JP4299225B2 - 燃料希釈方法及び燃料希釈装置 - Google Patents

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Description

本発明は、窒素酸化物(NOx)の排出を低減するための燃料ステージング法と装置に関し、詳細には低NOxバーナで燃料希釈チップを利用するそのような方法と装置に関する。
化学プロセス産業(CPI)の直面している課題の一つは、経済的理由での廃燃料の燃焼であり、同時に低NOx及びCO排出要件を満たすことである。廃燃料はC/H比の高いガスの混合物を含んでおり、それらのガスは炭素の酸化により非常に明るい火炎で燃焼し、そしてまた燃焼プロセスに応じて煤粒子又は炭素も生成する。典型的な精油所燃料組成物は、含有する燃料及び不活性ガス(例えば、C1、C2、C3…Cn、オレフィン類、水素、窒素、CO2、水蒸気)の量が様々である。炭素又は煤粒子が燃料チップ上に形成されると、チップ出口付近に存在する都合のよい圧力及び温度条件下で煤構造体が一般的に成長する。これは、燃料噴射の詰まり、燃料噴射のゆがみ、チップや加熱炉部品、例えばプロセスチューブや耐火壁などの過熱、そして潜在的なバーナや炉の運転停止につながりかねない。炉が運転停止すれば、下流プロセスの中断から発生する責任を含めて、相当な金融上の違約金が発生しかねない。
炭素含量が多く、アセチレン、エタン、プロパン、ブタン及びオレフィン類(例えばエチレン及びプロピレン)などのガスを含む汚れた精油所燃料は、燃料チップが以下のものにさらされると、一般的に煤粒子を生成する。
・炉内での不十分な混合(最適でない噴射数、噴射形態、注入角度及び注入速度に応じて)(一般的にバーナの設計の問題として分類される)、
・燃料噴出口近傍で利用できる燃焼空気又は酸化剤の欠乏(一般的にバーナの流動構成の問題として分類される)、
・燃料チップの不適当な冷却(定期的な炉の放射への暴露)(一般的に燃料チップ構成及びバーナ設計の問題として分類される)、
・燃料の流れの妨害(上流の燃料装置の信頼性)(一般的にプロセスの問題として分類される)
・より低い燃焼運転(プロセスのターンダウンによる低い燃料流量)(一般的にプロセスの問題として分類される)、又は
・炭素含有種に関する精油所燃料組成の変動(一般的にプロセス要件の問題として分類される)。
バーナ又はチップの設計は、チップの過熱、煤の生成、チップの詰まりに著しい影響を与え、その結果としての頻繁なバーナ装置のメンテナンスに影響を与える。これらの問題は、燃料チップに必要な冷却に影響を与えるプロセス条件の変更、例えばプロセスターンダウンの下端側及び/又は燃料の流れの障害などにより悪化する。プロセス条件の変更及び燃料組成の変化は、精油所の運転によくあることである。
CPIが直面するもう一つの課題は、排出規制を満たすための低NOx排出量の要件である。米国内には、NOx規制(1990年の大気浄化法下での)によりプロセスヒーター、ボイラー、ガスタービン及び他の据え付け燃焼装置からのNOxの排出を10ppm未満にすることを必要とする様々な地域がある。CPIにおける最も通常の解決法又はBACT(利用可能な最高の制御技術)の解決法は、SCR(選択的触媒反応器)を利用して煙道ガスの後浄化を行い、大規模触媒反応器内でアンモニアの注入を利用し煙道ガス流中に含まれるNOxを還元する(NOxのN2への転化による)ものである。このプロセスは非常に資本集約的であり、大量のアンモニア、熱風及びIDファン運転用の電気を必要とする。
ほとんどの精油所はSCRの設置の回避を望み、代わりに低NOxバーナを利用してNOx遵守要件を満たしたいと望んでいる。しかし、低NOxバーナは、スチームメタン改質装置(SMR)、原油ヒーター、エチレン分解装置又はボイラーなどの、種々のプロセス加熱用途において、一貫して10ppm未満のNOxを生成しているわけではない。この理由から、低NOxバーナの利用は、規制当局によりBACTとして認定されていない。別の言い方をすれば、地上オゾン濃度が法的限界を超えているオゾン到達地域において、SCRは厳しいNOxレベルを満たす現在唯一の商業的に利用可能な解決策である。
通常、CPIのオペレータは、クリーンな天然ガス、又は天然ガスと汚れた精油所燃料の最適な混合物を使用して、メンテナンスの問題の不利益を減らしている。しかし、天然ガスの不足及び高い燃料コストのため、プロセス産業がクリーンな天然ガスを燃焼用に利用するのが常に可能なわけではない。廃燃料を燃焼できる精油所は、通常高い生産性を有し、廃燃料の可能性を十分に利用していない他の精油所と比べて比較的有利な競争状態にある。
NOx低減に関して、通常のNOx制御方法は、高レベルの燃料ステージングと煙道ガス再循環(FGR)による空気/燃料の希釈を備えた低NOxバーナを利用することを含む。燃料/酸化剤混合物中に非反応性又は不活性化学種を注入することにより、平均火炎温度は低下し、そのためNOxの排出が減少する。しかし、これらの方法には、煙道ガスの輸送にかかる追加の配管及びエネルギーコストが必要である。更に、周囲温度からプロセス温度へガスを加熱する必要があるためエネルギー面での不利がある。その上、文献に発表された現場データは、これらの方法が10ppm未満のNOx性能を達成することを示していない。
燃料ステージングを利用する種々の装置及び方法が、NOxの排出を低減する目的で開発されてきた。これらのいくつかを以下で検討する。
米国特許出願第2003/0148236号明細書(Joshiら)は、ステージングされた燃料ノズルを利用する超低NOxバーナを開示している。このバーナは、主バーナ本体の周囲に位置する8つの燃料ステージングランスを有する。バーナの中心部は燃焼空気の100%を供給するのに使われ、ごく少量の燃料(約10%)が火炎の全体的な安定性のために噴射される。残りの燃料(約90%)が、複数の燃料ステージングランスを利用して噴射される。燃料ステージングランスは、2つの円形の孔を持つ特殊な燃料ノズルチップを有する。図1A〜1Cに示したとおり、これらのランスは、比較的速い噴射速度(燃焼速度に応じ500〜1,000フィート/秒又は5〜15psigの燃料供給圧力)による燃焼空気と同伴加熱炉ガスとの遅れた混合のために軸線方向及び放射方向の開き角(divergence angles)を有する。
米国特許第6383462号明細書(Lang)は、図2に示すとおり炉からの煙道ガスを燃料ガスと混合するために「バーナ及び炉」の外側に混合室を持つ方法及び装置を開示している。縮小し拡大するベンチュリミキサーを使用して、追加の流動誘導ガスにより更に燃料ガスを希釈する。次いで、得られた混合物(煙道ガスで希釈された燃料)はバーナに送られ、そこで混合物は燃焼用空気と混合されて炉内で燃焼する。煙道ガスの希釈レベルに応じて、26ppmから14ppmのNOxの排出を低減することができる。この装置及び方法は、NOxの排出を10ppm未満に低減せず、その結果はSCR技術で通常得られるものには匹敵しない。
米国特許第6481209号明細書(Johnsonら)は、ガスタービンエンジンに好適な燃料ステージングシステムを開示している。燃料噴射を、1)渦流ミキサー(swirl mixer)に設置された噴射器と、2)燃焼器の捕捉渦領域に設置された噴射器の、2段階に分けることにより、空気による効率のよい燃焼が、低いNOx及びCO排出量とともに達成される。しかし、この噴射方式は、炉及び装填物(load)の形状配置のために捕捉渦領域が可能ではない大きな炉には適していない。
米国特許第6558154号明細書(Erogluら)は、別々な2つの計装燃料ステージングノズルを使用する航空機エンジン用の制御系燃料ステージング方式を開示している。1組の排出及び脈動センサーが各ステージング領域の下流に設置される。これらのセンサーは各ステージング領域から発生する燃焼生成物の特性を測定し、次いで変化する操作条件及び環境条件に応じて各領域中に噴射される燃料の相対量を制御ユニットが変化させる。
米国特許第5601424号明細書(Bernsteinら)は、噴霧スチーム噴射制御を利用するNOx低減の方法を開示している。燃料油の噴霧に利用可能である噴霧用スチームをバーナ火炎に加えることにより、NOxレベルが低下される。NOxを30%低下させるには、1ポンド燃料流当たりおよそ0.5ポンドのスチームが必要である。火炎温度を下げ、要求されるNOx低減を得るには、大量のスチームが必要である。更に、大量のスチームが火炎の急冷に使用されると、火炎の不安定性及び跳ね飛びの可能性がある。従って、火炎の安定性の理由によりスチーム噴射には上限がある。
ガスタービン産業も類似のスチーム噴射技術をNOx制御に使用している。しかし、非効率的なスチーム噴射方式のため、NOxの排出低減のために多大な経済的不利益が払われている。スチーム消費量は非常に多く、この技術は、NOx制御には比較的非効率的で費用効果が低い。
米国特許出願第2003/0148236号明細書 米国特許第6383462号明細書 米国特許第6481209号明細書 米国特許第6558154号明細書 米国特許第5601424号明細書
過剰なNOxの排出なしに精油所廃ガスを燃焼する能力を提供する、費用効果がよい、NOx排出低減のための改良装置と方法を手に入れることが望ましい。
バーナチップの詰まりやプロセスチューブの過熱などの問題による装置メンテナンスを少なくし、向上した燃料効率及び炉の生産性という追加の利益を与える装置と方法を手に入れることが更に望ましい。
現行の低NOxバーナがSCRレベルのNOx性能を満たすのを可能にし、且つ資本集約的なSCR技術を利用せずに精製業者がNOx規制を遵守するのを可能にする装置と方法を手に入れることが更に望ましい。
チップの詰まり、装置の過熱、プロセスの中断などのメンテナンスの問題で不利益を被らずにプロセス産業がより安い廃燃料を消費できるようにし、同時に10ppm未満のNOxを排出することによりNOx規制を満たすことのできる装置と方法を手に入れることが更に望ましい。
従来技術よりも良好な性能をもたらし、そしてまた従来技術の難題及び不都合の多くを克服してより良好でより有利な結果ももたらす、燃料燃焼装置と方法を手に入れることも望ましい。
本発明は、燃料を希釈して燃料のステージングにより窒素酸化物の排出を低減するための方法と装置である。本発明はまた、前記方法又は前記装置で使用することができる燃料希釈装置も包含する。
燃料を希釈して燃料のステージングにより窒素酸化物の排出を低減するための方法の第一の態様には複数の工程がある。第1の工程は、燃料希釈装置を設けることであり、この装置は、第1の管路(conduit)であって、入口及びこの入口との間隔をあけた出口を有し、入口から入り第1の熱力学的状態及び第1の燃料指数で出口から出る燃料の流れを送るのに適合している第1の管路と、第2の管路であって、取入口及びこの取入口との間隔をあけた排出口を有し、取入口から入り第2の熱力学的状態及び第2の燃料指数で排出口から出る流体の流れを送るのに適合している第2の管路を含み、第2の燃料指数は第1の燃料指数と少なくとも約0.1異なり、第2の熱力学的状態は第1の熱力学的状態と異なっていて、それにより第1の管路の出口から出る燃料の流れと第2の管路の排出口から出る流体の流れとが混合する可能性が存在する。第2の工程は、第1の管路の入口へ燃料の流れを供給することであり、この燃料の流れは第1の管路の出口から第1の熱力学的状態及び第1の燃料指数で出る。第3の工程は、第2の管路の取入口へ流体の流れを供給することであり、この流体の流れは第2の管路の排出口から第2の熱力学的状態及び第2の燃料指数で出て、それにより第1の管路の出口から出る燃料の流れの少なくとも一部分が、第2の管路の排出口から出る流体の流れの少なくとも一部分と、当該出口及び排出口の両方に近接した位置で混合し、それにより第1の燃料指数と第2の燃料指数の間の中間の燃料指数を有する少なくとも1つの希釈された燃料の流れを生じさせる。第4の工程は、酸化剤の源を提供することである。第5の工程は、酸化剤の一部分を、上記燃料の流れ、又は上記流体の流れ、又は上記希釈された燃料の流れの少なくとも1つの少なくとも一部分とともに燃焼させて、それにより窒素酸化物の量が低減されたガスを生じさせることであり、この低減された窒素酸化物の量は、上記燃料希釈装置以外の手段を使用して燃料を燃焼することにより発生する窒素酸化物の量よりも少ない。
前記方法の第1の態様には多くの別態様が存在する。1つの別態様では、流体は燃料である。もう一つの別態様では、流体は、スチーム、煙道ガス、二酸化炭素、窒素、アルゴン、ヘリウム、キセノン、クリプトン、他の不活性流体、及びそれらの混合物又は組み合わせからなる群から選択される。
前記方法の第1の態様のもう一つの別態様では、第1の管路が第2の管路に隣接している。更にもう一つの別態様では、第2の管路の少なくとも実質的な部分が第1の管路内に配置される。なお更にもう一つの別態様では、第2の管路は相当直径(Dc)を有し、第2の管路の排出口が第1の管路の出口の後ろに距離をおいて位置し、この距離は約(2Dc)〜約(20Dc)の範囲である。
燃料を希釈して燃料のステージングにより窒素酸化物の排出を低減するための方法の第2の態様は、第1の態様に類似しているが、2つの追加工程を含む。第1の追加工程は、第2の管路中に配置されるスワラー(swirler)を設けることである。第2の追加工程は、前記流体の流れの少なくとも一部分をこのスワラーを通して送り、それにより第2の管路から出る流体の少なくとも一部分を旋回させることである。
前記方法の第3の態様は第1の態様に類似しているが、2つの追加工程を含む。第1の追加工程は、第1の管路の出口と流体で連通するジッパーノズル(zipper nozzle)を設けることである。第2の追加工程は、希釈された燃料の流れの少なくとも一部分を当該ジッパーノズルを通して送ることである。
前記方法の第4の態様は、第1の態様に類似しているが、燃料希釈装置を所定量の加熱炉ガスを含む加熱炉と流体で連通するよう配置し、それにより当該所定量の加熱炉ガスの少なくとも一部分が希釈された燃料の流れの少なくとも一部分と混合する追加工程を含む。
燃料を希釈して燃料のステージングにより窒素酸化物の排出を低減するための方法のもう一つの態様は、複数の工程を含む。第1の工程は、燃料希釈装置を設けることであり、この装置は、第1の管路であって、入口及びこの入口との間隔をあけた出口を有し、入口から入り第1の圧力、第1の速度、及び第1の燃料指数で出口から出る燃料の流れを送るのに適合している第1の管路と、第2の管路であって、取入口及びこの取入口との間隔をあけた排出口を有し、取入口から入り第2の圧力、第2の速度、及び第2の燃料指数で排出口から出る流体の流れを送るのに適合している第2の管路を含み、第2の燃料指数が第1の燃料指数とは少なくとも約0.1異なり、そして第2の圧力と第2の速度の少なくとも一方が第1の圧力と第1の速度の少なくとも一方と異なっていて、それにより第1の管路の出口から出る燃料の流れと第2の管路の排出口から出る流体の流れとが混合する可能性が存在する。第2の工程は、第1の管路の入口へ燃料の流れを供給することであり、この燃料の流れは第1の管路の出口から第1の圧力、第1の速度、及び第1の燃料指数で出る。第3の工程は、第2の管路の取入口への流体の流れを供給することであり、この流体の流れは第2の管路の排出口から第2の圧力、第2の速度、及び第2の燃料指数で出て、それにより第1の管路の出口から出る燃料の流れの少なくとも一部分が、第2の管路の排出口から出る流体の流れの少なくとも一部分と、当該出口及び排出口の両方に近接した位置で混合し、それにより第1の燃料指数と第2の燃料指数の間の中間の燃料指数を有する少なくとも1つの希釈された燃料の流れを生じさせる。第4の工程は、酸化剤の源を提供することである。第5の工程は、酸化剤の一部分を、上記燃料の流れ、又は上記流体の流れ、又は上記希釈された燃料の流れの少なくとも1つの少なくとも一部分とともに燃焼させて、それにより窒素酸化物の量が低減されたガスを生じさせることであり、この低減された窒素酸化物の量は、上記燃料希釈装置以外の手段を使用して燃料を燃焼することにより発生する窒素酸化物の量よりも少ない。
燃料を希釈して燃料のステージングにより窒素酸化物の排出を低減するための燃料希釈装置の第1の態様には、複数の構成要素がある。第1の構成要素は、入口及びこの入口との間隔をあけた出口を有する第1の管路であって、この第1の管路は、入口から入り第1の熱力学的状態及び第1の燃料指数で出口から出る燃料の流れを送るのに適合している。第2の構成要素は、取入口及びこの取入口との間隔をあけた排出口を有する第2の管路であって、この第2の管路は、取入口から入り第2の熱力学的状態及び第2の燃料指数で排出口から出る流体の流れを送るのに適合しており、第2の燃料指数は第1の燃料指数と少なくとも約0.1異なり、そして第2の熱力学的状態は第1の熱力学的状態と異なっていて、それにより第1の管路の出口から出る燃料の流れと第2の管路の排出口から出る流体の流れが混合する可能性が存在し、それにより第1の管路の出口から出る燃料の流れの少なくとも一部分が、第2の管路の排出口から出る流体の流れの少なくとも一部分と、当該出口及び排出口の両方に近接した位置で混合して、それにより第1の燃料指数と第2の燃料指数の間の中間の燃料指数を有する少なくとも1つの希釈された燃料の流れを生じさせる。第3の構成要素は、酸化剤の源である。第4の構成要素は、酸化剤の一部分を、上記燃料の流れ、又は上記流体の流れ、又は上記希釈された燃料の流れの少なくとも1つの少なくとも一部分とともに燃焼させて、それにより窒素酸化物の量が低減されたガスを生じさせるための手段であり、この低減された窒素酸化物の量は、上記燃料希釈装置以外の手段を使用して燃料を燃焼させることにより発生する窒素酸化物の量よりも少ない。
前記燃料希釈装置の第1の態様には多くの別態様が存在する。1つの別態様では、流体は燃料である。もう一つの別態様では、流体は、スチーム、煙道ガス、二酸化炭素、窒素、アルゴン、ヘリウム、キセノン、クリプトン、他の不活性流体及びそれらの混合物又は組み合わせからなる群から選択される。
もう一つの別態様では、第1の管路が第2の管路に隣接している。更にもう一つの別態様では、第2の管路の少なくとも実質的な部分が第1の管路内に配置される。なお更にもう一つの別態様では、第2の管路は相当直径(Dc)を有し、第2の管路の排出口が第1の管路の出口の後ろに距離をおいて位置し、この距離は約(2×Dc)〜約(20×Dc)の範囲である。
第1の態様のもう一つの別態様では、燃料希釈装置が所定量の加熱炉ガスを含む加熱炉と流体で連通しており、それにより当該量の加熱炉ガスの少なくとも一部分が上記の希釈された燃料の流れの少なくとも一部分と混合する。
燃料希釈装置の第2の態様は、第1の態様に類似しているが、第2の管路中に配置されるスワラーを含む。燃料希釈装置の第3の態様は、第1の態様に類似しているが、第1の管路の出口と流体で連通しているジッパーノズルを含む。
燃料を希釈して燃料のステージングにより窒素酸化物の排出を低減するための燃料希釈装置のもう一つの態様は、複数の構成要素を含む。第1の構成要素は、入口及びこの入口と間隔をあけた出口を有する第1の管路であって、この第1の管路は、入口から入り第1の圧力、第1の速度、及び第1の燃料指数で出口から出る燃料の流れを送るのに適合している。第2の構成要素は、取入口及びこの取入口との間隔をあけた排出口を有する第2の管路であって、この第2の管路は、取入口から入り第2の圧力、第2の速度、及び第2の燃料指数で排出口から出る流体の流れを送るのに適合しており、第2の燃料指数は第1の燃料指数と少なくとも約0.1異なり、そして第2の圧力と第2の速度の少なくとも一方は第1の圧力と第1の速度の少なくとも一方と異なっていて、それにより第1の管路の出口から出る燃料の流れと第2の管路の排出口から出る流体の流れが混合する可能性が存在し、それにより第1の管路の出口から出る燃料の流れの少なくとも一部分が、第2の管路の排出口から出る流体の流れの少なくとも一部分と、当該出口及び排出口の両方に近接した位置で混合して、それにより第1の燃料指数と第2の燃料指数の間の中間の燃料指数を有する少なくとも1つの希釈された燃料の流れを生じさせる。第3の構成要素は、酸化剤の源である。第4の構成要素は、酸化剤の一部分を、上記燃料の流れ、又は上記流体の流れ、又は上記希釈された燃料の流れの少なくとも1つの少なくとも一部分とともに燃焼させて、それにより窒素酸化物の量が低減されたガスを生じさせるための手段であり、この低減された窒素酸化物の量は、上記燃料希釈装置以外の手段を使用して燃料を燃焼させることにより発生する窒素酸化物の量よりも少ない。
本発明のもう一つの側面は、燃料を希釈して燃料のステージングにより窒素酸化物の排出を低減するためのシステムである。このシステムは複数の構成要素を含む。第1の構成要素は、燃料希釈装置であって、それは、入口及びこの入口との間隔をあけた出口を有する第1の管路であって、入口から入り第1の熱力学的状態及び第1の燃料指数で出口から出る燃料の流れを送るのに適合している第1の管路と、取入口及びこの取入口との間隔をあけた排出口を有する第2の管路であって、取入口から入り第2の熱力学的状態及び第2の燃料指数で排出口から出る流体の流れを送るのに適合している第2の管路を含み、第2の燃料指数は第1の燃料指数と少なくとも約0.1異なり、そして第2の熱力学的状態は第1の熱力学的状態と異なっていて、それにより第1の管路の出口から出る燃料の流れと第2の管路の排出口から出る流体の流れが混合する可能性が存在する。第2の構成要素は、燃料の流れを第1の管路の入口へ供給するための手段であって、この燃料の流れは第1の管路の出口から第1の熱力学的状態及び第1の燃料指数で出ていく。第3の構成要素は、流体の流れを第2の管路の取入口へ供給するための手段であって、この流体の流れは第2の管路の排出口から第2の熱力学的状態及び第2の燃料指数で出ていき、それにより第1の管路の出口から出る燃料の流れの少なくとも一部分が、第2の管路の排出口から出る流体の流れの少なくとも一部分と、当該出口及び排出口の両方に近接した位置で混合して、それにより第1の燃料指数と第2の燃料指数の間の中間の燃料指数を有する少なくとも1つの希釈された燃料の流れを生じさせる。第4の構成要素は、酸化剤の源である。第5の構成要素は、酸化剤の一部分を、上記燃料の流れ、又は上記流体の流れ、又は上記希釈された燃料の流れの少なくとも1つの少なくとも一部分とともに燃焼させて、それにより窒素酸化物の量が低減されたガスを生じさせるための手段であり、この低減された窒素酸化物の量は、上記燃料希釈装置以外の手段を使用して燃料を燃焼させることにより発生する窒素酸化物の量よりも少ない。
燃料を希釈して燃料のステージングにより窒素酸化物の排出を低減するためのシステムのもう一つの態様は、複数の構成要素を含む。第1の構成要素は、燃料希釈装置であり、それは、入口及びこの入口との間隔をあけた出口を有する第1の管路であって、入口から入り第1の圧力、第1の速度、及び第1の燃料指数で出口から出る燃料の流れを送るの適合している第1の管路と、取入口及びこの取入口との間隔をあけた排出口を有する第2の管路であって、取入口から入り第2の圧力、第2の速度、及び第2の燃料指数で排出口から出る流体の流れを送るのに適合している第2の管路を含み、第2の燃料指数は第1の燃料指数と少なくとも約0.1異なり、そして第2の圧力と第2の速度の少なくとも一方は第1の圧力と第1の速度の少なくとも一方とは異なっていて、それにより第1の管路の出口から出る燃料の流れと第2の管路の排出口から出る流体の流れが混合する可能性が存在する。第2の構成要素は、燃料の流れを第1の管路の入口へ供給するための手段であって、この燃料の流れは第1の管路の出口から第1の圧力、第1の速度、及び第1の燃料指数で出ていく。第3の構成要素は、流体の流れを第2の管路の取入口へ供給するための手段であり、この流体の流れは第2の管路の排出口から第2の圧力、第2の速度、及び第2の燃料指数で出ていき、それにより第1の管路の出口から出る燃料の流れの少なくとも一部分が、第2の管路の排出口から出る流体の流れの少なくとも一部分と、当該出口及び排出口の両方に近接した位置で混合して、それにより第1の燃料指数と第2の燃料指数の間の中間の燃料指数を有する少なくとも1つの希釈された燃料の流れを生じさせる。第4の構成要素は、酸化剤の源である。第5の構成要素は、酸化剤の一部分を、上記燃料の流れ、又は上記流体の流れ、又は上記希釈された燃料の流れの少なくとも1つの少なくとも一部分とともに燃焼させて、それにより窒素酸化物の量が低減されたガスを生じさせるための手段であり、この低減された窒素酸化物の量は、上記燃料希釈装置以外の手段を使用して燃料を燃焼させることにより発生する窒素酸化物の量よりも少ない。
本発明を、一例として添付図面を参照して説明する。
本発明は、改質装置、プロセスヒーター、ボイラー、エチレン分解装置又は他の高温加熱炉を加熱するのに使用されるバーナなどの、燃焼装置設計で遭遇するいくつかの問題に対処するものである。本発明は、改良された燃料ステージングプロセスに関する。詳しく言えば、要求されるプロセスの目的により、迅速な希釈と混合を行う2つの一般的なアプローチは、次のものである。
1.他の燃料による燃料のステージング(F−F)。クリーンで、メンテナンス不要の低NOx運転のために、高圧の精油所廃燃料、噴霧される液体燃料などを、比較的クリーンな低圧気体燃料の近傍に噴射する。
2.不活性ガスによる燃料のステージング(F−I)。NOx低減のために、スチーム、窒素、CO2などの高圧不活性流体を低圧気体燃料の近傍に噴射する。
ここで使用する「燃料指数」(FI)という用語は、燃料炭素原子数の加重和として定義され、分子の 2 には炭素数1.3を割り当て、重みづけは成分のモル分率であって、FI=ΣCixi/Σxiであり、この式において、Ci及びxiはそれぞれ成分iの炭素原子数及びモル分率である。数種の燃料と不活性物質の燃料指数を表1に列記する。一般的に、燃料指数の高い燃料ほど容易に分解し、迅速なNOxメカニズムにより多くのNOxを生成する。 2 はこの定義における特殊な事例である。 2 には炭素原子が全くないが、天然ガスへの 2 添加がNOxの排出を増加させることはよく知られている。文献が示唆するところによると、純粋 2 の火炎では、メタンの火炎に比べて約30%多いNOxの排出が起こる。 2 の火炎からのNOx排出の増加は、熱的なNOxメカニズムによる高い火炎温度によるものである。ここでは燃料指数をNOx排出の指標として使用するので、そのNOx排出の潜在能力と一致するように、 2 には1.3という値を割り当てる。
Figure 0004299225
(1)ROG: 2 18%、CH 4 44%、 2 2 38%。
(2)PSAオフガス: 2 30%、CH 4 18%、CO 2 52%。
(3)天然ガス: CH 4 91%、 2 6 4%、 3 8 3%、 2 1%、CO 2 1%。
(4)天然ガス: CH 4 84%、 2 6 12%、 3 8 2%、 2 2%。
ここで検討する際、「熱力学的状態」という用語は、ある物質の存在の状態として定義される。この定義は、一般的に知られている熱力学の概念に基づいているが、通常の温度及び圧力のみでなく速度、濃度、組成、体積分率、流量、電位なども含んで、流れを完全に特性化するように拡張している。この定義を利用して、混合を、2つの流れの熱力学的状態の差の結果として正確に定義する。
2つのアプローチを以下で詳細に検討する。
1.別の燃料による燃料のステージング(F−F)
このアプローチを利用して、水素と高C/H燃料(エタン、プロパン、ブタン、オレフィン類など)との混合物を含む高い供給圧力の精油所廃燃料を、第2の相対的によりクリーンな低圧燃料ガスとともに燃焼させることができる。そのような精油所廃燃料では、高C/H燃料の熱分解及びその後のバーナ燃料チップでの煤の蓄積のために、メンテナンスの問題が起こる。その上、そのような燃料の燃焼は、通常より多くのNOx排出を引き起こす。
高C/Hの精油所廃燃料の燃焼を改善するために、この汚れた燃料を比較的クリーンな(二次的な)燃料の流れ(例えば、水素、合成ガス、天然ガス、又は低BTU燃料ブレンド)で希釈する。図3に示す1つの態様では、高圧精油所燃料ガス(高C/H比の燃料ガスを含有している)を、中心ランス32を通して噴射し、例えば天然ガス、合成ガス、プロセスガス、PSAオフガス(PSA吸着剤床からの生成物の水素を除いた後のリサイクルされる燃料ガス)などの、比較的クリーンな低圧燃料ガスを、中心ランス32と外側ランス34の間の環状領域33を通して噴射する。図3に示すとおり、中心ランスの出口36は、外側ランスの出口38から好ましい距離だけ奥まっている。この距離は、好ましくは、中心ランスの相当直径(Dc)の2〜20倍である。高圧精油所燃料ガスとよりクリーンな低圧燃料ガスとの燃料の配分に応じて、前記距離は約1/16インチから1インチであることが好ましい。
当業者は、図3〜7及び9において「高圧」と言うことが、「高速」あるいは「高圧又は高速」と述べられることでもあることを認めよう。同様に、それらの図において「低圧」と言うことは、「低速」あるいは「低圧又は低速」と述べられることでもある。
図3に示す配置により、汚れた高圧精油所燃料ガスが、乱流噴射の相互作用によってよりクリーンな低圧燃料ガスと混合することが可能となる。中心ランス32を通る高圧精油所燃料ガスの速度は、約900〜1400フィート/秒であることが好ましい(好ましくは音速又はチョークした速度)。中心ランス32と外側ランス34の間の環状領域33を通る低圧燃料ガスの速度は、低圧ガスの利用可能な供給圧力に応じて、約100〜900フィート/秒であることが好ましい。中心ランスの出口36から出ていく高速ガスの流れは、外側ランスの出口38に近づく低速ガスの流れを同伴し、そして流れが孔40を通って出ていく前に「第1段階」の混合をもたらす。外側ランスの孔の形状寸法、角度などは、加熱炉雰囲気中での最適な「第2段階」の混合のために設計される。非常に多量の加熱炉ガス42が第2段階の希釈のために同伴され、それによりピーク火炎温度を低下させ、結果としてNOx排出が低減する。
図4は、液体燃料での(F−F)ステージングのための配置を示している。この態様では、高圧(且つ高C/H比)の液体燃料(例えば、燃料油、ディーゼル、バンカーC、廃液体燃料など)を低圧燃料ガスを使用して希釈してから、加熱炉雰囲気中に噴射して更に希釈する。例えば、重質燃料油をスチームなどの噴霧用流体で噴霧し、それから低圧燃料ガスで希釈して、加熱炉内で煤のでない(クリーンな)燃焼を行うことができる。この態様も、より低いピーク火炎温度によりNOxの排出を低減する。
図4において、Xは中心ランス32の出口から外側ランス34の出口の背面までの距離である。Dcは、中心ランスの出口の流動面積相当直径であり、すなわち中心ランスの出口の全流動面積は直径Dcの円と同じである。Deは、外側ランスの流動面積相当直径であり、すなわちランスの出口の全流動面積は直径Deの円と同じである。
(F−F)ステージングの他の2つの態様を図5A及び5Bに示す。図5Aでは、高圧の精油所燃料ガスと低圧の燃料ガスとの間に、強い噴射と弱い噴射の相互作用が起こる。高圧の精油所燃料ガスは高圧ランス52に高速(約900〜1400フィート/秒)で好ましい方向に噴射され、そして低圧ランス54に噴射される低圧燃料ガスが、高圧の精油所燃料ガスに同伴される。
図5Bでは、高圧の精油所燃料ガスが燃料スワラー56を使って中心ランス32内で旋回されて、低圧燃料ガスが高速の旋回流の凹んだ領域(中央領域)で同伴される。これは、高圧の精油所燃料ガスと低圧の燃料ガスが外側ランス34を出て加熱炉(図示せず)に入る前に良好な混合がなされるのを可能にし、加熱炉において加熱炉ガス42による追加の希釈が行われる。このアプローチは、短い火炎プロフィール又はより小さい燃焼スペースが必要な用途にとって有利である。
(F−F)ステージングは、一般的に高圧燃料ガスが天然ガス又は一般的にトリム燃料(trim fuel)として分類される精油所オフガスで供給されるスチームメタン改質装置(SMR)において利用される。図6を参照すると、高圧燃料ガスは中心ランス32で噴射される。中心ランス32と外側ランス34の間の環状領域33に噴射される低圧燃料ガスは、一般的にPSA(圧力スイング吸着)のオフガス、又はCO2(約45%)、水素(約30%)、メタン(約15%)及びCO(約10%)を含む燃料指数約0.64のPSAからのクリーンな排出流である。PSAのオフガスは、水素製品を分離後に吸着床から出てくる透過物である。高圧トリム燃料は、水素分離用にPSAを有する典型的な改質装置の全エネルギーの10%と30%の間の割合を占める。
このステージング用途の副次的な利点は、PSA圧力サイクルの範囲を、特に下方端側で増加させることによるPSA回収率の向上である。図7を参照すると、これは外側ランス34内に低圧領域を作ることにより達成される。図7に示す中央の高速噴射72は、噴射本体の周囲に、よりゆっくり移動する低圧燃料ガスがより速く移動する中央の噴射に同伴される低圧領域を作り出す。活発な同伴プロセスのために、低圧燃料ガスの供給圧力は同じ燃料流量に対して低減される。
実験室の燃焼実験では、低圧のPSAのオフガスの供給圧力は2psigから1.6psigへと低減された(20%の低減)。これは、高圧燃料ガスを25psig(1300フィート/秒の速度)で噴射することで達成された。高圧燃料ガスと低圧燃料ガスとの燃焼エネルギーの配分は、それぞれ30:70であった。
(F−F)ステージングプロセスの細部を更に定量化するため、実験室試験の結果を、低NOxバーナを用いて考察した。このバーナは、直径18インチの円の周囲に分布する10の燃料ランスを有していた。10の燃料ランスのうち、2つのランスを(F−F)タイプのステージング用配置のために確保した。ランスは、特殊な燃料チップと受動的な混合を改善するための複数の開きスロット(diverging slots)(ジッパーチップ74)を有していた。ジッパーチップ74を利用する(F−F)燃料ステージングの配置の模式図を図7に示す。バーナの定格は、644°Fの空気予熱を利用して8MMBtu/hの燃焼速度であり、2種の燃料を使用するように設計されていた。この2種の燃料の詳細を下記に示す。
・高圧の精油所燃料ガス: H2(18%)、天然ガス(44%)、及びエチレン(38%)。この燃料は燃料指数が1.43であり、全エネルギー投入量の30%の割合を占める。
・低圧の燃料ガス: CO2(52%)、天然ガス(18%)、及びH2(30)。それは燃料指数が0.57であり、全エネルギー投入量の70%の割合を占める。
図7に示した配置を参照して、3/4インチのスケジュール40の管で作製した外側ランス34内に同心状に配置した、直径3/8インチ、肉厚0.035インチの標準的な管材料で作製した中心ランス32に高圧燃料ガスを噴射した。ジッパーチップ74を上記の管の先端部に取り付けた。このジッパーチップは、相当直径が0.51インチとなるような大きさにされ、そして図8A〜8Dに示したように、4つの垂直なスロットと1つの水平なスロットを持っていた。以下のとおり、すなわち、1)隣接する主形状間を横切る平面における一連の垂直構造、2)流れが誘発する下流の不安定性、そして3)第1の流体(燃料)と第2の流体(加熱炉ガス)との高レベルの分子(小規模)混合、の軸線方向のジッパーノズルチップの形状寸法について、垂直のスロットの開き角(α1及びα2)は、それぞれ18°及び6°であった。上記の混合はまた、最短の軸方向の距離で達成された。図7のランスインランス構造(ジッパーチップを含む)を用いて行った低NOxバーナの実験室実験により、開き角βが7°で迅速な軸線方向の混合、より多くの加熱炉ガスの同伴が示される。
図7の配置による全体的な流体プロセスの結果として、2psig未満の燃料圧力で装填物へのより均一な伝熱が起こり、超少量(<15ppmv)のNOx及びCOが排出された。ランスインランスプロセスを用いなければ、高圧且つ高C/H比の燃料が燃焼すると目に見える煤の多い火炎を生じることも認められた。また、NOx排出量は25〜30ppmほどに多くなった。この実験から、F−FステージングプロセスがNOxの排出を劇的に減少させることができることが示された。F−Iステージングプロセスでは、不活性物質により排出を更に減少させることができた。
ランスインランス(F−F)燃料ステージングの構成を、50%ものブタン(C4H10)からなる精油所燃料用に使用したときは常に、実験室の加熱炉において促進された混合が目に見える形で観測された。個々の火炎は、加熱炉ガスとはるかに迅速に混合することが分かり、そして大きく広がり又は火炎のない燃焼をもたらした。他方で、円筒状ノズルランスを有する単純なランスでは、かなり見えやすい(青っぽい)比較的長い火炎が得られ、加熱炉ガスの希釈と混合が少ないことを示すと同時に、所定の燃料供給圧力でのNOx及びCO排出レベルが比較的高くなった。
表2は、提案されたランスインランスの構成についての好ましい燃焼範囲、寸法、無次元比及び噴射角度を示している。高圧精油所燃料には単純な円形の管を用い、それに対し低圧PSAオフガス燃料にはジッパーチップを用いた。これらのランスは、低NOxバーナの重要な構成要素であるが、その理由は、バーナ性能の信頼性が流れの性能によりスチームメタン改質装置に直接影響を与えるからである。
Figure 0004299225
上記の寸法範囲は、天然ガス、プロパン、精油所オフガス、低BTU燃料などの、種々の燃料に対して有効である。ノズルは、燃料の組成、流量(又は燃焼速度)及びバーナ入口で利用可能な供給圧力に応じて、最適な大きさに作られる。表2において、寸法、比及び範囲は、2〜10MMBtu/hのバーナ燃焼速度に対して見積もられている。しかし、これらの寸法及び範囲は、同様な流速範囲を保つという標準的なエンジニアリング手法を利用して、より大きい燃焼速度のバーナ(>10MMBtu/h)用にスケールアップすることができる。
2.不活性ガスによる燃料のステージング(F−I)
スチーム(乾き又は飽和)、CO2、煙道ガス、窒素又は他の不活性ガスなどの、高圧不活性ガスによる改良された燃料ステージングを、低圧燃料ガスを用いて行い、NOxの排出を低減する。使用することができるステージング用燃料には、天然ガス、低BTUプロセスガス(水素及び他の精油所燃料からなる)、及びPSAオフガスがあるが、これらに限定はされない。噴射チップの構成は、図3〜7に示したものと同様である。主目的は、NOxの排出を更に低減することである。好ましい態様を図9に示す。
図9を参照すると、高圧(30〜100psig)の飽和又は乾きスチームが中心ランス32を通して約900〜1400フィート/秒で送られ、低圧燃料ガスが中心ランス32と外側ランス34の間の環状領域33を通して送られる。高速のスチーム噴射92は、環状領域内での第1段階の希釈(及び混合)のために燃料ガスを同伴する。次いで、得られる混合物は、加熱炉(図示せず)内での加熱炉ガス(図示せず)を利用する第2段階の希釈のために、高速(約600〜1400フィート/秒)でジッパーチップ74を通って出ていく。この第2段階の希釈は、大きなスチーム速度と、ジッパーチップにより形成される個々の火炎により得られる同伴ループのために、非常に効率的である。ジッパーチップの形態及びスチームによる補助のために、燃料の希釈が改善される。ピーク火炎温度が更に低下し、NOxの排出が極度に少なくなる。表3は、大規模なスチームメタン改質装置の加熱炉についての推定スチーム消費量を示している。
Figure 0004299225
表3に示すとおり、スチームなどの不活性ガスによる燃料ステージングという独特な方法のため、燃料希釈に要するスチームの量は非常に少ない。(F−I)ステージングに必要なスチームの量は、低圧燃料と比較すると、ポンド当たりのポンド基準で、約2%〜10%である。スチームの高速は、2段階での、すなわち、1)スチームと低圧燃料ガスを使用するランスチューブ内での、及び、2)高速燃料−スチーム混合物と加熱炉ガスを使用する加熱炉の空間での、希釈プロセスのために利用される。
窒素などの不活性ガスを用いる実験室の実験から、簡単な従来技術のランス構造(ランスインランスの構成を取らないジッパー又は円形チップのみ)と図9のランスインランス構造との比較を基に、約30%〜40%のNOx低減が可能であることが示された。例えば、5MMbtu/hの燃焼速度の低NOxバーナを使用し、周囲燃焼空気、平均温度1600°Fで運転する加熱炉、2000°Fの排ガスを使用し、重量基準で10%の窒素流量を使用すると、NOxの排出は、中央部に不活性ガスのない場合の約10ppm(3%O2で補正)から中央部に窒素ガスのある場合の約7ppm(3%O2で補正)に減少する。
上で検討した態様のそれぞれにおいて、本発明により達成される有利な成果は、2つの管路を出る流れの2つの差によりもたらされる。第1の差は、それぞれの流れの熱力学的状態の差であり、第2の差は、それぞれの流れの燃料指数の差である。具体的に言うと、2つの管路を出る2つの流れが混合する可能性があるためには、2つの流れの熱力学的状態に差がなくてはならず、意義のあるNOx低減のためには、2つの流れの燃料指数の間に少なくとも0.1の、好ましくは少なくとも0.2の、差が存在しなくてはならない。
図でもって説明しそして上で検討した態様では、2つの流れの熱力学的状態の差は圧力差(すなわち、一方の管路の「高圧」流体及び他方の管路の「低圧」流体)により表されている。しかし、当業者は、熱力学的状態の差が、速度、温度、濃度、組成、体積分率、流量、電位などで表すこともでき、それらの結果として得ることもできることを認めよう。
従って、本発明は、図面に示されておらずあるいは発明を実施するための最良の形態で検討していないその他の多くの態様及びそれらの変形形態を含むものである。とは言え、それらの態様及び変形形態は、特許請求の範囲の記載事項の範囲内及びそれと均等な事項の範囲内に含まれるものである。
当業者はまた、図面に示し発明を実施するための最良の形態で検討した態様及び変形形態が本発明の可能性のある構成の全てを開示してはいないこと、そしてその他の構成が可能であることも認めよう。従って、そのような他の構成の全ては、本発明により企図され、本発明の範囲内にある。例えば、図3〜7及び9でもって説明した態様のそれぞれにおいて、低圧の流れ及び高圧の流れの配置を逆にしてもよい(すなわち、低圧ランスが内側ランスでもよく、高圧ランスが外側ランスでもよい)。
NOx排出の低減に加え、本発明にはその他の利点と利益があり、それらの一部分を以下で検討する。
・提案された燃料ステージング方法は、(F−F)ステージング又は(F−I)ステージングのいずれかによる活発なチップの冷却を可能にする。比較的大きなチップ出口面積を有する燃料チップでは、出ていく高速の燃料ガス又は不活性物質の流れによりノズルチップが盛んに冷却される。これは、従来の円形ノズルに比べて著しい改善である。
・比較的低い同伴効率及び高い運転温度のために、高C/H燃料を用いると、従来のチップにはメンテナンスの重大な問題及び煤の詰まりの問題がある。これに比べて、本発明には以下の利点がある。
−炭素含量のより多い燃料を用いながらコークス化する傾向が低下。
−より少ない流量又はより高い発熱量の燃料を使用できること。
−より安価な燃料ノズル材料(ステンレス鋼304又は310が適切)を使用できること。
熱分解は、燃料組成物がC1〜C4の範囲の炭化水素を含む多くの精油所加熱炉にとって主要な関心事である。分解された炭素は、バーナノズルを詰まらせ、バーナ部品の過熱、生産性の低下、不十分な熱効率をもたらす。従って、メンテナンス不要の運転(F−F又はF−Iステージングを使用する)を行うことは、精油所の運転要員にとって重要な利点となる。
ここでは特定の具体的態様に関連して例示及び説明してはいるが、それにもかかわらず本発明はここに示した細部に限定されるものではない。それよりも、本発明の精神から逸脱することなく特許請求の範囲の記載事項と均等な事項の範囲内で、それらの細部に種々の変更行うことができる。
超低NOxバーナで使用される従来技術の燃料ステージングノズルの平面断面図である。 図1Aの従来技術の燃料ステージングノズルの立面断面図である。 図1Bの従来技術の燃料ステージングノズルの側面図である。 加熱炉からの煙道ガス及び流動誘導ガスを燃料ガスと混合するための従来技術の混合室の正面断面図である。 本発明の一態様の模式断面図である。 本発明のもう一つの態様の模式断面図である。 強い噴射と弱い噴射の同伴を利用する本発明のもう一つの態様を説明する模式図である。 渦流に誘発される同伴を利用する本発明のもう一つの態様の模式断面図である。 本発明のもう一つの態様の模式断面図である。 ジッパーチップ又はノズルを含む本発明のもう一つの態様の模式断面図である。 ジッパーチップ又はノズルの模式正面図である。 図7に示したものなどのような、ランスに取り付けたジッパーチップ又はノズルの模式側面図である。 ジッパーチップ又はノズルの模式平面図である。 寸法記入のため図8Aのジッパーチップ又はノズルの正面図の一部分を詳細に示す模式図である。 ジッパーチップ又はノズルを含む本発明のもう一つの態様の模式断面図である。
符号の説明
32 中心ランス
33 環状領域
34 外側ランス
36 中心ランスの出口
38 外側ランスの出口
40 孔
42 加熱炉ガス

Claims (17)

  1. 燃料を希釈して燃料のステージングにより窒素酸化物の排出を低減するための方法であって、以下の工程、すなわち、
    燃料希釈装置を設ける工程であって、この燃料希釈装置は、
    第1の管路であって、入口及びこの入口との間隔をあけた出口を有し、入口から入り第1の熱力学的状態及び第1の燃料指数で出口から出る燃料の流れを送るのに適合している第1の管路、及び、
    第2の管路であり、取入口及びこの取入口との間隔をあけた排出口を有し、取入口から入り第2の熱力学的状態及び第2の燃料指数で排出口から出る流体の流れを送るのに適合している第2の管路であって、第2の燃料指数は第1の燃料指数と少なくとも0.1異なり、第2の熱力学的状態は第1の熱力学的状態と異なっていて、それにより第1の管路の出口から出る燃料の流れと第2の管路の排出口から出る流体の流れとが混合する可能性が存在する第2の管路、
    を含むものである、燃料希釈装置を設ける工程、
    第1の管路の入口へ、第1の管路の出口から第1の熱力学的状態及び第1の燃料指数で出る燃料の流れを供給する工程、
    第2の管路の取入口へ、第2の管路の排出口から第2の熱力学的状態及び第2の燃料指数で出る流体の流れを供給する工程、
    第1の管路の出口から出る燃料の流れの少なくとも一部分を、第2の管路の排出口から出る流体の流れの少なくとも一部分と、当該出口及び排出口の両方に近接した位置で混合して、それにより第1の燃料指数と第2の燃料指数の間の中間の燃料指数を有する希釈された燃料の流れを生じさせる工程、
    第1の管路の出口と流体で連通し、垂直なスロットと水平なスロットを含む複数の開きスロットを有するジッパーノズルを設ける工程、
    上記希釈された燃料の流れの少なくとも一部分を当該ジッパーノズルを通して送る工程、
    酸化剤の源を提供する工程、及び、
    当該酸化剤の一部分を上記希釈された燃料の流れの少なくとも一部分とともに燃焼させる工程、
    を含む、燃料希釈方法。
  2. 前記流体が燃料である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記流体が、スチーム、煙道ガス、二酸化炭素、窒素、アルゴン、ヘリウム、キセノン、クリプトン、その他の不活性流体、及びそれらの混合物又は組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  4. 第1の管路が第2の管路に隣接している、請求項1に記載の方法。
  5. 第2の管路が第1の管路内に配置される、請求項1に記載の方法。
  6. 第2の管路中に配置されるスワラーを設ける工程、及び、
    前記流体の流れの少なくとも一部分をこのスワラーを通して送り、それにより第2の管路から出る流体の少なくとも一部分を旋回させる工程、
    を更に含む、請求項1に記載の方法。
  7. 前記燃料希釈装置を所定量の加熱炉ガスを含む加熱炉と流体で連通するよう配置する更なる工程、及び
    当該所定量の加熱炉ガスの少なくとも一部分を前記希釈された燃料の流れの少なくとも一部分と前記加熱炉において混合する更なる工程、
    を含む、請求項1に記載の方法。
  8. 燃料を希釈して燃料のステージングにより窒素酸化物の排出を低減するための方法であって、以下の工程、すなわち、
    燃料希釈装置を設ける工程であって、この燃料希釈装置は、
    第1の管路であって、入口及びこの入口との間隔をあけた出口を有し、入口から入り第1の圧力、第1の速度、及び第1の燃料指数で出口から出る燃料の流れを送るのに適合している第1の管路、及び、
    第2の管路であり、取入口及びこの取入口との間隔をあけた排出口を有し、取入口から入り第2の圧力、第2の速度、及び第2の燃料指数で排出口から出る流体の流れを送るのに適合している第2の管路であって、第2の燃料指数は第1の燃料指数と少なくとも0.1異なり、そして第2の圧力と第2の速度の少なくとも一方は第1の圧力と第1の速度の少なくとも一方と異なっていて、それにより第1の管路の出口から出る燃料の流れと第2の管路の排出口から出る流体の流れとが混合する可能性が存在する第2の管路、
    を含むものである、燃料希釈装置を設ける工程、
    第1の管路の入口へ、第1の管路の出口から第1の圧力、第1の速度、及び第1の燃料指数で出る燃料の流れを供給する工程、
    第2の管路の取入口へ、第2の管路の排出口から第2の圧力、第2の速度、及び第2の燃料指数で出る流体の流れを供給する工程、
    第1の管路の出口から出る燃料の流れの少なくとも一部分を、第2の管路の排出口から出る流体の流れの少なくとも一部分と、当該出口及び排出口の両方に近接した位置で混合して、それにより第1の燃料指数と第2の燃料指数の間の中間の燃料指数を有する希釈された燃料の流れを生じさせる工程、
    第1の管路の出口と流体で連通し、垂直なスロットと水平なスロットを含む複数の開きスロットを有するジッパーノズルを設ける工程、
    上記希釈された燃料の流れの少なくとも一部分を当該ジッパーノズルを通して送る工程、
    酸化剤の源を提供する工程、及び、
    当該酸化剤の一部分を上記希釈された燃料の流れの少なくとも一部分とともに燃焼させる工程、
    を含む、燃料希釈方法。
  9. 燃料を希釈して燃料のステージングにより窒素酸化物の排出を低減するための燃料希釈装置であって、
    入口及びこの入口との間隔をあけた出口を有し、入口から入り第1の熱力学的状態及び第1の燃料指数で出口から出る燃料の流れを送るのに適合している第1の管路、
    取入口及びこの取入口との間隔をあけた排出口を有し、取入口から入り第2の熱力学的状態及び第2の燃料指数で排出口から出る流体の流れを送るのに適合している第2の管路であって、第2の燃料指数は第1の燃料指数と少なくとも0.1異なり、第2の熱力学的状態は第1の熱力学的状態と異なっている第2の管路、
    を含み、ここで、第1の管路の出口と第2の管路の排出口は当該出口及び排出口の両方に近接した混合用の位置を画定しており、
    且つ、
    第1の管路の出口及び上記混合用の位置と流体で連通し、垂直なスロットと水平なスロットを含む複数の開きスロットを有するジッパーノズル、
    を含む、燃料希釈装置。
  10. 第1の管路が第2の管路に隣接している、請求項9に記載の燃料希釈装置。
  11. 第2の管路が第1の管路内に配置されている、請求項9に記載の燃料希釈装置。
  12. 第2の管路内に配置されたスワラーを更に含む、請求項9に記載の燃料希釈装置。
  13. 当該燃料希釈装置が所定量の加熱炉ガスを含む加熱炉と流体で連通しており、それにより当該所定量の加熱炉ガスの少なくとも一部分が前記希釈された燃料の流れの少なくとも一部分と混合する、請求項9に記載の燃料希釈装置。
  14. 燃料を希釈して燃料のステージングにより窒素酸化物の排出を低減するためのシステムであって、
    入口及びこの入口との間隔をあけた出口を有する第1の管路、
    上記入口から入り第1の熱力学的状態及び第1の燃料指数で上記出口から出る燃料の流れ、
    取入口及びこの取入口との間隔をあけた排出口を有する第2の管路、
    上記取入口から入り第2の熱力学的状態及び第2の燃料指数で上記排出口から出る流体の流れであって、第2の燃料指数は第1の燃料指数と少なくとも0.1異なり、そして第2の熱力学的状態は第1の熱力学的状態と異なっている流体の流れ、
    を含み、ここで、第1の管路の出口と第2の管路の排出口は当該出口及び排出口の両方に近接した混合用の位置を画定しており、
    且つ、
    上記燃料の流れ及び上記流体の流れから上記混合用の位置で生じさせた第1の燃料指数と第2の燃料指数の間の中間の燃料指数を有する希釈された燃料の流れ、及び、
    第1の管路の出口及び上記混合用の位置と流体で連通し、垂直なスロットと水平なスロットを含む複数の開きスロットを有するジッパーノズル、
    を含む、燃料希釈システム。
  15. 燃料を希釈して燃料のステージングにより窒素酸化物の排出を低減するためのシステムであって、
    入口及びこの入口との間隔をあけた出口を有する第1の管路、
    上記入口から入り第1の圧力、第1の速度、及び第1の燃料指数で上記出口から出る燃料の流れ、
    取入口及びこの取入口との間隔をあけた排出口を有する第2の管路、
    上記取入口から入り第2の圧力、第2の速度、及び第2の燃料指数で上記排出口から出る流体の流れであって、第2の燃料指数は第1の燃料指数と少なくとも0.1異なり、そして第2の圧力と第2の速度の少なくとも一方は第1の圧力と第1の速度の少なくとも一方とは異なっている流体の流れ、
    を含み、ここで、第1の管路の出口と第2の管路の排出口は当該出口及び排出口の両方に近接した混合用の位置を画定しており、
    且つ、
    上記燃料の流れ及び上記流体の流れから上記混合用の位置で生じさせた第1の燃料指数と第2の燃料指数の間の中間の燃料指数を有する希釈された燃料の流れ、及び、
    第1の管路の出口及び上記混合用の位置と流体で連通し、垂直なスロットと水平なスロットを含む複数の開きスロットを有するジッパーノズル、
    を含む、燃料希釈システム。
  16. 前記流体が燃料である、請求項14又は15に記載の燃料希釈システム。
  17. 前記流体が、スチーム、煙道ガス、二酸化炭素、窒素、アルゴン、ヘリウム、キセノン、クリプトン、その他の不活性流体、及びそれらの混合物又は組み合わせからなる群から選択される、請求項14又は15に記載の燃料希釈システム。
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