JP4293480B2 - 研磨パッドの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レンズ、反射ミラー等の光学材料やシリコンウエハー、ハードディスク用のガラス基板、情報記録用樹脂板やセラミック板等の高度の表面平坦性を要求される材料の平坦化加工処理を安定、かつ高い研磨速度で行う研磨パッドの製造方法に関するものである。本発明の研磨パッドは、特にシリコンウエハー並びにその上に酸化物層、金属層等が形成されたデバイスを、さらにこれらの層を積層・形成する前に平坦化する工程に使用することも可能である。
【0002】
【従来の技術】
高度の表面平坦性を要求される材料の代表的なものとしては、半導体集積回路(IC,LSI)を製造するシリコンウエハーと呼ばれる単結晶シリコンの円板が挙げられる。シリコンウエハーは、IC、LSI等の製造工程において、回路作成に使用する各種薄膜の信頼できる半導体接合を形成するために、各薄膜作成工程において表面を高精度に平坦に仕上げることが要求される。
【0003】
一般的には、研磨パッドはプラテンと呼ばれる回転可能な支持円盤に固着され、半導体ウエハーは自公転運動可能な研磨ヘッドと呼ばれる円盤に固着される。双方の回転運動により、プラテンと研磨ヘッドとの間に相対速度を発生させ、研磨パッドとウエハーとの間隙に微細な粒子(砥粒)を懸濁させた研磨スラリーを付加することで、研磨、平坦化加工が実施される。この際、研磨パッドがウエハー表面上を移動する時、接触点で砥粒がウエハー表面上に押しつけられる。従って、ウエハー表面と砥粒との間の滑り動摩擦的な作用により加工面の研磨が実行される。
【0004】
かかる研磨工程における研磨操作は、微細な粒子(砥粒)を懸濁させたスラリー中の砥粒を、使用する研磨パッドに保持させることにより行われる。従って、研磨パッドの砥粒の保持密度が高いほど研磨速度が高くなる。このため、研磨パッドとしては、通常多数の空孔を有する多孔質材料が使用され、空孔で砥粒を保持させることによって、砥粒の保持密度を高くし、研磨速度を高くすることが行われている。かかる多孔質材料においては、砥粒の保持密度を大きくするためには、空孔の数を多くし、かつ、空孔の径を小さくすることが有効である。
【0005】
従来、上記の高精度の研磨に使用される研磨パッドとしては、一般的に発泡率が30〜35%程度のポリウレタン発泡体シートが使用されている。また、ポリウレタン等のマトリックス樹脂に中空微小球体又は水溶性高分子粉末等を分散した研磨パッドを開示した特表平8−500622号公報に記載の技術も公知である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のポリウレタンシートを使用した研磨パッドは、以下の問題を有する。
【0007】
(1)研磨パッドは、後述のように目詰まりを起こした際にドレッシングにより空孔を表面化させる必要があるために、ポリウレタン発泡体は独立気泡でなければならない。独立気泡ポリウレタン発泡体は、一般的には、ポリイソシアネート化合物とポリヒドロキシ化合物を、発泡剤の存在下に混合し、金型内に射出成形して重合し、ブロック形状の発泡体とするものである。このようにして製造される発泡体は、発泡体が気化・膨張することによって形成されるため、その空孔、即ち気泡は球形であり、空孔径を平均値にて100μm以下とすることは極めて困難であり、個々に測定しても50μmが最小である。このために、砥粒の保持密度が十分ではない。
【0008】
(2)研磨スラリーを使用して研磨操作を行うと、研磨屑とか劣化した砥粒が空孔に目詰まりし、研磨速度が低下し、また研磨対象の平坦面のキズ(スクラッチ)の原因となり、加工特性が低下する。しかも、微細孔が目詰まり状態になると加工屑などを完全に掘り出して初期状態に戻すことはきわめて難しい。そこで、ダイヤモンド砥石などを使用して、ドレッシングというパッド表面を削り取る作業を施し、初期状態と同様、空孔が露出した面を出して再使用する作業が行われる。ところが、現状のポリウレタン発泡体の空孔は球状であって、しかも空孔径が平均して100μm程度であるため、初期状態の面を安定的に出すためには、表面構造を均一にするとともに、断面構造も均一にする必要があり、少なくとも空孔径に相当する部分をドレッシングにより、削り取る必要がある。ドレッシングによる表面研磨は、わずかの厚みずつしか行えないために、ポリウレタン発泡体をダイヤモンド砥石でドレッシングする場合、100μm削り取るために要する時間としては、1〜2時間が必要である。この間はウエハー研磨ができず、ウエハースループットを高めるためにも、ドレッシングに要する時間を短縮すること、及びドレッシング頻度を少なくすることが要求されている。
【0009】
(3)研磨対象の表面の平坦性の精度を高めるためには、研磨パッドの厚み精度、形状精度が重要な意味を有する。従来のポリウレタン発泡体シートは、上述のようにして得られた発泡体ブロックをバンドソーなどにより、1〜2mm程度の厚みにスライスして切り出すことにより得られるものであり、このようにして得られたウレタンシートの厚み精度は、数%程度であって、高精度の平坦性を要求される研磨パッドに要求される精度としては、不十分である。
【0010】
また、上記特表平8−500622号公報記載の技術によれば、空孔を有する研磨シートとしては、中空微小球体を使用した例のみが開示されており(実施例1)、空孔は球状であると共に空孔径は100μm程度の球状であり、上記ポリウレタン発泡体と同じ(1)〜(3)問題を有している。
【0011】
市販の代表的な研磨パッド(ロデール社製IC−1000)の走査型電子顕微鏡により得られた画像を、画像処理装置V−10(東洋紡績製)にて空孔数をカウントしたところ、表面の空孔密度は、1100個/mm2 であり、研磨速度向上のためには、さらに多くすることが要求される。
【0012】
本発明の目的は、空孔の径が小さく偏平であって、表面の空孔密度が高く、しかも厚み精度に優れ、その結果、研磨速度が優れた研磨パッドの製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明に係る、内部に独立空洞を多数含有する空洞含有ポリエステル系シート層を備えた研磨パッドの製造方法は、ポリエステルと該ポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂を混合することにより重合体混合物とする混合工程、前記重合体混合物を押出して固化することにより重合体シートとする押出し工程、及び前記重合体シートを少なくとも1軸に配向処理することにより空洞含有ポリエステルシートとする配向処理工程、を有することを特徴とする。
【0014】
かかる研磨パッドは、空孔の径が小さく偏平であって、空孔の密度が高く、しかも厚み精度に優れ、その結果、かかる空洞含有ポリエステル系シート層を直接研磨加工面と接触する層とすることによって、研磨速度が優れた研磨パッドが得られる。空洞含有ポリエステル系シートの見かけ比重は1.25未満であり、特に0.5〜1.2であることが好ましく、最も好ましくは0.6〜1.2である。
見かけ比重が1.25以上の場合は、空洞率が10%未満となり、実用的ではなくなる。
【0015】
ここに、見かけ比重は、以下の式により求められる。
見かけ比重=(w/t)×100
なお、シートを10cm×10cmのサイズの正方形に切り出し、その厚み50点測定して得られた平均厚みがt(μm)、正方形のシートの重量がw(g)である。
【0016】
上記において、前記非相溶性の熱可塑性樹脂が、ポリスチレン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂のうちの少なくとも一種類以上を含有するものであることが好ましい。
【0017】
ポリエステルに相溶性のない熱可塑性樹脂として上記の非相溶性熱可塑性樹脂を使用することによって、空孔の径が小さく偏平であって、しかも表面の空孔の密度が高い空洞含有ポリエステル系シート層を得ることができる。「表面の」とは、ドレッシングして得られる、シート内部から新たに露出する表面も含む意味である。
【0018】
上記において、前記配向処理工程が、前記重合体シートを長手方向にロール延伸した後に、幅方向にテンター延伸することにより空洞含有ポリエステル系シートとする逐次2軸延伸工程であることが好ましい。
【0019】
別の本発明に係る半導体デバイスの製造方法は、請求項1〜3のいずれか1項記載の研磨パッドの製造方法により製造した研磨パッドを用いて半導体ウエハを研磨する工程を含むことを特徴とする。
【0021】
本発明の研磨パッドは、前記空洞含有ポリエステルシートより硬度の小さい材料層がバッキング層として、積層されていることが好適である。本発明の独立空洞含有ポリエステルシートは、それ自体を研磨パッドとして使用することも可能であるが、このように、バッキング層を有する構成の研磨パッドとすることによって、ウエハー等の研磨対象の表面の研磨による平坦性向上に有効な作用が発揮される。
【0022】
本発明の研磨パッドの形状は使用する装置等により選択されるものであって、正方形、長方形、多角形、円形等、いずれであってもよいが、円形であることが好ましい。空洞含有ポリエステルシートとバッキング層は、各層を所定形状に成形した後に積層してもよい。また積層後に所定形状に成形してもよい。積層方法は、接着剤の使用等、公知の方法を使用することができる。
【0023】
本発明の研磨パッドの研磨表面、即ち独立空洞ポリエステルシート面には、連続状であって、研磨パッドの端面に開口する溝を設けることも好適な態様である。これらの溝は、研磨により発生した研磨屑等、研磨表面を損傷する可能性のあるものを研磨面から排出するのに有効である。溝の深さは0.1mm〜0.5mm程度が好ましく、独立空洞ポリエステルシート面に1〜5mm程度の間隔にて形成されていることが好ましい。溝の断面形状は、円弧形状、三角形等、特に限定されるものではない。
【0024】
また、上述の溝と同様の効果を得るために、空洞含有ポリエステルシートに貫通孔を設けることも好適な態様である。前記貫通孔の大きさ並びに配設ピッチは特に限定されるものではないが、貫通孔径は0.5mm〜5mm程度であることが好ましく、また隣接する孔との距離は、1.2mm〜12mmで有ることが好ましい。貫通孔径が大き過ぎると研磨効果が低下し、ポリエステルシート強度も低下し、小さ過ぎると貫通孔の効果が十分発揮されない。隣接する孔との距離が小さ過ぎるとポリエステルシート強度が低下し、大き過ぎると貫通孔の密度が小さくなり過ぎて効果が十分得られなくなる。
【0025】
本発明の研磨パッドを使用して研磨作業を行うに際しては、公知の助剤、例えば潤滑材や研磨剤を使用することは好適な態様であり、具体的にはアルミナ、セリア、シリカ等の研磨剤やこれらを水や液状有機化合物に分散・懸濁させたスラリーが例示される。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下においては、本発明の研磨パッドに使用する空洞含有ポリエステルフィルムについて、さらに具体的な特性とその製造法を記す。本発明において用いる空洞含有ポリエステルフィルムは、微細空洞率は10体積%以上であることが好ましく、20〜80体積%であることがより好ましく、特に好ましくは25〜50体積%である。また、限定するものではないが、2次転移点は65℃以上であることが好ましい。空洞率が10体積%未満では、空孔の密度が高くならず、80体積%を超えると、パッドの強度が低下する。
【0027】
なお空洞率は、
空洞率(%)=100×(真比重−見かけ比重)/真比重
により計算される。
【0028】
本発明において用いる独立空洞含有ポリエステルシートを製造するためのポリエステルは、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸又はそのエステルとエチレングリコ−ル、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等のグリコールとを重縮合させて製造されるポリエステルである。
【0029】
これらのボリエステルは芳香族ジカルボン酸とグリコールとを直接反応させるか、芳香族ジカルボン酸のアルキルエステルとグリコールとをエステル交換反応させた後重縮合させるか、あるいは芳香族ジカルボン酸のジグリコールエステルを重縮合させる等の方法によって製造する。
【0030】
上述のポリエステルの代表例としてはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等が挙げられる。このポリエステルはホモポリマーであってもよく、第三成分を共重合したコポリマーであってもよい。いずれにしても本発明において用いるポリエステルは、エチレンテレフタレート単位、ブチレンテレフタレート単位あるいはエチレン−2,6−ナフタレート単位が70モル%以上、好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であるポリエステルが好ましい。
【0031】
本発明において空洞含有ポリエステルシートの製造に用いる非相溶性性熱可塑性樹脂は、上記したポリエステルに非相溶性のものでなければならない。具体的には、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリカーボネー卜樹脂、ポリスルホン系樹脂等やこれらを主成分とする樹脂があげられる。併用するのに好ましい樹脂としては、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂の1種以上を含有する樹脂が、特に好適である。
【0032】
ポリスチレン系樹脂とは、ポリスチレン構造を基本構成要素として含む熱可塑性樹脂であり、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、アイソタクティックポリスチレン等のホモポリマーの他に、他のモノマー成分をグラフト重合、或いはブロック共重合した改質樹脂を含む意味である。かかる改質樹脂としては、耐衝撃性ポリスチレン樹脂、変性ポリスチレン樹脂、さらにはホモポリマーやこれらの樹脂に相溶性を有するポリフェニレンエーテル等の樹脂との混合物も例示される。
【0033】
以下に空洞含有ポリエステルシートの製造方法について説明する。
本発明においては、まずポリエステルと該ポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂を混合させた重合体混合物を製造する。この重合体混合物は、たとえば、各樹脂のチップを混合し押出機内で溶融混練した後、押出して固化することによって得る方法、あらかじめ混練機によって両樹脂を混練後固化し、更に押出機より再度溶融・押出しを行って固化する方法、ポリエステルの重合工程においてポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂を添加し、攪拌分散して得たチップを溶融・押出しを行って固化する方法等の方法により得ることができる。固化して得られた重合体シート(未延伸シート)は通常、無配向もしくは弱い配向状態のものである。また、ポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂はポリエステル中に、球状もしくは楕円球状、もしくは糸状など様々な形状で分散した形態をとって存在する。
【0034】
上記重合体混合物には、微細空洞の調整やフィルムの滑り性の調整のため、必要に応じて無機粒子を含有することができる。無機粒子としては酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化チタン、二酸化珪素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が例示されるが、特に限定されるものではない。
【0035】
こうして得た重合体混合物を、更に速度差をもったロール間での延伸(ロール延伸)やクリップに把持して拡げていくことによる延伸(テンタ−延伸)や空気圧によって拡げることによる延伸(インフレーション延伸)等によって少なくとも1軸に配向処理する。このときに、ポリエステルとポリエステルに分散した非相溶性熱可塑性樹脂との界面で剥離が起こり重合体混合物に空洞が多数発生し、空洞含有ポリエステルシートが形成される。
【0036】
ポリエステルに混合する、ポリエステルに非相溶牲熱可塑性樹脂の添加量は、目的とする微細空洞の量によって異なる。請求項3に記載したように、ポリエステル100重量部に対して3〜50重量部が好ましく、特に10〜40重量部が好ましい。3重量部未満では、微細空洞の生成量を多くすることに限界がある。非相溶性熱可塑性樹脂添加量を多くすると高くなり、表面の空孔の密度が高くなり、好ましいが、50重量部を越えると、ポリエステルフィルムの持つ耐熱性や強度が大きく損なわれる場合があり、好ましくない。
【0037】
該重合体混合物を配向処理する条件は、微細空洞の生成と密接に関係する。従って本目的を達成するための条件は例えば、最も一般的に行われている逐次2軸延伸工程を例に挙げると、該重合体混合物の連続シートを長手方向にロール延伸した後に、幅方向にテンター延伸する逐次2軸延伸法の場合、以下のようになる。ロール延伸においては多数の微細空洞を発生させるため温度をポリエステルの2次転移温度+30℃以下、延伸倍率を1.2〜5倍とするのが好ましい。テンター延伸においては破断せずに安定してシートが形成されるためには、温度を80〜150℃、延伸倍率を1.2〜5倍とするのが好ましい。ただし、これらの方法に限られるものではない。
【0038】
上述のように製造された空洞含有ポリエステルシートの表面の空孔の密度は、空洞率30%となるように非相溶性樹脂を添加して縦、横各2.5倍に延伸した場合、得られるシートの表面の空孔の密度は、2000個/mm2 にもなり、従来技術によって得られる研磨パッドと比較して格段に多い。空孔径が小さいこと、数が多いことから砥粒保持密度が大きくなる。その結果、研磨速度向上が達成できる。
【0039】
上述の方法により製造された空洞含有ポリエステルシートの空洞の形状は、図1に示すように表面方向からみた形状が長い楕円形(A)で、厚さ方向からみた形状は底の浅い皿状である(B)。この空孔の形状はシートの縦方向、横方向の延伸倍率により決定されるものであり、通常は縦延伸の後、横延伸をするため、縦方向(シート長手方向)が長径となり、横方向と厚さ方向が短径となる。長径としては、3〜30μm、短径としては、1〜4μm、深さは1〜5μm程度であるものが製造可能である。このように、特に厚さ方向が、従来技術の研磨パッドの空孔径(約100μm)よりもはるかに小さな空孔が得られるために、ドレッシングに要する時間が飛躍的に短縮可能となる。
【0040】
また、本発明の空洞含有ポリエステルシートの製造に際して、Tダイによる押し出し成形で厚み規制をすることができるため、面内の厚み精度が高く、3σにて少なくとも1〜2%程度におさめることができる。現行のスライス加工の発泡ウレタンでは、前述のように、せいぜいで3σで5〜6%程度であり、本発明が優れた平滑性を有する研磨パッドであることが明らかである。さらに、製造直後においてかかる平坦性を有しているために、研磨パッドの前処理工程を簡略化できるという効果も得られる。
【0041】
本発明の研磨パッドの研磨層である空洞含有ポリエステルシートの製造には、通常のフィルム製造工程である連続工程が適用できる。従来の発泡ウレタンシートのように、発泡工程、架橋剤添加・混合工程、射出成型工程、スライス工程
のように、各工程がバッチ工程によるしかないものに比し、工程が簡単であり、低コストで製造することができる。
【0042】
本発明の空洞含有ポリエステルシートは、任意の厚みで作成可能である。従って、当然、現行のポリウレタンで採用されている1mm程度のものも作成可能であるし、それ以下の厚みのものも製造できる。
【0043】
延伸処理した微細空洞含有ポリエステルフィルムは、130℃以上、好ましくは180℃以上で熱固定を行うと高温での寸法安定性を向上させることができ、局部的な摩擦熱に対する耐久性が改善される。
【0044】
【実施例】
[実施例1]
(空洞含有ポリエステルシートの作成)
固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレート(PET)65重量部とメルトフローインデックス2.0のポリスチレン(三井東圧株式会社製トーポレックス570−57U)35重量部との混合物をベント式二軸押出機に供給して混練し、その押出機のTダイより、温度30℃の冷却ドラム上に押し出して、厚み1500μmの未延伸シートを得た。引き続き、この未延伸シートを85℃に加熱し、延伸ロールにて3.4倍の縦延伸を施した。次いで、テンターで120℃に加熱して、3.8倍の幅方向延伸を行った。このようにして得られたシートの厚みは225μmで、見かけ比重は0.75、空孔率は約46%であった。さらに、この空洞含有ポリエステルシートに対し、2mm径、5mmピッチのパンチング加工を施した。得られたシートの空洞密度は2500個/mm2 であった。
【0045】
〔バッキング層の作成〕
ニードルパンチ法により、繊維径3.5d、目付200g/m2 の不織布を作成し、これを基材として、日華化学製エバファノール AP−12(水分散性ポリウレタン樹脂)を用いて樹脂/繊維比率が50/50となるように樹脂含浸を施し、樹脂含浸不織布を作成した。このようにして得られたバッキング層として使用する樹脂含浸不織布層の厚みは1.2mmであった。
【0046】
〔研磨パッドの作成〕
上記のように作成した空洞含有ポリエステルシートとバッキング層をそれぞれ200φの形状に打ち抜き、両面接着シートを用いて積層体を作成し、研磨パッドとして研磨評価に供した。
【0047】
〔研磨評価〕
単結晶シリコン表面に10000オングストロームのSiO2 膜を形成したウエハーを加工材として、評価に使用し、以下の条件で研磨評価を行った。
研磨装置としては、試験研磨装置として一般的なラップマスター/LM15(4インチ対応)を使用した。また研磨スラリーとしては、SC−1(研磨剤10wt%、Cabot社製)を使用した。研磨ヘッドに被加工材であるウエハーを水吸着/標準バッキング材(NF200)条件にて保持し、プラテン(研磨パッド支持台)に上述の積層体パッドを貼りつけて固定し、研磨圧力として400g/cm2 、研磨ヘッドとプラテン間の相対速度として、30m/minを与え、研磨スラリー供給速度110cc/minにて2分間研磨操作を行った。
【0048】
この時の研磨速度として、1250オングストローム/minを得た。
【0049】
[実施例2]
固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレート90重量部、メルトフローインデックス2.0のポリスチレン2重量部、メルトフローインデックス1.7のポリプロピレン(三井東圧株式会社製ノーブレンF0−50F)2重量部、及び、メルトフローインデックス8のポリメチルペンテン(三井石油化学株式会社製TPX,DX−845)6重量部との混合物を原料として重合体混合物を作成し、実施例1と同様の方法で、縦延伸及び幅方向延伸を実施し、厚み170nmの空洞含有シートを得た。得られたシートの比重は0.98で、空洞含有率は30%、空洞密度は2000個/mm2 であった。
【0050】
このシートを実施例1と同様パンチング処理を施し、実施例1と同様にバッキング層と積層し、200φの寸法の積層体を作成した。このようにして得た積層体を研磨パッドとして使用し、実施例1と同様の条件で研磨操作を施した結果、研磨速度として1000オングストローム/minを得た。
【0051】
[実施例3]
実施例1と同様の空洞含有シートを単層でプラテンに固着し、実施例1と同様の条件で研磨操作を実施し、研磨速度として、1150オングストローム/minを得た。
【0052】
[比較例1]
研磨パッドとして、市販のロデール杜製IC−1000A21(上層)/SUBA400(下層)の積層体パッドを使用し、実施例1と同一条件で研磨操作を実施し、研磨速度として、980オングストローム/minを得た。
【0053】
[比較例2]
固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレート90重量部とメルトフローインデックス2.0のポリスチレン10重量部との混合物を実施例1と同様の方法で、縦延伸及び幅方向延伸を実施し厚み130μmの空洞含有シートを得た。得られたシートの比重は1.31で、空洞含有率は6%であった。このシートを実施例1と同様ハンチング処理を施し、実施例1と同様の樹脂含浸不織布と積層し、200φの寸法に加工した。このポリエステルシートの空洞密度は480個/mm2 であった。
【0054】
このようにして得られた積層体を研磨パッドとして使用し、実施例1と同様の条件で研磨操作を施した結果、研磨速度として500オングストローム/minを得た。
【0055】
〔ドレッシング時間の測定〕
上記の実施例並びに比較例における研磨パッドをドレッシングするのに要する時間を測定した。ドレッシングは、一般的に使用される条件で行った。結果を表1に示した。
【0056】
【表1】
Figure 0004293480

【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の研磨シートの研磨面の空孔の形状の例を示した図

Claims (4)

  1. ポリエステルと該ポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂を混合することにより重合体混合物とする混合工程、前記重合体混合物を押出して固化することにより重合体シートとする押出し工程、及び前記重合体シートを少なくとも1軸に配向処理することにより空洞含有ポリエステルシートとする配向処理工程、を有することを特徴とする、内部に独立空洞を多数含有する空洞含有ポリエステル系シート層を備えた研磨パッドの製造方法。
  2. 前記非相溶性の熱可塑性樹脂が、ポリスチレン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂のうちの少なくとも一種類以上を含有するものであることを特徴とする請求項1に記載の、内部に独立空洞を多数含有する空洞含有ポリエステル系シート層を備えた研磨パッドの製造方法。
  3. 前記配向処理工程が、前記重合体シートを長手方向にロール延伸した後に、幅方向にテンター延伸することにより空洞含有ポリエステル系シートとする逐次2軸延伸工程である請求項1又は2記載の、内部に独立空洞を多数含有する空洞含有ポリエステル系シート層を備えた研磨パッドの製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項記載の研磨パッドの製造方法により製造した、内部に独立空洞を多数含有する空洞含有ポリエステル系シート層を備えた研磨パッドを用いて半導体ウエハを研磨する工程を含むことを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
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