JP4303784B2 - カタランタスの植物エキビョウ菌耐性遺伝子およびその使用 - Google Patents

カタランタスの植物エキビョウ菌耐性遺伝子およびその使用 Download PDF

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Description

【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、フィトフトラ・パラシチカ(Phytophthora parasitica)病に対する一定水準の耐性を含むカタランタス(Catharanthus)の耐性遺伝子、カタランタス種子、カタランタス植物、カタランタス変種およびカタランタス雑種に関するものである。本発明のPhytophthora(エキビョウ菌)耐性遺伝子を種々のカタランタス遺伝子バックグラウンドおよび他の属に取り込ませることができる。また本発明はカタランタス植物製品、アルカロイド含量の増加、および特定の昆虫に対する耐性の増大に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
カタランタス・ロゼウス(Catharanthus roseus)(L.)G.Don、(ニチニチソウ(periwinkle,vinca)とも呼ばれる)はマダガスカル原産であり、キョウチクトウ科(Apocynaceae)に属する。この種は温帯気候ではしばしば種子または切り茎(cutting)から毎年生長し、夏の花壇に、または温室用もしくは窓辺用の鉢植えとして用いられる。カタランス・ロゼウスは世界の熱帯地域で鑑賞植物として以前から栽培されている。その自家結実性(self−seediness)(自家受粉して、直ちに成熟した自家種子(selfed seed)を形成しうること)のため、現在では多くの熱帯地域に広く適合している。この鑑賞植物はマダガスカルニチニチソウ(別個の属であるツルニチニチソウ(Vinca)と混同してはならない)として一般に知られているが、一般に種子から増殖し、切り茎から増殖する頻度はより低い。
【0003】
ニチニチソウはその低木性の性状、大輪の好ましい花、熱、乾燥および直射日光に対する許容度のため価値がある。その園芸上の利点のほか、カタランタス・ロゼウスはある種の疾患、たとえば白血病を遅延させるのに用いられるアルカロイドを含有する。
【0004】
カタランタス属植物種は、Farmsworth,Lloydia 24:105−139(1961);Sevestre−Rigouzzoら,Euphytica 66:151−1569(1993)に記載されるように、それらがインドール系アルカロイドを産生することで周知である。カタランタス・ロゼウスはその成分であるインドール系アルカロイドに関して十分に研究されている植物の1つであり、BalsevichおよびHogge,J.Nat.Prod.,51:1173−1177(1988)に記載されるようにアルカロイドのうち70種類以上が全植物体から単離されている。vanDam,Oecologia 95:425−430(1993)に述べられるように、アルカロイドは一般に病原体および草食動物に対して生物学的に活性な化合物として知られている。インドール系アルカロイドは有効な拒食性害虫防除薬である。Meisnerら,J.Econ.Entomol.74:131−135(1981);Chockalingamら,J.Environ.Biol.10:303−307(1989)に記載されるように、0.04%溶液を用いるバイオアッセイにおいて試験した場合、ビンブラスチンおよびカタランチンは多草性Spodoptera(ヨトウ)の幼虫に対して極めて阻害性の高いアルカロイドであると思われる。ニチニチソウ抽出物は幾つかの細菌属に対しても強い阻害活性をもつことが示された。Farmsworth,Lloydia 24:105−139(1961)は、カタランタス・ロゼウスのアルカロイド画分がもつ駆虫活性についても記載している。Raven,Diversity 9:49−51(1993)に記載されるように、カタランタス・ロゼウスから得られるアルカロイドは22年来の企業の基礎をなし、優に年間1億ドルを越える収益をもたらしている。共にカタランタス・ロゼウスから単離されるビンブラスチンおよびビンクリスチンの抗癌活性は製薬業界で十分に立証されている。
【0005】
今日までカタランタス属植物種にはエキビョウ菌に対する耐性は知られていない。生育中のニチニチソウに関する主な問題はフィトフトラ・パラシチカによる攻撃に対する感受性(sensitivity,susceptibility)である。フィトフトラ・パラサイチカにより生じる茎および根頭(crown、茎と根の境界部分)の腐敗病はカタランタス共通の問題である。症状は一般に最終段階の病害発生を伴うが、感染植物が目に見える症状を示すことなく病原体の集団を支持する可能性がある。
【0006】
KeenおよびYoshikawa(in Erwin et al.)279−284(1983)には、他の作物におけるエキビョウ菌属菌種に対する耐性の天然のメカニズムが記載されている。エキビョウキン属菌種に対する普遍的耐性のメカニズムには、宿主の構造的特徴、予め形成されている阻害物質、誘導された構造的バリヤー、過敏反応、およびフィトアレキシンが含まれる。Keen,Adv.Plant Pathol.65:35−82(1982)も、エキビョウ菌属菌種に対する特異的耐性は通常は単一の宿主耐性遺伝子により調節されることを示唆している。エキビョウ菌属の異なる菌種に対して一遺伝子により遺伝する耐性が、カタランタス以外の幾つかの作物において報告されている。耐性は単一の優性対立遺伝子に起因することが極めて頻繁に認められている(Umaerusら,in Erwin et al.,315−326(1983))。Colonら,Euphytica 55−64(1983)には、ナス属(Solanum)植物種におけるエキビョウ菌属病原菌に対する耐性が記載されている。
【0007】
化学薬品メタラキシル(真菌類(eumycete)特異性殺真菌剤サブデュー(Subdue)およびリドミル(Ridomil)の有効成分である)は、Ferrinら,Plant Disease,Vol.76,p.60−63,p.82−84(1992)が述べるように、苗木場の職員がエキビョウ菌属菌種により起こる茎および根頭の腐敗病を抑制するために使用する主な殺真菌薬である。化学薬品メタラキシルによってある程度の病害抑制は行われるが、Ferrin(前掲)は南カリフォルニアの苗木場からメタラキシルに対して不感性であるフィトフトラ・パラシチカの1分離体を見出した。メタラキシルに対する耐性は、Ferrinら(前掲)が選択した分離体によってインビボで発現した。さらにこのメタラキシル耐性分離体は感受性の野生型分離体と同様に有害であると思われた。植物を容器内で生育させる苗木場については、そのような耐性が出現する頻度は低く、かつ病原体集団が増加して分散するのには時間がかかるので、メタラキシル耐性の出現後直ちに広域の病害抑制失敗が起こることは必ずしも予想されないであろう。広域の病害抑制失敗は、大部分の病原体集団がこの農薬に対して耐性になったのち初めて起こる。このメタラキシル耐性集団が確立する速度は、農薬耐性の安定性、病原体集団に負荷される淘汰圧、および病原体が分散する能力によって大幅に左右される。カリフォルニアの苗木場では循環する潅漑用水中にエキビョウ菌属およびピチウム(Pythium)属の菌種が検出されたので、カリフォルニアの一定地域の商業的苗木場ですべての流出水をトラップして再循環させるという要求はそれらの苗木場においてこれらの病原体の殺真菌薬耐性集団を再循環させる危険性を大幅に高める。従って、再循環水の処理がエキビョウ菌属菌種の伝播体(propagule)の排除に不十分である場合には、メタラキシル耐性の出現は最終的に抑制失敗をもたらし、かつ殺真菌薬メタラキシルの連続使用による淘汰圧が保持される可能性がある。
【0008】
エキビョウ菌により起こる病害の主要な抑制手段としてメタラキシルを連続使用すると、メタラキシルに対する不感性を発現する可能性が高まる(Ferrinら,前掲)。新たな殺真菌薬に対して不感性のフィトフトラ・パラシチカの新たな分離体が最終的には出現することを歴史が示しており、かつ化学薬品の使用はそれらの薬品を使用する人々および環境に副作用を及ぼす可能性があるので、エキビョウ菌属菌種に対して遺伝的耐性を備えたカタランタス・ロゼウスの利用が極めて望ましい。
【0009】
ニチニチソウにおいてエキビョウ菌属菌種に対する遺伝的耐性が得られれば、その利用によって化学薬品メタラキシルの使用を減少させ、または排除し、その結果、経費効率および環境に対する安全性を高めることができるであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明の概要
本発明は、カタランタス種子、カタランタス植物、カタランタス変種、カタランタス雑種、およびカタランタス植物生産方法に関するものである。
【0011】
より詳細には、本発明は、フィトフトラ・パラシチカ真菌病に対する耐性をもつカタランタス植物に関するものである。またアブラムシ(Myzus persicae、モモアカアブラムシ)およびダニ(Tetranychus urticae、ナミハダニ)に対する中程度ないし高度の耐性をもつカタランタス植物、ならびに全アルカロイド含量の増加したカタランタス植物に関するものである。
【0012】
本発明は、全アルカロイド含量約2.0−約9.5%のカタランタス種子を目的とする。本発明はさらに、全アルカロイド含量約2.0−約9.5%のカタランタス植物を目的とする。また本発明は、全アルカロイド含量約2.0−約9.5%のカタランタス植物の実質的に均一な集合体(assemblage)に由来するカタランタス植物製品を目的とする。本発明はさらに、全アルカロイド含量約2.0−約9.5%のカタランタス植物の実質的に均一な集合体からなるカタランタス変種を目的とする。また本発明は、全アルカロイド含量約2.0−約9.5%のF1雑種カタランタス・ロゼウス植物を目的とする。
【0013】
本発明はさらに、本発明のエキビョウ菌耐性植物を他のカタランタス植物と交配することにより、開示されたカタランタス植物および種子を生産する方法に関するものである。また本発明は遺伝的エキビョウ菌耐性をカタランタス以外の属に伝達することに関するものであり、これにはSolanum(ナス属)、Capsicum(トウガラシ属)、Eucalyptus(ユーカリ属)、Carica、Ananas(アナナス属)、Fragaria、Camellia(ツバキ属)、Castanea、Persea(ワニナシ属)およびCitrus(ミカン属)が含まれるが、これらに限定されない。
【0014】
本発明はさらに、特定の昆虫に対する一定水準の耐性をもつカタランタス・ロゼウス植物に関するものであり、これらの昆虫にはアブラムシ(Myzus persicae、モモアカアブラムシ)およびダニ(Tetranychus urticae、ナミハダニ)が含まれるが、これらに限定されない。
【0015】
本発明はさらに、全アルカロイド含量が少なくとも2.0%またはそれ以上のカタランタス・ロゼウス植物に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】添付の図面において、図1は、カタランタス・ロゼウス植物の模式的透視図であり、それに付随する番号1−10はエキビョウ菌耐性または感受性の種々の水準に関する評点を示す。
【図2】図2A、2Bおよび2Cは、カタランタス植物にエキビョウ菌接種物を接種する方法の各段階を模式的に示す。
【課題を解決するための手段】
【0017】
発明の詳細な記述
本明細書および請求の範囲で用いる幾つかの用語を理解するために、以下の定義を示す:
全アルカロイド含量−’全アルカロイド含量’という用語は、植物組織の乾燥全重量に対する%として表した全アルカロイド含量を意味するものとする。
均一な集合体−’均一な集合体’という用語は、特定のカタランタス・ロゼウス特性について均一である種子または植物の群を意味するものとする。この用語は、エキビョウ菌耐性の形質または全アルカロイド含量のいずれかについて均一である種子または植物を含むものとする。
植物製品−’植物製品’という用語は、アルカロイドを含めて、植物抽出物および植物由来の化合物または構造体を意味するものとする。
【0018】
カタランタス・ロゼウス(L.)G.Don(ニチニチソウとも呼ばれる)は主として自家受粉性の種である。本発明のカタランタス・ロゼウスはフィトフトラ・パラシチカに対する耐性を再現性をもって発現する。本発明者らは、エキビョウ菌耐性を伝達する伝達性遺伝子を本発明者らの育種集団から分離した。この病害耐性形質は、カタランタス・ロゼウスの多数の異なる遺伝子バックグラウンドにおいて発現した。
【0019】
今日まで、本発明以外に市販のカタランタス・ロゼウス栽培変種(cultivar)におけるエキビョウ菌耐性は知られていない。さらに、野生または市販のいずれのカタランタス属植物種、栽培変種においても、エキビョウ菌耐性に関する既知の報文はない。米国、メキシコ、中米、アフリカおよびマダガスカルから入手しうるすべての栽培変種および天然採集品を試験したが、表1および2に示すように、エキビョウ菌耐性を指示するものは全く見出されなかった。この従来未知の病害耐性が、1988年から実施された育種および研究の努力により得られた。
【0020】
【表1】
Figure 0004303784
【0021】
【表2】
Figure 0004303784
【0022】
本発明はカタランタス・ロゼウスにおけるエキビョウ菌病に対する遺伝的耐性であり、この病害に暴露されたカタランタス・ロゼウス植物は感染するが、この病害が植物全体に拡散または移動することはない。その結果、耐性カタランタス・ロゼウス植物は健全な状態に維持され、エキビョウ菌暴露後に枯死することはない。この病害耐性遺伝子がどのようにカタランタス・ロゼウス植物内で病原生物の拡散を阻止することにより作用するかは分かっていない。可能性のある作用メカニズムの1つは、植物内のアルカロイド含量の増加である。
【0023】
カタランタス・ロゼウスにおけるエキビョウ菌耐性の遺伝的根拠は、単一の優性対立遺伝子を伴うものであると思われる。この所見はErwinら(1983)に記載される他の作物において観察されたエキビョウ菌耐性と一致する。現在進行中の育種試験は、カタランタスにおけるエキビョウ菌耐性の遺伝的根拠をさらに解明するのに役立つであろう。この病原耐性遺伝子をカタランタス・ロゼウスの異なる遺伝子バックグラウンドに取り込ませた場合、病原耐性がこれらの遺伝子バックグラウンドに伝達される。
【0024】
園芸的に価値ある形質(たとえば小型の性状、望ましい色)をも保有する純粋育種耐性系統が開発されると、これらの系統から放任受粉した耐性種子を市販することができる。同様に純粋育種耐性系統をF1雑種種子生産における親の1つとして用いて、エキビョウ菌耐性を発現するF1雑種を得ることができる。さらに、本発明のエキビョウ菌耐性遺伝子をカタランタス以外の作物に伝達することによって、それらの作物においてエキビョウ菌により生じる損害を減少させることができる。
【0025】
本明細書において用いる“植物”という用語は、植物細胞、植物プロトプラスト、それからカタランタス・ロゼウス植物を再生しうる組織培養の植物細胞、植物カルス、植物塊(clump)、および植物または植物の一部における無傷の植物細胞、たとえば花粉、花、種子、葉、茎などを包含する。
【0026】
カタランタス・ロゼウスの組織培養はvan der Heijdenらの“カタランタス・ロゼウス(L.)G.Donの細胞培養および組織培養:文献探索”,Plant Cell,Tissue and Organ Culture 18:231−280(1989)に記載されており、これが本明細書に参考として含まれるものとする。この報文に記載されるように、療法上価値ある細胞毒性アルカロイドが存在することによって、カタランタスは現代の植物細胞バイオテクノロジーにおいて関心がもたれる主要な分野の1つとなった。これらの二量体インドール系アルカロイドの収率が低いこと(約0.0005%)、従ってそれらが高価であることが、細胞培養および組織培養によるこれらのアルカロイドの生産の可能性を研究する動機であった。カタランタス・ロゼウスを用いるこの組織培養の最初の試みは、約20−30年前に始まる。従って本発明の他の観点は、生育および分化に際してカタランタス・ロゼウスにエキビョウ菌に対する病害耐性を与える細胞を提供することである。
【0027】
優性の耐性遺伝子を異なる遺伝子バックグラウンドに伝達した場合、エキビョウ菌に対する病害耐性を与えるほか、植物の乾燥全重量に対する%として表した全アルカロイド含量の増加、アブラムシおよびダニを含めた特定の昆虫に対する許容性または耐性の増加という、関連する特性と考えられるものが得られる。全アルカロイド含量の増加は直接にアブラムシおよびダニに対する植物耐性の増大に関連し、かつある程度はエキビョウ菌耐性水準に関連すると考えられる。全アルカロイド含量および昆虫耐性の増大という重要な形質は本発明の他の目的である。
【0028】
EilertらはPlant Physiol.,126:11(1986);Arch.Biochem.,Biophys.,254:491(1987)に述べられるようにカタランタス・ロゼウスの細胞懸濁培養において培養物を種々の真菌のホモジネートで処理した際にアルカロイド蓄積を誘発することができ、これによってさらにアルカロイド産生と潜在的な真菌耐性の関係が示唆された。Nefら,Plant Cell Reports 10:26−29(1991)も、カタランタス・ロゼウス細胞における主要アルカロイドの産生を真菌Pythium vexansの抽出物によって刺激することができた。最後に、vanDamら,Oecologia 95:425−430(1993)は、カタランタス・ロゼウスにおけるインドール系アルカロイドの産生を機械的な葉の損傷だけでは誘発し得ないことを認めている。本発明のエキビョウ菌耐性遺伝子は、カタランタスにおけるアルカロイドの合成および活性の調節に強く関与している。しかしこの活性は耐性現象につき可能性のある他の観点を排除するものではない。
【0029】
カタランタスにおけるエキビョウ菌耐性遺伝子の開発によって、重要な園芸作物に殺虫薬によらない保護を与えるための直接的手段が提供された。遺伝子の利用は遍在性エキビョウ菌感染症からの保護を与え、かつ他の真菌性および昆虫性病原体からの保護を補助することができる。さらにこの遺伝子は作物の維持に必要な殺虫薬の量を減少させ、または排除することにより、利用者および環境の両方にとって害のないものとなる。エキビョウ菌からの保護および他の潜在的な広域スペクトルの保護は、この耐性遺伝子を他の作物において潜在的に価値あるものにする。エキビョウ菌感染症による年間の損失額は膨大である。フィトフトラ・シンナモミ(Phytophthora cinnamomi)のみでもZeitmeyer,Monogr.10,Am.Phytopathol.Soc.96 pp.(1980)に述べられるようにほぼ1,000種類の宿主をもち、それらのうちの多くは重要な作物植物である。ジャガイモの最近の葉枯れ病の原因であり、1846−47年の大幅なジャガイモ不足を生じたフィトフトラ属病原菌は、約800,000人の飢餓をもたらした。この病害は今日でもなお重大な問題である。殺虫薬によらないエキビョウ菌損失の減少または排除は、食物用および鑑賞用作物の両方にとって極めて重要であろう。空気性または根性のエキビョウ菌病に対する耐性の新規な提供源はいずれも、潜在的に極めて価値がある。
【実施例】
【0030】
実施例
以下の実施例は本発明をさらに説明するために提示され、請求の範囲に述べる限定以上に本発明を限定するためのものではない。
【0031】
実施例1 エキビョウ菌病原体のインビトロ増殖および接種
カタランタスにおける立ち枯れ病の病原体であるフィトフトラ・パラシチカのインビトロ培養についてはGillら(1977)に記載されている。この真菌はV−8ジュース寒天上で容易に増殖する。この真菌の分離および同定は当業者に知られている方法で行われた。この真菌に対する耐性を試験するに際して本発明者らは、著しい真菌攻撃を受けている商業的苗木場および栽培場から得たものを含めた、表3に示す12種類の異なる真菌分離体を用いた。分離体はFerrinらにより得た:Ferrinら(前掲)に従う。カタランタス・ロゼウス植物を苗木業者に一般に知られている標準法で種子から生育させた。接種前に植物を5プラス節段階(図1に示す)まで生育させた。エキビョウ菌分離体間の病原性の比較のために、接種前に個々のカタランタス・ロゼウス植物を切り茎によりクローン化した。
【0032】
エキビョウ菌純粋培養を用いて、図2A、2Bおよび2Cに示すように接種用カプセルを調製した。飲み物用の透明なプラスチックストロー(13)を用いて培養皿(11)から真菌の寒天外植体(12)を打ち抜いた。次いでこの寒天外植体(12)を短い接種用カプセル(15)、すなわちプラスチックストロー(13)の15mmセグメントの一端を直径6mmの球状ガラスビーズ(14)でシールしたものの中に配置した。真菌菌糸体の表面をビーズから遠い方に置いた。
【0033】
カタランタス・ロゼウスの若木を、直立した茎の第4節と第5節の間を清潔な安全かみそりの刃で切断することによって用意した。図1に示すように、次いで接種用カプセルを茎の切り口に乗せ、丁寧に下方へ押し、露出した切り口表面にこうして真菌菌糸体を押し付けた。同様にして、ただし真菌分離体を用いずに対照を調製した。
【0034】
次いで、接種した植物を当業者に知られている普通の方法により温室内で生育させた。次いで約3週間後に植物を植物組織内の真菌の移動度につき採点した。
【0035】
【表3】
Figure 0004303784
【0036】
実施例2 感染の評価−耐性の定義
表4に記載し、図1に模式的に示した評点スケール1−10を用いて、感染の程度、および接種された植物の無傷の組織内を病原体が移動する範囲を測定した。1科内の各々の若木についての感染の程度を、表1、2、5、6および7に定めるように耐性子孫と感受性子孫の比として測定した。接種の3週間後に、表4および図1の評点スケールを用いて組織壊死の程度を評価した。頂部節間の最上部分内に真菌の移動を阻止し得た植物を耐性とみなした;さらに、部分的な壊死が最上節に示されたが、最頂部節より下方へと移動し続けなかった植物は、真菌が第2節付近まで下降し続けなかった場合には耐性とみなされた。カタランタスにおけるフィトフトラ・パラシチカ耐性は、病原体の移動を感染部位の下部第1節またはその付近に阻止する能力として定義された。これに対し感受性は、病原体の移動を阻止することができず、最終的に植物の枯死を生じることと定義された。
【0037】
【表4】
Figure 0004303784
【0038】
実施例3 既存のカタランタス栽培変種におけるエキビョウ菌耐性の欠如
公的研究所、および/またはゴールドスミス・シーズ・インコーポレーテッド以外の会社が開発した、市販の栽培変種すべてを、前記方法でエキビョウ菌耐性につきスクリーニングした。試験結果は表1に提示されるが、エキビョウ菌に対して耐性である市販の栽培変種はないことを示す。現在、その製造業者または販売業者によってエキビョウ菌耐性であると主張されている市販の栽培変種はない。ChaseおよびKing,Grower Talks 57:63−69(1993)は、若干の栽培変種が他のものよりエキビョウ菌に対して感受性であることを示唆している;ただし彼らは、彼らの試験した栽培変種がすべてフィトフトラ・パラシチカに対して感受性であることを認めている。
【0039】
実施例4 野生カタランタス属植物種におけるエキビョウ菌耐性の欠如
一群のカタランタス属植物種の生殖質を同様に前記実施例1および2の方法でエキビョウ菌耐性につき試験した。天然分布が限定されており(マダガスカル)、その天然生息場所が広範に破壊されているため、カタランタスの野生生殖質は入手が困難である。マダガスカルでカタランタス・ロンギフォリウスおよびカタランタス・ロゼウスの生殖質を採集した。同様に代表的なカタランタス・トリコフィルスの生殖質をAnnik Petit(CNRS,インスティチュート・デ・サイエンス・ベジターレ、フランス)から得た。これらの一群の非耐性を表2にまとめる。明らかに、カタランタス属の野生種はエキビョウ菌耐性ではない。
【0040】
実施例5 新規な耐性系統
表5に示すように、数百の種×種、栽培変種×種、および栽培変種×栽培変種のカタランタス雑種をエキビョウ菌耐性につきスクリーニングする過程で、3つの実験的雑種系統、13516、13517および13518が良好な耐性を示すことが1992年に確認された。入手しうるすべての天然および帰化植物採集品ならびに既存のすべての栽培変種の生殖質を同時に広範に試験したにもかかわらず、その時点でこの耐性はそれまでに見出された唯一の耐性であった。さらに、それらの系統は表5に示すように耐性と感受性とに分離したので、耐性に関して純粋育種ではなかった。同様に表5に示すその後の血統分析により、耐性は単一優性(R)対立遺伝子の結果である可能性が示唆された。前世代の親が耐性につき予め試験されておらず、交配終了後に廃棄されていたという事実のため、遺伝子分析は困難であった。
【0041】
【表5】
Figure 0004303784
【0042】
耐性を保有する3系統(13516、13517、13518)の血統分析は、それらが1植物(8424−3)を共有することを示した。この1植物は、その淡青色の色彩および極端な不妊性のため突然変異形であると考えられていた。本発明者らはこれまでこのような花の色を野生種、栽培変種または雑種のいずれにおいても見たことがない;さらにこの植物はVeyret,Catharanthus Alkaloids,(1974)に述べられるいずれの野生種の検索表にも適合しなかった。この植物を育種計画に利用する最初の動機は、この突然変異の色を獲得し、それをその不妊性バックグラウンドから取り出し、新規な栽培変種の開発に利用することであった。
【0043】
耐性遺伝子の遺伝的根拠をより良く理解するために、さらに交配による世代交替を行った。
【0044】
実施例6 耐性の遺伝子分離
系統番号13516、13517および13518由来の個々の植物を自己増殖させ;次世代の子孫を耐性分離につき検査した(表5参照)。さらに表6に示すように、13516、13517、13518由来の個体を既知の感受性系統とも異系交配させた。これらの異系交配種からのF1子孫を同様に耐性:感受性比につき評価した。
【0045】
表現型が耐性である個体の自己増殖体中に感受性子孫が存在することにより、耐性は優性対立遺伝子によって制御されていることが確認される。自己増殖体とF1世代の分離比から、耐性が2つの対立遺伝子、すなわちエキビョウ菌耐性に関する(R)およびエキビョウ菌感受性に関する(r)により一遺伝子制御されていることが確認される。表7は、F2分離がさらにカタランタスにおけるエキビョウ菌耐性の遺伝的根拠を立証することを示す。表5−7を合わせると、単一優性対立遺伝子としての耐性遺伝子のさらに遺伝的根拠が立証される。
【0046】
【表6−1】
Figure 0004303784
【0047】
【表6−2】
Figure 0004303784
【0048】
【表6−3】
Figure 0004303784
【0049】
【表7】
Figure 0004303784
【0050】
実施例7 放任受粉によるエキビョウ菌耐性栽培変種
前記のように、現存する市販のカタランタス・ロゼウス栽培変種は放任受粉作物として生産される。花は主として温室の生産場で自家受粉し、生じた種子を収穫して販売する。カタランタス・ロゼウスを含めて放任受粉作物は、均一な継続性をもって発現するためには目的とする形質に関して純粋育種(ホモ接合)でなければならない。後続の放任受粉世代すべてにおいて耐性表現型のみを分離するホモ接合性耐性(RR)系統が開発された。これらのホモ接合性耐性系統には現在では、園芸上望ましい他のホモ接合性形質が取り込まれている。これには植物の性状、花の色および花の大きさが含まれるが、これらに限定されない。本発明者らは今回、通常の交雑育種法によりエキビョウ菌耐性遺伝子を、表1に挙げた“リトル”、“クーラー”、“プレティ・イン”および“トロピカーナ”系列を含む市販の重要なカタランタス・ロゼウス栽培変種すべてに交雑した。これらの多様なバックグラウンドにおける耐性遺伝子の発現および分離が、本発明者の予想どおりに伝達された。この広範な遺伝的根拠を新規なエキビョウ菌耐性栽培変種の開発に利用した。
【0051】
実施例8 エキビョウ菌耐性F1雑種栽培変種
現在入手しうるすべての市販のカタランタス・ロゼウス栽培変種は放任受粉作物として生産されているが、エキビョウ菌耐性F1雑種を生産することもできる。F1雑種においては、花粉の欠如または手作業による除雄のため自家受粉が不可能な雌系統が、他の花粉産生(“雄”)系統から受粉する。得られたF1雑種は雑種強勢によって花粉親および雌の両ゲノムの外観を発現する。カタランタス・ロゼウス以外に、現在市販されている極めて高い割合の花および野菜の種子が共にF1雑種種子である。
【0052】
1雑種種子の生産における雌として用いるのに適したカタランタス・ロゼウス系統が生産された。エキビョウ菌耐性は優性対立遺伝子により一遺伝子制御されているので、F1雑種世代に発現するエキビョウ菌耐性を雄、雌または両方が提供することができる。このような生産方式によって均一にエキビョウ菌耐性である新規なF1雑種栽培変種が得られた。
【0053】
実施例9 アブラムシおよびダニを含めた他の害虫に対する付加的耐性
新規なカタランタス・ロゼウス栽培変種を開発するための長期育種計画により、アブラムシ(Myzus persicae)モモアカアブラムシ)およびダニ(Tetranychus urticae、ナミハダニ)を含めた一般的な温室害虫に対する感受性に関して既存の栽培変種および育種系統の行動を観察する十分な機会を得た。表8はこれらの一般的な温室害虫に対する選ばれた系統および栽培変種の感受性の質的な差を示す。興味深いことに、エキビョウ菌耐性であるため選ばれた系統は、アブラムシおよびダニなどの温室害虫による攻撃をより受けにくい。逆にエキビョウ菌感受性であることが知られている系統はアブラムシおよびダニなどの温室害虫による攻撃をより受けやすい。表8に示すように、極めてエキビョウ菌感受性であるため選ばれた系統13812は、アブラムシおよびダニの侵入も極めて受けやすい。本発明のエキビョウ菌耐性遺伝子の発現は、アブラムシおよびダニを含めた他の害虫(これらに限定されない)からの保護の増大と強く関連すると思われる。
【0054】
【表8】
Figure 0004303784
【0055】
実施例10 耐性表現型の評価−可能性のある作用メカニズム
先に述べたように、カタランタス属植物種はそれらがアルカロイドを産生することで周知である。表9は、選ばれたカタランタス系統における全アルカロイド含量とエキビョウ菌耐性発現の関係を示す。エキビョウ菌耐性であるため選ばれた系統15667は、他のカタランタス属植物種または栽培変種につき報告されている全アルカロイドの一致した水準の3.6倍を越える量を含有する。系統15667は、表8に示すようにアブラムシおよびダニに対しても耐性が高い。このように、間接的な証拠はエキビョウ菌耐性遺伝子の作用様式がアルカロイドの産生および/または活性の増大を伴うものであることを示す。他の系統、たとえば表9中の15614および15620は、アルカロイド水準の増大を伴わないが、なおかつエキビョウ菌耐性を発現し、従って全アルカロイド含量よりむしろアルカロイド組成の質的な変化が耐性表現型に影響を及ぼしたという可能性がある。本発明のエキビョウ菌耐性遺伝子は、カタランタスにおけるアルカロイドの合成および活性の調節に強く関与している。しかしこの作用は耐性現象の他の観点の可能性を排除するものではない。
【0056】
実施例11 害虫耐性を得るための、耐性遺伝子を用いた他の作物種の形質転換
本発明のエキビョウ菌耐性遺伝子をエキビョウ菌病害に対して感受性である他の作物種の形質転換に直接に利用しうることは重要である。現在多くの植物種に適用されている形質転換法(RobinsonおよびRiroozabady,Scientia Horticulturae 55:83−99,1993)は、目的とする遺伝子を供給源(この場合はエキビョウ菌耐性カタランタス)から標的種へ移動させることができる。当業者に知られている、現在利用しうる分子法により遺伝子を配列決定し、クローニングし、その発現が有用である他の種に挿入する。ヤシ、ブーゲンビリア(Bougainvillea)および他の園芸植物を含めた空気感染性エキビョウ菌に対して現在感受性である作物において耐性遺伝子を発現させることは、殺虫薬によらない保護の、新たな供給源を提供する。一見すると、増大したアルカロイド含量(従ってエキビョウ菌耐性)が食用作物に害を与えるかも知れないという疑問をもつであろう。この状況の可能性はあるが、ジャガイモは食用作物が本発明の耐性遺伝子の形質転換挿入によっていかに利益を受けるかという良い例を提供する;ジャガイモの茎および葉はそれらが含有する高水準のアルカロイドのため既に有毒であるが、植物が産生する塊茎は可食性である。このように本発明の耐性遺伝子による形質転換によって達成されるアルカロイド発現の変化は、作物の食用性に影響を及ぼすことなく、殺虫薬によらない付加的な作物保護を与えることができる。
【0057】
選ばれた遺伝子が現在カタランタスから分離され、クローニングされている。Meijerら,Plant Mol.Biol.,22:379−383(1993)(本明細書に参考として含まれるものとする)は、カタランタス・ロゼウスから当業者に知られている標準法によりシトクロムP−450 cDNAクローンを分離した。Goddijinら,Plant Mol.Biol.,22:907−912(1993)(本明細書に参考として含まれるものとする)は、カタランタス・ロゼウスからトリプトファンデカルボキシラーゼ遺伝子を分離し、この同じ遺伝子をアグロバクテリウム仲介によるタバコ葉ディスク形質転換実験において選択性マーカーとして用いた。彼らはカタランタス遺伝子を発現する成熟した形質転換タバコ植物を回収することができた。このように現在では本発明者らのエキビョウ菌耐性遺伝子を他の作物種に用いて形質転換する方法を当業者は利用しうる。
【0058】
実施例12 商業的なアルカロイド生産
アルカロイドの量および質を調節するための耐性遺伝子の利用
エキビョウ菌に対する耐性をもつものを選択したところ、選択した系統におけるアルカロイドの水準が高かった。ただし重要な点は、これらの系統がアルカロイドの含量または質のため特別に選択されたのではないことを留意すべきであるという点である。現在では、表9に示すように耐性遺伝子がアルカロイドの産生量に直接に影響を及ぼすことが明らかであるので、耐性遺伝子を含む系統をスクリーニングすることによって、アルカロイド含量の増加したものを意図的に選択することができる。YoderおよびMahlberg Am.J.Bot.,63:1167−1173(1976)は、カタランタス・ロゼウスの葉のインドール系アルカロイド濃度が高いこと(“1.5%”)、およびそれらが主として特殊な細胞中に見出されるという事実は、その植物がインドール系アルカロイドを構成的に蓄積し、恐らく自家中毒を克服するメカニズムを既に進化させているということを示すものであると示唆している。表9に報告したものを上回る高いアルカロイド含量を達成しうると予想される;さらに、全アルカロイド含量よりむしろ特定のアルカロイドを選択することは、カタランタスにおけるアルカロイド産生を改良する効果的な手段となる。本発明者らは現在、カタランタスにおけるアルカロイド合成遺伝子を包含する米国特許を知らない;さらに、カタランチン、ビンドリン、ビンブラスチンおよびビンクリスチンを含めた重要なアルカロイドに至る合成経路は、カタランタスにつき報告されているにすぎない。BalsevichおよびHogge,J.Nat.Prod. 51:1173−1177に述べられるように、量的にはカタリン、ビンドリンおよびアンヒドロビンブラスチンがカタランタスにおいて最も多いアルカロイドである。野外で生育したカタランタス・ロゼウス植物が(現在では)、抗がん療法用アルカロイドであるビンブラスチンおよびビンクリスチンの産生のための唯一の商業的供給源である。カタランタス・ロゼウスアルカロイドの金銭的価値を考えると、アルカロイドの量または質のわずかな改良ですら経済上の莫大な可能性に換算することができる。長期にわたってアルカロイドのインビトロ産生のために組織培養法を利用する多数の試みがなされてきた。これらのインビトロ法の経済的効率は、一部はアルカロイド産生量が低いため達成されなかった。アルカロイドの産生水準および/または質を高めるためにエキビョウ菌耐性遺伝子を利用することにより、インビトロアルカロイド産生を実施可能にすることができる。従ってカタランタスアルカロイド産生のいずれかの観点のために、耐性遺伝子を全植物体、植物の器官、組織、細胞、プロトプラストまたは細胞抽出物に使用することができる。本発明の遺伝的耐性対立遺伝子を含む植物を野外生産条件下で生育させて、目的とするアルカロイドを生産することができる。
【0059】
【表9−1】
Figure 0004303784
【0060】
【表9−2】
Figure 0004303784
【0061】
寄託情報
カタランタス・ロゼウス種子はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)、20852マリーランド州ロックビル、に1994年1月14日に寄託番号75636で寄託された。
【0062】
以上、本発明を明確にし、理解するために、図面および実施例によってある程度詳細に記載したが、請求の範囲により限定される本発明の範囲内で一定の変更および修正をなしうることは明らかであろう。

Claims (9)

  1. エキビョウ菌(Phytophthora)に対する遺伝的耐性アリルを含むカタランタス(Catharanthus)種子であって、前記遺伝的耐性アリルが、ATCC寄託番号75636で寄託された種子中に存在するものである、前記カタランタス種子。
  2. 種子がフィトフトラ・パラシチカ(Phytophthora parasitica)に対する耐性に関する優性対立遺伝子を含む、請求項1に記載のカタランタス種子。
  3. 請求項1に記載の種子を生育させることにより生産されるカタランタス植物。
  4. 請求項3に記載の植物の花粉。
  5. 請求項3に記載の植物の胚珠。
  6. 植物がエキビョウ菌に対する遺伝的耐性を含む、請求項3に記載の植物の再生可能な細胞を含む組織培養物。
  7. 第1の親カタランタス植物を第2の親カタランタス植物と交配し、得られたF1雑種カタランタス種子を収穫し、その際第1または第2の親カタランタス植物が請求項3に記載のカタランタス植物であることを含む、エキビョウ菌(Phytophthora)に対する遺伝的耐性アリルを含む1雑種カタランタス種子の生産方法。
  8. 請求項7に記載の雑種カタランタス種子を生育させることにより生産され、エキビョウ菌(Phytophthora)に対する遺伝的耐性アリルを含む第1世代(F1)雑種カタランタス植物。
  9. 請求項6の組織培養物から再生したカタランタス植物。
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