JP4303914B2 - 晶析装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は医薬品関係、食品関係、化学品関係、光学品関係、電気デバイス素材、テープフィラー素材等の材料関係等において適用される晶析装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の従来の晶析装置として、図9の如く、上方に配設した蒸発部aとその下方の晶析部bとからなり、該蒸発部aと該晶析部bとを連結する導入管cを有する晶析装置が知られている。
【0003】
即ち、該晶析装置は、該晶析部bから該蒸発部aへリターン管dにより連結されていると共に該晶析部bから分級脚eが垂下しており、前記リターン管dへ供給管fより供給された原料液は前記蒸発部aにおいて一部蒸発し、濃縮された原料液は前記導入管cを経て前記晶析部bにおいて過飽和状態となって結晶化されると共に残った原料液はリターン管dを経て前記蒸発部aへ戻り、前記晶析部bにおいて形成された結晶を前記分級脚eより取り出すようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この従来の晶析装置によれば、晶析部bにおいて単に過飽和状態の原料液から結晶を成長形成させているので、得られた成長結晶の配向は図10の如く種々にわたり、薬理効果の高い均一な薬品等が得られないという問題点があった。
【0005】
又、結晶の成長形成を促進させるために、溶液の対流速度を増大させる必要があるという問題があった。
【0006】
本発明はこれらの問題点を解消し、配向性即ち結晶軸方向の一致した結晶が多量に得られる晶析装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成すべく本発明は上部の蒸発部と、該蒸発部に連通する下部の晶析部とからなる晶析装置において、該晶析部に磁力発生手段と撹拌手段とを設けると共に、該晶析部の容器内に円筒状の仕切壁を垂設し、該仕切壁を介して中央部の結晶形成部と周辺部の微小結晶除去部とを形成し、前記仕切壁内に該仕切壁と同心に略円筒状のドラフトチューブを設けると共に、前記撹拌手段によって該ドラフトチューブ内の流れは上昇流となり、該ドラフトチューブと前記仕切壁との間の流れは下降流となるように形成し、該ドラフトチューブに環状に前記磁力発生手段を形成したことを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施の形態を図1乃至図3により説明する。
【0009】
図1において1は蒸発部、2は晶析部を示し、該蒸発部1は容器にヒータ等の加熱手段を具備して形成され、該蒸発部1からその下方に位置する前記晶析部2内の中心部に下方に垂下する導入管1aを設けて該導入管1aにより前記蒸発部1と前記晶析部2とを連結した。
【0010】
前記晶析部2内の下方部には撹拌翼3を設置し、図示していない駆動装置によって該撹拌翼3を回転駆動して、晶析部2内の溶液に上向きの流れが形成されるようにした。
【0011】
又、前記晶析部2の上部側方と前記蒸発部1の側方部とをリターン管4で連通連結し、該リターン管4の途中に原料液の供給管5を連通接続した。
【0012】
6は磁力発生手段である電磁石を示し、該電磁石6は前記晶析部2の容器の側壁の外方にこれを囲繞するように環状に設けられている。
【0013】
前記電磁石6は、前記晶析部2内の磁束密度が1テスラ以上となる強磁場を作れるものとした。
【0014】
7は結晶を流下させる分級脚で、該分級脚7は管状を呈し、前記晶析部2の底部から垂下するように設けられている。
【0015】
次に前記第1の実施の形態の作用を説明する。
【0016】
供給管5から原料液を供給すると、該原料液はリターン管4を経て蒸発部1に至り、該蒸発部1において一部が蒸発して濃縮される。
【0017】
濃縮された原料液は導入管1aにより晶析部2の中心部の下方部に流出する。
【0018】
該晶析部2内において、濃縮された前記原料液は周囲の溶液によって冷却され、過飽和状態となると共に撹拌翼3によって上方に流動し、この上方への流動中に晶析化しながら結晶を成長形成する。
【0019】
このときに、電磁石6により晶析部2内に生ずる磁場の作用により、前記結晶は図2の如く結晶軸方向が同一となるように成長形成する。このとき前記結晶は、磁場による磁化率が最小となる磁場方向に平行な結晶軸となって成長するものと考えられる。
【0020】
尚、前記磁力発生手段は、前記電磁石6以外に永久磁石又は超電導コイルを用いた超電導磁石を用いて強磁場を作るようにしてもよい。又、これら磁力発生手段にはコーティングを施して、液封に形成するとよい。
【0021】
こうして形成された結晶は分級脚7より外部へ取り出され、残りの溶液はリターン管4を経由して、新たに供給される原料液と共に蒸発部1に戻る。
【0022】
図3は発明者がL−アラニンの過飽和溶液を用いて行った実験結果のグラフを示し、横軸は磁場の強さT(テスラ)、縦軸は生成したL−アラニンの結晶の配向率Rである。
【0023】
ここで配向率Rは、それぞれの結晶の配向即ち結晶軸方向の角度差θが3°より小である析出結晶の測定全析出結晶に対する割合(%)である。
Figure 0004303914
【0024】
本実験では、磁場の強さが1T以上になると配向率Rは約100%となることが判明した。
【0025】
尚、他の原料液についてもL−アラニンと同様の傾向がみられた。
【0026】
又、撹拌翼3を用いて溶液に上向きの流れを作ることにより、結晶の成長形成が促進された。
【0027】
次に本発明の晶析装置の第2の実施の形態を図4により説明する。
【0028】
この第2の実施の形態においては、上方の蒸発部1と下方の晶析部2とを共通の容器8に形成すると共に、該容器8の外側壁を囲繞するように電磁石6を環状に設けて、該容器8内の下方部に撹拌翼3を設置している。
【0029】
この共通の容器8内では、前記撹拌翼3の回転により該容器8内の原料液は中心部に上向きの流れが形成され、該容器8の内壁側には下向きの流れが形成されて循環し、この下向きの流動中に前記電磁石6により配向性を揃えて晶析化しながら結晶を成長形成する。
【0030】
この第2の実施の形態は、前記第1の実施の形態の如く原料を連続的に供結できないが、前記蒸発部1と晶析部2とが一つの容器8だけの簡単な構成で形成でき、又、磁場と撹拌との作用により晶析化を促進することができて、実験用や少量製造用に適している。
【0031】
本発明の晶析装置の第3の実施の形態を図5により説明する。
【0032】
この実施の形態においては、上方の蒸発部と下方の晶析部とを共通の容器8に形成すると共に上方の蒸発部の個所の容器8aの直径を下方の晶析部の個所の容器8bの直径よりも小径に形成し、更に該小径の容器8aの側壁の下方部を前記大径の容器8b内の途中まで下方に延長して円筒状の仕切壁8cに形成し、該仕切壁8cの下端部を前記容器8b内に開放した。
【0033】
そして、前記仕切壁8cの外方に環状の電磁石9aを設けた。
【0034】
尚、該電磁石9aにより、前記仕切壁8c内に1テスラ以上の磁束密度の磁場が作られるようにした。
【0035】
又、前記容器8aの頭頂部から駆動軸10aを介して撹拌翼10bを垂設し、該撹拌翼10bが前記容器8a内の溶液面の上面より僅か下方に没入するように形成した。
【0036】
10cは前記撹拌翼10bを駆動するモータである。
【0037】
尚、前記蒸発部の個所の容器8aの上部側方には、蒸気出口8dが設けられている。
【0038】
又、前記晶析部の個所の容器8bの底部には管状の分級脚11が垂設されており、該分級脚11には分級スラリー取出しポンプ11aと原料(分級液)供給口11bとが接続している。
【0039】
ここで前記容器8bの底部は半球状に形成され、該半球状の底部の側方には整流用のバッフルプレート8eが複数個、放射状に設けられている。
【0040】
12は循環ポンプで、該循環ポンプ12の吸入側はリターン管12aを介して前記容器8bの上部側方に接続しており、又、該循環ポンプ12の吐出側は加熱器13を介して前記容器8bの下部に接続している。
【0041】
次に該第3の実施の形態の作用を説明する。
【0042】
原料供給口11bより原料液(分級液)が容器8bの底部に供給され、リターンパイプ12aからの戻り液は循環ポンプ12、加熱器13を介して加熱されて容器8bの底部付近に放出される。
【0043】
これら原料液と戻り液との混合液は、前記容器8a内に設けられた撹拌翼10bとバッフルプレート8eの作用により、前記容器8aの中心部においては上昇流となり、前記容器8aの内周面に沿う部分の流れは旋回して下降流となって底部の半球状のバッフルプレート8eに当って前記上昇流となり、容器8内を円滑に循環する。この間、前記加熱器13からの加熱によって発生した蒸気は蒸気出口8dから外方に放出され、前記混合液の濃縮が行なわれて、混合液内に結晶が析出する。
【0044】
尚、電磁石9aの作用により、成長形成する結晶粒の結晶軸の方向が略一様となるのは、前記第1の実施の形態におけるのと同様である。
【0045】
こうして形成された結晶は分級脚11内に沈降し、分級スラリー取出しポンプ11aによって取出される。
【0046】
尚、図5は電磁石9aを仕切壁8cの外方に囲繞して設けた場合を示したが、仕切壁8cの内方に環状の電磁石を設けてもよい。
【0047】
このように電磁石の直径を小径に形成すれば、電磁石の環状部内の磁場の磁束密度を大にすることが容易となる。
【0048】
この他、仕切壁8cの外方や内方でなく、前記大径の容器8bの外方に電磁石を環状に設けてもよく、電磁石の直径は大きくなるが、電磁石を液封することなく、又、外部にあるため製作や取付が容易となる。
【0049】
本発明の晶析装置の第4の実施の形態を図6により説明する。
【0050】
この実施の形態においては、前記第3の実施の形態における仕切壁8c内の中央部にドラフトチューブ14を設けた点が前記第3の実施の形態の晶析装置とは異なる。
【0051】
前記ドラフトチューブ14は円筒状を呈し、容器8の底面より少許上方に、溶液中に没入するように立設されている。
【0052】
本実施の形態では、撹拌翼10bの作用によりドラフトチューブ14内の溶液はすべて上方向流となり、又、ドラフトチューブ14の外側の溶液はすべて下方向流となって、流れがスムースとなり、結晶の成長形成が促進される。
【0053】
尚、図6は電磁石9aを仕切壁8cの外方に囲繞して設けた場合を示したが、環状の電磁石を仕切壁8cの内方に設けてもよい。この他、電磁石はドラフトチューブ14の外方を囲繞するように環状に設けるようにしてもよい。更に、仕切壁8cやドラフトチューブ14でなく、大径の容器8bの外方に環状の電磁石を設けてもよい。
【0054】
本発明の晶析装置の第5の実施の形態を図7により説明する。
【0055】
この実施の形態においては、前記第4の実施の形態における溶液の上層部にある撹拌翼10bの代りに、ドラフトチューブ14の下端部に撹拌翼10dを設けた点が前記第4の実施の形態の晶析装置とは異なる。
【0056】
本実施の形態の撹拌翼10dによれば、ドラフトチューブ14内の溶液に容易に上昇流を形成することができる。
【0057】
尚、図7は電磁石9aを仕切壁8cの外方に囲繞して設けた場合を示したが、環状の電磁石を仕切壁8cの内方に設けてもよい。この他、電磁石はドラフトチューブ14の外方を囲繞するように環状に設けてもよい。更に、仕切壁8cやドラフトチューブ14でなく、大径の容器8bの外方に環状の電磁石を設けてもよい。
【0058】
本発明の晶析装置の第6の実施の形態を図8により説明する。
【0059】
本実施の形態の容器8は前記第3乃至第5の実施の形態と略同様の構造を有しており、晶析部の個所の容器8bの上部側方にある戻り液出口8fから一部の溶液を戻して、図示していない循環ポンプ及び加熱器を介して前記容器8bの下方部の循環液入口8gから再び晶析部に循環するように形成されている。
【0060】
本実施の形態では、ドラフトチューブを上下に2分割して上部ドラフトチューブ14aと下部ドラフトチューブ14bに分け、これら上部及び下部のドラフトチューブ14a、14b間に撹拌翼15を介在させている。
【0061】
又、該撹拌翼15は、その外径を仕切壁8cの内径よりも少許小さく形成すると共に、該撹拌翼15の前記ドラフトチューブ14a、14bの内径よりも小さい小径部15aはこれらドラフトチューブ14a、14b内の溶液に上向きの流れを生じさせ、該撹拌翼15の前記ドラフトチューブ14a、14bの外径よりも大きい大径部15bはこれらドラフトチューブ14a、14bの外側の溶液に下向きの流れを生じさせる翼形に形成されている。
【0062】
尚、本実施の形態では、仕切壁8cの外方を囲繞するように環状に電磁石9aを設けた。この他、仕切壁8cでなく、大径の容器8bの外方に環状の電磁石を設けてもよい。
【0063】
本実施の形態によれば、ドラフトチューブの内外に強力な上下流が形成されるので、結晶の成長形成が一層促進される。
【0064】
【発明の効果】
このように本発明によれば、電磁石により結晶粒の配向性を揃えることができると共に、撹拌翼の液流動によって結晶の成長形成が促進される効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の説明図である。
【図2】本発明の結晶の成長形成状態を示す説明図である。
【図3】磁場の強さと結晶の配向率の関係を示すグラフである。
【図4】本発明の第2の実施の形態の説明図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態の説明図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態の説明図である。
【図7】本発明の第5の実施の形態の説明図である。
【図8】本発明の第6の実施の形態の説明図である。
【図9】従来の晶析装置の説明図である。
【図10】従来の晶析装置による結晶の成長形成状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1 蒸発部
2 晶析部
3、10b、10d、15 撹拌手段(撹拌翼)
6、9a、9b 磁力発生手段(電磁石)
8c 仕切壁
14、14a、14b ドラフトチューブ

Claims (5)

  1. 上部の蒸発部と、該蒸発部に連通する下部の晶析部とからなる晶析装置において、該晶析部に磁力発生手段と撹拌手段とを設けると共に、該晶析部の容器内に円筒状の仕切壁を垂設し、該仕切壁を介して中央部の結晶形成部と周辺部の微小結晶除去部とを形成し、前記仕切壁内に該仕切壁と同心に略円筒状のドラフトチューブを設けると共に、前記撹拌手段によって該ドラフトチューブ内の流れは上昇流となり、該ドラフトチューブと前記仕切壁との間の流れは下降流となるように形成し、該ドラフトチューブに環状に前記磁力発生手段を形成した晶析装置。
  2. 前記撹拌手段は、前記ドラフトチューブの下端部に設置された撹拌翼からなる請求項1に記載の晶析装置。
  3. 前記撹拌手段は、前記ドラフトチューブの長手方向の中間部に設置された撹拌翼からなる請求項1に記載の晶析装置。
  4. 前記ドラフトチューブを上下に2分割して、これら上部及び下部のドラフトチューブ間に撹拌翼を介在させ、該撹拌翼の外径を前記ドラフトチューブの外径よりも大に形成すると共に該撹拌翼の前記ドラフトチューブ内径より小さい径の部分は前記ドラフトチューブ内の溶液に上向きの流れを生じさせ、該撹拌翼の前記ドラフトチューブ外径より大きい径の部分は前記ドラフトチューブの外側の溶液に下向きの流れを生じさせる翼形に形成した請求項3に記載の晶析装置。
  5. 前記磁力発生手段は電磁石又は永久磁石からなる請求項1乃至請求項7の内のいずれか1に記載の晶析装置。
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