JP4323928B2 - 免震装置 - Google Patents

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積層ゴム本体に金属製のプラグが挿入された免震装置に関する。
免震装置においては、振動を減衰させるために、ゴム板と鋼板とを厚み方向に交互に積層した積層ゴム本体内に、鉛の柱を挿入しているものがある(例えば、特許文献1参照)。このような免震装置では、積層ゴム本体がせん断変形するときに、鉛の柱が塑性変形することで振動のエネルギーを吸収している。
ところで、この従来の免震装置では、使用後に鉛の柱と積層ゴム本体とを分離して廃棄等の処分を行う必要がある。しかし、使用後には、鉛の柱が積層ゴム本体内に食い込んでいることがあり、積層ゴム本体を切断して鉛の柱を分離する等の大掛かりな分離処理が必要になっていた。
特開昭52−49609号公報
本発明は、上記事実を考慮して、使用後に積層ゴム本体から容易にプラグを抜き取ることができる免震装置を提供することを課題とする。
請求項1に記載する本発明の免震装置は、ゴムと金属板とが交互に積層された積層ゴム本体と、前記積層ゴム本体に形成された貫通孔の内部に挿入された金属製のプラグと、前記プラグと前記積層ゴム本体との間に配設され、ポリテトラフルオロエチレンからなる可撓性の被覆材と、を有することを特徴とする。
ここで、貫通孔は、積層ゴム本体を貫通して形成されたものであるが、この貫通孔の一方又は両方を塞ぐ部材(例えば、キャップ等)が免震装置に設けられていてもよい。
請求項1に記載する本発明の免震装置によれば、地震時等に積層ゴム本体がせん断変形する場合には、可撓性の被覆材を介してプラグが塑性変形し、振動のエネルギーは吸収される。この被覆材は、可撓性を有してプラグと積層ゴム本体との間に配設されているので、使用時にプラグが積層ゴム本体に圧着されることがなく、無用の変形(例えば、積層ゴム本体への食い込み)も抑えることができる。また、被覆材は、ポリテトラフルオロエチレンからなっているので、積層ゴム本体との間の摩擦係数が小さく、積層ゴム本体に対して剥離性を備えている。このため、使用後には、積層ゴム本体から容易にプラグを抜き取ることができる。
以上説明したように、本発明の免震装置によれば、使用後に積層ゴム本体から容易にプラグを抜き取ることができるという優れた効果を有する。
本発明における免震装置の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1には、本発明の第1の実施形態に係る免震装置10が示されている。この免震装置10は、ビル等の比較的大きい建物に適用され、ばね機能と減衰機能とを併せ持つ。免震装置10は、積層ゴム本体12を備えている。積層ゴム本体12は、円柱状とされ、円形の中心部には、厚み方向(矢印B方向)に円柱状に貫通した通孔12Hが形成されている。積層ゴム本体12の環状部分は、複数枚の円盤状の金属板(薄鋼板)14と、同じく複数枚の円盤状のゴム16とを厚み方向(矢印B方向)に交互に積層した積層体とされている。金属板14とゴム16とは、加硫接着により強固に一体化されている。このように、ゴム16だけでなく、金属板14を使用してこれらを交互に積層したことで、鉛直方向(矢印C方向)の荷重に対しては所定の剛性を有し、水平方向(矢印E方向)の荷重に対してはばね機能を発揮すると共に十分な変形量を確保することが可能になっている。
金属板14の外径は、積層ゴム本体12の外径よりも小さくされており、金属板14の外縁には、円筒状に被覆ゴム18が配置されている。この被覆ゴム18によって金属板14が覆われており、金属板14の劣化が防止されている。
積層ゴム本体12の厚み方向(矢印B方向)の両端側には、取付プレート20、22が固着されている。取付プレート20、22は、肉厚の円環状の鋼板からなり、積層ゴム本体12の通孔12Hに連続する中央孔21、23が貫通して形成されている。中央孔21、23には、通孔12Hの延長部を構成する小円孔部21H、23Hが形成され、この小円孔部21H、23Hは、通孔12Hと同径とされている。下側中央孔21の下部及び上側中央孔23の上部には、小円孔部21H、23Hよりも大径の大円孔部21G、23Gが形成されている。小円孔部21H、23Hと大円孔部21G、23Gとの間は、リング状の段差部21F、23Fとされている。取付プレート20、22はそれぞれ、地盤に設置される建物基礎(図示省略)及び免震装置10上に設置される建物本体(図示省略)に固定される。この状態で、地盤(及び建物基礎)と建物本体とが水平方向に相対移動すると、この相対移動の振動エネルギーが、積層ゴム本体12のせん断変形によって一部が吸収されるようになっている。
積層ゴム本体12の通孔12Hの内部には、外周部を厚み1mmの被覆材24で被覆された円柱状の鉛プラグ26(コア)が圧入されている。減衰材としての鉛プラグ26には、純鉛又は鉛合金が適用される。ここで、本実施例の鉛プラグ26は、引張降伏応力が15MPa前後、破断伸びが50%前後の機械的性質をもつ。このように、鉛プラグ26は、延性が高く、容易に塑性変形する。このため、鉛プラグ26は、積層ゴム本体12がせん断変形するときに塑性変形し、ダンパとして機能するものである。なお、鉛は、繰返し変形が可能という特性を有するため、免震用のダンパとして非常に優れた材料である。
被覆材24は、円筒状とされている。被覆材24の材料としては、ある程度の剛性は必要であるが降伏応力が低く、かつ、延性があって塑性変形後も破壊しにくい可撓性の樹脂材料が適用され、特に、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(デュポン社の登録商標)の一般名称)のように、積層ゴム本体12に対して剥離性のある材質のものが好ましい。本実施例では、ペレット状の樹脂材料(ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(デュポン社の登録商標)の一般名称))を押出し機で溶融押し出し成形して円筒状とした。ここで、被覆材24は、引張降伏応力Fが10MPa≦F≦20MPaであるものが好ましい。被覆材24の引張降伏応力FがF≦20MPaであると、鉛プラグ26の引張降伏応力の値に近いために、鉛プラグ26の減衰機能がほとんど損なわれない。これに対して、仮に鉄等のように引張降伏応力Fが高いと、鉛プラグ26が振動に対応して変形することができず、振動に対する鉛プラグ26の減衰機能を十分に発揮できない。また、被覆材24の引張降伏応力Fが10MPa≦Fであると、地震等があった場合にも被覆材24の鉛プラグ26に対する被覆状態が良好に維持される。これに対して、仮に弾性ゴムや流体のように引張降伏応力Fが非常に低いと、地震時等に被覆材24が容易に移動して被覆の機能を十分に果たせない。このような被覆材24は、鉛プラグ26に対する被覆状態を維持しながら、地震時等において積層ゴム本体12にせん断力を作用させた場合に鉛プラグ26にせん断力を伝えると共に、鉛プラグ26の塑性変形に追従する可撓性を備える。また、被覆材24が地震時等に破断されないようにするため、被覆材24は、破断伸びが50%以上のものが良い。
また、被覆材24の材質は、鉛プラグ26の材質に比べて積層ゴム本体12との間における圧着状態からの摺動抵抗(圧着された積層ゴム本体12との間の摩擦係数)が小さいことが好ましい。ここで、被覆材24の圧着状態とは、免震装置10の使用によって、鉛プラグ26の変形等により被覆材24が積層ゴム本体12に密着された状態をいう。一方、比較対象となる鉛プラグ26の圧着状態とは、従来の免震装置(被覆材24が無い状態)の使用後に、鉛プラグ26が種々の押圧力によって積層ゴム本体12に密着された状態をいう。
ここで、本実施例の被覆材24の材質(積層ゴム本体12に対して剥離性のある材質)では、積層ゴム本体12からの鉛プラグ26の抜き取り時に、鉛プラグ26に対する鉛直方向(矢印C方向)への押圧力によって被覆材24が鉛プラグ26と共に積層ゴム本体12から容易に離脱可能な摩擦力とされている。
鉛プラグ26の外周部を被覆材24で被覆するには、所定寸法の円筒状の被覆材24を金型内周にインサートし、被覆材24の内周に被覆材24の内周より若干小径の鉛プラグ26を圧入し、金型で加熱しながら被覆材24に圧力を加えて塑性変形させ、被覆させる。なお、ペレット状の樹脂材料(ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(デュポン社の登録商標)の一般名称))を熱と圧力とで鉛プラグ26の外周部に被覆させてもよい。図2に示される被覆材24の厚みAは、鉛プラグ26が積層ゴム本体12へ食い込むのを抑えるためにA≧1mmとするのが好ましく、また、鉛プラグ26の直径Dとの関係では、A≦D/20とされるのが、好ましい。A≦D/20とすることで、鉛プラグ26の特性が大きく損なわれることがなく、また、使用時に被覆材24が鉛プラグ26の変形に追従し易くなるからである。
図1に示すように、鉛プラグ26と被覆材24との下端面及び上端面は、それぞれ円盤状のキャップ28、30で覆われており、このキャップ28、30は、図2に示すように、取付プレート20、22の中央孔21、23に溶融接着されている。キャップ28、30は、中央孔21、23に嵌合する形状とされ、図1に示すように、小径円柱部28A、30Aと大径円柱部28B、30Bとを備えている。
なお、上記の第1実施形態では、外周部を被覆材24で被覆された鉛プラグ26が積層ゴム本体12の通孔12Hの内部に圧入されているが、通孔12Hの内部に被覆材24を装着した後に鉛プラグ26を通孔12H及び被覆材24の内部に圧入してもよい。
次に、上記の実施形態の作用を説明する。
免震装置10は、地盤に設置される建物基礎(図示省略)と、建物本体(図示省略)との間に設置されて固定され、建物本体の荷重を支持する。
地震等による振動が作用していない通常時においては、積層ゴム本体12は、建物本体(図示省略)から上側取付プレート22に対して鉛直方向(矢印C方向)に作用する荷重を下側取付プレート20及び建物基礎(図示省略)に伝達支持する。
地震時においては、取付プレート20、22が互いに水平方向(矢印E方向)に相対移動する。このとき、積層ゴム本体12は、ばね機能を発揮して相対移動に追従しながら、せん断変形によって相対移動の振動エネルギーを一部吸収する。また、積層ゴム本体12がせん断変形すると、被覆材24が鉛プラグ26にせん断力を伝えるため、鉛プラグ26は、塑性変形する。この鉛プラグ26の塑性変形により、振動エネルギーは吸収され、振動は減衰される。ここで、被覆材24は、鉛プラグ26の塑性変形に追従するので、鉛プラグ26の塑性変形による振動エネルギー吸収の特性は、被覆材24がない場合とほぼ同様に発揮される。
また、鉛プラグ26の外周部に被覆材24が被覆されることで、免震装置10内において、鉛プラグ26がゴム16と金属板14との隙間(接着部分)に入り込むこと等(積層ゴム本体12への食い込み)を阻止することができるので、積層ゴム本体12からの鉛プラグ26の抜き取り時においては、鉛プラグ26を容易に抜き取ることができる。
次に、積層ゴム本体12から鉛プラグ26を抜き取る手順について説明する。なお、鉛プラグ26を抜き取るのは、免震装置10を廃棄する際である。環境問題に対応するため、鉛プラグ26と積層ゴム本体12との分離が必要となる。
積層ゴム本体12から鉛プラグ26を抜き取るには、まず、キャップ28、30と、取付プレート20、22との溶接を切ってキャップ28、30を外す。図1には、上キャップ30が外された状態が示されており、下キャップ28は、二点鎖線で外された状態が示されている。次に、図3に示すように、載置台32上に免震装置10を載置する。
載置台32は、図4に詳細に示すように、全体として略C字状とされている。載置台32の中央には、軸方向(図中の上下方向)に延びる収容部34が形成され、この収容部34には、抜き取られた鉛プラグ26(図1参照)を収容できるようになっている。収容部34は、一方に向かって開放されており、開放側は、収容部34内から外部へと鉛プラグ26(図1参照)を取り出し可能な取出部36とされている。
載置台32上では、図3に示すように、免震装置10の通孔12Hを載置台32の収容部34の上方に配置し、鉛プラグ26に対して上方から鉛直方向(矢印C方向)に押圧力を作用させる。このとき、被覆材24は、積層ゴム本体12から離脱可能な材質とされているので、被覆材24で被覆された鉛プラグ26は、鉛直方向(矢印C方向)に移動して積層ゴム本体12から抜き出される。ここで、下側の中央孔21に大径の大円孔部21Gを設けることで、下側の中央孔21を通孔12Hと同径の円柱状とした場合に比べて抜き出し時の摩擦抵抗を小さくすることができる。抜き出された鉛プラグ26は、載置台32の収容部34に収容されるので、取出部36から外部方向(矢印OUT方向)に取り出すことができる。
このように、鉛プラグ26の外周部に被覆材24を被覆させることで、鉛プラグ26を容易に抜き出すことができ、従来のように、大きくて重い積層ゴム本体12を切断加工するための大掛かりな設備が不要となる。
なお、本実施形態では、免震装置10が載置台32に載置された状態で鉛プラグ26が抜き取られたが、載置台32上に載置されなくてもよく、例えば、免震装置10が床上や地面に置かれた状態で鉛プラグ26を上方に抜き出してもよい。
また、本実施形態では、鉛プラグ26が被覆材24で被覆された状態で抜き取られているが、被覆材24に亀裂や破損が生じたり、鉛プラグ26の抜き取り時に被覆材24が積層ゴム本体12に食い込んだ状態となっている場合には、被覆材24に亀裂や破損が生じた状態で鉛プラグ26が抜き取られたり、被覆材24の一部が抜き取られずに残留した状態で鉛プラグ26が抜き取られたり、被覆材24が抜き取られることなく、その中の鉛プラグ26のみが抜き取られることになるが、これらのように抜き取られてもよい。
次に、免震装置の第2の実施形態を図5に基づき説明する。第1の実施形態では、鉛プラグ26の外周部に被覆材24が被覆される場合について説明したが、第2の実施形態は、軸方向両端面26A、26Bも含めて鉛プラグ26の全面を被覆材24が包囲する形態である。なお、第2の実施形態に係る免震装置の構成は、鉛プラグ26の全面を被覆材24で包囲する点が特徴であり、他の構成については、第1の実施形態とほぼ同様であるので、同一符号を付して説明を省略する。
図5に示すように、免震装置40では、鉛プラグ26の下端面26A、上端面26Bを含む全面が被覆材24で包囲されている。これにより、鉛プラグ26の下端面26A、上端面26Bが、キャップ28、30に圧着するのを避けることができるので、免震装置40からの鉛プラグ26の抜き取りが容易になる。
なお、上記の第1、第2の実施形態では、通孔12H及び中央孔21、23の数は、それぞれ1個とされているが、複数個であってもよく、また、各通孔12H内にそれぞれ被覆材24及び鉛プラグ26を挿入し、各中央孔21、23にそれぞれキャップ28、30を溶接してもよい。
また、通孔12H及び中央孔21、23の形状についても上記実施形態の例に限定されず、例えば、角柱状の孔や楕円柱状の孔であってもよい。同様に、鉛プラグ26の形状についても円柱状以外の形状であってもよく、例えば、角柱状、楕円柱状等であってもよい。
さらに、上記の第1、第2の実施形態では、キャップ28、30が、取付プレート20、22の中央孔21、23に溶接されているが、例えば、ボルト等の締結具でキャップ28、30を取付プレート20、22に固定してもよく、キャップ28、30の取り付けに溶接以外の固定手段を用いてもよい。
本発明の第1実施形態に係る免震装置を一部破断して示す斜視図である。(上キャップは、分離して示す。) 本発明の第1実施形態に係る免震装置を示す、図1の2−2線端面に相当する端面図である。 本発明の第1実施形態に係る免震装置において、積層ゴム本体から鉛プラグを抜き取る状態を示す、図2と同一方向から見た端面図である。(載置台は、図4の3−3線端面に相当する端面図である。) 積層ゴム本体から鉛プラグを抜き取る際に用いる載置台を示す斜視図である。 本発明の第2実施形態に係る免震装置を示す端面図である。
符号の説明
10 免震装置
12 積層ゴム本体
12H 通孔(貫通孔)
14 金属板
16 ゴム
24 被覆材
26 鉛プラグ(金属製のプラグ)
40 免震装置

Claims (1)

  1. ゴムと金属板とが交互に積層された積層ゴム本体と、
    前記積層ゴム本体に形成された貫通孔の内部に挿入された金属製のプラグと、
    前記プラグと前記積層ゴム本体との間に配設され、ポリテトラフルオロエチレンからなる可撓性の被覆材と、
    を有することを特徴とする免震装置。
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