JP4299439B2 - オレフィン系熱成形複合材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、植物繊維を補強材とした軽量、高強度、高靱性の熱成形複合材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、熱成形複合材としては、ガラス繊維とポリオレフィン繊維を熱加工したものが存在する。この熱成形複合材料は、ガラス繊維とポリオレフィン繊維とが効率的に接着されているため、軽量で高強度であると共に、弾性率や賦形性に優れている。
【0003】
特開平10−235768号公報に開示されていように、ヤシ繊維と熱硬化性樹脂とからなるものも存在する。この熱成形複合材は、ヤシ繊維を用いているため、焼却処理が可能である。しかも、熱硬化性樹脂により接着されているため、高剛性である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前者の熱成形複合材は、ガラス繊維を補強材として用いているため、靱性がなく、リサイクルできないという欠点もある。
【0005】
後者の熱成形複合材は、熱硬化性樹脂を用いているため、賦形性が悪いという欠点がある。即ち、熱可塑性樹脂よる場合とは異なり、賦形する際に加熱しても溶融状態とはならないことから、伸びはヤシ繊維の縮み代に頼らなければならない。また、熱硬化性樹脂を架橋する前に賦形しようとすると、ヤシ繊維が連結状態が連続的ではないことから、ハンドリング性が悪く、ヤシ繊維が飛散するために、作業環境が悪くなるという課題を有している。
【0006】
そこで、本発明は、高い強度を有し、リサイクル性に優れ、賦形性に優れた植物繊維を補強材としたオレフィン系熱成形複合材の製造方法を提供することを目的とした。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するため、本発明のオレフィン系熱成形複合材の製造方法は、植物繊維とポリオレフィン繊維とからなるマット状物を移動と停止とが間欠的に繰り返される一対の移送ベルト間に供給して、前記ポリオレフィン樹脂の融点以上の温度で加熱する工程と、この加熱後のマット状物を、前記ポリオレフィン樹脂の融点以上の温度でプレスする工程と、このプレスされたマット状材料を挟み込んだ状態で吸引装置により吸着させて、一対の吸引装置間の間隔を拡げる工程とからなり、上記マット状物の少なくとも一面から、メルトインデックス(MI)が2〜30のオレフィン樹脂シートを加熱含浸させることを特徴とする。
【0008】
上記したオレフィン系熱成形複合材では、植物繊維間の接点がポリオレフィン樹脂により接着されている構成により、高い空隙率を有するラーメン構造の成形複合材となる。
【0009】
この熱成形複合材は、そのラーメン構造により、効率的に高い強度と弾性率を発揮する。しかも、この複合材料は、高い空隙率により軽量である。さらに、補強材として植物繊維を使用しており、上記のラーメン構造を有していることから、熱成形複合材全体として、破壊靱性が高く、しなり易い性状の材料となる(図7に示すように、荷重がかかった時、従来のガラス繊維補強材の曲げ特性Qに対して曲げ特性Pのような特性を示す。)。
【0010】
このような本発明により得られるオレフィン系熱成形複合材の性状は、曲げ荷重における1mm幅あたりの荷重最大点エネルギーが、0.1〜0.4Jのしなり性をもつ。嵩密度についは、製造時の条件により異なり一定しないが、0.7〜0.01の範囲であることから、熱成形複合材の強度、剛性、しなり性及び軽量性についてバランスがとれている。
【0011】
本発明に使用される植物繊維としては、麻、ケナフ、竹、ヤシ等の多様なものを使用出来る。軽量性、強度、製紡性(マットへの加工性)等の点から、麻、ケナフ、若しくはこれらの混成体を使用することが好ましい。 オレフィン系熱成形複合材の単位面積あたりの重量は、工業軽量材として、200〜2000g/m2 であることが好ましい。この重量が、200g/m2 未満であると、植物繊維量の不足により、十分なラーメン構造を得ることができず、2000g/m2 を超えると、植物繊維が密になり過ぎてラーメン構造をとることができないため、必要な強度が得られない。
【0012】
また、植物繊維と無機繊維を混合することにより、リサイクル性は損なわれるが、無機繊維の高い熱伝導性から、成形加工時に速やかに熱が内部に伝わり、均一にオレフィン樹脂を溶解することが出来、その結果、均一なラーメン構造体を形成しやすくなる。その結果、均一化するため強度、剛性が安定しやすいという効果が得られる。上記無機繊維としては、ガラス繊維、グラスウール、炭素繊維等が挙げられる。この中でも、形態、経済性の点でガラス繊維が好ましい。
上記無機繊維のマット状物に占める割合は、少な過ぎると、熱伝導性が確保しにくくなり、多過ぎると植物繊維の柔軟性が確保しにくくなるので、5〜70重量%が好ましい。又、上記無機繊維の繊維長は、強度発現という点で5〜200mmが好ましい。
【0013】
ポリオレフィン繊維としては、ポリプロピレン繊維、高密度ポリエチレン繊維等を使用することが出来る。ポリオレフィン繊維による密着性を高めるために、マレイン酸、アクリル酸等による変性処理を行なってもよく、あるいは予め酸変性処理を行なったポリオレフィン繊維を一部混在させても良い。
【0014】
また、軽量化を図るために、上記ポリオレフィン系以外の有機繊維をポリオレフィン繊維と併用しても良い。上記有機繊維としては、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維等が挙げられるが、コスト面及び強度面の両立という点でポリエステル繊維が好ましい。
【0015】
この熱成形複合材は、被加工材であるマット状物におけるポリオレフィン繊維の占める割合が、10〜60重量%とすることが好ましい。形成複合材のラーメン構造に基づく強度等が優れたバランスのものとなる。この割合が、10重量%未満であると、接着材としてのポリオレフィン樹脂の量が少なくなり、ラーメン構造が強度的に不十分となり、60重量%を超えると、植物繊維が少ないポリオレフィン樹脂による接着点が少なくなるから、ラーメン構造として構造的に不十分となる。
【0016】
本発明のオレフィン系熱成形複合材には、植物繊維とポリオレフィン繊維とからなるマット状物の少なくとも一片面にオレフィン樹脂のリッチ層が形成されてなるものを含む。
【0017】
このような熱成形複合材によれば、良好なしなり性を保持させながら高いせん断力に耐える構成が得られ、成形複合材の強度をより高めることが出来る。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を説明する。先ず、植物繊維と、ポリオレフィン繊維とをカードニングマシン等により解繊させた後、ニードルパンチを行なうことによりマット状物とする。この場合、植物繊維及びポリオレフィン繊維の長さは、5〜200mmの範囲が好ましい。又、他の繊維を混合する場合も繊維長は同様にすることが好ましい。これら繊維の長さが、5mm以下であると、マット状態としての強度を維持出来ないし、200mmを超えると、繊維間のからみが悪くなる。
【0020】
このマット状物を被加工材として強度上有効にするためには、ポリオレフィン繊維の占める割合が、10〜60重量%であることが好ましい。得られる複合材料のラーメン構造に基づく強度等のバランスについて優れたものとなるからである。この割合が、10重量%未満であると、接着材としてのポリオレフィン樹脂の量が少なくなり、ラーメン構造が強度的に不十分となり、60重量%を超えると、植物繊維の接点で接着する状態のポリオレフィン樹脂による接着点が少なくなるから、ラーメン構造として構造的に不十分となる。又、他の繊維を併用する場合にも同様である。
【0021】
ポリオレフィン繊維の繊維太さは、4〜40デニールであることが好ましい。この繊維太さが、4デニール未満であると、マット状物としての形態を維持できず、40デニールを超えると、加熱溶融時の分散性が悪くなる。
【0022】
このマット状物は、植物繊維が混合されているため、熱成形複合材の製造装置による成形前に、ポリオレフィン繊維の融点以下の温度で加熱し、植物繊維が含有する水分や油分を揮発により除去しておくことが好ましい。この加熱処理により、植物繊維に含まれている不純物が除去され、密着性や繊維自体の強度を高めることが出来る。この場合の加熱温度は、ポリオレフィン繊維の種類によるが、処理を十分に行なうために、水の沸点以上である100℃〜150℃の範囲の温度で加熱することが好ましい。この処理時間は30秒間以上であることが好ましい。
【0023】
上記した処理による効果は、マット状物をアセトン、酢酸エチル、エチルアルコール等の水溶性溶剤によりディップ洗浄し、その溶剤を揮発乾燥させる処理工程によっても同様に得ることが出来る。この処理工程による場合、水溶性溶剤を用いるために、加熱処理による場合に比べて洗浄効果は高い。そのため、マット状物について高い強度を得ることが出来る。洗浄工程は、マット状物を成形する前工程で、連続的にあるいはバッチ的に行なっても良い。
【0024】
図1に示す製造装置を利用したプロセスにより、上記したマット状物Aからオレフィン系熱成形複合材を製造することが出来る。この製造装置には、加熱炉10における誘導路11の入口10aから出口10bに到る一対の移送用ベルト12a、12bが設けられている。これらの移送用ベルト12a、12bはそれぞれ支持ローラ13間で支持され、誘導路11内で循環するようにされている。
【0025】
移送用ベルト12a、12bとしては、前記したマット状物を移送するする部材として、オレフィン樹脂が溶融時には密着し、その固化時には剥離するような性状のものを使用することが出来る。例えば、鉄板やアルミニウム板にポリテトラフルオレエチレン(商標名:テフロン)をコーティングしたもの等を用いることが出来る。
【0026】
加熱炉10の後方位置には、プレス装置14、吸引装置15及び冷却装置16が順に配設されている。プレス装置14は、可動プレス14a及び固定プレス14bが誘導路11に対面する状態で配設されている。吸引装置15は、誘導路11に対向させた可動吸引器15aと固定吸引器15bとからなる。さらに、ポリオレフィン樹脂フィルム17をローラ18を介して、移送用ベルト12a、12bの対向面に沿う状態で、入口10aから加熱炉10内に供給することが出来る。
【0027】
このように構成されている製造装置において、マット状物Aが加熱炉10の入口10aから誘導路11内に連続的に供給される。マット状物Aは、移送用ベルト12a、12bの連続移送機能によって加熱炉10内にまで移送され、加熱処理される。
【0028】
加熱炉10における加熱工程は、温風加熱、遠赤外線加熱等の手段によることが出来る。加熱温度は、植物繊維2を含むから、マット状物Aの熱伝導率が低い。このため、200〜240℃の温度条件で加熱することが好ましい。この加熱条件によれば、ポリオレフィン樹脂を好ましく溶融させることが出来る。加熱温度条件が、200℃未満であると、植物繊維の低熱伝導性により、マット状物Aの内部にまで伝導し難いために、内部のポリオレフィン樹脂を十分溶融できず、240℃を超えると植物繊維が熱のために損傷を受ける恐れがある。又、無機繊維を混合した場合にも、熱を十分伝えるためには、上記温度設定が好ましい。
【0029】
移送用ベルト12a、12bの送り速度については、マットの厚みや植物繊維の量により異なるため、特に規制をかけないが、例えば、加熱炉10の長さを230℃で加熱する時間が、0.5〜6分間であるように設定されていることが好ましい。
【0030】
この加熱処理時に、マット状物Aは、連続的に移送される過程で、プレス装置14によりプレスされる。このプレス時に溶融したポリオレフィン樹脂が分散され、図4に示すような態様で、植物繊維2の各接点が、溶融化されたポリオレフィン樹脂3により結着される。
【0031】
上記した加熱炉10内への移送に際し、ポリオレフィン樹脂フィルム17が供給される場合には、移送用ベルト12aあるいは12bとマット状物Aの表面との間にポリオレフィン樹脂フィルム17を挟み込み、マット状物Aと共に移送しても良い。
【0032】
ポリオレフィン樹脂フィルム17は、上記した加熱処理時にマット状物Aの表面上で溶融化され、さらにプレス装置14でプレスされる。この場合のプレス工程は、溶融したポリオレフィン樹脂フィルム17をマット状物Aの中に十分に含浸させるために、移送用ベルト12a、12bによる移送を一時的に停止させて行なう。
【0033】
溶融したポリオレフィン樹脂フィルム17がマット状物Aの表面に含浸され、図6に示すような態様で、植物繊維2の間に塊状のポリオレフィン樹脂3となって結着した状態となる。又、他の繊維を混合した場合は、植物繊維−植物繊維、植物繊維−他繊維の間に塊状のポリオレフィン樹脂となって結着した状態になりうることもある。
【0034】
上記したプレス工程において、プレス面の大きさは、特に限定されるものではないが、生産性を考慮して設定される。プレス時の温度条件は、ポリオレフィン樹脂が溶融する温度以上である必要があるが、生産性の点から、200〜230℃であることが好ましい。プレス圧力は、0.1〜1.0MPaであることが好ましい。プレス圧力が、0.1MPa未満であると、植物繊維に対するポリオレフィン樹脂の結着が不十分となり、1.0MPaを超えると、圧力により植物繊維が破損してしまうことがあるため、強度が低下する原因となる。プレス時間は、1〜30秒間であることが好ましい。プレス時間が、1秒間未満であると、結着状態が不十分となり、30秒間を超えると、圧力を付加する時間がかかり過ぎて、植物繊維を破損してしまうことがあり、強度低下の原因となる。
【0035】
上記のプレス工程を経たマット状物Aは、その移送が吸引装置15の位置で一時的に停止される。吸引装置15では、可動吸引器15aの稼動により、移送用ベルト12aと共に、この移送用ベルト12aに密着状のマット状物Aの表面部分が引き上げられる。これによって、マット状物Aは、所定の肉厚となり、ラーメン構造の形態が得られる。
【0036】
吸引装置15を構成する可動吸引器15aの形状については、特に限定されないが、例えば、図2に示すように、その吸着面15aaに、ピッチが10mm×10mmの碁盤目状に3mmφの吸引孔15abが多数設けられたものを使用することが出来る。可動吸引器15a内に生じた吸引力は、各吸引孔15abに及んで、移送用ベルト12a等を吸引するように機能する。固定吸引器15bでも同様に構成でき、同様に機能させることが出来る。
【0037】
可動吸引器15a及び固定吸引器15bにおける吸引力は、0.001〜0.03MPa程度であることが好ましい。この吸引力が、0.001MPa未満であると、吸引力が不十分となり、0.03MPaを超えると、経済的に不利となる。
【0038】
マット状物Aについて所定の肉厚を得るためには、可動吸引器15aと固定吸引器15bとが、吸引拡圧したとき、必要肉厚の1.1〜2倍の間隔をもって間隔巾を保持することが好ましい。これは、植物繊維が繊維質が柔軟であるため、拡圧されたマット状物Aにバックリングが生じるためである。この場合、マット状物Aについて、目付が軽い場合は約2倍の拡圧に設定し、目付が重い場合はそれ以下の拡圧の範囲で設定することになる。
【0039】
マット状物Aに対する吸引拡圧の時間としては、0.1〜10秒間程度であることが好ましい。この吸引拡圧の時間が、0.1秒間未満であると、ラーメン構造を正常に得るのが困難であり、10秒間を超えると、生産面で支障をきたすおそれがある。
【0040】
上記の吸引拡圧工程を経たマット状物Aは、冷却装置16の位置に達して、冷却される。これにより、図4に示すように、植物繊維2の接点がポリオレフィン樹脂3により接着された、図3に示すような熱成形複合材1を得る。この成形複合材1は、空隙4が占める部分が多いラーメン構造を有している。
【0041】
前記したように、マット状物Aの表面にポリオレフィン樹脂フィルム17が含浸された場合には、表面にポリオレフィン樹脂3に富むリッチ層5aを有する熱成形複合材5を得ることが出来る。成形複合材5は、図5に示すように、その表面にポリオレフィン樹脂のリッチ層5aを有する構成である。リッチ層5aでは、図6に示すように、植物繊維2の間に塊状のポリオレフィン樹脂3によって接着されている。熱成形複合材5は、その表面側のポリオレフィン樹脂3のリッチ層5aから次第により空隙率の大きな中央部5bとなるラーメン構造である。リッチ層5aでは、空隙6が占める部分が少なくなっている。
【0042】
上記したような構成を得るためには、ポリオレフィン樹脂シートの粘度が重要な要因となっている。このため、ポリオレフィン樹脂シートのメルトインデックス(MI)が2〜30のものであることが必要である。MIが、2未満であると、マット状物中に含浸され過ぎて、熱成形複合材料の中央部にラーメン構造を得ることができず、有意義な補強効果が得られない。MIが30を超えると、マット状物中に含浸されないため、高い強度の熱成形複合材を得ることができない。
【0043】
ポリオレフィン樹脂シートとしては、ボリプロピレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂等を用いることが出来る。このポリオレフィン樹脂シートには、前記したような酸変性処理を施してあっても良い。
【0044】
ポリオレフィン樹脂シートの厚みは、30〜300μmであることが好ましく、70〜200μmであれば、さらに好ましい。ポリオレフィン樹脂シートの厚みが、30μm未満であると、リッチ層を負担する量が過少となり、強度を補強するのに不十分であり、300μmを超えると、マット状物の内部にまで含浸され過ぎてしまうために、ラーメン構造が不十分となるおそれがある。
【0045】
【実施例】
(実施例1)
次の仕様に基づいて、図1に示した製造装置の工程を経る製造方法によって熱成形複合材を製造した。
【0046】
マット状物:麻繊維(長さ50mm)とポリプロピレン繊維(繊維太さ12デニール、長さ50mm、融点165℃)とを重量部比で5:5の割合でカードマシンに供給し、解繊、混繊した後に、ニードルパンチにより14ヶ所/cm2 のパンチを施してマット状物を得た。このマット状物の目付は、0.5kg/m2 であった。
【0047】
オレフィン樹脂シート:マット状物の両面に、110μm厚で、MIが7であるポリエチレンフィルムを1枚ずつ積層した。
【0048】
移送用ベルト:ガラスクロスにテフロンを焼き付けたものを使用した。
【0049】
加熱装置:210℃の温度に加熱した加熱炉内にマット状物及びオレフィン樹脂シートを連続的に移送する状態で導入出来る。
【0050】
プレス装置:可動プレス及び固定プレスとも、鉄板製で巾1900mm、長さ1500mmであり、210℃に加熱されている。可動プレスは、油圧により昇降駆動が自在に構成されており、下降時に0.2MPaの圧力で加圧出来る。
【0051】
吸引装置:可動吸引器及び固定吸引器は、直方体形に形成されている。移送用ベルトと接触する吸着面には、直径3mmφの吸引孔が1個/cm2 の割合で設けられている。各吸引器には装置本体の真空ポンプで吸引され、この吸引力は吸引孔に作用する。
【0052】
冷却装置:冷却は、常温25℃下で風冷することによる。
【0053】
熱成形複合材の製造工程は、次のとおりである。まず、マット状物を連続的に一対の移送用ベルトの間に供給した。このマット状物を各移送用ベルトにより、加熱炉内を90秒間の速度で移動させた。プレス装置の位置に達した後、各移送用ベルトを6秒間停止させて、可動プレスを下降させてマット状物を3秒間プレスした。
【0054】
このプレス状態を1秒間で解除して、各移送用ベルトを駆動させて、マット状物を1.4m移動させて吸引装置のところまで移動させた。その後1秒間で、可動吸引器を下降させて上側の移送用ベルトの外方面に吸着させた。その後1秒間可動吸引器は移送用ベルトと接触し、マット状物の厚みが8mmになるまで可動吸引器が2秒間にわたり上昇した。
【0055】
上記した各工程における操作の繰り返しにより、厚み5.1mm(目標厚みは5.0mm)の熱成形複合材を得た。この熱成形複合材の外観は、図5に示すような表面部にリッチ層を伴う形態のものであった。顕微鏡による観察を行なったところ、この熱成形複合材ついて、その中央部分では図4に示す形態、表面部分では図6に示す形態であることを確認した。
【0056】
この熱成形複合材に対して、JIS K 7055に従って曲げ試験を行ない、その試験の結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
また、曲げ特性Pについては図7に示した。この熱成形複合材の曲げ特性Pの荷重最大点エネルギーPaを斜線で示した。図7には、ガラス繊維について、同様に曲げ試験を行なった場合の曲げ特性Qを示した。曲げ特性Pと曲げ特性Qとの対比から、この熱成形複合材は、高い強度、高い弾性率、高いエネルギー吸収性を有していることが分かる。
【0059】
(実施例2)
加熱装置の加熱炉における加熱温度を210℃に代えて、230℃とすると共に、加熱炉内での移動時間を90秒間に代えて、80秒間とし、実施例1と同じ工程により熱成形複合材を製造した。得られた熱成形複合材は、厚み5.2mm(目標厚みは5.0mm)のものであった。この熱成形複合材の外観及び顕微鏡による観察の結果は、実施例1のものと同様であった。曲げ試験の結果は、図7に示す曲げ特性Pと同様の特性曲線であった。
【0060】
(実施例3)
マット状物の材料をケナフ繊維とポリプロピレン繊維を重量部比で5:5の割合で混合したものとし、それ以外については実施例1と同じ条件として、熱成形複合材を製造した。得られた熱成形複合材は、厚み5.0mm(目標厚みは5.0mm)のものであった。この熱成形複合材の外観及び顕微鏡による観察の結果は、実施例1のものと同様であった。曲げ試験の結果は、図7に示す曲げ特性Pと同様の特性曲線であった。
【0061】
(実施例4)
マット状物の材料を麻繊維とポリプロピレン繊維を重量部比で5:5の割合で混合したものとすると共に、吸引装置による吸引後のマット状物の厚みを7mmとし、それ以外については実施例1と同じ条件として、熱成形複合材を製造した。得られた熱成形複合材は、厚み5.1mm(目標厚みは5.0mm)のものであった。この熱成形複合材の外観及び顕微鏡による観察の結果は、実施例1のものと同様であった。曲げ試験の結果は、図7に示す曲げ特性Pと同様の特性曲線であった。
【0062】
(実施例5)
加熱装置による加熱工程の前工程として、マット状物に対して、150℃の熱風で60秒間加熱処理を行ない、それ以外については実施例1と同じ条件として、熱成形複合材を製造した。得られた熱成形複合材は、厚み5.1mm(目標厚みは5.0mm)のものであった。この熱成形複合材の外観及び顕微鏡による観察の結果は、実施例1のものと同様であった。曲げ試験の結果は、図7に示す曲げ特性Pと同様の特性曲線であった。
【0063】
(実施例6)
加熱装置による加熱工程の前工程として、マット状物に対して、アセトンによる洗浄を5秒間行ない、それ以外については実施例1と同じ条件として、熱成形複合材を製造した。得られた熱成形複合材は、厚み5.1mm(目標厚みは5.0mm)のものであった。この熱成形複合材の外観及び顕微鏡による観察の結果は、実施例1のものと同様であった。曲げ試験の結果は、図7に示す曲げ特性Pと同様の特性曲線であった。
【0064】
(実施例7)
繊維長50mmの麻繊維、繊維長50mmのガラス繊維、及び繊維長50mmのポリプロピレン繊維を25:25:50の割合で混練し、マット化した以外は実施例1と同条件で熱成形複合材を製造した。得られた熱成形複合材は、厚み5.3mmのものであった。この熱成形複合材の外観及び顕微鏡による観察の結果は、実施例1と同様にラーメン構造を形成していた。曲げ試験の結果は、図7に示した曲げ特性Pと同様の特性曲線であった。
【0065】
(比較例1)
加熱装置における加熱炉の加熱温度を180℃とすると共に、加熱炉内での移動時間を100秒間とし、それ以外については実施例1と同じ条件として、熱成形複合材を製造した。得られた熱成形複合材は、厚み5.2mm(目標厚みは5.0mm)のものであった。この熱成形複合材の顕微鏡による観察の結果、内部のポリプロピレン樹脂は、溶融していなかった。曲げ試験の結果、この熱成形複合材は、強度、弾性率及びエネルギー吸収性については、図7に示す曲げ特性Pを再現できず、不十分であった。
【0066】
(比較例2)
加熱装置における加熱炉の加熱温度を260℃とすると共に、加熱炉内での移動時間を100秒間とし、それ以外については実施例1と同じ条件として、熱成形複合材を製造した。得られた熱成形複合材は、厚み5.2mm(目標厚みは5.0mm)のものであった。この熱成形複合材の顕微鏡による観察の結果、内部の麻繊維の一部が炭化していた。曲げ試験の結果、この熱成形複合材は、強度、弾性率及びエネルギー吸収性については、図7に示す曲げ特性Pを再現できず、不十分であった。
【0067】
(比較例3)
吸引装置によるマット状物に対する吸引間隔を5mmに設定し、それ以外については実施例1と同じ条件として、熱成形複合材を製造した。得られた熱成形複合材は、厚み3.2mm(目標厚みは5.0mm)のものであった。なお、曲げ試験の結果、この熱成形複合材は、強度、弾性率及びエネルギー吸収性については、図7に示す曲げ特性Pを再現するものであった。
【0068】
(比較例4)
吸引装置によるマット状物に対する吸引間隔を11mmに設定し、それ以外については実施例1と同じ条件として、熱成形複合材を製造した。得られた熱成形複合材は、厚み8.0mm(目標厚みは5.0mm)のものであった。なお、曲げ試験の結果、この熱成形複合材は、強度、弾性率及びエネルギー吸収性については、図7に示す曲げ特性Pを再現できず、不十分であった。また、板断面に亀裂が発生したのを確認した。
【0069】
(比較例5)
マット状物の材料をガラス繊維とポリプロピレン繊維を重量部比で5:5の割合で混合したものとすると共に、吸引装置によるマット状物に対する吸引間隔を5mmに設定し、それ以外については実施例1と同じ条件として、熱成形複合材を製造した。得られた熱成形複合材は、厚み5.1mm(目標厚みは5.0mm)のものであった。この熱成形複合材の外観及び顕微鏡による観察の結果は、実施例1のものと同様であった。しかし、曲げ試験の結果、この熱成形複合材は、強度、弾性率及びエネルギー吸収性については、図7に示す曲げ特性Pを再現できず、不十分であった。
【0070】
(比較例6)
オレフィンシートとしてのポリエチレンフィルムのMIを35とし、それ以外については実施例1と同じ条件として、熱成形複合材を製造した。得られた熱成形複合材は、厚み5.2mm(目標厚みは5.0mm)のものであった。この熱成形複合材の顕微鏡による観察の結果、内部の麻繊維の一部が炭化していた。曲げ試験の結果、この熱成形複合材は、強度、弾性率及びエネルギー吸収性については、図7に示す曲げ特性Pを再現できず、不十分であった。
【0071】
【発明の効果】
上述したように本発明は構成されるから、次のような効果が発揮される。まず、本発明のオレフィン系熱成形複合材の製造方法によれば、植物繊維間の接点がポリオレフィン樹脂により接着された構成から、高い空隙率を有するラーメン構造の成形複合材となる。この熱成形複合材は、そのラーメン構造により、効率的に高い強度と弾性率を発揮する。しかも、この複合材料は、高い空隙率により軽量である。さらに、補強材として植物繊維を使用しているから、熱成形複合材全体として、破壊靱性が高く、しなり易い性状を保持し、賦形性に優れ、しかもリサイクルが可能である。
【0072】
この熱成形複合材について、少なくとも一片面にポリオレフィン樹脂のリッチ層が形成されたものによれば、良好なしなり性及び軽量性を保持させながら、高い強度、高い剛性を有するものとすることが出来る。この熱成形複合材は、上記した諸性能についてバランスがとれたものであり、軽量工業材として最適である。
【0073】
本発明に係る製造方法によれば、上記したような性能を有する熱成形複合材を、効率的にかつ安定した状態で製造することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱成形複合材を製造工程を説明するための製造装置の概略図である。
【図2】同上の製造工程で使用出来る吸引装置の可動吸引器部分の部分断面正面図である。
【図3】本発明の熱成形複合材の部分斜視図である。
【図4】同上の熱成形複合材の微細構造部分の拡大図である。
【図5】本発明の熱成形複合材の部分斜視図である。
【図6】同上の熱成形複合材の微細構造部分の拡大図である。
【図7】本発明の熱成形複合材の曲げ特性図である。
【符号の説明】
1 熱成形複合材
2 植物繊維
3 ポリオレフィン樹脂
4 空隙
5 熱成形複合材
5a ポリオレフィン樹脂のリッチ層
5b 中央部
6 空隙
10 加熱炉
12 移送装置
12a、12b 移送用ベルト
14 プレス装置
14a 可動プレス
14b 固定プレス
15 吸引装置
15a 可動吸引器
15b 固定吸引器
16 冷却装置
17 オレフィン樹脂シート
Claims (6)
- 植物繊維とポリオレフィン繊維とからなるマット状物を移動と停止とが間欠的に繰り返される一対の移送ベルト間に供給して、前記ポリオレフィン樹脂の融点以上の温度で加熱する工程と、この加熱後のマット状物を、前記ポリオレフィン樹脂の融点以上の温度でプレスする工程と、このプレスされたマット状材料を挟み込んだ状態で吸引装置により吸着させて、一対の吸引装置間の間隔を拡げる工程とからなり、上記マット状物の少なくとも一面から、メルトインデックス(MI)が2〜30のオレフィン樹脂シートを加熱含浸させることを特徴とするオレフィン系熱成形複合材の製造方法。
- 上記マット状物が、植物繊維、無機繊維、及びポリオレフィン繊維からなる請求項1記載のオレフィン系熱成形複合材の製造方法。
- 加熱する工程が、200〜240℃の加熱温度で行なわれる請求項1又は2記載のオレフィン系熱成形複合材の製造方法。
- 吸引装置間を拡げた時の間隔が、必要肉厚に対し1.1〜2倍である請求項1〜3に記載のオレフィン系熱成形複合材の製造方法。
- マット状物を、このマット状物のポリオレフィン繊維の融点以上に加熱する前に、ポリオレフィン繊維の融点以下で予備加熱する請求項1〜4記載のオレフィン系熱成形複合材の製造方法。
- マット状物を、このマット状物のポリオレフィン繊維の融点以上に加熱する前に、このマット状物を溶剤に浸積した後、その溶剤を揮発させる請求項1〜5記載のオレフィン系熱成形複合材の製造方法。
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