JP4322335B2 - グリース組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はグリース組成物に関し、詳しくは滴点が高く、酸化寿命が長いグリース組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
グリースは、自動車、電気機器、建設機械、工作機械等の各種機械に広く使われているが、年々機械の小型化、高出力化、軽量化、保守簡略化が求められ、グリースの潤滑条件は益々厳しい状況となっている。機械の小型化、高出力化は同一出力でも寸法形状が小さくなることを意味するが、寸法形状が小さくなると、機械表面から放出される熱量が低下するため潤滑部分の温度上昇を招く。また軽量化は非金属のような熱を伝えにくい材料が用いられることになり、益々温度上昇を助長する結果となる。また、保守の簡略化は使用寿命の延長を意味するが、このため酸化寿命の延長とともに潤滑特性の延長が必要となる。このようなことから、滴点が高く、酸化寿命が長く、潤滑特性が長期間維持されるグリースが要望されている。
【0003】
これまで、種々の高滴点グリースが提案されている。例えば特公昭63−19560では、ヒドロキシ脂肪酸のリチウム塩と脂肪族ジカルボン酸のリチウム塩及び金属清浄剤を混合分散させたグリースが開示されているが、昨今の厳しい条件に適合するにはまだ不十分である。一方、潤滑特性の寿命延長の改良も提案されている。例えば、特開昭54−6002では、脂肪酸のリチウム石鹸と芳香族カルボン酸リチウム石鹸とを混合したグリース組成物が開示されている。しかし、芳香族カルボン酸リチウム石鹸としては、具体的には安息香酸リチウムであり、これを原料にして得られるグリースは、滴点がまだまだ不十分であり、潤滑特性の寿命も満足できるものではない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記観点からなされたもので、滴点が高く、酸化寿命が長く、潤滑特性が長期間維持されるグリース組成物を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基油に、増ちょう剤、酸化防止剤及びテレフタル酸リチウムを配合してなるグリース組成物であり、前記酸化防止剤が、ジチオカルバメート系酸化防止剤から選ばれる少なくとも一種およびアミン系酸化防止剤から選ばれる少なくとも一種を組合せたものであるグリース組成物であり、基油39〜97.6重量%、増ちょう剤2〜40重量%、酸化防止剤0.1〜10重量%、テレフタル酸リチウム0.3〜21重量%からなる。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。
本発明は、基油に、増ちょう剤、酸化防止剤及びテレフタル酸リチウム塩を配合してなるグリース組成物である。
ここで、本発明の用いる基油としては、特に制限はなく、従来から公知の鉱油、合成油のいずれも使用可能であり、例えばパラフィン系、中間基系あるいはナフテン系などの鉱油やこれらの鉱油を溶剤精製、水素化精製した精製鉱油、またはα−オレフィンなどの炭化水素系合成油、油脂類の他、合成エステル類、合成エーテル等を使用することができる。これらの中でも精製鉱油や合成油が好ましい。より具体的には、基油の%CAが1%以下、好ましくは、0.5%以下であることが望ましい。また、基油に含まれる硫黄分が20ppm以下、好ましくは10ppm以下であることが望ましい。なお、基油の粘度は、特に制限はないが、通常40℃で5〜500cst、好ましくは20〜400cstの中から適宜選択すればよい。
【0007】
次に増ちょう剤としては、特に制限がなく石鹸系、非石鹸系いずれも使用できる。石鹸系としては、脂肪酸をアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属等の金属水酸化物でケン化した金属石鹸が挙げられる。金属としては、ナトリウム、カルシウム、リチウム、アルミニウム等が挙げられ、脂肪酸としては、油脂やそれを加水分解してグリセリンを除いた粗製脂肪酸、ステアリン酸等のモノカルボン酸や、12−ヒドロキシステアリン酸等のモノヒドロキシカルボン酸、アゼライン酸等の二塩基酸が挙げられる。これらのうち、炭素数12〜24の脂肪酸が好適に使用できる。これらは、単独で用いても複合して用いてもよい。
【0008】
具体的には、12−ヒドロキシステアリン酸を用いたリチウム石鹸や、12−ヒドロキシステアリン酸とアゼライン酸を用いたリチウム複合石鹸が好適である。この増ちょう剤を配合するに当たっては、基油に脂肪酸と上記金属水酸化物を投入して、基油中でケン化させて配合してもよい。
この増ちょう剤は、グリース組成物中通常2〜40重量%、好ましくは3〜20重量%配合する。増ちょう剤は、ちょう度を付与するためのもので配合量が少なすぎると所望のちょう度が得られず、一方配合量が多すぎるとグリースの潤滑性が低下する。
【0009】
本発明では、テレフタル酸リチウムを配合する。ここで、テレフタル酸リチウム塩のリチウム基材としては、テレフタル酸と反応し塩を形成するものであれば特に制限はないが、一般には水酸化リチウムやその1水塩、あるいは炭酸リチウム等を用いることができる。なお、テレフタル酸に対する水酸化リチウム・1水塩の使用量は、テレフタル酸1当量に対し、通常水酸化リチウム・1水塩0.8〜1.2当量程度、好ましくは、概ね同一当量(テレフタル酸2重量部に対して水酸化リチウム・1水塩を約1重量部)とすることが好ましい。このテレフタル酸の配合により高滴点のグリースが得られる。
【0010】
これらテレフタル酸の配合量は、配合量が少なすぎると酸化寿命が改善されないことがあり、多すぎるとベアリング寿命に悪影響を及ぼすことがある。従って、テレフタル酸リチウム塩の配合量は、グリース組成物中通常0.3〜21重量%、好ましくは3〜9重量%である。
【0011】
本発明では、酸化防止剤を配合する。酸化防止剤としては特に制限はなく、例えばアミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤が挙げられる。
アミン系酸化防止剤としては、例えばモノオクチルジフェニルアミン;モノノニルジフェニルアミンなどのモノアルキルジフェニルアミン系、4,4’−ジブチルジフェニルアミン;4,4’−ジペンチルジフェニルアミン;4,4’−ジヘキシルジフェニルアミン;4,4’−ジヘプチルジフェニルアミン;4,4’−ジオクチルジフェニルアミン;4,4’−ジノニルジフェニルアミンなどのジアルキルジフェニルアミン系、テトラブチルジフェニルアミン;テトラヘキシルジフェニルアミン;テトラオクチルジフェニルアミン;テトラノニルジフェニルアミンなどのポリアルキルジフェニルアミン系、α−ナフチルアミン;フェニル−α−ナフチルアミン;ブチルフェニル−α−ナフチルアミン;ペンチルフェニル−α−ナフチルアミン;ヘキシルフェニル−α−ナフチルアミン;ヘプチルフェニル−α−ナフチルアミン;オクチルフェニル−α−ナフチルアミン;ノニルフェニル−α−ナフチルアミンなどのナフチルアミン系を挙げることができ、これらのなかでもモノアルキルジフェニルアミン系、ジアルキルジフェニルアミン系、ナフチルアミン系のものが好適である。
【0012】
フェノール酸化防止剤としては、例えば4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール);4,4’−ビス(2,6−ジ−ブチルフェノール);4,4’−ビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール);4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール);4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール);2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)等のビスフェノール系、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール;2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール;2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール;2,6−ジ−t−アミル−p−クレゾール等のアルキルフェノー系、2,6−ジ−t−ブチル−4−(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール);4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール);4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール);2,2’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール);ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルベンジル)スルフィド;ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフイド;n−オクタデシル−3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート;2,2’−チオ〔ジエチル−ビス−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕などを挙げることができる。これらの中で、特にビスフェノール及びアルキルフェノール系のものが好適である。
【0013】
金属塩系酸化防止剤としては、例えば、下記式(I)
【化1】
【0014】
(式中、MはNi、Zn等の金属であり、xは金属の価数であり、R1及びR2はそれぞれ炭素数3〜20のアルキル基またはアルケニル基を表し、R1及びR2は同一でも異なっていてもよい。)で表わされ、より具体的には、下記式(II)
【0015】
【化2】
【0016】
(式中、R1及びR2はそれぞれ炭素数3〜20のアルキル基またはアルケニル基を表し、R1及びR2は同一でも異なっていてもよい。)で表わされ、さらに具体的にはニッケルジブチルジチオカルバメート、亜鉛ジブチルジチオカルバメート等のカルバメート系酸化防止剤やジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアルキルジチオリン酸ニッケル等のリン酸金属塩系酸化防止剤等が挙げられる。
【0017】
これらの中でもアミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、カルバメート系酸化防止剤が好ましい。これらの酸化防止剤は、一種単独でまたは二種以上を混合して用いることができるが、二種以上の酸化防止剤を混合して用いるのが特に好ましい。二種以上の酸化防止剤を組み合わて用いる場合、その組み合わせには特に制限はないが、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤またはカルバメート系酸化防止剤のそれぞれの系から選ばれる酸化防止剤を二種以上組み合わせるのが好ましく、アミン系酸化防止剤とカルバメート系酸化防止剤のそれぞれ系から選ばれる酸化防止剤を併用するのが特に好ましい。
【0018】
酸化防止剤の配合量は、通常グリース組成物中0.1〜10重量%程度であり、好ましくは0.2〜5重量%である。配合量が少なすぎると、所望の酸化防止効果が得られず、多すぎると却って劣化が促進される。
本発明では、テレフタル酸リチウム塩と上記酸化防止剤、特に二種以上の酸化防止剤を併用して配合することにより、優れた酸化防止性能を発揮し、酸化寿命が長くなり、潤滑特性が長期間維持される。
【0019】
本発明のグリースは、例えば次のようにして製造することができる。まず基油に、増ちょう剤を配合する。増ちょう剤の配合にあたっては、基油に増ちょう剤原料の脂肪酸を混合し、80℃〜110℃で水酸化リチウム・1水塩等の金属水酸化物を投入して増ちょう剤を生成せしめて配合してもよい。このように基油に増ちょう剤を配合したのち、80℃〜110℃程度の温度でテレフタル酸と水酸化リチウム・1水塩を投入して190℃〜215℃に加熱した後、冷却し、酸化防止剤を投入する。なお、配合の過程で分散剤も添加することができる。
【0020】
ここで分散剤としては、例えばアルカリ金属やアルカリ土類金属のスルホネート、サリチレート、フェネートあるいはホスホネートを塩基性、中性を問わず使用することができる。ここでアルカリ金属としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウムが挙げられ、アルカリ土類金属としてはカルシウム、マグネシウム、バリウムが挙げられる。これらのうち、ナトリウム、バリウム又はカルシウムのスルホネートが好ましい。その他の分散剤としては、スルホン酸、コハク酸イミド、該コハク酸イミドをホウ素化合物で処理したホウ素化コハク酸イミド等も好ましく用いることができる。これらは単独で用いても複合して用いてもよい。
【0021】
この分散剤は、増ちょう剤を油中に均一に分散させたり、あるいはグリースの使用中に生じる油や不溶分を分散させるためのもので、少なすぎると効果が期待できず、多すぎると耐水性が悪化するという問題がある。従って、分散剤の配合量は、グリース組成物中通常0.1〜5重量%とする。
本発明のグリース組成物には、その他の添加剤を配合することができる。例えば、錆止め剤として、ソルビタンエステル、酸化ワックスやその金属塩、ラノリン酸石鹸などが挙げられ、極圧添加剤として、硫化油脂、硫化鉱油、フォスファイト、アシッドフォスフェート、フォスフェート、ジチオカルバミン酸やその金属塩、ジアルキルジチオフォスフェート金属塩等などが挙げられ、油性剤としては、脂肪酸またはそのエステルが挙げられる。その他、目的に応じて他の添加剤を配合すればよい。その例として染料、香料が挙げられる。これらの配合量は、通常グリース組成物中0.001〜10重量%である。なお、分散剤の中には、清浄剤や防錆剤として利用できるものがある。これら複数の機能を果たす添加剤を適宜組み合わせて使用することもできる。
【0022】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例,比較例における各種性能試験法
(1)ちょう度
JISK−2220に準拠して測定した。
(2)滴点
JISK−2220に準拠して測定した。
(3)加速酸化試験
JISK−2220に準拠し、試験温度125℃で測定した。即ち、グリース酸化安定度試験装置を用いて、調製したグリースに銅粉末5重量%を添加し、酸素を0.755MPa封入し、125℃で急激に圧力低下が見られるまでの時間を測定し、これを酸化寿命とした。
(4)ベアリング寿命試験(ASTM D 1741)
6306軸受を用いて規定荷重(スラスト:25lbs)、125℃、20時間運転/4時間停止サイクル、3500rpmで運転したとき、焼きついて運転不能となる時間数を測定した。
【0023】
〔実施例1〜6〕
反応槽に、第1表に示す配合割合で基油、増ちょう剤、分散剤を投入し、90℃まで攪拌しながら加熱し、次いで第1表に示す配合割合でテレフタル酸と水酸化リチウム・1水塩を投入して、190℃で処理したのち第1表に示す酸化防止剤を投入し、グリース組成物を得た。各々について上記試験を行った。結果を第1表に示す。
〔比較例1〕
テレフタル酸リチウムを配合しない場合について、第1表に記載したように配合し、実施例1と同様に試験を行った。結果を第1表に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
【発明の効果】
実施例と比較例、参考例から理解されるように、本発明のグリース組成物は、滴点が高く、しかも酸化寿命が長く、ベアリング寿命が長く潤滑特性が長期間維持される。このため軸受け用、汎用モーターグリース等として好適に使用することができる。
Claims (3)
- 基油に、増ちょう剤、酸化防止剤、テレフタル酸リチウムを配合してなるグリース組成物であり、前記酸化防止剤が、ジチオカルバメート系酸化防止剤から選ばれる少なくとも一種およびアミン系酸化防止剤から選ばれる少なくとも一種を組合せたものであるグリース組成物。
- 前記基油の%CAが1%以下である請求項1に記載のグリース組成物。
- 前記基油に含まれる硫黄分が20ppm以下である請求項1または2に記載のグリース組成物。
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