JP4329346B2 - 触媒担持電極の製造方法、並びにそれを用いた電気化学装置および燃料電池 - Google Patents
触媒担持電極の製造方法、並びにそれを用いた電気化学装置および燃料電池 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属触媒を担持させた電極の製造方法に関するもので、当該電極は、特に燃料電池、食塩電解、水電解等の電気化学装置用途として優れているものである。
【0002】
【従来の技術】
高分子電解質膜を用いた電気化学装置の一種である燃料電池は、近年電解質膜や触媒技術の発展により性能の向上が著しくなり、低公害自動車用電源や高効率発電方法として注目を集めている。高分子電解質膜を用いた電気化学装置は膜の表面に酸化、還元触媒を有する反応層を形成した構造を有している。例えば図1で表される固体高分子形燃料電池においては燃料極においては水素分子がプロトンと電子に分解される反応が起き、発生した電子は導線を通って電気部品を作動させて酸素極側に運ばれ、酸素極においては酸素とプロトンと燃料極から導線を通って運ばれてきた電子から水が生成する。この反応層には通常、金属触媒が担持されている。またガス拡散電極を用いた食塩電解や水電解、空気電池等の電気化学装置においてもカーボンブラック等を主成分とし、金属触媒を担持したガス拡散電極が用いられている。
【0003】
電極への金属触媒の担持方法としては、白金黒、銀等の触媒金属の粉末を電気化学デバイス内に設けるガス拡散電極の反応層となる塗料等に添加する方法が知られている。更に近年ではカーボンブラックに予め白金等の触媒を担持した触媒担持カーボンを作成しておき、これをインキ中に添加する方法が広く行われている。
【0004】
しかしながら、いずれの方法においても活性の高い粉末を取り扱うために発火、爆発の危険が伴っていた。また金属触媒をカーボンブラックへ担持する際においても、高温の水素雰囲気下で行うか、還元剤を用いなければならなかった。この水素還元工程或いは還元剤を用いた湿式還元における乾燥工程も活性の高い粉末を取り扱うことから爆発等の危険が伴っていた。更に一旦金属触媒粉末を製造した後、反応層形成用のインキを配合していたため、触媒の担持工程と電極作成工程が別々の工程となっていた。また工程が煩雑でそれぞれの工程に不活性ガス雰囲気を充満するなどの防爆設備が必要となるため生産性が低かった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような電気化学装置用金属触媒の担持および電極製造の工程における危険性と工程の煩雑さという問題点を解消し、生産性の高い電極の製造方法を確立すべく検討を行なったものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、触媒として機能し得る金属(以下、「触媒金属」と称する。)よりもイオン化傾向が大きい金属基体の表面を触媒金属のイオンを含む液に接触させることで起こる置換めっきにより表面に触媒金属を析出させ、更に金属基体を選択的に溶解除去することにより上記問題が解決され、危険な工程を経ることなく容易に触媒を付与した反応層を得ることができ、かつ触媒を有効に機能させるための複雑な断面形状の反応層を有する電極が得られることを見出して本発明を完成するに至った。
更に本発明者は、当該触媒担持電極を製造する際に用いる金属基体が、樹枝状または鱗片状の粉末であれば、触媒性能が向上し、或いは触媒金属を水溶性有機溶剤の溶液または当該溶剤と水との混合溶媒の溶液となすことで、より高性能の触媒担持電極が得られることを見出した。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明において触媒金属を析出させるための金属基体の種類は特に限定しないが代表的な例として銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、錫、鉄或いは黄銅等のこれらの合金が挙げられる。これら金属基体は後述のように高分子電解質溶液に混合して使用される場合が多いが、当該溶液は酸性であるため溶解を防ぐためにはイオン化傾向が水素よりも小さい金属、特に銅が好ましく用いられる。イオン化傾向が水素よりも大きい金属を用いる場合は、高分子電解質溶液を予め中和しておくと使用可能となる。
【0008】
表面に触媒金属を析出させるための金属基体が金属箔である場合、その表面は微細な凹凸を有するものが触媒を効率的に析出させることができ好ましい。表面の凹凸形成方法は特に限定しないが、好ましい例としてはプリント配線板用金属箔張り積層板等の用途に用いられている、表面に電解めっき若しくは金属腐食剤によって凹凸面が形成された金属箔が挙げられる。プリント配線板用金属箔張り積層板用の金属箔は絶縁体となる樹脂との接着力を高めるために、電解めっきを重ねて極めて複雑な凹凸を金属箔の片面若しくは両面に均一に形成されたものであり、容易に入手が可能である。また金属表面を腐食させて複雑な凹凸を形成する方法も知られており、金属腐食剤として例えばメック(株)製:商品名メックエッチボンドCZ8100、同CZ5480、または硫酸、過酸化水素混合物系の金属腐蝕剤等が挙げられる。
【0009】
表面に触媒金属を析出させるための好ましい金属基体としては粉末状のものが挙げられる。金属粉末は通常電解めっき法、粉砕法、アトマイズ法、化学還元法、プラズマ回転電極法、熱処理法等によって製造される。製造方法によって球状、樹枝状、鱗片状、棒状等の形状が得られ何れも使用することができるが、表面積が大きい樹枝状および鱗片状の粉末が、触媒、電解質、反応物質からなる三相界面が増加して性能が向上するため好ましい。
【0010】
樹枝状粉末とは金属粉が複数の突起を有する形状の総称であり、通常は電解めっきによって製造される。鱗片状粉末は金属粉を押し潰す等の方法によって製造される偏平形状の粉末である。
【0011】
本発明において用いる基体金属の粉末は防錆処理等の処理が施されたものであっても良い。防錆処理が施されている場合は粉末状の基体金属が配合等の工程で空気中の酸素に触れ酸化するのを防止することができ好ましい。これらの処理剤の種類としては特に限定しないがベンゾトリアゾール、エチレンジアミン4酢酸等のキレート剤、シランカップリング剤等が挙げられる。
【0012】
本発明において触媒金属としては電気化学的触媒として機能し得るものが、本発明の目的として好ましい。このような金属としては、通常電気化学装置に用いられる金属であれば使用可能であるが、触媒金属を析出させるために使用する金属箔、金属粉等の金属基体よりもイオン化傾向が小さいものを使用しなければならない。触媒金属の代表的な例としては遷移金属が挙げられ、好ましくは白金族金属であり、更に好ましくは白金である。またこれらの触媒金属は触媒の被毒を防ぐ等の目的で2種類以上を用いてもよい。更に触媒金属を析出させた後、基体となる両金属との界面をより複雑な構造にするため、加熱操作を入れることも好ましい。
【0013】
触媒金属イオンとは触媒金属の塩の溶液等、触媒金属原子がイオン性物質として存在するものを示している。触媒金属は、使用液にその塩そのものを添加するかその溶液等を反応層形成用塗料に添加して触媒金属イオンとして用いられる。
好ましくは、表面が触媒金属で置換された金属基体と非金属性導電性物質との複合体に、触媒金属塩の溶液を、塗布等の方法で含浸させて用いる。含浸後は、金属基体または同基体と接する非金属性導電性物質の表面で還元されて触媒金属として析出する。
【0014】
本発明において触媒金属塩を溶解する溶媒は水溶性有機溶剤または水溶性有機溶剤と水の混合溶媒が好ましい。水溶性有機溶剤であれば何れも使用することができ、具体的にはアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、へキシレングリコール、グリセリン、ヘキサントリオール等のアルコール類、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール誘導体、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の水溶性エーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、並びにジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0015】
上記の中でもアルコール類が触媒金属粒子の粒子径を小さくできるという理由から好ましく、同じ触媒量とした場合、より高い電極性能が得られるため、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等の炭素数が2〜5のアルコール類が更に好ましい。これらのアルコールは炭素鎖が直鎖状であっても分枝状であっても良い。
【0016】
また、表面が触媒金属で置換された金属基体と非金属性導電性物質との複合体に、触媒金属塩の溶液を含浸させる前に、この複合体を、水溶性有機溶剤または当該有機溶剤と水との混合溶媒で湿らせると、触媒金属溶液が電極表面ではじいたり表面に気泡が付着したりし難くなる結果、電極面内に均一に触媒金属が析出するとの理由からより好ましい。
この場合、触媒金属塩の溶液は水溶液でも構わない。しかし、触媒金属粒子の粒子径を小さくできることから、水溶性有機溶剤の溶液または当該有機溶剤と水との混合溶媒の溶液が好ましい。
【0017】
本発明において、非金属性導電性物質としてはカーボンブラック、グラファイト粉末、活性炭粉末、微粒子表面にカーボンをコーティングした導電性粒子等を用いることができ、取り扱いが良好でかつ触媒金属が表面に保持され易いとの理由からカーボンブラックが好ましい。
【0018】
本発明の触媒担持電極は、電気化学装置中で反応層として用いることができる。反応層とは、反応性物質を触媒に接触させて酸化または還元反応を起こさせる層部分である。本発明においてこの反応層を形成する際は、非金属性導電性物質を含有する塗料(以下、「反応層用塗料」と称する。)を用いることが好ましい。
【0019】
反応層用塗料は、例えばカーボンブラック等の非金属性導電性物質と水、有機溶剤等の溶媒とからなり、必要に応じて高分子電解質、フッ素樹脂微粒子を添加してもよい。また、本発明においては触媒金属イオンおよび/または金属粉末等の金属基体を予め塗料配合時に添加しておくこともできる。塗料中に金属粉末と触媒金属イオンの両方を添加する場合は塗料を塗布する前に触媒金属が析出する場合があるが、使用可能である。
【0020】
反応層用塗料を塗付する方法は特に限定しないが、スプレーによる塗付、ロールコーター、スピンコーター、ダイコーター等のコーターによる塗付、スクリーン印刷等の印刷、刷毛塗り、PET等の高分子フィルムを用いた転写等何れの方法を用いてもよい。
【0021】
反応層用塗料は、特に電気化学装置用のガス拡散電極における反応層を形成する材料として有用である。この場合、反応層は電解質膜とガス拡散層の間に位置するものである。本塗料を用いると高分子電解質膜に塗付する方法、カーボンペーパー等のガス拡散層に塗付する方法、高分子フィルムまたは金属箔等の基材に一旦塗布した後、プレスまたはロールラミネート等によって高分子電解質膜或いはガス拡散層に貼り合せた後、基材を剥離して転写する方法、金属箔に塗付後、同様に高分子電解質膜あるいはガス拡散層に貼り合せ、金属箔を溶解除去する方法等により反応層を形成することができる。
【0022】
本発明において触媒金属を金属基体表面に析出させる代表的な方法は、三通りある。一つ目は反応層用塗料中に触媒金属のイオンを添加しておく方法である。この方法において、塗料中に金属基体の粉末が添加されている場合は、塗料中で金属の置換めっきが進行し金属粉の表面に触媒金属が析出する。更にこの塗料を金属面に塗布すると、金属の被塗布面にも触媒金属が析出する。この塗料中に金属基体の粉末が添加されていない場合は、金属面に塗布することにより、当該金属の被塗布面に触媒金属が析出する。
【0023】
二つ目の方法は、触媒金属イオンを含んでいない反応層用塗料を用いる方法である。この方法において塗料中に金属基体の粉末が添加されている場合は、塗料を塗布した後、塗膜に触媒金属イオンを含む液を接触させると、触媒金属イオンが塗膜中に浸透し、塗膜中の金属粉表面で置換めっきが進行し、触媒金属が析出する。更にこの塗料を金属面に塗布すると、金属の被塗布面にも触媒金属が析出する。この塗料中に金属基体の粉末が添加されていない場合は、金属面に塗布した後、塗膜に触媒金属イオンを含む液を接触させることにより、当該金属の被塗布面に触媒金属が析出する。
何れの場合においても触媒金属を析出させる金属にはカーボンブラック等の非金属性導電性物質が接触しており、これらの表面にも触媒金属の析出が起こるため、触媒が反応層内でより立体的に形成され好ましい。
【0024】
三つ目の方法としては、予め触媒金属を金属の表面に析出させておく方法である。例えば、表面に置換めっきにより触媒金属を析出させた金属粉末を用いる場合は、この粉末を反応層用塗料に配合し、塗布した後に触媒金属以外の金属粒子を溶解除去することで触媒金属が反応層内に担持される。また金属箔等の表面に触媒金属を予め析出させておく場合はこの触媒金属を析出させた金属箔上に非金属性導電物質を含ませた塗料を塗布してから金属箔を除去することで触媒金属が担持される。
【0025】
これらの方法の中では、反応層用塗料中に金属基体の粉末を添加しておき、当該塗料を塗布した後、塗膜に触媒金属イオンを含む液を接触させる方法が、塗料の経時変化が少ないとの理由から好ましい。
【0026】
本発明において触媒金属を析出させた後、触媒金属以外の金属箔または金属粉等の金属基体を除去する方法は溶解によるものが好ましい。反応層内部に立体的に食い込んだ金属箔を引き剥がすと膜が変形したり破損する頻度が極めて高く、多くの場合は金属箔の断片が膜中に残る等の不具合が生ずる。また金属粉を使用した場合は金属粉を物理的に除去することは困難である。本工程において金属箔を溶解除去することにより、膜を破損したり金属の不純物が混入すること無く、触媒金属以外の不要な金属を除去することができる。本工程において使用することができる溶解液は金属基体を溶解できるものであれば特に限定しないが、酸、アルカリ、塩化第二鉄、塩化第二銅、硫酸と過酸化水素とを混合した液等の溶液が使用可能である。但し、一般に広く知られているように金属の種類によって使用できる液が限定される。例えば金属基体が銅の場合は塩化第二鉄水溶液や硫酸と過酸化水素との混合液には溶解するが、アルカリや常温の硫酸に溶解しない。またアルミニウムは酸、アルカリの何れにも溶解する。
上記溶解液の中では、塩化第二鉄および塩化第二銅は、金属の溶解に伴なって水素等の気体を発生しないため、気泡によって反応層が脱落する等の不具合を生じ難く、また、引火爆発の危険が無いため特に好ましい。
【0027】
上記の工程で触媒金属以外の金属を溶解すると、金属イオン等の不純物が電極や電解質膜中に残り、電気化学装置に用いた時にイオンの輸送を妨げたり、電気化学装置として動作させる内に膜中に溶け出した金属が析出して短絡する場合がある。本発明においてはこれを防ぐために、酸による洗浄工程を入れることが好ましく、これによりイオン性不純物を除去することができる。更に酸を洗浄除去するため純水等で洗浄する工程を追加しても良い。
【0028】
上記の工程において、反応層用塗料にフッ素樹脂を添加したり、撥水処理を施したカーボンペーパー等のガス拡散層に塗料を塗布若しくは転写した場合、撥水性によって触媒金属イオンを含む水溶液、洗浄液、金属溶解液、酸水溶液がはじいてしまい、触媒金属の析出が不十分となったり、イオン性不純物の残留等の不具合が生じることがある。このような場合は各薬液若しくは水中に、界面活性剤或いはアルコール等の水溶性有機溶剤を添加して撥水性表面への薬液の濡れ性を向上させることが好ましい。
【0029】
本発明において作成した反応層をガス拡散電極に組み込む場合には、片方若しくは両方に反応層を形成させた高分子電解質膜とガス拡散層とを積層して圧着する必要がある。この工程はプレス、ロールラミネート等の方法があり、高分子電解質膜が柔軟になる温度に加熱して圧着するのが好ましい。加熱の際に好ましい温度は膜の材質により異なるが、圧着時に膜材質が、軟化若しくは半溶融状態になり、かつ分解温度より低い温度が好ましい。但し、分解温度以上であっても圧着工程が極めて短時間である場合は差し支えない。例えばパーフルオロスルホン酸系の高分子電解質膜では50℃〜200℃で行なうのが好ましい。圧着の際は膜を乾燥状態で用いても水、溶剤等により膨潤させた状態で行なっても良い。また積層する際、接着面のいずれか一方若しくは両面に導電性の接着層を塗付することもできる。
【0030】
本発明の工程で製造した電極を電気化学装置に用いることができる。電気化学装置が燃料電池である場合は、上記電極を2枚用意し反応層側を内側にして電解質を挟む構造とし、この両側からそれぞれ燃料と酸化剤を供給する。
【0031】
燃料電池とする場合、電解質は酸、アルカリ単独若しくはその水溶液、または高分子電解質膜が使用できる。中でも高分子電解質膜は取り扱いが容易で液漏れ等の危険性が無いことから好ましく使用できる。
【0032】
高分子電解質膜とは、高分子骨格中にイオン交換能を有する基を持つ重合体を成膜したもの、並びに高分子膜中にイオン交換能を有する物質を含ませてなるものの総称であり、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とに大別される。陽イオン交換膜としては例えば、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基を膜中の高分子鎖に有するイオン交換膜、高分子膜中に硫酸、スルホン酸類、リン酸類、カルボン酸類や固体酸の微粒子等の酸性物質を含ませたもの等が挙げられる。また陰イオン交換膜としては例えば、アミノ基、水酸化第四アンモニウム、グアニジン基等の塩基性基を有する高分子膜、膜中に固体塩基を分散させた膜等が挙げられる。また、膜中の酸または塩基部分を塩にしたものや、塩を含浸させたものもある。燃料電池用イオン交換膜として最も典型的なものはポリパーフルオロスルホン酸を成膜したものが知られており、例えば米国デュポン社製:商品名ナフィオン、旭硝子(株)製:商品名フレミオン、旭化成工業(株)製:商品名アシプレックス等が挙げられる。
【0033】
本発明において作成した反応層を電極側に形成した場合、これを燃料電池に組み込むには、高分子電解質膜と電極とを積層してそのまま組み込んでもよいが、反応層全体を有効利用するためには圧着してから組みこむのが好ましい。また反応層をフィルム等の基材上に形成した場合はこれを一旦高分子電解質膜表面若しくはカーボンペーパー等のガス拡散層に転写した後に、高分子電解質膜を反応層で挟み更にその両側からガス拡散層が挟む構造となるようにして組み込むか圧着した後で電池に組み込む。
【0034】
本発明において触媒金属を析出させ、不要な金属を溶解除去した後、三相界面を増やす目的で、反応層中に高分子電解質を含む溶液を含浸乾燥させ、剥き出しになっている触媒の表面に高分子電解質を薄く被覆することもできる。
【0035】
本発明による反応層の触媒担持方法の代表例を図で説明すると図2〜図4のようになる。図2〜4は図1で説明される固体高分子形燃料電池の原理を示す断面図のうちの反応層部分に相当し、本発明の工程を断面図で説明するものである。図2は、例えばカーボンブラック、4−フッ化エチレン樹脂微粒子、高分子電解質および金属粉を含有する塗料を基材に塗付した後の塗料部分の断面図を表す。この塗料を、触媒金属イオンを含む溶液に浸すと、図3のように金属粉末表面に触媒金属が析出する。析出した触媒金属が金属粉末を完全に被覆しない状態で、金属粉末を溶解可能な液に浸すと金属粉末が除去され、図4のようになり触媒金属がカーボンブラック等を含む導電層へ担持される。また金属粉末が存在していた部分は空洞となり、ガス拡散性の良好な反応層ができる。
【0036】
【作用】
本発明による触媒担持電極の製造方法によると、水素やヒドラジン等の還元剤を使用することもなく、還元のために高温にさらす必要も無い。また触媒を担持した粉末を取り扱うことが無いため発火、爆発等の恐れが無く極めて安全である。また凹凸形状を有する金属箔や金属粉を溶解除去した後が、三次元的な空洞として反応層中に残るためガス拡散性が向上し、触媒とガスと電解質の三相界面も増加する。更にガスが接触し易い部分にのみ触媒金属が析出するため触媒利用効率が高くなる。このようにして作成した電極は、燃料電池等の電気化学装置に有用である。
【0037】
また、触媒金属イオンを溶解する溶媒として、水溶性有機溶剤若しくは当該溶剤と水との混合溶媒を用ると、電極の性能が向上する。その理由は、撥水性材料を有する反応層に触媒金属イオンが浸透し易くなり、その結果反応層内部に触媒金属が広く分布するためと推測される。
更に、基体金属として樹枝状若しくは鱗片状の粉末を選択すると電極の性能が向上する。その理由は、他の形状と比べて表面積が大きく、形状も複雑となるため担持された触媒金属の分布が広がり、電気化学装置の反応に使われる触媒、電解質、ガスからなる三相帯が広く分布するためと推測される。
【0039】
【実施例】
(実施例2)カーボンブラック粉末(キャボット社製:バルカンXC72R)3g、樹枝状銅粉(福田金属箔粉工業(株)製:FCC−SP−77N)10g、高分子電解質溶液(デュポン社製:ナフィオン5%溶液)50g、塩化白金酸六水和物5.8gに水を適宜加えて攪拌し、反応層用塗料を得た。これをスクリーン印刷法で銅箔(福田金属箔粉工業(株)製:CFT9、厚さ35μm)の粗面に5cm×5cmのサイズで塗料を印刷し、印刷後80℃のオーブンで30分間乾燥した。次に10cm角に切り出した高分子電解質膜(デュポン社製:ナフィオン115)を用意し、その両面の中央部に塗料面を内側にして塗料を印刷した銅箔2枚を重ね合せ、130℃でロールラミネートした。次にこれを50℃に加熱した塩化第二鉄水溶液に浸して銅箔、銅粉を溶解除去した。これを10%塩酸溶液に浸して金属イオンを除去し、次いで純水で洗浄し反応層を高分子電解質膜上の両面に形成した。これとは別にカーボンブラック粉末(キャボット社製:バルカンXC72R)3g、高分子電解質溶液(デュポン社製:ナフィオン5%溶液)50g、固形分60%のフッ素樹脂分散液3.3gよりなる塗料を印刷した5cm×5cmの撥水性カーボンペーパーを作成した。このカーボンペーパーを2枚用い、印刷面を内側にして反応層を形成した電解質膜に重ね合せ、120℃1分の条件で加熱プレスしてMEAを作成した。これを燃料電池単セルに組み込み、別途記載の条件で運転し、電流密度−電圧曲線を作成したところ、図6のように発電が確認できた。また本工程中では上記のように塗料中で触媒の担持を行ったため、触媒を担持したカーボンの粉末を取り扱うことがなく、触媒担持の全工程を空気中で行うことができた。
【0040】
(実施例3)
実施例2で使用した反応層用塗料をスクリーン印刷法で撥水性カーボンペーパーに5cm×5cmのサイズで塗料を印刷し、80℃のオーブンで30分間乾燥した。これを軽く水洗した後、50℃に加熱した塩化第二鉄水溶液に浸して銅粉を溶解除去した。これを10%塩酸溶液に浸して余分な金属イオンを除去し、次いで純水で洗浄した。10cm角に切り出した高分子電解質膜(デュポン社製:ナフィオン115)を用意し、その両面の中央部に塗料面を内側にして塗料を印刷し触媒を担持したカーボンペーパー2枚を重ね合せ、120℃1分の条件で加熱プレスしてMEAを作成した。これを燃料電池単セルに組み込み、別途記載の条件で運転し、電流密度−電圧曲線を作成したところ、図7のように発電が確認できた。また本工程中では上記のように塗料中で触媒の担持を行ったため、触媒を担持したカーボンの粉末を取り扱うことがなく、触媒担持の全工程を空気中で行うことができた。
【0041】
(実施例4)
カーボンブラック粉末(キャボット社製:バルカンXC72R)3g、銅粉(福田金属箔粉工業(株)製:FCC−SP−77N)10g、高分子電解質溶液(デュポン社製:ナフィオン5%溶液)50g、固形分60%のフッ素樹脂分散液3.3gに水を適宜加えて攪拌し、反応層用塗料を得た。これをスクリーン印刷法で撥水性カーボンペーパー上に5cm×5cmのサイズで塗料を印刷し、80℃のオーブンで30分間乾燥した。次にこれを白金量に換算して10%の塩化白金酸水溶液に10分間浸して白金を析出させた。これを軽く水洗した後、塩化第二鉄水溶液に浸して銅粉を溶解除去した。ついで塩酸溶液に浸して余分な金属イオンを除去し、次いで純水で洗浄して反応層をガス拡散層となるカーボンペーパー上に形成した。このカーボンペーパーを2枚用い、印刷面を内側にして10cm角に切り出した高分子電解質膜(デュポン社製:ナフィオン115)に重ね合せ、120℃1分の条件で加熱プレスしてMEAを作成した。これを燃料電池単セルに組み込み、別途記載の条件で運転し、電流密度−電圧曲線を作成したところ、図8のように発電が確認できた。また本工程中では上記のように塗膜を塩化白金酸溶液に接触させることで触媒の担持を行ったため、触媒を担持したカーボンの粉末を取り扱うことがなく、触媒担持の全工程を空気中で行うことができた。
【0042】
(比較例1)
カーボンブラックに白金触媒を予め担持した触媒粉末6g、高分子電解質溶液(デュポン社製:ナフィオン5%溶液)50g、固形分60%のフッ素樹脂分散液3.3gに水を適宜加えて攪拌し、反応層用塗料を得た。この工程は水を加えて攪拌するまでの間、窒素置換したグローブボックス内で行った。次にスクリーン印刷法で撥水性カーボンペーパー上に5cm×5cmのサイズで塗料を印刷し、80℃のオーブンで30分間乾燥した。このカーボンペーパーを2枚用い、印刷面を内側にして10cm角に切り出した高分子電解質膜(デュポン社製:ナフィオン115)に重ね合せ、120℃1分の条件で加熱プレスしてMEAを作成した。これを燃料電池単セルに組み込み、別途記載の条件で運転し、電流密度−電圧曲線を作成したところ、図9のように発電が確認できた。しかしながら本工程において触媒の配合を空気中で行うと電解質溶液に含まれるアルコール分に引火し配合することができいばかりか極めて危険であることがわかった。
【0043】
(実施例5)
カーボンブラック粉末(キャボット社製:バルカンXC72R)3g、銅粉(福田金属箔粉工業(株)製:FCC−SP−77N)10g、高分子電解質溶液(デュポン社製:ナフィオン5%溶液)50g、固形分60%のフッ素樹脂分散液3.3gに水を適宜加えて攪拌し、反応層用塗料を得た。これをスクリーン印刷法で撥水性カーボンペーパー上に5cm×5cmのサイズで塗料を印刷し、80℃のオーブンで30分間乾燥した。次に印刷面に塩化白金酸溶液(30%メチルアルコール水溶液に白金量に換算して20%の塩化白金酸を溶解させた溶液)を白金量で0.5mg/cm2になるように塗布し、1時間放置して白金を析出させた。これを軽く水洗した後、50℃に加熱した塩化第二鉄水溶液に浸して銅粉を溶解除去した。次いで塩酸溶液に浸して余分な金属イオンを除去し、次いで純水で洗浄して反応層をガス拡散層となるカーボンペーパー上に形成した。このカーボンペーパーを2枚用い、印刷面を内側にして10cm角に切り出した高分子電解質膜(デュポン社製:ナフィオン112)に重ね合せ、120℃1分の条件で加熱プレスしてMEAを作成した。これを燃料電池単セルに組み込み、別途記載の条件で運転し、電流密度−電圧曲線を作成し、その結果を図10に示した。取り出せる電圧は、塩化白金酸の水溶液を用いた後述の実施例11に比べると高く電極性能が向上したことがわかった。
【0044】
(実施例6)
塩化白金酸溶液を、30%アセトン水溶液に白金量に換算して20%の塩化白金酸を溶解させた溶液に変更した以外は、実施例5と同じ条件および操作でMEAを作成した。これを燃料電池単セルに組み込み、別途記載の条件で運転し、電流密度−電圧曲線を作成し、その結果を図11に示した。取り出せる電圧は後述の実施例11に比べると高く電極性能が向上したことがわかった。
【0045】
(実施例7)
塩化白金酸溶液を、30%エチルアルコール水溶液に白金量に換算して20%の塩化白金酸を溶解させた溶液に変更した以外は、実施例5と同じ条件および操作でMEAを作成した。これを燃料電池単セルに組み込み、別途記載の条件で運転し、電流密度−電圧曲線を作成し、その結果を図12に示した。取り出せる電圧は後述の実施例11に比べると高く、実施例5、6に比べても電極性能が向上したことがわかった。
【0046】
(実施例8)
塩化白金酸溶液を、20%ブチルアルコール、10%エチルアルコール水溶液に白金量に換算して20%の塩化白金酸を溶解させた溶液に変更した以外は、実施例5と同じ条件および操作でMEAを作成した。これを燃料電池単セルに組み込み、別途記載の条件で運転し、電流密度−電圧曲線を作成し、その結果を図13に示した。取り出せる電圧は後述の実施例11に比べると高く、実施例5、6に比べても大きく電極性能が向上したことがわかった。
【0047】
(実施例9)
塩化白金酸溶液を、30%エチレングリコール水溶液に白金量に換算して20%の塩化白金酸を溶解させた溶液に変更した以外は、実施例5と同じ条件および操作でMEAを作成した。これを燃料電池単セルに組み込み、別途記載の条件で運転し、電流密度−電圧曲線を作成し、その結果を図14に示した。本実施例により得た電極が最も高い電圧を取り出せることがわかった。
【0048】
(実施例10)
カーボンブラック粉末(キャボット社製:バルカンXC72R)3g、銅粉(福田金属箔粉工業(株)製:FCC−SP−77N)10g、高分子電解質溶液(デュポン社製:ナフィオン5%溶液)50g、固形分60%のフッ素樹脂分散液3.3gに水を適宜加えて攪拌し、反応層用塗料を得た。これをスクリーン印刷法で撥水性カーボンペーパー上に5cm×5cmのサイズで塗料を印刷し、80℃のオーブンで30分間乾燥した。次に印刷面に30%エチルアルコール水溶液を塗布し、30分放置した。その後余分なエチルアルコール水溶液をろ紙で静かに吸い取り、湿った状態でここに塩化白金酸溶液(30%エチルアルコール水溶液に白金量に換算して20%の塩化白金酸を溶解させた溶液)を白金量で0.5mg/cm2になるように塗布し、1時間放置して白金を析出させた。これを軽く水洗した後、塩化第二鉄水溶液に浸して銅粉を溶解除去した。ついで塩酸溶液に浸して余分な金属イオンを除去し、次いで純水で洗浄して反応層をガス拡散層となるカーボンペーパー上に形成した。このカーボンペーパーを2枚用い、印刷面を内側にして10cm角に切り出した高分子電解質膜(デュポン社製:ナフィオン112)に重ね合せ、120℃1分の条件で加熱プレスしてMEAを作成した。これを燃料電池単セルに組み込み、別途記載の条件で運転し、電流密度−電圧曲線を作成し、その結果を図15に示した。取り出せる電圧は後述の実施例11に比べると高く、実施例7に比べても電極性能が向上し、予め溶剤で表面を湿らせた効果があることがわかった。
【0049】
(実施例11)
カーボンブラック粉末(キャボット社製:バルカンXC72R)3g、銅粉(福田金属箔粉工業(株)製:FCC−SP−77N)10g、高分子電解質溶液(デュポン社製:ナフィオン5%溶液)50g、固形分60%のフッ素樹脂分散液3.3gに水を適宜加えて攪拌し、反応層用塗料を得た。これをスクリーン印刷法で撥水性カーボンペーパー上に5cm×5cmのサイズで塗料を印刷し、80℃のオーブンで30分間乾燥した。次に印刷面に塩化白金酸水溶液(純水に白金量に換算して20%の塩化白金酸を溶解させた水溶液)を白金量で0.5mg/cm2になるように塗布し、1時間放置して白金を析出させた。これを軽く水洗した後、塩化第二鉄水溶液に浸して銅粉を溶解除去した。次いで塩酸溶液に浸して余分な金属イオンを除去し、次いで純水で洗浄して反応層をガス拡散層となるカーボンペーパー上に形成した。このカーボンペーパーを2枚用い、印刷面を内側にして10cm角に切り出した高分子電解質膜(デュポン社製:ナフィオン112)に重ね合せ、120℃1分の条件で加熱プレスしてMEAを作成した。これを燃料電池単セルに組み込み、別途記載の条件で運転し、電流密度−電圧曲線を作成し、その結果を図16に示した。実施例5〜10に比べて電流密度が高くなるほど得られる電圧は低く、電池性能は低かった。
【0050】
(実施例12)
カーボンブラック粉末(キャボット社製:バルカンXC72R)3g、基体金属として樹枝状銅粉(福田金属箔粉工業(株)製:FCC−SP−99)10g、高分子電解質溶液(デュポン社製:ナフィオン5%溶液)50g、固形分60%のフッ素樹脂分散液3.3gに水を適宜加えて攪拌し、反応層用塗料を得た。これをスクリーン印刷法で撥水性カーボンペーパー上に5cm×5cmのサイズで塗料を印刷し、80℃のオーブンで30分間乾燥した。次に印刷面に30%エチルアルコール水溶液を塗布し、30分放置した。その後余分なエチルアルコール水溶液をろ紙で静かに吸い取り、湿った状態でここに塩化白金酸溶液(30%エチルアルコール水溶液に白金量に換算して20%の塩化白金酸を溶解させた溶液)を白金量で0.5mg/cm2になるように塗布し、1時間放置して白金を析出させた。これを軽く水洗した後、50℃に加熱した塩化第二鉄水溶液に浸して銅粉を溶解除去した。次いで塩酸溶液に浸して余分な金属イオンを除去し、次いで純水で洗浄して反応層をガス拡散層となるカーボンペーパー上に形成した。このカーボンペーパーを2枚用い、印刷面を内側にして10cm角に切り出した高分子電解質膜(デュポン社製:ナフィオン112)に重ね合せ、120℃1分の条件で加熱プレスしてMEAを作成した。これを燃料電池単セルに組み込み、別途記載の条件で運転し、電流密度−電圧曲線を作成し、その結果を図17に示した。取り出せる電圧は後述の実施例14、15に比べると高く電極性能が向上したことがわかった。
【0051】
(実施例13)
カーボンブラック粉末(キャボット社製:バルカンXC72R)3g、鱗片状真鍮粉(福田金属箔粉工業(株)製:No.7770)を用いたこと以外は実施例12に準じて電極を作成し、これを用いてMEAを作成した。実施例12と同様に電流密度−電圧曲線を作成し、その結果を図18に示した。取り出せる電圧は後述の実施例14、15に比べると高く電極性能が向上したことがわかった。
【0052】
(実施例14)
カーボンブラック粉末(キャボット社製:バルカンXC72R)3g、アトマイズ法により製造された球状銅粉(福田金属箔粉工業(株)製:Cu−At−350)を用いたこと以外は実施例12に準じて電極を作成し、これを用いてMEAを作成した。実施例12と同様に電流密度−電圧曲線を作成し、その結果を図19に示した。実施例12に比べて電流密度が高くなるほど得られる電圧は低く、電池性能は低かった。
【0053】
(実施例15)
カーボンブラック粉末(キャボット社製:バルカンXC72R)3g、水アトマイズ法により製造された球状銅粉(福田金属箔粉工業(株)製:Cu−AtW−350)を用いたこと以外は実施例12に準じて電極を作成し、これを用いてMEAを作成した。実施例12と同様に電流密度−電圧曲線を作成し、その結果を図20に示した。実施例12に比べて電流密度が高くなるほど得られる電圧は低く、電池性能は低かった。
【0054】
(燃料電池の性能評価方法)
各実施例および比較例で作成したMEAの燃料電池単セルに組み込んだ際の運転条件は次のとおり。燃料ガスと酸化剤ガスとをそれぞれ純水素、純酸素とし各ガスは80℃で95%以上の湿度に保持した。セル温度は80℃とした。電子負荷器により負荷を変化させながら、電流と電圧を測定した。この値を基にそれぞれ電流密度−電圧曲線を作成した。
【0055】
【発明の効果】
本発明による触媒担持電極の製造方法は反応層用塗料を塗布した後で、金属のイオン化傾向の差を利用して触媒金属を析出させるもので、このため通常のカーボン粉末等に予め触媒を担持させてから塗料を配合する方法と比べて極めて安全であり、不活性雰囲気で配合を行うなどの付帯設備を簡素化できる。また金属粉末の表面に触媒金属を析出させ、かつこの反応をカーボンブラック等の非金属性導電性粉末に接触させた状態で行うことにより、この粉末の表面にも触媒金属の析出が起こり、析出した触媒金属が反応層内で立体的に分布する。また金属粉が溶解した後が空洞になるため、反応層内におけるガスの拡散性が向上し、かつ触媒がガス流路周辺に偏在することから触媒の有効利用にもつながる。これらのことから本発明による触媒担持電極の製造方法は従来にない新しい触媒担持方法であり燃料電池等の電気化学装置用途として極めて有用である。
【0056】
また、本発明の触媒担持電極の製造方法として、金属基体と非金属性導電物質とを複合したものに、触媒金属の溶液を接触させて、金属のイオン化傾向の差を利用して触媒金属を析出させる方法において、触媒金属の塩を溶解する溶媒として水溶性有機溶剤を用いると、触媒金属を担持させる非金属性導電物質への触媒金属のイオン浸透性が改善され、還元後は反応層内全体に、触媒金属が分布するため触媒の利用効率が向上し性能が向上するものであり燃料電池等の電気化学装置用途として極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】固体高分子形燃料電池の概念図
【図2】金属粉末入りの反応層用塗料を用いて反応層内に触媒金属を担持させる工程のうち、反応層塗料を塗付した状態の断面を表す模式図
【図3】同工程において金属粉周辺に触媒金属を析出させた状態の断面を表す模式図
【図4】同工程において金属粉を溶解除去して触媒金属を担持した状態の断面を表す模式図
【図6】実施例2の電流密度−電圧曲線の図
【図7】実施例3の電流密度−電圧曲線の図
【図8】実施例4の電流密度−電圧曲線の図
【図9】比較例1の電流密度−電圧曲線の図
【図10】実施例5の電流密度−電圧曲線の図
【図11】実施例6の電流密度−電圧曲線の図
【図12】実施例7の電流密度−電圧曲線の図
【図13】実施例8の電流密度−電圧曲線の図
【図14】実施例9の電流密度−電圧曲線の図
【図15】実施例10の電流密度−電圧曲線の図
【図16】実施例11の電流密度−電圧曲線の図
【図17】実施例12の電流密度−電圧曲線の図
【図18】実施例13の電流密度−電圧曲線の図
【図19】実施例14の電流密度−電圧曲線の図
【図20】実施例15の電流密度−電圧曲線の図
【符号の説明】
1‥高分子電解質膜
2‥ガス拡散層
3‥反応層
4‥反応層断面
5‥金属粉末
6‥導電層
7‥置換めっきにより析出した触媒金属
8‥反応層内に担持された触媒金属
9‥空洞
Claims (6)
- 下記の工程を含み、かつ工程(1)および工程(2)を別々または同時に行って、表面が触媒として機能し得る金属で置換された金属基体と非金属性導電性物質との接触体を作成した後に、工程(3)を行うことを特徴とする触媒担持電極の製造方法。
(1)金属粉末基体の表面に、この金属よりもイオン化傾向が小さくかつ触媒として機能し得る金属を析出させる工程。
(2)当該金属粉末基体と非金属性導電性物質とを接触させる工程。
(3)当該金属粉末基体を溶解液で溶解除去する工程。 - 金属粉末基体が、樹枝状または鱗片状の粉末であることを特徴とする請求項1に記載の触媒担持電極の製造方法。
- 表面が触媒として機能し得る金属で置換された金属粉末基体と非金属性導電性物質との接触体が、非金属性導電性物質を含有する塗料を用いた次のいずれかの方法で作成されたものであることを特徴とする請求項1または2の触媒担持電極の製造方法。
(2)非金属性導電性物質に、更に金属粉末基体を配合してなる塗料から塗膜を形成させた後、当該塗膜を前記金属粉末基体よりもイオン化傾向が小さくかつ触媒として機能し得る金属のイオンと接触させる方法。
(4)非金属性導電性物質に、更に金属粉末基体および当該金属粉末基体よりもイオン化傾向が小さくかつ触媒として機能し得る金属のイオンを配合してなる塗料の塗膜を形成させる方法。
(5)非金属性導電性物質に、更に金属粉末基体と当該金属粉末基体よりもイオン化傾向が小さくかつ触媒として機能し得る金属のイオンとの反応生成物を配合してなる塗料の塗膜を形成させる方法。 - 表面が触媒として機能し得る金属で置換された金属粉末基体と非金属性導電性物質との接触体が、次の工程から得られたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の触媒担持電極の製造方法。
(1)金属粉末基体と非金属性導電性物質とを接触させる工程。
(2)(1)で得られたものを、基体金属よりもイオン化傾向が小さくかつ触媒として機能し得る金属の水溶性有機溶剤の溶液または当該有機溶剤と水との混合溶媒の溶液に接触させる工程。 - 表面が触媒として機能し得る金属で置換された金属粉末基体と非金属性導電性物質との接触体が、次の工程から得られたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の触媒担持電極の製造方法。
(1)金属粉末基体と非金属性導電性物質とを接触させる工程。
(2)(1)で得られたものを、水溶性有機溶剤または当該有機溶剤と水との混合溶媒で湿らせる工程。
(3)(2)で得られたものを、基体金属よりもイオン化傾向が小さくかつ触媒として機能し得る金属の水溶性有機溶剤の溶液、当該有機溶剤と水との混合溶媒の溶液または水溶液に接触させる工程。 - (1)非金属性導電性物質および金属粉末基体を配合してなる塗料を電解質膜若しくはガス拡散層に直接塗布するか、高分子フィルムまたは金属箔に一旦塗布した後に電解質膜若しくはガス拡散層に転写する工程、(2)当該塗膜または転写により得られた層を、前記金属よりもイオン化傾向が小さくかつ触媒として機能し得る金属のイオンを含有する溶液と接触させて塗膜または転写により得られた層内の金属粉末基体に触媒として機能し得る金属を析出させる工程、並びに(3)前記金属粉末基体を溶解液で溶解除去する工程を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の触媒担持電極の製造方法。
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