JP4196169B2 - 異形缶の成形装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、異形缶の成形装置、特に金属缶を中子を用いることなく、滑らかな曲線状・テーパー状等の任意形状に縮径成形できる異形缶の成形装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、有底シームレス筒状缶の胴部を部分的に変形させた缶(以下、異形缶という)を有底シームレス筒状缶から成形する方法として、ネッキング加工で形成した肩部から底部に向かって胴部に絞り成形を施すようにし、その後さらに金属缶の底部側から絞り成形を行うようにして、中子を使用しないで成形できるようにしたもの(特許文献1参照)、あるいは、同様に金属缶の底部付近外周に絞り成形を施し、次に開口部付近にネッキング加工を施し、さらに肩部付近の外周に絞り成形を施し、最後に開口部にフランジ加工又はカーリング加工を施すことにより異形缶を成形する方法も提案されている(特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】
特公平3−9812号公報
【特許文献2】
特開2000−218333号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
絞り成形することにより異形缶を成形する方法は、缶内部に中子を挿入して成形する場合と比べて、装置が簡単で作業性も良く、かつ成形が中子の大きさに影響されず、ネッキング加工あるいはフランジ加工後もできる利点がある。しかしながら、その場合は成形圧力に対するバックアップがないため、缶にしわや不規則変形が生じ易く成形不良になりやすい問題点がある。また、特許文献1又は特許文献2等に提案されているような従来の絞り成形による成形方法は、絞り成形金型で缶胴開口部又は底部を支持具に押し当てながら成形するので、成形が終了するまでの途中工程は缶胴は絞り成形金型と支持具のみで挟持されている。そのため、缶胴の挟持間隔が成形中に変位し、しかも成形加工部で挟持しているため、挟持圧力が缶胴円周面に不均一に作用し挟持が不安定になりやすく、加工中に缶がぶれて缶胴にしわが発生し易くなる欠点がある。その上、従来の方法では絞り成形金型と対向して缶を支持する支持具は固定で成形中変位することがないので、縮径による缶直径の減少分を缶胴の高さ方向に吸収して良好に逃がすことが困難で、缶直径の減少分を缶胴肉厚方向や缶胴周方向に負荷される傾向にあり、その観点からも成形面にしわが発生し易く外観を損なう場合がある等の問題点がある。
【0005】
そのような従来の絞り成形による問題点を解決するために、本出願人は、缶を開口側と底部から軸方向に挟持した状態で、開口側又は底部側から缶胴径より径小の内径を有するリング状の絞り成形金型を胴部に外嵌合する状態で缶胴軸方向に移動させることにより、缶胴部の所定位置まで絞り成形により縮径成形する方法を提案する。該方法により缶胴にしわの発生を抑制しながら良好に絞り成形して異形缶を成形することができる。そして、該方法は異なる内径を有する複数の絞り成形金型により、多段に絞り成形することにより軸方向にテーパー状あるいは弧状の成形も可能であるが、多段成形による微小な段差の発生は避けられず、完全な円弧面に成形することは困難である。
【0006】
そこで、本発明は、前記提案の異形缶の成形方法及び装置をさらに改良して多段絞り成形による段差が目立つことなく、軸方向にスムーズに傾斜したあるいは円弧面を有し、且つしわの発生を抑制して良好に縮径成形ができ、美麗で変化に富んだ多様の異形缶を製造することができる異形缶成形装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の異形缶の成形装置は、筒状缶の胴部外周面を絞り成形することによって異形缶を成形する異形缶の成形装置であって、缶胴開口部にフランジ加工及びネックイン加工された缶を底部と開口部から所定圧力で挟持する挟持手段、絞り成形金型及び又は絞り成形により生じた段差を修正するリフォーム金型を缶に対して底部側又は開口側から相対的に缶胴軸方向に移動させる金型駆動手段、該金型駆動手段に着脱可能に設けられる絞り成形金型及びリフォーム金型からなるリング状の成形金型からなり、前記絞り成形金型と前記リフォーム金型が一体となっていることを特徴とするものである。
【0008】
また、上記課題を解決する本発明の他の異形缶の成形装置は、筒状缶の胴部外周面を絞り成形することによって異形缶を成形する異形缶の成形装置であって、缶胴開口部にフランジ加工及びネックイン加工された缶を底部と開口部から所定圧力で挟持する挟持手段、絞り成形金型及び又は絞り成形により生じた段差を修正するリフォーム金型を缶に対して底部側又は開口側から相対的に缶胴軸方向に移動させる金型駆動手段、該金型駆動手段に着脱可能に設けられる絞り成形金型及びリフォーム金型からなるリング状の成形金型からなり、前記絞り成形金型と前記リフォーム金型が着脱可能に一体に組立てられていることを特徴とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施形態に係る異形缶成形装置の原理を示す模式図であり、(a)は底部側から成形する場合の状態を示し、(b)は開口側から成形する場合の状態を示している。本実施形態の異形缶成形装置は、通常の製罐ラインにおいて円筒状に絞りしごきされ、内外面塗装後ネックイン加工及びフランジ加工された完成缶である有底シームレス筒状金属缶を、所望の形状に応じて底部側から及び又は開口側から絞り成形して、異形缶に成形するものであり、図示しない成形ターレットの外周部に所定ピッチで複数個の成形ヘッドが配置され、図1はその1組の成形ヘッドの要部模式図である。
【0010】
本実施形態の異形缶成形装置による異形缶成形方法は、図1に示すように、缶を開口側と底部から軸方向に挟持し、この状態で開口側及び又は底部側からリング状の絞り成形金型及び又はリフォーム金型で構成される成形金型41を缶胴部の外側に嵌合するように相対的に軸方向に摺動することにより、缶胴部の所定位置まで所定量絞り成形し、次いでリフォーム工程では絞り成形により生じた段差をリフォーム金型で修正して形を整えるものである。底部側から成形する場合は、図1(a)に示すように、ノックアウトテーブル42とフランジングダイ43とで缶体を挟持し、その状態で成形金型41が缶底部側から缶体に沿って相対的に移動することにより、缶体の外周面を絞り込みながら上昇して絞り成形が行われる。縮径成形は、内径の相違する複数の絞り成形金型により、複数工程で加工され、第1工程が最も内径の大きい第1工程絞り成形金型で加工方向に最も遠い位置まで絞り成形し、第2工程が前記第1工程絞り成形金型より内径の小さい第2工程絞り成形金型により、第1工程の加工位置よりも近い位置まで絞り成形し、以下順次内径が小さくなる絞り成形により、順次成形距離を短くすることにより、胴部に沿って順次縮径した缶体を製造する。そして、絞り成形工と同時又は交互、あるいは絞り成形工程終了後にリフォーム金型でリフォームを行ない、1回毎の絞り成形の繋ぎ目の段差の形を整える。
【0011】
一方、缶開口側から絞り成形を行う場合は、図1(b)に示すように缶底側をボトムチャック44に嵌合し、開口側をフランジングダイ43に嵌合してボトムチャック44とフランジングイ43で挟持し、缶開口側から成形金型41が缶体に沿って相対的に移動することにより、底部側からの場合と同様に絞り成形及びリフォームを行う。
【0012】
図2は、本発明の異形缶成形方法の一実施形態を示し、本実施形態では缶胴径φ0を有する有底筒状缶体60の缶胴部61を絞り成形とリフォームを交互に行って、絞り成形3工程、リフォーム工程3工程合計6工程でコップ形状に成形する場合を示している。先ず、第1絞り成形工程(a)で内径φ1を有する絞り成形金型45−1で缶底の環状接地溝65の外側から所定高さh1まで垂直に絞り成形する。そのときの絞り成形金型45−1は、図3(a)に断面を拡大して示すように、中央部が径小になっていて該径小部から絞り進行方向に向かって成形角度αで外側に傾いている。成形角度αはほぼ15°程度が望ましく、大き過ぎると、中子がないため内側へ折れ込み成形後の缶胴が真円でなくなる。小さ過ぎると、缶胴に付着した異物の影響を受けしわが発生し易くなる。第1絞り成形工程の結果、高さh1までは胴径φ1の直立筒状となるが、高さh1位置から胴径φ0に続く部分は傾斜面となり、傾斜面の両端に屈曲部k1、k2ができる(図2(a)参照)。次に、第1成形工程できた主に屈曲部k1を無くして成形面を滑らかにするために、リフォーム金型46−1でリフォームを行う(工程2)。リフォーム金型46−1は、図3(b)に示すように、リフォーム進行方向に対する側が進行方向に向かってリフォーム角度β1で外側に傾いている。リフォーム角度βは、絞り成形角度αよりも小さく、第1次成形角度によって左右されるがほぼ5°程度が望ましい。そして、傾斜面から円弧Rと円弧rとで絞り内径φ1の位置まで連接して滑らかな面で形成されている。リフォーム金型45−1の成形面は、少なくともk1高さ位置を超える位置まで移動しなければならないが、望ましくは屈曲線k1〜k2の範囲を同時にカバーできるような大きさに形成されているのが望ましい。それにより主として屈曲線k1がリフォームされると共にk2位置近くまで同時にリフォームされ、急激な角度変化のない滑らかに連結する形状に形が整えられる。
【0013】
次いで、内径φ2を有する絞り成形金型45−2で高さh2位置まで缶底部から胴径φ2となるように絞り成形する。それにより、高さh2位置で急激に角度変化する屈曲線k3、k4が生じる(図2(c))。次いで第4工程で、少なくとも屈曲線k2、k3をカバー望ましくは屈曲線k1−k4の範囲をカバーする加工面を有するリフォーム金型46−2で少なくとも屈曲線k2を超える位置までリフォームすることによって、屈曲線k2、k3を無くすリフォームを行う(図2(d))。第5工程で内径φ3を有する絞り成形金型45−3で高さh3位置まで缶底部から胴径φ3となるように絞り成形する。それにより、高さh3位置で急激に角度変化する屈曲部k5、k6が生じる(図2(e))。最後に第6工程で、少なくとも屈曲線k4−k6範囲、望ましくは屈曲線k2−k6範囲をカバーする加工面を有するリフォーム金型46−3で少なくともk3を超える位置までリフォームすることによって、屈曲線を無くすリフォームを行う(図2(f))。それにより、絞り部に段が殆ど目立たないコップ状の絞り成形した異形缶62を得ることができる。なお、上記各寸法は、φ0>φ1>φ2>φ3の関係にあり、且つh1>h2>h3の関係にある。なお、一定範囲にわたって縮径加工しない胴径φ0の部分を残すのは、ターレットでの供給排出の取り扱いのために必要であり、胴径φ0の部分を残すことによって、縮径加工してある缶体であってもターレット等の型替えを必要とすることなく通常の缶体と同様に取り扱うことができる。
【0014】
以上のように、絞り成形工程及びリフォーム工程を複数工程に分けて行うことによって、1工程当りの成形量を少なくすることができ、縮径加工によるしわの発生をより効果的に抑えることができると共に、滑らかに変化する成形面を得ることができる。また、絞り成形工程とリフォーム工程を交互に行うことによって、リフォーム工程の加工量も少なく缶胴にしわやダメージを与えることなく、リフォーム効果が高い。
【0015】
次に、絞り成形とリフォームを同時に行って、コップ形状の缶体を絞り成形する場合の実施形態を図4により説明する。この場合は、第2工程、第3工程、第4工程においては、絞り成形加工とリフォームを同時に行っており、そのための成形金型として、図4(b)〜図4(c)に示すように、絞り成形金型とリフォーム金型とをリフォーム金型が加工進行方向側となるように、一体に組み合わせた成形金型を用いている。第1工程においては、絞り成形金型47−1で前記の場合と同様にh1高さ位置まで垂直に絞り成形し、第2工程ではリフォーム金型48−1と絞り成形金型47−2を一体に組立てた成形金型49−1を用い、リフォーム金型48−1で前記実施形態の第2工程と同様に、k1〜k2屈曲線間のリフォームを行うと共に、絞り成形金型47−2で胴径φ2となるように高さ位置h2まで垂直の絞り成形を行う(図4(b))。以下同様にして、第3工程、第4工程において、成形金型49−2、49−3の絞り成形金型47−3、47−4で胴径φ3、φ4まで絞り成形すると同時に、絞り成形できた屈曲部をリフォーム金型48−2、48−3でリフォームする。そして、最後の第5工程でリフォーム金型48−4で全工程でできた屈曲線をリフォームして滑らかな形状に仕上げて、コップ状の異形缶62を得た。なお、リフォーム金型の成形面の形状を湾曲状にすることによって、全体的な絞り成形面を曲線的に変化する形状に絞り成形することができる。
【0016】
図5は、本発明の異形缶成形方法の第3実施形態を示し、本実施形態では、1段目の絞り成形の段部をそのまま残し、2乃至4段目をリフォームする工程を合計4工程で行なうようにしたものである。第1工程では、2段絞りを1工程で行なうことができるように、第1工程の成形金型50−1は、内径φ1を有する絞り成形金型51−1と内径φ2の内径を有する絞り成形金型51−2の組み合わせからなり、絞り成形金型51−1で、高さh1の位置まで胴径φ1の垂直に絞り下降し、さらにそれに続いて絞り成形金型51−2で高さh2まで胴径φの絞り成形を行なう。第2工程の成形金型50−2は、リフォーム金型52−1と絞り成形金型51−3の組み合わせからなり、リフォーム金型52で第1絞り成形工程の絞り成形金型51−1によってできた下側の段差部のリフォームを行ない、絞り成形金型51−3で高さh3まで胴径φ3の縮径加工を行なう。同様に第3工程では、第2絞り成形工程の絞り成形金型51−2によってできた段差部のリフォームを行ない、成形金型51−4でh4まで胴径φ4の縮径加工を行なう(図5(c))。次いで、第4工程では、リフォーム金型52−3のみで、第2工程と第3項できた絞り成形部の繋ぎ目のリフォームを行ない、図5(d)に示す異形缶63を得る。
【0017】
図6は、図4に示すのと同様なコップ形状を6工程により絞り成形した他の実施形態の工程模式図を示している。図6では、図面を簡単にするために、1工程のごとの成形を仮想線で示している。本実施形態では、(a)に示すように第1工程〜第2工程で絞り成形を2回行なった後第3工程でリフォーム成形1回行ない、その後さらに同図(b)に示すように、第4〜第5工程で絞り成形2回行なって第6工程でリフォーム成形1回行なった。
【0018】
以上の実施形態は、断面円形に絞り成形をする場合であったが、本発明は断面円形に限らず断面多角形状等任意の形状に絞り成形が可能である。図7は、缶底部から所定の高さまでを24角形に絞り成形し、その上部から軸方向に且つ外側に湾曲するように絞り成形して、湯呑形状にした異形缶を製造した場合の実施形態を示している。本実施形態では、円形の成形面を有する3個の絞り型で順次絞り成形した後、その下端部を底部の環状接地溝壁の外側から断面24角形成形金型面で絞り成形し、最後にリフォーム金型で円弧状にリフォームした場合を示している。図7(a)は、成形面が断面円形の絞り成形金型により環状接地溝65の外側から3工程の絞り成形を順次行なって、傾斜部イと垂直絞り部ロを形成した状態を示し、図7(b)は、次いで成形断面が24角形の絞り成形金型で前工程の垂直絞り部ロをさらに24角形状の垂直絞り部に絞り成形した状態を示している。図7(c)は、リフォーム金型で最後に傾斜部イ(仮想線で示す)をリフォームして円弧状部ニを形成した状態を示している。このようにして、底部から立上り部が24角形でその上部から外側に円弧状に湾曲した湯呑形状の斬新な形状の異形缶66を得ることができた。
【0019】
図8は、上記実施形態の各方法を実施するための異形缶成形装置の具体的装置の実施形態を示している。
異形缶成形装置を構成する各成形ヘッドは、1工程ごとに成形ターレットの外周部に等ピッチに配置され、第1工程が終了すると第2成形ターレットに移載されて第2工程が実施され、以下順次工程数に対応した成形ターレット間を移載されて、複数工程を経て縮径加工されて異形缶が成形される。各成形ヘッドは、基本構成として、互いに同軸線に沿って相対移動する底部側駆動体2と開口側駆動体3とから構成されている。底部側駆動体2は、缶胴の底部を支持するノックアウトテーブル5と、底部側から絞り成形する場合は底部側成形金型8を、胴部側から絞り成形する場合はボトムチャック9をそれぞれ取り替え可能に取り付ける底部側駆動本体6からなり、それぞれは独立して図示しないカムによりターレットの公転に伴って軸線に沿って上下駆動される。底部側駆動本体6は、下部に図示しないカムフォロワを有する底部側駆動ロッド7の上端に取付台座10が設けられ、該取付台座10に底部側成形金型8又はボトムチャック9が取付リング27を介して取り替え自在に取りつけてある。取付リング27の内周面には内ネジが形成され、取付台座10の外周部に形成されたネジと螺合して、絞り成形金型及び又はリフォーム金型で構成される底部側成形金型8あるいはボトムチャック9を着脱自在に取り付けるようになっている。取付台座10と底部側成形金型8を取り付けるブラケット28、又はボトムチャック9を取り付けるブラケット29間には、所定のバネ圧を有するスプリング30を設けて若干隙間があり、底部側成形金型8又はボトムチャック9に所定圧力以上の力が負荷されるとスプリングがクッションするようになっている。また、底部側駆動ロッド7の中心部には軸心に沿って貫通孔が設けられ、該貫通孔にノックアウトテーブルのノックアウト軸11が上下動可能に嵌合している。なお、図中13は、ノックアウト軸11に設けられノックアウトテーブル上面に開口しているバキューム孔であり、図示しないバキューム源に連結され、ノックアウトテーブル上に供給された缶の底部を吸着保持できるようになっている。それにより、ターレットの回転でも缶がずれることなく、正確な位置で挟持することができる。
【0020】
一方、開口側駆動体3は、開口側駆動ロッド15とその中心部を貫通して上下動する開口側中心軸体16とからなり、開口側駆動ロッド15及び開口側中心軸体16はそれぞれ図示しないカムフオロワを有し、ターレットが回転することによって図示しないカムにより独立して軸方向に上下駆動できるようになっている。開口側駆動ロッド15の下端部には、開口側取付台座20が固定され、該開口側取付台座20に、底部側から絞り成形する場合は、フランジングダイ17がフランジングダイ取付治具18を介して取りつけられ、開口側から絞り成形する場合は、開口側成形金型19が適宜の成形金型取付治具21を介して着脱自在に取りつけられている。フランジングダイ取付治具18は、第1部材24、第2部材25、第3部材26の組立体からなり、第1部材24が開口側取付台座20に内螺子を形成した取付リング31により着脱自在に取り付けられる。第1部材24と第2部材25間は、入れ子状に摺動可能に嵌合しており、スプリング30によって、所定のバネ圧で間隔を保持し、フランジングダイ17に所定以上の圧力が加わるとクッションして缶胴の伸びを吸収できるようになっている。そして、第2部材25に第3部材26が固定され、第3部材26にフランジングダイ17が固定されている。第2部材25に外部からのエア配管が連結され、絞り成形中に、第2部材25から第3部材26及びフランジングダイ17を通って缶内に加圧空気を供給して、缶胴のシワ抑え機能を果たすようになっている。
【0021】
一方、成形金型取付治具21は、同図(b)に示すように、下端に開口側成形金型19を保持している保持リング33を直接取り付け、上端を開口側取付台座20に取付リング31により着脱自在に取り付けられるように構成してある。したがって、金型取付治具21の高さによって、缶胴の絞り高さ位置を変えることができるので、高さの相違する複数の金型取付治具21を用意しておけば、該金型取付治具を取りかえるだけで用意に絞り成形高さ位置を変更することができる。開口側から絞り成形する場合は、フランジング取付治具18を完全に除去し、代わりに開口側中心軸体16の下端に、図8(b)に示すように、アダプター34をフランジグダイ17を取り付ける。開口側中心軸体16とアダプター34は、スプリング35を介してクッション可能に連結している。また、その場合は、開口側中心軸体16及びアダプター34に設けられたエア路36、37を通り、且つフランジングダイ17を通って成形中の缶内に加圧エアを供給できるようになっている。
【0022】
上記構成において、開口側駆動体3に取り付けられたフランジングダイ17と底部側駆動体に取り付けられたノックアウトテーブル5又はボトムチャック9とで挟持手段を構成し、絞り絞り成形金型駆動手段は、開口側駆動体3に軸方向に摺動可能に設けられた開口側駆動ロッド15、又は底部側駆動体2に軸方向に摺動可能に設けられたボトム駆動ロッド7とから構成されている。また、開口側駆動駆動体3は、開口側駆動ロッド15とその中心部を貫通して上下動する開口側中心軸体16とからなり、開口側駆動ロッド15と開口側中心軸体16は独立して軸方向に上下駆動でき、且つ開口側駆動ロッド15の下端部にフランジングダイ17と絞り成形金型が交換自在に取付け可能となっている。さらに、底部側駆動体2は、軸方向に摺動駆動される底部側駆動ロッド7と、その中心部を貫通して前記底部側駆動ロッドとは独立して摺動駆動されるノックアウトテーブル5とからなり、底部側駆動ロッド7に底部側底部側成形金型8とボトムチャック9が交換自在に取付け可能となっている。
【0023】
本実施形態の異形缶成形装置は、以上のように構成され、次のように作動する。
開口側から絞り成形する場合は、底部側駆動本体6の底部側駆動ロッド7の取付台座10には、図示のようにボトムチャック9が取りつけられている。一方、開口側駆動軸15の台座には取付治具18を介して開口側成形金型19が取り付けられている。また、開口側中心軸体16には、フランジングダイ17が取りつけられている。
【0024】
まず、缶搬入位置では、図7に示す状態にあり、この状態で図示しない供給装置により、ノックアウトテーブル5上に有底シームレス筒状缶50が供給されると、ボトムチャック9が上昇すると共にフランジングダイ17が下降し、缶開口部に嵌合して缶のフランジと係合し、ボトムチャック9とで缶を挟持する。次いで、ボトムチャック9とフランジングダイ17とで缶を挟持した状態で両者が同期して上昇することにより、缶が開口側成形金型19側に上昇すると共に、開口側成形金型19も缶とは独立して下降する。その結果、成形金型の加工面22が缶胴のフランジの外方を通過してネックイン加工部外周面に当り、その状態で缶と開口側成形金型19が相対的に相手側方向に移動することにより、缶外周面に成形金型により絞り成形(縮径成形)及びリフォームが行なわれる。
【0025】
その際、缶は絞り成形により加工部が縮径されるので、その分缶胴が高さ方向に伸びる力が働く。缶が絞り金型により下方向の軸荷重を受けることによりボトムチャック9がそれに応じて僅かにクッションすることにより、缶胴のフランジ上端部とフランジグダイ17との間に僅かな隙間ができる。缶は絞り成形により加工部が縮径されるので、その分缶胴が高さ方向に伸びる力が働く。該缶の軸方向の伸びを前記隙間によって吸収し、縮径に応じて負荷を高さ方向に逃がし缶高さが自動的に高くなる。そのため、缶胴面にしわを発生させることなく良好に絞り成形することができる。
しかしながら、縮径量が多い場合は、一度に縮径成形すると加工量が多くなり、缶胴に大きな負荷が作用するため、中子を使用しない本発明の成形方法の場合、缶が座屈する恐れがあるので、複数工程に分けて絞り成形するのが望ましい。なお、本実施形態では、縮径成形中缶胴の耐圧性を向上させるために、缶胴内部にエアを供給するようにしているが、エアにある加圧は必ずしも必要でないが、エアにより耐圧性をもたせることにより、より薄肉の缶の絞り成形が可能となる。また、エアはフランジングダイと異形缶を分離させる際のノックアウトエアとしても利用できる。
【0026】
開口側成形金型19が缶胴の所定位置まで、相対的に移動することによって、缶胴に開口側から所定高さ位置まで所定量の縮径成形が行なわれて成形が完了する。その後、開口側成形金型19が上昇すると共に、ボトムチャック9とフランジングダイ17で缶が挟持された状態でフィードレベルFLまで下降し、且つノックアウトテーブルがフィードレベルFLまで上昇し、絞り成形金型は缶から完全に抜けて離れる。その後フランジングダイ17が上昇して缶から離れ、缶は適宜の手段でターレットから排出され、次工程に排出される。以上の工程を経ることにより、缶は開口側から任意の高さ位置まで、しわを発生させることなく良好に絞り成形できる。
【0027】
一方、底部側から絞り成形する場合は、底部側駆動本体6の取付台座10にボトムチャックに代えて底部側成形金型8を取り付け、開口側取付台座20には開口側成形金型19に変えてフランジングダイ17を取り付ける。
まず、缶搬入位置では、フィードレベルFLに位置しているノックアウトテーブル5上に有底シームレス筒状缶50が供給されると、開口側駆動ロッド15に取り付けられているフランジングダイ17が下降し缶のフランジと係合し、ノックアウトテーブル5とで缶を挟持する。次いで、ノックアウトテーブル5とフランジングダイ17とで缶を挟持した状態で両者が同期して下降することにより、缶が底部側成形金型8側に下降すると共に、底部側成形金型8もノックアウトテーブル5とは独立して上昇する。その結果、成形金型の加工面が缶胴の底部側接地環状突起65の外方を通過して傾斜外周面68に当り、その状態で缶と底部側成形金型8が相対的に相手側方向に移動することにより、缶胴に底部側から所定高さ位置まで所定量の絞り成形(縮径成形)、リフォームが前記実施形態の方法で行なされる。
【0028】
その際、絞り金型8が缶に上方向の軸荷重を負荷することにより、スプリング30がクッションしてフランジングダイ17が僅かに上昇して缶が上昇することにより、缶底部とノックアウトテーブル上面との間に隙間ができる。それにより、縮径に応じて缶胴が軸方向に伸びるのを高さ方向に逃がし缶高さが自動的に高くなることによって、絞り加工によるしわの発生を防いでいる。
【0029】
以上は、開口側及び底部側からそれぞれ成形加工する場合の1工程について説明したが、実際の異形缶の製造工程では、それらの工程を複数工程組み合わせることによって、缶胴にしわを発生させることなく多様な形状の異形缶を成形することができるようになっている。本発明の異形缶成形方法及び装置は、缶体の材質を問わず適用できるものであるが、板厚0.15〜0.40mmであって、両面少なくとも内面が合成樹脂被覆されたスチールやアルミニウム等の金属板から成形されたシームレス缶体に効果的に適用できる。合成樹脂被覆されたスチールやアルミニウム等の金属板から成形された缶の場合は、異形缶に絞り成形後のERV(エナメルレータによって測定された電流値のことで缶内面の金属の露出程度を表す)が単に内面塗装されている缶に比べて良好であり、変形加工により内面金属が露出しにくい。合成樹脂被覆としては、特にその材質は限定されないが、PETフィルムをラミネートしたものが望ましい。
【0030】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記のものに限らず、その技術的思想の範囲内で種々の設計変更が可能である。なお、上記実施形態では、便宜上缶胴の軸方向を上下方向として説明したが、物理的に上下方向の場合に限らず、缶胴が横倒しの状態で供給される横型の場合は缶胴軸方向が左右方向となる。また、該成形方法によって縮径成形される缶形状は、必ずも縮径断面が円形である場合に限らず、缶胴軸方向に筋が入った多角形状や楕円形状に縮径成形も可能である。
【0031】
【発明の効果】
以上のように本発明の異形缶成形装置によれば、有底シームレス筒状缶の胴部を中子等を用いることなく、缶胴外側から絞り成形し且つリフォームすることによって、表面にしわを発生させることなく且つ段差が目立たないテーパー状や湾曲状に滑らかに縮径加工ができ、従来の絞り成形では得られなかった美麗で変化に富んだ多様の異形缶を得ることができる。そして、作業性に優れ効率が良く高速化が可能であり、しかも従来の製罐工程で得られたネックイン加工やフランジ加工等が終了した完成缶に後加工により異形縮径加工を施すので、従来の製罐ラインにおいて、製罐の最終工程とパレタイジング工程との間にバイパスとして該異形缶成形装置を設けることによって、異形缶と通常の有底筒状缶を同一製造ラインで選択的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る異形缶成形装置の原理を示す模式図であり、(a)は底部側から成形する場合の状態を示し、(b)は開口側から成形する場合の状態を示している。
【図2】本発明に係る異形缶成形方法の一実施形態の工程を示し、有底筒状缶体の缶胴部を絞り成形とリフォームを交互に行って、絞り成形3工程、リフォーム工程3工程合計6工程でコップ形状に成形する場合を示している。
【図3】(a)は絞り成形金型の要部拡大断面図、(b)はリフォーム金型の要部拡大断面図である。
【図4】本発明に係る異形缶成形方法の第2実施形態の工程を示し、絞り成形とリフォームを同時に行って、コップ形状の缶体を絞り成形する場合の各工程の要部断面図を示している。
【図5】本発明に係る異形缶成形方法の第3実施形態の成形工程を示し、1段目の絞り成形の段部をそのまま残し、2乃至4断面をリフォームする工程を合計4工程で行なうようにした、コップ形状の缶体を絞り成形する場合の各工程の要部断面図を示している。
【図6】図4に示すのと同様なコップ形状を6工程により絞り成形した他の実施形態の工程模式図である。
【図7】本発明に係る異形缶成形方法の他の実施形態の成形工程を示す模式図であり、缶底部から所定の高さまでを24角形に絞り成形し、その上部から外側に湾曲するように絞り成形して、湯呑形状の異形缶を製造した場合を示している。
【図8】本発明の実施形態に係る異形缶成形装置の要部断面図であり、(a)は底部側から成形する場合、(b)は開口側から成形する場合である。
【符号の説明】
2 底部側駆動体 3 開口側駆動体
5 ノックアウトテーブル 6 底部側駆動本体
7 底部側駆動ロッド 8 絞り成形金型
9 ボトムチャック 10 取付台座
11 ノックアウト軸 13 バキューム孔
15 開口側駆動ロッド 16 開口側中心軸体
17 フランジングダイ 18 フランジングダイ取付治具
20 開口側取付台座 21 絞り成形金型取付治具
26、30、35 スプリング 32 エア配管
34 アダプタ 41 成形金型
42 ノックアウトテーブル 43 フランジングダイ
44 ボトムチャック
45、47、49 絞り成形金型
46、48 リフォーム金型 60 有底筒状缶体
63、64、66 異形缶
Claims (2)
- 筒状缶の胴部外周面を絞り成形することによって異形缶を成形する異形缶の成形装置であって、缶胴開口部にフランジ加工及びネックイン加工された缶を底部と開口部から所定圧力で挟持する挟持手段、絞り成形金型及び又は絞り成形により生じた段差を修正するリフォーム金型を缶に対して底部側又は開口側から相対的に缶胴軸方向に移動させる金型駆動手段、該金型駆動手段に着脱可能に設けられる絞り成形金型及びリフォーム金型からなるリング状の成形金型からなり、前記絞り成形金型と前記リフォーム金型が一体となっていることを特徴とする異形缶の成形装置。
- 筒状缶の胴部外周面を絞り成形することによって異形缶を成形する異形缶の成形装置であって、缶胴開口部にフランジ加工及びネックイン加工された缶を底部と開口部から所定圧力で挟持する挟持手段、絞り成形金型及び又は絞り成形により生じた段差を修正するリフォーム金型を缶に対して底部側又は開口側から相対的に缶胴軸方向に移動させる金型駆動手段、該金型駆動手段に着脱可能に設けられる絞り成形金型及びリフォーム金型からなるリング状の成形金型からなり、前記絞り成形金型と前記リフォーム金型が着脱可能に一体に組立てられていることを特徴とする異形缶の成形装置。
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