JP4332632B2 - 気体圧縮機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は気体圧縮機に係わり、特に硬度が高く、永久伸びが小さく、かつ安価な圧縮機用耐摩耗性アルミニウム合金押出材を用いた気体圧縮機に関する。
【0002】
【従来の技術】
気体圧縮機は、室内空調用や冷凍用に用いられている。気体圧縮機50は図14に示す如く圧縮機本体1を有し、圧縮機本体1は一対のサイドブロック2、3間に介挿されたシリンダ4を備えてなり、シリンダ4内にはロータ5が回転可能に配設されている。
【0003】
ロータ5には端面間を貫通する回転軸6が一体に設けられており、回転軸6は両サイドブロック2、3のそれぞれに設けられた軸受孔7、8に回転可能に嵌合し、また、その回転軸先端側6aは軸受孔7より突出し、さらにフロントヘッド9を貫通するように延長形成されている。
回転軸先端側6aの外局面側にはシール室10が設けられており、このシール室10には軸受孔7と回転軸6との軸受すきまGを介し潤滑油が供給される。
【0004】
図15に、図14中のA−A矢視線断面図を示す。ロータ5の外周面には径方向にベーン溝12が形成され、ベーン溝12にはベーン13が摺動可能に装着されている。そして、ベーン13は、ロータ5の回転時には遠心力とベーン溝底部の油圧とによりシリンダ4の内壁に付勢される。
【0005】
シリンダ4内は、一対のサイドブロック2、3、ロータ5、ベーン13、13・・により複数の小室に仕切られている。これらの小室は圧縮室14、14・・と称され、ロータ5の回転により容積の大小変化を繰り返す。
【0006】
このような圧縮機本体1においては、ロータ5が回転して圧縮室14、14・・の容積が変化すると、その容積変化により吸入口35に通じる吸入室15の低圧冷媒ガスを吸気し圧縮する。サイドブロック3とケース52により吐出室19が形成されている。そして、圧縮後の高圧冷媒ガスは吐出ポート16、吐出弁17、油分離器18等を介して吐出室19に吐出される。
【0007】
このとき、油分離器18では高圧冷媒ガスから油分を分離し、分離の油分は吐出室19の底部に溜り、潤滑油の油溜り20を形成する。油分の分離された高圧冷媒ガスは、吐出口36より外部の図示しない熱交換器等に供給される。
油溜り20の潤滑油は、オイル通路21を介してベーン溝底部や軸受すきまG(摺接部)側に圧送供給される。
【0008】
かかる気体圧縮機50において、ロータ5とベーン13は共にアルミ合金で形成されている。このため、摺動上の問題から図16に示すように、ベーン13は母材31の表面に膜厚10〜30μm程度のNiベースのメッキ33を施している。Niベースのメッキ33は、例えばニッケルとリンの化合物、ニッケルとリンとコバルトの化合物、ニッケルとボロンの化合物、ニッケルとリンとボロンの化合物等である。
【0009】
このメッキ33は硬いため、母材31が柔らかいと外力が加わった場合の母材31の変形にメッキ33の変形が追従できず、メッキ33の割れが発生してしまう。
そこで、母材31には比較的高硬度なアルミ合金が要求され、従来は5〜10重量%(以下、%と略す)程度の鉄、ニッケル等を含む15〜25%Si程度の焼結アルミ合金をT6処理して使用していた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この様な焼結アルミ合金はコストが高いため、コストダウンのために、より安価な溶製アルミ合金を母材に使用することが求められていた。
【0011】
ここに、溶製アルミ合金について様々な耐久性評価を実施したところ、メッキ後の初期硬度がHRB(ロックウェルのBスケール)78以上であれば、溶製アルミ合金でもメッキ33の割れが発生せず、使用できることが判った。
【0012】
この点で、T6処理した溶製アルミ合金は、硬度の点では十分に使用可能であるが、実施運転時の発生熱に伴う永久伸び(例えば180度、50時間で50μm伸びる)を生ずる。永久伸びとは、熱により生じた伸びが、冷却されて元の温度になっても、元の寸法に戻らない状態をいう。
【0013】
永久伸びを生じた場合、ベーン13とサイドブロック2又は3の間が密着し過ぎ、発熱や破損等の問題を生ずる。また永久伸びを考慮して、ベーン13とサイドブロック2又は3の間に隙間を広く設定した場合には、冷媒ガスがこの隙間より漏れてしまうおそれがあった。このため、T6処理した溶製アルミ合金を使用することは困難であった。
【0014】
かかる永久伸びを抑えるため、従来の溶製アルミ合金ではT7処理をしている。しかしながら、このT7処理では、量産でHRB78以上を保証することが出来なかった。
【0015】
本発明はこのような従来の課題に鑑みてなされたもので、硬度が高く、永久伸びが小さく、かつ安価な圧縮機用耐摩耗性アルミニウム合金押出材を用いた気体圧縮機を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
このため本発明は、冷媒ガスの吸入、圧縮及び吐出が行われる圧縮室を備える気体圧縮機において、該圧縮室を形成する摺動用部材又は該摺動用部材の母材に、8〜15%のSiと、8〜15%のCuと、0.1〜2.0%のMgとを含み、残部はアルミニウム及び不可避不純物からなり、合金組織中に10μm以上100μm以下の初晶Siを含み、かつ10μm以下の共晶Si及びCu系の晶出物を合計40%以下の面積率で均一に分布させた耐摩耗性アルミニウム合金押出材を用いたことを特徴とする。
【0017】
気体圧縮機の圧縮室を形成する摺動用部材又はこの摺動用部材の母材に、耐摩耗性アルミニウム合金押出材を用いる。摺動用部材は、メッキ等をせずにそのまま加工して用いることも可能であるが、摺動用部材の母材として用い、外周をメッキ等して用いてもよい。
【0018】
耐摩耗性アルミニウム合金押出材を用いることで、気体圧縮機の寿命を長く、かつ安価とすることが出来る。
また、本発明は、前記摺動用部材又は該摺動用部材の母材は、硬度がHRB78以上であることを特徴とする。
【0019】
硬度がHRB78以上であるため、ベーンのメッキ割れを防ぐことが出来る。量産時の最低硬度でHRB78が保証されているので、圧縮室を形成する摺動用部材に適している。
【0020】
更に、本発明は、前記摺動用部材又は該摺動用部材の母材は、熱膨張係数が21.5×10−6以下であることを特徴とする。
【0021】
熱膨張係数が小さいため、運転時の熱に伴うベーンの伸びを小さく抑えられる。このため、永久伸びが小さく、安価であり、圧縮室を形成する摺動用部材に適している。
【0022】
更に、本発明は、前記摺動用部材は前記圧縮室の外壁を形成する円筒状のシリンダに対し、該外壁の内周面に沿って摺動するベーンであり、該ベーンは、前記耐摩耗性アルミニウム合金押出材を用いた母材と、該母材の周囲に膜状に付着されたNiを含むメッキとを備えて構成した。
【0023】
耐摩耗性アルミニウム合金押出材を、気体圧縮機の圧縮室を形成するベーンに用いたことにより、ベーンのメッキ割れを生じ難く、運転時の熱に伴うベーンの伸びを小さく抑えられる。そして、ベーンを安価に製造出来る。
【0024】
更に、本発明は圧縮機用耐摩耗性アルミニウム合金押出材の製造方法であり、8〜15%のSiと、8〜15%のCuと、0.1〜2.0%のMgとを含み、残部はアルミニウム及び不可避不純物からなる合金を、480〜500℃で2〜4時間溶体化処理した後、焼入れし、190〜210℃で過時効処理することにより、該合金組織中に10μm以上100μm以下のSi粒子を60個/mm以下含み、かつ10μm以下のSi粒子及びその他の晶出物を合計40%以下の面積率で均一に分布させた耐摩耗性アルミニウム合金押出材を製造することを特徴とされてもよい
【0025】
Siは8〜15%添加する。Si添加によって母材中に硬質の初晶Si、共晶Si粒子が分散し、母材の高度、耐摩耗性を向上させる。また添加量の増加にともない熱膨張係数が小さくなる(図10)。
【0026】
ただし、Si含有量が上記下限値以下であるとその効果は小さく、上限値以上であると粗大な初晶Siが生じるため逆に機械的性質が劣化したり、押出加工性が悪くなったり、切削において工具寿命が短くなる等の問題が起こる。従って上記組成範囲が望ましく、特に10.0〜12.0%が好ましい。
【0027】
また、Cuは8〜15%添加する。Cuはアルミニウム母相への固溶硬化、あるいは熱処理時にAl−Cu(−Mg)相を析出することによって母材の硬度を向上させる。Cuには、熱膨張率を小さくする効果がある(図10)。
【0028】
状態図からCuのAlへの最大固溶量は5%程度であるが、鋳造時に晶出物として生じることを考慮すると、固溶・析出効果に有効に働くCu量を十分にするには8.0%以上の添加が望ましく、また15.0%を越えると上記の効果が飽和すると同時に粗大晶出物の増加による機械的性質の劣化が危惧される。さらに好ましい組成範囲は9.0〜12.0%である。
【0029】
更に、Mgは0.1〜2.0%添加する。Mgは、Si及びCuとの析出物を形成し母材硬度を向上させる。添加量が0.1%未満ではその効果は小さく、2.0%を越えるとその効果が飽和する。従って組成範囲を上記のように決定した。
【0030】
耐摩耗性アルミニウム合金押出材は、溶解鋳造後、押出加工によって成形する。押出した製品を溶体化処理、時効処理することにより所定の機械的性質を得る。
【0031】
480〜500℃で2〜4時間溶体化処理した後、焼入れする。溶体化処理は、後の時効処理での析出物形成のため、Cu、Mg、Siの溶質元素を母相中に十分に固溶させることを目的として行う。その温度が480℃未満である場合、溶質元素の固溶量が十分ではなく、時効後の硬度不足の原因となる。
【0032】
また、500℃を越えると共晶融解を起こし、材料中にふくれなどの欠陥が生じる恐れがある。従って溶体化処理温度は上記の範囲で行うべきであり、特に495〜500℃程度が望ましい。また、溶体化時間は2時間未満だと溶質元素の固溶が十分になされず、一方4時間以上行ってもその効果は向上しない。
【0033】
次に、190〜210℃で過時効処理を行う。時効温度は200℃付近が望ましい。理由は、本組成合金において210℃より高温で時効した場合、時効曲線における最高硬度が低下し、所定の硬度を得ることができなくなるためである。また、本合金は高い寸法安定性を得るために過時効で使用することが好ましいが、低温で時効すると過時効に達するまでに長時間を要する。従って上記の時効温度が望ましい。
【0034】
なお、時効時間は、十分な硬度と良好な寸法安定性を両立できる時間を用途に応じて2〜10時間の範囲で決定すべきである。
以上により、耐摩耗性アルミニウム合金押出材は、硬度が高く、永久伸びが小さく、かつ安価とすることが出来る。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。図16において、ベーン13の母材31は、耐摩耗性アルミニウム合金押出材で作製されている。この耐摩耗性アルミニウム合金押出材は、8〜15%のSiと、8〜15%のCuと、0.1〜2.0%のMgとを含み、残部はアルミニウム及び不可避不純物からなっている。そして、この表面に膜厚10〜30μm程度のNiベースのメッキ33が施されている。
【0036】
【実施例】
図1に、耐摩耗性アルミニウム合金押出材の試作合金の化学組成を示す。Cu量が8.0%以上の合金No.10(実施例1)及び合金No.5(実施例2)、合金No.6(実施例3)、合金No.7(実施例4)を今回の発明の実施例とし、Cu量がそれより少ない合金No.0(比較例1)及び合金No.1(比較例2)を従来品の例として比較を行った。
製造条件は、次の通りである。
【0037】
上記組成の合金を3インチ(試作合金No.1,No.5〜No.7)及び8インチ(合金No.0,No.10)ビレットに鋳造した後、これを490〜500℃×10時間で均質化処理し、押出製品速度2〜2.5m/min.で厚さ3.5mmの平板形状に押出した。こうして作製した製品を30mm程度に切断し、495±2℃×2.5時間の溶体化処理を行った後、水焼き入れし、直ちに200℃×2〜8時間の時効処理を行った。
【0038】
以下に、ミクロ組織観察、熱膨張率、硬度(HRB)、200℃熱処理での寸法変化量測定を行った結果を示す。熱膨張率は室温〜300℃、寸法変化は200℃×2、6、8時間時効品について200℃熱処理した際の寸法変化量の最大値を示した。
【0039】
まず、ミクロ組織について説明する。
本発明品のミクロ組織を図2〜図5に、また従来品のミクロ組織を図6〜図7に示す。いずれの合金においても、濃灰色に見える共晶Siと淡灰色に見えるCu系の晶出物が存在し、稀に粗大な初晶Siが見られた。
【0040】
共晶Siの分布は、本発明中の合金No.10が他に比べて均一で微細に見える。また、合金NO.10においては初晶Siが極めて少なかった。これは凝固時の冷却速度が速いためであると思われる。他の合金については共晶Siサイズは不均一であり、初晶Siも90μm以下のものが存在した。
【0041】
ただし、共晶Siの平均サイズは合金NO.10を含めた全合金で3.1〜3.5μmであり大きな差はなかった。また、共晶Siの面積率は合金NO.10が大きかったが、これによる特性の違いについては不明である。
【0042】
Cu系の晶出物に関しては、Cu添加量の多い本発明品においては20%以上となり、従来品の16%と比べ多くなっている。ただし、凝固時の冷却速度が速いと思われる合金NO.10においては、Cu添加量を増加しているにもかかわらず16.3%と従来品並であった。なお、晶出物サイズ、面積率の測定は、0.1mm程度の視野を2〜3視野観察することによって行った。
【0043】
以上の結果から本発明品の組織の特徴は初晶Siサイズ:90μm以下、共晶Siサイズ:4μm以下、共晶Si面積率:14〜18%、Cu系晶出物面積率:16〜21%であった。
【0044】
次に、図8に発明品と従来品の諸性質の比較を示す。本発明品は従来品に比べ特にCu量を増加している。また、Cu量、Mg量を変化させその影響を調べた。
【0045】
まず、熱膨張率について説明する。
図9に合金組成と線膨張係数の関係を示す。図9によれば、実施した組成範囲において、熱膨張係数に対するMg量の影響は小さく、Cu量の増加にともない小さくなっている。
【0046】
図10に、Al合金の熱膨張率に及ぼす添加元素の影響について示したが、これによるとCu添加は熱膨張率を小さくし、Mg添加は熱膨張率を大きくする。これは母相のAlに対してCuの熱膨張率が小さく、Mgの熱膨張率が大きいためであり、これらの複合効果によって製品の熱膨張率が決まるものと思われる。
【0047】
ただし、本実施例において、Cuに対してMgの添加量が少ないため、熱膨張率がCu量のみに影響されるように見えると考えられる。従って、Cuを増加した本発明品は、従来品と比較して熱膨張率を最大で1.2×10−6小さくすることができた。
【0048】
次に、硬さ(HRB)について説明する。
硬さについては、Cu、Mg量双方の増加にともない向上しており、Al−Cu−MgあるいはMgSi析出物の増加が硬さに寄与しているものと思われる。
【0049】
図11に、Cu量及びMg量とHRBとの関係を示したが、Cu添加量が最大12%までの範囲でCuによる硬度上昇の効果を確認した。特に、Cu添加量が7.5%から9.5%で硬さの増加が著しい。また、Mg量の増加によっても硬度が上昇したがその影響は小さい。
【0050】
ミクロ組織観察結果から、Cu晶出物量が同等である発明品合金NO.10と従来品合金NO.0及び合金1とを比較すると、同一時効条件では合金NO.10の硬度がもっとも高かった。これは、従来品に対するCuの増分が母相中に固溶し、時効硬化に有効に効いているものと思われる。
【0051】
これらに比べて、Cu添加の多い合金5、6、7においては、Cu晶出物量が増加しているため、Cu添加は9.5%付近で実質的に飽和状態に近づいているものと思われ、Cu添加が9.5%から12%迄の硬度上昇は小さい。ただし、Cu添加が9.4%から9.6%で晶出物が増えた後、9.6%から12%で晶出量が変化しない理由についてはわからない。
【0052】
また、Mg量が多い合金は、若干硬度の増加が見られたがその影響ははっきりしない。例えば、合金NO.10と合金7を比較した場合、合金7は合金NO.10に対してCu量はやや多いが晶出物量も多く、Cuが十分に析出硬化に寄与しているとは思えない。これを考慮すると合金7の合金NO.10に対する硬度増加は大きいといえる。
【0053】
この理由として、Mgの0.65から0.79パーセントの増分が硬度上昇に影響しているものと考えられるが、一方、Mgを0.65から1.00%とした合金NO.0と合金1では合金1の硬度増加は少なかった。
以上により、本実験においては特にCu量を9.4〜12%とすることにより、従来品よりも約1.5〜4のHRBの向上を実現できた。
【0054】
次に、析出に伴う寸法変化(水久成長)について説明する。
寸法変化量の測定は、時効処理した押出剤から3mm×5mm×長さ29mmの試験片を作成し、200℃の熱処理前後にその長さをマイクロメータで実測することによって行った。
【0055】
図12に、Cu及びMg量と200℃×8時間時効品の寸法変化の最大値の関係を示した。これによると、Mgの添加量の多い組成で寸法変化が小さくなることがわかる。この寸法変化は、溶質元素の析出にともない起こるものであり、初期の母相の過飽和度が大きいほど、寸法変化の値は大きくなるものと思われる。
【0056】
従って、添加元素量が多く、硬度が高い本発明品は、同一時効条件では従来品と比べ過飽和度が同等以上であると思われることから、従来品と比べ寸法変化が大きくなることが予想される。
【0057】
ところが、図8に示すとおり、本発明品よりも従来品の方が寸法変化が大きい場合があった。この点に関しては、図13に示すように、Mgの添加がAl−Cu合金の寸法変化を抑制する効果があるとの報告があり、本実験においてもMg添加量の多い合金の寸法変化が小さかった。
【0058】
この理由についてははっきりとはわからないが、寸法変化の値は析出相の種類によって異なることがわかっている。今回の実験例においてはCu及びMg量を変えた合金を作製しているため、合金中にAl−Cu−Mg析出物とAlーCu析出物の2種類が存在し、その比率が各合金で異なっていると考えられる。これら2種類の析出物のうち、Al−Cu−Mgの析出の方が母相に与える影響が小さいため、Mgを多くした方が寸法変化が小さくなることが推定される。
【0059】
また、図8によると、前述のように同一時効条件では、本発明品が従来品に比べ硬度が高かった。一方、寸法変化はサンプル間でバラツキがあり、発明品が特に優れているとは言えない。しかし、本発明品が従来品に比べ硬度が高いことを考慮すると、より過時効にして寸法変化を小さくしても従来品と同等の硬度を得られたり、あるいは寸法変化の増加を抑制しつつ高い硬度を得ることができる。
【0060】
例えば、合金NO.10と合金1を比較すると、同一時効条件では合金1の方が寸法変化が小さいが、硬度は合金NO.10の方が高い。ただし、合金1の200℃×6時間と合金NO.10でより過時効の200℃×8時間を比較すると、合金NO.10の方が硬度が高く寸法変化は同等である。このように、本発明においては、時効条件を調整することにより、硬度の維持と寸法変化の抑制が両立出来る。
【0061】
次に、このように作製された耐摩耗性アルミニウム合金押出材を、ベーン13の母材31の形にするため切削や研磨を施す。また、加工の完了した母材31の表面には、膜厚20μm程度のニッケルとリンの化合物からなるメッキ33を施す。メッキは電解メッキでも無電解メッキでもよい。シリコン粒子は、共晶化されているため、母材31の表面に均一にメッキを塗布することができる。このときの母材31の硬度は、例えばHRB80である。
【0062】
以上により、気体圧縮機50のベーン13に安価な耐摩耗性アルミニウム合金押出材を使用できるため、大幅なコストダウンを実現できる。
【0063】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、耐摩耗性アルミニウム合金押出材に所定量のSi、Cu、Mgを含ませたことで、硬度が高く、永久伸びが小さく、かつ安価とすることが出来る。そして、量産時の最低硬度でHRB78を保証することが可能となる。
【0064】
また、この耐摩耗性アルミニウム合金押出材を気体圧縮機の圧縮室を形成する摺動用部材等に用いたことで、摺動用部材を安価に作成出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 耐摩耗性アルミニウム合金押出材の試作合金の化学組成
【図2】 実施例1のミクロ組織(顕微鏡写真)
【図3】 実施例2のミクロ組織(顕微鏡写真)
【図4】 実施例3のミクロ組織(顕微鏡写真)
【図5】 実施例4のミクロ組織(顕微鏡写真)
【図6】 比較例1のミクロ組織(顕微鏡写真)
【図7】 比較例2のミクロ組織(顕微鏡写真)
【図8】 発明品と従来品の諸性質の比較を示す図
【図9】 合金組成と線膨張係数の関係を示す図
【図10】 Al合金の熱膨張率に及ぼす添加元素の影響
【図11】 Cu量及びMg量とHRBとの関係
【図12】 Cu及びMg量と200℃×8時間時効品の寸法変化の最大値の関係
【図13】 Al−Cu合金の最大寸法変化に及ぼすMgの影響
【図14】 気体圧縮機の構成図
【図15】 図14中のA−A矢視線断面図
【図16】 ベーンの断面図
【符号の説明】
13 ベーン
31 母材
33 メッキ
50 気体圧縮機

Claims (4)

  1. 冷媒ガスの吸入、圧縮及び吐出が行われる圧縮室を備える気体圧縮機において、該圧縮室を形成する摺動用部材又は該摺動用部材の母材に、8〜15%のSiと、8〜15%のCuと、0.1〜2.0%のMgとを含み、残部はアルミニウム及び不可避不純物からなり、合金組織中に10μm以上100μm以下の初晶Siを含み、かつ10μm以下の共晶Si及びCu系の晶出物を合計40%以下の面積率で均一に分布させた耐摩耗性アルミニウム合金押出材を用いたことを特徴とする気体圧縮機。
  2. 前記摺動用部材又は該摺動用部材の母材は、硬度がHRB78以上であることを特徴とする請求項1記載の気体圧縮機。
  3. 前記摺動用部材又は該摺動用部材の母材は、熱膨張係数が21.5×10−6以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の気体圧縮機。
  4. 前記摺動用部材は前記圧縮室の外壁を形成する円筒状のシリンダに対し、該外壁の内周面に沿って摺動するベーンであり、該ベーンは、前記耐摩耗性アルミニウム合金押出材を用いた母材と、該母材の周囲に膜状に付着されたNiを含むメッキとを備えたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の気体圧縮機。
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