用者に与えることになる。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
従って、前進(または発射)用スプリング手段および後退用スプリング手段を有する発射デバイスを用いてランセットを発射して採血するに際して、ランセットの複数回刺通を防止すること、即ち、最初のランセットの前進においては刺通に対して実質的な妨げとならず、2回目以降の再前進(再発射)を効果的に抑制することが、本発明が解決しようとする課題である。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上述の課題は、刺通要素を有するランセットをランセットホルダーに装填し、ランセットホルダーを前進させることによってランセットの刺通要素に対象部位を刺通させ、その後、ランセットホルダーを後退させることによって、ランセットの刺通要素を対象部位から抜き出して後退させるように、2つのスプリング手段を用いて構成されているランセット発射デバイスであって、
刺通するためにランセットホルダーが前進する時、ランセットホルダーの前進および刺通要素の対象部位の採血の双方に関して実質的に問題の無い最初の刺通を許容しながらも、前進するランセットホルダーに対して抵抗を与え、刺通後に後退するランセットホルダーに対して抵抗を与えるブレーキ部材を更に有して成ることを特徴とするランセット発射デバイスにより解決されることが見出された。
【0018】
本発明のデバイスは、ランセットホルダーの周囲にブレーキ部材が存在し、これが、ランセットの最初の前進および特にその後の後退の間に移動しているランセットの勢いを緩和し、場合により、ランセットの第2回目の前進の間の勢いをも緩和し、それによって、第2回目以降の刺通を防止しようとするものである。
【0019】
本発明の1つの態様では、
ランセットホルダーは柱状であって、ブレーキ部材は、筒状であって、本体部材およびそれから前方にテーパー状に窄むように伸びた抵抗部材から構成され、また、ランセットホルダーの周囲に位置することができ、
ブレーキ部材の本体部材の断面は抵抗部材の断面より大きく、ランセットホルダーの少なくとも一部分の断面は、本体部材より小さく、かつ、抵抗部材より大きく、
ブレーキ部材の内側にランセットホルダーを配置して、その状態からランセットホルダーとブレーキ部材とを軸方向に沿って相互に近づくように相対的に移動すると、ランセットホルダーの少なくとも一部分が抵抗部材に接触し、移動を更に継続すると、窄んだ抵抗部材が弾性的に広がるようになっている。この態様では、ランセットホルダーのいずれかの部分がブレーキ部材に接触するようになっている。
【0020】
本発明の別の態様では、ランセットホルダーは、柱状であって、前方の第1部分および後方の第2部分から構成され、第2部分がブレーキ部材と接触するようになっている。
即ち、この態様においては、
ランセットホルダーは、柱状であって、前方の第1部分および後方の第2部分から構成され、
ブレーキ部材は、筒状であって、本体部材およびそれから前方にテーパー状に窄むように伸びた抵抗部材から構成され、また、ランセットホルダーの周囲に位置することができ、
ランセットホルダーの第2部分の断面は第1部分の断面より大きく、ブレーキ部材の本体部材の断面は抵抗部材の断面より大きく、ランセットホルダーの第1部分の断面はブレーキ部材の断面より小さく、また、ランセットホルダーの第2部分の断面は本体部材より小さく、かつ、抵抗部材より大きく、
ブレーキ部材の内側にランセットホルダーを配置して、本体部材の内側に第2部分を位置させた状態とし、その状態からランセットホルダーとブレーキ部材とを軸方向に沿って相互に近づくように相対的に移動すると、第2部分が抵抗部材に接触し、移動を更に継続すると、窄んだ抵抗部材が弾性的に広がるようになっている。
【0021】
本発明のこれらの態様において、ランセットホルダーが「柱状」およびブレーキ部材が「筒状」なる用語は、ランセットホルダーの周囲に、必要な場合には空間を隔てて、ブレーキ部材が位置するという両者の相対的な位置関係、即ち、ブレーキ部材内にランセットホルダーを挿入できる関係を可能ならしめるのであれば、その用語の一般的な意味に限定されるものではない。即ち、本明細書では、一方の部材Aを他方の部材B内の空隙に挿入できるという意味で、部材Aは柱状であり、そのような空隙を有する部材Bは柱状であると呼ぶ。
【0022】
従って、「柱状」なる用語は、中実であってもよいが、そうであること必ずしも意味せず、少なくとも部分的に筒状であってもよく、場合により、全体として実質的に中空であってもよい。また、軸方向に垂直な断面が単一の面(例えば円柱の場合は、断面は単一の円形面となる)を規定する必要は必ずしもなく、断面が複数の面から構成されている集合体(例えば四分円柱が3本空間を隔てて離れた柱状集合体(但し、軸方向のいずれかの箇所において3本の四分円柱が一体に接続されている)の場合は、断面は間隔を隔てて離れた3つの四分円の集合体となる)であってもよい。
【0023】
また、「筒状」に関しても、軸方向に垂直な断面が単一の閉じた曲線もしくは直線またはこれらの組み合わせ(例えば円筒の場合は、断面は単一の閉じた円となる)を規定する(この場合は、本来の筒状に相当する)必要は必ずしもなく、断面は、閉じた線の一部分が欠落したもの、あるいはそのようなものの集合体であってもよい。例えば、軸方向に垂直な断面が円の一部分が欠落したもの(例えば、中心各が270〜330°の円弧)であってもよい。また、例えば、四分円筒の湾曲側面が3つ空間を隔てて周方向に離れた集合体も筒状の1つの態様に含まれ、この場合、断面は3つの四分円(即ち、中心角90°の円弧)が3つ周状に離れた状態となる。
【0024】
尚、本発明において、断面とは、ランセットの発射方向に対して垂直な断面(以下、単に「断面」とも呼ぶ)を意味する。断面の大小は、柱状物が筒状物の内側を通過できる場合には、柱状物の断面が筒状物の断面より小さい、逆に通過できない場合は大きいという意味で使用している。また、弾性的に広がるというのは、力が加えられると変形するが、その力が除かれると、実質的に元の形状に戻る意味で使用している。
【0025】
本発明のデバイスにおいて、ブレーキ部材は、弾性材料、例えば熱可塑性エラストマーまたはゴムから作られており、ブレーキ部材は、一体成型により形成するのが特に好ましい。また、抵抗部材は、本体部材から前方に伸びたタブまたはウィングの形態であるのが特に好ましい。
【0026】
本発明のデバイスの別の態様では、ブレーキ部材は、ランセットの発射方向に平行な溝を有し、ランセットホルダーはその溝に嵌まり込む突出部を有し、これによって、ランセットホルダーが前進する運動を実質的に一定の軸に沿って直線状とすることができる。
【0027】
本発明は、ランセットホルダーの前進に対して抵抗を与える、本体部材および抵抗部材を有して成る、ブレーキ部材を更に提供する。このブレーキ部材の特徴は、上述および後述の本発明のランセット発射デバイスの説明を参照することにより容易に理解されよう。
【0028】
【発明の実施の形態】
次に、添付図面を参照して、本発明の好ましいランセット発射デバイスをより詳細に説明する。尚、本明細書において、ランセットが発射される方向を前方と呼び、それと逆の方向を後方と呼び、便宜的に前後の方向を規定している。
【0029】
図1は、本発明のランセット発射デバイス10を、その内部が判るように、ハウジング12の上側半分を切除した状態で模式的に斜視図にて、また、図2は、本発明のランセット発射デバイス10を、その内部が判るように、ハウジング12の手前側半分を切除した状態で模式的に斜視図にて示している。図示した態様では、発射デバイス10にランセット14が装填されており、ランセット14を発射する直前の状態を示している。
【0030】
デバイス10は、前進用スプリング手段Aとしてスプリング手段16および後退用スプリング手段Bとしてスプリング18を有する。ハウジング12の中央部にロッド20が配置され、ハウジング12は、パーティション(仕切り)22によって前方の第1チャンバー24および後方の第2チャンバー26に分割され、ロッド20はこれらの双方のチャンバーにまたがって配置されている。
【0031】
スプリング手段16および18は、パーティション22の両側でロッド20の周囲に配置され、これらは、パーティションを越えて反対側のチャンバー内には侵入しないようになっている。図示した態様では、スプリング手段16が元の形状(即ち、全く拘束されていない場合の形状)から十分に圧縮された状態(ランセットの発射準備完了状態)で拘束され、スプリング手段18は、元の形状またはそれより伸びた形状で拘束されている。
【0032】
このような拘束状態は、スプリング手段が周囲に配置されているロッド20の前方の端部にて一体に接続された係合部材28の前方の端部に設けた係止手段30が、ハウジング内に設けた止め32に当接することによって、維持されている。また、ロッド20は、前方の端部において一体に接続されたコネクションロッド34を更に有し、コネクションロッド34は前方の他方の端部にて、ランセット14を保持するランセットホルダー36を有する。
【0033】
図示した態様では、ハウジング12の前方の端部にはエンドキャップ38が配置され、例えばスナップフィットにより係合している。図示した状態から、発射ボタン40を下向きに押すと、係止手段30と止め32との間の当接状態が解除され、圧縮された状態で蓄えられていたエネルギーによってスプリング手段16が元の形状に戻ろうとして伸び、それによって、ロッド20、コネクションロッド34、ランセットホルダー36およびランセット14が前方(図示した態様では、左向きに)に一体で移動する。この時、スプリング手段18は、次第に圧縮され、従って、徐々にエネルギーを蓄えていく。尚、通常、スプリング手段16に蓄えられていたエネルギーは相当大きいので、スプリング手段18が徐々に圧縮されても、スプリング手段16は、元の形状を越えて元の形状よりも更に伸びようとする。
【0034】
上述のようにスプリング手段16が伸びる勢いによって、ランセット14は、エンドキャップ38の開口部46に向かって発射され、ランセット14の端部42はエンドキャップ38の端面48に衝突する。この時、ランセット14の端面42から突出している刺通要素44は、エンドキャップ38の開口部46から突出し、そこにあてがわれている刺通対象部位(図示せず)、例えば指先の皮膚を刺通する。
【0035】
その後、ランセット14は、エンドキャップの端面44によって跳ね返され、スプリング手段18は圧縮された状態から逆に伸びようとし、また、スプリング手段16は、元の形状に向かって縮もうとする。これらの作用によって、刺通要素44は対象部位から抜け出てエンドキャップ38内に引っ込み、ランセット14、ランセットホルダー36およびロッド20等は一体で後退する。
【0036】
このような機構によってランセットを発射して、対象部位を刺通して、ランセットを後退させる、2つのスプリング手段を使用するランセット発射デバイスは周知であり、これ以上の詳細な説明は省略する。このようなデバイスの基本的な機構は、例えば特開平3−141929号公報に開示されており、また、具体的な発射デバイスとしては、例えば商品名:PENLET−IIとしてLifeScan社から市販されているので、ランセット発射デバイスの発射機構の詳細については、これらを参照できる。
【0037】
本発明のランセット発射デバイス10は、ランセットホルダー36の周囲で、ランセットホルダー36の運動を制動するブレーキ部材50がハウジング12内に配置されている点に特徴がある。図から明らかなように、ブレーキ部材50はランセットホルダー36の周囲に位置し、従って、ブレーキ部材50は筒状であり、ランセットホルダー36は柱状である。
【0038】
ランセットホルダー36は、ランセットの発射方向に対して垂直な断面(上述のように、単に「断面」とも呼ぶ)の形状が実質的に線対称または点対称であるのが好ましく、対象の中心(線対称の場合は、対称軸が断面の外周と交差する点間の中心)が、ランセットの長手方向軸(通常は刺通要素と実質的に一致する軸であり、以下、単に「軸」とも呼ぶ)と一致するのが好ましい。ランセットホルダー36の断面形状は、円形、楕円形、矩形または多角形等であってよく、これらが部分的に組み合わされた形状(例えば図2から判るように、円弧部分と直線部分とを組み合わせた形状)であってよい。ランセットホルダー36の断面は、軸方向に一様であっても、あるいは変化してもよい。
【0039】
ランセットホルダー36はその前方端部に空隙部を有する第1部分60およびその後方の第2部分62から構成され、その空隙には、ランセット14の刺通要素44が突出している端部42と反対の端部を嵌め込むことができるようになっている。第2部分の断面62は、第1部分60の断面より大きく、それを含むような形状である、即ち、断面を比較すると、第2部分の断面の外周が第1部分の断面が包囲するような形状である。尚、図示した態様では、ランセットホルダー36は、第1部分より断面が大きい第2部分を後方に有するが、ランセットホルダー36の少なくとも一部分の断面が、本体部材62より小さく、かつ、抵抗部材54より大きく、残りの部分の断面は、本体部材52および抵抗部材54の双方より小さい。そのような一部分はランセットホルダー36のいずれの位置に存在してもよく、別の態様では、一部分ではなく、ランセットホルダー36の全体が本体部材62より小さく、かつ、抵抗部材54より大きくてもよい。
【0040】
ブレーキ部材50は、筒状の本体部材52およびそれから前方(発射方向)に伸びる抵抗部材54を有する。本体部材52の断面形状は、ランセットホルダー36の第2部分62を包囲しながらも、第2部分62は実質的に抵抗(または摩擦)無く本体部材52内を通過できる形状を有する。即ち、第2部分62の断面は、本体部材52の断面より小さい。そのためには、第2部分62と本体部材52との間には、少なくとも部分的に空間部が存在するのが好ましい。
【0041】
具体的には、第2部分62の断面と本体部材52の断面とが相似関係であり、ランセットホルダーの断面形状より少し大きい断面形状を本体部材52は有してよい。例えば、第2部分62の断面が円形である場合には、本体部材52の断面は、その円の直径より少し大きい円形であってよい(従って、これらが同心状に配置されると、第2部分62の周囲に本体部材52との間で空間部が形成される)。
【0042】
別の態様では、第2部分62の断面が多角形である場合には、本体部材52の断面は、その多角形の外接円より少し大きい円形であってよい。実質的な抵抗を可及的に減らすには、第2部分62の断面形状と本体部材52の断面形状は相似でないのが好ましい場合がある。それは、両方の部材の位置関係が同心状から偏奇した場合に、双方の部材が面接触して抵抗が大きくなる可能性がある防止されるためである。尚、本体部材52は、軸方向に沿った全ての部分で軸の周囲で全周にわたって本来の筒状である必要はなく、例えば図2から判るように、軸方向に沿った一部分では、周の一部分を欠いてもよい。更に別の態様では、ブレーキ部材は、軸方向全体に沿って周の一部分を欠いていてもよい(例えば、図5参照)。
【0043】
抵抗部材54は、ランセットが発射されて前進する時に、ランセットホルダー36の第1部分60とは実質的に接触せず、第2部分62と接触することにより、その運動に対して抵抗を与える機能を有する。従って、抵抗部材54の断面は、ランセットホルダー36の第1部分60の断面より実質的に大きいが、抵抗部材54の軸方向に沿った少なくとも一部分の断面は、第2部分62の断面より実質的に小さい必要がある。
【0044】
上述のように、本明細書において、断面が小さいまたは大きいとは、断面積に基づく大小を意味するのではなく、一方の部材A(例えば第1部分60)が他方の部材B(例えば抵抗部材54)の内側を通過できる、好ましくは実質的な抵抗なく通過できる場合には、部材Aの断面が部材Bの断面より小さいと言い、通過できない場合は、部材Bの断面が部材Aの断面より小さいと言う。逆の場合は、大きいと呼ぶ。従って、第2部分62の断面は、本体部材52の断面より小さい。
【0045】
本発明の発射デバイスにおいて、ブレーキ部材50の抵抗部材54は、上述のように、第2部分62の断面より小さい断面を規定する。この小さい断面は、固定的に小さいままであるのではなく、ランセットが発射されると、ランセットホルダー36が前進して第1部分60は通過するが、第2部分62が抵抗部材54に接触してそれに対して抵抗を与える時、抵抗部材54にはランセットホルダー36により押されることによる前向きの力が作用する。この力は、小さい断面の抵抗部材54を押し広げて、断面を大きくする。図示した態様では、第2部分62は、ランセットホルダー36の後方に位置するが、第2部分は、ランセットホルダー36のいずれの箇所に部分的に存在してもよく、あるいはランセットホルダー36全体が第2部分のような断面を有してもよい(この場合、ブレーキ部材により与えられる抵抗が増加する)。
【0046】
ランセットを発射するためのスプリング手段16のエネルギーは非常に大きく、そのため、抵抗部材54に作用する力は、抵抗部材の断面を第2部分62の断面と実質的に同じにする。その結果、第2部分62は、抵抗部材54により抵抗を与えられながらも前進することができ、最終的に、ランセット14の端面42がエンドキャップ38の端面に衝突し、刺通要素44は、エンドキャップ38の開口部46から突出して対象部位を刺通する。この時、第2部分62の少なくとも一部分は抵抗部材54と接触したままである、即ち、抵抗部材54の下に第2部分62が存在する。
【0047】
衝突した後、ランセット14はエンドキャップ38の端面によって跳ね返され、第2部分62は後退して刺通要素44は対象部位から抜け出るが、この第2部分62の後退に際しては、第2部分62は抵抗部材54と接触したままであるので、第2部分62の後退する勢いは一層減少し、その後、ランセットホルダー36は更に後退して第2部分62と抵抗部材54との接触は解除される。接触が解除されると、抵抗部材54の形状は断面が小さい元の窄んだ形状に戻る。
【0048】
このように第2部分62が後退すると、スプリング手段16の圧縮はブレーキ部材50が存在しない場合ほどには進行しない。即ち、スプリング手段16にはそれほどエネルギーが蓄積されず、従って、圧縮されたスプリング手段16が再度伸びてランセットホルダー36が前進したとしても、第2部分62は、元の形状に戻った抵抗部材54により与えられる抵抗のために、抵抗部材54の前端を越えて前進することができず、その結果、ランセット14の刺通要素44はエンドキャップ38から突出せず、従来技術に関して説明した複数回刺通が防止される。
【0049】
上述のような抵抗部材54の断面の変化(断面が小さい窄んだ状態から広がって、再び元の窄んだ形状に戻る変化)は弾性的である。即ち、抵抗部材54に力が作用すると、元の窄んだ形状から広がった断面形状となり、抵抗部材54に作用している力が無くなると、抵抗部材54は広がった形状から実質的に元の小さい窄んだ断面に戻る。
【0050】
本発明の発射デバイスでは、ランセット14を発射して、刺通要素44を開口部46から突出させる必要があるので、抵抗部材54は、発射されたランセットを停止する程の大きい抵抗を与えてはならないが、発射されたランセットの前進する勢いを弱める程度の抵抗を与えるように断面が弾性的に変化するように構成する必要がある。即ち、抵抗部材54は、本体部材か52ら前方に伸びてテーパー状に狭まった(または窄んだ)テーパー状形状を元の形状として有し、この形状は、それを広げようとする力が作用すると、弾性的に広がることができる。このようなの抵抗部材の構成は、ブレーキ部材50に使用する材料、抵抗部材54の形状等によりコントロールすることができる。
【0051】
この抵抗部材54は、第2部分62との接触によって、最初に前進するランセットの運動エネルギーを吸収して、2度目の刺通を防止するようになっていれば、どのような構成であってもよい。例えば、抵抗部材54は、図示するように、対向する対のウィングの形態であってよく、ランセットホルダーの第2部分62の断面形状に応じて、抵抗部材の54の軸方向に沿ったいずれかの箇所が第2部分に接触する。
【0052】
尚、図示した態様では、第2部分62は、全周にわたって抵抗要素54より大きい断面を有するようになっているが、抵抗要素は、2箇所に部分的に周状に存在するだけであるので、抵抗要素54に実際に接触しない部分に関しては、小さい断面を有するようにしてもよい。即ち、大きい断面を有する第2部分62は、周方向全体にわたって大きい断面を提供する必要はなく、少なくとも抵抗部材54と接触する周方向部分のみが大きい断面を有すればよい。
【0053】
このようなブレーキ部材50は、プラスチック材料のような弾性材料、好ましくは熱可塑性エラストマー(例えばポリエステルエラストマー、ポリスチレンエラストマー、ポリオレフィン(例えばポリプロピレン/ポリエチレン)エラストマー)、シリコーンゴム、天然または合成ゴム、ウレタン等から形成する。弾性がより小さい材料または摩擦係数がより大きい材料を採用する場合には、軸方向に対する抵抗要素のテーパー角度をより小さくなる(即ち、水平方向に近くなる)ように形成するのが好ましい。この形成は、射出成型により一体に成型するのが好ましい。
【0054】
また、このようなブレーキ部材の構成は、2度目の刺通を防止するために、上述のように前進するランセットホルダーに適度な抵抗を与えながらも、1度目の刺通を阻害しない必要がある。即ち、ブレーキ部材の性能については、ランセットホルダーが前進する時に加える抵抗が、前進用スプリング手段に蓄えられたエネルギーより小さく、刺通後に、ランセットホルダーが後退する時に加えられる抵抗が、後退用スプリングに蓄えられるエネルギーより大きいのが好ましく、このように機能する抵抗部材は、材料、寸法の組み合わせをデザインすればよい。
【0055】
この抵抗部材、従って、ブレーキ部材の構成の具体的な態様は、従来のランセット発射装置では、複数回の刺通が行われていたこと、また、そのような刺通は高速度ビデオカメラを用いる方法により確認できること、前進するランセットホルダーに適度な抵抗をブレーキ部材により与えるという概念を導入することにより複数回の刺通が防止できることを開示した本明細書の開示に基づけば、当業者であれば容易に相当できる。
【0056】
例えば、図示するように、ブレーキ部材50は、実質的に筒状形態の本体部材52とそれから前方に向かって窄むように伸びる抵抗部材54から構成され、抵抗部材は筒状部材の形態でその前端にて開いた複数のスリットを間隔を隔てて設けることによって複数の要素から構成することができる。
【0057】
抵抗部材は、本来の筒状であってよいが、上述の筒状の意味で、本体部材の全周から前方に延び出る必要は無く、本体部材の周囲の少なくとも一部分から前方に伸び出ているだけでその機能を果たすことができる。例えば、図2に示す態様では、本体部材52の周の一部分である両方の側方から伸び出た実質的に矩形の1対の要素(手前側のみが見えている)のみが筒状の抵抗部材54として機能し、本体部材の周の他の部分から前に伸び出ている要素70は抵抗部材として機能しない(勿論、必要に応じて(即ち、より大きい抵抗を与えることが必要である場合には)抵抗要素と機能するように形成してもよい)。尚、本体部材52も本来の筒状であってよいが、その軸方向の全長にわたって閉じた断面を有する必要は無く、図2に示すように、上側部分が開いていてもよく、このような態様も筒状に含まれる。
【0058】
図2に示す態様では、抵抗部材は、本体部材から前方に突出する薄い、ウィング、タブ、歯などの少なくとも1対の矩形物の形態であり、このような態様であるのが好ましい。別法では、本体部材52の全周またはその一部分から前方に窄むように突出する櫛歯、ひげ状物の形態であってもよい。
【0059】
通常、材料自体に弾性があることと、および矩形物の形態であること(換言すれば、抵抗部材54は、本体部材52の外周に沿ってその一部分のみに設けてあること)によって、抵抗部材は、適度な可撓性に富み、所定の機能を果たすように構成できる。
【0060】
図示したブレーキ部材50を拡大して斜視図にて図3に示す。図示した態様では、ブレーキ部材50は、本体部材52および抵抗部材54から構成されている。ブレーキ部材において、これらの部材の領域は明確に分けることができないが、これらの部材の境界を便宜的に破線80にて示している。上述のように、本体部材52は、本明細書の意味において実質的に筒状であるが、その断面は、軸方向82の全体に沿って閉じておらず、一部分84では開いた線(即ち、両端を有する)であり、上方部分86が開いているが、他の一部分88に沿っては閉じた線(両端同士がつながっている)であり、本来の筒状である。
【0061】
対向する対の抵抗要素54は前方に向かってテーパー状に窄むように本体部分52から伸び出ているウィングまたはタブの形態である。図示した態様では、抵抗要素54は1対のみ存在し、本体部材52から伸び出る他の要素90は実質的に窄まないように形成されている。これらの要素90も、必要に応じて抵抗要素54と同様に窄むようにしてよいが、抵抗要素としての機能が必要でない場合には、要素90の一部または全部を省略することも可能である。図示した態様では、抵抗要素54は、本来の筒状形態の一部分であり、要素90も抵抗要素として作用する場合には、抵抗要素(54+90)は実質的に本来の筒状である。
【0062】
上述のように、本明細書では、筒状なる用語は、側面が完全に閉じた筒である必要は必ずしも無く、図示したように、筒状形態の一部分を構成する場合も筒状に含む意味で使用している。抵抗要素54の形態をタブ、ウィング等の矩形状とする場合には、両側に前端が開いたスリット92が存在する。このスリットの位置を変えることにより、従って、抵抗要素54の周方向の長さ94を変えてランセットホルダーに与える抵抗の大きさを変えることができる。また、勿論、使用する材料、テーパーの角度を変えることによっても抵抗要素54が与える抵抗の大きさを変えることができる。
【0063】
図3に示すように、ブレーキ部材50に外部から力が作用しない状態であって、抵抗要素54が前方に向かって窄まっている状態では、抵抗要素54の軸方向に沿ったいずれかの位置(好ましくは、軸方向の中間点付近)における断面は、ランセットホルダーの第2部分62の断面より小さい。例えば、対向する抵抗要素の先端間の距離は、ランセットホールダーの第2部分62の断面の外周上の2点間の最大距離(断面が円形である場合には直径)より小さくなるように形成されている。一般的に、抵抗要素54の断面と第2部分62の断面とが同じである軸方向の位置、即ち、第2部分62が抵抗要素54に接触する位置が、本体部材52から遠い程、抵抗要素54により第2部分62に与えられる抵抗は小さくなる。
【0064】
尚、発射デバイスが使用されない状態にある時には、ランセットホールダーの第2部分62は抵抗部材54より後方に位置し、従って、抵抗要素54には接触していないので、抵抗要素54には一切の力が作用することがないために、抵抗要素54がクリープ変形を起こし、ブレーキ部材の性能を失うことはない。
【0065】
本発明の特に好ましい形態では、ブレーキ部材50の内壁に、ランセットホルダー36の前進・後退をガイドするための溝を設け、ランセットホールダーには、この溝に対応してその中に入る突起を設ける。例えば、図3に示した態様では、抵抗部材54および本体部材52の内壁にまたがってランセットの発射方向と平行な溝100がガイドとして設けられている。
【0066】
この溝内に位置するように突出した形状を有する突出部をランセットホルダー36に設ける。この突出部は長尺形態(例えば長さ5mm〜8mm)であってよい。別の態様では、突出部は、ランセットの発射方向と平行になるように配置された2つの点状突起であってよく、場合によっては、突起は1つであってもよい。溝と突出部の組み合わせは、少なくとも1つ設けるのが好ましいが、図3に示すように、対向するように1対設けるのが特に好ましい。この溝と突出部は、ランセットホールダーが前進・後退する間、協同してランセットホールダーがランセットの発射方向軸に沿って安定して直線運動することを確保する。このことは、刺通時における痛みと傷口を最小のものとすることにも役立つ。尚、溝をランセットホルダーに、突出部をブレーキ部材に設けることも可能である。
【0067】
上述のようなブレーキ部材50は、一体成型により製造することができ、また、一体成型品であるのが好ましく、ランセット発射デバイスの組立に際しては、一体となったランセットホールダー36、コネクションロッド34およびロッド20にスプリング手段16および18(前進、後退用)を装着した状態で、ブレーキ部材50をランセットホルダー36に被せた状態で、これらを片側のハンジング12内にセットすればよいので、本発明のランセット発射デバイスの組立は簡単である。
【0068】
図4に、本発明のランセット発射デバイス内におけるブレーキ部材の様子の変化を模式的に断面図にて示している。ランセットの発射直後(図4(a))からエンドキャップ38に衝突した時(図4(e))までの様子を示す:
【0069】
図4(a):発射直後は、ランセットホルダー36は、ブレーキ部材50内を前進し、第2部分62は、本体部分52に接触せず(本体部分と第2部分との間隔が狭いため、図では、接触しているかのように見えるが、これらの間には若干の空隙が存在する)、また、第1部分60は、本体部分52および抵抗部材54に接触していない。
【0070】
図4(b):ランセットホルダー36が更に前進すると、第1部分は、抵抗部材の先端を越えて前進する。この状態でも、第2部分62は、本体部分52に接触せず(本体部分と第2部分との間隔が狭いため、図では、接触しているかのように見えるが、これらの間には若干の空隙が存在する)、また、第1部分60も、抵抗部材54に接触していない(抵抗部材と第1部分との間隔が狭いため、図では、接触しているかのように見えるが、これらの間には若干の空隙が存在する)。ランセット14がエンドキャップ38の端面に衝突できるのであれば、第1部分60が抵抗部材54に接触してもよく、抵抗部材54により前進するランセットホルダーに抵抗が与えられるだけである。
【0071】
図4(c):ランセットホルダーが更に前進していることを除いて、本質的に図4(b)と同じ状態である。
図4(d):テーパー状に窄んでいた抵抗部材54が広がり始めている。ランセットホルダーは、抵抗部材54により抵抗を受けながらも、それに抗して前進する。
【0072】
図4(e):ランセット14がエンドキャップ38の端面に衝突している。第2部分62は、抵抗部材54と面接触した状態となり、抵抗部材54から大きな抵抗を受けることとなり、その結果、ランセットホルダーが後退する勢いは大きく減少することになる。
尚、ランセットが後退する様子は、逆に、図4(e)から図4(a)に順に移り変わっていく。
【0073】
図5に、別の態様のブレーキ部材50’を、図3と同様に、示している。図示した態様では、ブレーキ部材50’の軸方向に垂直な断面は、軸方向の全体に沿って開いた線(例えば円弧状の曲線)であり、その結果、ブレーキ部材50’は、軸方向全体に沿って上方に開口部104を有する。このような態様では、ブレーキ部材50’に使用する材料に応じて、発射デバイスの組み立てに際して、ランセットホルダーを軸方向に垂直な方向から開口部104を介して挿入することができるという利点がある。開口部104を有することを除いて、図示したブレーキ部材50’は図3のブレーキ部材50と実質的に同じである。
【0074】
【実施例】
図1〜3に示すようなランセット発射デバイス10を設計し、それぞれ必要な部品について1個取りの金型を作製し、樹脂部材については射出成型により部品を得た。
【0075】
実施例では、各部品について以下の材料を使用した:
ハウジング12(ABS樹脂)
エンドキャップ38(ポリカーボネート樹脂)
ランセットホールダー36+コネクションロッド34+ロッド20+係合部材(ポリカーボネート樹脂)
ブレーキ部材(ポリエステルエラストマー樹脂)
発射ボタン(ポリアセタール樹脂)
【0076】
ブレーキ部材50の抵抗部材54の窄まった先端の距離(内法)は、7.7mmであり、ランセットホールダーの第2部分62の断面の最大部の直径8.7mmであったので、径差は1mmであり、また、抵抗部材54の軸方向長さは5.8mmであった。また、抵抗要素54の厚さは、0.8mmであった。
尚、スプリング手段として、次のものを用いた:
前進用−外径6.2mm×長さ21.5mm、線径0.45mm、ばね定数0.021kgf/mmのsus304のばね
後退用−外径6.45mm×長さ22.7mm、線径0.26mm、ばね定数0.0016kgf/mmのsus304のばね
【0077】
各部品をハウジング12に組み込んだ後、左右のハウジングを超音波加工機を利用して溶着し、本発明のランセットデバイス10の完成品を得た。尚、ブレーキ部材にはランセットホルダー36に設けた突出部102をガイドするための溝を設けた。
【0078】
実施例1
最初のチェックとして、ブレーキ部材50を付設したことによるランセットホールダー36の前進が悪影響を受けているかどうかを調べるために下記のテストを実施した。
【0079】
ブレーキ部材50の抵抗要素54を切除してブレーキ性能のない発射デバイスも同様に製造して、これに市販ランセットを装填して、重ねた市販コピー用紙に対してランセットを発射した場合に何枚の用紙を刺通するかというテストをしたところ、11枚の用紙を刺通した。(約0.97mm/11枚の厚さである)。
【0080】
次に、同様にしてブレーキ部材を有する本発明のランセット発射デバイスに、市販ランセットを装填して市販のコピー用紙を刺通させたところ、同じく11枚刺通した。ランセットをその都度新しくしてこのテストを5回行ったが、5回とも11枚刺通した。尚、このテストでは、コピー用紙に残っている刺通痕をルーペで観察し、刺通痕の認められる枚数を刺通枚数とした。
【0081】
このテストにより、本発明のランセット発射デバイスにおいてブレーキ部材が、ランセットホルダー(従って、ランセット)の前進をいささかも阻害していないことが確認できた。
【0082】
実施例2
次に、本発明のランセット発射デバイスに、市販のランセットを装着して平らな粘土に向けて発射し、粘土に残った刺通痕の状態をルーペで観察した。このテストを5回行ったが、5回とも刺通痕の数は一つで、刺通痕の断面は針の刺通要素の断面に相似していた。このことから、本発明におけるブレーキ部品のランセットホルダー(ランセット)をガイドする性能が極めて高いと判断することが出来た。
【0083】
比較のため、市販のスプリング駆動方式のランセットホールダーをガイドする機構を持たない発射デバイスにランセットを装着して、同じく平らな粘土に発射したところ、5回のテストにおいて、いずれも2個の刺通痕が認められた。このことはガイド機能とブレーキ機能を有さないスプリング駆動方式の採血デバイスの使用においては、1度の採血作業において2度の刺通があり、刺通による傷口が2つ出来ることを意味していると判断された。
【0084】
実施例3
次に、1/1000秒の分解能を持つ高速ビデオカメラを用意し、エンドキャップの前部の片側を切除して、発射デバイスに装着されて発射されたランセットの刺通時、そして刺通後の挙動を撮影できるようにした。エンドキャップの先端には、人間の皮膚をシミュレーションするために、厚さ0.8mmのシリコーンラバーのフィルムをセットした
【0085】
本発明の発射デバイスに、市販ランセットを装着し、発射し、その状況を高速度ビデオで撮影し収録した。
【0086】
このテストを3回行い、その後、収録されたビデオテープを利用してランセットの挙動を観察したところ、3回とも、ランセットは最前進位置(エンドキャップの内側前端)まで前進し、シリコーンラバーを刺通し、後退していた。その後、再前進する途中で、ブレーキ部材によってブレーキがかかり停止していることが確認された。このランセットがストップした状態においては、刺通要素の先端は、エンドキャップの前端の内壁より手前で停止しており、従って、シリコーンラバーの2度目の刺通には至っていなかった。また、ランセットホルダーおよびランセットの前進、後端は円滑であり、発射方向軸が上下に揺れている状態は全く観察されなかった。
【0087】
比較のため、ランセットホルダーがガイド機構を有さないスプリング駆動方式の発射デバイスについても、同様に高速ビデオによる観察を行ったが、ランセットが最初の刺通後、後退した後、再前進し、後退し、更に、再々前進している状態が観察された。刺通の回数は、ランセットの刺通要素の先端がエンドキャップの端面から露出するかしないかということを基準に判定したが、刺通要素の先端がエンドキャップの前縁より確実に2回〜3回は露出していることが確認された。更に、ランセットホルダーおよびランセットの前進・後退の間に刺通要素は上下に揺れていた。これらのことは、刺通が2回〜3回行われると、刺通による傷口が、2箇所ないし3ケ所形成され得ることを意味する。
【0088】
これらの所見は、粘土に対する刺通テストにおいて見られた所見を裏付けるものということが出来る。尚、このテストにおいて、ランセットが刺通し、後退し、再前進し、再後退し、再々前進し、再々後退し、その後、完全に停止するまでに要した時間は平均7.2/1000秒であった。
【0089】
尚、実施例においては、前進スプリング手段16の反発力は、353g(15mmの圧縮において)であり、後退スプリング手段18の反発力は31.7g(15mmの圧縮において)であり、ランセットホールダーの第2部分62の直径と、ブレーキ部材の抵抗部材の先端間の距離の差は1.0mmであり、ランセットホルダーの第2部分が、抵抗部材の間を通過する時の抵抗は、47.2g(5回の平均)であった(引張試験機により計測)。
【0090】
このデータからも、本発明の発射デバイスがブレーキ部材を有していても、ランセットホルダーの前進を実質的に阻害せず、しかも、ランセットホルダーの再前進を有効に抑制することがわかる。
【0091】
実施例1〜3を通じて、本発明のブレーキ部材を有するランセット発射デバイスは1回の採血作業において、1回だけの刺通を確保し、実質的に直線的なランセットの発射を確保できることが確認されたと言える。このことは、従来のランセット発射デバイスと比較して、はるかに少ない痛みと小さな傷口を使用者に約束するものであり、毎日、1回〜7回の皮膚からの採血を余儀なくされている使用者にとっては非常に有用である。
【0092】
【発明の効果】
上述の説明から明らかなように、ランセット発射デバイスを使用する1回の採血作業において、1回の刺通を確保し、更に、ランセットホルダー(ランセット)を実質的に真直ぐにガイドすることによって最小限の痛みおよび最小限の傷口の損傷を確保することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明のランセット発射デバイスを、その内部が判るように、ハウジングの上側半分を切除した状態で模式的に斜視図にて示す。
【図2】 図2は、本発明のランセット発射デバイスを、その内部が判るように、ハウジングの手前側半分を切除した状態で模式的に斜視図にて示す。
【図3】 図3は、本発明のランセット発射デバイスに用いるブレーキ部材を拡大して模式的斜視図にて示す。
【図4】 図4は、本発明のランセット発射デバイスによりランセットが発射されて刺通するまでの様子を段階的に模式的断面図にて示す。
【図5】 図5は、本発明のランセット発射デバイスに用いるブレーキ部材の別の態様を拡大して模式的斜視図にて示す。
【符号の説明】
10…ランセット発射デバイス、12…ハウジング、14…ランセット、
16,18…スプリング手段、20…ロッド、22…パーティション、
24…第1チャンバー、26…第2チャンバー、28…係合部材、
30…係止手段、32…止め、34…コネクションロッド、
36…ランセットホルダー、38…エンドキャップ、40…発射ボタン、
42…ランセット端面、44…刺通要素、46…開口部、
48…エンドキャップ端面、50…ブレーキ部材、52…本体部材、
54…抵抗部材、80…仮想境界、82…軸方向、86…上方開口、
92…スリット、100…溝、102…突出部、104…開口部。
Claims (7)
- 刺通要素を有するランセットをランセットホルダーに装填し、ランセットホルダーを前進させることによってランセットの刺通要素に対象部位を刺通させ、その後、ランセットホルダーを後退させることによって、ランセットの刺通要素を対象部位から抜き出して後退させるように、2つのスプリング手段を用いて構成されているランセット発射デバイスであって、
刺通するためにランセットホルダーが前進する時、ランセットホルダーの前進および刺通要素の対象部位の採血の双方に関して実質的に問題の無い最初の刺通を許容しながらも、前進するランセットホルダーに対して抵抗を与え、刺通後に後退するランセットホルダーに対して抵抗を与えるブレーキ部材を更に有して成り、
ランセットホルダーは柱状であって、ブレーキ部材は、筒状であって、本体部材およびそれから前方にテーパー状に窄むように伸びた抵抗部材から構成され、また、ランセットホルダーの周囲に位置することができ、
ブレーキ部材の本体部材の断面は抵抗部材の断面より大きく、ランセットホルダーの少なくとも一部分の断面は、本体部材より小さく、かつ、抵抗部材より大きく、
ブレーキ部材の内側にランセットホルダーを配置して、その状態からランセットホルダーとブレーキ部材とを軸方向に沿って相互に近づくように相対的に移動すると、ランセットホルダーの少なくとも一部分が抵抗部材に接触し、移動を更に継続すると、窄んだ抵抗部材が弾性的に広がるようになっていることを特徴とするランセット発射デバイス。 - ランセットホルダーは、柱状であって、前方の第1部分および後方の第2部分から構成され、ブレーキ部材は、筒状であって、本体部材およびそれから前方にテーパー状に窄むように伸びた抵抗部材から構成され、また、ランセットホルダーの周囲に位置することができ、
第2部分の断面は第1部分の断面より大きく、本体部材の断面は抵抗部材の断面より大きく、第1部分の断面は、ブレーキ部材の断面より小さく、また、第2部分の断面は、本体部材より小さく、かつ、抵抗部材より大きく、
ブレーキ部材の内側にランセットホルダーを配置して、本体部材の内側に第2部分を位置させた状態とし、その状態からランセットホルダーとブレーキ部材とを軸方向に沿って相互に近づくように相対的に移動すると、第2部分が抵抗部材に接触し、移動を更に継続すると、窄んだ抵抗部材が弾性的に広がるようになっている請求項1に記載のランセット発射デバイス。 - ブレーキ部材は、弾性材料から作られている請求項1または2に記載のランセット発射デバイス。
- 弾性材料は、熱可塑性エラストマーまたはゴムである請求項3に記載のランセット発射デバイス。
- 抵抗部材は、本体部材から前方に伸びたタブまたはウィングの形態である請求項1〜4のいずれかに記載のランセット発射デバイス。
- ブレーキ部材は、ランセットの発射方向に平行な溝を有し、ランセットホルダーはその溝に嵌まり込む突出部を有する請求項1〜5のいずれかに記載のランセット発射デバイス。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のランセット発射デバイスに使用されるブレーキ部材。
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