JP4298249B2 - 高分子流体の分子量測定方法及びその装置並びに高分子流体の分子量制御方法及びその装置 - Google Patents

高分子流体の分子量測定方法及びその装置並びに高分子流体の分子量制御方法及びその装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高分子流体の分子量を圧力や温度等のプラントの運転情報を用いて演算により求める方法及びその装置、並びに高分子流体の分子量を求めて製造する高分子流体の分子量を目標範囲に維持する制御方法及びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
高分子製品の分子量は製品の最重要な品質指標であり、分子量を正確に測定することは高分子製品の品質制御及び品質管理の上で非常に重要となっている。特に、高分子流体の分子量の測定には、固化させた最終の高分子製品からサンプルを採取し溶媒に溶解させて細管中を落下させ、基準液との落下速度の比較から動粘度を測定し予め求めておいた動粘度と分子量の関係を示す検量線を用いてオフラインで求める方法、あるいはプラント内の流路中を流れる融解状態の高分子の動粘度をオンライン計測器で計測し予め求めておいた検量線を用いて分子量を求める方法等が用いられている。
【0003】
一方、プラントの実際の運転管理の面からは、プラントの定常運転時における高分子の品質安定化や、迅速で滑らかな高分子のグレード切り替えが要求されている。従って、これらの要求を実現するためには、流路中を流れる融解状態の高分子の分子量をオンラインで連続計測することが必要となってくる。融解状態の高分子の分子量をオンラインで連続計測するには、融解状態の高分子の動粘度を測定して分子量を求める方法が一般的である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、現在のオンライン連続測定用の粘度計は非常に高価であると共に、対象とする高分子の性質によっては粘度計内での高分子の付着、付着に伴う閉塞等の測定上の問題が生じ易い。また、これらの問題を主原因とする粘度計の指示ドリフト、粘度計内に設けられた押出しポンプの故障等の様々な実用上の問題点が発生している。このため、長期間の連続使用や、安定した測定精度の確保には多大な保全労力とコストを要している。特に、高分子がポリカーボネートである場合上記の問題が顕著となる。
従って、従来の粘度計に代わる安価で、安定した測定が得られ、保全労力が少ない連続分子量測定方法が望まれていた。更に、分子量の安定した連続自動測定が可能になれば、その測定結果に基づきプラントにおける運転状態を操作することにより、分子量を制御しその安定化を達成することが可能となり、高分子製品の品質安定化やプラントの運転操作における運転員の負担削減も可能となる。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、安価で連続して安定した測定が行なえ保全労力が少ない高分子流体の分子量測定方法及びその装置、並びに測定された高分子流体の分子量に基づいて高分子流体の分子量を目標範囲に維持する高分子流体の分子量制御方法及びその装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題に鑑みて鋭意検討を重ね、粘度計を用いずにプラントの運転情報に基づいて高分子製品の分子量を推定する方法を見出し、本発明に至った。前記目的に沿う第1の発明に係る高分子流体の分子量測定方法は、高分子流体を製造するプラントの製品排出用の流路内を移動する該高分子流体の分子量を測定する高分子流体の分子量測定方法であって、前記高分子流体を前記流路内で移動させる際の高分子流体の流体圧力流体温度、該流路内に設けた弁の開度及び該流路に設けた揚程発生装置の回転速度からなるプラント運転情報と該高分子流体の分子量との定量的関係を示す1次の線形関数式、2次以上の線形関数式、あるいは非線形関数式からなる実験式を予め求め、該実験式に製造中の高分子流体を前記流路内で移動させるときの前記プラント運転情報をそれぞれ測定して代入することにより該製造中の高分子流体の分子量を算出する。
【0007】
本発明においては、プラント運転情報として、高分子流体の流体圧力及び流体温度に関する情報は必ず使用する必要がある。ここで、高分子流体の流体温度としては、流路内を移動する高分子流体の温度を直接測定して得られる温度を使用することができるが、高分子流体を加温する加熱手段の例えば、ヒータ温度や熱媒温度を用いることもできる。また、高分子流体の流体圧力としては、流路内を移動する高分子流体の圧力を直接測定して得られる圧力を使用することができる。なお、高分子流体の流体圧力及び流体温度に関する情報は流路内のそれぞれ2カ所以上の測定値を用いてもよい。
また、プラント運転情報と高分子流体の分子量との定量的関係を示す実験式は、種々のプラント運転情報の下で製造された高分子に対してその分子量をオフラインにおいて信頼性の高い測定方法を用いてそれぞれ測定して、得られたプラント運転情報と分子量からなる複数の実験データを基に、例えば、多変量解析の手法を用いて決定することができる。
【0008】
第1の発明に係る高分子流体の分子量測定方法において、プラント運転情報として、更に流路内に設けた弁の開度及び流路に設けた揚程発生装置の回転速度を使用する。
プラント運転情報の一例である高分子流体の流体圧力は生産レートの影響を受ける。そして、生産レートは、流路内に設けた弁の開度、及び流路に設けた流体押出しポンプ等の揚程発生装置の回転速度により調整している。このため、プラント運転情報をより正確に把握するために、直接測定される高分子流体の流体圧力に加えて、流路内に設けた弁の開度や流体を流路内で移動させる揚程発生装置の回転速度を考慮す
【0009】
プラント運転情報Xi(i=1〜n、nは自然数)と高分子流体の分子量Yとの定量的関係を示す実験式は、例えば、
Y=a1・X1+a2・X2+・・・+an・Xn ・・・・・(1)
で表される1次の線形関数式とすることができる。ただしai(i=1〜n)は、例えば多変量解析により決められるプラント固有の定数である。従って、(1)式に運転しているプラントのプラント運転情報Xiを代入することにより、製造されて流路内を移動している高分子流体の分子量を算出することができる。
【0010】
第1の発明に係る高分子流体の分子量測定方法において、前記高分子流体を溶融ポリカーボネートとすることができる。
プラント運転情報とポリカーボネートの分子量との定量的関係を示す実験式を予め求めておくと、例えば、粘度計を備えた分子量測定装置を使用せずに、ポリカーボネートを製造するプラントのプラント運転情報から、製造されて流路内を移動している溶融ポリカーボネートの分子量を求めることができる。
【0011】
前記目的に沿う第2の発明に係る高分子流体の分子量測定装置は、高分子流体を製造するプラントの製品排出用の流路内を移動する高分子流体の分子量測定装置であって、前記流路内を移動する前記高分子流体の流体圧力を測定する圧力測定器と、前記流路内を移動する前記高分子流体の流体温度を測定する温度測定器と、前記流路の上流側に設けられ反応器から排出された前記高分子流体を該流路内に押し出す揚程発生装置の回転速度を測定して出力する回転速度伝達部と、前記流路の下流側に設けられた弁の開度を測定して出力する開度伝達部と、前記流体圧力、前記流体温度、前記開度及び前記回転速度からなるプラント運転情報と前記高分子流体の分子量との定量的関係を示す1次の線形関数式、2次以上の線形関数式、あるいは非線形関数式からなる実験式に、測定された前記プラント運転情報を代入して前記高分子流体の分子量を算出する演算器とを有し、前記圧力測定器には測定された前記流体圧力を前記演算器に伝達する圧力伝達部、前記温度測定器には測定された前記流体温度を前記演算器に伝達する温度伝達部が設けられている。
【0012】
ここで、圧力測定器は、例えば圧力検出部に隔膜式圧力伝送器を使用したものを用いることができる。また、温度測定器には、例えば温度検出部に熱電対を使用したものを用いることができる。そして、圧力測定器及び温度測定器にはそれぞれ圧力伝達部、温度伝達部が設けられているため、測定値を演算器に直ちに入力することができる。更に、演算器は、圧力伝達部及び温度伝達部を介してそれぞれ入力された高分子流体の流体圧力と流体温度を含むプラント運転情報を読込み、予め求めておいた実験式に読み込んだプラント運転情報を代入して高分子流体の分子量を算出する機能を有するプログラムをコンピュータに搭載することにより構成することができる。
【0013】
第2の発明に係る高分子流体の分子量測定装置において、前記演算器には算出された前記分子量を電気信号として出力する分子量出力部が設けられていることが好ましい。
得られた分子量が電気信号として出力されるので、測定結果の表示及び伝送が容易となる。
【0014】
前記目的に沿う第3の発明に係る高分子流体の分子量制御方法は、反応器で製造され該反応器に接続された製品排出用の流路内を移動する高分子流体の分子量を第1の発明に係る高分子流体の分子量測定方法により測定し、得られた前記高分子流体の分子量に基づいて前記反応器に設けられた運転用の操作端を調節して、前記反応器で製造される高分子流体の分子量を所定の分子量範囲に入れている。
【0015】
プラント運転情報をもとに算出した高分子流体の分子量に対して、例えば、分子量目標値との偏差を求め、この偏差に基づいて反応器に設けられた運転用の操作端から反応器内の反応圧力、温度を操作する。その結果、高分子流体の分子量を分子量目標値を中心とした所定の範囲内に入るように制御することができる。
ここで、プラント運転情報としては、高分子流体の流路中での流体圧力、流体温度、生産レートに関わる情報等が挙げられる。流体圧力に関わる情報としては、例えば、流体圧力そのものや、流路中に設けられたバルブの開度を指す。また、生産レートに関わる情報としては、例えば、流体押出しポンプの回転速度を指す。流体温度としては、高分子流体を加温する加熱手段のヒータ温度や熱媒の温度を用いることができる。更に、流体圧力、流体温度に関する情報はそれぞれ流路内の異なる2カ所以上で得られる測定値を用いてもよい。
なお、プラント運転情報をもとに高分子流体の分子量を算出する際、プラント情報の中で、流体圧力と流体温度に関する情報は必ず使用する必要がある。
【0016】
前記目的に沿う第4の発明に係る高分子流体の分子量制御装置は、高分子流体製造用のプラントに設けられた反応器で製造される高分子流体の分子量を所定の分子量範囲に調整する高分子流体の分子量制御装置であって、前記反応器に接続された製品排出用の流路内を移動する前記高分子流体の分子量を測定する高分子流体の分子量測定装置と、測定された前記高分子流体の分子量に基づいて前記反応器に設けられた運転用の操作端を調整する操作端調節器とを備え、前記高分子流体の分子量測定装置は前記流路内を移動する前記高分子流体の流体圧力を測定する圧力測定器と、前記流路内を移動する前記高分子流体の流体温度を測定する温度測定器と、前記流路の上流側に設けられ前記反応器から排出された前記高分子流体を該流路内に押し出す揚程発生装置の回転速度を測定して出力する回転速度伝達部と、前記流路の下流側に設けられた弁の開度を測定して出力する開度伝達部と、前記流体圧力、前記流体温度、前記開度及び前記回転速度からなるプラント運転情報と前記高分子流体の分子量との定量的関係を示す1次の線形関数式、2次以上の線形関数式、あるいは非線形関数式からなる実験式に、測定された前記プラント運転情報を代入して前記高分子流体の分子量を算出する演算器とを有し、前記圧力測定器には測定された前記流体圧力を前記演算器に伝達する圧力伝達部、前記温度測定器には測定された前記流体温度を前記演算器に伝達する温度伝達部、前記演算器には算出された前記分子量を電気信号として前記操作端調節器に出力する分子量出力部がそれぞれ設けられている。
【0017】
高分子流体の分子量測定装置で測定した流路内を移動する高分子流体の分子量を分子量出力部から電気信号として出力させ、操作端調節器に入力する。操作端調節器では、例えば、入力された分子量の値と分子量目標値との偏差を求め反応器に設けられた操作端に入力する。操作端では、この偏差に基づいて反応器内の圧力、温度を操作する。その結果、製造する高分子流体の分子量を変化させることができる。そして、分子量の変化は、反応器から排出されて流路内を移動する高分子流体の流体圧力、流体温度を含むプラント運転情報を測定することで定量的に把握することができる。
従って、得られた分子量を再び操作端調節器に入力することで、再度反応器に設けられた運転用の操作端が調整されて、合成される高分子流体の分子量が変化することになる。以上のように、プラント運転情報から高分子流体の分子量を算出し、その結果を高分子流体を製造する反応器の運転操作にフィードバックさせることにより、高分子流体の分子量を分子量目標値を中心に所定の範囲内に入るように制御することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここに、図1は本発明の第1の実施の形態に係る高分子流体の分子量測定装置の説明図、図2は同高分子流体の分子量測定装置で測定した高分子流体の分子量測定結果の説明図、図3は本発明の第2の実施の形態に係る高分子流体の分子量制御装置の説明図である。図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る高分子流体の分子量測定装置10は、高分子流体の一例である溶融ポリカーボネートを製造する反応器11と反応器11接続されて製造された溶融ポリカーボネートを排出する流路12を備えたプラント12aに対して設けられており、流路12内を移動する溶融ポリカーボネートの流体圧力を測定する圧力測定器13と、流路12内を移動する溶融ポリカーボネートの流体温度を測定する温度測定器14を有している。更に、高分子流体の分子量測定装置10は、流路12の上流側に設けられ反応器11から排出された溶融ポリカーボネートを流路12内に押し出す揚程発生装置の一例である押出しポンプ16の回転速度を測定して出力する回転速度伝達部17と、流路12下流側に設けられた弁の一例である絞り弁18の開度を測定して出力する開度伝達部19と、測定された流体圧力、流体温度、押出しポンプ16の回転速度、及び絞り弁18の開度から溶融ポリカーボネートの分子量を予め決定された実験式を用いて算出する演算器15とを有している。以下、これらについて詳細に説明する。
【0019】
流路12は2重管構造となっており、内側の管に溶融ポリカーボネートが流れ、外側の管に溶融ポリカーボネートを加温するための熱媒流体が流れている。
圧力測定器13は、流路12の内管内に設けられた圧力検出部20と、圧力検出部20で検出された検出信号を流体圧力に変換する変換器21と、変換器21から出力された流体圧力を演算器15に伝達する圧力伝達部22を有している。温度測定器14は、流路12の内管内に設けられた温度検出部23と、温度検出部23で検出された検出信号を流体温度に変換する変換器24と、変換器24から出力された流体温度を演算器15に伝達する温度伝達部25を有している。なお、押出しポンプ16の回転速度はモータの負荷電流を求めたり、ロータリーエンコーダによる回転速度の直接計測により、絞り弁18の開度は出力電流を求めることによりそれぞれ決定できる。
【0020】
演算器15は、回転速度伝達部17から入力される回転速度、開度伝達部19から入力される開度、圧力伝達部22から入力される流体圧力、温度伝達部25から入力される流体温度を受け付けるデータ入力部26と、データ入力部26から出力された各データを溶融ポリカーボネートの分子量を算出する実験式に代入して分子量を算出する分子量演算部27と、算出された分子量を電気信号として外部の表示器28に出力する分子量出力部29を有している。そして、演算器15は、回転速度伝達部17、開度伝達部19、圧力伝達部22、温度伝達部25から入力されるデータを読込み、予め求めた溶融ポリカーボネートの分子量を算出する実験式に代入して演算し、その結果を外部に出力する機能を発現するプログラムをコンピュータに搭載することにより構成できる。
【0021】
本発明の第1の実施の形態に係る高分子流体の分子量測定装置10を用いた高分子流体の一例である溶融ポリカーボネートの分子量測定方法について詳細に説明する。
先ず、反応器11にポリカーボネートを製造する原料を原料供給経路30から供給し、反応器11の運転を操作する操作端31から反応器11内の圧力、反応器11内の温度を設定し溶融ポリカーボネートを製造する。続いて、製造した溶融ポリカーボネートを製品排出用の流路12に導出し、押出しポンプ16を運転して溶融ポリカーボネートを流路12内で移動させる。このとき、押出しポンプ16の回転速度と絞り弁18の開度をそれぞれ変化させて、流路12内を移動する溶融ポリカーボネートの流体圧力と流体温度を測定する。また、流路12の出口から移動してきた溶融ポリカーボネートを採取し、オフラインでその分子量を測定する。更に、操作端31から反応器11内の圧力、反応器11内の温度を別の値に設定し、押出しポンプ16の回転速度と絞り弁18の開度をそれぞれ変化させて、流路12内を移動する溶融ポリカーボネートの流体圧力と流体温度を測定する。そして、溶融ポリカーボネートの分子量に対して、その溶融ポリカーボネートが流路12内を移動する際の流体圧力と流体温度、押出しポンプ16の回転速度、及び絞り弁18の開度から構成されるプラント運転情報を対応させて収集していく。
【0022】
ここで、溶融ポリカーボネートの分子量Y、溶融ポリカーボネートが流路12内を移動する際の流体圧力X1 溶融ポリカーボネートが流路12内を移動する際の流体温度X2、押出しポンプ16の回転速度X3、及び絞り弁18の開度X4の間に、
Y=a11+a22+a33+a44 ・・・・・(2)
で表される1次の線形関数式が成立していると仮定する。ここで、a1、a2、a3、a4は、溶融ポリカーボネートを製造する際のプラント固有の定数である。そして、収集された溶融ポリカーボネートの分子量Yと、そのときのプラント運転情報X1、X2、X3、X4からなる複数の実験データに対して、多変量解析を適用すると、a1、a2、a3、a4を一義的に求めることができる。その結果、決定されたa1、a2、a3、a4を用いて(2)の形式で標記される溶融ポリカーボネートの分子量を算出する実験式を決定することができる。
従って、プラント12aを使用して溶融ポリカーボネートを製造する場合、上記の実験式が予め求められていると、ポリカーボネートを製造しながら溶融ポリカーボネートが流路12内を移動する際の流体圧力、溶融ポリカーボネートが流路12内を移動する際の流体温度、押出しポンプ16の回転速度、及び絞り弁18の開度をプラント運転情報としてそれぞれ測定し、この測定値を実験式(2)のX1、X2、X3、X4にそれぞれ代入することにより、製造されている溶融ポリカーボネートの分子量を算出することができる。
【0023】
図2に高分子流体の分子量測定装置10で測定した溶融ポリカーボネートの分子量の測定結果を示す。
図2は、横軸に製造を開始して反応器11での反応が安定した時点を測定開始の起点とした時間(単位は秒)を示し、縦軸にプラント12aでの製造条件を時間的に変化させて得られる溶融ポリカーボネートの分子量を示している。実際の分子量は通常10000〜30000の範囲となるが、図2では実際の分子量を測定レンジ(高分子流体の分子量測定装置10で測定可能な分子量の最大値)で割って0〜1の範囲に規格化した場合の分子量を示している。なお、高分子流体の分子量測定装置10による測定は、例えば、1秒間隔で行なった。但し、図2では1分間隔のデータを表示してグラフとしている。また、合成された溶融ポリカーボネートを流路12の終端口32から順次採取して、別の分子量測定装置で分子量をオフラインで測定した。得られた測定は規格化し●で示して図2に併記した。製造条件を変化させると、分子量は規格化されたレンジ内のかなり広い範囲で変動するが、高分子流体の分子量測定装置10で測定した分子量の値と、オフラインで測定した分子量の値とは非常に良い一致を示している。
【0024】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る高分子流体の分子量制御装置33について説明する。
図3に示すように、第2の実施の形態に係る高分子流体の分子量制御装置33は、溶融ポリカーボネートを合成するプラント12aに設けられており、流路12内を移動する溶融ポリカーボネートの分子量を測定する高分子流体の分子量測定装置34と、測定された溶融ポリカーボネートの分子量に基づいて反応器11に設けられた運転用の操作端31を調整する操作端調節器35を有している。
なお、高分子流体の分子量測定装置34は、第1の実施の形態の高分子流体の分子量測定装置10と実質的に同一の構成とすることができるので、同一の構成部材に対しては同一の符号を記して詳しい説明は省略する。
【0025】
操作端調節器35は、高分子流体の分子量測定装置34が一定の時間間隔で測定し電気信号として出力した溶融ポリカーボネートの分子量の値を読み込んで、予め設定した分子量目標値と比較して偏差を求め、この偏差に基づいて反応器11内の例えば、圧力、温度を操作するための制御動作の信号を操作端31に出力する機能を有している。なお、操作端調節器35は、上記の機能を発現するプログラムをコンピュータに搭載させることにより構成することができる。
制御動作の信号が操作端31に入力されると、操作端31は制御信号に基づいて反応器11内の圧力、温度を操作する。ここで、偏差に基づく制御動作としては、例えば、偏差の大きさに比例して反応器11内の圧力、温度を変化させる出力を出す制御動作、偏差の時間積分値に比例して反応器11内の圧力、温度を変化させる出力を出す制御動作、偏差の時間微分値に比例して反応器11内の圧力、温度を変化させる出力を出す制御動作、あるいは上記の各制御動作を任意に2つ以上組合せた複合制御動作を採用することができる。
【0026】
本発明の第2の実施の形態に係る高分子流体の分子量制御装置33を用いた高分子流体の一例である溶融ポリカーボネートの分子量制御方法について詳細に説明する。
分子量を制御する対象は、第1の実施の形態に係る高分子流体の分子量制御装置10を適用したプラント12aなので、高分子流体の分子量測定装置33で使用する分子量を算出する実験式は、高分子流体の分子量制御装置10で使用した実験式と同一のものを使用できる。
反応器11にポリカーボネートを製造する原料を原料供給経路30から供給し、反応器11の運転を操作する操作端31から反応器11内の圧力、反応器11内の温度を設定し溶融ポリカーボネートを製造させ、製造させた溶融ポリカーボネートを絞り弁18が設置されている流路12に導入し、押出しポンプ16を所定の回転速度で運転して、溶融ポリカーボネートを流路12内で移動させる。そして、溶融ポリカーボネートが流路12内を移動する際の流体圧力を圧力測定器13で溶融ポリカーボネートが流路12内を移動する際の流体温度を温度測定器14で、押出しポンプ16の回転速度を回転速度伝達部17を介して、絞り弁18の開度を開度伝達部19を介してそれぞれプラント運転情報として測定し、高分子流体の分子量測定装置34に入力し実験式(2)に代入して分子量を算出する。算出した分子量は、電気信号として操作端調節器35に入力する。
【0027】
操作端調節器35に測定された分子量の値が入力されると、予め設定した分子量目標値と比較して偏差を求める。そして、この偏差に基づいて反応器11内の圧力、温度を操作するための制御動作の信号を操作端31に出力する。操作端31は入力された制御信号に基づいて、反応器11内の圧力、温度を操作する。その結果、反応器11で製造される溶融ポリカーボネートの分子量が変化し、分子量が変化した溶融ポリカーボネートが流路12に排出され押出しポンプ16で押し出されて流路12内を移動する。
この溶融ポリカーボネートの流体圧力を圧力測定器13で溶融ポリカーボネートが流路12内を移動する際の流体温度を温度測定器14で測定し、更に、押出しポンプ16の回転速度を回転速度伝達部17を介して、絞り弁18の開度を開度伝達部19を介してそれぞれ測定して高分子流体の分子量測定装置34に入力して分子量を算出する。その結果は電気信号として操作端調節器35に入力され、再度偏差が求められて制御動作の信号が操作端31に入力される。この偏差に基づいて反応器11に設けられた運転用の操作端31から反応器11内の圧力、温度を再び操作することができる。
このように、プラント12aの運転情報から溶融ポリカーボネートの分子量を算出し、その結果を溶融ポリカーボネートを製造する反応器11の運転操作にフィードバックさせることにより、溶融ポリカーボネートの分子量を分子量目標値を中心に所定の範囲内に入るように制御することができる。
【0028】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能であり、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組み合わせて本発明の高分子流体の分子量測定方法及びその装置並びに高分子流体の分子量制御方法及びその装置を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。例えば、高分子流体の流体温度を流路内に設けた温度測定器で測定したが、流路内を移動する高分子流体の温度は反応器内の高分子流体の温度と相関があるため、反応器内に温度測定器を取付けて反応器内の高分子流体の温度を測定してもよい。また、高分子流体の温度として、流路内の流体温度の他に、流路を加熱する熱媒の温度の情報を付加してもよい。更に、運転情報として、2カ所以上で測定された流体圧力、流体温度を用いてもよい。そして、2カ所で流体圧力を測定する場合は、流体圧力として差圧を用いることもできる。
高分子流体の分子量と運転情報との間に1次の線形関数式が成立していると仮定したが、2次以上の線関数式、あるいは非線形関数式が成立しているとして、分子量を算出する実験式を求めてもよい。
本実施の形態では、高分子流体として溶融ポリカーボネートの場合について説明したが、高分子流体として、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートに対しても本発明を適用できる。
【0029】
【発明の効果】
請求項1及び2記載の高分子流体の分子量測定方法においては、高分子流体を流路内で移動させる際の高分子流体の流体圧力及び流体温度を含むプラント運転情報と高分子流体の分子量との定量的関係を示す実験式を予め求め、実験式に製造中の高分子流体を流路内で移動させるときのプラント運転情報を用いて製造中の高分子流体の分子量を算出するので、高分子流体の分子量をオンラインで安価に連続して安定的にしかも保全労力を少なくして測定することが可能となる。
【0030】
また、プラント運転情報として、更に流路内に設けた弁の開度及び流路に設けた揚程発生装置の回転速度を使用するので、プラント運転情報をより正確に把握して高分子流体の分子量をより正確に測定することが可能となる。
【0031】
そして、実験式プラント運転情報を変数とする線形関数式で構成する場合、各プラント運転情報を独立に測定することで容易に高分子流体の分子量を求めることが可能となる。
【0032】
請求項記載の高分子流体の分子量測定方法においては、高分子流体が溶融ポリカーボネートであるので、溶融ポリカーボネートの分子量をオンラインで安定して測定することが可能となる。
【0033】
請求項及び記載の高分子流体の分子量測定装置においては、流路内を移動する高分子流体の流体圧力を測定する圧力測定器と、流路内を移動する高分子流体の流体温度を測定する温度測定器と、測定された流体圧力及び流体温度を含むプラントのプラント運転情報から高分子流体の分子量を予め決定された実験式を用いて算出する演算器とを有し、圧力測定器には測定された流体圧力を演算器に伝達する圧力伝達部、温度測定器には測定された流体温度を演算器に伝達する温度伝達部が設けられているので、流路内を移動する高分子流体の流体圧力と流体温度を測定して直ちに高分子流体の分子量を求めることが可能となる。
【0034】
特に、請求項記載の高分子流体の分子量測定装置においては、演算器には算出された分子量を電気信号として出力する分子量出力部が設けられているので、得られた分子量の表示や、分子量データの伝送が容易となり、高分子流体を製造するプラントの運転操作を効率的に行なうことができる。
【0035】
請求項記載の高分子流体の分子量制御方法においては、反応器で製造され反応器に接続された製品排出用の流路内を移動する高分子流体の分子量を請求項1及び2のいずれか1項に記載の高分子流体の分子量測定方法により測定し、得られた高分子流体の分子量に基づいて反応器に設けられた運転用の操作端を調節して、反応器で製造される高分子流体の分子量を所定の分子量範囲に入れるので、品質の安定した高分子製品を容易に製造することが可能となる。
【0036】
請求項記載の高分子流体の分子量制御装置においては、反応器に接続された製品排出用の流路内を移動する高分子流体の分子量を測定する高分子流体の分子量測定装置と、測定された高分子流体の分子量に基づいて反応器に設けられた運転用の操作端を調整する操作端調節器とを備え、高分子流体の分子量測定装置は流路内を移動する高分子流体の流体圧力を測定する圧力測定器と、流路内を移動する高分子流体の流体温度を測定する温度測定器と、測定された流体圧力及び流体温度を含むプラントのプラント運転情報から高分子流体の分子量を予め決定された実験式を用いて算出する演算器とを有し、圧力測定器には測定された流体圧力を演算器に伝達する圧力伝達部、温度測定器には測定された流体温度を演算器に伝達する温度伝達部、演算器には算出された分子量を電気信号として操作端調節器に出力する分子量出力部がそれぞれ設けられているので、高分子流体の分子量が分子量目標値を中心とした所定の範囲内に入るようにプラントを運転することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る高分子流体の分子量測定装置の説明図である。
【図2】同高分子流体の分子量測定装置で測定した高分子流体の分子量測定結果を示す説明図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る高分子流体の分子量制御装置の説明図である。
【符号の説明】
10:高分子流体の分子量測定装置、11:反応器、12:流路、12a:プラント、13:圧力測定器、14:温度測定器、15:演算器、16:押出しポンプ、17:回転速度伝達部、18:絞り弁、19:開度伝達部、20:圧力検出部、21:変換器、22:圧力伝達部、23:温度検出部、24:変換器、25:温度伝達部、26:データ入力部、27:分子量演算部、28:表示器、29:分子量出力部、30:原料供給経路、31:操作端、32:終端口、33:高分子流体の分子量制御装置、34:高分子流体の分子量測定装置、35:操作端調節器

Claims (6)

  1. 高分子流体を製造するプラントの製品排出用の流路内を移動する該高分子流体の分子量を測定する高分子流体の分子量測定方法であって、
    前記高分子流体を前記流路内で移動させる際の高分子流体の流体圧力流体温度、該流路内に設けた弁の開度及び該流路に設けた揚程発生装置の回転速度からなるプラント運転情報と該高分子流体の分子量との定量的関係を示す1次の線形関数式、2次以上の線形関数式、あるいは非線形関数式からなる実験式を予め求め、該実験式に製造中の高分子流体を前記流路内で移動させるときの前記プラント運転情報をそれぞれ測定して代入することにより該製造中の高分子流体の分子量を算出することを特徴とする高分子流体の分子量測定方法。
  2. 請求項記載の高分子流体の分子量測定方法において、前記高分子流体が溶融ポリカーボネートであることを特徴とする高分子流体の分子量測定方法。
  3. 高分子流体を製造するプラントの製品排出用の流路内を移動する高分子流体の分子量測定装置であって、
    前記流路内を移動する前記高分子流体の流体圧力を測定する圧力測定器と、
    前記流路内を移動する前記高分子流体の流体温度を測定する温度測定器と、
    前記流路の上流側に設けられ反応器から排出された前記高分子流体を該流路内に押し出す揚程発生装置の回転速度を測定して出力する回転速度伝達部と、
    前記流路の下流側に設けられた弁の開度を測定して出力する開度伝達部と、
    前記流体圧力、前記流体温度、前記開度及び前記回転速度からなるプラント運転情報と前記高分子流体の分子量との定量的関係を示す1次の線形関数式、2次以上の線形関数式、あるいは非線形関数式からなる実験式に、測定された前記プラント運転情報を代入して前記高分子流体の分子量を算出する演算器とを有し、
    前記圧力測定器には測定された前記流体圧力を前記演算器に伝達する圧力伝達部、前記温度測定器には測定された前記流体温度を前記演算器に伝達する温度伝達部が設けられていることを特徴とする高分子流体の分子量測定装置。
  4. 請求項記載の高分子流体の分子量測定装置において、前記演算器には算出された前記分子量を電気信号として出力する分子量出力部が設けられていることを特徴とする高分子流体の分子量測定装置。
  5. 反応器で製造され該反応器に接続された製品排出用の流路内を移動する高分子流体の分子量を請求項1及び2のいずれか1項に記載の高分子流体の分子量測定方法により測定し、得られた前記高分子流体の分子量に基づいて前記反応器に設けられた運転用の操作端を調節して、前記反応器で製造される高分子流体の分子量を所定の分子量範囲に入れることを特徴とする高分子流体の分子量制御方法。
  6. 高分子流体製造用のプラントに設けられた反応器で製造される高分子流体の分子量を所定の分子量範囲に調整する高分子流体の分子量制御装置であって、
    前記反応器に接続された製品排出用の流路内を移動する前記高分子流体の分子量を測定する高分子流体の分子量測定装置と、
    測定された前記高分子流体の分子量に基づいて前記反応器に設けられた運転用の操作端を調整する操作端調節器とを備え、
    前記高分子流体の分子量測定装置は前記流路内を移動する前記高分子流体の流体圧力を測定する圧力測定器と、前記流路内を移動する前記高分子流体の流体温度を測定する温度測定器と、前記流路の上流側に設けられ前記反応器から排出された前記高分子流体を該流路内に押し出す揚程発生装置の回転速度を測定して出力する回転速度伝達部と、前記流路の下流側に設けられた弁の開度を測定して出力する開度伝達部と、
    前記流体圧力、前記流体温度、前記開度及び前記回転速度からなるプラント運転情報と前記高分子流体の分子量との定量的関係を示す1次の線形関数式、2次以上の線形関数式、あるいは非線形関数式からなる実験式に、測定された前記プラント運転情報を代入して前記高分子流体の分子量を算出する演算器とを有し、
    前記圧力測定器には測定された前記流体圧力を前記演算器に伝達する圧力伝達部、前記温度測定器には測定された前記流体温度を前記演算器に伝達する温度伝達部、前記演算器には算出された前記分子量を電気信号として前記操作端調節器に出力する分子量出力部がそれぞれ設けられていることを特徴とする高分子流体の分子量制御装置。
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