JP4313011B2 - ナトリウム−硫黄電池モジュール用ヒーターの制御方法 - Google Patents

ナトリウム−硫黄電池モジュール用ヒーターの制御方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数のナトリウム−硫黄単電池から構成されるモジュールを所定の温度範囲に維持するために用いられるヒーターの制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ナトリウム−硫黄電池は、一方に陰極活物質である溶融金属ナトリウム、他方には陽極活物質である溶融硫黄を配し、両者をナトリウムイオンに対して選択的な透過性を有するβ−アルミナ固体電解質で隔離した高温二次電池である。このナトリウム−硫黄電池の電池反応による起電力は、約2V程度であるので、単電池では実用電圧には満たない。
【0003】
このため、所定数の単電池を断熱容器内に直並列に接続して収容したナトリウム−硫黄電池モジュールを形成して実用に供される。また、ナトリウム−硫黄電池は、運転期間中その機能及び性能を発揮するために所定の温度範囲に維持する必要があるため、断熱容器の内側面や底面に沿ってヒーターが配置され、当該ヒーターにて電池温度を適正な温度範囲に維持するようにしている。
【0004】
通常、このようなナトリウム−硫黄電池モジュールの運転方法としては、商用電力の負荷平準化を目的として夜間に所定時間充電し、昼間の所定時間に放電する充放電サイクルを毎日繰り返す方法が採られている。ナトリウム−硫黄電池の放電反応は発熱反応であるため、前記ヒーターの設定温度が270〜280℃と低くとも、電池自身の発熱によって、陽極側に生成する多硫化ナトリウムの組成が最も融点が高くなるNa24組成(融点285℃)に到達するまでは、多硫化ナトリウムの融点を超える温度を維持することができ、放電が可能である。
【0005】
しかし、充電反応は吸熱反応であるため、前記ヒーターの設定温度が285℃以下と低い場合には、陰極側へ戻るべきNaがNa24のような高融点化合物の状態で正極に残留するため充電回復性が低下する。このような状態となった場合は、次の放電時に目標とする放電電気量が得られないため、少なくとも充電時には、300℃以上に保持する必要がある。
【0006】
そして、従来においては、この充電時に必要な温度に基づいて、ヒーターの設定温度を決定し、そのヒーター設定温度(例えば305℃)を充放電サイクル全体に渡って変更することなく一定としていた(先行技術文献は特に見当たらない。)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のようにヒーターの設定温度が一定である場合には、電池温度が最も低下する充電期間の末期からヒーターに通電が開始され、本来は電池からの出力が期待される放電開始以後においても、しばらくの間はヒーターへの通電状態が継続してヒーター電力の消費が発生し、更にヒーターの消費電力量も含めた電池の充放電効率という点で十分に満足な結果が得られていなかった。また、本来電池から電力を出力したい放電中に、ヒーター電力を消費することから、AC端の電力(=電池電力−ヒータ電力)が低下し、負荷平準化用途として十分な特性を発現できないという問題点があった。
【0008】
更に、従来においては土・日曜日などの休日や長期休暇などナトリウム−硫黄電池モジュールを運転しない期間が有る場合においても、ヒーターの設定温度を通常の運転時の温度と同じにしていたため、前記期間において不要なヒーター消費電力が発生し、それによって年間トータルの電池効率が低下するという問題もあった。
【0009】
本発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ナトリウム−硫黄電池モジュールを所定の温度範囲に維持するために用いられるヒーターの消費電力量を低減させ、電池の効率を向上させるとともに、従来昼間の時間帯にまで及んでいたヒーターの電力消費期間を夜間に移行することにより、昼間の電池の放電可能電力を増加させることが可能なヒーターの制御方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、複数のナトリウム−硫黄単電池を接続して断熱容器に収容してなるナトリウム−硫黄電池モジュールを所定の温度範囲に維持するために用いられるヒーターの制御方法であって、前記ヒーターの少なくとも一部について、前記ナトリウム−硫黄電池モジュールの放電終了時から充電終了時までの前記ヒーターの設定温度に対して、充電終了時から放電開始時までの前記ヒーターの設定温度を下げることを特徴とするナトリウム−硫黄電池モジュール用ヒーターの制御方法(第1発明)、が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、複数のナトリウム−硫黄単電池を接続して断熱容器に収容してなるナトリウム−硫黄電池モジュールを所定の温度範囲に維持するために用いられるヒーターの制御方法であって、前記ナトリウム−硫黄電池モジュールを運転しない期間が連続して24時間以上有る場合に、当該期間の前記ヒーターの設定温度を、前記ナトリウム−硫黄電池モジュールの運転期間中の前記ヒーターの設定温度よりも下げるようにしたことを特徴とするナトリウム−硫黄電池モジュール用ヒーターの制御方法(第2発明)、が提供される。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1は、ナトリウム−硫黄電池モジュールの構造の一例を示す断面図である。ナトリウム−硫黄電池モジュール1は、複数のナトリウム−硫黄単電池3を互いに接続し、断熱容器5に収容して形成される。そして、このナトリウム−硫黄電池モジュール1が正常にその機能を発揮できるように、当該モジュール1を所定の温度範囲に維持するためのヒーターが断熱容器内に配置される。ヒーターは、通常、断熱容器の底面に沿って配された底面ヒーター9と、内側面に沿って配された側面ヒーター7とからなり、各ヒーターには、温度計測用の熱電対(図示せず)を近接配置して、温度管理を行っている。
【0013】
なお、断熱容器5内の間隙部には、▲1▼単電池の固定、▲2▼短絡防止、▲3▼活物質漏洩時の活物質吸収体、▲4▼非常時の自己消火用酸素遮断体等の目的で、セルベン、ケイ砂等の耐熱性、耐腐食性及び電気絶縁性を有する粒状防火材10が充填されている。
【0014】
この粒状防火材10は、輸送や電池の昇降温に伴う沈降を抑制するため、バインダーによって固化されていることが望ましいが、バインダーで固化せず、例えば加振によって事前に粒状防火材10の充填密度を高めることで沈降を抑制したり、断熱容器5内の上部、特に角部11に充填されている粒状防火材のみバインダーで固化することにより、使用バインダー量を削減するようにしてもよい。
【0015】
第1発明に係るヒーターの制御方法は、このようなナトリウム−硫黄電池モジュールにおける前記ヒーターの少なくとも一部について、ナトリウム−硫黄電池モジュールの放電終了時から充電終了時までのヒーターの設定温度に対して、充電終了時から放電開始時までのヒーターの設定温度を下げるようにし、好ましくは、放電開始時から放電終了時までのヒーターの設定温度を更に下げることを特徴とするものである。
【0016】
前述のとおり、ナトリウム−硫黄電池の充電反応が吸熱反応であるのに対し、放電反応は発熱反応であり、放電中は単電池自らが発熱するため、充電時に比して放電時はヒーターの設定温度を下げることが可能である。そこで、第一発明においては、ヒーターの少なくとも一部について、ナトリウム−硫黄電池モジュールの放電終了時から充電終了時まで(放電から充電に移行するまでの休止期間を加えた充電期間)のヒーターの設定温度に対して、充電終了時から放電開始時まで(充電から放電に移行するまでの休止期間)のヒーターの設定温度を下げ、より好ましくは、放電開始時から放電終了時まで(放電期間)のヒーターの設定温度を更に下げるようにした。
【0017】
こうすることにより、電池からの出力が期待される放電期間には、ヒーターに通電しなくても、電池の自己発熱によりヒーターの設定温度を維持できるようになり、ヒーターの消費電力を削減することが可能となって、ヒーターの消費電力量も含めた電池の効率が向上する。また、図2の模式図に示すように、従来は昼間の放電期間にまで及んでいたヒーターの電力消費期間(加熱期間)が、夜間である充電末へ移行することにより、昼間の時間帯の実質的な放電可能出力を増加させることとなる。
【0018】
なお、この制御方法を実施するに当たっては、例えば、ナトリウム−硫黄電池モジュールの放電開始時、放電終了時及び充電終了時を検知し、それら検知した時点でヒーターの設定温度を変更するという手法を採用することができる。また、ナトリウム−硫黄電池モジュールを一定のスケジュールで運転している場合には、当該スケジュールにおいて予め決められたナトリウム−硫黄電池モジュールの放電開始時、放電終了時及び充電終了時のそれぞれの時間に合わせてヒーターの設定温度を変更するようにしてもよい。
【0019】
第2発明に係るヒーターの制御方法は、前記のようなナトリウム−硫黄電池モジュールにおいて、ナトリウム−硫黄電池モジュールを運転しない期間が連続して24時間以上有る場合に、当該期間のヒーターの設定温度を、ナトリウム−硫黄電池モジュールの運転期間中のヒーターの設定温度よりも下げるようにしたことを特徴とするものである。
【0020】
ナトリウム−硫黄電池は高温動作型の電池のため、降温時に陽極活物質である硫黄が約120℃で凝固した後、更に温度が低下すると、硫黄、陽極容器、β−アルミナ固体電解質管といった電池構成部材の熱膨張係数の違いにより応力が発生し、変形が生じるおそれがある。
【0021】
しかし、陽極活物質である硫黄が凝固しない温度範囲であれば、こうした応力は発生しないため、土・日曜日などの休日や長期休暇などナトリウム−硫黄電池モジュールを運転しない期間が連続して24時間以上有る場合には、その期間中のヒーターの設定温度を、陽極活物質が凝固しない温度範囲において通常の運転期間中よりも低下させることができる。
【0022】
このようにナトリウム−硫黄電池モジュールを運転しない期間のヒーター設定温度を変更することにより、常にヒーター設定温度を一定としていた従来の方法に比して、前記期間におけるヒーターの消費電力を低減し、年間トータルの電池効率を向上させることが可能となる。
【0023】
なお、ヒーターの設定温度を低下させる範囲としては、前記のように陽極活物質である硫黄が凝固しない温度範囲であるとともに、次回の運転開始時までに速やかに放電可能な温度に戻せる温度範囲とすることが肝要であり、具体的なヒーター設定温度としては、例えば、土・日曜日などのように2日間運転を休止する場合には250℃程度まで、4日間以上運転を休止する場合には150℃程度まで低下させることが可能である。
【0024】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0025】
(実施例1)
図1に示すような構造のナトリウム−硫黄電池モジュール(単電池数320本、PCS=95%、360kWh放電)において、側面ヒーター7及び底面ヒーター9の設定温度を、▲1▼放電開始時から放電終了時まで、▲2▼放電終了時から充電終了時まで、▲3▼充電終了時から放電開始時まで、の各期間で表1のように制御しながら運転し、1充放電サイクル当たりのヒーター消費電力量、充放電効率、最高温度及び放電出力を測定した。その結果を表2に示す。
【0026】
(比較例1)
前記実施例1と同じナトリウム−硫黄電池モジュールにおいて、側面ヒーター及び底面ヒーターの設定温度を何れも305℃に固定して運転し、1サイクル当たりのヒーター消費電力量、充放電効率、最高温度及び放電出力を測定した。その結果を表2に示す。
【0027】
【表1】
Figure 0004313011
【0028】
【表2】
Figure 0004313011
【0029】
表2に示すとおり、ナトリウム−硫黄電池モジュールの放電終了時から充電終了時までのヒーターの設定温度に対して、充電終了時から放電開始時までのヒーターの設定温度を下げ、放電開始時から放電終了時までのヒーターの設定温度を更に下げるようにした実施例1は、ヒーター設定温度を充放電サイクル全体に渡って変更することなく一定とした比較例1に比して、ヒーター消費電力量が半減し、充放電効率が向上した。また、放電出力についても、放電中のヒーター電力量が0となったため、従来の出力44kW(=電池出力50kW−ヒーター電力6kW)から、本発明では出力50kWへと向上した。
【0030】
(実施例2)
前記実施例1と同じナトリウム−硫黄電池モジュールにおいて、土・日曜日の2日間に渡って運転を休止し、この期間の側面ヒーター及び底面ヒーターの設定温度を、何れも陽極活物質の凝固点より高い265℃に設定し、次の月曜日の0〜7時の間に側面ヒーターの設定温度が295℃、底面ヒーターの設定温度が305℃という通常運転時の設定温度に戻るように温度調整プログラミングを実施して、この2日間のヒーター消費電力量を測定した。その結果を表3に示す。
【0031】
(比較例2)
前記実施例1と同じナトリウム−硫黄電池モジュールにおいて、土・日曜日の2日間に渡って運転を休止し、この期間のヒーターの設定温度を通常運転時の設定温度から変更することなく、側面ヒーターの設定温度が295℃、底面ヒーターの設定温度が305℃となるようにして、この2日間のヒーター消費電力量を測定した。その結果を表3に示す。
【0032】
【表3】
Figure 0004313011
【0033】
表3に示すとおり、ナトリウム−硫黄電池モジュールの運転休止期間中のヒーターの設定温度を、運転期間中のヒーターの設定温度よりも下げるようにした実施例2は、運転休止期間中も運転期間中と同じヒーターの設定温度のままとした比較例2に比して、土・日曜日の2日間でヒーター消費電力量を約15kWh少なくすることができ、電池運用に関わる総合効率が約0.5%向上した。
【0034】
(実施例3)
前記実施例1と同じナトリウム−硫黄電池モジュールにおいて、土・日曜日と、4日間以上の長期休暇期間(12月30日〜1月6日、4月27日〜5月5日、8月12日〜8月16日)にて運転を休止し、この期間の側面ヒーター及び底面ヒーターの設定温度を、土・日曜日については250℃まで下げ、4日間以上の長期休暇期間については150℃まで下げ、それぞれ次の運転再開日の0〜7時の間に通常運転時の設定温度である300℃に戻るように温度調整プログラミングを実施して、休止期間中の放熱量を測定するとともに、このようにヒーター制御した場合のナトリウム−硫黄電池モジュールの年間効率を求めた。その結果を表4に示す。
【0035】
(比較例3)
前記実施例1と同じナトリウム−硫黄電池モジュールにおいて、土・日曜日と、4日間以上の長期休暇期間(12月30日〜1月6日、4月27日〜5月5日、8月12日〜8月16日)にて運転を休止し、この期間の側面ヒーター及び底面ヒーターの設定温度を、通常運転時の設定温度である300℃から変更することなく一定として、休止期間中の放熱量を測定するとともに、このようにヒーター制御した場合のナトリウム−硫黄電池モジュールの年間効率を求めた。その結果を表4に示す。
【0036】
【表4】
Figure 0004313011
【0037】
表4に示すとおり、ナトリウム−硫黄電池モジュールの運転休止期間中のヒーターの設定温度を、運転期間中のヒーターの設定温度よりも下げるようにした実施例3は、運転休止期間中も運転期間中と同じヒーターの設定温度のままとした比較例3に比して、休止期間の放熱量が大幅に減少させることができ、年間効率が向上した。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ナトリウム−硫黄電池モジュールを所定の温度範囲に維持するために用いられるヒーターの消費電力量を低減させ、それによって、電池運用に関わる総合効率を向上させることができる。また、従来昼間の時間帯にまで及んでいたヒーターの電力消費期間を夜間に移行することにより、昼間の電池の放電可能電力を増加させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ナトリウム−硫黄電池モジュールの構造の一例を示す断面図である。
【図2】 従来技術と本発明とにおいて、ヒーターの電力消費期間と電池の放電可能出力を比較した模式図である。
【符号の説明】
1…ナトリウム−硫黄電池モジュール、3…ナトリウム−硫黄単電池、5…断熱容器、7…側面ヒーター、9…底面ヒーター、10…粒状防火材、11…角部。

Claims (3)

  1. 複数のナトリウム−硫黄単電池を接続して断熱容器に収容してなるナトリウム−硫黄電池モジュールを所定の温度範囲に維持するために用いられるヒーターの制御方法であって、
    前記ヒーターの少なくとも一部について、前記ナトリウム−硫黄電池モジュールの放電終了時から充電終了時までの前記ヒーターの設定温度に対して、充電終了時から放電開始時までの前記ヒーターの設定温度を下げ、放電開始時から放電終了時までの前記ヒーターの設定温度を更に下げることを特徴とするナトリウム−硫黄電池モジュール用ヒーターの制御方法。
  2. 前記ナトリウム−硫黄電池モジュールの放電開始時、放電終了時及び充電終了時を検知し、それら検知した時点で前記ヒーターの設定温度を変更する請求項1に記載のナトリウム−硫黄電池モジュール用ヒーターの制御方法。
  3. 前記ナトリウム−硫黄電池モジュールを一定のスケジュールで運転し、当該スケジュールにおいて予め決められた前記ナトリウム−硫黄電池モジュールの放電開始時、放電終了時及び充電終了時のそれぞれの時間に合わせて前記ヒーターの設定温度を変更する請求項1に記載のナトリウム−硫黄電池モジュール用ヒーターの制御方法。
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