JP4336938B2 - 異形缶の製造装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、異形缶の製造装置、特に金属缶を中子を用いることなく、任意形状に縮径成形できる異形缶の製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、有底シームレス筒状缶の胴部を部分的に変形させた缶(以下、異形缶という)を有底シームレス筒状缶から成形する方法として、缶内部に絞り金型を挿入して内部から張出し成形する方法、あるいは缶内に中子を挿入して外部からの絞り金型による圧力を中子でバックアップしながら押し込み成形する方法が知られている。しかしながら、これらの方法は、装置が複雑であると共に、缶の開口面積によって成形度が制限を受け、且つ作業性に劣り、従来の高速製罐ラインに直結して設けることはできず、製罐ラインとは切り離して専用のラインとして設けなければならず、高価な設備コストを必要とすると共に生産性が悪い等の問題点があった。一方、中子を使用しないで生産性を高める方法として、ネッキング加工で形成した肩部から底部に向かって胴部に絞り加工を施すようにし、その後でさらに金属缶の底部側から絞り加工を行うようにしたもの(特許文献1参照)、あるいは、金属缶の底部付近外周に絞り加工を施し、次に開口部付近にネッキング加工を施し、さらに肩部付近の外周に絞り加工を施し、最後に開口部にフランジ加工又はカーリング加工を施すことにより異形缶を成形する方法も提案されている(特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】
特公平3−9812号公報
【特許文献2】
特開2000−218333号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
肩部又は底部から絞り成形することにより異形缶を成形する後者の方法は、缶内部に中子を挿入して成形する場合と比べて、装置が簡単で且つ作業性が良く、かつ成形が中子の大きさに影響されない利点がある。しかしながら、その場合は成形圧力に対するバックアップがないため、缶にしわや不規則変形が生じ易く成形不良になりやすい問題点がある。前記特許文献1又は特許文献2等に提案されている従来の絞り加工による成形方法は、絞り金型で缶胴開口部又は底部を支持具に押し当ながら成形するので、成形が終了するまでの途中工程は缶胴は絞り金型と支持具とのみで挟持されている。そのため、缶胴の挟持間隔が成形中に変位し、しかも成形加工部で挟持しているため、挟持圧力が缶胴円周面に不均一に作用し、挟持が不安定になりやすく、加工中に缶がぶれて缶胴にしわが発生し易くなる欠点がある。その上、従来の方法では絞り金型と対向して缶を支持する支持具は固定で成形中変位することがないので、縮径による缶直径の減少分を缶胴の高さ方向に吸収して逃がすことができず、缶直径の減少分を缶胴肉厚の増大によって吸収しなければならないので、その観点からも成形面にしわが発生し易く外観を損なう等の問題点がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題点を解消しようとするものであって、有底シームレス筒状缶の胴部を中子等を用いることなく、缶胴外側から絞り成形することにより、効率良くしかも高価な設備を必要とすることなくしわの発生を抑えて縮径成形ができ、美麗で変化に富んだ多様の異形缶を製造することができる異形缶製造装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の異形缶の製造装置は、筒状缶の胴部外周面を絞り加工することによって異形缶を製造する異形缶の製造装置であって、缶を上下に支持する缶支持体、該缶支持体の動作とは別動作をし、缶胴部に嵌合して相対的に軸方向に摺動することにより、缶胴部の所定位置まで絞り加工により縮径成形する絞り金型、該絞り金型を缶に対して缶胴軸方向に相対的に摺動させる絞り金型駆動手段とからなっている。
【0007】
前記本発明の異形缶の製造装置は、さらに、前記缶支持体が、開口側駆動体に取り付けられたフランジングダイとボトム側駆動体に取り付けられたノックアウトテーブル又はボトムチャックとからなり、前記絞り金型駆動手段が、前記開口側駆動体に軸方向に摺動可能に設けられた開口側駆動ロッド、又は前記ボトム側駆動体に軸方向に摺動可能に設けられたボトム駆動ロッドからなり、前記ボトムチャックは前記絞り金型と交換自在に取付け可能となっており、開口側から絞り成形する場合は前記開口側駆動ロッドに前記絞り金型を取り付け、ボトム側から絞り成形する場合は前記ボトム側駆動ロッドに前記ボトムチャックに替えて前記絞り金型を取り付けてなることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の異形缶の製造装置において前記開口側駆動体は、開口側駆動ロッドとその中心部を貫通して上下動する開口側中心軸体とからなり、該開口側駆動ロッドと開口側中心軸体は独立して軸方向に上下駆動でき、且つ開口側駆動ロッドの下端部にフランジングダイと絞り金型が交換自在に取付け可能として構成することができる。
【0009】
また、本発明の異形缶の製造装置において前記ボトム側駆動体は、前記ボトム側駆動体は、軸方向に摺動駆動される前記ボトム側駆動ロッドと、その中心部を貫通して前記ボトム側駆動ロッドとは独立して摺動駆動される前記ノックアウトテーブルとからなり、前記ボトム側駆動ロッドに絞り金型とボトムチャックが交換自在に取付け可能として構成することができる。
【0010】
さらに、本発明の異形缶の製造装置において、前記フランジングダイが開口側取付台座又は開口側中心軸体に軸方向にクッション可能に取り付けられていることがより望ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図1及び図2に示す実施形態により詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る異形缶製造装置の要部断面を示し、(a)はボトム側から成形する場合の状態を示し、(b)は開口側から成形する場合の状態を示している。本実施形態の異形缶製造装置は、通常の製罐ラインにおいて円筒状に絞りしごきされ、ネックイン加工及びフランジ加工された有底シームレス筒状金属缶を、所望の形状に応じてボトム側から及び又は開口側から絞り成形して、異形缶に成形するものであり、図示しない成形ターレットの外周部に所定ピッチで複数個の成形ヘッドが配置され、図1はその1組の成形ヘッドの要部を示している。
【0012】
各成形ヘッドは、基本構成として、互いに同軸線に沿って相対移動するボトム側駆動体2と開口側駆動体3とから構成されている。ボトム側駆動体2は、缶胴の底部を支持するノックアウトテーブル5と、底部側から絞り成形する場合は絞り金型8を、胴部側から絞り成形する場合はボトムチャック9をそれぞれ取り替え可能に取り付けるボトム側駆動本体6からなり、それぞれは独立して図示しないカムによりターレットの公転に伴って軸線に沿って上下駆動される。ボトム側駆動本体6は、下部に図示しないカムフォロワを有するボトム側駆動ロッド7の上端に取付台座10が設けられ、該取付台座10にボトム側絞り金型8又はボトムチャック9が取付リング27を介して取り替え自在に取りつけてある。取付リング27の内周面には内ネジが形成され、取付台座10の外周部に形成されたネジと螺合して、リング状のボトム側絞り金型8又はボトムチャック9を着脱自在に取り付けるようになっている。また、ボトム側駆動ロッド7の中心部には軸心に沿って貫通孔が設けられ、該貫通孔にノックアウトテーブルのノックアウト軸11が上下動可能に嵌合している。また、本実施形態では取付け台座10は、絞り加工時にボトム側絞り金型8を通過した缶の底部が位置できるような凹部12を有しているが、絞り金型の成形面22と取付台座上面との間に、缶の成形部位が絞り金型の成形面22を通過できる隙間があればよく、取付台座に凹部を設ける代わりに、ブラケット22の高さを高くしても良い。なお、図中13は、ノックアウト軸11に設けられノックアウトテーブル上面に開口しているバキューム孔であり、図示しないバキューム源に連結され、ノックアウトテーブル上に供給された缶の底部を吸着保持できるようになっている。それにより、ターレットの回転でも缶がずれることなく、正確な位置で缶を支持することができる。
【0013】
一方、開口側駆動体3は、開口側駆動ロッド15とその中心部を貫通して上下動する開口側中心軸体16とからなり、開口側駆動ロッド15及び開口側中心軸体16はそれぞれ図示しないカムフォロワを有し、ターレットが回転することによって図示しないカムにより独立して軸方向に上下駆動できるようになっている。開口側駆動ロッド15の下端部には、開口側取付台座20が固定され、該開口側取付台座20に、ボトム側から絞り成形する場合は、フランジングダイ17がフランジングダイ取付治具18を介して取りつけられ、開口側から絞り成形する場合は、開口側絞り金型19が適宜の絞り金型取付治具21を介して着脱自在に取りつけられている。フランジングダイ取付治具18は、第1部材24、第2部材25、第3部材26の組立体からなり、第1部材24が開口側取付台座20に内螺子を形成した取付リング31により着脱自在に取り付けられる。第1部材24と第2部材25間は、入れ子状に摺動可能に嵌合しており、スプリング30によって、所定のバネ圧で間隔を保持し、フランジングダイ17に所定以上の圧力が加わるとクッションして缶胴の伸びを吸収できるようになっている。そして、第2部材25に第3部材26が固定され、第3部材26にフランジングダイ17が固定されている。第2部材25に外部からのエア配管が連結され、絞り加工中に、第2部材25から第3部材26及びフランジングダイ17を通って缶内に加圧空気を供給して、缶胴のシワ抑え機能を果たすようになっている。
【0014】
一方、絞り金型取付治具21は、同図(b)に示すように、下端にリング状の開口側絞り金型19を保持している保持リング33を直接取り付け、上端を開口側取付台座20に取付リング31により着脱自在に取り付けられるように構成してある。したがって、金型取付治具21の高さによって、缶胴の絞り高さ位置を変えることができるので、高さの相違する複数の金型取付治具21を用意しておけば、該金型取付治具を取りかえるだけで容易に絞り成形高さ位置を変更することができる。開口側から絞り成形する場合は、フランジング取付治具18を完全に除去し、代わりに開口側中心軸体16の下端に、図1(b)に示すように、アダプター34をフランジグダイ17に取り付ける。開口側中心軸体16とアダプター34は、スプリング35を介してクッション可能に連結している。また、その場合は、開口側中心軸体16及びアダプター34に設けられたエア路36、37を通り、且つフランジングダイ17を通って成形中に及び又は成形終了後に缶の缶内に加圧エアを供給できるようになっている。
【0015】
上記構成において、開口側駆動体3に取り付けられたフランジングダイ17と底部側駆動体に取り付けられたノックアウトテーブル5又はボトムチャック9とで缶支持体を構成し、絞り金型駆動手段は、開口側駆動体3に軸方向に摺動可能に設けられた開口側駆動ロッド15、又は底部側駆動体2に軸方向に摺動可能に設けられたボトム駆動ロッド7とから構成され、缶支持体の動作とは別の動作をする。また、開口側駆動体3は、開口側駆動ロッド15とその中心部を貫通して上下動する開口側中心軸体16とからなり、開口側駆動ロッド15と開口側中心軸体16は独立して軸方向に上下駆動でき、且つ開口側駆動ロッド15の下端部にフランジングダイ17と絞り金型が交換自在に取付け可能となっている。さらに、ボトム側駆動体2は、軸方向に摺動駆動されるボトム側駆動ロッド7と、その中心部を貫通して前記ボトム側駆動ロッドとは独立して摺動駆動されるノックアウトテーブル5とからなり、ボトム側駆動ロッド7にボトム側絞り金型8とボトムチャック9が交換自在に取付け可能となっている。
【0016】
本実施形態の異形缶製造装置は、以上のように構成され、次のように作動する。まず、開口側から絞り成形する場合について、図2により説明する。
前記したように、開口側から絞り成形する場合は、ボトム側駆動本体6のボトム側駆動ロッド7の取付台座10には、図示のようにボトムチャック9が取り付けられている。一方、開口側駆動軸15の台座には取付治具18を介して開口側絞り金型19が取り付けられている。また、開口側中心軸体16には、フランジングダイ17が取り付けられている。
【0017】
まず、缶搬入位置では、図2(a)に示すように、ノックアウトテーブル5はフィードレベルFLに位置し、ボトムチャック9は缶の供給に邪魔にならないようにフィードレベルFLより退避した位置にあり、開口側駆動体3も缶の供給に邪魔にならないように上方に位置している。この状態で図示しない供給装置により、フィードレベルFLに位置しているノックアウトテーブル5上に缶50が供給されると、ボトムチャック9が上昇すると共にフランジングダイ17がリング状の開口側絞り金型19の内部を通過して下降し、缶開口部に嵌合して缶のフランジと係合し、ボトムチャック9とで缶を挟持する(同図(b)参照)。次いで、ボトムチャック9とフランジングダイ17とで缶を挟持した状態で両者が同期して上昇することにより、缶が開口側絞り金型19側に上昇すると共に、開口側絞り金型19も缶とは独立して下降することにより、絞り金型の加工面22が缶胴のフランジの外方を通過してネックイン加工部外周面に当り、その状態で缶と開口側絞り金型19が相対的に相手側方向に移動することにより、缶外周面に絞り金型により絞り加工(縮径成形)が行なわれる(同図(c)参照)。
【0018】
その際、缶が絞り金型により下方向の軸荷重を受けることによりボトムチャック9がそれに応じて僅かにクッションすることにより、缶胴のフランジ上端部とフランジグダイ17との間に僅かな隙間ができる。缶は絞り成形により加工部が縮径されるので、その分缶胴が高さ方向に伸びる力が働く。該缶の軸方向の伸びを前記隙間によって吸収し、縮径に応じて負荷を高さ方向に逃がし缶高さが自動的に高くなる。そのため、缶胴面にしわを発生させることなく良好に絞り成形することができる。しかしながら、縮径量が多い場合は、一度に縮径成形すると加工量が多くなり、缶胴に大きな負荷が作用するため、中子を使用しない本発明の成形方法の場合、缶が座屈する恐れがあるので、複数工程に分けて絞り成形するのが望ましい。なお、本実施形態では、縮径成形中缶胴の耐圧性を向上させるために、缶胴内部にエアを供給するようにしているが、エアにある加圧は必ずしも必要でないが、エアにより耐圧性をもたせることにより、より薄肉の缶の絞り成形が可能となる。
【0019】
開口側絞り金型19が缶胴の所定位置まで、相対的に移動することによって、缶胴に開口側から所定高さ位置まで所定量の縮径成形が行なわれて成形が完了する(同図(d)参照)。その後、開口側絞り金型19が上昇すると共に、ボトムチャック9とフランジングダイ17で缶が挟持された状態でフィードレベルFLまで下降し、且つノックアウトテーブルがフィードレベルFLまで上昇し、絞り金型は缶から完全に抜けて離れる(同図(e)参照)。その後フランジングダイ17が上昇して缶から離れ、缶は適宜の手段でターレットから排出され、次工程に排出される。なお、(d)図から(e)図に移行する過程で、前記開口側中心軸体16のエア路37から缶内に加圧エアを吹き込むことによって、フランジングダイ17から缶が確実に離れるようにすることが望ましい。以上の工程を経ることにより、缶は開口側から任意の高さ位置まで、しわを発生させることなく良好に絞り成形できる。
【0020】
次に、ボトム側から絞り成形する場合の工程を、図3に基づき説明する。ボトム側から絞り成形する場合は、ボトム側駆動本体6の取付台座10にボトムチャックに代えて絞り金型8を取り付け、開口側取付台座20には開口側絞り金型19に変えてフランジングダイ17を取り付ける。
まず、缶搬入位置では、図3(a)に示すように、ノックアウトテーブル5がフィードレベルFLに位置し、ボトム側駆動本体6及び開口側駆動体3は缶の供給に邪魔にならない位置に退避している。この状態で図示しない供給装置により、フィードレベルFLに位置しているノックアウトテーブル5上に缶50が供給されると、開口側駆動ロッド15に取り付けられているフランジングダイ17が下降し缶のフランジと係合し、ノックアウトテーブル5とで缶を挟持する(同図(b)参照)。次いで、ノックアウトテーブル5とフランジングダイ17とで缶を挟持した状態で両者が同期して下降することにより、缶が絞り金型8側に下降すると共に、絞り金型8もノックアウトテーブル8とは独立して上昇することにより、絞り金型の加工面22が缶胴のボトム側接地環状突起52(図4(a)参照)の外方を通過して傾斜外周面53に当り、その状態で缶と絞り金型8が相対的に相手側方向に移動することにより、缶外周面に絞り加工(縮径成形)が行なされる(同図(c)参照)。
【0021】
その際、絞り金型8が缶に上方向の軸荷重を負荷することにより、スプリング30がクッションしてフランジングダイ17が僅かに上昇して缶が上昇することにより、缶底部とノックアウトテーブル上面との間に隙間ができる。それにより、縮径に応じて缶胴が軸方向に伸びるのを高さ方向に逃がし缶高さが自動的に高くなることによって、絞り加工によるしわの発生を防いでいる。
【0022】
絞り金型8が缶胴の所定位置まで、相対的に移動することによって、缶胴にボトム側から所定高さ位置まで所定量の縮径成形が行なわれて成形が完了する(同図(d)参照)。その後、絞り金型8が下降し、且つノックアウトテーブル5がフィードレベルまで上昇すると共にフランジングダイ17が上昇すると、絞り金型が缶から抜けて離れると共に、フランジングダイ17が缶から離れ、缶は自由な状態となり、適宜の手段でターレットから排出され,次工程に排出される(同図(e)参照)。なお、フランジ側から絞り成形する場合と同様に、(d)図から(e)図に移行する過程で、前記開口側中心軸体16のエア路37から缶内に加圧エアを吹き込むことによって、フランジングダイ17から缶が確実に離れるようにすることが望ましい。以上の工程を経ることにより、缶は開口側から任意の高さ位置まで、しわを発生させることなく良好に絞り成形できる。
【0023】
以上は、開口側及びボトム側からそれぞれ絞り成形する場合の1工程について説明したが、実際の異形缶の製造工程では、それらの工程を複数工程組み合わせることによって、缶胴にしわを発生させることなく多様な形状の異形缶を成形することができるようになっている。
【0024】
【実施例】
図4は、左端に示す胴部内径65.87mmの円筒2ピース缶50をボトム側から4工程を経て絞り成形して、右端に示す缶胴高さの底部から約70%の高さ位置(仮想線で示すP0位置)まで、胴部最小内径56.8mmとなるように絞り成形加工した場合の各工程の絞り加工状態を模式的に示している。
【0025】
胴部内径65.87mmから胴部最小内径56.8mmまで絞り成形加工を1回の絞り成形でも可能であるが、その場合は絞り成形時の加工量が大きくなり、缶胴にしわが発生したり、極端な場合は座屈を起して成形不可能となるので、本実施例では各工程がほぼ等加工量(但し、第4工程では、加工量を少なくしてしてある)となるように、4工程に分割して、1回当りの加工量を少なくして徐々に絞り加工することによって、缶胴に目立たないような微小な階段状(傾斜状)に次第に縮径する形状に絞り成形した。従って、各工程で使用する絞り金型の成形型面の内径も各加工量に応じてそれぞれ異なっている。まず、第1工程では、缶胴外径よりも僅かに狭い内径の成形型面を有する絞り金型8−1により、缶底からP0位置の僅かに低い高さ位置P1まで絞り加工する。P1まで絞り加工することによって、P1までは直線状に絞り成形されるが、P0−P1間は自然に屈曲して傾斜面となって非成形缶胴部55−1に連続する。次いで第2工程で絞り金型8−1よりさらに内径の小さい成形型面を有する絞り金型8−2により、缶底からP1位置より僅かに低い高さ位置P2まで直線状に絞り成形する。それにより、P0位置からさらにP2位置まで連続した傾斜面となって絞り成形される。以下同様にして第4工程まで行われる。第4工程で、P4位置までが缶底から直線状に絞り成形され、P4−P0間は連続した傾斜面となり、図4(f)に示す形状の缶を得ることができる。最終工程である第4工程では、P4位置での屈曲を目立たないようするため、加工量を他の工程より少なくしてある。
【0026】
以上のようにして絞り加工して得られた缶は、加工中座屈を起したりすることがなく、良好に絞り成形でき、図4(f)に示すようにしわの発生のない缶胴の高さ約2/3から下方がほぼテーパー状に縮径している成形缶胴部55−2でその上部が非成形缶胴部55−1となっている異形缶55を得ることができた。
【0027】
以上、本発明の一実施形態及び実施例について説明したが、本発明は上記のものに限らず、その技術的思想の範囲内で種々の設計変更が可能である。なお、この明細書では、便宜上缶胴の軸方向を上下方向として説明したが、物理的に上下方向の場合に限らず、缶胴が横倒しの状態で供給される横型の場合は缶胴軸方向が左右方向となる。また、該成形方法によって縮径成形される缶形状は、必ずも縮径断面が円形である場合に限らず、缶胴軸方向に筋が入った多角形状や楕円形状に縮径成形も可能である。
【0028】
【発明の効果】
以上のように本発明の異形缶製造装置によれば、有底シームレス筒状缶の胴部を中子等を用いることなく、缶胴外側から絞り成形することのみで異形缶を得ることができ、しかも缶の上下何れの方向からも成形できるので、作業性に優れ効率良く且つ高価な設備を必要とすることなく、従来の高速製罐ラインに連続して適用できる。しかも、従来の絞り成形法に比べてしわの発生を抑えて良好に縮径成形ができ、美麗で変化に富んだ多様の異形缶を製造することができる。また、絞り成形加工中上下何れか一方の缶支持体と缶との間に空隙が形成されることにより、絞り加工による缶の伸びを吸収し、しわの発生を抑制する効果が高い。さらに、缶支持体の何れかを緩衝可能に取付けることによって缶支持体自体のストローク誤差や、缶体高さの誤差等による挟持圧力を効果的に吸収でき、一定圧力で缶体を支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る異形缶製造装置の要部断面を示し、(a)はボトム側から成形する場合の状態を示し、(b)は開口側から成形する場合の状態を示している。
【図2】図1に示す装置により、開口側から成形する場合の各工程における要部断面を示している。
【図3】図1に示す装置により、ボトム側から成形する場合の各工程における要部断面を示している。
【図4】実施例における4工程による絞り加工による縮径成形の各工程の要部断面図を示している。
【符号の説明】
2 ボトム側駆動体 3 開口側駆動体
5 ノックアウトテーブル 6 ボトム側駆動本体
7 ボトム側駆動ロッド 8 絞り金型
9 ボトムチャック 10 取付台座
11 ノックアウト軸 13 バキューム孔
15 開口側駆動ロッド 16 開口側中心軸体
17 フランジングダイ 18 フランジングダイ取付治具
20 開口側取付台座 21 絞り金型取付治具
22 加工面 23、27、31 取付リング
30、35 スプリング 32 エア配管
34 アダプタ 50 缶
55 異形缶
Claims (4)
- 筒状缶の胴部外周面を絞り加工することによって異形缶を製造する異形缶の製造装置であって、互いに同軸線に沿って相対移動するボトム側駆動体と開口側駆動体、缶を上下に支持する缶支持体、該缶支持体の動作とは別動作をし、缶胴部に嵌合して相対的に軸方向に摺動することにより、缶胴部の所定位置まで絞り加工により縮径成形する絞り金型、該絞り金型を缶に対して缶胴軸方向に相対的に摺動させる絞り金型駆動手段とからなり、
前記ボトム側駆動体が互いに独立して軸方向に駆動できるボトム側駆動ロッドとノックアウトテーブルからなり、前記開口側駆動体が互いに独立して軸方向に駆動できる開口側駆動ロッドと開口側中心軸体とからなり、
前記缶支持体が、前記開口側駆動体に取り付けられたフランジングダイと、前記ノックアウトテーブル又は前記ボトム側駆動ロッドに取り付けられたボトムチャックとからなり、
前記絞り金型駆動手段が、軸方向に摺動可能に設けられた前記開口側駆動ロッド、又は軸方向に摺動可能に設けられた前記ボトム側駆動ロッドからなり、前記ボトムチャックは前記絞り金型と交換自在に取り付け可能となっており、開口側から絞り成形する場合は前記開口側駆動ロッドに前記絞り金型を取り付け、ボトム側から絞り成形する場合は前記ボトム側駆動ロッドに前記ボトムチャックに替えて前記絞り金型を取り付けてなることを特徴とする異形缶の製造装置。 - 前記開口側駆動体は、開口側駆動ロッドとその中心部を貫通して上下動する開口側中心軸体とからなり、該開口側駆動ロッドと開口側中心軸体は独立して軸方向に上下駆動でき、且つ開口側駆動ロッドの下端部にフランジングダイと絞り金型が交換自在に取付け可能となっている請求項1に記載の異形缶の製造装置。
- 前記ボトム側駆動体は、軸方向に摺動駆動される前記ボトム側駆動ロッドと、その中心部を貫通して前記ボトム側駆動ロッドとは独立して摺動駆動される前記ノックアウトテーブルとからなり、前記ボトム側駆動ロッドに絞り金型とボトムチャックが交換自在に取付け可能となっている請求項1に記載の異形缶の製造装置。
- 前記フランジングダイが開口側取付台座又は開口側中心軸体に軸方向にクッション可能に取り付けられている請求項2に記載の異形缶の製造装置。
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