JP4317969B2 - 硬貨識別装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は硬貨識別装置に関し、特に投入された硬貨を一時保留しておき、返却操作に対してその保留しておいた現物を返却するエスクロ方式が適用された硬貨識別装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、硬貨識別装置においては、市場で発生している偽造硬貨を用いた釣り銭のすり替え防止用として、投入された硬貨を一時保留しておき、返却レバーによる返却操作に対して、その保留しておいた現物を返却する方式(エスクロ機能を付加した方式)が採用されている。
【0003】
すなわち、このようなエスクロ機能がない硬貨識別装置の場合、投入口から投入された硬貨は釣銭チューブに直接導かれる。このため、偽貨や変造貨を受け入れてしまった場合、これらの硬貨が釣銭チューブの最上位に収容される一方、最下位にある正貨が釣銭として返却されることになる。従来は、このような機構を利用し、偽貨や変造貨を投入して正貨を盗みとるといった犯罪が横行していた。この場合、その自動販売機で何回かの販売が繰り返されると、正当に商品を購入し釣銭を受け取るべき人が、それ以前に投入されすり替えられた偽貨や変造貨を受け取る可能性がある。
【0004】
従って、上記エスクロ機能は、本来、上記のように自動販売機等に偽貨や変造貨が投入され、そのまま返却されることによって、釣銭用の正貨を盗みとられる犯罪行為の対策のために開発されたものである。
【0005】
一方、このようなエスクロ機能を備えた硬貨識別装置においては、例えば停電等の不測の要因により電源が一時切断され、その電源再投入時に一時保留部に電源切断前の硬貨が残存している場合、その後の販売に支障を来たしてしまうため、これをどこかへ導くための初期処理が必要となる。その導き先としては、例えば返却口,自動販売機側金庫,釣銭チューブが考えられる。
【0006】
しかし、上記一時保留部の硬貨を返却口に導くとすると、硬貨投入,商品販売直後に電源を切断し、再投入すると、商品とともに投入硬貨がそのまま返却される可能性がある。これは、現行の自動販売機が、商品を販売した後に商品が出なかった場合に、投入された硬貨をそのまま返却するように構成され、商品を出し終えて次の操作に移行する準備動作の際に投入硬貨を振り分けるように構成されているためである。従って、このように商品の販売とその後に実行される振分け動作との間で電源が切断されると、商品と投入硬貨がともに購入者の手に渡ることになり、新たな犯罪につながりかねず、自動販売機としては実施不可能ということになる。
【0007】
そこで、上記一時保留部の硬貨の導き先を、自動販売機側金庫又は釣銭チューブから選択することになる。しかし、一時保留部に保留された硬貨が必ずしも正貨であるとは限られず、また、元来犯罪防止のためにエスクロ機能が考案されたわけでもあるから、電源投入時に一時保留部の硬貨を釣銭チューブに導くとすると、偽貨又は変造貨が投入されていた場合には、それらがいつか釣銭として払い出される可能性があるともいえる。このため、既存の硬貨識別装置においても、自動販売機側金庫に導くように制御するという考え方が一般的である。尚、例えばインベントリー操作時に、一時保留部の硬貨を自動販売機側金庫に導く硬貨処理装置も知られている(例えば特許文献3参照)。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−266232号公報(段落番号〔0010〕)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、電源投入時にエスクロ部分に残存した硬貨を自動販売機側金庫に導く方法は、現状の自動販売機の用途として用いるには特に問題はない。
【0010】
しかしながら、例えば近年コンビニエンスストアや各種学校等に設置が増加している複写機の料金清算機においては不都合が生じる。すなわち、このような料金清算機においては、投入金が内部に残ったまま電源が切断された場合には、電源再投入時にその残金を保証するという仕様が一般的である。しかし、このような料金清算機に対し、上述したエスクロ式の硬貨識別装置を適用すると、投入硬貨を一時保留部に残したまま電源を切断し、再投入した場合に、その硬貨を金庫側に導入してしまうため、返却が不可能となる。その結果、上記「残金を保証する」という仕様に対して不都合が生じることになる。
【0011】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、エスクロ方式が適用された硬貨識別装置において、電源再投入時にその電源切断前の残金等の金銭を保証できる硬貨識別装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明では、上記問題を解決するために、投入された硬貨の真贋と種類を識別する識別手段と、前記識別手段にて真と識別された硬貨を、識別結果に基づき対応する種類の釣銭チューブへ振り分ける振分け手段と、各釣銭チューブの収容量が予め設定された所定量以上であるか否かを検出する釣銭量検出手段と、前記釣銭量検出手段によっていずれかの釣銭チューブの収容量が前記所定量以上であることが検出されると、対応する種類の硬貨を金庫へ導くための金庫通路へ導出する金銭導出手段と、前記振分け手段により振り分けられた特定の種類の硬貨の経路上に設けられ、前記硬貨を一時的に保留する一時保留手段と、電源投入時に、前記一時保留手段に保留された硬貨を前記釣銭チューブに強制的に導入可能な金銭導入手段とを備え、返却操作がなされたときに、前記一時保留手段に保留された硬貨をそのまま返却するように構成された硬貨識別装置であって、前記金銭導入手段は、当該硬貨識別装置が設置される金銭処理装置の仕様に対応して、電源投入時において前記一時保留手段に保留された硬貨を前記釣銭チューブに強制的に導入するか否かを予め定めた仕様を記憶する記憶手段と、電源投入時に前記記憶手段を参照し、前記釣銭チューブに強制的に導入する仕様であることが確認された場合にのみ、当該保留された硬貨を前記釣銭チューブに強制的に導入制御し、前記釣銭チューブに強制的に導入する仕様であることが確認されない場合には、当該保留された硬貨を前記金庫通路に導出制御する制御手段とを備えたことを特徴とする硬貨識別装置が提供される。
【0013】
尚、上記「金庫」は、当該硬貨識別装置が適用される、例えば自動販売機や料金清算機などのような金銭処理装置の本体側に設けられていてもよいし、当該硬貨識別装置側に設けられていてもよい。
【0014】
このような硬貨識別装置では、電源投入時において一時保留手段に保留された硬貨が、予め設定された仕様によって釣銭チューブ又は金庫通路に選択的に導入・導出制御される。そして、その仕様は金銭処理装置の保有者によって決定されるため、その金銭処理装置の製造においては、その仕様に基づいて記憶手段の記憶内容を適宜設定すればよい。
【0015】
具体的には、本発明の硬貨識別装置を、例えば料金清算機のように電源再投入時にその電源切断前の残金等の金銭を保証する仕様の金銭処理装置に適用する場合には、上記記憶手段が保留された硬貨を釣銭チューブに強制的に導入制御するように記憶する。これにより、電源再投入時には、その釣銭チューブから金銭を払い出すことが可能になり、その電源切断前の残金等の金銭を保証することができる。
【0016】
一方、例えば従来の自動販売機のように電源再投入時に上記金銭を保証する仕様のない金銭処理装置に適用する場合には、上記記憶手段は保留された硬貨を前記金庫通路に導出制御するように記憶することになる。
【0017】
従って、本発明の硬貨識別装置によれば、記憶手段への記憶の仕方により、保留された硬貨を釣銭チューブに導入するタイプの金銭処理装置、及び金庫通路に導出するタイプの金銭処理装置の双方への適用が可能であり、硬貨識別装置としての汎用性を高めることができる。
【0018】
また、電源投入時以外においては、一時保留手段に保留された硬貨は、通常のように、返却通路,釣銭チューブ,又は金庫通路に導出されることになるため、エスクロ方式を採用する当該硬貨識別装置本来のエスクロ機能を担保することができ、その効果を発揮することができる。
【0019】
ただし、電源投入時において上記一時保留手段によって硬貨が保留されていないときにまで、上述した制御をする必要はない。
そこで、保留硬貨検出手段が、一時保留手段に保留された硬貨の有無を検出し、その保留硬貨検出手段が一時保留手段に保留された硬貨を検出した場合にのみ、上記制御手段が機能するようにしてもよい。
【0020】
このように構成することで、硬貨識別装置の処理負荷を軽減することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を明確にするために、本発明の好適な実施例を図面に基づいて説明する。
【0022】
[第1実施例]
本実施例は、本発明の硬貨識別装置を金銭処理装置としての自動販売機に適用したものであり、図1は当該硬貨識別装置の概略構成を示す断面図である。
【0023】
同図に示すように、本実施例の硬貨識別装置1は、図の上部に投入された硬貨を受け入れる硬貨受入口2を有し、その下部に投入された硬貨の種類と真贋を判定する硬貨識別部3(識別手段)を備えている。その硬貨識別部3の下部には、識別された硬貨が正貨の場合は受け入れ、偽貨の場合は返却口へ導くよう振り分けるゲートG0と、受け入れた硬貨を100円及び500円か10円及び50円かによって振り分けを行うゲートG1とを備えている。ゲートG1の下部には、このゲートG1によって10円又は50円として振り分けられた硬貨を金庫へ収金するかどうか振り分けるゲートG2R及び金庫へ収金されなかった硬貨を10円チューブ又は50円チューブへ振り分けるゲートG3Rを備えている。
【0024】
また、ゲートG1の下部には、このゲートG1によって100円又は500円として振り分けられた硬貨を、100円通路4又は500円通路5に振り分けるゲートG2Lを備えている。100円通路4には、その通路空間に対して進退可能にエスクロ突起部6,7が設けられ、500円通路5には、その通路空間に対して進退可能にエスクロ突起部8,9が設けられていて、それぞれ一時保留部(一時保留手段)を構成している。これら100円通路4及び500円通路5の下部には、一時保留された硬貨を返却口,金庫又は100円チューブ/500円チューブへ振り分けるゲートG2F,G3Lを備えている。そして、ゲートG3R,G2F,G3Lの下部には、10円チューブ,50円チューブ,100円チューブ,500円チューブ等の釣銭チューブ,及び10円硬貨又は100円硬貨の手動補給のための補助釣銭チューブ(SUB)からなる釣銭チューブ部10が配置されている。
【0025】
そして、一時保留部のエスクロ突起部7,9の近傍には、それぞれエスクロ硬貨検出センサ13,14(保留硬貨検出手段)が設けられており、一時保留部に硬貨が一枚でも保留されている場合には、これを検出する。
【0026】
また、釣銭チューブ部10の各釣銭チューブの上端近傍には、それぞれ釣銭量検出センサ15a〜15d(釣銭量検出手段)が設けられており、各釣銭チューブ内の硬貨が満杯となった場合に、これを検出する。そして、各釣銭量検出センサが硬貨の満杯状態を検出した際には、それ以降に投入される硬貨は、ゲートG2RやゲートG2Fによって金庫へつながる金庫通路に導出される。
【0027】
ここで、一時保留される100円/500円硬貨の通路構成について説明する。尚、500円硬貨の通路構成は100円硬貨の通路構成とほぼ同様の構成を有しているので、ここでは、100円硬貨の通路構成について説明する。図2は、硬貨識別装置1の100円硬貨の流れを示す概略側断面図である。尚、図2において、図1に示した構成要素と同じ要素については同じ符号を付してある。
【0028】
硬貨受入口2より投入された硬貨50は、硬貨識別部3を通ってその硬貨50の種類と真贋(正貨または偽貨)が判別され、その判別結果に応じて、ゲートG0が正貨/偽貨の振り分けを行い、偽貨ならば、返却口へ通じる通路へ導かれるようになっている。正貨の場合は、ゲートG2Lへ導かれ、ここで500円硬貨と100円硬貨との振り分けが行なわれる。ゲートG2Lの下流側は、100円硬貨の一時保留部になっていて、エスクロ突起部6,7がレバー11を介してエスクロソレノイド12により通路内に対して突入/待避を交互にできるようになっている。この一時保留部の下流側には、ゲートG2F,G3Lが設けられ、一時保留部より解放された100円硬貨を金庫,釣銭チューブ,又は返却口へ導くようにしている。
【0029】
また、硬貨識別装置1の背部には、上記各ゲート及びレバーを作動させるソレノイドの駆動制御を行うためのマイクロコンピュータ(以下「マイコン」という)20が内蔵されている。図3は、マイコン20を中心とした制御回路の電気的構成を表すブロック図である。
【0030】
このマイコン20は、所定の演算処理を行うCPU21,予め各種の数値やプログラムが書き込まれたROM22,演算過程の数値やフラグが所定の領域に書き込まれるRAM23,各種ディジタル信号が入出力されるI/Oインタフェース24,及びこれらの各機器がそれぞれ接続されるバスライン25等から構成されている。後述するフローチャートに示す処理は、上記ROM22に予め書き込まれた制御プログラムに基づいて実行される。マイコン20は、I/Oインタフェース24を介して自動販売機側のマイコンとシリアル通信可能に構成されている。
【0031】
そして、本実施例では、例えば停電等により電源が遮断されたために一時保留部に硬貨が保留されたまま電源が再投入された場合、仕様に応じてこの硬貨を金庫又は釣銭チューブに導くための切替回路が構成されている。
【0032】
すなわち、硬貨識別装置1の駆動用電源Vccには、抵抗R1と抵抗R2が順に直列接続可能に構成され(つまり、回路上にその抵抗の実装領域が確保されており)、これら抵抗R1と抵抗R2との中間に相当する箇所にCPU21の一つのポートAが接続されている。このポートAは、硬貨識別装置1の仕様を判断する端子として構成されている。本実施例では、抵抗R1として数(kΩ)程度のものを実装し、後述する仕様に合わせてさらに抵抗R2として0(Ω)(ジャンパーセン)を実装している。そして、この抵抗R2が実装された場合にポートAが「L」レベルとなり、抵抗R2が実装されなかった場合にポートAが「H」レベルとなるように設定されている。換言すれば、電源投入時においてポートAが「L」レベルの場合には抵抗R2が実装されていることが検出でき、ポートAが「H」レベルの場合には抵抗R2が実装されていないことが分かる。
【0033】
本実施例では、硬貨識別装置1を、例えば電源再投入時にその電源切断前の残金等の金銭を保証する仕様に適合させる場合には、一時保留部に保留された硬貨を釣銭チューブに強制的に導入制御するように抵抗R2を実装する。一方、電源再投入時に一時保留部に保留された硬貨をそのまま金庫通路に導出する仕様に適合させる場合には、抵抗R2の実装はしない。
【0034】
CPU21は、制御プログラムに基づき、電源投入時にポートAが「L」レベルであり、かつ、エスクロ硬貨検出センサ13,14から一時保留部に保留された硬貨(以下「エスクロ硬貨」ともいう)の検出信号が入力されている場合にのみ、そのエスクロ硬貨を釣銭チューブに強制的に導入制御する。一方、電源投入時にポートAが「H」レベルであり、かつ、エスクロ硬貨検出センサ13,14からエスクロ硬貨の検出信号が入力されている場合には、そのエスクロ硬貨を金庫通路に導出制御する。
【0035】
次に、電源投入毎においてCPU21が実行する電源投入時処理について、図4のフローチャートに基づいて説明する。
まず、硬貨識別装置1に電源が投入されると、上述した各種機器の所定の初期処理を実行した後(S110)、上記ポートAのレベルを検出して仕様の読込みを行う(S120)。
【0036】
続いて、エスクロ硬貨検出センサ13,14からの入力信号に基づき、一時保留部に硬貨があるか否かを判断する(S130)。このとき、一時保留部に硬貨がないと判断された場合には(S140:NO)、本処理を終了して通常の処理に移行する。尚、ここでいう「通常の処理」とは、硬貨識別装置1が通常の運用において電源投入直後以外に実行する硬貨の収金,釣銭の払出し,硬貨の返却等の処理を意味する(以下同様)。
【0037】
一方、S140にて、一時保留部に硬貨があると判断された場合には(S140:YES)、続いて、検出された仕様がエスクロ硬貨を釣銭チューブに導入するものであるか否かを判断し、釣銭チューブに導入するものである場合には(S150:YES)、エスクロソレノイド12等を駆動し、エスクロ硬貨を釣銭チューブに導入するように制御する(S160)。そして、この導入制御を一時保留部からエスクロ硬貨がなくなるまで継続し、エスクロ硬貨がなくなったと判断すると(S170:YES)、本処理を終了して通常の処理に移行する。
【0038】
一方、S150にて、検出された仕様がエスクロ硬貨を釣銭チューブに導入するものでない場合には(S150:NO)、エスクロソレノイド12を駆動し、エスクロ硬貨を金庫通路に導出するように制御する(S180)。そして、この導出制御を一時保留部からエスクロ硬貨がなくなるまで継続し、エスクロ硬貨がなくなったと判断すると(S190:YES)、本処理を終了して通常の処理に移行する。
【0039】
以上のように、本実施例の硬貨識別装置1では、記憶手段としての特定の抵抗R2が予め実装可能に構成されており、その抵抗R2の有無によって、電源投入時においてエスクロ硬貨を釣銭チューブに導入する仕様のものか、又は金庫通路に導出する仕様のものかを判断し、その判断に基づいてエスクロ硬貨の導入・導出制御を行う。
【0040】
このため、抵抗R2を実装又は未実装により、電源投入時におけるエスクロ硬貨の処理について、仕様に応じた機能を発揮することができる。
そして、硬貨識別装置として仕様に応じた装置をその回路構成から個別に製造する場合に比べ、装置としての汎用性を高めることができる。
【0041】
尚、本実施例において、マイコン20が制御手段に該当し、マイコン20及びゲートG0,G1,G2F,G2L,G2R,G3L,G3Rが、振分け手段に該当する。また、マイコン20及びゲートG2Fが金銭導出手段に該当し、マイコン20及びゲートG2F,G3Lが金銭導入手段に該当する。
【0042】
[第2実施例]
次に、本発明の第2実施例について説明する。本実施例は、硬貨識別装置の仕様を記憶する手段として不揮発性メモリを利用する点で上記第1実施例とは異なるが、硬貨識別装置の全体構成については第1実施例とほぼ同様であるため、同様の構成部分については同一の符号を付す等してその説明を省略する。図5は、本実施例の硬貨識別装置における制御回路の電気的構成を表すブロック図である。
【0043】
同図に示すように、制御回路を構成するマイコン220には、図3に示した第1実施例の構成に加え、さらに不揮発性メモリとしてのEEPROM226が設けられている。一方、図3に示したような抵抗R2を実装可能な回路は接続されていない。
【0044】
EEPROM226は、電源投入時において、エスクロ硬貨を釣銭チューブに強制的に導入するか否かの仕様を予め記憶している。本実施例においてこのEEPROM226への仕様の書き込みは、自動販売機側のマイコン230からシリアル通信にて入力される仕様設定指令に基づいて行われる。
【0045】
本実施例では、硬貨識別装置を、例えば電源再投入時にその電源切断前の残金等の金銭を保証する仕様に適合させる場合には、一時保留部に保留された硬貨を釣銭チューブに強制的に導入制御するように、EEPROM226の特定領域に「0」を書き込む。一方、電源再投入時に一時保留部に保留された硬貨をそのまま金庫通路に導出する仕様に適合させる場合には、EEPROM226の特定領域に「1」を書き込む。図6は、CPU21が実行する仕様設定処理を表している。
【0046】
同図に示すように、自動販売機側のマイコン230からの仕様設定指令及びその情報を受信したと判断すると(S210)、電源再投入時にエスクロ硬貨を金庫に振り分ける仕様か否かを判定する(S220)。
【0047】
このとき、金庫に振り分ける仕様であると判定されると(S220:YES)、EEPROM226に「1」を書き込んで、一連の処理を終了する。一方、金庫に振り分ける仕様でないと判定されると(S220:NO)、EEPROM226に「0」を書き込んで、一連の処理を終了する。
【0048】
そして、当該硬貨識別装置への電源投入時には、このときEEPROM226に記憶された仕様情報に基づき、図4のフローチャートに示した処理と同様の処理が実行される。
【0049】
その処理の詳細については省略するが、CPU21は、制御プログラムに基づき、電源投入時にEEPROM226を参照し、EEPROM226の上記特定の領域から「0」を読み出し、かつ、エスクロ硬貨検出センサ13,14からエスクロ硬貨の検出信号が入力されている場合にのみ、そのエスクロ硬貨を釣銭チューブに強制的に導入制御する。一方、EEPROM226の上記特定の領域から「1」を読み出し、かつ、エスクロ硬貨検出センサ13,14からエスクロ硬貨の検出信号が入力されている場合には、そのエスクロ硬貨を金庫通路に導出制御する。
【0050】
以上のように、本実施例の硬貨識別装置では、硬貨識別装置の仕様を記憶する記憶手段としてEEPROM226を利用し、その仕様の設定を自動販売機側のマイコン230からの仕様設定指令に基づいて行うようにした。
【0051】
このため、当該硬貨識別装置が設置される自動販売機の仕様に基づいて、EEPROM226に自動的に仕様が書き込まれ、電源投入時の処理が実行される。不揮発性メモリを採用するため、例えば自動販売機の製造メーカで仕様を書き込んで出荷することもできるし、硬貨識別装置を使用するユーザが後から仕様を選択的に書き込むこともできる。
【0052】
またこの場合、上記第1実施例のように抵抗R2を仕様に応じて実装する等の手間が省けるため、硬貨識別装置としての汎用性をより高めることができる。
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明の実施の形態は、上記実施例に何ら限定されることなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0053】
例えば、上記第1実施例では、切替回路として抵抗R2を実装する構成を示したが、この抵抗R2をスイッチング素子等によって代替してもよい。この場合、抵抗実装とは異なり、よりフレキシブルな仕様の選択が可能となる。
【0054】
また、上記第2実施例では、仕様の記憶手段としてEEPROMを設けた例を示したが、バックアップRAMその他の不揮発性メモリを採用することもできる。
【0055】
また、上記各実施例では、一時保留部にエスクロ硬貨検出センサ13,14を設けた構成を示したが、このようなセンサを設けずに、仕様の判別のみによってエスクロ硬貨の導入・導出処理を行うようにしてもよい。具体的には、図4のフローチャートにおいて、S130,S140,S170及びS190の処理を省略し、S160の導入処理及びS180の導出処理を、エスクロ硬貨が存在した場合に釣銭チューブに導入及び金庫通路に導出するのに十分な時間をもって実行することで実現できる。
【0056】
さらに、上記各実施例では、本発明を適用した金銭処理装置として自動販売機を例に挙げたが、本発明の硬貨識別装置は、料金清算機その他の種々の金銭処理装置に適用することが可能であることはもちろんである。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、電源投入時において一時保留手段に保留された硬貨が、予め設定され記憶された仕様によって釣銭チューブ又は金庫に選択的に導入制御される。
【0058】
このため、記憶手段への記憶の仕方により、保留された硬貨を釣銭チューブに導入するタイプの金銭処理装置、及び金庫通路に導出するタイプの金銭処理装置の双方への適用が可能であり、硬貨識別装置としての汎用性を高めることができる。
【0059】
従って、本発明によれば、例えば電源再投入時にその電源切断前の残金等の金銭を保証する仕様の金銭処理装置に適用することも可能である。このような仕様は、今後コンビニエンスストア等を中心に広く普及すると思われる複写機の料金清算機に利用されているため、本発明の構成は極めて有効となる。
【0060】
尚、現状では、このような料金清算機の市場には、エスクロ方式を採用した硬貨識別装置を使用した例が見られないが、これは料金清算機が屋内に設置されることが多いため、偽貨・変造貨の犯罪行為も少ないというのがその理由と考えられる。
【0061】
しかし、屋外の自動販売機の多くがエスクロ方式に移行し、犯罪者のターゲットも屋内用へ移行する可能性も十分に考えられる。そのような場合でも、本発明の硬貨識別装置は問題なく採用することができる。
【0062】
また、本発明の硬貨識別装置によれば、エスクロ硬貨が釣銭チューブ又は金庫に選択的に導入・導出制御されるため、現在硬貨識別装置の仕様として主流の自動販売機向けの仕様と互換性を保持することができる。このため、製造メーカ側での管理工数の低減にも寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例にかかる硬貨識別装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】第1実施例にかかる硬貨識別装置の概略構成を示す側断面図である。
【図3】第1実施例にかかる硬貨識別装置の電気的構成の概略を示すブロック図である。
【図4】第1実施例にかかる硬貨識別装置が実行する電源投入時処理を表すフローチャートである。
【図5】第2実施例にかかる硬貨識別装置における制御回路の電気的構成の概略を示すブロック図である。
【図6】第2実施例にかかる硬貨識別装置が実行する仕様設定処理を表すフローチャートである。
【符号の説明】
1 硬貨識別装置
2 硬貨受入口
3 硬貨識別部
4 100円通路
5 500円通路
6,7 エスクロ突起部(100円用)
8,9 エスクロ突起部(500円用)
10 釣銭チューブ部
G0,G1,G2F,G2L,G2R,G3L,G3R ゲート
12 エスクロソレノイド
13,14 エスクロ硬貨検出センサ
15a〜15d 釣銭量検出センサ
20,220 マイクロコンピュータ
R1,R2 抵抗
Claims (4)
- 投入された硬貨の真贋と種類を識別する識別手段と、
前記識別手段にて真と識別された硬貨を、識別結果に基づき対応する種類の釣銭チューブへ振り分ける振分け手段と、
各釣銭チューブの収容量が予め設定された所定量以上であるか否かを検出する釣銭量検出手段と、
前記釣銭量検出手段によっていずれかの釣銭チューブの収容量が前記所定量以上であることが検出されると、対応する種類の硬貨を金庫へ導くための金庫通路へ導出する金銭導出手段と、
前記振分け手段により振り分けられた特定の種類の硬貨の経路上に設けられ、前記硬貨を一時的に保留する一時保留手段と、
電源投入時に、前記一時保留手段に保留された硬貨を前記釣銭チューブに強制的に導入可能な金銭導入手段と、
を備え、返却操作がなされたときに、前記一時保留手段に保留された硬貨をそのまま返却するように構成された硬貨識別装置であって、
前記金銭導入手段は、
当該硬貨識別装置が設置される金銭処理装置の仕様に対応して、電源投入時において前記一時保留手段に保留された硬貨を前記釣銭チューブに強制的に導入するか否かを予め定めた仕様を記憶する記憶手段と、
電源投入時に前記記憶手段を参照し、前記釣銭チューブに強制的に導入する仕様であることが確認された場合にのみ、当該保留された硬貨を前記釣銭チューブに強制的に導入制御し、前記釣銭チューブに強制的に導入する仕様であることが確認されない場合には、当該保留された硬貨を前記金庫通路に導出制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする硬貨識別装置。 - さらに、前記一時保留手段に保留された硬貨の有無を検出する保留硬貨検出手段を備え、
前記制御手段は、前記保留硬貨検出手段が前記一時保留手段に保留された硬貨を検出した場合にのみ機能することを特徴とする請求項1記載の硬貨識別装置。 - 前記記憶手段は、前記制御手段に接続された回路に実装した特定の抵抗の有無によって前記仕様を記憶するものとして構成されたことを特徴とする請求項1記載の硬貨識別装置。
- 前記記憶手段は、前記制御手段により参照される不揮発性メモリとして構成されたことを特徴とする請求項1記載の硬貨識別装置。
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