JP4301845B2 - 麻混抄シート - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は2以上の繊維シートを抄き合わせてなるシートに関し、特に少なくとも一定量の麻繊維を含有するシートと熱可塑性繊維からなるシートを抄き合わせてなり、環境・人体に優しく、剛性の高いシート、例えば自動車内装材等に適した麻混抄シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂の用途の一つとして、従来から自動車の内装材としての用途が知られている。この場合には、(1)剛性が高いこと、(2)軽量であること、に加えて(3)線膨張係数が低いことが要求される。線膨張係数の低減は、自動車内温度が季節によって大きく変動し、その温度差が100℃にも及ぶことに起因するが、熱可塑性樹脂だけでその要求を満たすことは出来ない。
そこで、従来から、熱可塑性樹脂製内装材の線膨張係数を低減させる為の技術が種々提案されており、その代表的な技術として、ガラス繊維からなるマットを熱可塑製樹脂からなる層の表面に貼付して積層体とすることが知られている。
【0003】
しかしながら近年、ガラス繊維は塵肺病における石綿と似た原因物質となることが判明し、製造作業環境や廃棄処理の困難性の観点から、規制対象となりつつあるので、その代替品の開発が望まれるに至った。これに対し、熱可塑製樹脂と50〜90重量%の麻繊維とからなる麻繊維含有熱可塑製樹脂シート層と、熱可塑製樹脂からなる層を夫々1層以上有してなる積層体が提案された(特許文献1及び2)。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−121651号公報
【特許文献2】
特開2001−122046号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の積層シートは、別々に予め製造した麻繊維含有熱可塑性樹脂シートと熱可塑性樹脂からなるシートを、後から貼り合わせるものであるので、製造工程が煩雑である上高コストとなる。また接着剤によって貼り合わせたものは、溶剤を使用するので製造時に作業環境が悪化するという欠点があった。また、剛性が高い麻繊維をシート中に含むと、シートを曲げた場合に、麻繊維の一部がシートから飛び出して毛羽立ちを生じたり、時には脱落するという欠点があった。
そこで、本発明者は上記の欠点を解決するために鋭意検討した結果、熱可塑性樹脂を全て繊維化し、抄き合わせの技術によって麻繊維と共に積層シートを製造した場合には、安価であるのみならず、環境・人体に優しく、剛性の高いシート、例えば自動車内装材として好適なシートを得ることが出来ることを見出し、本発明に到達した。
従って本発明の第1の目的は、安価で環境・人体に優しく、剛性高いと共に、麻繊維の脱落が防止された麻混抄シートを提供することにある
【0006】
【課題を解決する手段】
本発明の上記の諸目的は、麻繊維を30〜90質量%及び熱可塑性樹脂繊維を10〜70質量%含有する麻繊維シートの両面に、熱可塑性樹脂繊維を80質量%以上含有する樹脂繊維シートを、少なくとも1層ずつ抄き合わせてなることを特徴とする麻混抄シートによって達成された。
前記麻繊維シートに含有させる熱可塑性樹脂繊維は、融点が80〜180℃の熱溶融性樹脂繊維であることが好ましく、樹脂繊維シートに含有される熱可塑性樹脂繊維は、融点が80〜180℃の熱溶融性樹脂繊維30〜60質量%と融点が200℃以上の熱可塑性樹脂繊維40〜70質量%から成ることが好ましい。また、本発明で使用する麻繊維は、ヤング率が2,500kg/mm以上のものであることが好ましい。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明で使用する麻繊維は、リネン(亜麻)、ラミー(苧麻)、ジュート(黄麻)、マニラ麻、サイザル麻、ケナフ(洋麻)等の公知の麻繊維の中から適宜選択することが出来るが、そのヤング率が2,500kg/mm2以上のものが好ましい。このような高ヤング率のものを使用することにより、剛性が高く、例えば自動車内装材として好適な麻混抄シートを得ることが出来る。
本発明の麻混抄シートは抄き合わせによって製造するので、麻繊維等の繊維長は、3〜100mmであり、特に10〜60mmであることが好ましい。また、繊維径は10〜500μm、好ましくは100〜300μmである。
【0008】
本発明における、麻繊維を30〜90質量%含有するシートに含有される他の繊維は主として熱可塑性樹脂繊維であるが、抄き合わせの後の加熱によって各層を熱融着させるのに支障を生じない限り、適宜他の繊維を併用しても良い。上記熱可塑性樹脂繊維の含有量は、70〜10質量%であることが好ましい。ここで使用する熱可塑性樹脂繊維は融点が80〜180℃であるいわゆる熱溶融性樹脂繊維が好ましく、特に100〜160℃であるものが好ましい。このような熱可塑性樹脂繊維の例としては、例えばポリエチレン樹脂繊維、ポリプロピレン樹脂繊維、ポリエステル樹脂繊維等を挙げることが出来る。
【0009】
本発明における熱可塑性樹脂繊維を含む樹脂繊維シートとは、熱可塑性樹脂繊維が80質量%以上のシートである。この場合の熱可塑性樹脂繊維としては、前記麻繊維を含有するシートで使用する融点が80〜180℃の熱溶融性樹脂繊維及び融点が200℃以上の熱可塑性樹脂繊維を併用したものであることが好ましい。これらの熱可塑性樹脂繊維を併用することにより、抄紙工程中の加熱により、融点が80〜180℃の熱溶融性樹脂繊維が溶融し、樹脂繊維シート中の融点が200℃以上の熱可塑性樹脂繊維同士、又は樹脂繊維シートと麻繊維シートとを接着させ、麻繊維シートの表面を樹脂繊維シートで覆うことが出きるので、麻繊維シート中の麻繊維の毛羽立ちや脱落をより確実に防止することができる。融点が80〜180℃の熱溶融性樹脂繊維の含有量は、30〜60質量%、融点が200℃以上の熱可塑性樹脂繊維の含有量は、40〜70質量%であることが好ましい。また、このシートで使用する熱可塑性樹脂繊維以外の繊維は、公知の繊維の中から適宜選択して使用することが出来る。
本発明における樹脂繊維シートは、麻繊維シートと抄き合わすことにより、麻混抄シート中に含有される麻繊維の毛羽立ちや脱落を防止することが出来る。
樹脂繊維シートを麻繊維シートの両面に抄き合わせることが必要である
【0010】
本発明の麻混抄シートは、公知の多層抄用抄紙機で製造できる。例えば、円網2基と短網1基を備えた多層抄用抄紙機が挙げられる。
この抄紙機を使用する場合、熱可塑性樹脂繊維を水に分散しスラリーを作製し紙料とする。この紙料を円網で抄紙し、樹脂繊維シートを形成する。一方、麻繊維と熱可塑性樹脂繊維を水に分散しスラリーを作製し紙料とする。この紙料を短網で抄紙し、麻繊維シートを形成する。同時に、毛布に樹脂繊維シート、麻繊維シート、樹脂繊維シートの順に連続して積層し、乾燥することで本発明の麻混抄シートを得ることが出来る。
【0011】
【発明の効果】
本発明においては、抄き合わせによって連続して積層シートを製造するので生産効率が良く、これによってシートの生産コストを低減させることが出来る他、環境・人体に有害な接着剤等を使用しなくても良い。また、麻繊維の毛羽立ちや脱落が防止される。
【0012】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって更に詳述するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0013】
実施例1.
熱可塑性樹脂繊維としてポリエステル繊維(クラレ エステルEP−133:融点263℃)50質量部及び熱溶融性ポリエステル繊維(クラレ ソフィットN−720:融点110℃)50質量部を混合し、水に分散させ0.3質量%のスラリーを作製し、紙料とした。この紙料を角形シートマシンにてシート化し、製紙用フェルトにこのシートを転移させ、第1の樹脂繊維シート(乾燥後の米坪量が約10g/m)を形成した。
【0014】
サイザル麻(繊維長20mm、繊維径182μm、ヤング率:5500kg/mm2)60質量部と熱溶融性ポリエステル繊維(ユニチカ メルティ4000:融点110℃)40質量部を混合し、水に分散させて0.3質量%のスラリーを作製し、紙料とした。この紙料を角形シートマシンにてシート化して麻繊維シート(乾燥後の米坪量が約100g/m)を形成し、先に製紙用フェルトに転移させた第1の樹脂繊維シート上に転移させ、2つの層からなる抄き合わせシートを得た。
【0015】
熱可塑性樹脂繊維としてポリエステル繊維(クラレ エステルEP−133:融点263℃)50質量部および熱溶融性ポリエステル繊維(クラレ ソフィットN−720:融点110℃)50質量部を混合し、水に分散させて0.3%のスラリーを作製し、紙料とした。この紙料を角形シートマシンにてシート化して第2の樹脂繊維シート(乾燥後の米坪量が約10g/m)を形成し、先に製紙用フェルトに転移させた前記抄き合わせシートの麻繊維シート上に転移させ、3層からなる抄き合わせシートを得た。
この3層からなる抄き合わせシートを120℃に加熱したシリンダードライヤーにて乾燥し、米坪129.2g/m2で厚さ565μmのシートを得た。
【0016】
実施例2.
熱可塑性樹脂繊維としてポリエステル繊維(クラレ エステルEP−133:融点263℃)50質量部及び熱溶融性ポリエステル繊維(クラレ ソフィットN−720:融点110℃)50質量部を混合し、水に分散させて0.3質量%のスラリーを作製し、紙料とした。この紙料を角形シートマシンにてシート化し、製紙用フェルトにこのシートを転移させ、第1の樹脂繊維シート(乾燥後の米坪量が約10g/m)を形成した。
【0017】
亜麻(繊維長20mm、繊維径30μm、ヤング率:2500kg/mm2)60質量部と熱溶融性ポリエステル繊維(ユニチカ メルティ4000:融点110℃)40質量部を混合し、水に分散させて0.3質量%のスラリーを作製し、紙料とした。この紙料を角形シートマシンにてシート化して麻繊維シート(乾燥後の米坪量が約100g/m)を形成し、先に製紙用フェルトに転移させた第1の樹脂繊維シート上に転移させ、2つの層からなる抄き合わせシートを得た。
【0018】
熱可塑性樹脂繊維としてポリエステル繊維(クラレ エステルEP−133:融点263℃)50質量部及び熱溶融性ポリエステル繊維(クラレ ソフィットN−720:融点110℃)50質量部を混合し、水に分散させて0.3質量%のスラリーを作製し、紙料とした。この紙料を角形シートマシンにてシート化して第2の樹脂繊維シート(乾燥後の米坪量が約10g/m)を形成し、先に製紙用フェルトに転移させた前記抄き合わせシートの麻繊維シート上に転移させ、3層からなる抄き合わせシートを得た。
この3層からなる抄き合わせシートを120℃に加熱したシリンダードライヤーにて乾燥し、米坪127.4g/m2で厚さ434μmのシートを得た。
【0019】
比較例1.
熱可塑性樹脂繊維としてポリエステル繊維(クラレ エステルEP−133:融点263℃)50質量部及び熱溶融性ポリエステル繊維(クラレ ソフィットN−720:融点110℃)50質量部を混合し、水に分散させて0.3質量%のスラリーを作製し、紙料とした。この紙料を角形シートマシンにてシート化し、製紙用フェルトにこのシートを転移させ、第1の樹脂繊維シート(乾燥後の米坪量が約10g/m)を形成した。
【0020】
綿(繊維長20mm、繊維径10μm、ヤング率:1,200kg/mm2)30質量部及び熱溶融性ポリエステル繊維(ユニチカ メルティ4000:融点110℃)70質量部を混合し、水に分散させて0.3質量%のスラリーを作製し、紙料とした。この紙料を角形シートマシンにてシート化して繊維シート(乾燥後の米坪量が約100g/m)を形成し、先に製紙用フェルトに転移させた第1の樹脂繊維シート上に転移させ、2つの層からなる抄き合わせシートを得た。
【0021】
熱可塑性樹脂繊維としてポリエステル繊維(クラレ エステルEP−133:融点263℃)50質量部及び熱溶融性ポリエステル繊維(クラレ ソフィットN−720:融点110℃)50質量部を混合し、水に分散させて0.3質量%のスラリーを作製し、紙料とした。この紙料を角形シートマシンにてシート化して第2の樹脂繊維シート(乾燥後の米坪量が約10g/m)を形成し、先に製紙用フェルトに転移させた前記抄き合わせシートの繊維シート上に転移させ、3層からなる抄き合わせシートを得た。
この3層からなる抄き合わせシートを120℃に加熱したシリンダードライヤーにて乾燥し、米坪124.4g/m2で厚さ317μmのシートを得た。
【0022】
比較例2.
熱可塑性樹脂繊維としてポリエステル繊維(クラレ エステルEP−133:融点263℃)50質量部及び熱溶融性ポリエステル繊維(クラレ ソフィットN−720:融点110℃)50質量部を混合し、水に分散させて0.3質量%のスラリーを作製し、紙料とした。この紙料を角形シートマシンにてシート化し、製紙用フェルトにこのシートを転移させ、第1の樹脂繊維シート(乾燥後の米坪量が約10g/m2)を形成した。
【0023】
亜麻(繊維長20mm、繊維径30μm、ヤング率:2,500kg/mm2)20質量部と熱溶融性ポリエステル繊維(ユニチカ メルティ4000:融点110℃)80質量部を混合し、水に分散させて0.3質量%のスラリーを作製し、紙料とした。この紙料を角形シートマシンにてシート化して麻繊維シート(乾燥後の米坪量が約100g/m)を形成し、先に製紙用フェルトに転移させた第1の樹脂繊維シート上に転移させ、2つの層からなる抄き合わせシートを得た。
【0024】
熱可塑性樹脂繊維としてポリエステル繊維(クラレ エステルEP−133:融点263℃)50質量部及び熱溶融性ポリエステル繊維(クラレ ソフィットN−720:融点110℃)50質量部を混合し、水に分散させて0.3質量%のスラリーを作製し、紙料とした。この紙料を角形シートマシンにてシート化して第3層(乾燥後の米坪量が約10g/m)を形成し、先に製紙用フェルトに転移させた前記抄き合わせシートの麻繊維シート上に転移させ、3層からなる抄き合わせシートを得た。
この3層からなる抄き合わせシートを120℃に加熱したシリンダードライヤーにて乾燥し、米坪125.8g/m2で厚さ280μmのシートを得た。
【0025】
比較例3.
サイザイル麻(繊維長20mm、繊維径182μm、ヤング率5,500kg/mm2)60質量部と熱溶融性ポリエステル繊維(クラレ ユニチカ メルティ4000:融点110℃)40質量部を混合し、水に分散させて0.3質量%のスラリーを作製し、紙料とした。この紙料を各形シートマシンにてシート化し、製紙用フェルトにこのシートを転移させ、麻繊維シートを形成した。このシートを120℃に加熱したシリンダードライヤーにて乾燥し、米坪110.1g/m2で厚さ587μmのシートを得た。
【0026】
実施例及び比較例で得られた抄き合わせシートについて、柔軟度及び線膨張係数を下記のようにして評価した。またシートの繊維の毛羽立ちを目視で確認した。
<柔軟度>:TAPPI スタンダード T543 pm−84に準じた。
<線膨張係数>:
測定機器:熊谷理機工業株式会社製 自動式紙伸縮計 No.2078−III
試験条件:試験片を測定器にセットした後、20℃、30%RHの環境下で3時間保ち、基準長を定めた。その後、1℃/分の割合で昇温させ80℃、30%RHとした。この環境下で3時間保った後、試験片の伸縮長を測定し、測定値とした。
伸縮率(%)=(測定値/基準長)×100
【0027】
結果は表1に示した通りである。
【表1】
Figure 0004301845
表1の結果は本発明の有用性を実証するものである。

Claims (4)

  1. 麻繊維を30〜90質量%及び熱可塑性樹脂繊維を70〜10質量%含有する麻繊維シートの両面に、熱可塑性樹脂繊維を80質量%以上含有する樹脂繊維シートを、少なくとも1層ずつ抄き合わせてなることを特徴とする麻混抄シート。
  2. 前記麻繊維シートに含有する熱可塑性樹脂繊維が、融点が80〜180℃の熱溶融性樹脂繊維である、請求項1に記載された麻混抄シート。
  3. 前記樹脂繊維シートに含有される熱可塑性樹脂繊維が、融点が80〜180℃の熱溶融性樹脂繊維を30〜60質量%、融点が200℃以上の熱可塑性樹脂繊維を70〜40質量%含有する、請求項1又は2に記載された麻混抄シート。
  4. 前記麻繊維のヤング率が2,500kg/mm以上である、請求項1〜3の何れかに記載された麻混抄シート。
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