JP4306037B2 - Iii族窒化物半導体発光素子 - Google Patents

Iii族窒化物半導体発光素子 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
p形の伝導性を呈する酸化物結晶層からなる障壁層を含む、pn接合型ヘテロ接合構造のIII族窒化物半導体発光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の青色帯或いは緑色帯の発光を呈する発光ダイオード(LED)或いはレーザダイオード(LD)は、有機金属熱分解気相成長(MOCVD)法により、サファイア(α−Al23単結晶)基板上にエピタキシャル成長されたIII族窒化物半導体結晶層から主に構成されている(例えば、Jpn.J.Appl.Phys.,Vol.34、Part 2、No.10B(1995)、L1332〜L1335頁参照)。また、サファイアに代替して、炭化珪素(SiC)を基板とした窒化ガリウム(GaN)系エピタキシャル構造体からLDを構成する方法や(「応用物理」、第68巻第7号(1999)、797〜800頁参照)、珪素(Si)単結晶を基板とし、分子線エピタキシャル(MBE)法で成膜した窒化アルミニウム(AlN)を含む積層構造体から青色LEDを構成する例も知られている(Electron.Lett.,Vol.33、No.23(1997)、1986〜1987頁参照)。此処で云うIII族窒化物半導体とは、窒素(N)をV族構成元素として含む、一般式AlXGaYInZN(0≦X、Y、Z≦1、X+Y+Z=1)や、AlXGaYInZ1-QQ(0≦X、Y、Z≦1、X+Y+Z=1、記号Mは窒素以外の第V族元素であり、0≦Q<1)で表記されるIII−V族化合物半導体である。
【0003】
LED或いはLD等のIII族窒化物半導体発光素子に於いて、窒化ガリウム・インジウム(GaXIn1-XN:0≦X≦1)は、短波長可視光を放射するのに適する禁止帯幅を有するが故に、III族窒化物半導体発光素子の発光層として活用されている(特公昭55−3834号参照)。また、これらの発光素子の発光部は、高強度の短波長可視光を獲得する目的で、pn接合型のダブルヘテロ(略称:DH)構造から構成されているのが一般的である(例えば、上記のJpn.J.Appl.Phys.、Vol.34(1995)参照)。更に、インジウム組成(=1−X)を相違する複数の相(phase)からなる多相(multi−phase)構造からなるGaXIn1-XN(0≦X≦1)から発光層を構成して、高強度の発光を得る技術も開示されている(アメリカ合衆国特許US−5,886,367号参照)。
【0004】
従来のpn接合型のダブルヘテロ(DH)構造にあって、発光層を挟持するp形或いはn形クラッド層は、一般にp形或いはn形の窒化アルミニウム・ガリウム(AlXGa1-XN:0≦X≦1)から構成される。GaN系材料は不純物を故意に添加しない、所謂、アンドープ(undope)状態でn形の伝導を呈するため(特開昭53−20882号公報明細書参照)、n形のAlXGa1-XN層は成膜し易いのは周知である。一方、p形のAlXGa1-XN層はもっぱら、マグネシウム(Mg)をp形不純物としてドーピングする手段をもって成膜されている。しかしながら、その成膜時に成長層内に侵入する水素により、Mgが電気的に不活性化される(特許第2872096号公報参照)。このため、as−grown状態では低抵抗のp形AlXGa1-XN層が安定して得られないことが問題となっている(特開昭61−7671号公報明細書参照)。
【0005】
pn接合型のDH構造を構成するのに必要とされる低抵抗のp形AlXGa1-XN層を得るために、従来では、一旦、成膜したp形不純物がドーピングされたas−grown成長層に対し、成膜後に400℃を以上の温度で熱処理する手段が採用されている(特許第2540791号参照)。或いは、as−grown状態のp形不純物が添加されたAlXGa1-XN成長層を真空環境下に曝し、電子線を照射してp形不純物を電気的に活性化させる手段が採られている(特許第2500319号参照)。
【0006】
従来では、p形III族窒化物半導体成長層の表面側から発光を外部に取り出す構成が大勢である。即ち、発光層の上部に配置された例えば、p形AlXGa1-XAs(0≦X≦1)障壁層側から発光を取り出す構成となっている。このため、従来型のGaN系LEDにあっては、上部障壁層の上方に設ける電極は、外部への発光の取り出し効率を向上させるために、透明或いは透光性の材料から構成されている。例えば、p形不純物を添加したGaN系半導体層を介して酸化インジウム・錫(略称:ITO)からなる透明電極と、その透明電極上に金(Au)とニッケル(Ni)の重層構造からなる電極を設ける構成が開示されている(特許第2661009号参照)。AuとNiとの中間に酸化ニッケル(NiO)を挿入した構成からなる電極は透光性が増し、透光性電極としてより好都合であることが知れている(特許第2916424号参照)。また、p形GaNからなるコンタクト(contact)層を介在させてアルミニウム(Al)が添加された酸化亜鉛(ZnO)層をAu電極のオーミック接触層として配置する技術が開示されている(アメリカ合衆国特許US5,889,295号参照)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記の如く、エピタキシャル成長法により成膜されたIII族窒化物半導体成長層を利用してpn接合型の発光部を構成する手段は煩雑である。特に、低抵抗のp形III族窒化物半導体層を得るのに、エピタキシャル成長後にp形不純物を電気的に活性化させるための特別の処理を要することが煩雑性を増している。これが、III族窒化物半導体発光素子の生産効率を著しく低下させる一因ともなっている。
【0008】
例えば、GaXIn1-XN(0≦X≦1)発光層から出射される短波長の発光を透過するのに充分な性能を有し、併せて、低抵抗でp形の透明導電性の材料により、pn接合型ヘテロ接合構造の発光部を構成すれば、高輝度のIII族窒化物半導体発光素子が簡便に提供され得る。しかしながら、現状に於いて、この様な要求を満足させる構成は開示されていない。特に、高強度の発光をもたらすことが知られている、多相構造のGaXIn1-XN(0≦X≦1)からなる発光層について(英国特許GB2316226B参照)、発光の透過性に優れるp形の導電性材料を、良好な障壁特性を発現すべく接合させるための要件は未知である。
【0009】
本発明は、上記の従来技術が抱える技術上の問題点を克服し、高輝度のIII族窒化物半導体発光素子を簡便に且つ安定して提供することを目的としてなされたもので、特に、容易に形成可能なp形の伝導層を用いてpn接合型のヘテロ構造の発光部を都合良く構成するための要件を、特に、発光層の禁止帯幅を基準として提示するものである。
【0010】
また、本発明は、pn接合型ヘテロ構造のp形透光性導電性酸化物障壁層に関して、外部への発光の取り出し効率の低下を誘引する、p形導電性酸化物障壁層の経時的な透過率の低下を未然に防止できる積層構成を提示するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意努力検討した結果、本発明に到達した。即ち、本発明は、
[1]発光部として、n形のIII族窒化物半導体からなる障壁層と、インジウム含有III族窒化物半導体からなる発光層と、酸化物からなるp形障壁層とを含み、p形障壁層の少なくとも片側に酸化物半導体層が接合されていることを特徴とするIII族窒化物半導体発光素子、
[2]p形障壁層の両側に、同一組成の酸化物半導体層が接合されていることを特徴とする[1]に記載のIII族窒化物半導体発光素子、
[3]酸化物半導体層の禁止帯幅が、発光層から出射される発光波長に対応する禁止帯幅より大きいことを特徴とする[1]または[2]に記載のIII族窒化物半導体発光素子、
[4]酸化物半導体層が、発光層から出射される発光に対して、50%以上の透過率を有することを特徴とする[1]〜[3]の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体発光素子、
[5]発光層が、インジウム濃度を相違する複数相のIII族窒化物半導体(多相構造発光層)から構成されることを特徴とする[1]〜[4]の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体発光素子、
[6]多相構造発光層とp形障壁層との間に酸化物半導体層を有し、該酸化物半導体層の禁止帯幅が、多相構造発光層を構成する主体相の禁止帯幅以上であり、かつp形障壁層の禁止帯幅以下であることを特徴とする[5]記載のIII族窒化物半導体発光素子、
[7]発光層とp形障壁層との間に酸化物半導体層を有し、該酸化物半導体層が、n形の伝導を呈することを特徴とする[1]〜[6]のいずれか1項に記載のIII族窒化物半導体発光素子、
[8]p形障壁層が、銅を含む酸化物から構成されていることを特徴とする[1]〜[7]の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体発光素子、
[9]p形障壁層が、CuAlO2であり、発光層とp形障壁層との間の酸化物半導体層がIII族元素を含むZnOであることを特徴とする[1]〜[8]の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体発光素子、に関する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の、第1の実施形態に則るpn接合型のヘテロ構造発光部を図1に模式的に示す。その特徴は、pn接合型ヘテロ接合構造の発光部10を構成するp形障壁層101が、従来より用いられているp形III族窒化物半導体材料からではなく、p形の伝導性を呈する酸化物材料から構成されていることにある。n形或いはp形の発光層102は、窒化ガリウム・インジウム(GaXIn1ーXN:0≦X≦1)等のインジウム(In)含有III族窒化物半導体材料から構成できる。発光層102はまた、例えば、GaXIn1ーXN(0≦X≦1)を井戸(well)層とする単一或いは多重量子井戸構造から構成できる。発光層102を挟んで、p形酸化物からなる障壁層101と対向する位置には、n形のIII族窒化物半導体層からなるn形障壁層103が配置されている。n形障壁層103は、一般的には、例えば、Si等をドーピングした窒化アルミニウム・ガリウム・インジウム(AlXGaYInZN:0≦X、Y、Z≦1、X+Y+Z=1)から構成できる。n形障壁層103の内部に於ける重層構成或いはn形キャリアの濃度分布等は不問である。
【0013】
p形障壁層101は、発光層102内での「発光(キャリア)の閉じ込め」をより確実に達成するために、発光層102を構成するIII族窒化物半導体材料よりも大きな禁止帯幅を有し、p形導電性を呈する酸化物材料から構成する。例えば、酸化銅(Cu2O)や酸化ランタン・ストロンチウム・銅(La2-XSrXCuO4:X=1または2)(Mat.Res.Soc.Symp.Proc.,Vol.156(1989)、183〜188頁参照)などのペロブスカイト(perovskite)結晶から構成できる。また、酸化ランタン・カルシウム・ロジウム(La1-XCaXRhO3)、酸化ランタン・ストロンチウム・ロジウム(La1-XSrXRhO3)や酸化ランタン・バリウム・ロジウム(La1-XBaXRhO3)等の超伝導酸化物材料(「物性科学選書 電気伝導性酸化物(改訂版)」((株)裳華房、1997年8月10日発行、改訂第6版)、29頁参照)から構成できる。
【0014】
更に、銅(Cu)を構成元素として含有する酸化アルミニウム・銅、酸化ガリウム・銅、酸化ストロンチウム・銅などのデラフォサイト(delafossite)結晶構造の酸化物も好適に使用できる(「固体物理」、Vol.33,No.11(1998)、(937)〜(943)頁参照)。これらの酸化物材料からなるp形障壁層は、一般的な高周波スパッタリング法やレーザーアブレーション(laser−ablation)法を利用すれば成膜できる。p形の伝導性を呈する酸化物から障壁層を構成する本発明では、障壁層101は、正孔供給層を兼用する機能層であるから、正孔を充分に発光層102に供給するために、層厚は、好ましくは5nm以上とする。500nmを越える厚さとすると表面の平滑性は劣るものとなり、発光の外部への取り出し効率を低下させる不都合を招く。
【0015】
また、図1に示す如く、p形酸化物からなる障壁層101の少なくとも片側の101aには、障壁層101を構成するのとは別の、酸化物半導体層104が積層される構成とする。酸化物半導体層104は、p形障壁層101の表面保護膜として作用する。酸化物半導体層104を積層することにより、例えば、p形障壁層101内部からの酸素原子の逸脱に因る、組成の経時的な変化に起因する透過率の低下が防止できる効果がある。例えば、p形酸化物障壁層上に、酸化インジウム・錫(略称:ITO)膜を積層する例が挙げられる。また、p形酸化物障壁層上に酸化亜鉛(ZnO)膜とITO膜とを順次、重層する例がある。この構成例の様に、p形酸化物障壁層上に複数の酸化物半導体層を重層させて構成しても差し支えはない。
【0016】
酸化物半導体層104として好適な層厚は概ね、約20nmからの約1μmの範囲である。酸化物半導体層104は、一般的なスパッタリング(sputtering)法や化学的気相堆積(CVD)法により被着できるが、酸化物半導体層104の層厚が約1μmを越えると表面が凹凸状に乱雑となり、外部へ取り出す発光が散光されるため好ましくはない。また、厚膜とする程、発光を吸収する度合いが増し、高輝度のIII族窒化物半導体発光素子を得るには不利な状況となる。逆に、20nm未満の極薄膜では、p形障壁層101の表面全体を略均一に被覆するに至らず、従って、表面保護膜としての機能を充分に果たすに至らない。酸化物半導体層104は例えば、約1×10-4Ω・cm〜約5×10-3Ω・cm程度の抵抗率の導電性材料からもまた、アンドープのベータ(β)型酸化ガリウム(Ga23)などの高抵抗材料からも構成できる。
【0017】
図2は、p形の伝導性を呈する酸化物からなる障壁層101の両側101a,101bに、導電性の酸化物半導体層104、105が接合された実施形態を示す断面模式図である。
【0018】
p形障壁層101の上方に接合させた酸化物半導体層104が、p形障壁層101の表面保護層として作用するに対し、発光層102側の面101bに接合させて設ける酸化物半導体層105は、発光層102とp形障壁層101との禁止帯幅の差異を緩和するための機能層として作用する。従って、p形障壁層101の両側に酸化物半導体層104,105を配置すると、LEDの順方向電圧(所謂、Vf)或いはLDの閾値(所謂、Vth)を低減するのに有効となり、併せて、経時的に安定して発光層102からの発光を外部に取り出すのに好都合である、pn接合型ヘテロ接合構造の発光部20がもたらされる。
【0019】
第2の実施形態では、例えば、図2に掲示されるp形の伝導を呈する酸化物障壁層101の両側の面101a、101bには、同一の材料、同一組成からなる酸化物半導体層104、105を接合させる。p形障壁層101の両面101a、101bに同一の材料からなる酸化物半導体層104、105を配置すれば、p形障壁層101に印可される格子歪み或いは機械的な歪みが低減されるか、または不均等な歪みの印可が解消される効果ある。このため、正孔供給層としての作用を合わせ持つp形障壁層101の内部に於いて、歪みに因り正孔の活性化が削がれる確率が少なくなり、且つ、略均等に正孔を発生させられる利点がある。
【0020】
第3の実施形態に記す如く、酸化物半導体層105は、別の酸化物半導体層104と同じく、p形障壁層101と同様に発光層102から出射される発光の波長に対応する禁止帯幅を越える、禁止帯幅の酸化物材料から構成する。発光を透過できる発光透過層(ウィンドウ層)として活用できるからである。酸化物半導体層105は、p形障壁層101上の酸化物半導体層104と同じく、例えば、ZnO、酸化錫(SnO2)、酸化インジウム(In23)、或いはITOなどの複合酸化物から構成できる。酸化物半導体層105の層厚は、p形障壁層101と発光層102との禁止帯幅の差異を和らげための中間層であるから、表面のモフォロジー(morphology)を崩す程、厚膜とする必要はない。発光層102の表面の略全面を均等に被覆するために最低でも2nmは必要であるが、厚くとも約20〜50nmの膜厚であれば充分である。
【0021】
また、第4の実施形態に示す如く、酸化物半導体結晶105(図2参照)を、発光層102から放射される発光に対して、50%以上の透過率を有する透光性酸化物半導体結晶から構成すると、外部への発光の取り出し効率に優れたIII族窒化物半導体発光素子が提供される。第4の実施形態に係わる例えば、450nm〜550nmの波長領域に於いて50%以上の透過率を有する透光性酸化物半導体層105は、ZnOやITOなどのn形透明酸化物結晶材料から構成できる。この様なn形酸化物結晶では、キャリア濃度の増加と共に一般に透過率は低下するため、n形酸化物結晶のキャリア濃度は高くとも大凡、5×1021cm-3であるのが望ましい。
【0022】
本発明の第5の実施形態に係わる構成からなるpn接合型ヘテロ接合構造の発光部の断面構造模式図を図3に例示する。図1及び図2と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。第5の実施形態に於ける構成上の特徴は、発光層102が多相構造(multi−phase)のインジウム含有III族窒化物半導体から構成されていることにある。多相構造とは、In組成比を相違する複数の相(phase)から構成される結晶層である(特開平10−56202号公報明細書参照)。多相構造の結晶層にあって、体積的に大部分を占有するのが主体相(matrix−phase)Sである。また、主体相Sより占有する体積は小とするものの、インジウム組成(濃度)を大とするのが従属相(sub−phase)Tである。従属相Tは、通常は、主体相S内に散在する微結晶体として存在する。
【0023】
従属相Tの外形状を例えば、略球形で且つその直径を均一とするには、GaXIn1-XN(0≦X≦1)発光層102の成膜終了後に当該発光層102が被る昇温或いは降温、冷却サイクルに於ける昇温速度若しくは冷却速度の調節をもって達成できる(上記の英国特許GB2316226B参照)。この様な多相構造からなる発光層102からは高強度の短波長光が放射され得ることが既に明らかにされている(上記の英国特許GB2316226B参照)。従って、この様な内部結晶組織構成を有する発光層102を、p形障壁層101及びn形障壁層103で挟持すれば、高強度の発光をもたらすpn接合型ヘテロ構造の発光部30が簡便に構成できる利点がある。
【0024】
例えば、GaXIn1-XN(0≦X≦1)にあって、インジウム組成比が大となれば禁止帯幅はより小となる(特公昭55−3834号参照)。例えば、多相構造のGaXIn1-XN(0≦X≦1)からなる発光層102にあって、従属相Tを構成するGaX1In1-X1N(0<X1≦1)の禁止帯幅は、主体相SをなすGaX2In1-X2N(0≦X2<X1<1)のそれより小である。従属相Tを基準として、それよりも禁止帯幅を大とする酸化物半導体材料を選択したとして、必ずしも主体相Sの禁止帯幅を上回るとは限らない。これ故、従属相Tよりも禁止帯幅が大きくても、主体相Sを下回る禁止帯幅の酸化物半導体層を接合させると、多相構造発光層102とp形酸化物層101との中間では伝導帯或いは価電子帯のポテンシャルの”落ち込み”が発生するため、キャリア(担体)に及ぼすクラッド(障壁)作用が弱体化し、発光層102への「キャリアの閉じ込め」が充分ではなくなる。従って、高強度の発光を得るに不都合となる。また、p形障壁層101との禁止帯幅の差異も主体相Sを基準とした場合よりも、より大きくなる場合があり、Vf或いはVthを徒に増加させる不都合を招く。よって、第6の実施形態では、禁止帯幅を相違する成分からなる多相構造の発光層102に接合させる酸化物半導体層105は、主体相Sの禁止帯幅を基準にして、それよりも禁止帯幅を大とする酸化物半導体材料から構成し、かつ、p形障壁層101の禁止帯幅以下とする。p形障壁層101を越える禁止帯幅の酸化物材料から構成すると、LEDの順方向電圧を徒に増加させる不都合を招く。
【0025】
また、図3を利用して第7の実施形態を説明する。p形の伝導を呈する酸化物障壁層101と、インジウム含有III族窒化物半導体発光層102との中間に配置する上記の酸化物結晶からなる酸化物半導体層105を、p形障壁層101を発光層102上に例えば、スパッタリング法で被着させる際の損傷から発光層102を保護するための単なる表面保護層として利用する場合、酸化物半導体層105は、p形或いはn形の伝導を呈する酸化物半導体結晶材料から構成できる。
【0026】
この場合、酸化物半導体層105を、n形の伝導を呈する酸化物半導体材料から構成すると、発光層102との接合界面102a近傍の領域に都合良くキャリア(特に、電子)を蓄積させることができる。局在したキャリアは、高強度の発光を帰結するため、高輝度のIII族窒化物半導体発光素子を得るのに有効となる。
【0027】
第8の実施形態は、図3に掲示するpn接合型ヘテロ接合発光部30を例にして説明をする。p形の伝導を呈する酸化物障壁層101を、Cuを構成元素とする酸化物結晶から構成することを特徴としている。従来の研究例が教示する如く、銅を構成元素として含む透明導電性酸化物の多くが低抵抗のp形伝導性を呈することから(上記の「固体物理」、Vol.33(1998)参照)、p形障壁層101として好適に利用できる。また、従前のp形III族窒化物半導体結晶層を構成するために、成膜終了後に同層内のp形不純物を電気的に活性化させるための煩雑な熱処理工程(特開平5−183189号公報明細書参照)を行わなくても低抵抗のp形伝導層が簡便に提供できる。このため、正孔供給層が簡便に形成できる。
【0028】
銅を構成元素とする酸化物結晶には、上記のCu2Oや酸化アルミニウム・銅(CuAlO2)などのデラフォサイト(delafossite)結晶型(CuMO2:Mは3価の金属イオン)があるが、特に、第9の実施形態では、p形の伝導を呈する酸化物障壁層101をCuAlO2から構成することを特徴とする。
【0029】
特に、CuAlO2は、一般的なスパッタリング法或いはレーザーアブレーション法により、抵抗率にして1Ω・cmの低抵抗p形結晶層が簡便に成膜できる(“Nature”、Vol.389、No.6654(1997)、939〜942頁参照)。従って、CuAlO2を用いた場合、成膜後に別途、低抵抗化のための煩雑な後工程を要さずに、p形電極層を構成するに足るp形酸化物層が得られる利点がある。また、CuAlO2は、室温で禁止帯幅を約3.5eVとする透明導電性結晶である(上記の“Nature”、Vol.389参照)。従って、CuAlO2からは、GaXIn1-XN(0≦X≦1)発光層102から放射される近紫外帯域から緑色帯域の発光を透過するに充分な発光透過層(ウィンドウ層)が構成できる。また、禁止帯幅を約3.4eVとするGaNとの禁止帯幅の差異は約0.1eVとなる。従って、CuAlO2からは、例えば、GaNを主体相とする多相構造のGaXIn1-XN(0≦X≦1)発光層に対して、適度の障壁の高さをもって接合できるp形障壁層101が構成される。故に、ウィンドウ層を兼用するp形障壁層101が構成できる。
【0030】
また、第9の実施形態では、p形障壁層101の接合させる酸化物半導体層がIII族元素が添加されたZnOから構成することを特徴とする。ZnOは、室温での禁止帯幅が約3.35eVであり(寺本 巌著、「半導体デバイス概論」(培風館、1995年3月30日初版発行)、28頁参照)、インジウム含有III族窒化物半導体発光層102から放射される発光を充分に透過できる。また、透過率が高い上に、n形の伝導を呈するII−VI族化合物半導体の一種であるため(上記の「半導体デバイス概論」、25頁参照)、第7の実施形態に記す発光層102とp形障壁層101との中間に配置するn形酸化物半導体層として好適に利用できる。
【0031】
本発明に係わる発光素子は、上記の第1〜9の実施形態に於けるp形障壁層、或いはp形障壁層上に設けた酸化物半導体層の上にp形台座電極を被着させて構成する。本発明のp形障壁層は、それ自体、障壁層であり、正孔供給層であり、また、透光性の電極形成層となり得る。また、水平方向に素子動作電流を拡散できる程、低抵抗な導電層であるため、従来技術の如くp形III族窒化物半導体層の表面に敢えて、Au−Ni或いはAu−NiO−Auの如くの透過性を悪化させる金属被膜を設けて電流拡散を果たす必要はない(特許第2916424号参照)。p形台座電極は、公知のNi、NiO、Au−亜鉛(Zn)合金、Au−Be合金、In−Zn合金などから好適に構成できる。
【0032】
p形の伝導を呈する障壁層の上に、保護膜としてn形の伝導を呈する酸化物半導体層或いは導電性に乏しく高抵抗の酸化物半導体層が冠されている場合、p形台座電極は、その酸化物半導体層の一部を貫通させて、p形障壁層の表面に接触させて設置する。p形障壁層とn形酸化物半導体層との接合により、pn接合が形成されている領域上に台座電極を設置すれば、素子動作電流の流通が阻止されるからである。
【0033】
一方、n形のオーミック電極は、例えば、Ni、NiO、In、Sb、酸化アンチモン、Au−ゲルマニウム(Ge)合金、Au−錫(Sn)合金、In−Sn合金から構成できる。珪素(Si)或いはSiCまたはGaPなどの導電性結晶を基板とする場合では、基板の裏面側に設けることができ利便である。
【0034】
【実施例】
(実施例1)
本実施例では、p形障壁層、p形ウィンドウ層及びp形電極層(コンタクト層)を兼ねる透明なp形導電性酸化物層を備えた積層構造体60から青色LED50を構成する例にして、本発明を詳細に説明する。図4は本実施例に係わるLED50の断面模式図である。
【0035】
積層構造体60は、Sbドープp形Si単結晶基板501、閃亜鉛鉱型の立方晶リン化硼素(BP)を主体としてなる多結晶の、第1のn形緩衝層502a及び緩衝層502aより高温で成膜された立方晶BPを主体としてなるn形の第2の緩衝層502bからなるn形緩衝層502、Siドープn形GaNからなる下部障壁層503、主体相Sをn形GaNとし、平均的なインジウム組成比を0.1とする窒化ガリウム・インジウム混晶(Ga0.9In0.1N)を従属相Tとする多相構造のn形発光層504、アンドープでn形のAl0.8Ga0.2Nからなる保護層505、及び酸化アルミニウム・銅(CuAlO2)からなる透明p形導電性障壁層506から構成した。
【0036】
第1及び第2の緩衝層502a、502bは、トリエチル硼素((C253B)を硼素(B)源とし、ホスフィン(PH3)をリン(P)源とするMOCVD法で成膜した。多結晶の第1の緩衝層502aは420℃で成膜し、単結晶の第2の緩衝層502bは、第1の緩衝層502aの成膜を終了した後、ホスフィンを含む雰囲気中で基板501の温度を1050℃に昇温して成膜した。エピタキシャル構成層502〜505の各層は、トリメチルガリウム((CH33Ga)/トリメチルアルミニウム((CH33Al)/トリメチルインジウム((CH33In)/アンモニア(NH3)系減圧MO−VPE法により成長させた。珪素のドーピング源として、ジシラン(Si26)を約10体積ppmの濃度で含むシシラン−水素混合ガスを利用した。多相構造の発光層504の成膜温度は890℃とし、他のIII族窒化物半導体成長層503、505の成膜温度は1050℃とした。発光層504の成膜終了後、n形保護層505の成膜温度へは、アンモニア気流中で毎分約150℃の速度で昇温した。n形保護層505の成膜を終えた後は、1050℃から950℃へ毎分約50℃の速度で降温し、更に800℃へ毎分約15℃の速度で降温した。800℃から室温近傍の温度への降温は自然冷却によった。以上の昇温及び降温速度の採用により、多相構造の発光層504を構成する従属相Tのインジウム組成、外形状、並びに大きさの均一化を図った。
【0037】
第1の緩衝層502aの層厚(d)は約20nmとした。第2の緩衝層502bの層厚は約2μmとし、キャリア濃度(n)は約2×1018cm-3とした。下部障壁層503はd=0.5μmとし、n=3×1018cm-3とした。発光層504はd=0.1μmとし、n=1×1017cm-3とした。
【0038】
積層構造体60を構成するn形エピタキシャル成長層502〜505の成膜を終え、室温に冷却した後、MOCVD成長炉より積層構造体60を取り出した。次に、n形保護層505上にCuAlO2からなる透明p形酸化物障壁層506を、一般的なマグネトロンスパッタリング法により基板501の温度を約300℃として被着させた。スパッタリング時の圧力は約0.1トール(Torr)とし、印可する高周波(RF)電力は約150ワット(W)とした。p形酸化物障壁層506の層厚は約0.15μmとした。同層506の抵抗率は室温で約2Ω・cmとなった。同一条件で別途、ガラス基板上に成膜したCuAlO2膜(膜厚=0.15μm)の波長450nmの青色帯光についての透過率は約68%であった。多相構造の発光層504を構成する主体相SをなすGaN(禁止帯幅=3.4eV)と禁止帯幅が約3.5eVのCuAlO2との禁止帯幅は約0.1eVとなった。
【0039】
p形酸化物障壁層506上には、透明導電性の酸化物半導体層507を積層させた。酸化物半導体層507は抵抗率を、約8×10-3Ω・cmとし、層厚を約0.2μmとするn形のITOから構成した。ITO層507は、一般的な高周波スパッタリング法により、アルゴン(Ar)と酸素ガス(O2)との混合ガスをスパッタリングガスとして、約0.1Torrの真空雰囲気内で成膜した。
【0040】
次に、酸化物障壁層506がp形伝導層であり、酸化物半導体層507がn形伝導層であることに鑑み、p形台座電極508の形成予定領域に在るn形酸化物半導体層507を選択的に一般的なプラズマエッチングにより除去した。n形酸化物層507を選択的に除去した領域は、直径を約140μmとする円形とした。n形酸化物層507が除去され、p形障壁層506を表面が露出させた電極508の形成予定領域には、下層部508aをチタン(Ti)とし、上層部508bをAlとする重層構造からなるp形台座電極508を設けた。下層のTi膜508aの膜厚は約150nmとした。上層のAl膜508bの膜厚は約1μmとした。導電性Si基板501の裏面側の全面には、Al−Sb合金からなるn形オーミック電極509を被着させた。n形オーミック電極509の層厚は約1μmとした。
【0041】
次に、一辺を約350μmとするチップ(chip)状に分割し、個別のLED50となした。p形台座電極508及びn形オーミック電極509間に順方向に20ミリアンペア(mA)の電流を通流したところ、p形台座電極508の、外周囲領域の略全面からほぼ均一な強度をもって、青色光が放射された。分光器により測定された発光波長は約450nmであった。また、発光スペクトルの半値幅は約30nmであり、単色性に優れる発光が得られた。順方向電圧(@20mA)は平均して3.3ボルト(V)となった。チップ状態での発光強度は約20マイクロワット(μW)に到達した。また、100mAの順方向電流を300時間(hr)継続して通電した後に於いて、順方向電圧及び発光強度共々、然したる変動は認められなかった。
【0042】
(実施例2)
本実施例では、透明なp形障壁層の両表面側に酸化物半導体層を備えた積層構造体80から青色LED70を構成する例にして、本発明を詳細に説明する。図5は本実施例に係わるLED70の断面模式図である。
【0043】
積層構造体80は、(0001)サファイア基板501、GaN低温緩衝層502、Siドープn形GaNからなるn形障壁層503、主体相Sをn形Ga0.95In0.05Nとし、平均的なインジウム組成比を0.15とする窒化ガリウム・インジウム混晶(Ga0.85In0.15N)を従属相Tとする多相構造のn形発光層504を基材として構成した。
【0044】
多結晶の緩衝層502は430℃で成膜した。低温緩衝層502以外のIII族窒化合物半導体層503、504は、トリメチルガリウム/トリメチルアルミニウム/シクロペンタジエニルインジウム(C55In)/アンモニア系常圧MO−VPE法により成長させた。多相構造の発光層504の成膜温度は880℃とし、他のIII族窒化物半導体成長層503の成膜温度は1030℃とした。n形障壁層503成膜時の、珪素のドーピング源として、ジシランを約10体積ppmの濃度で含むジシラン−水素混合ガスを利用した。発光層504の成膜終了後は、アンモニア気流中で毎分約15℃の速度で800℃へ降温した。800℃から室温近傍の温度への降温は自然に冷却させた。この降温操作により、多相構造の発光層504を構成する従属相Tのインジウム組成、外形状、並びに大きさの均一化を図った。
【0045】
緩衝層502の層厚(d)は約17nmとした。n形障壁層503はd=0.5μmとし、キャリア濃度(n)=3×1018cm-3とした。発光層504はd=0.1μmとし、n=1×1017cm-3とした。
【0046】
積層構造体80を構成するn形エピタキシャル成長層503、504の成膜を終え、室温に冷却した後、MOCVD成長炉より積層構造体80を取り出した。次に、発光層504上に、一般的なマグネトロンスパッタリング法によりAlドープのn形ZnOからなるn形酸化物半導体層510を被着させた。酸化亜鉛被膜510は、アルミニウムを約2重量パーセント(wt%)の割合で含むターゲット(target)材料を用いて、印可電圧を約500Wとしてスパッタリングした。スパッタ圧力は約0.1トールとした。n形酸化物半導体層510の抵抗率は約2×10-3Ω・cmとし、層厚は約15nmとした。n形酸化物半導体層510を酸化亜鉛(禁止帯幅=3.3eV)から構成した場合、上記の多相構造発光層504の主体相SをなすGa0.95In0.05N(禁止帯幅=3.2eV)との禁止帯幅の差異は0.1eVとなった。
【0047】
次に、同一のスパッタリング設備を用いて、n形酸化物半導体層510の表面上に、実施例1と同様の形成条件をもって、実施例1のCuAlO2からなるp形酸化物障壁層506を被着させた。p形障壁層506とn形酸化物半導体層510との禁止帯幅の差異は0.2eVとなった。p形障壁層506上には更に、上記のn形酸化物半導体層510と同一の層厚(=15nm)のn形ZnOからなるn形酸化物半導体層507を重層させた。n形酸化亜鉛層507の抵抗率も約2×10-3Ω・cmとした。
【0048】
次に、n形酸化物半導体層507上に、同層507を構成する酸化亜鉛を保護するために、ITOからなる透明保護膜511を冠した。スパッタリング法に依り形成した透明保護膜511の膜厚は約50nmとし、抵抗率は約1×10-3Ω・cmとした。
【0049】
次に、公知のフォトリソグラフィー技術によるパターニング手法により、p形台座電極508を形成する予定の長辺を300μmとし、短辺を120μmとする長方形の領域に在る、ITOからなる保護膜511及びZnOからなるn形酸化物半導体層507を選択的にエッチングして除去した。これより、露出したp形障壁層506の表面に、下層部508aをTiとし、上層部508bをAuとする重層構造からなるp形台座電極508を設けた。p形台座電極508は、長辺を約280μmとし、短辺を約110μmする長方形の電極から構成した。下層のTi膜508aの膜厚は約200nmとした。上層のAu膜508bの膜厚は約1μmとした。n形オーミック電極509は、その形成予定領域に在るITO保護膜111、n形酸化物半導体層507、p形障壁層を兼ねる導電性障壁層506、多相構造の発光層504をAr/メタン(CH4)/水素(H2)混合ガスを用いたプラズマエッチング法により除去して、露呈させたn形障壁層503の表層部に形成した。n形オーミック電極509は、Alから構成し、その層厚は約1.2μmとした。n形オーミック電極509の平面形状は、長辺を約280μmとし、短辺を約110μmとする長方形とした。n形及びp形電極508、509は相互に対向する位置に互いに略平行に配列した。
【0050】
次に、一辺を約350μmとするチップ状に分割し、個別のLED70となした。p形電極508及びn形オーミック電極509間に順方向に20mAの電流を通流したところ、p形電極508と、それに対向する位置に配置されたn形オーミック電極509との間に在るp形障壁層506の略全面からほぼ均一な強度をもって、青緑色光が放射された。分光器により測定された発光波長は約470nmであった。また、発光スペクトルの半値幅は約32nmとなった。順方向電圧(@20mA)は実施例1に記載のLEDよりも低く、平均して3.1Vとなった。チップ状態での発光強度は約16μWに到達した。また、100mAの順方向電圧を継続して300hrに亘り通電した後でも、順方向電圧及び発光強度に変化は認められなかった。
【0051】
【発明の効果】
本発明の請求項1に記載の発明に依れば、p形障壁層を、p形導電性を呈する酸化物層から構成することとしたので、従来の如く低抵抗のp形障壁層をIII族窒化物半導体層から構成する際の煩雑さを要することなく、発光透過層、電極形成層及び電流拡散層を兼用するp形障壁層を具備するpn接合型のヘテロ接合発光部が簡便に構成できる。また、例えば、p形障壁層上にその表面を保護するために透光性の酸化物半導体層を保護層として設ける構成としたので、外部に発光を取り出すに都合の良いpn接合型ヘテロ接合構造の発光部を具備したIII族窒化物半導体発光素子が提供できる。
【0052】
また、p形導電性を呈する障壁層の上方に表面保護膜として、また、禁止帯幅の差異を緩和するため機能層として酸化物半導体層を接合させる構成としたので、外部に発光を取り出すのに都合が良く、且つ順方向電圧が低いpn接合型ヘテロ接合構造のIII族窒化物半導体発光素子が提供できる。
【0053】
本発明の請求項2に記載の発明に依れば、p形の伝導性を呈する酸化物から構成したp形障壁層の両側に同一の材料からなる酸化物半導体結晶層を配置したので、p形酸化物障壁層が被る歪みを略均等化でき、経時的に安定して正孔の供給が達成され、順方向電圧や発光強度等の安定したIII族窒化物半導体発光素子が提供できる。
【0054】
本発明の請求項3に記載の発明に依れば、p形酸化物材料からなるp形障壁層の両側に接合させる酸化物半導体層を、発光波長に対応する禁止帯を越える禁止帯幅の酸化物結晶から構成したので、外部へ発光を取り出すのに好都合なウィンドウ層としての機能を備えたIII族窒化物半導体発光素子を提供できる。また、請求項4に記載の発明に依れば、発光に対する透過率が高い透明酸化物材料から酸化物半導体層を構成したので、特に、高輝度のIII族窒化物半導体発光素子を提供できる。
【0055】
本発明の請求項5に記載の発明に依れば、高強度の短波長光を放射する多相構造のインジウム含有III族窒化物半導体からなる発光層と、p形酸化物障壁層とからpn接合型ヘテロ構造の発光部を構成することとしたので、発光層から放射される高強度の発光を透光できる高輝度のIII族窒化物半導体発光素子が提供される。
【0056】
特に、請求項6に記載の発明に依れば、多相構造の発光層とp形酸化物障壁層との間に、発光層の主体相とp形障壁層との中間の禁止帯幅の酸化物半導体層を挿入する構成としたので、順方向電圧が低く且つ高輝度のIII族窒化物半導体発光素子が提供できる。
【0057】
請求項7に記載の発明に依れば、発光層とp形酸化物障壁層との間に、発光層とp形障壁層との中間の禁止帯幅の透明酸化物半導体層をn形層から構成することとしたので、順方向電圧が更に低く且つ高輝度のIII族窒化物半導体発光素子をもたらすのに効果を奏する。
【0058】
請求項8または9に記載の発明に依れば、銅を構成元素とする、特に、低抵抗の酸化アルミニウム・銅から発光透過層、電極形成層及び電流拡散層を兼用できるp形障壁層を構成することとしたので、外部へ発光を効率良く取り出せる高輝度のIII族窒化物半導体発光素子が簡便にもたらされる。また、p形障壁層に接合させる酸化物半導体層をn形酸化亜鉛から構成したので、順方向電圧が低く且つ高輝度のIII族窒化物半導体発光素子が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係わるpn接合型ヘテロ接合発光部の断面模式図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係わるpn接合型ヘテロ接合発光部の断面模式図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係わるpn接合型ヘテロ接合発光部の断面模式図である。
【図4】実施例1に記載のLEDの断面模式図である。
【図5】実施例2に記載のLEDの断面模式図である。
【符号の説明】
10 pn接合型ヘテロ接合発光部
20 pn接合型ヘテロ接合発光部
30 pn接合型ヘテロ接合発光部
50 LED
60 積層構造体
70 LED
80 積層構造体
101 p形酸化物障壁層
101a 障壁層の片面
101b 障壁層の発光層側の面
102 発光層
103 n形障壁層
104 酸化物半導体層
105 酸化物半導体層
501 単結晶基板
502 緩衝層
502a 第1の緩衝層構成層
502b 第2の緩衝層構成層
503 下部障壁層
504 発光層
505 III族窒化物半導体保護層
506 透明p形導電性酸化物障壁膜
507 酸化物半導体層
508 p形台座電極
508a 電極下層部
508b 電極上層部
509 n形オーミック電極
510 発光層側の酸化物半導体層
511 酸化物保護層
S 多相構造発光層の主体相
T 多相構造発光層の従属相

Claims (5)

  1. 発光部として、n形のIII族窒化物半導体からなる障壁層と、インジウム濃度を相違する複数の相からなる多相構造のインジウム含有III族窒化物半導体からなる発光層(多相構造発光層)と、酸化物からなるp形障壁層とを含んでなるIII族窒化物半導体発光素子に於いて、多相構造発光層とp形障壁層との間に、多相構造発光層を構成する主体相以上であり、かつp形障壁層以下の禁止帯幅を有する酸化物半導体層が接合されていることを特徴とするIII族窒化物半導体発光素子。
  2. 発光部として、n形のIII族窒化物半導体からなる障壁層と、インジウム含有III族窒化物半導体からなる発光層と、酸化物からなるp形障壁層とを含んでなるIII族窒化物半導体発光素子に於いて、発光層とp形障壁層との間に酸化物半導体層を有し、該酸化物半導体層が、n形の伝導を呈することを特徴とするIII族窒化物半導体発光素子。
  3. n形の伝導を呈する酸化物半導体層が、キャリア濃度を5×10 21 cm −3 未満とする、450nm〜550nmの波長の光について、50%以上の透過率を有するn形酸化物から構成されていることを特徴とする請求項2に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
  4. 発光部として、n形のIII族窒化物半導体からなる障壁層と、インジウム含有III族窒化物半導体からなる発光層と、酸化物からなるp形障壁層とを含んでなるIII族窒化物半導体発光素子に於いて、p形障壁層の両側に同一組成の酸化物半導体層が接合されていることを特徴とするIII族窒化物半導体発光素子。
  5. p形障壁層の両側に接合させる酸化物半導体層の禁止帯幅が、発光層より出射される発光波長に対応する禁止帯幅より大きいことを特徴とする請求項4に記載のIII族窒化物半導体素子。
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