JP4321017B2 - 摩擦撹拌接合方法及び摩擦撹拌接合用回転ツール - Google Patents

摩擦撹拌接合方法及び摩擦撹拌接合用回転ツール Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,アルミ板同士を接合させるための摩擦撹拌接合方法に関し、特に詳細には、先端に円柱形状の先端ピンが突出した回転ツールを、回転させながら押圧することにより行う摩擦撹拌接合方法において、強い接合強度を得るための条件に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より,アルミ同士を接合させるために摩擦撹拌接合方法が利用されている。そして、従来より、先端に円柱形状の先端ピンが突出した回転ツールを、回転させながら押圧することによる摩擦撹拌接合方法が使われている。例えば、特開2001−321967号公報には、図14に示すように、点接合用の回転ツールとして、円柱形状の本体100の先端に円柱形状の先端ピン101が形成されたものが記載されている。これにより、2枚のアルミ板102,103とを点接合させる。このとき、アルミ板には、摩擦撹拌接合により圧入穴105が形成され、圧入穴105の周囲には、接合部104が形成される。
【0003】
接合部104は、アルミが再結晶温度である摂氏約400度以上、溶融温度である摂氏約600度以下の温度となり、2枚の板のアルミが半溶融状態で撹拌された部分である。この摩擦撹拌により、2枚のアルミ板102,103が接合される。
同公報にはまた、図15に示すように、先端ピンを2段以上に形成することが記載されている。すなわち、先端ピン106の本体100との中間に階段部107が形成されている。これにより、撹拌される部分が増大し、接合部104の範囲を拡大でき、接合強度を大きくすることができるとしている。
【0004】
また、特開2000−246465号公報には、図16に示すように、回転ツールの円柱形状の本体110に階段部113、さらに、先端ピン111が形成されている。階段部113及び先端ピン111の外周には、ネジが形成されている。
先端ピン111が階段部113の端面と連続する部分には、階段部113の端面側に凹部112が形成されている。凹部112は、先端ピン111の外周がそのまま入り込む形状で形成されている。同様に、階段部113が本体110の端面と連続する部分には、本体110の端面側に凹部114が形成されている。凹部114は、階段部113の外周がそのまま入り込む形状で形成されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら,従来の摩擦撹拌接合方法には、次のような問題点があった。
(1)自動車のボディ部品等の接合に摩擦撹拌接合を利用しようとしたときに、従来の方法では、接合強度が規格強度を満足することができない場合があった。そこで、本発明者らは、摩擦撹拌接合による強度に与える要因の分析を行い、何が接合強度に影響を与えるかという要因を突き止めた。
それによれば、特開2001−321967号公報等で主張されている、撹拌部分を増加させると、強度が増加するという仮説自体が、ある条件を必要としており、その条件下では正しいが、その条件から外れると正しくないことを発見した。その詳細については、実施の形態の項で説明する。
【0006】
(2)別の問題として、従来の摩擦撹拌接合を用いた点接合では、回転ツールをロボットに持たせて加工を行うため、回転ツールをアルミ板に対して垂直に押圧できない場合が起こる。その場合に、下側のアルミ板の下表面にバリが発生する問題があった。ここで、自動車のボディ部品等で下側のアルミ板の下面が、直接自動車ユーザーの眼に触れる場合があり、特に問題となる。
【0007】
本発明は,従来の摩擦撹拌接合方法が有する問題点を解決するためになされたものであり、アルミ板同士を十分強い強度で接合可能な、摩擦撹拌接合方法及び摩擦撹拌接合用回転ツールを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この課題の解決を目的としてなされた摩擦撹拌接合方法及び摩擦撹拌接合用回転ツールは、次の構成を有している。
(1)先端に円柱形状の先端ピンが突出した回転ツールを、回転させながら押圧することにより、アルミ板同士を接合させる摩擦撹拌接合方法であって、回転ツールが、先端ピンから外周方向に向かって所定角度の傾斜部を備える。
(2)(1)に記載する摩擦撹拌接合方法において,前記所定角度が5度以上25度以下であることを特徴とする。
【0009】
上記発明の作用を説明する。先端に円筒形状で外周にネジが形成された先端ピンが突出した回転ツールを、回転させながら押圧することにより、アルミ板同士を接合させる摩擦撹拌接合方法であって、回転ツールが、先端ピンから外周方向に向かって所定角度の傾斜部(傾斜角度5度〜25度)を設けているので、摩擦撹拌接合の工程において、2枚のアルミ板の接合界面が上に上昇しようとするのを妨げることができ、接合界面の巻き上げを防止して、接合強度を強くすることができる。
【0010】
(3)(2)に記載する摩擦撹拌接合方法において,前記回転ツールの押圧する時間を、前記アルミ板の残存板厚により管理することを特徴とする。
(1)または(2)の発明を実施した場合に、2枚のアルミ板を回転ツールで押圧する時間が長すぎると、接合界面の巻き上げが発生し、接合強度を弱めてしまう恐れがある。本発明では、回転ツールの押圧する時間を、アルミ板の残存板厚により管理しているので、接合界面での巻き上げの発生を防止することができ、接合強度を強くすることができる。
【0011】
(4)(1)乃至(3)に記載する摩擦撹拌接合方法において,前記回転ツールと、前記アルミ板の反対側にあって前記回転ツールの押圧力を受ける受けツールの表面が、半径100mm以上150mm以下の曲率を有することを特徴とする。
これによれば、回転ツール及び受けツールをロボットアームに取り付けて、2枚のアルミ板の摩擦撹拌接合を行ったときに、アルミ板に対して回転ツールの垂直が少しずれても、回転ツールと受けツールとでアルミ板を均一な力で保持しながら摩擦撹拌接合が行えるため、下側のアルミ板の下面にバリが発生することがない。
【0012】
(5)先端に円柱形状の先端ピンが突出した回転ツールを、回転させながら押圧することにより、アルミ板同士を接合させる摩擦撹拌接合で使用される摩擦撹拌接合用回転ツールであって、回転ツールが、先端ピンから外周方向に向かって所定角度の傾斜部を備える。
(6)(5)に記載する摩擦撹拌接合用回転ツールにおいて,前記所定角度が5度以上25度以下であることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下,本発明の摩擦撹拌接合方法及び摩擦撹拌接合方法用回転ツールを具体化した第1の実施の形態について,添付図面を参照して詳細に説明する。
回転ツール10の形状を図1に示す。円柱形状の本体13の下端面の中心に円柱形状の先端ピン14が形成されている。先端ピン14の外周にはネジが形成されている。先端ピン14の直径をd21とし、先端ピン14の高さをh21とする。先端ピン14が本体13と連続する面には、先端ピン14から外周方向に向かって下向きに凹となるように、所定角度θ1の傾斜部15が形成されている。所定角度θ1は、5度以上25度以下の角度であることが望ましい。この数値は実験により得たものであり、詳細については、後で説明する。
【0014】
そして、傾斜部15は途中から、下向きに凸となるように、傾斜部16が形成されている。傾斜部15と傾斜部16とにより、凹部が形成されている。
この凹部の深さをh22とする。また、凹部の最深部の直径をd22とする。アルミ板11の下には、受けツール17が設置されている。また、接合対象であるアルミ板12(回転ツール10側)の厚みをt1とし、アルミ板11(受けツール17側)の厚みをt2とする。
【0015】
先端ピン14の高さh21 の条件は、数1に示すとおりである。
【数1】
Figure 0004321017
【0016】
先端ピン14の高さh21 が0.8t1より大きくする必要があるのは、上板であるアルミ板12の板厚t1 の80%以上の深さまで、先端ピン14を差し込まなければ、アルミ板12とアルミ板11との界面で十分な発熱が生じないからである。また、総板厚t1+t2 より0.2mm以上先端ピンの高さが低くないと、先端ピン14がアルミ板11を突き抜けて穴があく恐れがあるからである。自動車のボディ部品の場合での利用においては、適用部位によれり、穴があくことは許されない場合がある。
【0017】
先端ピン14の直径d21 の条件は、数2に示すとおりである。
【数2】
Figure 0004321017
【0018】
ここで、tmin は、t1 とt2のうち、薄い方のアルミ板の板厚を示す。板厚の異なる2枚のアルミ板を接合した場合、強度試験を行うと一般的に薄板側が破壊するからである。自動車のボディ等で多用されている抵抗スポット溶接では、実績値として、生成される接合部の直径は、概ね3tmin 〜6tmin 程度である。摩擦撹拌接合で得られる接合穴の径は適正値で選べば、概ねd21+(1〜2mm)程度なので、本実施の形態では、d21の直径の条件を、2tmin 以上かつ、5tmin 以下としている。また、必要以上にd21を大きくすると、回転ツールの回転数等の適正条件を満たすための必要トルクも増大し、省エネ、設備のコンパクト化の要請に反するからである。
【0019】
凹部の最深部の直径d22 の条件は、数3に示すとおりである。
【数3】
Figure 0004321017
【0020】
凹部の最深部の直径d22 は、(d22−d21)/2 の間で主に接合強度を確保するため、最低(d22−d21)が2mm以上であることを必要とする。この関係と、d21の考え方から、凹部の最深部の直径d22 は、3tmin以上でかつ8tmin 以下であることが望ましい。然し、この条件は、必須条件ではない。
また、凹部の深さと先端ピン14の高さの和であるh23は、次の点を考慮して決定する。すなわち、先端ピン14の断面積と、凹部の断面積が等しくなるように凹部の深さ、h22、及び凹部の深さと先端ピン14の高さの和であるh23を決定すると良い。その理由は、先端ピン14で押しのけられたアルミを凹部で収納すれば、アルミが外にはみ出してばりを形成する恐れがないからである。
【0021】
アルミ板11の下面に接して受けツール17がある。受けツール17は、アルミ板12,11にかかる回転ツールの押圧力を受ける。受けツール17の上面は、半径Rの曲率を有する球面が形成されている。半径Rの値は、本実施の形態では、150mmとしている。
【0022】
次に、上記回転ツールを用いて摩擦撹拌接合を行う作用について説明する。 本発明者らは、2枚のアルミ板を点接合により上記回転ツールを用いて摩擦撹拌接合したときの強度について、以下のような分析を行った。
図2に、2枚のアルミ板11,12とを重ね合わせた状態で摩擦撹拌接合した後の状態の断面を図面で表現したものを示す。
摩擦撹拌により、先端ピン14の形状が接合穴21として残る。アルミ板11,12の接合穴21付近には、摩擦撹拌部23が形成されている。摩擦撹拌部23は、アルミ板11の先端ピン14近くのアルミが再結晶温度以上まで加熱され、半溶融状態となり、再び固形化したものである。アルミ板12とアルミ板11との間には、図中点線で示す接合界面22が形成されている。接合界面22の直径をHとする。
【0023】
接合穴21の直径は、ほぼ一定なので、接合界面22の直径の大きさにより、接合面積が決定する。接合強度は、この接合面積と、単位面積当たりの接合強度との積として求められる。しかし、実際の接合界面22の直径Hは、破壊試験を行わないと測定できないので、他に相関のある因子を探す必要がある。
【0024】
次に、摩擦撹拌接合の工程分析を説明する。図3の(a)〜(d)に工程を図で示す。(a)は、回転ツール10が回転を開始して未だアルミ板12と接触していない状態を示す。回転ツール10の回転数は、1500rpm〜3500rpmの範囲内の所定の回転数である。
【0025】
(b)は、回転ツール10をアルミ板12に押圧して摩擦撹拌を開始した状態を示している。押圧力は、3500N〜5100Nの範囲内の所定の力である。回転ツール10のうち、先端ピン14の先端部が始めにアルミ板12に接触し、先端ピン14の先端部とアルミ板12との間で摩擦熱が発生し、アルミ板12が再結晶温度である摂氏400度を越えると半溶融状態となり、回転ツール10の押圧力により、図(b)に示すように、半溶融状態のアルミが上側に盛り上がり、先端ピン14がアルミ板12内に入る。この状態では、先端ピン14の周囲のAで示す部分が加熱され、半溶融状態となっている。
【0026】
(c)は、摩擦撹拌がさらに進んだ状態を示している。先端ピン14の先端部がアルミ板11内に入り始めると共に、回転ツール10の本体13の傾斜部15及び傾斜部16がアルミ板12に接触している状態を示している。Aで示すアルミ板12の半溶融状態の領域が増大し、アルミ板11にもBで示す半溶融状態の領域ができている。この状態で、先端ピン14の外周に形成されているネジによりアルミ板12とアルミ板11との半溶融状態のアルミA、Bが撹拌される。
このとき、アルミ板12とアルミ板11との界面Cは、狭い範囲で形成されているに過ぎない。
【0027】
(d)は、さらに、摩擦撹拌が進み適度な状態を示している。先端ピン14がアルミ板11の所定の位置(図ではアルミ板11の板厚の中間地点付近)まで入り込み、接合界面Cが広い範囲となっている。この接合界面Cが接合径Hに相当する。
アルミ板12の上面は、傾斜部15及び傾斜部16の形状に倣う形状となっている。この状態で、傾斜部15が、接合界面Cが上向きに移動する力を押さえ込んでいる。接合界面Cが上に来すぎる状態を「接合界面の巻き上げ」と呼んでいるが、この現象が発生すると、アルミ板12の残存する肉厚が薄くなり、接合強度が低下してしまう場合がある。そのため、接合界面の巻き上げを発生させないことが、大切である。
【0028】
本実施の形態によれば、傾斜部15(傾斜角度5度〜25度)を設けているので、接合界面Cが上に上昇しようとするのを妨げることができ、接合界面の巻き上げを防止して、接合強度を強くすることができる。(a)〜(d)の状態までの工程に要する時間は、板厚1mm同士のアルミ板を接合する場合で、1.5秒から3秒程度である。
傾斜部15の傾斜角度θを変化させた実験の結果を図11に示す。横軸が傾斜部15の傾斜角度であり、縦軸がせん断強度である。せん断強度を高く保つためには、傾斜角度として5度以上25度以下であれば、良いことがわかる。
【0029】
図5に図3(c)の状態で摩擦撹拌を停止したときの摩擦撹拌接合の状態を示す。また、図6に図3(d)の状態で摩擦撹拌を停止したときの摩擦撹拌接合の状態を示す。図5では、接合界面Cの形成が不充分であり、接合径Hが小さく、接合面積が小さくて接合強度が低い。図6では、接合界面Cの形成が十分であり、接合径Hが適度であり、接合面積が大きくて接合強度が高い。
【0030】
図3(d)の状態から、さらに摩擦撹拌を進めると、図4に示すように、傾斜部15で接合界面Cの上昇を抑えきれなくなり、接合界面Cが上昇してしまう。そのときの摩擦撹拌接合の状態を図7に示す。接合界面Cが上昇してしまい、アルミ板12の残存する肉厚が小さくなりすぎていることがわかる。このため、接合強度が低下してしまう。従って、傾斜部15を設けることは、接合界面Cの上昇を抑えつつ、接合径Hを大きくすることにおいて、効果的であるが、先端ピン14の入り込む距離等で摩擦撹拌する時間を管理する必要がある。
【0031】
図8(c)に実験結果を示す。横軸は下側のアルミ板11の残存板厚(単位mm)を示し、縦軸はせん断強度を示している。実験は、アルミ板12の板厚が1.0mm、アルミ板11の板厚が1.2mmであり、本実施の形態の回転ツール10を用い、回転数2000rpm、押圧力3920Nで、加工時間1.5秒から5.0秒で行った。
点線SAで示す範囲内にあるデータは、加工時間が1.5秒以上3秒以下のものであり、点線SBで示す範囲内にあるデータは、加工時間が3.0秒を越えて5.0秒以下のものである。
加工時間が3.0秒を越えると、図4で示す状態となり、接合界面の巻き上げが発生し、SBで示すように接合強度が低下することがわかる。加工時間が3.0秒未満であれば、SAに示すように、適度な接合強度を得られることがわかる。
【0032】
次に、従来の先端ピンによる摩擦撹拌接合との対比実験について説明する。
図10に従来の図14で示す先端ピンで摩擦撹拌接合を行ったときのデータを示す。2つのアルミ板の板厚は共に2.0mm、各5個づつ実験し、アルミ板の材質を変更して4種類の実験を行った。各実験の条件は、図に記載している通りである。
横軸が実験の種類を示し、縦軸はせん断強度を示している。各実験結果は、Lが平均値を示し、Hが実際の値のばらつきを示している。また、Sは、点溶接における目標値を示している。3番目の種類でHの下限値が目標値Sを割っており、製品として不合格であることを示している。
図10と、同じアルミ板を用いて、全く同じ条件の実験を、本実施の形態の回転ツール10を用いて行った。その結果を図9に示す。図に示すように、全ての実験結果が、目標値Sを満足していることがわかる。
【0033】
次に、受けツール17の作用及び効果について説明する。実験結果を図12に示す。横軸が実験の種類を示し、縦軸はせん断強度及び目視試験による見栄えレベルを示している。各実験結果は、Lが平均値を示し、Hが実際の値のばらつきを示している。また、Sは、点溶接における目標値を示している。 また、折れ線Nの丸印は、右端の縦軸に示す見栄えレベルを示している。得点が高い方が見栄えが良いことを示している。見栄えレベルとしては、R=125mmが最高で、従来ツールである平面のものが最低である。
一方、5番目の種類でHの下限値が目標値Sを下回っている。
このデータより、見栄えとしては、R=100mm以上かつR=150mm以下であれば、見栄えとしては、問題ないと判断している。
【0034】
次に、第2の実施の形態について説明する。図13に第2の実施の形態の回転ツール20を示す。回転ツール20は、先端ピン24と、5度以上25度以下の傾斜角度θを持つ傾斜部23が形成されている。第1実施の形態と相違しているのは、傾斜部16に相当するものを持たない点である。先端ピン24の直径d31は、第1の実施の形態におけるd21と同様に決定する。第1の実施の形態と異なり、回転ツール20の外周を囲ってパイプ形状の押さえ機構21が取り付けられている。
【0035】
例えば、アルミ板12の端部付近で摩擦撹拌接合を行う場合、アルミ板12の端部が上向きに反ってしまう問題がある。それを避けるために、押さえ機構21により、アルミ板12を下向きに押さえつけているのである。第1の実施の形態には、押さえ機構21は不要であった。その理由は、傾斜部16が反り返ろうとするアルミ板12を下向きに抑える役割、すなわち、押さえ機構21と同じ作用を行っていたからである。
第2の実施の形態における傾斜部23の作用及び効果は、第1の実施の形態の傾斜部15と同じなので、詳細な説明を省略する。
【0036】
以上詳細に説明したように、本実施の形態の摩擦撹拌接合方法によれば、先端に円筒形状で外周にネジが形成された先端ピン14が突出した回転ツール10を、回転させながら押圧することにより、アルミ板同士11,12を接合させる摩擦撹拌接合方法であって、回転ツール10が、先端ピン14から外周方向に向かって所定角度の傾斜部15(傾斜角度5度〜25度)を設けているので、界面Cが上に上昇しようとするのを妨げることができ、接合界面の巻き上げを防止して、接合強度を強くすることができる。
さらに、本実施の形態の摩擦撹拌接合方法によれば、回転ツール10の押圧する時間を、アルミ板11の残存板厚により管理しているので、接合界面での巻き上げの発生を防止することができ、接合強度を強くすることができる。
【0037】
また、本実施の形態によれば、アルミ板12,11の反対側にあって回転ツール10の押圧力を受ける受けツール17の表面が、半径100mm以上150mm以下の曲率を有するので、回転ツール10がアルミ板12,11に対して垂直がずれたとしても、受けツール17の曲面が回転ツール10の押圧力を垂直に近い状態で受けることができるため、アルミ板11の下面でバリが発生する恐れを減少させることができる。
【0038】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。
例えば,本実施の形態では、傾斜部15、傾斜部23を一定の傾斜角度θとしているが、徐々に変化させてもよいし、また、曲面(例えばRを付けること。)で構成しても、ほぼ同じ効果を得ることができる。
また、本実施の形態では、先端ピン14を円柱形状として、外周にネジを形成しているが、円柱の側面に先端が細くなるように、少しテーパ(15度以上45度以下)を設けても良い。それにより、接合時間の短縮を図ることができる利点がある。
【0039】
【発明の効果】
本発明の摩擦撹拌接合方法によれば、先端に円筒形状の先端ピンが突出した回転ツールを、回転させながら押圧することにより、アルミ板同士を接合させる摩擦撹拌接合方法であって、回転ツールが、先端ピンから外周方向に向かって所定角度の傾斜部を設けているので、接合界面が上に上昇しようとするのを妨げることができ、接合界面の巻き上げを防止して、接合強度を強くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施の形態である回転ツール10の構造を示す断面図である。
【図2】摩擦撹拌接合されたアルミ板の状態を示す断面図である。
【図3】摩擦撹拌接合の工程図である。
【図4】摩擦撹拌接合の1工程を示す図である。
【図5】摩擦撹拌接合の1状態を示す断面図である。
【図6】摩擦撹拌接合の1状態を示す断面図である。
【図7】摩擦撹拌接合の1状態を示す断面図である。
【図8】実験結果を示すデータ図である。
【図9】本発明の回転ツール10を用いた実験結果を示すデータ図である。
【図10】従来の回転ツールを用いた実験結果を示すデータ図である。
【図11】傾斜角度と強度との関係を示すデータ図である。
【図12】見栄え評価の結果を示すデータ図である。
【図13】第2の実施の形態の回転ツール20の構成を示す図である。
【図14】従来の回転ツールの構成を示す図である。
【図15】従来の回転ツールの構成を示す図である。
【図16】従来の回転ツールの構成を示す図である。
【符号の説明】
10 回転ツール
11,12 アルミ板
13 本体
14 先端ピン
15 傾斜部
16 傾斜部
17 受けツール
C 接合界面

Claims (1)

  1. 先端に円柱形状の先端ピンが突出した回転ツールを、回転させながら押圧することにより、アルミ板同士を接合させる摩擦撹拌接合方法において、
    前記回転ツールが、前記先端ピンの根本から母材と反対側に傾斜面が形成されていること 前記傾斜面の所定角度が5度以上25度以下であること、
    前記回転ツールの押圧する時間を、前記アルミ板の残存板厚により管理することを特徴とする摩擦撹拌接合方法。
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