JP4292790B2 - インクジェットプリンタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェットプリンタに係り、特に、UVインクにより画像を形成するインクジェットプリンタに関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェットプリンタは、記録ヘッドの吐出面に備えられたノズルの吐出口から記録媒体に向けてインクを吐出し着弾させ、この記録媒体に画像を記録するものである。
また、インクジェットプリンタには、樹脂フィルム等のインク吸収性の乏しい記録媒体に画像を記録する方式として、UVインクジェット記録方式のものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
一般的に、上記UVインクジェット記録方式のインクジェットプリンタにおいては、紫外線に対して所定の感度を有する光開始剤が含有された紫外線硬化性のUVインクを用い、記録媒体に着弾したUVインクに紫外線を照射することで、UVインクを硬化させ記録媒体に定着させる。この場合、UVインクの記録媒体への着弾から紫外線の照射までに時間がかかると、記録媒体に着弾したUVインクのドット径の拡大、インクドット間の滲み、記録媒体へのUVインクの浸透などの問題が顕著となるため、UVインク吐出から紫外線照射までの時間は極力短くすることが好ましい。
【0004】
そこで、上記特許文献1等に示す一般的なインクジェットプリンタにおいては、記録媒体に着弾したUVインクに対して紫外線を直ちに照射可能となるように、紫外線を照射する光源がノズルに近接して配設されている。
【0005】
【特許文献1】
特開昭60−132767号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1の場合のように、ノズルと光源とが近接していると、光源から発せられた紫外線、若しくは光源から発せられ記録媒体の表面にて反射した紫外線が吐出面に入射して、吐出面及びその吐出口内のUVインクが紫外線と反応してしまっていた。この場合には、UVインクが増粘したり硬化したりして、ノズルの吐出不良が生じ易くなるといった問題がある。
特に、表面に凹凸がある記録媒体を用いる場合や、画像記録時に記録媒体を保持するプラテン等の支持部材の平面性が十分に保たれていない場合や、記録媒体と吐出面との距離が長い場合等には、記録媒体の表面にて反射した紫外線が記録ヘッド側に入射し易くなって、吐出面及びその吐出口内のUVインクが紫外線の影響を受けてしまうといった問題がある。
【0007】
また、記録ヘッドの搬送経路上に設けられた、吐出面を洗浄するクリーニング領域や、吐出面をキャッピングするキャッピング領域等に記録ヘッドが移動すると、これら領域を形成する各部材と記録ヘッドの吐出面との間隔が、記録媒体と吐出面との間隔よりも大きくなって、これら領域を形成する各部材にて反射した紫外線が、記録ヘッド側に入射し易くなってしまう。
【0008】
そして、UVインクは、常温においては一般的なUVインクよりも粘度が高いために、記録ヘッドのノズルを加熱し、ノズル内のUVインクを低粘度化させてから、吐出するようになっている。しかしながら、UVインクは、加熱されると僅かな紫外線であっても反応しやすくなってしまい、吐出面やノズルに入射する紫外線で増粘又は硬化し、ノズルの吐出不良を生じやすくしてしまう。
【0009】
また、UVインクとしては、ラジカル重合系(硬化性)インクや、カチオン重合系(硬化性)インクが知られているが、このうち、カチオン重合系インクは、ラジカル重合系UVインクのように酸素による重合阻害を受けることがないため、紫外線に対する感度が高く、また活性種である酸が光エネルギーを蓄積する性質を有している。そのため、カチオン重合系インクは、ラジカル重合系UVインクに比べて前記吐出面にて紫外線の影響を受け易いといった問題がある。
なおかつ、近年ラジカル重合系UVインクにおいても、開始剤の選択により、酸素阻害の影響を抑えたものが開発されているが、反面、紫外線に対する感度が高まってしまい、カチオン重合系インクと同様な問題が生じてしまう。
【0010】
本発明の課題は、吐出面への紫外線入射量を低減でき、結果としてUVインクの安定吐出を長期にわたって行えるインクジェットプリンタを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明のインクジェットプリンタは、
紫外線が照射されることで硬化するUVインクを記録媒体に向けて吐出する記録ヘッドと、
前記記録媒体に吐出されたUVインクに紫外線を照射する紫外線照射部とを備え、
前記紫外線照射部から照射された紫外線を直接又は間接的に前記記録ヘッドに反射する部材の反射率が、前記記録媒体に着弾したUVインクに対して前記紫外線照射部から照射される220nm以上400nm以下の波長の紫外線に対しては20%未満となるように、カーボンブラック、超粒子化した酸化チタン・酸化亜鉛・酸化鉄の粉体、ベンゾトリアゾール系化合物、芳香族化合物のうち、少なくともいずれか1つによって前記部材が形成されていることを特徴としている。
【0012】
請求項1記載の発明によれば、紫外線照射部から照射された紫外線を直接又は間接的に記録ヘッドに反射する部材の反射率が、220nm以上400nm以下の波長の紫外線に対しては20%未満であるので、紫外線照射部から照射された紫外線を、反射される毎に反射前の照射量の20%未満に低減することができる。そして、記録ヘッドに至った際には、紫外線の照射量は、ラジカル重合系UVインクや、カチオン重合系インクであっても、増粘化、硬化させないほどまで低減されることとなる。したがって、記録ヘッドと紫外線照射部を近接して配置しUVインクで画像形成することで画質を向上させた場合においても、記録ヘッドの吐出面への紫外線入射量を低減でき、結果としてUVインクの安定吐出を長期にわたって行える。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記紫外線照射部から照射された紫外線を直接又は間接的に前記記録ヘッドに反射する部材のうち少なくとも対向する2箇所以上の反射率が、前記記録媒体に着弾したUVインクに対して前記紫外線照射部から照射される220nm以上400nm以下の波長の紫外線に対しては20%未満となるように、カーボンブラック、超粒子化した酸化チタン・酸化亜鉛・酸化鉄の粉体、ベンゾトリアゾール系化合物、芳香族化合物のうち、少なくともいずれか1つによって前記部材が形成されていることを特徴としている。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、紫外線照射部から照射された紫外線を直接又は間接的に前記記録ヘッドに反射する部材のうち少なくとも対向する2箇所以上の反射率が、220nm以上400nm以下の波長の紫外線に対しては20%未満であるので、紫外線照射部から照射された紫外線を、反射される毎に反射前の照射量の20%未満に低減することができる。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記紫外線照射部から照射された紫外線を直接又は間接的に前記記録ヘッドに反射する部材の正反射成分を含まない反射率が、前記記録媒体に着弾したUVインクに対して前記紫外線照射部から照射される220nm以上400nm以下の波長の紫外線に対しては5%未満となるように、前記部材の表面の平滑性を高めて鏡面状にしていることを特徴としている。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、紫外線照射部から照射された紫外線を直接又は間接的に記録ヘッドに反射する部材の正反射成分を含まない反射率が、220nm以上400nm以下の波長の紫外線に対しては5%未満であるので、反射によって生じる紫外線の多重散乱光の照射量を、反射する毎に5%未満に低減することができる。このように多重散乱光の照射量を低減することにより、より記録ヘッドのUVインクに照射される紫外線の照射量を低減することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明について、図面を用いて具体的な態様を説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0018】
図1は、本発明が適用された実施形態のインクジェットプリンタの要部構成を示した斜視図である。
図1に示すように、インクジェットプリンタ1には、プリンタ本体2と、このプリンタ本体2を支持する支持脚3とが備えられている。プリンタ本体2には、記録媒体Pの下面を支持するプラテン4が略水平に配置されている。
【0019】
図1におけるプラテン4の左側方には、UVインクを貯留する交換自在なインクタンク5が、インクジェットプリンタ1で使用される4色のUVインクに対応して4つ設けられている。
図1におけるプラテン4の右側方には、記録ヘッド7の吐出面71(図2参照)の洗浄を行うとともに、待機時においては吐出面71を覆ってキャッピングするメンテナンス機構6が設けられている。なお、ここではメンテナンス機構6が吐出面の洗浄及びキャッピングを一箇所で行う構成であるが、洗浄とキャッピングをそれぞれ別の箇所で行う構成であってもよい。
【0020】
そして、プラテン4の上方には、主走査方向Aに沿って延在するキャリッジレール91に案内されて主走査方向Aに往復移動するキャリッジ9が設けられており、このキャリッジ9には記録ヘッド7及び紫外線照射部8が搭載されている。
キャリッジ9について図2及び図3を参照して詳細に説明する。ここで、図2(a)は、キャリッジ9を図1と略同じ方向に見て示した斜視図であり、図2(b)は、キャリッジ9を図1において右から斜め上向きに見て示した斜視図であり、図3は、主走査方向Aと直交する副走査方向Bに対する断面部を模式的に示した図である。
【0021】
キャリッジ9の図3における左側には、キャリッジ9が主走査方向Aに沿って右に移動する際に画像を形成する第一画像記録部10Aが、キャリッジ9の図3における右側には、キャリッジが主走査方向Aに沿って左に移動する際に画像を形成する第二画像記録部10Bが設けられている。この第一及び第二画像記録部10A、10Bの各々には、UVインクを吐出する複数の記録ヘッド7(7a、7b)が主走査方向Aに沿って配列されている。
【0022】
記録ヘッド7a、7bは、第一及び第二画像記録部10A、10Bの双方に、インクジェットプリンタ1で使用される4色(イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K))のUVインクに対応して4つずつ設けられている。
各記録ヘッド7は、画像記録時において、プラテン4上を搬送される記録媒体Pの上面と、記録ヘッド7の吐出面71とが対向するように設置されている。また、各記録ヘッド7は、その吐出面71に複数のノズル72(図4参照)の吐出口73が形成されており、これら複数の吐出口73はノズル72の配列に応じて副走査方向Bに一列(ノズル列)となって配列されている。さらに、各記録ヘッド7は、その内部にピエゾ素子(圧電素子)といった吐出機構(図示略)が設けられており、吐出機構の作動により各吐出口73からUVインク滴を別個に吐出するようになっている。
4色の配置は、双方向印刷において色差が生じないよう、また、UV硬化性が劣化しないように対称となるように配置することもできる(例えば、KCMYYMCK、YMCKKCMYなど)。
【0023】
そして、第一及び第二画像記録部10A、10Bにおける記録ヘッド7a、7bの後方には、インクタンク5に貯留されたUVインクを記録ヘッド7a、7bまで供給する複数のインク流路51が各色毎に配設されている。インク流路51は、インクタンク5からキャリッジ9まで配管されるインク管(図示省略)と、インク管から供給されたUVインクを一旦貯蔵する中間タンク42a、42bと、中間タンク42a、42bから記録ヘッド7までUVインクを供給するインク供給管41a、41bから構成されている。これにより、各中間タンク42a、42bに貯留されているUVインクが各記録ヘッド7に供給されるようになっている。
【0024】
ここで、本実施形態に用いられる「UVインク」について説明する。
本実施形態に用いられるUVインクとしては、特に、「光硬化技術−樹脂・開始剤の選定と配合条件及び硬化度の測定・評価−(技術協会情報)」に記載の「光硬化システム(第4章)」の「光酸・塩基発生剤を利用する硬化システム(第一節)」、「光誘導型交互共重合(第2節)」等に適合するUVインクが適用可能であり、通常のラジカル重合により硬化するものであってもよい。
【0025】
具体的に、本実施形態に用いられるUVインクは、光としての紫外線の被照射により硬化する性質を具備する紫外線硬化性UVインクであり、主成分として、少なくとも重合系化合物と、光開始剤と、色材とを含むものである。ただし、本実施形態で上記「光誘導型交互共重合(第2節)」に適合するUVインクを用いる場合には、光開始剤は除外されてもよい。
【0026】
上記紫外線硬化性UVインクは、重合系化合物として、ラジカル重合系化合物を含むラジカル重合系UVインクとカチオン重合系化合物を含むカチオン重合系インクとに大別されるが、その両系のUVインクが本実施形態に用いられるUVインクとしてそれぞれ適用可能であり、ラジカル重合系UVインクとカチオン重合系インクとを複合させたハイブリッド型UVインクを本実施形態に用いられるUVインクとして適用してもよい。
【0027】
しかしながら、酸素による重合反応の阻害が少ない又は無いカチオン重合系インクのほうが、硬化感度が高く、機能性・汎用性に優れるため、本実施形態では、特に、カチオン重合系インクを用いている。
【0028】
なお、本実施形態に用いられるカチオン重合系インクは、具体的に、少なくともオキセタン化合物、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物等のカチオン重合系化合物と、光カチオン開始剤と、色材とを含む混合物であり、上記の通り、紫外線の被照射により硬化する性質を具備するものである。
【0029】
また、図3における第一画像記録部10Aの記録ヘッド7aの左側及び第二画像記録部10Bの記録ヘッド7bの右側には、紫外線を照射する紫外線照射部8a、8bが設けられている。紫外線照射部8a、8bは、記録媒体P側に向かって開口するような断面略コ字状に形成されたカバー部材82により覆われている。カバー部材82の内面には、紫外線などの光線を反射する反射部材83が配置されている。そして、カバー部材82の内部には、複数の紫外線光源81が設けられている。
【0030】
紫外線光源81は、副走査方向Bに沿った線状の光源とされており、その長さは少なくとも記録ヘッド7のノズル列の長さよりも長くなっている。そして、紫外線光源81は、制御部(図示略)の制御下にて、画像記録時に記録ヘッド7から吐出され記録媒体Pに着弾したUVインクに紫外線を照射し、UVインクを硬化させ記録媒体Pに定着させるようになっている。そして、紫外線光源81から照射された紫外線、特に記録媒体Pの方向に照射されない紫外線は、反射部材83により記録媒体P側に反射されるようになっている。
また、紫外線照射部8と、各紫外線照射部8に隣り合う記録ヘッド7との間には、光トラップ84が配設されている。
【0031】
以下、光トラップ84について図4及び図5を参照して詳細に説明する。
ここで、図4は、光トラップ84、紫外線照射部8、記録ヘッド7を示す拡大断面図であり、図5は、光トラップ84の形状を具体的に示した斜視図である。
【0032】
図4及び図5に示すように、光トラップ84は、紫外線光源81から照射され記録ヘッド7側に入射してくる紫外線を捕捉するためのものである。この光トラップ84は、副走査方向Bに沿って延在する長尺な部材とされており、その長さは少なくとも紫外線照射部8の副走査方向Bに沿った長さと等しくなっている。また、光トラップ84は、記録媒体P側に向かって開口する形状に形成され、例えば開口した端縁が記録媒体Pと略平行となるように配設されている。
【0033】
光トラップ84の形状は、光トラップ84の内部に紫外線が入射可能で、且つ入射してきた紫外線が光トラップ84の内面にて反射及び吸収を繰り返し、光トラップ84の外へ紫外線が漏れないような形状であれば良い。具体的には、例えば図5(a)に示すような、副走査方向Bに対する断面の形状が扇状であっても良いし、図5(b)に示すような、同方向に対する断面の形状が台形状であっても良い。
なお、図4においては、図5(a)に示す光トラップ84が図示されている。
光トラップ84は、紫外線照射部8の配設位置によって規定される所定位置に配設されている。すなわち、図4に示すように、紫外線照射部8の紫外線光源81から照射された紫外線が記録ヘッド7に入射する場合において、入射する大部分の紫外線は記録媒体Pの上面(記録面)にて反射した紫外線(以下、「一次反射紫外線」という。)である。従って、紫外線照射部8の位置、すなわち紫外線照射部8の記録媒体Pに対する位置(距離)並びに紫外線照射部8の記録ヘッド7に対する位置(距離)に基づいて、一次反射紫外線の記録ヘッド7側への入射角及び入射位置が規定される。そして、この入射角及び入射位置に基づいて求められた所定位置に、光トラップ84が配設されることとなっている。
【0034】
そして、インクジェットプリンタ1には、記録媒体Pを副走査方向Bに搬送する搬送機構(図示省略)が備えられている。搬送機構は、画像記録時において、キャリッジ9の動作に合わせて、記録媒体Pの搬送と停止とを繰り返し記録媒体Pを間欠的に搬送する。
【0035】
次に、紫外線照射部8から照射された紫外線を反射する各部について説明する。インクジェットプリンタ1を構成する部材には、紫外線照射部8から照射された紫外線を直接又は間接的に記録ヘッド7に反射する部材がある。このような部材で反射された紫外線のうち、一部の紫外線は記録ヘッド7の吐出面71や吐出口73にまで到達して、吐出面71や吐出口73内にあるUVインクを増粘化、硬化させてしまう。このUVインクの増粘化、硬化を抑制して、長期にわたる安定吐出を維持するために、紫外線を反射する部材の反射率を、220nm以上400nm以下の波長の紫外線に対しては20%未満、好ましくは10%未満に低減させて、吐出面71や吐出口73にまで到達する紫外線の照射量を低減する。
【0036】
紫外線照射部8からの紫外線を記録ヘッド7まで直接反射する直接反射部材とは、キャリッジ9の走査時に、紫外線照射部8及び記録ヘッド7と対向する部材のことであり、つまり、紫外線照射部8から照射された紫外線を一度反射することで記録ヘッド7まで導く部材のことである。具体的に直接反射部材としては、プラテン4、メンテナンス機構6、搬送機構(図示省略)、各種カバー類、ケーシング類、シャーシ類等の構造物(図示省略)等が挙げられる。
【0037】
一方、紫外線照射部8からの紫外線を記録ヘッド7まで間接的に反射する間接反射部材とは、キャリッジ9の走査時に、紫外線照射部8及び記録ヘッド7と対向しない部材のことであり、つまり、紫外線照射部8から照射された後に少なくとも一度はいずれかの場所で反射された紫外線を、さらに反射する部材のことである。具体的に間接反射部材としては、記録ヘッド7、キャリッジ9、紫外線照射部8、キャリッジレール91、光トラップ84、インクタンク5、各種制御装置(図示省略)、各種カバー類やケーシング類、シャーシ類等の構造物(図示省略)等が挙げられる。
直接反射部材と間接反射部材の対向する部材の少なくとも2箇所の反射率を抑えることで、相乗的に吐出面71への紫外線入射を減少させることができ、好ましい。
【0038】
これら、直接反射部材及び間接反射部材の表面は、その反射率が220nm以上400nm以下の波長の紫外線に対して20%未満、好ましくは10%未満となるように、紫外線吸収率の高い素材で形成されている。
ここで、直接反射部材及び間接反射部材の表面を紫外線吸収率の高い素材で形成する方法としては、例えば、紫外線吸収率の高い材料を直接反射部材及び間接反射部材の表面にアルマイト処理などの各種金属酸化物処理する方法や、メッキ処理・蒸着・スパッタリング処理する方法、紫外線吸収率の高い素材で直接反射部材及び間接反射部材を形成する方法、各種の紫外線吸収剤を表面にコーティングする方法などが挙げられる。
紫外線吸収率の高い素材としては、カーボンブラック、超粒子化した酸化チタン・酸化亜鉛・酸化鉄(α−Fe2O3、Fe3O4)等の粉体などの無機物や、ベンゾトリアゾール系化合物、芳香族化合物などの有機物等が挙げられる。
【0039】
また、紫外線照射部8と記録ヘッド7の配置は、各部からの正反射光が記録ヘッド7の吐出面71や吐出口73に入射しないように設計されることが望まれるが、直接反射部材及び間接反射部材の表面においては、紫外線は散乱して散乱光となるので、正反射光を考慮した配置であっても散乱光が各部で反射して記録ヘッド7の吐出面71や吐出口73にまで到達してしまう。
この散乱光によるUVインクの硬化を抑制するために、直接反射部材及び間接反射部材の表面には、その正反射成分を含まない反射率が220nm以上400nm以下の波長の紫外線に対しては5%未満となるように処理を施している。具体的に、正反射成分を含まない反射率を低減させるには、直接反射部材及び間接反射部材の表面の平滑性を高めて鏡面状にすることが挙げられる。これらの表面が鏡面に近づくほど、紫外線が全方向へ散乱することを防ぐことができ、上記したように正反射光を考慮して紫外線照射部8と記録ヘッド7とを配置した場合においては、吐出面71及び吐出口73に入射する散乱光の照射量を低減できる。
【0040】
次に、インクジェットプリンタ1による画像記録時における動作について説明する。
【0041】
インクジェットプリンタ1による画像記録は、制御部の制御下において行われ、この場合において、キャリッジ9を主走査方向Aに沿って図3における右に移動させる際には、第一画像記録部10Aによって画像記録が行われる。
具体的には、搬送機構による副走査方向Bに沿った記録媒体Pの搬送が停止された状態で、この記録媒体Pに対して第一画像記録部10Aに備わる所定の記録ヘッド7aからUVインクが吐出された後、記録媒体Pに着弾したUVインクに対し、キャリッジ9の移動に伴い記録ヘッド7aを追従する紫外線照射部8aの紫外線光源81から紫外線が照射される。このとき、紫外線光源81から照射された紫外線のうち、記録ヘッド7側に入射してくる、上述した一次反射紫外線等の紫外線は、第一画像記録部10Aの光トラップ84aの開口した部分から光トラップ84a内部へと入射していき、光トラップ84aの内面にて捕捉されることとなる。
【0042】
ここで、光トラップ84aの内面が前記紫外線を吸収しきれない場合には、紫外線は前記内面にて所定の角度で反射する(以下「二次反射」という。)。このとき、紫外線は光トラップ84aの内面に向けて二次反射するため、二次反射した紫外線の入射先となる前記内面にて吸収されることとなる。また、光トラップ84aの内面に入射した紫外線は、反射を繰り返すことにより次第に減衰していく。
このようにして、光トラップ84はその内部に入射してくる紫外線を捕捉する。
また、光トラップ84に入射しない紫外線、つまり散乱された紫外線は、直接反射部材や間接反射部材に反射されるたびに、その照射量が低減し、記録ヘッド7の吐出面71及び吐出口73に到達したとしても、UVインクに影響を与えるほどの照射量ではなくなる。
【0043】
また、制御部の制御下にて、キャリッジ9を主走査方向Aに沿って図3における左に移動させる場合には、第二画像記録部10Bによって画像記録が行われ、第二画像記録部10Bの光トラップ84bにより、上記第一画像記録部10Aの場合と同様にして紫外線の捕捉が行われる。
【0044】
また、キャリッジ9が走査における折り返し地点に位置したときには、インクの吐出は行われないので、制御部は紫外線光源81を消灯し、紫外線照射部8と対向する部材(メンテナンス機構6や図示されない上記構造物等)に対して直接紫外線が照射されないようにすることも可能である。なお、折り返し地点に位置した場合において紫外線光源81を照射させたままとする制御を行ったとしても、紫外線照射部8と対向する部材(メンテナンス機構6や図示されない上記構造物等)の反射率が20%未満に抑えられているので、これらに反射されて記録ヘッド7の吐出面71や吐出口73にまで到達する紫外線の照射量を低減することができる。
【0045】
なお、本発明は上記実施形態に限らず適宜変更可能であるのは勿論である。
例えば、本実施形態ではシリアル式のインクジェットプリンタを例示して説明したが、これに限られるものではなく、ラインヘッド式のインクジェットプリンタであってもかまわない。
また、本実施形態では、紫外線照射部8と隣り合うブラックに対応する記録ヘッド7と紫外線照射部8との間に光トラップ84を設けるようにしたが、これに限られるものではない。例えば、図4並びに図6に示す場合において、光トラップ84を、紫外線照射部8とブラックの記録ヘッド7との間に配設するのに加えて、紫外線照射部8と、ブラックの記録ヘッド7に隣り合うシアンの記録ヘッド7との間、すなわちシアンの記録ヘッド7とブラックの記録ヘッド7との間に配設しても良い。
【0046】
また、本実施形態では、第一画像記録部10A及び第二画像記録部10Bの双方に紫外線照射部8を設けるようにしたが、これに限られるものではなく、例えば図3において隣り合う、第一画像記録部10Aの記録ヘッド7aと第二画像記録部10Bの記録ヘッド7bとの間に紫外線照射部8を設けるようにしても良い。例えば、図4並びに図6に示す場合において、紫外線照射部8と隣り合った状態となる、第一画像記録部10Aのイエロー(Y)の記録ヘッド7a並びに第二画像記録部10Bのブラック(K)の記録ヘッド7bの各々と前記紫外線照射部8との間のそれぞれに、光トラップ84が設けられることとなる。
【0047】
さらに、本実施形態では、第一及び第二画像記録部10A、10Bにおいて、各々4つの記録ヘッド7、…に対して1つの紫外線照射部8を設ける構成としたが、これに限られるものではなく、少なくとも記録ヘッド7よりも主走査方向Aの下流側に配置されていれば紫外線照射部8の個数並びに配設位置は任意である。例えば、1つの記録ヘッド7に対して1つの紫外線照射部8を設ける構成としても良いし、隣り合って配設された2つの記録ヘッド7、1に対して1つの紫外線照射部8を設ける構成としても良いし、連続して配設された3つの記録ヘッド7、…に対して1つの紫外線照射部8を設ける構成としても良い。なお、上記各々の場合にあっても、本実施形態において例示したように、記録ヘッド7と紫外線照射部8との全ての間に、光トラップ84が設けられることとなる。
【0048】
また、本実施形態では、一次反射紫外線を効率的に捕捉するために光トラップ84をキャリッジ9に設ける構成を例示しているが、光トラップ84を設けなくとも、正反射光が記録ヘッド7の吐出面71や吐出口73に到達しないように、直接反射部材や間接反射部材を配置することで、記録ヘッド7の吐出面71や吐出口73を照射する紫外線の紫外線光量を抑えることも可能である。
【0049】
【実施例】
以下に本発明の実施例について、比較例と比較しながら説明する。
【0050】
ここで例示する実施例及び比較例では、キャリッジ9と記録ヘッド7とプラテン4と紫外線光源81との相対的な配置が以下のように設定されている(図4参照)。
【0051】
記録ヘッド7の吐出面71とプラテン4上面との距離a:1.5mm
記録ヘッド7のノズル先端とプラテン4上面との距離b:1.7mm
キャリッジ9の下面とプラテン4上面との距離c:1.5mm
紫外線光源81とプラテン4上面との距離d:20mm
【0052】
ここで、紫外線光源81としては、313nmの波長に主ピークを持つ蛍光管を用いており、光源直下の記録媒体Pの、波長が220nm〜400nmの波長の紫外線の照度が8mW/cm2としている。照度計には、例えばウシオ電機製のUSR40を用いた。
【0053】
記録ヘッド7には、液滴サイズ7plでUVインクを吐出するピエゾタイプのインクジェットノズルが、ノズルピッチ360dpiにて配列されている。この記録ヘッド7はノズル部分を加熱してUVインクを低粘化させてからPETフィルムからなる記録媒体Pに吐出して画像形成を行う。画像形成後の記録媒体Pには、図示しないヒーターにより加熱制御されている。
【0054】
ここではUVインクとして、カチオン系重合インクのマゼンタインクを用いた。このインクの作成には、まず、PR−184:15質量部、分散剤:2質量部、アロンオキセタンOXT−221(東亜合成社製):83質量部からなるマゼンタ顔料分散物を作成する。
その後上記した配合からなるマゼンタ顔料分散物:17質量部、アロンオキセタンOXT−221(東亜合成社製):40質量部、アロンオキセタンOXT−211(東亜合成社製):30質量部、セロキサイド2021P(ダイセルUCB社製):30質量部、UVI−6990(ダイウケミカル社製、光酸発生剤):5質量部を配合して、0.8μのメンブレンフィルターにて濾過し、50℃に加熱しながら減圧して脱水することによりマゼンタインクを得た。
このマゼンタインクは、25℃における粘度が32.5mPa・s、表面張力が35.2mN/mであった。そして、50℃における粘度が11.2mPa・sであった。
【0055】
次に実施例1〜3及び比較例における各部の表面素材について説明する。
実施例1では、記録ヘッド7の吐出面71の表面素材をポリイミド、キャリッジ9の表面素材をアルマイト、プラテン4の表面素材をカーボンブラック練りこみABS樹脂としている。
実施例2では、記録ヘッド7の吐出面71の表面素材をカーボンブラック練りこみPES樹脂、キャリッジ9の表面素材をアルミ、プラテン4の表面素材をカーボンブラックを練り込んだABS樹脂としている。
実施例3では、記録ヘッド7の吐出面71の表面素材をPES樹脂、キャリッジ9の表面素材をアルミ、プラテン4の表面素材をカーボンブラックを練り込んだABS樹脂としている。
比較例では、記録ヘッド7の吐出面71の表面素材をPES樹脂、キャリッジ9及びプラテン4の表面素材をアルミとしている。
【0056】
実施例1〜3及び比較例の各部の反射率を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
なお、反射率Aとは正反射成分を含む反射率で、反射率Bは正反射成分を含まない反射率である。つまり、実施例1は対向する各部の反射率Aを20%未満に、反射率Bを5%未満にしたものであり、実施例2はキャリッジ9を除く、対向する部材の反射率Aを20%未満に、反射率Bを5%未満にしたもの、実施例3は直接反射部材(プラテン4)の反射率Aを20%未満に、反射率Bを5%未満にしたが、対向する間接反射部材の反射率Aが20%を超えるもの、比較例は対向する各部の反射率Aを20%以上に、反射率Bを5%以上にしたものである。
【0059】
そして、実施例1〜3及び比較例のそれぞれで、記録媒体Pに対して30分間連続してUVインクを吐出しながら紫外線を照射した後に、安定吐出するかを評価する。評価結果は以下のようになった。
実施例1では、30分間連続してUVインクを吐出しながら紫外線を照射しても、UVインクの着弾精度は変化せず、常に安定していた。また、インクを吐出せずに30分間連続して紫外線の照射のみを行った後にインク吐出を行った場合においても、UVインクの着弾精度は変化しなかった。
実施例2では、30分間連続してUVインクを吐出しながら紫外線を照射しても、UVインクの着弾精度は変化せず、常に安定していた。しかし、インクを吐出せずに30分間連続して紫外線の照射のみを行った後にインク吐出を行った場合には、UVインクの着弾精度は若干劣化した。
実施例3では、30分間連続してUVインクを吐出しながら紫外線を照射しても、UVインクの着弾精度は若干劣化した。そして、インクを吐出せずに30分間連続して紫外線の照射のみを行った後にインク吐出を行った場合には、ノズル欠が一部生じた。しかしながら、クリーニングを行うことで吐出性を回復することができた。また、反射率Aが20%未満に設定された光トラップやその他の部材を間接反射部材として、一箇所以上にキャリッジ9側に配置することで、大幅な射出安定性を確保することができる。
比較例では、30分間連続してUVインクを吐出しながら紫外線を照射すると、UVインクの着弾精度が激しく劣化し、インクを吐出せずに30分間連続して紫外線の照射のみを行った後にインク吐出を行った場合には、ノズル欠が多数生じた。この場合、吐出面71をクリーニングしても完全な吐出性を得ることはできなかった。
【0060】
このように、直接反射部材及び、これに対向する間接反射部材のそれぞれ一箇所以上、合計で2箇所以上の反射率Aを、220nm以上400nm以下の波長の紫外線に対しては20%未満とし、反射率Bを220nm以上400nm以下の波長の紫外線に対しては5%未満としていることで、長時間安定してインク吐出を行えることが分かった。もちろん、これら以外の直接反射部材、間接反射部材の反射率A、Bを上記範囲に収めれば、安定したインク吐出を長期にわたって維持することが可能となる。
【0061】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、紫外線照射部から照射された紫外線を、反射される毎に反射前の照射量の20%未満に低減することができる。そして、記録ヘッドに至った際には、紫外線の照射量は、ラジカル重合系UVインクや、カチオン重合系インクであっても、増粘化、硬化させないほどまで低減されることとなる。したがって、記録ヘッドと紫外線照射部を近接して配置しUVインクで画像形成することで画質を向上させた場合においても、記録ヘッドの吐出面への紫外線入射量を低減でき、結果としてUVインクの安定吐出を長期にわたって行える。
請求項2記載の発明によれば、紫外線照射部から照射された紫外線を直接又は間接的に前記記録ヘッドに反射する部材のうち少なくとも対向する2箇所以上の反射率が、220nm以上400nm以下の波長の紫外線に対しては20%未満であるので、紫外線照射部から照射された紫外線を、反射される毎に反射前の照射量の20%未満に低減することができる。
請求項3記載の発明によれば、反射によって生じる紫外線の多重散乱光の照射量を、反射する毎に5%未満に低減することができる。このように多重散乱光の照射量を低減することにより、より記録ヘッドのUVインクに照射される紫外線の照射量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用された実施の形態のインクジェットプリンタの要部構成を示した斜視図である。
【図2】図1のインクジェットプリンタに備わるキャリッジを示した斜視図である。
【図3】図2のキャリッジの副走査方向に対する断面部を模式的に示した図である。
【図4】図2のキャリッジに備わる紫外線照射部、光トラップ、記録ヘッドを示す拡大断面図である。
【図5】図2のキャリッジに備わる光トラップの形状を具体的に示した斜視図である。
【符号の説明】
1 インクジェットプリンタ
7 記録ヘッド
8 紫外線照射部
P 記録媒体
Claims (3)
- 紫外線が照射されることで硬化するUVインクを記録媒体に向けて吐出する記録ヘッドと、
前記記録媒体に吐出されたUVインクに紫外線を照射する紫外線照射部とを備え、
前記紫外線照射部から照射された紫外線を直接又は間接的に前記記録ヘッドに反射する部材の反射率が、前記記録媒体に着弾したUVインクに対して前記紫外線照射部から照射される220nm以上400nm以下の波長の紫外線に対しては20%未満となるように、カーボンブラック、超粒子化した酸化チタン・酸化亜鉛・酸化鉄の粉体、ベンゾトリアゾール系化合物、芳香族化合物のうち、少なくともいずれか1つによって前記部材が形成されていることを特徴とするインクジェットプリンタ。 - 請求項1記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記紫外線照射部から照射された紫外線を直接又は間接的に前記記録ヘッドに反射する部材のうち少なくとも対向する2箇所以上の反射率が、前記記録媒体に着弾したUVインクに対して前記紫外線照射部から照射される220nm以上400nm以下の波長の紫外線に対しては20%未満となるように、カーボンブラック、超粒子化した酸化チタン・酸化亜鉛・酸化鉄の粉体、ベンゾトリアゾール系化合物、芳香族化合物のうち、少なくともいずれか1つによって前記部材が形成されていることを特徴とするインクジェットプリンタ。 - 請求項1又は2記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記紫外線照射部から照射された紫外線を直接又は間接的に前記記録ヘッドに反射する部材の正反射成分を含まない反射率が、前記記録媒体に着弾したUVインクに対して前記紫外線照射部から照射される220nm以上400nm以下の波長の紫外線に対しては5%未満となるように、前記部材の表面の平滑性を高めて鏡面状にしていることを特徴とするインクジェットプリンタ。
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