JP4337096B2 - 圧電アクチュエータ及びこれを備えた液体噴射装置並びに圧電アクチュエータの製造方法 - Google Patents

圧電アクチュエータ及びこれを備えた液体噴射装置並びに圧電アクチュエータの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、圧電アクチュエータ及びこれを備えた液体噴射装置並びに圧電アクチュエータの製造方法に関する。
従来から、液体噴射ヘッドの一例として、インク滴を噴射するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電体素子により変形させて圧力発生室内のインクを加圧してノズル開口からインク滴を噴射させるインクジェット式記録ヘッドがある。
このようなインクジェット式記録ヘッドとしては、例えば、圧電体素子を高密度に配置すると共に、圧電体素子の耐電圧性を向上させるため、下電極を所定形状にパターニングしてから圧電体薄膜を形成してなるものがある。具体的には、圧力発生室に対向する領域に設けられた実質的な駆動部となる圧電体能動部と、当該圧電体能動部から連続する前記圧電体層を有するが実質的に駆動されない圧電体非能動部と、を備えた圧電体素子を備えることで、前記圧電体能動部が駆動される際、圧電体非能動部によって圧力発生室と周壁との境界部での変位を抑制し、圧電体層の剥離、クラックの発生等を防止している。(例えば、特許文献1参照)。
特開2000−198197号公報
しかしながら、インクジェット式記録ヘッドでは、絶縁膜上に圧電体素子を構成する下電極の他に、下電極と同一の材料からなり下電極とは電気的に接続しない金属層が形成され、また圧電体素子が形成されていない領域上に形成されている金属層(例えば、白金)上に圧電体素子から引き出されたリード電極が形成されており、このリード電極を構成する材料として、例えばアルミニウムを用いた場合、プロセス中の加熱工程等により、リード電極を構成する材料(アルミニウム)と金属層を構成する材料(例えば、白金)とが反応して、リード電極に欠陥が生じる虞がある。
そこで、リード電極の下にバリア層を設ける等すれば、リード電極と金属層との間に反応が生じることを防止することができるが、エッチング等の工程が増えると共に、リード電極の断面構造が複雑になり、圧電体素子が水分によって破壊されないために当該圧電体素子を覆っている保護膜の密着性が低下し、圧電体素子の耐湿度性が低下する虞がある。
本発明は、このような従来の問題点を解決するものであり、リード電極を構成する材料と、下電極と同一の材料からなり下電極とは電気的に接続しない金属層を構成する材料との間に反応が生じることを防止し、保護膜の密着性を向上させることで、信頼性が向上した圧電アクチュエータ、及びこれを備えた液体噴射装置、並びにこの圧電アクチュエータの製造方法を提供することを目的とする。
この目的を達成するため、本発明は、基板の一方の面上に形成され、振動板を構成する絶縁層と、前記絶縁層上の一部に形成された下電極、当該下電極上に形成された圧電体層及び当該圧電体層上に形成された上電極を有する圧電体素子と、前記上電極から前記絶縁層の前記圧電体素子が形成されない領域上に延設されるリード電極と、を備え、前記絶縁層は、前記リード電極の前記圧電体素子が形成されない領域の少なくとも一部が凹状に形成されてなる圧電アクチュエータを提供するものである。
この構成を備えた圧電アクチュエータは、リード電極が、絶縁層の圧電体素子形成領域の外側の領域に延設されており、下電極形成用層上に形成されていないため、例えば、プロセス中の加熱工程等に、リード電極と下電極形成用層との間に反応が生じることがない。また、従来のように、リード電極を構成する材料と、下電極形成用層を構成する材料との間に反応が生じることを防止するために、リード電極の下にバリア層を設ける必要がないため、リード電極の断面構造が複雑化することがなく、保護膜の密着性を向上させることもできる。したがって、圧電アクチュエータの信頼性を向上することができる。
また、絶縁層の前記リード電極と接触する領域が凹状に形成されているため、例えば、この圧電アクチュエータが形成されている基板上に封止板を設ける際に、前記凹部は、両者を接着するための接着剤の逃げとしての役割を果たすという二次的な効果を得ることもできる。
前記絶縁層は、酸化ジルコニウム(ZrO2)からなる膜を有し、当該酸化ジルコニウムからなる膜が、前記リード電極と接触するよう構成することもできる。なお、前記圧電体素子形成領域に形成されている絶縁層は、振動板の役割を果たすものであるが、前記絶縁層が、酸化ジルコニウムからなる膜を有することで、さらに良好な弾性機能を得ることができる。
また、本発明にかかる圧電アクチュエータは、前記リード電極をアルミニウムから構成することができる。
そしてまた、本発明にかかる圧電アクチュエータは、前記リード電極及び圧電体素子を、無機絶縁材料からなる保護膜で覆った構成とすることができる。このようにすることで、前記リード電極及び圧電体素子を外部の湿度から効率よく保護することができる。なお、前記無機絶縁材料としては、例えば、酸化アルミニウム等が挙げられる。
また、本発明は、前述した圧電アクチュエータと、該圧電アクチュエータを一方の面上に形成し、液滴を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室を備えた流路形成基板と、該流路形成基板の一方の面上に形成され、リザーバの少なくとも一部を構成する空間と前記圧電アクチュエータの駆動動作を阻害しない程度の空間を有するリザーバ形成基板と、を備えた液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドを駆動する駆動装置と、を備えてなる液体噴射装置を提供するものである。
この構成を備えた液体噴射装置は、前述した圧電アクチュエータを備えているため、リード電極と下電極形成用層との間に反応が生じることがないことに加え、リード電極の断面構造が複雑化することもなく、保護膜の密着性を向上させることもできる。したがって、圧電アクチュエータの信頼性を向上することができる。
そしてまた、本発明は、基板上に絶縁層を形成する工程と、前記絶縁層上に、下電極形成用層を形成する工程と、前記下電極形成用層上に、第1の圧電体層形成用層を形成する工程と、前記第1の圧電体層形成用層及び下電極形成用層を選択的にパターニングし、前記絶縁膜の圧電体素子の形成領域上及びリード電極の前記圧電体素子が形成されない領域の少なくとも一部の領域上に形成されている第1の圧電体層形成用層及び下電極形成用層を残して、当該第1の圧電体層形成用層及び下電極形成用層を選択的に除去する工程と、前記第1の圧電体層形成用層及び下電極形成用層を選択的に除去した後、1以上の圧電体層形成用層を前記第1の圧電体層形成用層の上に積層して圧電体層を形成する工程と、前記圧電体層上に、上電極形成用層を形成する工程と、前記上電極形成用層及び圧電体層を選択的にパターニングし、上電極、前記圧電体層、下電極からなる圧電体素子を形成する共に、前記リード電極の前記圧電体素子が形成されない領域の少なくとも一部の領域上に形成されている下電極形成用層を露出させる工程と、前記露出した下電極形成用層及び当該露出した下電極形成用層が形成されている前記絶縁層の上層を選択的に除去する工程と、前記上電極から前記絶縁層の上層が除去された部分を経て延設されるリード電極を形成する工程と、を備えてなる圧電アクチュエータの製造方法を提供するものである。
これらの工程を備えた圧電アクチュエータの製造方法によれば、リード電極が、絶縁層の圧電体素子形成領域の外側の領域に延設された構造、すなわち、圧電体素子が形成されていない領域上に下電極形成用層が形成されていない圧電アクチュエータを簡単に製造することができる。また、この製造方法により形成された圧電アクチュエータは、リード電極の断面構造が複雑化することがなく、保護膜の密着性を向上させることもできる。したがって、信頼性が向上した圧電アクチュエータを得ることができる。
また、第1の圧電体層形成用層を焼成する際に、圧電体素子が形成される領域の近傍に形成され、結晶性向上のための下電極形成用層の面積を大きくできるため、第1の圧電体層形成用層(すなわち、第1の圧電体層)の結晶性を向上することができる。
また、この製造方法により形成された圧電アクチュエータは、絶縁層の前記リード電極と接触する領域を凹状に形成することができるため、例えば、この圧電アクチュエータが形成されている基板上に封止板を設ける際に、前記凹部は、両者を接着するための接着剤の逃げとしての役割を果たすという二次的な効果を得ることもできる。
次に、本発明の好適な実施の形態にかかる圧電アクチュエータ、及びこの圧電アクチュエータ備えた液体噴射装置、並びに圧電アクチュエータ及びインクジェット式記録ヘッドの製造方法について、図面を参照して説明する。
なお、本実施の形態では、液体噴射ヘッドとして、インク滴を噴射させるインクジェット式記録ヘッドを、液体噴射装置として、インクジェット式記録ヘッドを備えたプリンタを例にとって説明する。また、以下に記載される実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定するものではない。したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することができる。
図1は、本実施の形態にかかるプリンタを示す斜視図、図2は、図1に示すプリンタに使用されるインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図、図3は、図2に示すインクジェット式記録ヘッドの平面図、図4は、図2に示すインクジェット式記録ヘッドを拡大した断面図、図5〜図7は、本実施の形態にかかる圧電アクチュエータ及びインクジェット式記録ヘッドの製造方法を示す工程図である。
図1に示すように、本実施の形態にかかるプリンタ1は、複数のインクジェット式記録ヘッド220(図2参照)を有するヘッドユニット200を備え、このヘッドユニット200には、インク供給手段を構成するカートリッジ1A及び1Bが着脱可能に設けられている。なお、本実施の形態では、カートリッジ1Aは1室からなり、ブラックインク組成物が収容されている。また、カートリッジ1Bは例えば3つの部屋に仕切られており、各々の部屋には、シアンインク組成物、マゼンタインク組成物、イエロインク組成物が各々収容されている。これらのカートリッジ1A及び1Bが着脱可能に設けられたヘッドユニット200は、キャリッジ3に搭載されており、このキャリッジ3は、プリンタ本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。
また、プリンタ本体4には、キャリッジ3を駆動するための駆動モータ6が設けられており、駆動モータ6の駆動力が図示しない複数の歯車及びタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、ヘッドユニット200を搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。
さらに、プリンタ本体4には、キャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラ等により給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8上を搬送されるようになっている。そして、ヘッドユニット200から、所望のインク組成物が、所望のタイミングで記録シートSに噴射されることで、文字や画像等が印刷される。
本実施の形態にかかるインクジェット式記録ヘッド220は、図2〜図4に示すようにノズル開口21に連通する圧力発生室12が形成される流路形成基板10(基板)と、流路形成基板10の一方面側に振動板50を介して設けられた圧電体素子300を備えて構成されている。そして、振動板50及び圧電体素子300により、圧力発生室12内の圧力を高め、ノズル開口21からインク滴を噴射させるための駆動源としての圧電アクチュエータ500を構成している。
流路形成基板10は、シリコン単結晶基板から構成されており、この流路形成基板10の一方側に形成されている振動板50は、流路形成基板10の上に形成される二酸化ケイ素(SiO2)からなるSiO2膜51と、このSiO2膜51上に形成される酸化ジルコニウム(ZrO2)からなるZrO2膜52との積層からなる絶縁層から構成されている。なお、振動板50は、二酸化ケイ素膜、酸化ジルコニウム膜、酸化タンタル膜、窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜等から構成することもできる。
この流路形成基板10には、その他方面側から異方性エッチングすることにより、隔壁22によって区画された圧力発生室12が複数形成されている。各圧力発生室12の長手方向外側には、後述するリザーバ形成基板30に設けられるリザーバ部31と連通し、各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバ100を構成する連通部13が形成されている。この連通部13は、インク供給路14を介して各圧力発生室12の長手方向一端部に各々連通されている。
流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側で連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が接着剤や熱溶着フィルム等を介して固着されている。すなわち、本実施の形態では、1つのインクジェット式記録ヘッド220にノズル開口21の並設されたノズル列21Aが2列設けられている。
振動板50上の、圧力発生室12に対応する領域上には、所定の形状にパターニングされた下電極33と、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電体層43と、上電極44と、を備えた圧電体素子300が形成されている。
下電極33は、振動板50側からイリジウム層/白金層、白金層/イリジウム層、イリジウム層/白金層/イリジウム層といった積層構造を有していることが好ましい。または、イリジウムと白金の合金からなる膜としてもよい。
圧電体層43は、第1の圧電体層43Aと、この第1の圧電体層43A上に所定の膜厚で形成された1以上の層数で構成される第2の圧電体層43Bと、から構成されている。なお、本実施の形態では、第1の圧電体層43Aと第2の圧電体層43Bは、同じ成分からなるゾルを用い、後に詳述するが、第2の圧電体層43Bは、複数回(本実施の形態では9回)塗布、乾燥、脱脂、焼成工程を繰り返すことによって、所定の膜厚とした。
この圧電体層43は、チタン酸鉛(PbTiO3)、ジルコン酸鉛(PbZrO3)、ジルコン酸チタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)、チタン酸鉛ランタン((Pb,La)TiO3),マグネシウム酸ニオブ酸鉛(Pb(Mg,Nb)O3)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)O3)、又は、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)(Mg,Nb)O3)等からなることが好ましい。特に、チタン酸鉛(PbTiO3)とジルコン酸鉛(PbZrO3)との二成分系や、マグネシウム酸ニオブ酸鉛(Pb(Mg,Nb)O3)とジルコン酸鉛(PbZrO3)とチタン酸鉛(PbTiO3)との三成分系からなることが好ましい。この圧電体層43は、結晶面方位が(100)に優先配向しており、粒径が100nm以下であり、本実施の形態では、30〜50nmとなっている。したがって、圧電体層43は、高密度化が達成されており、高い圧電特性を得ることができる。
上電極44は、通常電極として用いることができる導電性材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、Pt、RuO2、Ir、IrO2等の単層膜又はPt/Ti、Pt/Ti/TiN、Pt/TiN/Pt、Ti/Pt/Ti、TiN/Pt/TiN、Pt/Ti/TiN/Ti、RuO2/TiN、IrO2/Ir、IrO2/TiN等の2層以上の積層膜であってもよい。
また、振動板50上の、前述した圧電体素子の近傍には、圧電体素子300を構成している第2の圧電体層43Bよりも薄い膜厚で形成され、圧電体素子を構成しない圧電体層43Cが形成されている。そして、上電極44から圧電体素子の形成されていない領域に亘って、リード電極60が延設されている。このリード電極60は、特に図4に示すように、その一部がZrO2膜52と接触するように設けられており、このZrO2膜52のリード電極60と接触する領域は、凹状に形成されている。
また、リード電極60及び圧電体素子300は、無機絶縁材料(本実施の形態では、酸化アルミニウム)からなる保護膜70に覆われている。この保護膜70には、コンタクトホール71が開口されており、このコンタクトホール71を介してパッド72が接続されている。
この構成を備えた圧電アクチュエータ500は、振動板50の圧電体素子が形成されていない領域上に、下電極を構成するための材料からなる層が形成されておらず、リード電極60が、振動板50の圧電体素子が形成されていない領域上に延設されている。すなわち、リード電極60が、下電極を構成するための材料に接触していない。このため、例えば、プロセス中の加熱工程等に、リード電極60と下電極を構成するための材料との間に反応が生じることがない。また、リード電極60の断面構造が複雑化することがなく、保護膜70の密着性を向上させることもできる。したがって、圧電アクチュエータ500の信頼性を向上することができる。そしてまた、ZrO2膜52のリード電極60と接触する領域が凹状に形成されているため、この圧電アクチュエータ500が形成されている流路形成基板10の一方の面(圧電アクチュエータ500が形成されている面側)上に、リザーバ形成基板30を設ける際に、凹部が、リザーバ形成基板30と、流路形成基板10とを接着するための接着剤の逃げとしての役割を果たすという二次的な効果を得ることもできる。
この圧電アクチュエータ500が形成された流路形成基板10上には、リザーバ100の少なくとも一部を構成するリザーバ部31を有するリザーバ形成基板30が接合されていることは前述したが、このリザーバ形成基板30には圧電アクチュエータ500の駆動動作を阻害しない程度の空間が形成されている。このリザーバ部31は、本実施の形態では、リザーバ形成基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバ100を構成している。
なお、このようなリザーバ形成基板30としては、ガラス、セラミック、金属、プラスチック等を挙げることができるが、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
さらに、リザーバ形成基板30上には、各圧電体素子300を駆動するための駆動IC110が設けられている。この駆動IC110の各端子は、図示しないボンディングワイヤ等を介して各圧電体素子300の個別電極から引き出された引き出し配線と接続されている。そして、駆動IC110の各端子には、フレキシブルプリントケーブル(FPC)等の外部配線111を介して外部と接続され、外部から外部配線111を介して印刷信号等の各種信号を受け取るようになっている。
また、このようなリザーバ形成基板30上には、コンプライアンス基板40が接合されている。コンプライアンス基板40のリザーバ100に対向する領域には、リザーバ100にインクを供給するためのインク導入口45が厚さ方向に貫通することで形成されている。また、コンプライアンス基板40のリザーバ100に対向する領域のインク導入口45以外の領域は、厚さ方向に薄く形成された可撓部46となっており、リザーバ100は、可撓部46により封止されている。そして、この可撓部46により、リザーバ100内にコンプライアンスを与えている。
このように、本実施の形態にかかるインクジェット式記録ヘッド220は、ノズルプレート20、流路形成基板10、リザーバ形成基板30及びコンプライアンス基板40の4つの基板で構成されている。そして、このようなインクジェット式記録ヘッド220のコンプライアンス基板40上には、インク導入口45に連通すると共に、図示しないカートリッジケースのインク連通路に連通して、カートリッジケースからのインクをインク導入口45に供給するインク供給連通路231が設けられたヘッドケース230が設けられている。このヘッドケース230には、可撓部46に対向する領域に、図示しない凹部が形成され、可撓部46の撓み変形が適宜行われるようになっている。また、ヘッドケース230には、リザーバ形成基板30上に設けられた駆動IC110に対向する領域に厚さ方向に貫通した駆動IC保持部233が設けられており、外部配線111は、駆動IC保持部233を挿通して駆動IC110と接続されている。
このようなインクジェット式記録ヘッド220は、インクカートリッジから供給されるインクをインク導入口45から取り込み、リザーバ100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動IC110からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの圧電体素子300に電圧を印加し、振動板50をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力を高め、ノズル開口21からインク滴を噴射させる。
次に、本実施の形態にかかるインクジェット式記録ヘッド220の製造方法について図5〜図7を参照して説明する。
先ず、図5(a)に示す工程では、例えば、シリコンからなる流路形成基板10上に、熱酸化やCVD法等の成膜法を用いて、流路形成基板10の一方の表面に、膜厚が1μm程度のSiO2膜51を、他方の面に、膜厚が1μm程度のSiO2膜53をそれぞれ形成する。
次に、 HYPERLINK "http://www6.ipdl.jpo.go.jp/Tokujitu/tjitemdrw.ipdl?N0000=231&N0500=1E#N/;%3e;?;%3c9;=///&N0001=50&N0552=9&N0553=000006" \t "tjitemdrw" 図5(b)に示す工程では、SiO2膜51の上に、膜厚が400nm程度のZrO2膜52を成膜する。ZrO2膜52の成膜法としては、ジルコニウムをターゲットとした酸素ガスの導入による反応性スパッタリング法や、酸化ジルコニウムをターゲットとしたRFスパッタリング法や、あるいは、DCスパッタリング法でジルコニウムを成膜した後に熱酸化する方法等を用いる。このようにして、SiO2膜51及びZrO2膜52からなる振動板50を形成する。
次に、図5(c)に示す工程では、振動板50の上に、少なくとも下電極33を形成するための下電極形成用層42を形成する。下電極形成用層42の形成は、CVD法、電子ビーム蒸着法、スパッタ法等を用いる。例えば、膜厚が200nm程度の白金層を形成したり、あるいは、膜厚が100nm程度の白金層を形成した後、この上に膜厚が100nm程度のイリジウム層を形成する。
次に、図5(d)示す工程では、DCマグネトロンスパッタ法、CVD法、蒸着法等の成膜法を用いて、下電極形成用層42の上に種結晶としての種Ti膜(図示せず)を形成した後、ゾルゲル法やMOD法(Metal Organic Decomposition)等を用いて、図示しない種Ti膜の上に第1の圧電体層形成用層36を成膜する。ゾルゲル法は、金属の水酸化物の水和錯体(ゾル)を、脱水処理してゲルとし、このゲルを加熱焼成して無機酸化物を成膜するというものである。ゾルゲル法を用いると、下電極形成用層42上に設けられた図示しない種Ti膜側から上方に向けて順にPZT結晶が成長していくため、配向性に優れたPZT膜を成膜することができる。この時、第1の圧電体層形成用層36を焼成する際に、圧電体能動部近傍の結晶性向上のための下電極形成用層42の面積を大きくできるため、第1の圧電体層形成用層36の結晶性を向上させることができる。
具体的には、先ず、チタン、ジルコニウム、鉛、亜鉛等の金属のメトキシド、エトキシド、プロポキシドもしくはブトキシド等のアルコキシドまたはアセテート化合物を、酸等で加水分解し、ゾルを調整する。次いで、調整したゾルを種Ti膜の上に塗布する。塗布に際しては、スピンコート、ディップコート、ロールコート、バーコート、フレキソ印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷等の方法を用いる。
前記ゾルを塗布した後、これを一定温度下にて一定時間乾燥させ、ゾルの溶媒を蒸発させる。乾燥温度は、150℃以上、200℃以下であることが好ましく、乾燥時間は、5分以上、15分以下であることが好ましい。より好ましくは、180℃にて10分乾燥させる。乾燥後、さらに大気雰囲気下において一定の脱脂温度にて一定時間脱脂する。次に、これを焼成して、結晶化させて第1の圧電体層形成用層36とする。なお、第1の圧電体層形成用層36は、100〜120nm程度の膜厚で形成した。焼成には、RTA(Rapid Thermal Annealing)装置や拡散炉等を用いる。焼成温度は、550℃以上、750℃以下であることが好ましい。550℃未満では、下電極側の層の結晶化が十分図られず、一方、750℃より大きいと下電極への鉛原子の拡散及び下電極の酸化による特性劣化が生じてしまう。
次に、図5(e)に示す工程では、第1の圧電体層形成用層36上の、圧力発生室12が形成されるべき領域、すなわち圧電体素子形成領域上と、この圧電体素子部から連続する圧電体素子を構成しない圧電体層上(圧電体素子が形成されない領域の少なくとも一部の領域上)であって、後に形成されるリード電極60が振動板50と接触する領域上に、レジスト膜を形成し、これをマスクとしてイオンミリングによるパターニングを行い、圧電体素子形成領域上に、下電極33及び第1の圧電体層43Aを形成する。また、後に形成されるリード電極60が振動板50と接触する領域上に、下電極形成用層42及び第1の圧電体層形成用層36を残す。
次に、図6(a)に示す工程では、第1の圧電体層形成用層36を形成するためのゾルと同じ成分のゾルを塗布し、上記と同様に乾燥、脱脂、焼成の工程を適宜行い、第2の圧電体層形成用層47を成膜する。第2の圧電体層形成用層47における焼成温度は、700℃以上、900℃以下であることが好ましい。700℃未満では、上電極側の層の結晶化が十分図られず、強誘電体薄膜全体としての圧電特性を十分に確保できない一方、900℃より大きいと空気中への鉛原子の飛散による特性劣化が生じてしまう。あるいは、鉛原子が初期層を通して下電極に拡散してしまう。なお、本実施の形態では、上記の塗布、乾燥、脱脂、焼成の工程を9回繰り返して、複数層からなる第2の圧電体層形成用層47を成膜した。
次に、第2の圧電体層形成用層47上に、上電極形成用層48を形成する。例えば、イリジウムを100nmの膜厚となるようにDCスパッタ法により成膜する。
次に、図6(b)に示す工程では、上電極形成用層48上の圧力発生室12が形成されるべき領域、すなわち圧電体素子形成領域上に、レジスト膜を形成し、これをマスクとして、上電極形成用層48及び第2の圧電体層形成用層47にイオンミリングによるパターニングを行い、圧電体素子形成領域上に、下電極33、第1の圧電体層43A及び第2の圧電体層43Bからなる圧電体層43、上電極44からなる圧電体素子300を形成する。なお、この状態では、図6(b)に示すように、圧電体素子が形成されない領域には、第2の圧電体層形成用層47と、下電極形成用層42が残されている。
次に、図6(c)に示す工程では、後に形成されるリード電極60が振動板50と接触する領域上に残存している下電極形成用層42をイオンミリングによって選択的に除去する。このイオンミリングでは、下電極形成用層42を完全に除去するために、オーバーエッチングを行うため、ZrO2膜52の上層が除去され、図6(c)に示すように、この部分が、100nm程度へこんだ凹部49となる。
次に、図7(a)に示す工程では、スパッタ法によりアルミニウム層を成膜し、これを選択的にパターニングしてリード電極60を形成する。このリード電極60は、図7(a)に示すように、上電極44から、下電極33に連設して圧電体素子が形成されない領域に残存している第2の圧電体層形成用層47及び凹部49を経て延設されている。
次に、図7(b)に示す工程では、無機絶縁材料である酸化アルミニウムからなる保護膜70を形成する。次いで、保護膜70にリード電極60と接続するためのコンタクトホール71を開口する。
最後に、図7(c)に示す工程では、コンタクトホール71を介してリード電極60に接続されるパッド72を形成する。その後、流路形成基板10を予め定められた深さまで選択的にドライエッチングし、圧力発生室12を形成する。次に、接着剤を用いてノズルプレート20を、流路形成基板10に貼り合わせる。この際には、各ノズル開口21が圧力発生室12の各々の空間に対応して配置されるよう位置合せを行う。このようにして、図4示すようなインクジェット記録ヘッド220(但し、筐体に取り付けられていない)を得る。
なお、本発明は、上記実施形態によらず種々に変形して適応することが可能である。例えば、本発明で製造した圧電アクチュエータは、上記インクジェット式記録ヘッドのみに限定されず、多くの技術分野に適応することができる。
また、本発明の液体噴射ヘッドは、インクジェット記録装置に用いられるインクを噴射するヘッド以外にも、液晶ディスプレイ等のためのカラーフィルタの製造に用いられる色材を含む液体を噴射するヘッド、有機ELディスプレイやFED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料を含む液体を噴射するヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を含む液体を噴射するヘッド等、種々の液体を噴射するヘッドに適用することが可能である。
本発明の実施の形態にかかるプリンタを示す斜視図である。 図1に示すプリンタに使用されるインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図である。 図2に示すインクジェット式記録ヘッドの平面図である。 図2に示すインクジェット式記録ヘッドを拡大した断面図である。 本実施の形態にかかる圧電アクチュエータ及びインクジェット式記録ヘッドの製造方法を示す工程図である。 本実施の形態にかかる圧電アクチュエータ及びインクジェット式記録ヘッドの製造方法を示す工程図である。 本実施の形態にかかる圧電アクチュエータ及びインクジェット式記録ヘッドの製造方法を示す工程図である。
符号の説明
1 プリンタ、10 流路形成基板、12 圧力発生室、33 下電極、36 第1の圧電体層形成用層、42 下電極形成用層、43 圧電体層、44 上電極、47 第2の圧電体層形成用層、48 上電極形成用層、49 凹部、50 振動板、60 リード電極、70 保護膜、300 圧電体素子、500 圧電アクチュエータ

Claims (6)

  1. 基板の一方の面上に形成された酸化シリコン層と、当該酸化シリコン層上に形成された酸化ジルコニウム層と、を有して構成される振動板と
    前記酸化ジルコニウム層上の一部に形成された下電極、当該下電極上に形成された圧電体層、及び当該圧電体層上に形成され且つ個別電極となる上電極を有する圧電体素子と、
    前記上電極から前記酸化ジルコニウム層の前記圧電体素子が形成されない領域上に延設されるリード電極と、
    を備え、
    前記酸化ジルコニウム層の前記リード電極の前記圧電体素子が形成されない領域の少なくとも一部にはが形成されており
    前記凹部は、前記酸化ジルコニウム層の膜厚よりも浅い深さで当該膜厚方向に凹状に形成されてなる圧電アクチュエータ。
  2. 前記リード電極がアルミニウムからなる請求項1記載の圧電アクチュエータ。
  3. 前記リード電極及び圧電体素子が、無機絶縁材料からなる保護膜に覆われてなる請求項1または請求項2記載の圧電アクチュエータ。
  4. 前記無機絶縁材料が、酸化アルミニウムからなる請求項3記載の圧電アクチュエータ。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の圧電アクチュエータと、
    該圧電アクチュエータを一方の面上に形成し、液滴を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室を備えた流路形成基板と、該流路形成基板の一方の面上に形成され、リザーバの少なくとも一部を構成する空間と前記圧電アクチュエータの駆動動作を阻害しない程度の空間を有するリザーバ形成基板と、を備えた液体噴射ヘッドと、
    前記液体噴射ヘッドを駆動する駆動装置と、
    を備えてなる液体噴射装置。
  6. 基板上に絶縁層を形成する工程と、
    前記絶縁層上に、下電極形成用層を形成する工程と、
    前記下電極形成用層上に、第1の圧電体層形成用層を形成する工程と、
    前記第1の圧電体層形成用層及び下電極形成用層を選択的にパターニングし、前記絶縁膜の圧電体素子の形成領域上及びリード電極の前記圧電体素子が形成されない領域の少なくとも一部の領域上に形成されている第1の圧電体層形成用層及び下電極形成用層を残して、当該第1の圧電体層形成用層及び下電極形成用層を選択的に除去する工程と、
    前記第1の圧電体層形成用層及び下電極形成用層を選択的に除去した後、1以上の圧電体層形成用層を前記第1の圧電体層形成用層の上に積層して圧電体層を形成する工程と、
    前記圧電体層上に、上電極形成用層を形成する工程と、
    前記上電極形成用層及び圧電体層を選択的にパターニングし、上電極、前記圧電体層、下電極からなる圧電体素子を形成する共に、前記リード電極の前記圧電体素子が形成されない領域の少なくとも一部の領域上に形成されている下電極形成用層を露出させる工程と、
    前記露出した下電極形成用層及び当該露出した下電極形成用層が形成されている前記絶縁層の上層を選択的に除去する工程と、
    前記上電極から前記絶縁層の上層が除去された部分を経て延設されるリード電極を形成する工程と、
    を備えてなる圧電アクチュエータの製造方法。
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