JP4301281B2 - 防護材料、防刃衣および防護具 - Google Patents
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Description
本発明は、柔軟性で運動性に優れた、着用性を重視した防護材料、防刃衣および防護具に関するものである。
従来の防護材料ならびに防刃衣、腕カバー等の防護具としては、身頃全体が一枚の金属板、特許文献1のように複数枚の積層板や樹脂含浸加工した高強度積層織物一体成形品、特許文献2のような小片の金属板組み合わせた構造のもの、特許文献3のようにフレキシブルな衝撃吸収材としては高強力ポリエチレン等の高強度繊維を用いた積層織物が提案されている。
特開昭63−152232号公報
特開平1−46594号公報
特開昭63−80198号公報
しかしながら、前者の2件の公知例は、着用性について全く配慮がなされておらず、非常に硬く運動生に劣るものであった。また、運動の度に積層板が当たり音がするという欠点があった。第3番目の公知例は、柔軟で着用性には優れ、衝撃吸収により防弾性はあるものの、防刃性能はかなり分厚く積層しないと十分な効果を有するものは得られなかった。すなわち、従来の技術では、着用性と防刃性を同時に満足できるものは存在しなかった。
このため、警察官は状況に応じて防弾チョッキと、防刃チョッキを使い分けていた。すなわち、これらは常時身に付けていることができず、警ら中に事件が発生しても、無防備で立ち向かわなければならず、危険に晒される時もあった。
本発明は、かかる従来技術の欠点に鑑み、防護性、特に運動性と防刃性、さらに柔軟性、つまり着用性の3つの特性を同時に満足する優れた防護材料、防刃衣および防護具を提供せんとするものである。
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用する。すなわち、本発明の防護材料は、合成繊維織物の複数枚の積層体からなる防護材料において、該積層体の中間に、金属素線からなる金属ロープと合成繊維とを交織してなる交織織物を挿入したことを特徴とするものである。
また、本発明の防刃衣および防護具は、かかる防護材料で構成されていることを特徴とするものである。
本発明の防護材料によれば、ソフトタイプで従来のものより軽量でかつ薄いもので防刃性が優れ、常時着用しても疲れず、着用性が良くなった。常時着用が可能になったことにより、署員の安全を保護することができる。
本発明は、前記課題、つまり運動性と防刃性、さらに柔軟性、つまり着用性の3つの特性を同時に満足する優れた防護材料について、鋭意検討したところ、特定な織物の中間に金属ロープと合成繊維との交織織物を挿入してみたところ、かかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
すなわち、かかる手段によって、柔軟性を損なわずに運動が容易で着用感に優れるにも拘らず、ナイフなどの刃物による防護性、特に防刃性を著しく改善することができ、かつ、金属ロープにより凹みが少なくなり体へ食い込むのを防止できたものである。
本発明における合成繊維織物は、通常の合成繊維からなる織物であって、たとえばポリオレフィン系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維などで構成された織物を使用することができる。かかる織物の中でも、防護性の点からは、高強度繊維からなる織物、つまり高強度織物が好ましく使用される。かかる高強度織物は、好ましくは12cN/dtex以上の繊維強度を有する合成繊維で構成されているものである。かかる繊維としては、芳香族ポリアミド、高強力糸ポリビニールアルコール繊維、さらには超高分子ポリエチレンなどが好ましく使われ、その中でもパラ系アラミド繊維が、強くて耐熱性に優れているので好ましい。
かかる高強度織物の密度は、高いものほど切創抵抗が大きくなり、特にアイスピックに対しても、大きな防刃効果が得られるので好ましい。かかる密度をカバーフアクターという別の表現で示すことができる。すなわち、該高強度織物の経糸方向および緯糸方向の少なくとも一方のカバーフアクターが、好ましくは800〜1000であるものが使用される。かかるカバーフアクターが、800未満では織目ずれが起こり、切創抵抗が低下し、また、1000を超えると製織性が低下してよくない。また、かかる織物の織組織は、別に制約を受けないが、平織組織のものが薄くて、目ずれしないので好ましい。なお、かかる高強度織物の経糸と緯糸の密度差としては、10%以下であるものが、切創抵抗や防刃性の上から望ましい。
ここで、本発明でいうカバーファクター(CF)とは、次式で表されるものである。かかるカバーファクターが高いほど高密度織物であるといえるものである。
経糸のCF= n1 (D1 )1/2
ここで n1 ;経糸本数(本/2.54cm)
D1 ;経糸の繊度(dtex)
緯糸のCF= n2 (D2 )1/2
ここで n2 ;緯糸本数(本/2.54cm)
D2 ;緯糸の繊度(dtex)。
経糸のCF= n1 (D1 )1/2
ここで n1 ;経糸本数(本/2.54cm)
D1 ;経糸の繊度(dtex)
緯糸のCF= n2 (D2 )1/2
ここで n2 ;緯糸本数(本/2.54cm)
D2 ;緯糸の繊度(dtex)。
かかる高強度織物の総繊度(糸繊度)としては、好ましくは110〜550dtex、さらに好ましくは220〜440dtexという細繊度の糸条で構成された織物を多数積層すると、柔軟な構造であるにも拘らず、エネルギー吸収が大きく、貫通抵抗を高くすることができるので、それだけ高性能の防刃性が得られるものである。ただし、あまり細繊度にしすぎると、コスト高になる。
本発明における金属ロープは、直径が好ましくは0.03〜0.20mm、さらに好ましくは0.05〜0.15mmの範囲にある金属素線で構成されているものである。かかる金属素線の材質としては、表面硬度の大きいものであれば、防刃性に優れているので、別に金属の種類を問わないが、中でもステンレス鋼や炭素鋼などが好ましく使用される。かかる素線を21〜49本撚り合わせて、金属ロープは構成されるものである。かかる撚数が多いほど柔軟な金属ロープを提供することができる。
かかる撚りは、上撚りと下撚りとがあり、本発明における金属ロープにおいては、金属素線の太さが太いものであるほど、かかる上撚りも下撚りも少なく、細いものであるほど、多くの撚をかける。かかる上撚り数としては、素線の太さにもよるが、好ましくは100〜300T/m、さらに好ましくは110〜280T/mの範囲でかけられる。また、下撚り数としては、同様に素線の太さにもよるが、好ましくは150〜650T/m、さらに好ましくは180〜600T/mの範囲でかけられる。
本発明における金属ロープは、具体的にいえば、金属素線3〜7本を、下撚り数A(T/m )=K1 /Dの式において、該K1 =25〜45で合撚し、作られた撚線を5〜7本を、上撚り数B(T/m )=K2 /Dの式において、該K2 =12〜24で合撚して作られるものである。かくして得られる金属ロープは、堅くて切れにくいにもかかわらず曲りやすく、弾力性に富むものであるという特徴を有する。 かかる金属ロープの直径は、用途にもよるが、好ましくは0.4〜1.5mm、さらに好ましくは0.6〜1.2mmの範囲のものが採用される。細いほど柔軟性に富むが、価格が高くなり、また、1.5mmを越えると厚みが増え、重量も重くなるものであるが、要するに、かかる太さのものが、堅くて切れにくいにもかかわらず曲りやすく、弾力性に富むロープを提供する上から使用される。
たとえば防刃チョッキには、1.0〜1.5mmの太さの金属ロープが好ましく使用され、また、ズボン、手袋や小手類には、0.4〜0.8mmのものが好ましく使用される。
かかる金属ロープとしては、1×37本で構成された撚線、3×7本や7×7本の撚り合わされてなるロープを使用することができる。この中で、撚線は硬くて切断面がバラケるため使いにくく、7×7本などの撚り合わされたロープが好ましい。3×7本のものは安価であるがやや硬く、7×7本のものは、柔軟であるがやや高価につくという長所と短所があるが、本発明にはいずれでも使用することができる。また、金属ロープの端面を触ったときのチクリ感を防ぐためにも金属ロープをナイロン樹脂などで被覆することが端面のバラケを防止でき望ましい。
本発明の防護材料は、合成繊維織物の複数枚の積層体において、該積層体の中間に、金属素線からなる金属ロープと合成繊維とを交織してなる交織織物を挿入してなる。すなわち、金属ロープの間に合成繊維、たとえばパラ系アラミド繊維を挿入したり、経に金属ロープ、緯に合成繊維を配してなる織物を使用することができる。
金属ロープのロープ密度は、ロープの直径にもよるが、経緯ともに、好ましくは2〜10本/cm、さらに好ましくは3〜8本/cmである。たとえば、具体的には、直径0.6mmの場合は5〜8本/cm、直径1.2mmの場合は3〜6本/cmの範囲のロープ密度のものが好ましく使用される。かかるロープ密度が高く(本数が多い)なると、重く価格が高くなるし、密度が低い(本数が少ない)と、防刃性能が低下する。また、かかるロープ密度は、経緯とも同一でもよく、異なっていてもさしつかえない。
かかる交織織物を交叉して重ね合わせて使用してもよい。その場合の交叉角度は、好ましくは90度、さらに好ましくは30〜150度に変更して、経方向または緯方向などの一定の方向を強化することもできる。
本発明における交織織物は、その片面または両面を合成樹脂を介して該高強度織物と接着固定されたものを、さらに縫製して防刃衣を形成するものである。かかる合成樹脂は、ラミネートして使用してもよく、両面接着剤やポリウレタン系ボンドなどの接着剤を塗布して使用してもよい。また、かかる防護材料において、好ましくはその上層部に20〜50重量%、下層部に50〜80重量%の高強度織物をそれぞれ配して、かつ、その中間に該シート状物を挿入する、すなわち、表面の外衣側に少なく、裏面の肌側に多くの高密度織物を配置させることにより、より防刃性を向上させることができる。要するに2分割して、その中間にシート状物を挿入するのがよいのである。もちろん、かかる高強度織物としては、複数枚の積層体であるものを使用するのがよい。
かくして得られる本発明の防護材料は、ナイフ、出刃包丁がどの角度から入っても金属ロープで衝撃力を食い止めることができ、たとえロープが切断しても織物積層体で刃物は止まるという効果を奏するものである。また、アイスピックのような先端が細いものは、高密度織物積層体のみでも止めることができるものである。なお、金属ロープが表面または裏面に出現すると、肌触り、手触りに違和感があるため高密度織物で包み込む方が好ましい。このことは、高密度織物より小面積の該シート状物を包み込むようにするのが好ましい。
かかる防護材料を縫製して防刃衣服として使用したり、ヘルメットの中に該シート状物を入れて強化した防護ヘルメットに使用したり、すね当て、腕カバー、靴、靴下として使用することで危険作業、スポーツでの安全性が向上する。
本発明を図面により、以下説明する。
図1は、本発明の防護材料、すなわち、高強度高密度織物と複数枚の金属ロープと合成繊維とを交織してなる交織織物を積層したもの、つまり、複数枚の高強度高密度織物1、1´の間に該交織織物2を挿入して積層した概略図である。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
[参考例]
単糸強度20cN/dtex、総繊度440dtexのパラ系アラミド繊維を用いて、経、緯密度が各々44本/2.54cm、カバーファクターが880の平織物を作成した。
単糸強度20cN/dtex、総繊度440dtexのパラ系アラミド繊維を用いて、経、緯密度が各々44本/2.54cm、カバーファクターが880の平織物を作成した。
該織物20枚を重ねて前見頃形状に縱刃裁断機で裁断した。次に、49本(7×7)の細線で構成される太さ1mmのステンレスロープを経糸整経機で密度を5本/cmになるように引揃え、両面接着シート5をフィードロール7でプレスし、シート上にポリウレタン系ボンド6を落下しながらロープを部分接着し、裏面に前記のアラミド繊維からなる平織物4を貼合わせて乾燥後プレス固定してシリンダー10に巻取って金属ロープシートを作成した。
続いて、該金属ロープシートを30×30cmの4角形に切断し切断面をテープで固定した。
このようにしてできた高密度織物を表5枚、裏15枚に分割し、その間に金属ロープシートを挿入してオーバーロックミシンで回りを縫製し一体化した。
該積層体をポリエステル165dtexの織物で包み込み前見頃を縫製し、後見頃は生地のみで縫製し、前、後見頃を合わせてチョッキに仕上げた。
[実施例1]
太さ1mmのステンレスロープを総繊度1650dtexのパラ系アラミド繊維と1本交互に打込み、ロープの織密度が5本/cmにした経糸と、繊度880dtexのパラ系アラミド繊維を緯糸とから、交織織物を作成した。
太さ1mmのステンレスロープを総繊度1650dtexのパラ系アラミド繊維と1本交互に打込み、ロープの織密度が5本/cmにした経糸と、繊度880dtexのパラ系アラミド繊維を緯糸とから、交織織物を作成した。
上記交織織物を2枚縦横に重ねて、参考例と同様のパラ系アラミド繊維からなる平織物20枚の積層体を一体化して防刃チョッキを作成した。でき上がったチョッキは重量が約650gと軽量で、刃物が侵入しても織目ずれがなく、出刃包丁の貫通抵抗値は2400Nが得られ、柔軟性に優れたものができた。
該防刃材を腕カバーやズボンに仕上げたところ、着用による違和感が少なく好評であった。
[比較例1]
参考例の高密度織物積層体に、太さ0.6mmの1本の鋼線を経緯の密度8本/cmで織った金網を挿入した。でき上がったチョッキの貫通抵抗値は2000Nが得られたが、柔軟性に欠けたものに仕上がった。このため、金網を20分割にしたが、それでも硬く、運動性に欠けるものしか得られなかった。
参考例の高密度織物積層体に、太さ0.6mmの1本の鋼線を経緯の密度8本/cmで織った金網を挿入した。でき上がったチョッキの貫通抵抗値は2000Nが得られたが、柔軟性に欠けたものに仕上がった。このため、金網を20分割にしたが、それでも硬く、運動性に欠けるものしか得られなかった。
[比較例2]
ポリエステル糸繊度550dtexの経緯密度35本/2.54cmの織物を作成し、20枚の中間層に参考例の金属ロープシートを挿入した。でき上がったチョッキの出刃包丁の抗貫通抵値は1800Nが得られたが、アイスピックでの抗貫通抵値は500Nになりかなり低くなった。
ポリエステル糸繊度550dtexの経緯密度35本/2.54cmの織物を作成し、20枚の中間層に参考例の金属ロープシートを挿入した。でき上がったチョッキの出刃包丁の抗貫通抵値は1800Nが得られたが、アイスピックでの抗貫通抵値は500Nになりかなり低くなった。
1、1´:高強度高密度織物
2 :金属ロープと合成繊維とを交織してなる交織織物
2 :金属ロープと合成繊維とを交織してなる交織織物
Claims (20)
- 合成繊維織物の複数枚の積層体からなる防護材料において、該積層体の中間に、金属素線からなる金属ロープと合成繊維とを交織してなる交織織物を挿入したことを特徴とする防護材料。
- 該合成繊維織物が、繊維強度が12cN/dtex以上を有する合成繊維からなる高強度織物である請求項1記載の防護材料。
- 該金属素線が、ステンレスおよび炭素鋼から選ばれた1種である請求項1または2記載の防護材料。
- 該交織織物が、複数枚である請求項1〜3のいずれかに記載の防護材料。
- 該合成繊維織物が、経および緯糸の少なくとも一方のカバーフアクターが800〜1000である高密度織物である請求項1〜4のいずれかに記載の防護材料。
- 該合成繊維織物が、経および緯糸の少なくとも一方の総繊度が110〜550dtexの範囲にあるもので構成されているものである請求項1〜5のいずれかに記載の防護材料。
- 該合成繊維織物の合成繊維が、パラ系アラミド繊維である請求項1〜6のいずれかに記載の防護材料。
- 該金属ロープが、直径0.03〜0.20mmの範囲にある素線で構成されたものである請求項1〜7のいずれかに記載の防護材料。
- 該金属ロープが、21本〜49本の素線を撚り合わされて構成されたものである請求項1〜8のいずれかに記載の防護材料。
- 該金属ロープが、直径0.4〜1.5mmの範囲にあるものである請求項1〜9のいずれかに記載の防護材料。
- 該交織織物の合成繊維が、強度5.3cN/dtex以上である請求項1〜10のいずれかに記載の防護材料。
- 該交織織物が、経緯ともに2〜10本/cmのロープ密度で構成されているものである請求項1〜11のいずれかに記載の防護材料。
- 該交織織物が、その両面を合成樹脂を介して該合成繊維織物と接着固定されているものである請求項1〜12のいずれかに記載の防護材料。
- 該合成樹脂が、ラミネートされたものである請求項13記載の防護材料。
- 該防護材料が、その上層部に20〜50重量%、下層部に50〜80重量%の合成繊維織物がそれぞれ配されており、かつ、その中間に該交織織物が挿入されているものである請求項1〜14のいずれかに記載の防護材料。
- 該合成繊維織物が、複数枚の積層体である請求項15記載の防護材料。
- 請求項1〜16のいずれかに記載の防護材料で構成されていることを特徴とする防刃衣。
- 該防刃衣が、防護材料を縫製して構成されているものである請求項17記載の防刃衣。
- 請求項1〜16のいずれかに記載の防護材料を用いて構成されていることを特徴とする防護具。
- 該防護具が、防護ヘルメット、すね当て、腕カバー、靴下または靴である請求項19記載の防護具。
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