JP4299659B2 - フレキシブル積層板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、熱ラミネート工程を有するフレキシブル積層板の製造方法に関し、特に外観および金属箔除去後の寸法安定性を向上させたフレキシブル積層板の製造方法に関する。
従来から、ポリイミドフィルムなどの耐熱性接着フィルムの少なくとも一面に銅箔などの金属箔を貼り合わせてなるフレキシブル積層板が、携帯電話などの電気機器の中のプリント基板として用いられている。
従来、フレキシブル積層板は、耐熱性接着フィルムに金属箔をアクリル系またはエポキシ系などの接着剤で貼り合わせて製造されていた。しかしながら、近年、上記アクリル系またはエポキシ系などの接着剤を用いずに、耐熱性接着フィルムと金属箔とを熱ラミネートして製造されたフレキシブル積層板が耐熱性および耐久性の観点から注目されている。
上記熱ラミネートして製造されたフレキシブル積層板は、ポリイミド系の接着層を用いることから耐熱性に優れている。また、フレキシブル積層板が折り畳み式携帯電話の折り畳み部のヒンジの箇所に用いられる場合には、接着剤を用いたフレキシブル積層板では約3万回の折り畳みが可能であるのに対して熱ラミネートによるフレキシブル積層板では約10万回の折り畳みが可能となるため耐久性にも優れている。
電気機器の製造工程において、フレキシブル積層板ははんだリフローなどの高温に曝される工程を経るため、フレキシブル積層板の熱的な信頼性を高める観点から、耐熱性接着フィルムとしては、接着層としてガラス転移温度(Tg)が200℃以上のポリイミド系熱融着性層を有するフィルムが一般的に用いられている。したがって、耐熱性接着フィルムと金属箔とを熱ラミネートするためには、接着層となる熱融着性層のTgよりも高い、たとえば300℃以上の温度で熱ラミネートする必要があった。
通常、熱ラミネート機は、熱ラミネート時における圧力の不均一性を緩和するために、熱ラミネートに用いられるロールの少なくとも一方にゴムロールが用いられている。しかしながら、ゴムロールを用いて300℃以上の高温で熱ラミネートすることは非常に困難であるため、一対の金属ロールを有する熱ラミネート機が用いられる。しかしながら、一対の金属ロールを用いて熱ラミネートをする場合には、ゴムロールを用いる場合と異なり、熱ラミネート時の圧力の均一性を保持するのが難しく、また、熱ラミネートの際に急激な温度変化が生じることから、フレキシブル積層板の外観にシワが発生してしまい、フレキシブル積層板の外観が悪くなってしまうという問題があった。そこで、耐熱性接着フィルムと金属箔を熱ラミネート機により貼り合わせる際に、一対の熱ロールとの間に保護フィルムを介在させることにより上記外観不良を改良する技術が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。この技術によると、金属箔の外側に上記保護フィルムを介在させて金属箔と耐熱性接着フィルムとを熱ラミネートするため、上記保護フィルムによって、金属箔および耐熱性接着フィルムへの熱および圧力の集中を緩和するとともに、金属箔および耐熱性接着フィルムの膨張および収縮を抑制することにより、シワなどの外観不良の発生を抑制するものである。
しかしながら、耐熱性接着フィルムおよび保護フィルムに用いられるポリイミドフィルムは、フィルムの収縮を防止するために端部を固定して加熱、イミド化が行なわれることから、フィルム内に残留応力が存在する。かかるフィルム内の残存応力によりフレキシブル積層板に歪みが生じシワなどの外観不良が生じる場合があった。また、フレキシブル積層板の金属箔の少なくとも一部をエッチングして配線および/または回路を形成する場合に、フィルム内の残存応力によりフレキシブル積層板の金属箔除去後の寸法変化率が大きくなるという問題があった。
特開2001−129918号公報
上記問題を解決するため、本発明は、外観および金属箔除去後の寸法安定性を向上させたフレキシブル積層板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、耐熱性接着フィルムの両面に金属箔を貼り合わせてなるフレキシブル積層板の製造方法であって、耐熱性接着フィルムと金属箔とを一対の金属ロールの間において保護フィルムを介して熱ラミネートする工程と、保護フィルムを分離する工程とを含み、耐熱性接着フィルムおよび保護フィルムの加熱収縮率が、200℃で0.1%下、かつ300℃で0.4%以下であることを特徴とするフレキシブル積層板の製造方法である。
本発明にかかるフレキシブル積層板の製造方法において、上記耐熱性接着フィルムおよび保護フィルムのうち少なくともひとつのフィルムの200℃〜300℃における線膨張係数αが、金属箔の200℃〜300℃における線膨張係数をα0とするとき、(α0−10)ppm/℃以上(α0+10)ppm/℃以下であることが好ましい。また、上記耐熱性接着フィルムおよび保護フィルムのうち少なくともひとつのフィルムが、ポリイミドフィルムであることが好ましい。また、上記耐熱性接着フィルムおよび保護フィルムのうち少なくともひとつのフィルムは、あらかじめ、200℃〜450℃で1秒間〜300秒間の加熱処理がされていることが好ましい。
上記のように、本発明によれば、外観および金属箔除去後の寸法安定性を向上させたフレキシブル積層板の製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本願の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
図1に、本発明に用いられる熱ラミネート機の好ましい一例の模式的な概略図を示す。この熱ラミネート機は、金属箔2と耐熱性接着フィルム3とを保護フィルム1を介して熱ラミネートするための一対の金属ロール4と、保護フィルム1を分離するための分離ロール6とを含む。
本発明にかかるフレキシブル積層板の一の製造方法は、図1を参照して、上記ラミネート機において、耐熱性接着フィルム3と金属箔2とが一対の金属ロール4の間で保護フィルム1を介して熱ラミネートされ、図2の拡大断面図に示すような耐熱性接着フィルム3と金属箔2とが貼り合わされてなるフレキシブル積層板5に保護フィルム1がさらに貼り合わされた積層体7が形成され、この積層体7が冷却されながら複数のロールによって搬送される。さらに、分離ロール6によって保護フィルム1が積層体7から分離され、図3の拡大断面図に示すようなフレキシブル積層板5を製造するものである。
本発明においては、耐熱性接着フィルム3および保護フィルム1の加熱収縮率が、200℃で0.1%以下、かつ300℃で0.4%以下である。かかる加熱収縮率が小さいフィルムを耐熱性接着フィルムおよび保護フィルムとして用いることにより、熱ラミネートの際に生じるフレキシブル積層板の内部応力および歪みを低減して、フレキシブル積層板の外観および金属箔除去後の寸法安定性が向上する。かかる観点から、200℃における加収縮率は0.08%以下が好ましい。また、300℃における加熱収縮率は0.3%以下が好ましい。
本発明において、フィルムの加熱収縮率とは、フィルムを300℃で2時間の加熱処理する前のフィルム長さに対する加熱処理後のフィルム長さの収縮率をいう。かかる加熱収縮率はフィルムの残留応力の指標となるものであり、加熱収縮率が小さいほどフィルムの残留応力が小さいことを示す。
本実施の形態において、耐熱性接着フィルムおよび保護フィルムのうち少なくともひとつのフィルムの200℃〜300℃における線膨張係数は、前記金属箔の200℃〜300℃における線膨張係数をα0とするとき、(α0−10)ppm/℃以上(α0+10)ppm/℃以下であることが好ましい。耐熱性接着フィルムおよび保護フィルムは、金属箔に直接接した状態で熱ラミネートされるため、耐熱性接着フィルムおよび保護フィルムの線膨張係数αと金属箔の線膨張係数α0との差が大きいとフレキシブル積層板の残留応力および歪みが大きくなる。かかる観点から、耐熱性接着フィルムおよび保護フィルムのうち少なくともひとつのフィルムの線膨張係数は、(α0−5)ppm/℃以上(α0+5)ppm/℃以下であることがより好ましい。なお、後述のように、耐熱性接着フィルムが2以上のフィルム層によって構成されている場合には、耐熱性接着フィルムの線膨張係数とは、2層以上のフィルム層によって構成される耐熱性接着フィルム全体の線膨張係数をいうものとする。
本実施の形態において、上記耐熱性接着フィルムおよび保護フィルムには特に制限はないが、耐熱性および耐久性に優れる観点から、耐熱性接着フィルムおよび保護フィルムのうち少なくともひとつのフィルムが、ポリイミドフィルムであることが好ましい。
本実施の形態において、耐熱性接着フィルムおよび保護フィルムのうち少なくともひとつのフィルムは、あらかじめ、200℃〜450℃で1秒間〜300秒間の加熱処理がされていることが好ましい。かかる条件の加熱処理により、フィルムの加熱収縮率が、200℃で0.1%以下、かつ300℃で0.4%以下であるフィルムを容易に得ることができる。加熱処理温度が200℃未満または加熱処理時間が1秒未満であるとフィルム中の残留応力が十分に低減できない可能性があり、加熱処理温度が450℃を超える場合または加熱処理時間が300秒を超える場合はフィルムの物性が熱劣化する可能性がある。
また、上記加熱処理の際の耐熱性接着フィルムおよび保護フィルムのうち少なくともひとつのフィルムにかかる張力はできるだけ低いことが好ましい。具体的には、フィルムにかかる張力は、0.01N/cm〜1.5N/cmが好ましく、0.02N/cm〜1.0N/cmがより好ましく、0.05N/cm〜0.8N/cmがさらに好ましい。フィルムにかかる張力が0.01N/cm未満であるとフィルム搬送時にたるみが生じ均一に巻き取れないなどの問題が生じる可能性があり、1.5N/cmを超えるとフィルムに強い張力がかかった状態で高温まで加熱されるため、加熱収縮率が改善されず逆に悪化する可能性がある。
なお、後述のように、耐熱性接着フィルムが熱可塑性フィルム層を有する場合には、この熱可塑性フィルムのガラス転位温度未満の温度で加熱処理する必要がある。かかる加熱処理を行なうことにより、耐熱性接着フィルムおよび保護フィルムの残留応力が低減し、フレキシブル積層板の歪みが低減することにより、フレキシブル積層板の外観と金属箔除去後の寸法安定性が向上する。
上記条件の加熱処理により、フィルムの加熱収縮率が、200℃で0.1%以下、かつ300℃で0.4%以下であるフィルムを容易に得ることができる。加熱処理温度が200℃未満または加熱処理時間が1秒未満であるとフィルム中の残留応力が十分に低減できない可能性があり、加熱処理温度が450℃を超える場合または加熱処理時間が300秒を超える場合はフィルムの物性が熱劣化する可能性がある。
ここで、耐熱性接着フィルム3としては、熱融着性を示す樹脂からなる単層フィルム、熱融着性を示さないコア層の両面または片面に熱融着性を示す樹脂からなる熱融着性層を形成した複数層フィルムなどを用いることができる。ここで、熱融着性を示す樹脂としては、熱可塑性ポリイミド成分で構成される樹脂が好ましく、たとえば、熱可塑性ポリイミド、熱可塑性ポリアミドイミド、熱可塑性ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリエステルイミドなどを用いることができる。中でも、熱可塑性ポリイミドおよび熱可塑性ポリエステルイミドを用いることが特に好ましい。また、熱融着性を示さないコア層としては、熱融着性を示す樹脂からなる熱融着性層の強度を補強し、耐熱性を保持するものであれば特に限定されず、たとえば非熱可塑性ポリイミドフィルム、アラミドフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリアリレートフィルムまたはポリエチレンナフタレートフィルムなどを用いることができる。しかし、電気的特性(絶縁性)の観点から、非熱可塑性ポリイミドフィルムを用いることが特に好ましい。
本発明において、「熱可塑性」とは加熱により可塑性を示し、冷却により可塑性を示さなくなるという特性をいい、特に上記熱ラミネート時において熱融着性を示すことにより後述の金属箔と貼り合わされることが可能となる特性を示すものとする。また、「非熱可塑性」とは熱硬化性ではないがラミネート温度において可塑性を示さない特性をいい、ガラス転位温度が分解温度より高いポリイミドフィルムに加えて、ガラス転位温度が分解温度より低くてもラミネート温度より高いポリイミドフィルムを含むものとする。
また、保護フィルム1の25℃における引張弾性率は、2GPa以上10GPa以下であることが好ましい。引張弾性率が2GPa未満であると熱ラミネートの際の張力によって保護フィルムが伸びる可能性があり、10GPaを超えると保護フィルムが硬くなり熱ラミネートの際の金属箔および耐熱性接着フィルムへの熱および圧力の集中を緩和する効果が損なわれる可能性がある。かかる観点から、保護フィルムの25℃における引張弾性率は、4GPa以上6GPa以下であることがより好ましい。
また、保護フィルム1の厚さは75μm以上であることが好ましい。保護フィルムの厚さが75μm未満であると、熱ラミネートの際の金属箔および耐熱性接着フィルムへの熱および圧力の集中を緩和する効果が小さくなる。かかる観点から、保護フィルムの厚さは125μm以上であることがより好ましい。一方、保護フィルムの厚さは225μm以下であることが好ましい。保護フィルムの厚さが225μmを超えると、熱ラミネートの際に熱ロールからの熱が伝わりにくい、熱ラミネート後の保護フィルム分離の円滑さが損なわれるなどの支障が生じる可能性がある。
また、保護フィルムとしては、特に制限はなく、銅箔、アルミニウム箔、SUS箔などの金属箔の他、ポリイミドフィルムなどが好ましく用いられる。さらに耐熱性、耐久性などのバランスに優れる点から非熱可塑性のポリイミドフィルムが特に好ましく用いられる。
金属箔2としては、たとえば、銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔またはステンレススチール箔などが用いられる。金属箔2は単層で構成されていてもよく、表面に防錆層や耐熱層(たとえば、クロム、亜鉛、ニッケルなどのメッキ処理による層)が形成された複数の層で構成されていてもよい。中でも、金属箔2としては、導電性およびコストの観点から、銅箔を用いることが好ましい。また、銅箔の種類としては、たとえば圧延銅箔、電解銅箔またはHTE銅箔などがある。また、金属箔2の厚みが薄いほどプリント基板となるフレキシブル積層板における回路パターンの線幅を細線化できることから、金属箔2の厚みは35μm以下であることが好ましく、18μm以下であることがより好ましい。
また、金属ロール4による熱ラミネート温度は、耐熱性接着フィルム3の熱融着性を示す樹脂のガラス転移温度よりも50℃以上高い温度であることが好ましく、熱ラミネート速度を上げるためには、耐熱性接着フィルム3のガラス転移温度よりも100℃以上高い温度であることがさらに好ましい。金属ロール4の加熱方式としては、たとえば、熱媒循環方式、熱風加熱方式または誘電加熱方式などがある。
また、金属ロール4における熱ラミネート時の圧力(線圧)は49N/cm以上490N/cm以下であることが好ましい。熱ラミネート時の線圧が49N/cm未満である場合には線圧が小さすぎて金属箔2と耐熱性接着フィルム3との密着性が弱まる傾向にあり、490N/cmよりも大きい場合には線圧が大きすぎてフレキシブル積層板5に歪みが生じて金属箔2の除去後のフレキシブル積層板5の寸法変化が大きくなることがある。かかる観点から、熱ラミネート時の線圧は98N/cm以上294N/cm以下であることがより好ましい。金属ロール4の加圧方式としては、たとえば、油圧方式、空気圧方式またはギャップ間圧力方式などがある。
また、熱ラミネート速度には、特に制限はないが、生産性向上の観点から、0.5m/min以上であることが好ましく、1m/min以上であることがさらに好ましい。
また、熱ラミネート前に、急激な温度上昇を避ける観点から、保護フィルム1、金属箔2および耐熱性接着フィルム3に予備加熱を施すことが好ましい。ここで、予備加熱は、たとえば、保護フィルム1、金属箔2および耐熱性接着フィルム3を熱ロール4に接触させることによって行なうことができる。
また、熱ラミネート前に、保護フィルム1、金属箔2および耐熱性接着フィルム3の異物を除去する工程を設けることが好ましい。特に、保護フィルム1を繰り返し用いるためには、保護フィルム1に付着した異物の除去が重要となる。異物を除去する工程としては、たとえば、水や溶剤などを用いた洗浄処理や粘着ゴムロールによる異物の除去などがある。中でも、粘着ゴムロールを用いる方法は、簡便な設備である点から好ましい。
さらに、熱ラミネート前に、保護フィルム1および耐熱性接着フィルム3の静電気を除去する工程を設けることが好ましい。静電気を除去する工程としては、たとえば除電エアによる静電気の除去などがある。
以下、実施例および比較例に基づいて、本発明をより具体的に説明する。なお、実施例および比較例において、加熱収縮率、線膨張係数、外観、寸法変化率は以下のようにして測定または評価した。
[加熱収縮率]
耐熱性接着フィルムおよび保護フィルムの加熱収縮率は、JIS C6481を参考にして以下のように測定・算出した。すなわち、フィルムから200mm×200mmのサンプルを切り出し、このサンプルにおいて150mm×150mmの正方形の四隅に直径1mmの穴を形成した。このサンプルを20℃、60%RHの恒温恒湿室に12時間放置して調湿した後、上記4つの穴の距離を測定した。その後、このサンプルを300℃で2時間加熱処理した後、20℃、60%RHの恒温恒湿室で30分間冷却し、加熱処理前と同様にして、4つの穴の距離を測定した。加熱処理前の各穴の距離の測定値をD1、加熱処理後の各穴の距離の測定値をD2として、下式(1)により加熱収縮率を算出した。この加熱収縮率の値が小さいほど、残留応力が小さいことを示す。
加熱収縮率(%)={(D2−D1)/D1}×100 (1)
[線膨張係数]
線膨張係数とは、圧力一定のもとで、物体が熱膨張する時、その長さの相対変化量の温度変化量に対する割合をいい、本発明においては、ppm/℃の単位を用いて表示する。保護フィルム、耐熱性接着フィルムおよび金属箔の線膨張係数は、セイコーインスツルメント社製熱機械的分析装置(商品名:TMA(Thermomechanical Analyzer)120C)により、窒素気流下、上昇温度10℃/minにて、10℃から330℃の温度範囲で測定した後、200℃〜300℃の範囲内の平均値を求めた。
[外観]
フレキシブル積層板の外観は、目視により評価した。特に、フレキシブル積層板1m2あたりに発生したシワの個数を数えることにより、以下の評価基準により評価した。
◎・・・シワが全くない
○・・・1m2あたりにシワが1個以下
×・・・1m2あたりにシワが2個以上
[寸法変化率]
金属箔除去前後の寸法変化率は、JIS C6481を参考にして、以下のように測定・算出した。すなわち、フレキシブル積層板から200mm×200mmのサンプルを切り出し、このサンプルにおいて150mm×150mmの正方形の四隅に直径1mmの穴を形成した。このサンプルを20℃、60%RHの恒温恒湿室に12時間放置して調湿した後、上記4つの穴の距離を測定した。次に、フレキシブル積層板の金属箔をエッチング処理により除去した後、20℃60%RHの恒温室に24時間放置した。その後、エッチング処理前と同様に、4つの穴についてそれぞれの距離を測定した。金属箔除去前の各穴の距離の測定値をD3、金属箔除去後の各穴の距離の測定値をD4として、下式(2)に基づいて寸法変化率を算出した。この寸法変化率の値が小さいほど、寸法安定性に優れていることを示す。
寸法変化率(%)={(D4−D3)/D3}×100 (2)
(実施例1)
図1に示す熱ラミネート機を用いてフレキシブル積層板を製造した。まず、耐熱性接着フィルム3として非熱可塑性のポリイミドフィルムからなるコア層の両面に熱可塑性ポリイミド樹脂層(ガラス転移温度:240℃)を備え、加熱収縮率が200℃で0.07%、300℃で0.3%、線膨張係数が21ppm/℃、厚さ25μmの三層構造の接着フィルムが巻きつけられているロールと、金属箔2として線膨張係数が19ppm/℃、厚さ18μmの銅箔が巻きつけられているロールと、保護フィルム1として加熱収縮率が200℃で0.08%、300℃で0.2%、線膨張係数が16ppm/℃、引張弾性率が4GPa、厚さ125μmの非熱可塑性ポリイミドフィルムが巻きつけられているロールとを熱ラミネート機に設置した。
次いで、これらのロールを回転させて、除電、異物の除去および予備加熱を行なった後に、接着フィルム、銅箔および非熱可塑性ポリイミドフィルムを一対の金属ロール4にて、熱ラミネート条件(温度:360℃、線圧:196N/cm、熱ラミネート速度:1.5m/min)で熱ラミネートし、接着フィルムの両面に銅箔および非熱可塑性ポリイミドフィルムがこの順序で貼り合わされた五層構造の積層体7を作製した。
そして、積層体7を複数のロールによって徐冷した後、分離ロール6により銅箔から非熱可塑性ポリイミドフィルムを分離して、フレキシブル積層板5を製造した。このフレキシブル積層板の外観評価および寸法測定を行なった。
さらに、上記フレキシブル積層板の銅箔をエッチング処理により除去し、銅箔除去後の寸法を測定して、金属箔(銅箔)除去前後の寸法変化率(MD方向、TD方向)を算出した。これらの結果を表1に示す。表1に示すように、実施例1のフレキシブル積層板にはシワが全くなく、銅箔除去前後の寸法変化率は、MD方向が−0.03%、TD方向が+0.02%であった。
(実施例2)
耐熱性接着フィルムとして、加熱収縮率が200℃で0.07%、300℃で0.3%、線膨張係数が21ppm/℃、厚さ25μmの実施例1と同様の三層構造を有する接着フィルムを用い、保護フィルムとして、加熱収縮率が200℃で0.1%、300℃で0.4%、線膨張係数が12ppm/℃、引張弾性率が6GPa、厚さ125μmの非熱可塑性ポリイミドフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして、フレキシブル積層板を製造し外観評価を行ない、金属箔(銅箔)除去前後の寸法変化率を算出した。結果を表1に示す。実施例2のフレキシブル積層板にはシワが全くなく、銅箔除去前後の寸法変化率は、MD方向が−0.04%、TD方向が+0.03%であった。
(実施例3)
耐熱性接着フィルムとして、加熱収縮率が200℃で0.1%、300℃で0.4%、線膨張係数が22ppm/℃、厚さ25μmの実施例1と同様の三層構造を有する接着フィルムを用い、保護フィルムとして、加熱収縮率が200℃で0.08%、300℃で0.2%、線膨張係数が16ppm/℃、引張弾性率が4GPa、厚さ125μmの非熱可塑性ポリイミドフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして、フレキシブル積層板を製造し外観評価を行ない、金属箔(銅箔)除去前後の寸法変化率を算出した。結果を表1に示す。実施例3のフレキシブル積層板にはシワが全くなく、銅箔除去前後の寸法変化率は、MD方向が−0.04%、TD方向が+0.03%であった。
(実施例4)
耐熱性接着フィルムとして、加熱収縮率が200℃で0.1%、300℃で0.4%、線膨張係数が22ppm/℃、厚さ25μmの実施例1と同様の三層構造を有する接着フィルムを用い、保護フィルムとして、加熱収縮率が200℃で0.1%、300℃で0.4%、線膨張係数が12ppm/℃、引張弾性率が6GPa、厚さ125μmの非熱可塑性ポリイミドフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして、フレキシブル積層板を製造し外観評価を行ない、金属箔(銅箔)除去前後の寸法変化率を算出した。結果を表1に示す。実施例4のフレキシブル積層板にはシワが全くなく、銅箔除去前後の寸法変化率は、MD方向が−0.04%、TD方向が+0.04%であった。
比較例1
耐熱性接着フィルムとして、加熱収縮率が200℃で0.1%、300℃で0.4%、線膨張係数が22ppm/℃、厚さ25μmの実施例1と同様の三層構造を有する接着フィルムを用い、保護フィルムとして、加熱収縮率が200℃で0.15%、300℃で0.6%、線膨張係数が16ppm/℃、引張弾性率が6GPa、厚さ125μmの非熱可塑性ポリイミドフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして、フレキシブル積層板を製造し外観評価を行ない、金属箔(銅箔)除去前後の寸法変化率を算出した。結果を表1に示す。比較例1のフレキシブル積層板に発生したシワは1mあたり1個以下であり、銅箔除去前後の寸法変化率は、MD方向が−0.05%、TD方向が+0.04%であった。
比較例2
耐熱性接着フィルムとして、加熱収縮率が200℃で0.15%、300℃で0.6%、線膨張係数が23ppm/℃、厚さ25μmの実施例1と同様の三層構造を有する接着フィルムを用い、保護フィルムとして、加熱収縮率が200℃で0.1%、300℃で0.4%、線膨張係数が12ppm/℃、引張弾性率が6GPa、厚さ125μmの非熱可塑性ポリイミドフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして、フレキシブル積層板を製造し外観評価を行ない、金属箔(銅箔)除去前後の寸法変化率を算出した。結果を表1に示す。比較例2のフレキシブル積層板に発生したシワは1mあたり1個以下であり、銅箔除去前後の寸法変化率は、MD方向が−0.05%、TD方向が+0.04%であった。
比較例3
耐熱性接着フィルムとして、加熱収縮率が200℃で0.15%、300℃で0.6%、線膨張係数が23ppm/℃、厚さ25μmの実施例1と同様の三層構造を有する接着フィルムを用い、保護フィルムとして、加熱収縮率が200℃で0.15%、300℃で0.6%、線膨張係数が16ppm/℃、引張弾性率が6GPa、厚さ125μmの非熱可塑性ポリイミドフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして、フレキシブル積層板を製造し外観評価を行ない、金属箔(銅箔)除去前後の寸法変化率を算出した。結果を表1に示す。比較例3のフレキシブル積層板に発生したシワは1mあたり2個以上であり、銅箔除去前後の寸法変化率は、MD方向が−0.10%、TD方向が+0.08%であった。
Figure 0004299659
表1の比較例1および比較例2に示すように、耐熱性接着フィルムおよび保護フィルムのいずれかひとつのフィルムの加熱収縮率が200℃で0.1%以下、かつ300℃で0.4%以下であるため、これらの実施例のフレキシブル積層板に発生したシワは1mあたり1個以下であり、銅箔除去前後の寸法変化率は、MD方向およびTD方向のいずれの方向についても±0.05%の範囲内となった。ここで、銅箔除去前後の寸法変化率が±0.05%の範囲内とは、フレキシブル積層板に微細配線を形成する場合においても寸法精度に問題が生じない範囲である。
さらに、表1の実施例1〜実施例4のように耐熱性接着フィルムおよび保護フィルムの両方のフィルムの加熱収縮率が200℃で0.1%以下、かつ300℃で0.4%以下の場合は、フレキシブル積層板にはシワが全くなく、銅箔除去前後の寸法変化率もさらに低減した。
なお、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
上記のように、本発明は、外観および金属箔除去後の寸法安定性を向上を目的として、フレキシブル積層板の製造方法に広く利用することができる。
本発明に用いられる熱ラミネート機の好ましい一例の概略図である。 本発明に用いられる積層体の模式的な拡大断面図である。 本発明によって製造されるフレキシブル積層板の模式的な拡大断面図である。
符号の説明
1 保護フィルム、2 金属箔、3 耐熱性接着フィルム、4 金属ロール、5 フレキシブル積層板、6 分離ロール、7 積層体。

Claims (4)

  1. 耐熱性接着フィルムの両面に金属箔を貼り合わせてなるフレキシブル積層板の製造方法であって、
    前記耐熱性接着フィルムと前記金属箔とを一対の金属ロールの間において保護フィルムを介して熱ラミネートする工程と、前記保護フィルムを分離する工程とを含み、
    前記耐熱性接着フィルムおよび前記保護フィルムの加熱収縮率が、200℃で0.1%以下、かつ300℃で0.4%以下であって、かつ
    前記保護フィルムの200℃〜300℃における線膨張係数αが、前記金属箔の200℃〜300℃における線膨張係数をα とするとき、(α −10)ppm/℃以上(α +10)ppm/℃以下であることを特徴とするフレキシブル積層板の製造方法。
  2. 前記耐熱性接着フィルムの200℃〜300℃における線膨張係数αが、前記金属箔の200℃〜300℃における線膨張係数をαとするとき、(α−10)ppm/℃以上(α+10)ppm/℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル積層板の製造方法。
  3. 前記耐熱性接着フィルムおよび前記保護フィルムのうち少なくともひとつのフィルムが、ポリイミドフィルムであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフレキシブル積層板の製造方法。
  4. 前記耐熱性接着フィルムおよび前記保護フィルムのうち少なくともひとつのフィルムは、あらかじめ、200℃〜450℃で1秒間〜300秒間の加熱処理がされていること特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のフレキシブル積層板の製造方法。
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