JP4306204B2 - 内燃機関の排気浄化装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は内燃機関の排気浄化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、燃焼室内で燃焼せしめられる混合気の空燃比がリーンに維持される内燃機関の排気通路内に、流入する排気ガスの空燃比がリーンのときに流入する排気ガス中のNOを蓄え、流入する排気ガスの空燃比が低下したときに排気ガス中に還元剤が含まれていると蓄えているNOを還元して蓄えているNOの量が減少するNO触媒を配置し、燃料を筒内に直接噴射するための燃料噴射弁を具備し、NO触媒内に蓄えられているNOを還元しNO触媒内に蓄えられているNOの量を減少させるために、燃料噴射弁から例えば排気行程中に燃料を噴射して燃焼室から排出される排気ガスの空燃比を一時的にリッチに切り替えるリッチスパイクを行うようにした内燃機関が知られている。
【0003】
この内燃機関でも、当然、機関出力を得るために例えば圧縮上死点付近で燃料噴射が行われるようになっており、従ってこの内燃機関では1燃焼サイクルに機関出力を得るための燃料噴射即ち主噴射と、リッチスパイクのための燃料噴射とが行われることになる。
【0004】
一方、燃料噴射弁はいわゆるコモンレールに連結されており、このコモンレール内の燃料圧に応じた噴射圧でもって、主噴射と、リッチスパイクのための燃料噴射とがそれぞれ行われる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、コモンレール内の燃料圧は主噴射が最適になるように設定されるのが一般的であり、従ってリッチスパイク時における燃料噴射圧はリッチスパイクのために必ずしも最適になっていない。リッチスパイクでは、燃焼が行われる主噴射の場合よりも燃料の微粒化を促進する必要があり、即ち主噴射のために最適な燃料噴射圧はリッチスパイクのために最適な燃料噴射圧よりも低いのが一般的である。
【0006】
なお、特開2001−98930号公報や特開2000−240429号公報には、NO触媒上流の排気通路内に配置された還元剤供給弁から還元剤を供給することによりリッチスパイクを行うようにした内燃機関において、還元剤供給弁における還元剤供給圧を増大させるようにした内燃機関が開示されている。しかしながら、これらは排気通路内に配置された還元剤供給弁に関わるものであり、上述した課題を何ら解決するものではない。
【0007】
そこで本発明の目的は、リッチスパイクのために最適な燃料噴射圧でもってリッチスパイクを行うことができる内燃機関の排気浄化装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために本発明によれば、燃焼室内で燃焼せしめられる混合気の空燃比がリーンに維持される内燃機関の排気通路内に、流入する排気ガスの空燃比がリーンのときに流入する排気ガス中のNOxを蓄え、流入する排気ガスの空燃比が低下したときに排気ガス中に還元剤が含まれていると蓄えているNOxを還元して蓄えているNOxの量が減少するNOx触媒を配置し、燃料を筒内に直接噴射するための燃料噴射弁を具備し、燃料噴射弁により機関出力を得るための主噴射を行うようにした内燃機関の排気浄化装置において、機関減速運転時に主噴射が一時的に停止されるようになっており、機関減速運転時の主噴射停止時に、燃料噴射弁から燃料を筒内に直接噴射して燃焼室から排出される排気ガスの空燃比を一時的にリッチに切り替えるリッチスパイクを行うと共に、リッチスパイク時における燃料噴射圧が主噴射時における燃料噴射圧よりも高くなるように燃料噴射弁の燃料噴射圧を制御し、リッチスパイクによる燃料は燃焼せず、NOx触媒内に流入する排気ガスの空燃比を検出するための空燃比センサを設け、該検出された空燃比に基づき、燃焼室から排出される排気ガスの空燃比が目標空燃比に一致するようにリッチスパイク時における燃料噴射圧又は燃料噴射時間を補正するようにし、前記検出された空燃比が目標空燃比よりもリーンのときには燃料噴射時間を保持しながら燃料噴射圧を増大させ、燃料噴射圧が許容最大圧まで増大されても検出された空燃比が目標空燃比よりもリーンのときには燃料噴射圧を許容最大圧に保持しながら燃料噴射時間を増大させるようにしている。
【0011】
なお、本明細書では排気通路の或る位置よりも上流の排気通路、燃焼室、及び吸気通路内に供給された空気と炭化水素HC及び一酸化炭素COのような還元剤との比をその位置における排気ガスの空燃比と称している。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1は本発明を圧縮着火式内燃機関に適用した場合を示している。なお、本発明は火花点火式内燃機関にも適用することもできる。
【0013】
図1を参照すると、1は機関本体、2はシリンダブロック、3はシリンダヘッド、4はピストン、5は燃焼室、6は筒内に燃料を直接噴射するための電気制御式燃料噴射弁、7は吸気弁、8は吸気ポート、9は排気弁、10は排気ポートを夫々示す。吸気ポート8は対応する吸気枝管11を介してサージタンク12に連結され、サージタンク12は吸気ダクト13を介して排気ターボチャージャ14のコンプレッサ15に連結される。吸気ダクト13内にはステップモータ16により駆動されるスロットル弁17が配置され、更に吸気ダクト13周りには吸気ダクト13内を流れる吸入空気を冷却するための冷却装置18が配置される。本発明による実施例では、スロットル開度はほぼ全ての運転領域において最大開度に維持され、要求負荷がかなり小さくなると最大開度よりも小さくされ、要求負荷がゼロになると小さなアイドル開度にされる。
【0014】
一方、排気ポート10は排気マニホルド19及び排気管20を介して排気ターボチャージャ14の排気タービン21に連結され、排気タービン21の出口は排気管20aを介して触媒コンバータ22に接続される。触媒コンバータ22内には、排気ガス中の微粒子を捕集するためのパティキュレートフィルタ22aが収容され、パティキュレートフィルタ22a上には後述するようにNO触媒23が担持されている。また、触媒コンバータ22は排気管20bに接続される。
【0015】
更に図1を参照すると、排気マニホルド19とサージタンク12とは排気ガス再循環(以下、EGRと称す)通路24を介して互いに連結され、EGR通路24内には電気制御式EGR制御弁25が配置される。また、EGR通路24周りにはEGR通路24内を流れるEGRガスを冷却するための冷却装置26が配置される。
【0016】
一方、各燃料噴射弁6は燃料供給管6aを介して燃料リザーバ、いわゆるコモンレール27に連結される。このコモンレール27内へは電気制御式の吐出量可変な燃料ポンプ28から燃料が供給され、コモンレール27内に供給された燃料は各燃料供給管6aを介して燃料噴射弁6に供給される。コモンレール27にはコモンレール27内の燃料圧を検出するための燃料圧センサ29が取付けられ、燃料圧センサ29の出力信号に基づいてコモンレール27内の燃料圧が目標燃料圧となるように燃料ポンプ28の吐出量が制御される。
【0017】
電子制御ユニット40はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス41によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)42、RAM(ランダムアクセスメモリ)43、CPU(マイクロプロセッサ)44、入力ポート45及び出力ポート46を具備する。燃料圧センサ29の出力信号は対応するAD変換器47を介して入力ポート45に入力される。排気管20aにはNO触媒23内に流入する排気ガスの空燃比を検出するための空燃比センサ48が取り付けられ、空燃比センサ48の出力電圧は対応するAD変換器47を介して入力ポート45に入力される。本発明による実施例では、NO触媒23内に流入する排気ガス中の酸素濃度を検出するための酸素濃度センサから空燃比センサ48が構成される。排気ターボチャージャ14のコンプレッサ15上流の吸気ダクト13aには、吸入空気質量流量Gaを検出するためのエアフロメータ49が取り付けられ、エアフロメータ49の出力電圧は対応するAD変換器47を介して入力ポート45に入力される。また、アクセルペダル50にはアクセルペダル50の踏み込み量に比例した出力電圧を発生する負荷センサ51が接続され、負荷センサ51の出力電圧は対応するAD変換器47を介して入力ポート45に入力される。ここで、アクセルペダル50の踏み込み量は要求負荷Lを表している。更に入力ポート45にはクランクシャフトが例えば30°回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ52が接続される。CPU44ではこの出力パルスに基づいて機関回転数が算出される。
【0018】
一方、出力ポート46は対応する駆動回路53を介して燃料噴射弁6、スロットル弁駆動用ステップモータ16、EGR制御弁25、及び燃料ポンプ28にそれぞれ接続される。
【0019】
図1に示される内燃機関では、圧縮上死点付近で機関出力を得るための燃料噴射即ち主噴射が行われ、この主噴射が機関減速運転時に一時的に停止される。このことを図2に示される主噴射制御ルーチンを参照しながら簡単に説明する。
【0020】
図2を参照すると、まずステップ100では主噴射が停止されていることを表すフラグXFCがセットされている(XFC=1)か否かが判別される。フラグXFCは通常リセットされている(XFC=0)ので次いでステップ101に進み、要求負荷Lがゼロであるか否か、即ち機関減速運転時であるか否かが判別される。L>0のときには処理サイクルを終了し、主噴射を継続する。これに対し、L=0のときには次いでステップ102に進み、機関回転数Nが第1のしきい値N1よりも高いか否かが判別される。N≦N1のときには処理サイクルを終了し、主噴射を継続する。これに対し、N>N1のときには次いでステップ103に進み、主噴射が停止される。次いでステップ104に進み、フラグXFCがセットされる(XFC=1)。
【0021】
フラグXFCがセットされたときにはステップ100からステップ105に進み、要求負荷Lがゼロよりも大きいか又は機関回転数Nが第2のしきい値N2(<N1)よりも低いか否か、即ち機関減速運転時でなくなったか又は機関回転数Nがかなり低くなったか否かが判別される。L=0かつN≧N2のときには処理サイクルを終了し、主噴射を継続して停止する。これに対し、L>0又はN<N2のときには次いでステップ106に進み、主噴射が再開される。続くステップ107ではフラグXFCがリセットされる(XFC=0)。
【0022】
ところで、パティキュレートフィルタ22aの隔壁の両側面及び細孔内壁面上にはNO触媒23がそれぞれ担持されている。このNO触媒23は例えばアルミナを担体とし、この担体上に例えばカリウムK、ナトリウムNa、リチウムLi、セシウムCsのようなアルカリ金属、バリウムBa、カルシウムCaのようなアルカリ土類、ランタンLa、イットリウムYのような希土類から選ばれた少なくとも一つと、白金Pt、パラジウムPd、ロジウムRh、イリジウムIrのような貴金属とが担持されている。
【0023】
NO触媒は流入する排気ガスの平均空燃比がリーンのときにはNOを蓄え、流入する排気ガスの空燃比が低下したときに排気ガス中に還元剤が含まれていると蓄えているNOを還元して蓄えているNOの量を減少させる蓄積還元作用を行う。
【0024】
NO触媒の蓄積還元作用の詳細なメカニズムについては完全には明らかにされていない。しかしながら、現在考えられているメカニズムを、担体上に白金Pt及びバリウムBaを担持させた場合を例にとって簡単に説明すると次のようになる。
【0025】
即ち、NO触媒に流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもかなりリーンになると流入する排気ガス中の酸素濃度が大巾に増大し、酸素OがO 又はO2−の形で白金Ptの表面に付着する。一方、流入する排気ガス中のNOは白金Ptの表面に付着し白金Ptの表面上でO 又はO2−と反応し、NOとなる(NO+O→NO+O、ここでOは活性酸素)。次いで生成されたNOの一部は白金Pt上でさらに酸化されつつNO触媒内に吸収されて酸化バリウムBaOと結合しながら、硝酸イオンNO の形でNO触媒内に拡散する。このようにしてNOがNO触媒内に蓄えられる。
【0026】
これに対し、NO触媒に流入する排気ガスの空燃比がリッチ又は理論空燃比になると、排気ガス中の酸素濃度が低下してNOの生成量が低下し、反応が逆方向(NO →NO+2O)に進み、斯くしてNO触媒内の硝酸イオンNO がNOの形でNO触媒から放出される。この放出されたNOは排気ガス中に還元剤即ちHC,COが含まれているとこれらHC,COと反応して還元せしめられる。このようにして白金Ptの表面上にNOが存在しなくなるとNO触媒から次から次へとNOが放出されて還元され、NO触媒内に蓄えられているNOの量が次第に減少する。
【0027】
なお、硝酸塩を形成することなくNOを蓄え、NOを放出することなくNOを還元することも可能である。また、活性酸素Oに着目すれば、NO触媒はNOの蓄積及び放出に伴って活性酸素Oを生成する活性酸素生成触媒と見ることもできる。
【0028】
図1に示される内燃機関はリーン空燃比のもとでの燃焼が継続して行われており、従ってNO触媒23内に流入する排気ガスの空燃比はリーンに維持されている。その結果、排気ガス中のNOはNO触媒23内に蓄えられる。
【0029】
時間の経過と共にNO触媒23内の蓄積NO量は次第に増大する。そこで本発明による実施例では、例えばNO触媒23内の蓄積NO量が許容量を越えたときにはNO触媒23内に蓄えられているNOを還元しNO触媒23内の蓄積NO量を減少させるために、NO触媒23内に流入する排気ガスの空燃比を一時的にリッチに切り替えるようにしている。
【0030】
詳しく説明すると、本発明による実施例では、機関減速運転時の主噴射停止時に、燃料噴射弁6から燃料を噴射して燃焼室5から排出される排気ガスの空燃比を一時的にリッチに切り替えるリッチスパイクを行い、それによりNO触媒23内に流入する排気ガスの空燃比を一時的にリッチに切り替えるようにしている。機関減速運転時には吸入空気量が少なくなっているので、燃焼室5から排出される排気ガスの空燃比をリッチに切り替えるために必要な燃料の量を低減することができる。
【0031】
また、主噴射が行われないので、1燃焼サイクル中に燃料噴射を2回行う必要がなく、しかも1燃焼サイクル中のあらゆる時期においてリッチスパイクを行うことができる。そこで本発明による実施例では、吸気行程又は圧縮行程にリッチスパイクを行うようにしている。
【0032】
次に、図3を参照して本発明による実施例を詳しく説明する。図3において矢印XはNO触媒23内の蓄積NO量が上述した許容量を越えたときを表している。次いで、要求負荷Lがゼロになり従って機関減速運転になったときに、機関回転数Nが第1のしきい値N1よりも高いので、主噴射が停止され、リッチスパイクが開始される。その結果、NO触媒23内に流入する排気ガスの平均空燃比AFEがリーンからリッチに切り替えられる。次いで、図3に示される例では、機関回転数Nが第2のしきい値N2よりも低くなって主燃料噴射が再開されると、リッチスパイクが停止される。
【0033】
図3に示されるように、リッチスパイクが行われているときには、コモンレール27内の燃料圧PFが主噴射のために最適なPMから、リッチスパイクのために最適なPRに切り替えられる。本発明による実施例では、このリッチスパイクのために最適なPRは主噴射のために最適なPMよりも高く設定されている。
【0034】
このようにすると、単に、リッチスパイクによる燃料の微粒化を促進することができるというだけでなく、NO触媒23内に蓄えられているNOを確実にかつ速やかに還元することができる。これは次の理由による。
【0035】
即ち、本発明による実施例では上述したように、吸気行程又は圧縮行程にリッチスパイクが行われる。この場合、リッチスパイクによる燃料は燃焼室内5内を拡散して空気と混合しながら、ピストンの上昇に伴って圧縮され、斯くして燃料温度が次第に上昇する。ところが、燃料が過濃になっているので燃料は燃焼せず、むしろ熱分解する。
【0036】
即ち、燃料中に含まれる図4(A)に示されるような直鎖状又は環状のHCは熱分解によって図4(B)に示されるような比較的低分子のHCに分解される。このように比較的低分子のHCはNO触媒23内で速やかに反応し、従ってNO触媒23内のNOを速やかに還元することが可能になる。
【0037】
更に注目すべきことは、微粒化された燃料が熱分解されると、酸素Oと結合したHCや一酸化炭素COが生成され、言い換えると燃料が周囲の酸素を取り込みながら分解されるということにある。このことはNO触媒23内に流入する排気ガス中に含まれる酸素分子の量が少なくなっているということを意味している。
【0038】
上述したように排気ガスの空燃比は空気量と燃料量との比であるので、NO触媒23内に流入する排気ガスの空燃比がリッチであるといっても、排気ガス中に比較的多くの酸素分子Oが含まれている場合がある。ところが、この多量の酸素分子OがNO触媒23内に流入すると、NO触媒23が局所的に還元雰囲気にならず、従ってNOを還元することができない恐れがある。NO触媒23内に流入する排気ガスの空燃比のリッチ度合いを大きくすれば、排気ガス中の酸素濃度を低下させることができるけれども、このためには多量の燃料が必要になる。
【0039】
また、概略的に言うと、酸素濃度センサ48はその排気ガス側電極表面に到達した酸素分子Oの量に応じた出力電圧を発生し、従って多量の酸素分子Oが酸素濃度センサ48に到達した場合には、酸素濃度センサ48により検出される排気ガスの空燃比が実際の空燃比よりもリーンになる。このため、この場合の酸素濃度センサ48の出力に基づいて排気ガスの空燃比を補正すると、実際の空燃比が過度にリッチになり、従って燃料が過剰に消費されることになる。
【0040】
これに対し、本発明による実施例では、NO触媒23内に流入する排気ガス中に含まれる酸素分子の量が低減されており、従って燃料消費を抑制しながら、NO触媒23内のNOを確実にかつ速やかに還元させることができる。
【0041】
ところで、本発明による実施例では、NO触媒23内に流入する排気ガスの平均空燃比AFEが目標リッチ空燃比AFTになるようにリッチスパイクが行われる。この目標リッチ空燃比AFTは機関運転状態例えば吸入空気量Ga及び機関回転数Nの関数として図5に示されるマップの形で、予めROM42内に記憶されている。
【0042】
更に本発明による実施例では、NO触媒23内に流入する排気ガスの実際の平均空燃比AFEが目標リッチ空燃比AFTに一致するように、リッチスパイク時における燃料噴射圧PR又は燃料噴射時間TAURが補正される。次に、このことを図6を参照しながら説明する。
【0043】
図6において矢印Yはリッチスパイクが開始された時期を示している。リッチスパイクが開始されると、酸素濃度センサ48によって検出される実際の空燃比AFEがリッチに切り替えられる。しかしながら、図6に示される例では、実際の空燃比AFEが目標リッチ空燃比AFTよりもリーンになっている。この場合、燃料噴射時間TAURを基本燃料噴射時間TRBに維持しながら、燃料噴射圧PRが初期値PRiから徐々に増大せしめられ、それによって燃料噴射量が徐々に増大せしめられる。ここで、基本燃料噴射時間TRBは吸入空気量がGaでありかつコモンレール27内の燃料圧即ち噴射圧がPFのときに、実際の空燃比AFEを目標リッチ空燃比AFTに一致させるのに必要な燃料噴射時間であって、これらGa,AFT,PFの関数として求めることができる(TRB=f(Ga,AFT,PF))。
【0044】
次いで、実際の空燃比AFEが目標リッチ空燃比AFTに一致すると、燃料噴射圧PRがそのときのPRに保持される。ところが、図6に示されるように燃料噴射圧PRが許容最大圧MAXまで増大されても、未だ実際の空燃比AFEが目標リッチ空燃比AFTよりもリーンのときには、燃料噴射圧PRを許容最大圧MAXに維持しながら、燃料噴射時間TAURが基本噴射時間TRBから徐々に増大せしめられ、それによって燃料噴射量が徐々に増大せしめられる。次いで、実際の空燃比AFEが目標リッチ空燃比AFTに一致すると、燃料噴射時間TAURがそのときのTAURに保持される。
【0045】
このように、リッチスパイク時における燃料噴射量を増大させるために、まず燃料噴射圧PRを増大させるようにしているので、上述した酸素量減少作用が促進され、従ってNO還元作用が促進される。
【0046】
図7及び図8のルーチンを参照しながら、上述したリッチスパイク補正制御を詳しく説明する。
【0047】
図7は初期化ルーチンを示している。このルーチンは内燃機関が初めて運転されるときに1回だけ実行される。図7を参照すると、まずステップ110ではリッチスパイク用燃料噴射圧PRが初期値PRiにされ、続くステップ111では噴射圧補正係数KPRが1.0とされ、続くステップ112では噴射時間補正係数KTAUが1.0とされる。
【0048】
図8は上述した燃料噴射制御を実行するためのルーチンを示している。このルーチンは予め定められた設定時間毎の割り込みによって実行される。
【0049】
図8を参照すると、まずステップ120ではリッチスパイクを行うための条件が成立したか否かが判別される。本発明による実施例では、NO触媒23内の蓄積NO量を還元しNO触媒23内の蓄積NO量を減少させるべきであり、かつNO触媒23が活性化しており、かつ吸入空気量Gaが許容下限量以下であり、かつ機関減速運転時の主噴射停止時であるときに、条件成立と判断され、それ以外は条件不成立と判断される。また、NO触媒23内の蓄積NO量が許容量を越えてから、NO触媒23内の蓄積NO量が下限値例えばゼロになるまで、NO触媒23内の蓄積NO量を還元しNO触媒23内の蓄積NO量を減少させるべきであると判断される。条件不成立のときには次いでステップ121に進んで通常制御が行われる。
【0050】
これに対し、条件成立のときにはステップ120からステップ122に進み、コモンレール27内の燃料圧PFがリッチスパイク用燃料噴射圧PRになるように燃料ポンプ28が制御される。続くステップ123では、目標リッチ空燃比AFTが図5のマップから算出される。続くステップ124では、基本燃料噴射時間TRBが算出される(TRB=f(Ga,AFT,PF))。続くステップ125ではリッチスパイク用燃料噴射時間TAURが算出される(TAUR=TRB・KTAU)。続くステップ126では燃料噴射弁6の燃料噴射時間TAUにリッチスパイク用燃料噴射時間TAURがセットされる。従って、例えば吸気行程又は圧縮行程において噴射圧PRでもって時間TAURだけリッチスパイクが行われる。
【0051】
続くステップ127では、NO触媒23内に流入する排気ガスの平均空燃比AFEが目標リッチ空燃比AFTよりもリーンか否かが判別される。AFE≦AFTのときには処理サイクルを終了し、AFE>AFTのときには次いでステップ128に進み、噴射圧補正係数KPRが一定値ΔPだけインクリメントされる。続くステップ129では、リッチスパイク用燃料噴射圧PRが更新される(PR=PR・KPR)。続くステップ130では、更新されたリッチスパイク用燃料噴射圧PRが許容最大圧MAXよりも高いか否かが判別される。PR≦MAXのときには処理サイクルを終了し、PR>MAXのときには次いでステップ131に進み、リッチスパイク用燃料噴射圧PRが許容最大圧MAXに抑制される。続くステップ132では、噴射時間補正係数KTAUが一定値ΔTだけインクリメントされる。
【0052】
これまで述べてきた本発明による実施例では、NO触媒23内に蓄えられているNOを還元しNO触媒23内の蓄積NO量を減少させるためのリッチスパイクに、本発明を適用している。しかしながら、NO触媒23内の蓄積SOX量を減少させるためのリッチスパイクに本発明を適用することもできる。
【0053】
即ち、排気ガス中にはイオウ分がSOの形で含まれており、NO触媒23内にはNOばかりでなくSOも蓄えられる。このSOのNO触媒23内への蓄積メカニズムはNOの蓄積メカニズムと同じであると考えられる。即ち、担体上に白金Pt及びバリウムBaを担持させた場合を例にとって簡単に説明すると、NO触媒23に流入する排気ガスの空燃比がリーンのときには上述したように酸素OがO 又はO2−の形で白金Ptの表面に付着しており、流入する排気ガス中のSOは白金Ptの表面に付着し白金Ptの表面上でO 又はO2−と反応し、SOとなる。次いで生成されたSOは白金Pt上でさらに酸化されつつNO触媒23内に吸収されて酸化バリウムBaOと結合しながら、硫酸イオンSO の形でNO触媒23内に拡散する。この硫酸イオンSO は次いでバリウムイオンBaと結合して硫酸塩BaSOを生成する。
【0054】
NO触媒23の温度を例えば600℃以上に維持しつつNO触媒23に流入する排気ガスの平均空燃比を理論空燃比又はリッチにするリッチスパイクを行うと、NO触媒23内の硫酸塩BaSOが分解してSOの形でNO触媒23から放出される。この放出されたSOは排気ガス中に還元剤即ちHC,COが含まれているとこれらHC,COと反応してSOに還元せしめられる。このようにしてNO触媒23内に硫酸塩BaSOの形で蓄えられているSOの量が次第に減少し、このときNO触媒23からSOがSOの形で流出することがない。
【0055】
また、上述した本発明による実施例では、空燃比センサ48を酸素濃度センサから構成している。しかしながら、空燃比センサ48を、排気ガス中に含まれる一酸化炭素COの濃度を検出するためのCOセンサから構成することもできる。
【0056】
【発明の効果】
リッチスパイクのために最適な燃料噴射圧でもってリッチスパイクを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】内燃機関の全体図である。
【図2】主噴射制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図3】本発明による実施例を説明するためのタイムチャートである。
【図4】燃料の状態を示す模式図である。
【図5】目標リッチ空燃比を示す線図である。
【図6】本発明による実施例を説明するためのタイムチャートである。
【図7】初期化ルーチンを示すフローチャートである。
【図8】燃料噴射制御ルーチンを示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…機関本体
5…燃焼室
6…燃料噴射弁
20a…排気管
23…NO触媒
27…コモンレール
28…燃料ポンプ

Claims (1)

  1. 燃焼室内で燃焼せしめられる混合気の空燃比がリーンに維持される内燃機関の排気通路内に、流入する排気ガスの空燃比がリーンのときに流入する排気ガス中のNOxを蓄え、流入する排気ガスの空燃比が低下したときに排気ガス中に還元剤が含まれていると蓄えているNOxを還元して蓄えているNOxの量が減少するNOx触媒を配置し、燃料を筒内に直接噴射するための燃料噴射弁を具備し、燃料噴射弁により機関出力を得るための主噴射を行うようにした内燃機関の排気浄化装置において、機関減速運転時に主噴射が一時的に停止されるようになっており、機関減速運転時の主噴射停止時に、燃料噴射弁から燃料を筒内に直接噴射して燃焼室から排出される排気ガスの空燃比を一時的にリッチに切り替えるリッチスパイクを行うと共に、リッチスパイク時における燃料噴射圧が主噴射時における燃料噴射圧よりも高くなるように燃料噴射弁の燃料噴射圧を制御し、リッチスパイクによる燃料は燃焼せず、NOx触媒内に流入する排気ガスの空燃比を検出するための空燃比センサを設け、該検出された空燃比に基づき、燃焼室から排出される排気ガスの空燃比が目標空燃比に一致するようにリッチスパイク時における燃料噴射圧又は燃料噴射時間を補正するようにし、前記検出された空燃比が目標空燃比よりもリーンのときには燃料噴射時間を保持しながら燃料噴射圧を増大させ、燃料噴射圧が許容最大圧まで増大されても検出された空燃比が目標空燃比よりもリーンのときには燃料噴射圧を許容最大圧に保持しながら燃料噴射時間を増大させるようにした内燃機関の排気浄化装置。
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