JP2005113317A - 麻混抄シート - Google Patents

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昌之 樋口
Kosaku Nagashima
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Abstract

【課題】 安価で環境、人体に優しく、剛性が高く、熱収縮の小さい麻混抄シートを提供する。
【解決手段】 シート中の繊維全体に対し麻繊維を10〜50質量%含有し、かつ熱溶融性樹脂繊維を含有する麻混抄シートである。
【選択図】 なし

Description

本発明は、麻繊維を含有するシートに関し、環境や人体に優しく、剛性が高く、例えば自動車内装材等に適した麻混抄シートに関する。
熱溶融性樹脂の用途の一つとして、従来から自動車の内装材としての用途が知られている。この場合には、(1)剛性が高いこと、(2)軽量であること、に加えて(3)線膨張係数が低いことが要求される。線膨張係数の低減は、自動車内温度が季節によって大きく変動し、その温度差が100℃にも及ぶことに起因するが、熱溶融性樹脂だけでその要求を満たすことは出来ない。
そこで、従来から、熱溶融性樹脂製内装材の線膨張係数を低減させる為の技術が種々提案されており、その代表的な技術として、ガラス繊維からなるマットを熱可塑製樹脂からなる層の表面に貼付して積層体とすることが知られている。
しかしながら近年、ガラス繊維は塵肺病における石綿と似た原因物質となることが判明し、製造作業環境の悪化や廃棄処理の困難性の観点から、規制対象となりつつあるので、その代替品の開発が望まれるに至った。これに対し、熱可塑製樹脂と50〜90重量%の麻繊維とからなる麻繊維含有熱可塑製樹脂シート層と、熱可塑製樹脂からなる層を夫々1層以上有してなる積層体が提案された(特許文献1及び2)。
特開2001−121651号公報 特開2001−122046号公報
しかしながら、上記の積層シートは、別々に予め製造した麻繊維含有熱溶融性樹脂シートと熱溶融性樹脂からなるシートを、後から貼り合わせるものであるので、製造工程が煩雑である上高コストとなる。また接着剤によって貼り合わせたものは、溶剤を使用するので製造時に作業環境が悪化するという欠点があった。また、剛性が高い麻繊維をシート中に含むと、シートを曲げた場合に、麻繊維の一部がシートから飛び出して毛羽立ちを生じたり、時には脱落するという欠点があった。
さらには、シート中の麻繊維の量が多すぎると、熱によるシートの伸び縮みが顕著になる不具合が見られている。特に、温度変化の大きい自動車内装材に用いるためには、シートの熱収縮が小さいことが必要である。
そこで、本発明者は上記の欠点を解決するために鋭意検討した結果、所定量の麻繊維と熱溶融性樹脂繊維とを混合し、抄紙することにより、安価であるのみならず、環境、人体に優しく、剛性が高くて熱収縮の小さい、例えば自動車内装材として好適なシートを得ることが出来ることを見出し、本発明に到達した。
従って本発明の第1の目的は、安価で環境、人体に優しく、剛性が高く、熱収縮の小さい麻混抄シートを提供することにある。
本発明の第2の目的は、剛性の高い麻繊維の脱落が防止された麻混抄シートを提供することにある。
本発明の上記の諸目的は、シート中の繊維全体に対し麻繊維を10〜50質量%含有し、かつ熱溶融性樹脂繊維を含有することを特徴とする麻混抄シートによって達成された。
さらに、前記熱溶融性樹脂繊維より融点の高い合成繊維を含有することが好ましい。又、前記麻繊維の引張弾性率が2.45×1010Pa以上であることが好ましく、前記合成繊維の引張弾性率が1.96×1010Pa以上であることが好ましい。
本発明においては、抄紙法によって麻繊維を含むシートを製造するので生産効率が高く、これによってシートの生産コストを低減させることが出来る他、環境や人体に有害な接着剤等を使用しなくても良い。また、麻繊維の毛羽立ちや脱落が防止される。さらに、シートの剛性が高く、又、熱収縮を小さくすることができる。
本発明の麻混抄シートは、該シート中の繊維全体に対し麻繊維を10〜50質量%含有し、かつ熱溶融性樹脂繊維を含有したものであり、これらの繊維を抄いて製造される。
本発明で使用する麻繊維は、リネン(亜麻)、ラミー(苧麻)、ジュート(黄麻)、マニラ麻、サイザル麻、ケナフ(洋麻)等の公知の麻繊維の中から適宜選択することが出来るが、その引張弾性率が2.45×1010Pa以上のものが好ましい。このような高引張弾性率のものを使用することにより、剛性が高く、例えば自動車内装材として好適な麻混抄シートを得ることが出来る。なお、麻繊維の引張弾性率の上限は特に制限はないが、例えばラミーの場合で6×1010Pa程度のものが得られる。
麻繊維は、麻混抄シート中に10〜50質量%の割合で含有される。麻繊維の含有割合が10質量%未満であると、シートの剛性を充分に高くすることが困難であり、50質量%を超えると、シートの熱収縮が大きくなる。
本発明の麻混抄シートは湿式抄紙法によって製造するので、麻繊維、及び後述する熱溶融性樹脂繊維や合成繊維等の繊維長は、3〜100mmが好ましく、特に10〜60mmであることが好ましい。また、繊維径は好ましくは8〜500μm、より好ましくは10〜300μmである。
本発明の麻混抄シートは、上記麻繊維の他、熱溶融性樹脂繊維を含有する。この熱溶融性樹脂繊維は、抄紙時のドライヤによる加熱及び/又は抄紙後のオーブン等の加熱によって熱溶融性樹脂繊維を熱融着させ、熱溶融性樹脂繊維中に麻繊維が適宜絡んだ状態でシートに成型するものである。熱溶融性樹脂繊維は融点が80〜180℃のものが好ましく、特に100〜160℃であるものが好ましい。このような熱溶融性樹脂繊維の例としては、例えばポリエチレン樹脂繊維、ポリプロピレン樹脂繊維、ポリエステル樹脂繊維、及びこれらの樹脂の複合繊維等を挙げることが出来る。上記熱溶融性樹脂繊維の含有量は、麻混抄シート中の繊維全体に対して70〜10質量%であることが好ましい。
本発明の麻混抄シートにおいては、熱溶融性樹脂麻繊維を熱融着させるのに支障を生じない限り、上記熱溶融性樹脂繊維の他に適宜他の繊維を併用しても良い。
上記他の繊維としては、上記熱溶融性樹脂繊維より融点の高い合成繊維を用いるのが好ましい。この合成繊維は高融点であるので、シートの熱収縮を低減させることができる。合成繊維としては、超高分子量ポリエチレン繊維、ビニロン系繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、炭素繊維等が挙げられる。合成繊維の融点は、熱溶融性樹脂繊維の融点より高ければ特に制限はないが、例えば120℃以上、より好ましくは130℃以上である。合成繊維の引張弾性率は1.96×1010Pa以上であることが好ましい。このような高い引張弾性率のものを使用することにより、シートの剛性を高くすることができる。なお、合成繊維の引張弾性率の上限は特に制限はないが、例えば超高分子量ポリエチレン繊維で12×1010Pa程度、炭素繊維で25×1010Pa程度のものが得られる。
合成繊維の含有量は、麻混抄シート中の繊維全体に対して10〜80質量%であることが好ましい。
本発明の麻混抄シートは、熱溶融性樹脂繊維を熱融着させ、熱溶融性樹脂繊維中に麻繊維を絡めてシートとするので、麻繊維の毛羽立ちや脱落をより確実に防止することができる。又、麻繊維のほかに合成繊維を含有する場合は、熱融着した熱溶融性樹脂繊維中に合成繊維も保持され、合成繊維の脱落等も防止される。
本発明の麻混抄シートは、公知の抄紙機で製造できる。
この抄紙機を使用する場合、麻繊維及び熱溶融性樹脂繊維(さらに必要に応じて合成繊維)を水に分散しスラリーを作製し紙料とする。この紙料をワイヤー上で抄紙し、シートを形成する。そして、このシートを毛布に転移し、その後ドライヤに密着させて加熱乾燥することで、本発明の麻混抄シートを得ることが出来る。
本発明の麻混抄シートの厚さは特に制限されないが、例えば自動車内装材等に使用する場合、200〜600μmであることが好ましい。
(実施例)
以下、本発明を実施例によって更に詳述するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
サイザル麻(繊維長20mm、繊維径182μm、引張弾性率:3.8×1010Pa)40質量%、熱溶融性樹脂繊維(PET繊維、繊維長5mm、繊維径14μm、ユニチカ製 商品名;メルティ4000、融点110℃)30質量%、及び合成繊維(ビニロン系繊維、繊維長12mm、繊維径100μm、クラレ社製 商品名;クラロンK−II REC100、引張弾性率2.5×1010Pa)30質量%を混合し、水に分散させて0.3質量%(固形分)のスラリーを作製し、紙料とした。この紙料を角形シートマシンにてシート化し、このシートを120℃に加熱したシリンダードライヤーにて乾燥し、米坪量77.1g/m、厚さ453μmの麻混抄シートを得た。
上記サイザル麻20質量%、上記熱溶融性樹脂繊維30質量%、及び合成繊維(炭素繊維、繊維長10mm、繊維径16μm、三菱化学産資製 商品名;ダイアリードK6611T、引張弾性率1.8×1011Pa)50質量%を混合し、水に分散させて0.2質量%(固形分)のスラリーを作製し、紙料とした。この紙料を角形シートマシンにてシート化し、このシートを120℃に加熱したシリンダードライヤーにて乾燥し、乾燥後の米坪量78.9g/m、厚さ505μmの麻混抄シートを得た。
上記サイザル麻10質量%、上記熱溶融性樹脂繊維30質量%、及び合成繊維(上記ビニロン系繊維)60質量%を混合し、水に分散させて0.2質量%(固形分)のスラリーを作製し、紙料とした。この紙料を角形シートマシンにてシート化し、このシートを120℃に加熱したシリンダードライヤーにて乾燥し、米坪量75.3g/m、厚さ416μmの麻混抄シートを得た。
(比較例)
上記サイザル麻60質量%、上記熱溶融性樹脂繊維30質量%、及び合成繊維(PET繊維、繊維長20mm、繊維径12μm、クラレ社製 商品名;エステルEPM−133、融点263℃、引張弾性率1.8×1010Pa)10質量%を混合し、水に分散させて0.2質量%(固形分)のスラリーを作製し、紙料とした。この紙料を角形シートマシンにてシート化し、このシートを120℃に加熱したシリンダードライヤーにて乾燥し、米坪量80.9g/m、厚さ446μmの麻混抄シートを得た。
実施例及び比較例で得られた麻混抄シートについて、柔軟度及び線膨張係数を下記のようにして評価した。またシートの繊維の毛羽立ちを目視で確認した。
<引張弾性率>:JIS K7113に準じて測定した。
<柔軟度>:TAPPI スタンダード T543 pm−84に準じた。数値が高いほど材料が硬く、剛性が高い。
<線膨張係数>:
測定機器:熊谷理機工業株式会社製 自動式紙伸縮計 No.2078−III
試験条件:試験片を測定器にセットした後、20℃、30%RHの環境下で1時間保ち、基準長を定めた。その後、1℃/分の割合で昇温させ80℃、30%RHとした。この環境下で3時間保った後、試験片の伸縮長を測定し、測定値とした。
伸縮率(%)=(測定値/基準長)×100
結果は表1に示した通りである。
Figure 2005113317
表1から明らかなように、実施例1〜3の場合、柔軟度が低くて剛性が高く、又、伸縮率が小さくて寸法安定性に優れている。特に、合成繊維として引張弾性率の高い炭素繊維を含有した実施例2の場合、剛性が極めて高くなった。これに対して、麻繊維の含有量が50質量%を超えた比較例1の場合、伸縮率が大きく、寸法安定性が低下した。

Claims (4)

  1. シート中の繊維全体に対し麻繊維を10〜50質量%含有し、かつ熱溶融性樹脂繊維を含有することを特徴とする麻混抄シート。
  2. さらに、前記熱溶融性樹脂繊維より融点の高い合成繊維を含有する、請求項1に記載された麻混抄シート。
  3. 前記麻繊維の引張弾性率が2.45×1010Pa以上である、請求項1又は2に記載された麻混抄シート。
  4. 前記合成繊維の引張弾性率が1.96×1010Pa以上である、請求項1乃至3のいずれかに記載された麻混抄シート。
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