JP4302662B2 - 熱物性測定装置,熱物性測定方法 - Google Patents
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上記のような原理による熱物性の測定装置として,例えば特許文献1等に記載の装置が知られている。図1は特許文献1に記載の微小領域熱物性測定装置の概略構成図である。以下,図1を参照しつつ,特許文献1等の従来例に記載の微小領域熱物性測定装置について説明する。
前記加熱用レーザ光源1から加熱光Eが照射される。前記加熱光Eは交流変調器2を通過する際に周期的に強度変調される。また,前記加熱光Eはハーフミラー3に反射され,前記ハーフミラー4を通過する。更に,前記加熱光Eはレンズ5により集光されつつ前記試料載置台6に載置される試料7の測定部に照射される。前記試料7の測定部は,前記加熱光Eの照射により加熱される。
尚,関数発生器13はドライバ8に対して加熱光の強度変調信号を出力する。前記ドライバ8は,それに基づいて前記交流変調器2に信号を出力し,加熱光の強度を変調する。
一方,前記検出光レーザ光源9からは検出光Dが照射される。前記検出光Dは前記ハーフミラー3,4を透過して前記試料7に照射され反射される。前記試料7により反射された前記検出光Dは前記ハーフミラー4により反射され,光学フィルタ10を通過して検出光測定器11により検出される。また,前記検出光Dは前記検出光測定器11により検出され電気信号に変換され,前記ロックインアンプ12に入力される。
前記ロックインアンプ12は,前記関数発生器13による信号を参照信号として用い,前記加熱光Eに対する前記検出光Dの強度変化(熱反射信号)を観測する。これにより,前記ロックインアンプ12は前記試料7の熱物性を測定する。
ところが,一箇所における反射強度のみでは,前記試料の熱物性において特に重要となる熱拡散等を測定することが不可能である。
また,通常加熱光Eと前記検出光Dとはほぼ同軸になるようにレーザ光源各々及びハーフミラーの配置が調節されるが,レーザ光である前記加熱光Eには分布のムラが生じており,前記加熱光Eと前記検出光Dの相対位置関係に誤差が生じるたびに測定結果にバラツキが生じ,該測定結果の信頼性が低下するという問題点もある。
従って,本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,熱拡散などの熱物性における重要な情報を得ることが可能であり,なおかつ加熱光の分布ムラによる測定結果の信頼性低下を解消することが可能な熱物性測定装置,熱物性測定方法を提供することにある。
このように,前記加熱光と前記検出光の相対位置が変化した各状態に対する前記測定結果の分布を得ることにより,例えば熱拡散等の重要な熱物性を評価することが可能になる。また,従来例において生じていた測定結果のバラツキは,前記相対位置変化に対応する測定結果の分布情報として観測されるので,測定結果の信頼性低下をもたらす要因とはならない。
尚,前記照射位置の相対的な位置関係を変化させる方法としては,本発明のように前記検出光の照射方向を固定して前記加熱光を前記試料に向けて偏向ミラーの向きを偏向するのが最も簡単である(前記試料に反射された検出光を観測する装置であるため,前記検出光の照射位置を動かすのは煩雑である)。
本発明は,前記熱物性測定装置で採用される熱物性測定方法として捉えたものであっても良い。
ここに,図1は従来例における微小領域熱物性測定装置の概略構成図,図2は本発明の実施形態に係る熱物性測定装置の概略構成図,図3は本発明の実施形態に係る熱物性測定装置による加熱光の照射位置変化の様子を示す概略図,図4は加熱光の照射位置と検出光の反射率変化との関係を示すグラフ,図5は本発明の実施形態に係る熱物性測定装置により得られる検出光の強度分布を示すグラフである。尚,従来例と同様の構成については同じ符号を用いるものとして,その説明を省略する。
図2に示される,本発明の実施形態に係る熱物性測定装置Aは,加熱用レーザ光源1,音響光学変調器14,ビーム調整器15a,15b,制御装置16,アクチュエータ17,ダイクロイックミラー18,ビームスプリッタ19,レンズ5,試料載置台6,ドライバ8,検出用レーザ光源9,光学フィルタ10,検出光測定器11,フィルタ20,ロックインアンプ12等を有して概略構成される。
前記加熱用レーザ光源1(加熱光照射手段の一例)から,例えば波長532nmのYAGレーザ等の加熱光Eが出射される。前記加熱用レーザ光源1より出射された前記加熱光Eは,前記音響光学変調器14を通過する際に,周波数fで強度変調される。詳しくは,前記制御装置16により生成された,強度変調情報を表す変調制御信号が前記ドライバ8に入力されており,該ドライバ8で前記音響光学変調器14を制御することにより,前記加熱光Eは周波数fで強度変調される。
一方,前記検出用レーザ光源9(検出光照射手段の一例)からは,例えば波長635nmの半導体レーザ等の検出光Dが出射される。前記検出光Dは,前記ビーム調整器15bを通過する際に同じくビームの広がり角が調節された上で前記ビームスプリッタ19に入射し,反射される。前記ビームスプリッタ19により反射された前記検出光Dは前記ダイクロイックミラー18を通過し,前記レンズ5により集光されつつ前記試料7に照射される。前記検出光Dは,前記加熱光Eの照射により変化する前記試料7の表面温度に応じた反射率(反射強度)で反射される。前記検出光Dは入射時と同じ光路を遡り,前記ダイクロイックミラー18及び前記ビームスプリッタ19を通過し,更に光学フィルタ10を通過して,前記検出光Dを測定する前記検出光測定器11に入射する。
前記検出光測定器11は,前記検出光Dをその強度に応じた信号レベルの電気信号に変換し,前記フィルタ20を介して前記ロックインアンプ12に入力する。前記制御装置16から前記ドライバ8に入力された前記変調制御信号は前記ロックインアンプ12にも入力されており,前記ロックインアンプ12は前記変調制御信号を参照信号として用いることで,前記加熱光Eに対する前記検出光Dの強度変化を測定し,前記試料7の熱物性を評価する。以上は,従来例と同様である。
即ち,図3に示されるように,前記加熱光Eの前記試料7における照射位置を変化させることにより,前記加熱光E及び前記検出光Dの照射位置の相対的な位置関係を変化させる機能である。詳しくは,前記試料7の測定部に向けて前記加熱光Eを反射(偏向の一例)させる前記ダイクロイックミラー18(偏向ミラー)は,前記アクチュエータ17の駆動軸に連結されている。該アクチュエータ17の駆動に伴って反射面(前記加熱光Eが入射する側の面)の向きが変化され,前記加熱光Eの照射方向を変化させることが可能である。
尚,前記アクチュエータ17は前記制御装置16により駆動制御されるものであり,前記アクチュエータ17及び前記制御装置16が光照射位置変更手段の一例である。
前記検出光Dの強度分布の情報は,以下のように得ることが可能である。
即ち,前記加熱用レーザ光源1より前記加熱光Eを照射するとともに前記制御装置16が前記アクチュエータ17の駆動制御を行うと,前記加熱光Eが照射される前記ダイクロイックミラー18の反射面の向きが変化し,前記試料7の測定部において前記加熱光Eが直線状に走査する。一方,前記検出光Dの照射位置は略固定であり,前記加熱光Eの走査に伴って前記検出光Dと前記加熱光Eとの相対的な位置関係が変化する。
この際に,前記試料7で反射された前記検出光Dの,前記検出光測定器11による受光,前記電気信号への変換を継続する。つまり,前記ロックインアンプ12は,前記検出光測定器11により入力された前記電気信号の強度変化を時系列で観測する。また,その観測結果を前記制御装置16に入力する。前記制御装置16は,前記アクチュエータ17の駆動制御の際に,前記アクチュエータ17に対して駆動制御信号を出力した時間情報と,前記駆動制御信号の表す駆動量との対応関係を保持しておくものとする。従って,前記時系列で記録された前記電気信号の強度変化情報(上述の観測結果)は,前記アクチュエータ17の駆動量に対する前記強度の変化に換算することが可能であり,ひいては図5に示されるような,前記加熱光E及び前記検出光Dの照射位置の相対的な位置関係に対する前記検出光Dの強度分布を得ることが可能である。前記ロックインアンプ12及び前記制御装置16が検出光分布測定手段の一例である。
図5の黒丸はアルミ蒸着されたガラスに対する測定結果のプロットであり,白四角はシリコンに対する測定結果のプロットである。シリコンに比べて熱伝導率の小さいガラスの場合では,熱拡散が小さい(温度の散逸が低い)ために前記電気信号の強度が高くなり,かつ相対距離の拡大に伴う減衰が大きい。このような相対距離拡大に伴う減衰の大きさなどから,前記試料7における熱拡散などを評価することが可能である。
例えば,加熱用レーザ光源1の位置を,前記加熱光Eの照射位置が前記試料7における走査方向とは直交する向きに変化するように変位させる機構を設ける。これにより,前記加熱光Eの照射位置と検出光Dの照射位置との相対位置関係が変化した各状態において,2次元的な前記検出光Dの強度分布を測定することが可能であり,前記試料7における熱拡散の異方性などを評価することが可能である。
B…従来例における微小領域熱物性測定装置
1…加熱用レーザ光源
2…交流変調器
3,4…ハーフミラー
5…レンズ
6…試料載置台
7…試料
8…ドライバ
9…検出用レーザ光源
10…光学フィルタ
11…検出光測定器
12…ロックインアンプ
13…関数発生器
14…音響光学変調器
15a,15b…ビーム調整器
16…制御装置
17…アクチュエータ
18…ダイクロイックミラー
19…ビームスプリッタ
20…フィルタ
Claims (2)
- 所定の加熱光を試料の測定部に照射する加熱光照射手段と,前記試料の測定部に所定の検出光を照射する検出光照射手段と,前記加熱光の照射により変化する前記試料の測定部の表面温度に応じた反射率で該試料の測定部から反射した前記検出光の強度を測定する検出光測定手段と,を備えてなる熱物性測定装置であって,
前記検出光の照射方向が固定された状態で,前記加熱光を前記試料に向けて偏向させる偏向ミラーの反射面の向きを変更することにより,前記試料の測定部における前記加熱光及び前記検出光の照射位置の相対位置関係を二次元的に様々な位置関係に変化させる光照射位置変更手段と,
前記光照射位置変更手段により前記加熱光及び前記検出光の照射位置の相対位置関係が変化した各状態における前記検出光測定手段による測定結果の分布を測定する検出光分布測定手段と,
を具備してなることを特徴とする熱物性測定装置。 - 所定の加熱光を試料の測定部に照射しつつ,前記試料の測定部に所定の検出光を照射し,前記加熱光の照射により変化する前記試料の測定部の表面温度に応じた反射率で該試料の測定部から反射した前記検出光の強度を測定する熱物性測定方法であって,
前記検出光の照射方向が固定された状態で,前記加熱光を前記試料に向けて偏向させる偏向ミラーの反射面の向きを変更することにより,前記試料の測定部における前記加熱光及び前記検出光の照射位置の相対位置関係を二次元的に様々な位置関係に変化させる光照射位置変更工程と,
前記光照射位置変更工程により前記加熱光及び前記検出光の照射位置の相対位置関係が変化した各状態における前記試料の測定部から反射した前記検出光の測定結果の分布を測定する検出光分布測定工程と,
を具備してなることを特徴とする熱物性測定方法。
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